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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04R |
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管理番号 | 1339558 |
審判番号 | 不服2017-219 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-06 |
確定日 | 2018-04-19 |
事件の表示 | 特願2015-154105「イヤホン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月10日出願公開、特開2015-222987〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年1月12日に出願した特願2006-5412号の一部を平成21年3月6日に新たな出願とした特願2009-53594号の一部を平成25年2月8日にさらに新たな出願とした特願2013-23155号の一部を同年6月28日にさらに新たな出願とした特願2013-135957号の一部を平成26年4月30日にさらに新たな出願とした特願2014-93856号の一部を平成27年8月4日にさらに新たな出願としたものであって、平成28年4月6日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月11日付けで意見書が提出されたが、同年10月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年1月6日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。 その後、当審の平成29年11月9日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月27日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成29年12月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 使用者の耳珠と対珠との間の距離よりも大きな外形を有するハウジングと、 前記使用者の耳介に装着された状態で、前記ハウジングの前面の中央よりも前記使用者の耳珠側に根元部が寄って位置し、且つ前記ハウジングの前面の中央に対して先端部が離れる方向に向かって突設する音導管と、 弾力性を有する部材で形成され前記音導管の前記先端部において当該先端部よりも前方へ突出し、外耳道の形状に適合して変形且つ密着することにより、前記音導管が少なくとも耳甲介腔内よりも前記使用者側に配置され、前記ハウジングにおける、前記音導管が突設する側とは異なる側の一部が耳甲介腔内よりも外側に配置されるように保持するイヤピースと を有するイヤホン。」 3.引用例 当審の拒絶の理由に引用された実願昭63-33814号(実開平1-137691号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「イヤースピーカ」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (1)「2.実用新案登録請求の範囲 (1)スピーカを内蔵した筐体部が、耳介の耳甲介腔内及びこれにつらなる耳珠と対珠との間のくぼみ部に位置するように配置され、この筐体部に設けられた音孔筒状部が、更に外耳道に進入する如く延びた形状であり、前記スピーカが前記音孔筒状部の中空入口にほぼ対向して配置されていることを特徴とするイヤースピーカ。」(1頁4?11行) (2)「第1図はこの考案の一実施例である。第1図は左耳介用のもので、同図(a)は正面から見た図、同図(b)は側面から見た図である。また同図(c)は断面図、同図(d)は上方からみた図である。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 第1図に戻って説明するに、筐体部50は、正面から見ると、その前面部51が、卵のように湾曲しており、これに対向した背面部53は、平坦である。また、前面部51には、偏心位置の斜め下方に、突出して音孔筒状部52が形成され、その中空は筐体部50の内部空洞に通じている。音孔筒状部52も先端は丸みを帯びて形成されている。次に、筐体部50には、首部54が一体に形成されており、首部54は、リード線56を案内する案内部55と筐体部50を一体に連結している。」(5頁19行?6頁19行) (3)「この実施例によると、耳に装着した場合、第2図に示すように、耳の耳珠300と対珠400との間のくぼみ部500に案内部55が位置する。しかも筐体部50は、耳甲介腔100内にほぼ密着してはまり込み、この状態で外耳道200には音孔筒状部52が進入する形となる。」 ・上記引用例に記載の「イヤースピーカ」は、上記(1)?(3)の記載事項、及び第1図、第2図によれば、スピーカ60を内蔵した筐体部50が耳介の耳甲介腔100内にはまり込み、筐体部50と一体に形成され、リード線56を案内する案内部55が耳珠300と対珠400との間の耳甲介腔100につらなるくぼみ部500に位置するように配置され、この状態で筐体部50に設けられた音孔筒状部52が外耳道200に進入する如く延びた形状であるイヤースピーカである。 ・上記(2)の記載事項、及び第1図、第2図によれば、音孔筒状部52は、筐体部50の前面部51の中心から使用者の耳珠300側に偏心した位置から、その先端側が筐体部50の前面部51の中心から離れる方向に傾斜して突設されてなるものである。 ・第2図(b)(c)から明らかなように、耳甲介腔100内にはまり込む筐体部50は、使用者の耳珠300と対珠400との間の距離よりも大きな外形を有している。 したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「スピーカを内蔵し、使用者の耳珠と対珠との間の距離よりも大きな外形を有した筐体部が耳介の耳甲介腔内にはまり込み、前記筐体部と一体に形成され、リード線を案内する案内部が耳珠と対珠との間の前記耳甲介腔につらなるくぼみ部に位置するように配置され、この状態で前記筐体部に設けられた音孔筒状部が、外耳道に進入する如く延びた形状であるイヤースピーカであって、 前記音孔筒状部は、前記筐体部の前面部の中心から使用者の耳珠側に偏心した位置から、その先端側が前記筐体部の前面部の中心から離れる方向に傾斜して突設されてなる、イヤースピーカ。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明における「スピーカを内蔵し、使用者の耳珠と対珠との間の距離よりも大きな外形を有した筐体部が耳介の耳甲介腔内にはまり込み、前記筐体部と一体に形成され、リード線を案内する案内部が耳珠と対珠との間の前記耳甲介腔につらなるくぼみ部に位置するように配置され・・」によれば、 引用発明における「筐体部」に、当該筐体部と一体に形成された「案内部」も含めたものが、本願発明でいう「ハウジング」に相当するとみることができ、 また、引用発明の「筐体部」は、使用者の耳珠と対珠との間の距離よりも大きな外形を有していることから、 本願発明と引用発明とは、「使用者の耳珠と対珠との間の距離よりも大きな外形を有するハウジング」を有するものである点で一致する。 (2)引用発明における「・・この状態で前記筐体部に設けられた音孔筒状部が、外耳道に進入する如く延びた形状であるイヤースピーカであって、前記音孔筒状部は、前記筐体部の前面部の中心から使用者の耳珠側に偏心した位置から、その先端側が前記筐体部の前面部の中心から離れる方向に傾斜して突設されてなる・・」によれば、 引用発明における「音孔筒状部」は、本願発明でいう「音導管」に相当し、 引用発明の「音孔筒状部」にあっても、使用者の耳介に装着された状態において、筐体部の前面部の中心から使用者の耳珠側に偏心した位置から、その先端側が筐体部の前面部の中心から離れる方向に傾斜して突設されてなるものであることから、 本願発明と引用発明とは、「前記使用者の耳介に装着された状態で、前記ハウジングの前面の中央よりも前記使用者の耳珠側に根元部が寄って位置し、且つ前記ハウジングの前面の中央に対して先端部が離れる方向に向かって突設する音導管」を有するものである点で一致するといえる。 (3)そして、引用発明における「イヤースピーカ」は、本願発明でいう「イヤホン」に相当するものである。 よって、本願発明と引用発明とは、 「使用者の耳珠と対珠との間の距離よりも大きな外形を有するハウジングと、 前記使用者の耳介に装着された状態で、前記ハウジングの前面の中央よりも前記使用者の耳珠側に根元部が寄って位置し、且つ前記ハウジングの前面の中央に対して先端部が離れる方向に向かって突設する音導管と を有するイヤホン。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本願発明では、「弾力性を有する部材で形成され前記音導管の前記先端部において当該先端部よりも前方へ突出し、外耳道の形状に適合して変形且つ密着することにより、前記音導管が少なくとも耳甲介腔内よりも前記使用者側に配置され、前記ハウジングにおける、前記音導管が突設する側とは異なる側の一部が耳甲介腔内よりも外側に配置されるように保持するイヤピース」を有するのに対し、引用発明では、そのようなイヤピースを有していない点。 5.判断 上記[相違点]について検討する。 引用発明においても、「筐体部」が耳甲介腔内にはまり込み、「音孔筒状部」は耳甲介腔内よりも使用者側である外耳道に配置され、「案内部」(本願発明でいう「ハウジングにおける、音導管が突設する側とは異なる側の一部」に相当)が耳甲介腔内よりも外側に配置されるものである(引用例の第2図(b)(c)も参照)。そして、引用発明にあっても、外部への音洩れが少なく、耳への装着性を良くすることが求められるものである(例えば引用例の4頁9?19行、5頁10?15行の記載を参照)ところ、 例えば当審の拒絶の理由に引用された特開2000-341784号公報(特に段落【0002】、【0013】、【0018】?【0019】、図2を参照)に見られるように、耳介の凹部に装着される大きさを有するハウジングと、当該ハウジングの前面から突出し、外耳道に挿入される耳介挿入部(本願発明でいう「音導管」に相当)とを有するイヤホンにおいて、外耳道を密閉するとともに良好な装着感が得られるように、耳介挿入部の先端側に、外耳道の形状に合わせて弾性変形する耳介装着部材(いわゆるイヤーピース)を設けることは周知といえる技術事項であり、引用発明においても、より外部への音洩れを無くし、耳への装着性を良くするためにかかる周知の技術事項を採用し、相違点に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。 なお、請求人は平成29年12月27日付け意見書において、「そもそも引用文献2ではイヤースピーカ自体を筐体部50自身によって支持しており、一方引用文献3ではイヤホンを耳介挿入部15に取り付けられた耳介装着部材17によって支持している。このように引用文献2と引用文献3との構成は明らかに異なるため、引用文献2と引用文献3とを組み合わせることは困難である」旨主張している。 しかしながら、上述のように、引用発明に係るイヤースピーカ(引用文献2に記載のイヤースピーカ)と上記特開2000-341784号公報に記載のイヤホン(引用文献3に記載のイヤホン)とは、ハウジングの大部分が耳甲介腔内に配置され、音導管が外耳道に挿入される構成のものである点で共通することを踏まえると、両者を組み合わせることに困難性(あるいは阻害要因)があるとはいえず、請求人の上記主張を採用することはできない。 そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 なお、本願発明の「・・前記ハウジングにおける、前記音導管が突設する側とは異なる側の一部が耳甲介腔内よりも外側に配置される・・」という構成について、音導管が突設する側とは異なるどの部分が、何のために、あるいはどの程度耳甲介腔内よりも外側に配置されるのか何ら特定がないことから、当該構成によって格別の作用効果が得られるものとは認められない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-16 |
結審通知日 | 2018-02-20 |
審決日 | 2018-03-06 |
出願番号 | 特願2015-154105(P2015-154105) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千本 潤介 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
井上 信一 國分 直樹 |
発明の名称 | イヤホン |
代理人 | 田辺 恵基 |