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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C03C 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C03C |
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管理番号 | 1339367 |
審判番号 | 訂正2017-390093 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2017-09-12 |
確定日 | 2018-03-12 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6095356号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6095356号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第6095356号(以下、「本件特許」という。)は、平成24年12月20日(優先権主張 平成23年12月28日、平成24年 8月30日)に出願された特願2012-278573号の請求項1?3に係る発明について、平成29年 2月24日に特許権の設定登録がされたものである。 そして、本件審判は、本件特許の訂正を求め、平成29年 9月12日に請求され、平成29年10月 3日付けで手続補正指令書(方式)が通知され、これに対し、平成29年10月23日付けで審判請求書に対する手続補正がなされたものである。 2.請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「本件特許明細書」という。)を、審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?5(注:下線部が訂正箇所)である。 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「Gd_(2)O_(3)成分の含有量が6.30%以下」とあるのを、「Gd_(2)O_(3)成分の含有量が6.30%以下(但し、Gd_(2)O_(3)成分の含有量が1重量%以上であるものを除く)」に訂正する。 イ.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「Y_(2)O_(3)成分の含有量が0?16.10%」とあるのを、「Y_(2)O_(3)成分の含有量が11.10?16.10%」に訂正する。 ウ.訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「1300℃以下の液相温度を有する」とあるのを、「1150℃以下の液相温度を有し、」に訂正する。 エ.訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1について、液相温度の定義についてさらに特定し、その内容について「前記液相温度は、ガラス試料を完全に熔融状態にし、1300℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度である、」に訂正する。 オ.訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0078】に「このうち、実施例1、3?4、7?8、10?16、20?24は、本発明の参考例である」とあるのを、「このうち、実施例1?18、20?24、28?30、33、37?39、42、44?46、50、70、71、75?77、79、80、89、91、92、95?98、101?104、107?116は、本発明の参考例である」と訂正する。 3.当審の判断 (1)訂正の目的、新規事項の追加、及び、特許請求の範囲の拡張/変更の有無について ア.訂正事項1 訂正事項1は、請求項1において「Gd_(2)O_(3)成分の含有量が6.30%以下」の範囲の内の、「1重量%以上で6.30重量%以下」の範囲を除き、「1重量%未満」の範囲に減縮するものである。 なお、「重量%」との表記は、計量法において記載されているものではないが、重さを表す単位として、「質量%」と同じである。 したがって、当該訂正事項1は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記訂正事項1は、審判請求書において提示された先行技術文献である特開2002-284542号公報に開示された「Gd_(2)O_(3)はLa_(2)O_(3)との置換により20重量%まで添加することが可能であるが、その含有量が20重量%を越えると、耐失透性が悪化し、安定生産可能なガラスが得られない。したがってGd_(2)O_(3)の含有量を0?20重量%に限定したが、好ましくは1?15重量%である。」(段落【0017】)との記載のうち、特に「好ましい」態様である「1?15重量%」との重なりのみを除くために、いわゆる除くクレームの形態でこれを規定したものであり、これより新たな技術的事項を導入するものではないから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。 イ.訂正事項2 訂正事項2は、請求項1の「Y_(2)O_(3)成分の含有量が0?16.10%」を「Y_(2)O_(3)成分の含有量が11.10?16.10%」へと訂正するものであり、要するに、Y_(2)O_(3)成分の含有量について、「0?16.10%」を「11.10?16.10%」に減縮するものである。 したがって、当該訂正事項2は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0091】の実施例56にある、Y_(2)O_(3)成分の含有量についての「11.10(%)」の値に基づくものであるから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ.訂正事項3 訂正事項3は、請求項1の「1300℃以下の液相温度」を「1150℃以下の液相温度」へと訂正するものであり、要するに、液相温度について「1300℃以下」を「1150℃以下」に減縮するものである。 したがって、当該訂正事項3は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0087】の実施例25、段落【0089】の実施例34にある、液相温度についての「1150(℃)」の値に基づくものであるから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。 エ.訂正事項4 訂正事項4は、請求項1において液相温度の定義についてさらに特定し、その内容について「ガラス試料を完全に熔融状態にし、1300℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度」へと訂正するものであり、要するに、訂正前の請求項1で明らかにされていない液相温度の定義について「ガラス試料を完全に熔融状態にし、1300℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度」と明らかにするものである。 したがって、当該訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、上記訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0072】にある「なお、本明細書中における「液相温度」は、50mlの容量の白金製坩堝に30ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1350℃で完全に熔融状態にし、所定の温度まで降温して12時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察し、結晶が認められない一番低い温度を表す。ここで降温する際の所定の温度は、1300℃までの10℃刻みの温度である」との記載に基づくものであるから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。 オ.訂正事項5 訂正事項5は、願書に添付した明細書の段落【0078】に「このうち、実施例1、3?4、7?8、10?16、20?24は、本発明の参考例である」とあるのを、「このうち、実施例1?18、20?24、28?30、33、37?39、42、44?46、50、70、71、75?77、79、80、89、91、92、95?98、101?104、107?116は、本発明の参考例である」と訂正するものであり、実施例2、5、6、9、17、18、28?30、33、37?39、42、44?46、50、70、71、75?77、79、80、89、91、92、95?98、101?104、107?116を新たに参考例にするものである。そして、新たに参考例にされたものについては、上記訂正事項1?4に係る請求項1の減縮により、上記訂正事項1?4に係る訂正後の請求項1の要件を満たさないことから、これらが参考例であることを明らかにして、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。 したがって、当該訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記訂正事項5は、上記訂正事項1?4に係る訂正後の請求項1の要件を満たさない実施例(No.1?18、20?24、28?30、33、37?39、42、44?46、50、70、71、75?77、79、80、89、91、92、95?98、101?104、107?116)について参考例であることを明確にするものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項2?3は、訂正事項1?4に係る訂正前の請求項1の記載をそれぞれ直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1?4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、当該請求項1?3は、特許法126条第3項に規定する一群の請求項である。 したがって、本件訂正は、この一群の請求項について請求したものと認められ、特許法第126条第3項に適合するものである。 また、明細書の段落【0078】には、請求項1に対応する実施例が記載されているから訂正事項5による明細書の訂正に係る請求項は請求項1である。 よって、これを含む一群の請求項、すなわち請求項1?3の全てが訂正事項5の対象となる。 したがって、訂正事項5は、特許法第126条第4項に適合するものである。 (3)独立特許要件について 特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正後の請求項1に係る発明を含む一群の請求項〔1?3〕(以下、それぞれ「本件訂正発明1」?「本件訂正発明3」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。 ここで、訂正された「本件訂正発明1」は、 「質量%で B_(2)O_(3)成分を10.5?24.0%、 SiO_(2)成分を3.0?10.0%、 La_(2)O_(3)成分を35.0?55.0%、 Nb_(2)O_(5)成分を2.0%超?10.0%、 ZrO_(2)成分を1.0?8.0% 含有し、 Gd_(2)O_(3)成分の含有量が6.30%以下(但し、Gd_(2)O_(3)成分の含有量が1重量%以上であるものを除く)、 WO_(3)成分の含有量が5.20%以下、 Ta_(2)O_(5)成分の含有量が1.0%未満、 ZnO成分の含有量が0?6.65%、 Y_(2)O_(3)成分の含有量が11.10?16.10%、 P_(2)O_(5)成分の含有量が0?5.0% であり、 鉛成分を含有せず、 B_(2)O_(3)成分及びSiO_(2)成分の含有量の和が15.0%以上27.0%以下、 Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和が10.0%以下、 TiO_(2)成分、Nb_(2)O_(5)成分及びWO_(3)成分の含有量の和が4.0%超?14.0%、 RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和が6.65%以下、 Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が48.0%?60.0% であり、 1.83以上の屈折率(nd)を有し、35以上50以下のアッベ数(νd)を有し、 1150℃以下の液相温度を有し、 前記液相温度は、ガラス試料を完全に熔融状態にし、1300℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度である、 光学ガラス。」である。 審判請求人は、審判請求書において本件特許について、特開2002-284542号公報(以下、「乙1」という。)に基づく新規性及び進歩性について述べていることから、この点について検討する。 a.乙1の記載事項 乙1には、次の記載がある。 a.1「【0017】Gd_(2)O_(3)はLa_(2)O_(3)との置換により20重量%まで添加することが可能であるが、その含有量が20重量%を越えると、耐失透性が悪化し、安定生産可能なガラスが得られない。したがってGd_(2)O_(3)の含有量を0?20重量%に限定したが、好ましくは1?15重量%である。」 a.2「【0018】Y_(2)O_(3)もまたLa_(2)O_(3)との置換により0?20重量%添加させることができる。その含有量が20重量%を上回ると、耐失透性が悪化し、安定生産可能なガラスが得られない。したがってY_(2)O_(3)の含有量を0?20重量%に限定したが、好ましくは0?10重量%である。」 a.3「【0043】このようにして得られた光学ガラスの光学恒数[屈折率[nd]、アッベ数[νd]]およびその他物性を以下のようにして測定し、その結果を表1?表4に示した。・・・(2)液相温度[LT] 1mmの孔のあいた板状の白金に、ガラスサンプルを並べ、温度勾配が精密に制御された傾斜炉に30分間静置し、室温まで冷却後、ガラス内部を100倍の顕微鏡で観察し、結晶の有無から測定した。」 a.4「 」 b.乙1に記載された発明 記載事項a.3及びa.4の実施例2から、乙1には、「重量%でB_(2)O_(3)成分を19.26%、SiO_(2)成分を6%、La_(2)O_(3)成分を41.15%、Nb_(2)O_(5)成分を7.75%、ZrO_(2)成分を6%含有し、Gd_(2)O_(3)成分の含有量が13.15%、WO_(3)成分の含有量が0%、Ta_(2)O_(5)成分の含有量が0%、ZnO成分の含有量が4.08%、Y_(2)O_(3)成分の含有量が2.65%、P_(2)O_(5)成分の含有量が0%であり、鉛成分を含有せず、B_(2)O_(3)成分及びSiO_(2)成分の含有量の和が25.26%、Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和が15.80%、TiO_(2)成分、Nb_(2)O_(5)成分及びWO_(3)成分の含有量の和が7.75%、RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和が0%、Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が56.95%であり、1.83328の屈折率(nd)を有し、42.58のアッベ数(νd)を有し、1145℃の液相温度を有し、前記液相温度は1mmの孔のあいた板状の白金に、ガラスサンプルを並べ、温度勾配が精密に制御された傾斜炉に30分間静置し、室温まで冷却後、ガラス内部を100倍の顕微鏡で観察し、結晶の有無から測定した光学ガラス。」(以下、「乙1発明」という。)が開示されているといえる。 c.本件訂正発明1と乙1発明との対比・判断 本件訂正発明1と乙1発明とを対比する。 ここで、3.(1)ア.で記載したとおり、「重量%」との表記は、重さを表す単位として、「質量%」と同じであるから、以降は、重さをすべて「質量%」での「%」で表記することとする。 本件訂正発明1と乙1発明は、「質量%でB_(2)O_(3)成分を19.26%、SiO_(2)成分を6%、La_(2)O_(3)成分を41.15%、Nb_(2)O_(5)成分を7.75%、ZrO_(2)成分を6%含有し、WO_(3)成分の含有量が0%、Ta_(2)O_(5)成分の含有量が0%、ZnO成分の含有量が4.08%、P_(2)O_(5)成分の含有量が0%であり、鉛成分を含有せず、B_(2)O_(3)成分及びSiO_(2)成分の含有量の和が25.26%、TiO_(2)成分、Nb_(2)O_(5)成分及びWO_(3)成分の含有量の和が7.75%、RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和が0%、Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が56.95%であり、1.83328の屈折率(nd)を有し、42.58のアッベ数(νd)を有し、1145℃の液相温度を有する光学ガラス。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1 本件訂正発明1はGd_(2)O_(3)成分の含有量が1%未満であり、Y_(2)O_(3)成分の含有量が11.10?16.10%であり、Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和が10.0%以下であるものであるのに対し、乙1発明は、Gd_(2)O_(3)成分の含有量が13.15%であり、Y_(2)O_(3)成分の含有量が2.65%であり、Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和が15.80%である点。 ・相違点2 本件訂正発明1はガラス試料を完全に熔融状態にし、1300℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度である液相温度が1150℃以下であるのに対し、乙1発明は、1mmの孔のあいた板状の白金に、ガラスサンプルを並べ、温度勾配が精密に制御された傾斜炉に30分間静置し、室温まで冷却後、ガラス内部を100倍の顕微鏡で観察し、結晶の有無から測定した液相温度が1145℃である点。 ・相違点についての検討 まず、相違点1について検討する。 乙1発明は、Gd_(2)O_(3)成分の含有量が13.15%、Y_(2)O_(3)成分の含有量が2.65%、Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和が15.80%であって、この点は、実質的な相違点であるので本件訂正発明1と乙1発明は同一ではない。 また、記載事項a.1及びa.2によれば、Y_(2)O_(3)成分の含有量の好ましい範囲は0?10%であり、Gd_(2)O_(3)成分の含有量の好ましい範囲は1?15%であるから、乙1発明において、Gd_(2)O_(3)成分の含有量を1%未満とするとともに、Y_(2)O_(3)成分の含有量を10%を超えるものとし、さらに、Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和を10.0%以下とし、本件訂正発明1の構成とすることについての動機付けがない。 よって、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、乙1の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 d.小括 c.で検討したとおり、本件訂正発明1は、乙1に記載された発明または乙1の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 また、本件訂正発明2?3は、何れも本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明2?3についても、乙1に記載された発明または乙1の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 e.特許無効の抗弁について 東京地裁平成29年(ワ)第11314号 特許権侵害差止等請求事件において、中国特許出願公開103030273号及び国際出願PCT/JP2012/082848の国際公開公報である国際公開第2013/094619号に基づく新規性欠如(特許法第29条第1項第3号)を理由とする特許無効の抗弁がされていることから、この点について検討する。 本件訂正発明1は、3.(3)の冒頭において記載した「本件訂正発明1」の組成範囲を有するとともに、「1.83以上の屈折率」を有し、「35以上50以下のアッベ数」を有する光学ガラスであるところ、中国特許出願公開103030273号に記載された発明は、陽イオン及び陰イオンのモル百分率で、「B^(3+) 55?70% Si^(4+) 1?9% Σ(B^(3+)+Si^(4+)) 58?75% La^(3+) 15?25% Y^(3+) 3?15% Gd^(3+) 0?5% Σ(La^(3+)+Y^(3+)+Gd^(3+)) 20?38% Ta^(5+) 0?2% Zr^(4+) 2?10% Nb^(5+) 0?10% Σ(Zr^(2+)+Nb^(5+)) 12%を超えない Ba^(2+) 0?5% Sb^(3+) 0?0.2%を含み、陰イオンはすべてO^(2-)であり、トリウム、鉛、ヒ素、カドミウム、水銀などの有害物質成分や、Ge^(4+)、Te^(4+)、Zn^(2+)、Li^(+)、Na^(+)、K^(+)、Ti^(4+)、W^(6+)は含有しない」組成範囲を有するとともに、「屈折率が1.75?1.80の範囲内であり、アッベ数が50?55の範囲内である」光学ガラスである。 ここで、本件訂正発明1はガラス組成を質量%で表記しているのに対し、中国特許出願公開103030273号に記載された発明はガラス組成を陽イオン及び陰イオンのモル百分率で表記していることから、両者の組成範囲を直接比較することができないものの、例えば、本件訂正発明1では、Nb_(2)O_(5)を必須成分とするのに対し、中国特許出願公開103030273号に記載された発明ではNb^(5+)を任意成分とする点などで、両者の組成は相違するものであり、また、所望の物性についても、本件訂正発明1では、「1.83以上の屈折率」を有し、「35以上50以下のアッベ数」を有するのに対し、中国特許出願公開103030273号に記載された発明では、「屈折率が1.75?1.80の範囲内であり、アッベ数が50?55の範囲内である」点で相違するものである。 したがって、本件訂正発明1は、中国特許出願公開103030273号に記載された発明ではない。 また、本件訂正発明2?3は、何れも本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明2?3についても、中国特許出願公開103030273号に記載された発明ではない。 さらにまた、本件特許と国際出願PCT/JP2012/082848は同一の基礎出願に対し優先権を主張するものであり、国際公開第2013/094619号は本件出願後の2013年 6月27日に国際公開された文献であるから、特許法第29条第1項第3号の規定違反を理由とする無効理由における引用例適格性を備えておらず、本件特許の独立特許要件を否定するものではない。 f.独立特許要件についてのまとめ 訂正事項1?5によって訂正された訂正後の請求項1?3に係る発明は、上記で検討した以外の理由もないことから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 4 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号を目的とするものであって、同条第3?7項に規定する要件を満たすものであるから、本件訂正を認める。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 光学ガラス及び光学素子 【技術分野】 【0001】 本発明は、光学ガラス及び光学素子に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、光学系を使用する機器のデジタル化や高精細化が急速に進んでおり、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影機器や、プロジェクタやプロジェクションテレビ等の画像再生(投影)機器等の各種光学機器の分野では、光学系で用いられるレンズやプリズム等の光学素子の枚数を削減し、光学系全体を軽量化及び小型化する要求が強まっている。 【0003】 光学素子を作製する光学ガラスの中でも特に、光学系全体の軽量化及び小型化を図ることが可能な、1.75以上の屈折率(n_(d))を有し、35以上50以下のアッベ数(ν_(d))を有する高屈折率低分散ガラスの需要が非常に高まっている。このような高屈折率低分散ガラスとしては、特許文献1?3に代表されるようなガラス組成物が知られている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2001-348244号公報 【特許文献2】特開2009-173520号公報 【特許文献3】特開2003-267748号公報 【特許文献4】特開2006-240889号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 光学ガラスから光学素子を作製する方法としては、例えば、光学ガラスから形成されたゴブ又はガラスブロックに対して研削及び研磨を行って光学素子の形状を得る方法、光学ガラスから形成されたゴブ又はガラスブロックを再加熱して成形(リヒートプレス成形)して得られたガラス成形体を研削及び研磨する方法、及び、ゴブ又はガラスブロックから得られたプリフォーム材を超精密加工された金型で成形(精密モールドプレス成形)して光学素子の形状を得る方法が知られている。いずれの方法であっても、熔融したガラス原料からゴブ又はガラスブロックを形成する際に、安定なガラスが得られることが求められる。ここで、得られるゴブ又はガラスブロックを構成するガラスの失透に対する安定性(耐失透性)が低下してガラスの内部に結晶が発生した場合、もはや光学素子として好適なガラスを得ることができない。 【0006】 また、光学ガラスの材料コストを低減するために、光学ガラスを構成する諸成分の原料費は、なるべく安価であることが望まれる。また、光学ガラスの製造コストを低減するため、原料の熔解性が高く、より低温で熔解することが望まれる。ところが、特許文献1?4に記載されたガラスは、これらの諸要求に十分応えるものとは言い難い。 【0007】 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、屈折率(n_(d))及びアッベ数(ν_(d))が所望の範囲内にありながら、耐失透性が高いガラスを、より安価に得ることにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、B_(2)O_(3)成分及びLa_(2)O_(3)成分を含有し、35以上のアッベ数(ν_(d))を有するガラスに対してTa_(2)O_(5)成分の含有量を低減することにより、所望の屈折率及びアッベ数を有しながらもガラスの材料コストが低減され、且つガラスの液相温度が低くなることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。 【0009】 (1) 質量%でB_(2)O_(3)成分を1.0?30.0%及びLa_(2)O_(3)成分を10.0?60.0%含有し、35以上のアッベ数(ν_(d))を有し、Ta_(2)O_(5)成分の含有量が15.0%未満である光学ガラス。 【0010】 (2) 質量%で Li_(2)O成分 0?10.0% ZnO成分 0?25.0% である(1)記載の光学ガラス。 【0011】 (3) 質量%で Gd_(2)O_(3)成分 0?40.0% Y_(2)O_(3)成分 0?30.0% Yb_(2)O_(3)成分 0?20.0% である(1)又は(2)記載の光学ガラス。 【0012】 (4) Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が35.0%以上75.0%以下である(1)から(3)のいずれか記載の光学ガラス。 【0013】 (5) Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和が30.0%以下である(1)から(4)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0014】 (6) 質量%で TiO_(2)成分 0?15.0% Nb_(2)O_(5)成分 0?20.0% WO_(3)成分 0?20.0% である(1)から(5)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0015】 (7) TiO_(2)成分、Nb_(2)O_(5)成分及びWO_(3)成分の含有量の和が30.0%以下である(1)から(6)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0016】 (8) SiO_(2)成分の含有量が30.0%以下である(1)から(7)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0017】 (9) B_(2)O_(3)成分及びSiO_(2)成分の含有量の和が1.0%以上30.0%以下である(1)から(8)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0018】 (10) 質量%で Na_(2)O成分 0?10.0% K_(2)O成分 0?10.0% Cs_(2)O成分 0?10.0% である(1)から(9)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0019】 (11) Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上)の質量和が15.0%以下である(1)から(10)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0020】 (12) 質量%で MgO成分 0?10.0% CaO成分 0?10.0% SrO成分 0?10.0% BaO成分 0?25.0% である(1)から(11)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0021】 (13) RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和が25.0%以下である(1)から(12)のいずれかに記載の光学ガラス。 【0022】 (14) 質量%で P_(2)O_(5)成分 0?10.0% GeO_(2)成分 0?10.0% ZrO_(2)成分 0?15.0% Al_(2)O_(3)成分 0?10.0% Ga_(2)O_(3)成分 0?10.0% Bi_(2)O_(3)成分 0?10.0% TeO_(2)成分 0?20.0% SnO_(2)成分 0?1.0% Sb_(2)O_(3)成分 0?1.0% である(1)から(13)のいずれか記載の光学ガラス。 【0023】 (15) 1.75以上の屈折率(n_(d))を有し、35以上50以下のアッベ数(ν_(d))を有する(1)から(14)のいずれか記載の光学ガラス。 【0024】 (16) 1300℃以下の液相温度を有する(1)から(15)のいずれか記載の光学ガラス。 【0025】 (17) (1)から(16)のいずれか記載の光学ガラスを母材とする光学素子。 【0026】 (18) (17)記載の光学素子を備える光学機器。 【発明の効果】 【0027】 本発明によれば、屈折率(n_(d))及びアッベ数(ν_(d))が所望の範囲内にありながら、耐失透性が高いガラスを、より安価に得ることができる。 【発明を実施するための形態】 【0028】 本発明の光学ガラスは、質量%でB_(2)O_(3)成分を1.0?30.0%及びLa_(2)O_(3)成分を10.0?60.0%含有し、35以上のアッベ数(ν_(d))を有し、Ta_(2)O_(5)成分の含有量が15.0%未満である。Ta_(2)O_(5)成分の含有量を低減することによって、高価であり且つ高温での熔解を要するTa_(2)O_(5)成分の使用量が減少するため、光学ガラスの原料コスト及び製造コストが低減される。それとともに、B_(2)O_(3)成分及びLa_(2)O_(3)成分をベースとすることにより、35以上のアッベ数(ν_(d))を有しながらも、液相温度が低くなり易くなる。このため、屈折率(n_(d))及びアッベ数(ν_(d))が所望の範囲内にありながら、耐失透性が高い光学ガラスと、これを用いた光学素子をより安価に得ることができる。 【0029】 以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。 【0030】 [ガラス成分] 本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。 【0031】 <必須成分、任意成分について> B_(2)O_(3)成分は、ガラス形成酸化物として欠かすことの出来ない必須成分である。 特に、B_(2)O_(3)成分を1.0%以上含有することで、ガラスの耐失透性を高められ、且つガラスの分散を小さくできる。従って、B_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは1.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは8.5%、さらに好ましくは10.5%を下限とする。 一方、B_(2)O_(3)成分の含有量を30.0%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くでき、化学的耐久性の悪化を抑えられる。従って、B_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは25.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは18.0%、さらに好ましくは16.4%を上限とする。 B_(2)O_(3)成分は、原料としてH_(3)BO_(3)、Na_(2)B_(4)O_(7)、Na_(2)B_(4)O_(7)・10H_(2)O、BPO_(4)等を用いることができる。 【0032】 La_(2)O_(3)成分は、ガラスの屈折率を高め、分散を小さく(アッベ数を大きく)する成分である。特に、La_(2)O_(3)成分を10.0%以上含有することで、所望の高屈折率を得ることができる。従って、La_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは25.0%、さらに好ましくは30.0%、さらに好ましくは35.0%を下限とする。 一方、La_(2)O_(3)成分の含有量を60.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高められる。従って、La_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは55.0%、さらに好ましくは50.0%を上限とする。 La_(2)O_(3)成分は、原料としてLa_(2)O_(3)、La(NO_(3))_(3)・XH_(2)O(Xは任意の整数)等を用いることができる。 【0033】 Ta_(2)O_(5)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、耐失透性を高め、且つ熔融ガラスの粘性を高められる任意成分である。 一方で、高価なTa_(2)O_(5)成分を15.0%未満に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、これにより、原料の熔解温度が低くなり、原料の熔解に要するエネルギーが低減されるため、光学ガラスの製造コストをも低減できる。従って、Ta_(2)O_(5)成分の含有量は、好ましくは15.0%未満、より好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは7.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。 Ta_(2)O_(5)成分は、原料としてTa_(2)O_(5)等を用いることができる。 【0034】 本発明の光学ガラスでは、上述のようにTa_(2)O_(5)成分の含有量を15.0%未満にしながらも、B_(2)O_(3)成分を30.0%以下にすることが好ましい。これにより、屈折率を高める反面で高価なTa_(2)O_(5)成分及びGd_(2)O_(3)成分が低減される一方で、屈折率を下げるB_(2)O_(3)成分が低減されることで、Ta_(2)O_(5)成分及びGd_(2)O_(3)成分の低減による屈折率の低下を抑えられる。そのため、所望の高屈折率を有しながらも、より安価な光学ガラスを得られる。より好ましくは、Ta_(2)O_(5)成分の含有量を3.0%未満にし、Gd_(2)O_(3)成分の含有量を10.0%未満にし、且つB_(2)O_(3)成分を16.4%以下にしてもよい。 【0035】 本発明の光学ガラスでは、上述のようにTa_(2)O_(5)成分の含有量を15.0%未満にしながらも、La_(2)O_(3)成分を10.0%以上含有することが好ましい。これにより、屈折率を高める反面で高価なTa_(2)O_(5)成分が低減される一方で、屈折率を上げる成分の中でも比較的安価であり、且つ高アッベ数を維持できるLa_(2)O_(3)成分が所定以上含まれる。そのため、高い屈折率及びアッベ数を有しながらも材料コストの抑えられた光学ガラスを得ることができる。より好ましくは、Ta_(2)O_(5)成分の含有量を5.0%未満にし、且つLa_(2)O_(3)成分を40.0%以上含有してもよい。 【0036】 Li_(2)O成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善し、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。 一方で、Li_(2)O成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの粘性が高められるため、ガラスの脈理を低減できる。また、これによりガラスの屈折率を低下し難くでき、ガラスの化学的耐久性を高めることができ、且つ、耐失透性を高められる。従って、Li_(2)O成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とし、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.3%未満とする。 Li_(2)O成分は、原料としてLi_(2)CO_(3)、LiNO_(3)、Li_(2)CO_(3)等を用いることができる。 【0037】 本発明の光学ガラスでは、上述のようにTa_(2)O_(5)成分の含有量を15.0%未満にしながらも、B_(2)O_(3)成分を30.0%以下に低減し、且つLi_(2)O成分の含有量を10.0%以下にすることが好ましい。これにより、屈折率を高める反面で高価なTa_(2)O_(5)成分が低減される一方で、屈折率を下げるB_(2)O_(3)成分やLi_(2)O成分が低減されることで、Ta_(2)O_(5)成分の低減による屈折率の低下を抑えられる。そのため、高い屈折率を有しながらも材料コストの抑えられた光学ガラスを得ることができる。より好ましくは、Ta_(2)O_(5)成分の含有量を5.0%未満にし、B_(2)O_(3)成分を18.0%以下に低減し、且つLi_(2)O成分の含有量を1.0%未満にしてもよい。 【0038】 ZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラス転移点を低くでき、且つ化学的耐久性を高められる任意成分である。そのため、ZnO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは3.0%を下限としてもよい。 一方で、ZnO成分の含有量を25.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下や、耐失透性の低下を抑えられる。また、これにより熔融ガラスの粘性が高められるため、ガラスへの脈理の発生を低減できる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは25.0%、より好ましくは22.0%、さらに好ましくは20.0%を上限とする。 ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF_(2)等を用いることができる。 【0039】 本発明の光学ガラスでは、上述のようにTa_(2)O_(5)成分の含有量を15.0%未満にしながらも、ZnO成分を25.0%以下に低減することが好ましい。これにより、熔融ガラスの粘性や耐失透性を上げる反面で高価なTa_(2)O_(5)成分が低減される一方で、熔融ガラスの粘性を下げるZnO成分が低減される。そのため、脈理が低減されながらも材料コストが抑えられており、なお且つ耐失透性が高い点で、量産性に優れたガラスを作製することができる。より好ましくは、Ta_(2)O_(5)成分の含有量を5.0%未満にし、ZnO成分を25.0%以下にしてもよい。 【0040】 Gd_(2)O_(3)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つアッベ数を高められる任意成分である。 一方で、希土類元素の中でも特に高価なGd_(2)O_(3)成分を40.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、これによりガラスのアッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。従って、Gd_(2)O_(3)成分の含有量は、それぞれ好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。 Gd_(2)O_(3)成分は、原料としてGd_(2)O_(3)、GdF_(3)等を用いることができる。 【0041】 Y_(2)O_(3)成分は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、ガラスの材料コストを抑えられ、且つ比重を低減できる任意成分である。 一方で、Y_(2)O_(3)成分の含有量を30.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つガラスの耐失透性を高められる。従って、Y_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは25.0%、さらに好ましくは20.0%を上限とする。 Y_(2)O_(3)成分は、原料としてY_(2)O_(3)、YF_(3)等を用いることができる。 【0042】 Yb_(2)O_(3)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ分散を小さくできる任意成分である。 一方で、Yb_(2)O_(3)成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、これによりガラスの耐失透性を高められる。従って、Yb_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。 Yb_(2)O_(3)成分は、原料としてYb_(2)O_(3)等を用いることができる。 【0043】 Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、35.0%以上75.0%以下が好ましい。 特に、この和を35.0%以上にすることで、ガラスの分散を小さくできる。従って、Ln_(2)O_(3)成分の質量和は、好ましくは35.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは45.0%、さらに好ましくは48.0%を下限とする。 一方で、この和を75.0%以下にすることで、ガラスの液相温度が低くなるため、耐失透性を高められる。従って、Ln_(2)O_(3)成分の質量和は、好ましくは75.0%、より好ましくは65.0%、さらに好ましくは60.0%を上限とする。 【0044】 本発明の光学ガラスでは、上述のようにTa_(2)O_(5)成分の含有量を15.0%未満にしながらも、Ln_(2)O_(3)成分の含有量の和を35.0%以上にすることが好ましい。これにより、アッベ数を下げるTa_(2)O_(5)成分が低減される一方で、アッベ数を高めるLn_(2)O_(3)成分が所定以上含有されることで、所望の高いアッベ数を得易くできる。より好ましくは、Ta_(2)O_(5)成分の含有量を5.0%未満にし、且つLn_(2)O_(3)成分の含有量の和を40.0%以上にしてもよい。 【0045】 本発明の光学ガラスでは、Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和(質量和)は、30.0%以下が好ましい。これにより、これら高価な成分の含有量が低減されるため、ガラスの材料コストを抑えられる。従って、質量和(Gd_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)+Ta_(2)O_(5))は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。 【0046】 TiO_(2)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低く調整し、且つ耐失透性を高められる任意成分である。 一方で、TiO_(2)の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高め、且つ、アッベ数の必要以上の低下を抑えられる。また、TiO_(2)成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、TiO_(2)成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。 TiO_(2)成分は、原料としてTiO_(2)等を用いることができる。 【0047】 Nb_(2)O_(5)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。そのため、Nb_(2)O_(5)成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは1.5%超、さらに好ましくは2.0%超にしてもよい。 一方で、Nb_(2)O_(5)成分の含有量を20.0%以下にすることで、Nb_(2)O_(5)成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下や、可視光の透過率の低下を抑えることができる。従って、Nb_(2)O_(5)成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。 Nb_(2)O_(5)成分は、原料としてNb_(2)O_(5)等を用いることができる。 【0048】 WO_(3)成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら屈折率を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。また、WO_(3)成分は、ガラス転移点を低くできる成分でもある。 一方で、WO_(3)成分の含有量を20.0%以下にすることで、WO_(3)成分によるガラスの着色を低減して可視光透過率を高めることができる。従って、WO_(3)成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは7.0%を上限とする。 WO_(3)成分は、原料としてWO_(3)等を用いることができる。 【0049】 ここで、TiO_(2)成分、Nb_(2)O_(5)成分及びWO_(3)成分の含有量の和(質量和)は、30.0%以下が好ましい。これにより、アッベ数の低下が抑えられるため、所望のアッベ数を得易くできる。また、これら成分の過剰な含有による着色を低減でき、耐失透性を高められる。従って、質量和(TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+WO_(3))は、好ましくは30.0%、より好ましくは25.0%、さらに好ましくは19.0%、さらに好ましくは16.0%、さらに好ましくは14.0%を上限とする。 一方で、この和は、1.0%以上にしてもよい。これにより、ガラスの材料コストを低減するためにTa_(2)O_(5)成分等を低減しても、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる。従って、質量和(TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+WO_(3))は、好ましくは1.0%を下限とし、より好ましくは2.0%超、さらに好ましくは4.0%超としてもよい。 【0050】 SiO_(2)成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの粘度を高め、ガラスの着色を低減でき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。従って、SiO_(2)成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは3.0%、さらに好ましくは5.0%を下限としてもよく、さらに好ましくは6.0%超としてもよい。 一方で、SiO_(2)成分の含有量を30.0%以下にすることで、ガラス転移点の上昇を抑え、且つ屈折率の低下を抑えることができる。従って、SiO_(2)成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。 SiO_(2)成分は、原料としてSiO_(2)、K_(2)SiF_(6)、Na_(2)SiF_(6)等を用いることができる。 【0051】 ここで、B_(2)O_(3)成分及びSiO_(2)成分の含有量の和(質量和)は、1.0%以上30.0%以下が好ましい。 特に、この和を1.0%以上にすることで、B_(2)O_(3)成分やSiO_(2)成分の欠乏による耐失透性の低下を抑えられる。従って、質量和(B_(2)O_(3)+SiO_(2))は、好ましくは1.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは18.0%を下限とする。 一方で、この和を30.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による屈折率の低下が抑えられるので、所望の高屈折率を得易くできる。従って、質量和(B_(2)O_(3)+SiO_(2))は、好ましくは30.0%、より好ましくは27.0%、さらに好ましくは24.0%を上限とする。 【0052】 Na_(2)O成分、K_(2)O成分及びCs_(2)O成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善し、ガラスの耐失透性を高め、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。ここで、Na_(2)O成分、K_(2)O成分及びCs_(2)O成分の各々の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つ、耐失透性を高められる。従って、Na_(2)O成分、K_(2)O成分及びCs_(2)O成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。 Na_(2)O成分、K_(2)O成分及びCs_(2)O成分は、原料としてNaNO_(3)、NaF、Na_(2)SiF_(6)、K_(2)CO_(3)、KNO_(3)、KF、KHF_(2)、K_(2)SiF_(6)、Cs_(2)CO_(3)、CsNO_(3)等を用いることができる。 【0053】 Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上)の合計量は、15.0%以下が好ましい。これにより、ガラスの屈折率の低下を抑え、且つ耐失透性を高められる。従って、Rn_(2)O成分の質量和は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。 【0054】 MgO成分、CaO成分、SrO成分及びBaO成分は、0%超含有する場合に、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる任意成分である。 一方で、MgO成分、CaO成分及びSrO成分の各々の含有量を10.0%以下にすること、及び/又は、BaO成分の含有量を25.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、MgO成分、CaO成分及びSrO成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。また、BaO成分の含有量は、好ましくは25.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは8.0%を上限とする。 MgO成分、CaO成分、SrO成分及びBaO成分は、原料としてMgCO_(3)、MgF_(2)、CaCO_(3)、CaF_(2)、Sr(NO_(3))_(2)、SrF_(2)、BaCO_(3)、Ba(NO_(3))_(2)、BaF_(2)等を用いることができる。 【0055】 RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の合計(質量和)は、25.0%以下が好ましい。これにより、RO成分の過剰な含有による、ガラスの屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、RO成分の質量和は、好ましくは25.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。 【0056】 P_(2)O_(5)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。特に、P_(2)O_(5)成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性、特に耐水性の低下を抑えられる。従って、P_(2)O_(5)成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。 P_(2)O_(5)成分は、原料としてAl(PO_(3))_(3)、Ca(PO_(3))_(2)、Ba(PO_(3))_(2)、BPO_(4)、H_(3)PO_(4)等を用いることができる。 【0057】 GeO_(2)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。しかしながら、GeO_(2)は原料価格が高いため、その量が多いと材料コストが高くなることで、Ta_(2)O_(5)成分等を低減することによるコスト低減の効果が減殺される。従って、GeO_(2)成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とし、最も好ましくは含有しない。 GeO_(2)成分は、原料としてGeO_(2)等を用いることができる。 【0058】 ZrO_(2)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの高屈折率化及び低分散化に寄与でき、且つガラスの耐失透性を高められる。そのため、ZrO_(2)成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは3.0%を下限としてもよい。 一方で、ZrO_(2)成分を15.0%以下にすることで、ZrO_(2)成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えられる。従って、ZrO_(2)成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは8.0%を上限とする。 ZrO_(2)成分は、原料としてZrO_(2)、ZrF_(4)等を用いることができる。 【0059】 Al_(2)O_(3)成分及びGa_(2)O_(3)成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。 一方で、Al_(2)O_(3)成分及びGa_(2)O_(3)成分の各々の含有量を10.0%以下にすることで、これらの過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えられる。従って、Al_(2)O_(3)成分及びGa_(2)O_(3)成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。 Al_(2)O_(3)成分及びGa_(2)O_(3)成分は、原料としてAl_(2)O_(3)、Al(OH)_(3)、AlF_(3)、Ga_(2)O_(3)、Ga(OH)_(3)等を用いることができる。 【0060】 Bi_(2)O_(3)成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。 一方で、Bi_(2)O_(3)成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高められ、且つ、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。従って、Bi_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。 Bi_(2)O_(3)成分は、原料としてBi_(2)O_(3)等を用いることができる。 【0061】 TeO_(2)成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。 しかしながら、TeO_(2)は白金製の坩堝や、溶融ガラスと接する部分が白金で形成されている溶融槽でガラス原料を熔融する際、白金と合金化しうる問題がある。従って、TeO_(2)成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とし、さらに好ましくは含有しない。 TeO_(2)成分は、原料としてTeO_(2)等を用いることができる。 【0062】 SnO_(2)成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの酸化を低減して清澄し、且つガラスの可視光透過率を高められる任意成分である。 一方で、SnO_(2)成分の含有量を1.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を低減できる。また、SnO_(2)成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)の合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図れる。従って、SnO_(2)成分の含有量は、好ましくは1.0%、より好ましくは0.7%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。 SnO_(2)成分は、原料としてSnO、SnO_(2)、SnF_(2)、SnF_(4)等を用いることができる。 【0063】 Sb_(2)O_(3)成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。 一方で、Sb_(2)O_(3)量が多すぎると、可視光領域の短波長領域における透過率が悪くなる。従って、Sb_(2)O_(3)成分の含有量は、好ましくは1.0%、より好ましくは0.7%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。 Sb_(2)O_(3)成分は、原料としてSb_(2)O_(3)、Sb_(2)O_(5)、Na_(2)H_(2)Sb_(2)O_(7)・5H_(2)O等を用いることができる。 【0064】 なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb_(2)O_(3)成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。 【0065】 <含有すべきでない成分について> 次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。 【0066】 他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。 【0067】 また、PbO等の鉛化合物及びAs_(2)O_(3)等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。 【0068】 さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。 【0069】 本発明のガラス組成物は、その組成が酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表されているため直接的にモル%の記載に表せるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たすガラス組成物中に存在する各成分のモル%表示による組成は、酸化物換算組成で概ね以下の値をとる。 B_(2)O_(3)成分 2.0?55.0モル%、及び La_(2)O_(3)成分 5.0?30.0モル%、 並びに Li_(2)O成分 0?30.0モル%、 ZnO成分 0?60.0モル%、 Gd_(2)O_(3)成分 0?20.0モル%、 Y_(2)O_(3)成分 0?20.0モル%、 Yb_(2)O_(3)成分 0?10.0モル%、 TiO_(2)成分 0?30.0モル%、 Nb_(2)O_(5)成分 0?15.0モル%、 WO_(3)成分 0?15.0モル%、 Ta_(2)O_(5)成分 0?5.0モル%、 SiO_(2)成分 0?60.0モル%、 Na_(2)O成分 0?25.0モル%、 K_(2)O成分 0?20.0モル%、 Cs_(2)O成分 0?10.0モル%、 MgO成分 0?25.0モル%、 CaO成分 0?20.0モル%、 SrO成分 0?15.0モル%、 BaO成分 0?35.0モル%、 P_(2)O_(5)成分 0?15.0モル%、 GeO_(2)成分 0?10.0モル%、 ZrO_(2)成分 0?20.0モル%、 Al_(2)O_(3)成分 0?20.0モル%、 Ga_(2)O_(3)成分 0?5.0モル%、 Bi_(2)O_(3)成分 0?5.0モル%、 TeO_(2)成分 0?20.0モル%、 SnO_(2)成分 0?0.3モル%、又は Sb_(2)O_(3)成分 0?0.5モル% 【0070】 [製造方法] 本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1100?1500℃の温度範囲で2?5時間熔融し、攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製される。 【0071】 [物性] 本発明の光学ガラスは、高屈折率及び高アッベ数(低分散)を有することが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの屈折率(n_(d))は、好ましくは1.75、より好ましくは1.80、さらに好ましくは1.83を下限とする。この屈折率の上限は、好ましくは2.20、より好ましくは2.15、さらに好ましくは2.10であってもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν_(d))は、好ましくは35、より好ましくは37、さらに好ましくは39を下限とし、好ましくは50、より好ましくは47、さらに好ましくは45を上限とする。 このような高屈折率を有することで、光学素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。また、このような低分散を有することで、単レンズであっても光の波長による焦点のずれ(色収差)が小さくなる。加えて、このような低分散を有することで、例えば高分散(低いアッベ数)を有する光学素子と組み合わせた場合に、高い結像特性等を図ることができる。 従って、本発明の光学ガラスは、光学設計上有用であり、特に高い結像特性等を図りながらも、光学系の小型化を図ることができ、光学設計の自由度を広げることができる。 【0072】 本発明の光学ガラスは、耐失透性が高いこと、より具体的には、低い液相温度を有することが好ましい。すなわち、本発明の光学ガラスの液相温度は、好ましくは1300℃、より好ましくは1290℃、さらに好ましくは1280℃を上限とする。これにより、より低い温度で熔融ガラスを流出しても、作製されたガラスの結晶化が低減されるため、特に熔融状態からガラスを形成したときの失透を低減でき、ガラスを用いた光学素子の光学特性への影響を低減できる。また、ガラスの熔解温度を低くしてもガラスを成形できるため、ガラスの成形時に消費するエネルギーを抑えることで、ガラスの製造コストを低減できる。一方、本発明の光学ガラスの液相温度の下限は特に限定しないが、本発明によって得られるガラスの液相温度は、好ましくは500℃、より好ましくは600℃、さらに好ましくは700℃を下限としてもよい。なお、本明細書中における「液相温度」は、50mlの容量の白金製坩堝に30ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1350℃で完全に熔融状態にし、所定の温度まで降温して12時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察し、結晶が認められない一番低い温度を表す。ここで降温する際の所定の温度は、1300℃までの10℃刻みの温度である。 【0073】 本発明の光学ガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、それにより着色が少ないことが好ましい。 特に、本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ_(70))は、好ましくは500nm、より好ましくは450nm、さらに好ましくは400nmを上限とする。 また、本発明の光学ガラスにおける、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ_(5))は、好ましくは400nm、より好ましくは380nm、さらに好ましくは360nmを上限とする。 これらにより、ガラスの吸収端が紫外領域の近傍になり、可視光に対するガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスを、レンズ等の光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。 【0074】 本発明の光学ガラスは、低い部分分散比(θg,F)を有することが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、アッベ数(ν_(d))との間で、(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6571)≦(θg,F)≦(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6971)の関係を満たすことが好ましい。これにより、部分分散比(θg,F)の小さい光学ガラスが得られるため、光学ガラスを光学素子の色収差の低減等に役立てられる。 従って、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6571)、より好ましくは(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6591)、さらに好ましくは(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6611)を下限とする。 一方で、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6971)、より好ましくは(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6921)、さらに好ましくは(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6871)を上限とする。 【0075】 本発明の光学ガラスは、比重が小さいことが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの比重は5.50[g/cm^(3)]以下であることが好ましい。これにより、光学素子やそれを用いた光学機器の質量が低減されるため、光学機器の軽量化に寄与できる。従って、本発明の光学ガラスの比重は、好ましくは5.50、より好ましくは5.30、好ましくは5.10を上限とする。なお、本発明の光学ガラスの比重は、概ね3.00以上、より詳細には3.50以上、さらに詳細には4.00以上であることが多い。 本発明の光学ガラスの比重は、日本光学硝子工業会規格JOGIS05-1975「光学ガラスの比重の測定方法」に基づいて測定する。 【0076】 [ガラス成形体及び光学素子] 作製された光学ガラスから、例えば研磨加工の手段、又は、リヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製したり、光学ガラスから作製したプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、研磨加工を行って作製したプリフォームや、公知の浮上成形等により成形されたプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりすることができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。 【0077】 このように、本発明の光学ガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用であるが、その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子に用いることが好ましい。これにより、径の大きなガラス成形体の形成が可能になるため、光学素子の大型化を図りながらも、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。 【実施例】 【0078】 本発明の実施例(No.1?No.116)及び比較例(No.A)の組成、並びに、これらのガラスの屈折率(n_(d))、アッベ数(ν_(d))、部分分散比(θg,F)、液相温度、分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ_(5)及びλ_(70))並びに比重の結果を表1?表16に示す。このうち、実施例1?18、20?24、28?30、33、37?39、42、44?46、50、70、71、75?77、79、80、89、91、92、95?98、101?104、107?116は、本発明の参考例である。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。 【0079】 本発明の実施例及び比較例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した各実施例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1100?1500℃の温度範囲で2?5時間熔融した後、攪拌均質化してから金型等に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。 【0080】 ここで、実施例及び比較例のガラスの屈折率、アッベ数、及び部分分散比(θg,F)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS01?2003に基づいて測定した。そして、求められたアッベ数及び部分分散比の値について、関係式(θg,F)=-a×ν_(d)+bにおける、傾きaが0.0025のときの切片bを求めた。ここで、屈折率、アッベ数、及び部分分散比は、徐冷降温速度を-25℃/hrにして得られたガラスについて測定を行うことで求めた。 【0081】 また、実施例及び比較例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200?800nmの分光透過率を測定し、λ_(5)(透過率5%時の波長)及びλ_(70)(透過率70%時の波長)を求めた。 【0082】 また、実施例及び比較例のガラスの液相温度は、50mlの容量の白金製坩堝に30ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1350℃で完全に熔融状態にし、1300℃?1160℃まで10℃刻みで設定したいずれかの温度まで降温して12時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察し、結晶が認められない一番低い温度を求めた。 【0083】 また、実施例及び比較例のガラスの比重は、日本光学硝子工業会規格JOGIS05-1975「光学ガラスの比重の測定方法」に基づいて測定した。 【0084】 【表1】 【0085】 【表2】 【0086】 【表3】 【0087】 【表4】 【0088】 【表5】 【0089】 【表6】 【0090】 【表7】 【0091】 【表8】 【0092】 【表9】 【0093】 【表10】 【0094】 【表11】 【0095】 【表12】 【0096】 【表13】 【0097】 【表14】 【0098】 【表15】 【0099】 【表16】 【0100】 本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも液相温度が1300℃以下、より詳細には1220℃以下であり、所望の範囲内であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、液相温度が低く、耐失透性が高いことが明らかになった。 【0101】 また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ_(70)(透過率70%時の波長)がいずれも500nm以下、より詳細には391nm以下であった。また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ_(5)(透過率5%時の波長)がいずれも400nm以下、より詳細には341nm以下であった。 【0102】 また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n_(d))が1.75以上、より詳細には1.85以上であるとともに、この屈折率は2.20以下、より詳細には1.95以下であり、所望の範囲内であった。 【0103】 また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν_(d))が35以上、より詳細には39以上であるとともに、このアッベ数は50以下、より詳細には42以下であり、所望の範囲内であった。 【0104】 また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも部分分散比(θg,F)が(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6571)以上、より詳細には(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6691)以上であった。その反面で、本発明の実施例の光学ガラスの部分分散比(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6971)以下、より詳細には(-2.50×10^(-3)×ν_(d)+0.6761)以下であった。そのため、これらの部分分散比(θg,F)が所望の範囲内にあることがわかった。 【0105】 また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも比重が5.50以下、より詳細には4.96以下であり、所望の範囲内であった。 【0106】 従って、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にありながらも安価に作製でき、耐失透性が高く、着色が少なく、且つ比重が小さいことが明らかになった。 【0107】 さらに、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、ガラスブロックを形成し、このガラスブロックに対して研削及び研磨を行い、レンズ及びプリズムの形状に加工した。その結果、安定に様々なレンズ及びプリズムの形状に加工することができた。 【0108】 以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 質量%で B_(2)O_(3)成分を10.5?24.0%、 SiO_(2)成分を3.0?10.0%、 La_(2)O_(3)成分を35.0?55.0%、 Nb_(2)O_(5)成分を2.0%超?10.0%、 ZrO_(2)成分を1.0?8.0% 含有し、 Gd_(2)O_(3)成分の含有量が6.30%以下(但し、Gd_(2)O_(3)成分の含有量が1重量%以上であるものを除く)、 WO_(3)成分の含有量が5.20%以下、 Ta_(2)O_(5)成分の含有量が1.0%未満、 ZnO成分の含有量が0?6.65%、 Y_(2)O_(3)成分の含有量が11.10?16.10%、 P_(2)O_(5)成分の含有量が0?5.0% であり、 鉛成分を含有せず、 B_(2)O_(3)成分及びSiO_(2)成分の含有量の和が15.0%以上27.0%以下、 Gd_(2)O_(3)成分、Yb_(2)O_(3)成分及びTa_(2)O_(5)成分の含有量の和が10.0%以下、 TiO_(2)成分、Nb_(2)O_(5)成分及びWO_(3)成分の含有量の和が4.0%超?14.0%、 RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和が6.65%以下、 Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が48.0%?60.0% であり、 1.83以上の屈折率(n_(d))を有し、35以上50以下のアッベ数(ν_(d))を有し、 1150℃以下の液相温度を有し、 前記液相温度は、ガラス試料を完全に熔融状態にし、1300℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度である、光学ガラス。 【請求項2】 請求項1記載の光学ガラスを母材とする光学素子。 【請求項3】 請求項2記載の光学素子を備える光学機器。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2018-02-15 |
結審通知日 | 2018-02-19 |
審決日 | 2018-03-02 |
出願番号 | 特願2012-278573(P2012-278573) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(C03C)
P 1 41・ 853- Y (C03C) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 立木 林、武重 竜男 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 山崎 直也 |
登録日 | 2017-02-24 |
登録番号 | 特許第6095356号(P6095356) |
発明の名称 | 光学ガラス及び光学素子 |
代理人 | 新山 雄一 |
代理人 | 正林 真之 |
代理人 | 正林 真之 |
代理人 | 新山 雄一 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 林 一好 |