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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1339409
審判番号 不服2017-3879  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-16 
確定日 2018-04-12 
事件の表示 特願2012-201571「導電性薄型粘着シート」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日出願公開、特開2014- 56967〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年9月13日の出願であって、平成28年7月25日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年9月12日付けで意見書が提出されたが、同年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年3月16日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年3月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「グラファイトシートと粘着シートを積層した電磁波シールドシートに使用する粘着シートであって、厚み2?40μmの導電性基材の両面に、導電性粒子を5?60質量%含有する導電性粘着剤層を設けており、厚みが5?60μmであることを特徴とする導電性粘着シート。」

なお、平成29年3月16日付け手続補正による特許請求の範囲の補正は、実質的に補正前の請求項2を独立形式として補正後の請求項1とし、補正前の請求項1を削除したものであるとみることができ、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-280433号公報(以下、「引用例」という。)には、「グラファイト複合フイルム」について、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、精密機器などで放熱部材として使用されるグラファイト複合フィルムに関し、特に放熱特性を損なわずグラファイトのグランド処理を可能としたグラファイト複合フィルムに関する。」

(2)「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、グラファイトフィルムと導電性を有する粘着層を含むグラファイト複合フィルムであって、前記粘着層の表面抵抗が10^(1)Ω/□以上、10^(11)Ω/□以下であり、前記グラファイトフィルムの表面の一部に導電性を有する粘着材、または導電性を有する接着材が形成されている事を特徴とするグラファイト複合フィルムである。」

(3)「【0025】
(本発明に使用される粘着層)
本発明に使用される粘着層を有する材料の構成は、粘着層からなるフィルム、粘着層/基材からなるフィルム、粘着層/基材/粘着層などが想定される。上述の一例としては、それぞれ、基材なしの両面テープ、片面のプラスチックテープ、基材ありの両面テープなどがある。ただし、ここに示した粘着層を有する材料の構成は、あくまでも一例であり、これらに限定されるものではない。
・・・・・(中 略)・・・・・
(導電性を付与するフィラーに関して)
本発明に使用される粘着層に添加される導電性フィラーの材質としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン等の金属酸化物系フィラー、銅・アルミ・ニッケル・クロムなどの金属系フィラー、グラファイト粉末や・カーボン繊維・カーボン微粒子などのカーボン系フィラー、樹脂の微粒子に金属などを被覆したものなどが好適に用いられる。またイオン導電性高分子を粘着剤の主成分として用いる事でも所望の導電性を得る事が出来る。
(粘着層に添加する導電性フィラーの添加量)
本発明に使用される粘着層に添加される導電性フィラーの添加量は、10%以上、200%以下である事が好ましい。粘着層に添加される導電性フィラーの添加量が200%より多いと、粘着層の粘着力が大きく劣化するために、粘着層の厚みを増加させなければならない。このような粘着層を用いたグラファイト複合フィルムでは、発熱体の熱をグラファイトにスムーズに伝えることができないために、放熱特性が劣化してしまう。また導電性のフィラーの添加量が10%より少ないと十分な導電性を得る事は難しく、どちらの場合も導電性粘着層としては好ましくない。なお、「%」は「質量%」を示すものであり、粘着材のベースポリマーに対する導電性フィラーの割合である。
・・・・・(中 略)・・・・・
(粘着層の厚み)
本発明に使用される粘着層の厚みは1μm以上50μm以下、好ましくは3μm以上40μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。粘着層の厚みが50μmより厚い場合、グラファイトフィルムの熱輸送能力に対する粘着層を有する材料の厚みが増加するため、発熱体の熱をグラファイトにスムーズに伝えることができないために、グラファイト複合フィルムの放熱特性が劣化してしまう。また、粘着層の厚みが1μmより薄い場合は、粘着力が十分でないため良くない。
(基材の材質)
本発明に使用される粘着層の基材は、導電性を損なわない為に基材自体が電気伝導性を有するものが好ましい。導電性を有する基材としては金属箔が好ましく用いられ、この中でも特に銅箔やアルミ箔等が好適に用いられる。基材の厚みは1μm以上80μm以下、好ましくは3μm以上60μm以下である。基材の厚みが80μmより厚い場合、フィルム自体のコシが悪くなり作業性やリワーク性が低下するといった恐れがある。また基材が絶縁性の高分子フィルムであっても導通が取れていれば良いので、例えば高分子フィルム基材の一部に穴が開いていたり、メッシュや織布加工を施したりして導電性粘着材を貫通させれば導電性を得る事が出来る。また、高分子フィルムメッシュや織布自体を銅やアルミなどを金属で被服したものを基材として用いる事も効果的である。」

・上記(1)の記載事項によれば、グラファイト複合フィルムは電子機器、精密機器などで放熱部材として使用されるものである。
・上記(2)の記載事項によれば、グラファイト複合フィルムはグラファイトフィルムの表面に導電性を有する粘着層が形成されてなるものである。
・上記(3)の記載事項によれば、導電性を有する粘着層を有する材料の構成としては、粘着層/基材/粘着層の基板ありの両面テープがある。
そして、粘着層に添加される導電性フィラーとしては、例えば銅・アルミ・ニッケルなどの金属系フィラーが用いられ、その添加量は10?200質量%であり、粘着層の厚みは、最も好ましくは5μm以上30μm以下である。
また、基材は、銅箔やアルミ箔など基材自体が電気伝導性を有し、厚みは好ましくは3μm以上60μm以下である。

したがって、「グラファイト複合フィルム」のうち、グラファイトフィルムの表面に形成される「導電性を有する粘着層」に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「グラファイトフィルムの表面に導電性を有する粘着層を形成したグラファイト複合フィルムにおける、導電性を有する粘着層であって、
粘着層/基材/粘着層の基板あり両面テープの構成であり、
前記基材は、厚みが好ましくは3μm以上60μm以下の銅箔やアルミ箔など電気伝導性を有するものであり、
前記粘着層は、導電性フィラーとして銅・アルミ・ニッケルなどの金属系フィラーが10?200質量%添加された導電性を有するものであって、厚みが好ましくは5μm以上30μm以下である、導電性を有する粘着層。」

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明における「グラファイトフィルムの表面に導電性を有する粘着層を形成したグラファイト複合フィルムにおける、導電性を有する粘着層であって、粘着層/基材/粘着層の基板あり両面テープの構成であり」によれば、
引用発明における「グラファイトフィルム」は、本願発明でいう「グラファイトシート」に相当し、
引用発明における「導電性を有する粘着層」は、「粘着層/基材/粘着層の基板ありの両面テープ」の構成であり、シート状といえるものであるから、本願発明でいう「(導電性)粘着シート」に相当する。
そして、引用発明における、グラファイトフィルムの表面に導電性を有する粘着層を形成した「グラファイト複合フィルム」と、本願発明でいう「電磁波シールドシート」とは、「シート」である点で共通するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「グラファイトシートと粘着シートを積層したシートに使用する粘着シート」である点で共通する。
ただし、グラファイトシートと粘着シートを積層したシートについて、本願発明では「電磁波シールド」シートと特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定がない点で一応相違している。

(2)引用発明における「粘着層/基材/粘着層の基板あり両面テープの構成であり、前記基材は、厚みが好ましくは3μm以上60μm以下の銅箔やアルミ箔など電気伝導性を有するものであり、前記粘着層は、導電性フィラーとして銅・アルミ・ニッケルなどの金属系フィラーが10?200質量%添加された導電性を有するものであって、厚みが好ましくは5μm以上30μm以下である・・」によれば、
(a)引用発明における「基材」は、電気伝導性を有するものであるから、本願発明でいう「導電性基材」に相当する。
そして、引用発明における「基材」は、厚みが3μm以上60μm以下の範囲を好ましい範囲とするものであり、本願発明で特定する「厚み2?40μm」のうちの「厚み3?40μm」の範囲で重複一致する。
(b)また、引用発明における、粘着層/基材/粘着層の基板あり両面テープを構成している「粘着層」は、基材の両面に設けられてなるものであり、導電性フィラー(本願発明でいう「導電性粒子」に相当)が添加されて導電性を有するものであるから、本願発明でいう「導電性粘着剤層」に相当する。
そして、引用発明の「粘着層」における導電性フィラーの添加量は、10?200質量%の範囲であり、本願発明で特定する「5?60質量%」のうちの「10?60質量%」の範囲で重複一致する。
(c)さらに、引用発明における「基材」の厚みは3?60μmの範囲を好ましい範囲とし、その両面に設けられる各「粘着層」の厚みは5?30μmの範囲を好ましい範囲とするものであることから、「基材」の厚みとその両面に設けられてなる2つの「粘着層」の厚みとを加算した厚みは13?120μmの範囲であり、本願発明で特定する「厚みが5?60μm」のうち「厚みが13?60μm」の範囲で重複一致する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「グラファイトシートと粘着シートを積層したシートに使用する粘着シートであって、厚み3?40μmの導電性基材の両面に、導電性粒子を10?60質量%含有する導電性粘着剤層を設けており、厚みが13?60μmである導電性粘着シート。」の発明である点で一致し、次の点で一応相違する。

[一応の相違点]
グラファイトシートと粘着シートを積層したシートについて、本願発明では「電磁波シールド」シートと特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定がない点

5.判断
上記一応の相違点について検討する。
引用例の段落【0005】に記載のように、引用発明における「グラファイト複合フィルム」は、電磁波ノイズ対策が必須の電子機器の放熱部材として使用されるものであるところ、
引用発明においても、グラファイトフィルムの表面に形成され、粘着層/基材/粘着層の基板あり両面テープの構成である「導電性を有する粘着層」は、その「基材」が銅箔やアルミ箔からなり、「粘着層」についても銅・アルミ・ニッケルなどの金属系フィラーが添加されてなるものであることから、引用発明における「グラファイト複合フィルム」は、電子機器の電磁波ノイズ対策に有効な導電性を備え、「電磁波シールドシート」として機能するものであるといえる。
したがって、かかる一応の相違点は、実質的な相違点ではない。

よって、本願発明は、引用発明と実質的に相違するところがなく同一である。

6.むすび
以上のとおりであるから,本願請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-14 
結審通知日 2018-02-15 
審決日 2018-02-27 
出願番号 特願2012-201571(P2012-201571)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三森 雄介馬場 慎  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
國分 直樹
発明の名称 導電性薄型粘着シート  
代理人 小川 眞治  
代理人 大野 孝幸  
代理人 根岸 真  
代理人 岩本 明洋  

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