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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1339566
審判番号 不服2017-5285  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-13 
確定日 2018-04-19 
事件の表示 特願2015-134917「画像形成装置及びユーザ認証方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月 7日出願公開、特開2016- 1475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成22年5月12日に出願した特願2010-109887号(以下,「原出願」という。)の一部を平成27年7月6日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 5月31日付け :拒絶理由の通知
平成28年 8月 2日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 1月12日付け :拒絶査定
平成29年 4月13日 :審判請求書の提出

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は,上記平成28年8月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりのものであると認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
画像データを登録する記憶手段を備えた画像形成装置であって,
該画像形成装置を使用するユーザを認証する第1の認証手段と,該認証されたユーザに対して前記画像データへのアクセス権限の有無を判定する判定手段と,該判定手段による判定結果に基づいて前記画像データにアクセスするユーザを認証する第2の認証手段とを備え,
該第2の認証手段は,前記判定手段によりユーザにアクセス権限が有ると判定された場合,画像データの画像を視認可能に表示することなく,ユーザの認証情報を入力するための認証情報入力画面を表示させ,前記判定手段によりユーザにアクセス権限が無いと判定された場合,前記認証情報入力画面を非表示とすることを特徴とする画像形成装置。」

第3 引用例

1 引用例1に記載されている技術的事項および引用発明

(1)原出願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成28年5月31日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2004-362478号公報(平成16年12月24日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0030】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して,本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は,本発明の画像データ管理システムの構成を示す図である。本発明の画像データ管理システムは,画像形成装置1と各ユーザが使用するPC(パーソナルコンピュータ)2,3がインターネットまたはLAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク4を介して接続されて構成される。
【0031】
画像形成装置1は,スキャナ機能その他,コピー,ファックス,プリンタなどの複数の機能をもつマルチファンクション機器として構成され,コンタクトガラスやADF(自動原稿送り装置)を使用して,原稿や写真などの紙媒体の画像に対して光学的にスキャニングを行い電子データ化することができる。また,この画像形成装置1は,ネットワーク4に接続するための機能(IPアドレスの割り当てや,ネットワーク・インターフェース・カードの装備など)を有するため,各ユーザのPC2,3からネットワーク4を介して遠隔操作を行うことができる。また,画像形成装置1は,本体自体もしくは外部にメールサーバをもち,電子メールの送受信も行える。
【0032】
また,画像形成装置1には,特に図示しないが,画像データとのアクセスを許可する複数のユーザに対して自動的に重複しない固有のパスワードを割り当てる画像データ管理手段と,前記画像データを送信する画像データ送信手段と,前記画像データの内容を表示するためのハイパーテキストを作成するハイパーテキスト作成手段が備えられている。さらに,画像形成装置1にはハードディスク5が備えられており,画像形成装置1にて取得された画像データを蓄積することができる。画像データの他にハイパーテキストデータや,セキュリティ目的のユーザ情報なども格納できる。なお,ハードディスク5は,画像形成装置1の内部または外部に備えられる。」

B 「【0042】
次に,メールを受信したユーザが当該メールに示された画像データを閲覧するためのハイパーテキストへのリンク先にアクセスし,画像データを取得するまでの処理手順を説明する。図4はこの処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
まず,ユーザは,画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメールを受信すると(ステップS401),そのリンク先に自らのPCによりブラウザにてアクセスする(ステップS402)。このときユーザのPCは所定のリンク先にアクセスできたか否かを確認する(ステップS403)。所定のリンク先にアクセスできなかった場合(ステップS403:No)は,処理終了となる。所定のリンク先にアクセスできた場合(ステップS403:Yes)は,画像形成装置1はユーザに対してユーザ情報(ユーザ名とパスワード)を入力するよう要求する(ステップS404)。この要求を待って,ユーザはPCからユーザ情報を入力する(ステップS405)。このとき,画像形成装置1にすでに登録されているユーザは自分のユーザ名とメールに記載されているパスワードを,メールアドレスの直接入力で一時的なユーザとされているユーザはメールに記載されているユーザ名とパスワードを入力する。
【0044】
次に,画像形成装置1は入力されたユーザ名とパスワードが当該画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する(ステップS406)。当該画像データへのアクセス権がない場合(ステップS406:No)は,認証エラーとなり(ステップS407),処理終了となる。当該画像データとのアクセス権ありと判断された場合(ステップS406:Yes)は,ハイパーテキストデータが転送され(ステップS408),ブラウザにサムネイルと共に表示される(ステップS409)。その表示例を図5に示す。」

C 「【0045】
次に,ユーザが画像データを取得したい場合には,ブラウザの表示内にある「取得」もしくはサムネイルをマウスのクリックなどによって画像形成装置1に対して画像データの取得要求を送信する(ステップS410)。画像データの取得要求を受けた画像形成装置1は,ユーザに対して再度ユーザ名とパスワードを入力するように促す(ステップS411)。ユーザは,PCから再度ユーザ名とパスワードを入力する(ステップS412)。このとき,画像形成装置1にすでにユーザ登録されているユーザの場合,当該リンク先へのアクセス用のパスワード(メールに添付されてきたパスワード)ではなく,画像形成装置1に登録されているユーザのパスワードを入力する。一方,メールアドレスの直接入力により一時的にユーザ名が割り当てられているユーザは,画像オーナーが読み取り開始前の送り先指定時に設定したパスワードを入力する。すなわち,一時的なユーザは画像オーナーから別途,パスワードを通知してもらう必要がある。
【0046】
次いで,画像形成装置1は入力されたユーザ名とパスワードにより,当該画像データへのアクセス権の有無を判断する(ステップS413)。当該画像データへのアクセス権がない場合(ステップS413:No)は,認証エラーとなり(ステップS414),処理終了となる。当該画像データへのアクセス権が確認された場合(ステップS413:Yes)は,当該ユーザのPCに対して画像データが転送され(ステップS415),画像データのダウンロードが開始される(ステップS416)。」

(2)ここで,引用例1に記載されている事項を検討する。

ア 上記Aの段落【0031】の「画像形成装置1は,スキャナ機能その他,コピー,ファックス,プリンタなどの複数の機能をもつマルチファンクション機器として構成され,…(中略)… また,この画像形成装置1は,ネットワーク4に接続するための機能(IPアドレスの割り当てや,ネットワーク・インターフェース・カードの装備など)を有するため,各ユーザのPC2,3からネットワーク4を介して遠隔操作を行うことができる。」との記載,段落【0032】の「また,画像形成装置1には,特に図示しないが,画像データとのアクセスを許可する複数のユーザに対して自動的に重複しない固有のパスワードを割り当てる画像データ管理手段と,前記画像データを送信する画像データ送信手段と,…(中略)… が備えられている。さらに,画像形成装置1にはハードディスク5が備えられており,画像形成装置1にて取得された画像データを蓄積することができる。」との記載からすると,「画像形成装置」は,ユーザの「PC」とネットワークを介して接続され,複数の機能をもつ「マルチファンクション機器」として構成され,「ハードディスク」,「画像データ送信手段」,「画像データ管理手段」を備えるとともに,「ハードディスク」は,取得された画像データを蓄積することが読み取れるから,引用例1には,
“ユーザのPCとネットワークを介して接続されたマルチファンクション機器として構成され,取得された画像データを蓄積するハードディスクと,前記画像データを送信する画像データ送信手段と,前記画像データとのアクセスを許可する複数のユーザに対して自動的に重複しない固有のパスワードを割り当てる画像データ管理手段と,を備えた画像形成装置”
が記載されていると解される。

イ 上記Bの【0043】の「まず,ユーザは,画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメールを受信すると(ステップS401),そのリンク先に自らのPCによりブラウザにてアクセスする(ステップS402)。…(中略)… 所定のリンク先にアクセスできた場合(ステップS403:Yes)は,画像形成装置1はユーザに対してユーザ情報(ユーザ名とパスワード)を入力するよう要求する(ステップS404)。」との記載からすると,「ユーザ」は「画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメールを受信」し,「画像形成装置」は,当該「ユーザ」に対して「ユーザ情報(ユーザ名とパスワード)」を要求する“要求手段”を実質的に備えることが読み取れるから,引用例1には,
“画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメールを受信したユーザに対して,ユーザ情報(ユーザ名とパスワード)を入力するよう要求する要求手段”
を備えた画像形成装置が記載されていると解される。

ウ 上記Bの段落【0043】の「この要求を待って,ユーザはPCからユーザ情報を入力する(ステップS405)。」との記載,段落【0044】の「次に,画像形成装置1は入力されたユーザ名とパスワードが当該画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する(ステップS406)。当該画像データへのアクセス権がない場合(ステップS406:No)は,認証エラーとなり(ステップS407),処理終了となる。」との記載からすると,「画像形成装置」は,「パスワード」が記載された「メール」を受信した「ユーザ」により「入力されたユーザ名とパスワードが当該画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する」手段(“第1判断手段”とする。)を実質的に備えることが読み取れるから,引用例1には,
“メールを受信したユーザにより入力されたユーザ名と,メールに記載のパスワードが前記画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する第1判断手段”
を備えた画像形成装置が記載されていると解される。

エ 上記Bの段落【0044】の「当該画像データへのアクセス権がない場合(ステップS406:No)は,認証エラーとなり(ステップS407),処理終了となる。当該画像データとのアクセス権ありと判断された場合(ステップS406:Yes)は,ハイパーテキストデータが転送され(ステップS408),ブラウザにサムネイルと共に表示される(ステップS409)。」との記載,上記Cの段落【0045】の「次に,ユーザが画像データを取得したい場合には,ブラウザの表示内にある「取得」もしくはサムネイルをマウスのクリックなどによって画像形成装置1に対して画像データの取得要求を送信する(ステップS410)。画像データの取得要求を受けた画像形成装置1は,ユーザに対して再度ユーザ名とパスワードを入力するように促す(ステップS411)。」との記載からすると,「画像形成装置」は,ユーザについて画像データのアクセス権ありと判断した場合に,対応する画像データの「ハイパーテキストデータ」を「サムネイル」と共に,ユーザの「ブラウザ」に表示し,一方,ユーザについて画像データのアクセス権なしと判断した場合に,認証エラーとし,画像データのアクセス処理を終了するものと認められる。
また,「ブラウザ」に表示された画像データの「サムネイル」の中から,「画像データの取得要求」を送信した「ユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す」ことから,“再度ユーザ名とパスワードの入力を促す表示制御手段”を実質的に備えるといえるから,引用例1には,
“画像データのアクセス権なしと判断した場合に,画像データのアクセス処理を終了し,画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す表示制御手段”
を備えた画像形成装置が記載されていると解される。

オ 上記Cの段落【0045】の「ユーザは,PCから再度ユーザ名とパスワードを入力する(ステップS412)。このとき,画像形成装置1にすでにユーザ登録されているユーザの場合,当該リンク先へのアクセス用のパスワード(メールに添付されてきたパスワード)ではなく,画像形成装置1に登録されているユーザのパスワードを入力する。」との記載,段落【0046】の「次いで,画像形成装置1は入力されたユーザ名とパスワードにより,当該画像データへのアクセス権の有無を判断する(ステップS413)。当該画像データへのアクセス権がない場合(ステップS413:No)は,認証エラーとなり(ステップS414),処理終了となる。当該画像データへのアクセス権が確認された場合(ステップS413:Yes)は,当該ユーザのPCに対して画像データが転送され(ステップS415),画像データのダウンロードが開始される(ステップS416)。」との記載からすると,「再度ユーザ名とパスワードの入力を促」されたユーザは,「メールに添付されてきたパスワード」ではなく,「ユーザ登録されている」「パスワード」を入力すると認められ,「ユーザ登録されている」「パスワード」を入力したユーザは,「画像データのダウンロード」が可能なアクセス権を有すると判断されることが読み取れる。
また,「画像形成装置」は,「入力されたユーザ名とパスワードにより,当該画像データへのアクセス権の有無を判断する」手段(“第2判断手段”とする。)を実質的に備えるといえるから,引用例1には,
“登録されたユーザにより入力されたユーザ名と,ユーザ登録されているパスワードとにより,画像データのダウンロードが可能なアクセス権をもつか否かを判断する第2判断手段”
を備えた画像形成装置が記載されていると解される。

(3)以上,ア乃至オの検討によれば,引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「ユーザのPCとネットワークを介して接続されたマルチファンクション機器として構成され,取得された画像データを蓄積するハードディスクと,前記画像データを送信する画像データ送信手段と,前記画像データとのアクセスを許可する複数のユーザに対して自動的に重複しない固有のパスワードを割り当てる画像データ管理手段と,を備えた画像形成装置であって,
前記画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメールを受信したユーザに対して,ユーザ情報(ユーザ名とパスワード)を入力するよう要求する要求手段と,
前記メールを受信したユーザにより入力されたユーザ名と,前記メールに記載のパスワードが前記画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する第1判断手段と,
前記画像データのアクセス権なしと判断した場合に,画像データのアクセス処理を終了し,前記画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す表示制御手段と,
登録されたユーザにより入力されたユーザ名と,ユーザ登録されているパスワードとにより,前記画像データのダウンロードが可能なアクセス権をもつか否かを判断する第2判断手段と
を備えた画像形成装置。」

2 引用例2に記載されている技術的事項

原出願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成28年5月31日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2010-97539号公報(平成22年4月30日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

D 「【0060】
画像処理装置100の図示しない電源スイッチがユーザの操作によりONにされると,装置制御部101は,ROM105に記憶された該当プログラムを起動させ,図4に示すようなユーザID及びパスワードの入力を促すログイン画面情報(初期画面情報)を入力表示部103が有するタッチパネルディスプレイ上に表示させる(ステップS101)。
【0061】
ユーザが上記ログイン画面情報を参照し,入力ボタンを介して例えば「ユーザID=User_2」及び「パスワード=PassWord_2」を入力し,「ログイン」ボタンを押下すると(ステップS102),装置制御部101は,該ユーザID及びパスワードをRAM104に記憶する。そして,装置制御部101は,上記ユーザID及びパスワードを記憶すると,該ユーザID及びパスワードをI/F102を介して認証サーバ200に送信する(ステップS103)。
…(中略)…
【0063】
ユーザ認証判定部203は,ユーザ認証判定の指示を受けると,受信した上記ユーザID及びパスワードに基づいてユーザ認証情報DB202を検索し(図5参照),該ユーザ認証情報DB202に該当するユーザ認証情報が記憶されていると,ユーザ照合一致と判定する。ユーザ認証判定部203がユーザ照合一致と判定すると,サーバ制御部201は,ユーザ照合一致信号を生成し,該信号を図示しないI/Fを介して画像処理装置100に送信する。
…(中略)…
【0065】
画像処理装置100の装置制御部101は,I/F102を介してユーザ照合一致信号を受信すると(ステップS104),アクセス権判定部107にアクセス権判定を指示する。
…(中略)…
【0067】
アクセス権判定部107は,アクセス権判定の指示を受けると,RAM104に記憶されたユーザIDに基づいてアクセス権情報DB1061を検索し(ステップS106),該ユーザIDに該当するアクセス権情報が記憶されている場合には(ステップS107),該アクセス権情報に含まれるアクセス権識別子(1,2,3のいずれか)を該ユーザのアクセス権と判定する(ステップS108)。
…(中略)…
【0069】
アクセス権判定部107がアクセス権を判定すると,装置制御部101は,判定したアクセス権(0,1,2,3のいずれか)をRAM104に記憶する。そして,装置制御部101は,アクセス権を記憶すると,アクセス制御情報取得部108にアクセス権に対応するアクセス制御情報の取得を指示する。
【0070】
アクセス制御情報取得部108は,アクセス制御情報の取得の指示を受けると,RAM104に記憶された例えばアクセス権=0に基づいてアクセス制御情報DB1062を検索し,図4に示すような該アクセス権に対応するアクセス制御情報(プリント=ON,コピー=OFF,スキャン=OFF)を取得する(ステップS110)。
【0071】
アクセス制御情報取得部108がアクセス制御情報を取得すると,例えばアクセス制御情報(プリント=ON,コピー=OFF,スキャン=OFF)の場合には,装置制御部101は,ROM105に記憶された該当プログラムを起動させ,図7に示すようなプリント処理へのアクセスが可能であることを示す「プリントメニュー」ボタンと,コピー処理へのアクセスが不可であることを示す禁止マーク付きの「コピーメニュー」ボタンと,スキャン処理へのアクセスが不可であることを示す禁止マーク付きの「スキャンメニュー」ボタンとを含むメインメニュー画面情報をタッチパネルディスプレイ上に表示させる(ステップS111)。これにより,アクセス権=0のユーザは,最低限の装置の機能であるプリント処理へアクセスすることが可能となる。この時,メインメニュー画面情報に含まれる「ログアウト」ボタンがユーザにより押下されると,装置制御部101は,再び図4に示す初期画面情報であるログイン画面情報を該ディスプレイ上に表示させる。」

したがって,上記引用例2には次の技術(以下,「引用例2記載技術」という。)が記載されているものと認める。

「画像処理装置の使用について認証されたユーザについて,所定の機能処理を使用(アクセス)する権限の有無を判断し,権限を有する機能処理を使用するための画面情報を表示すること」

3 引用例3に記載されている技術的事項

原出願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の平成29年1月12日付けの拒絶査定において引用された,特開2006-253751号公報(平成18年9月21日出願公開,以下,「引用例3」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E 「【要約】
【課題】蓄積文書のサムネイル表示を可能とし,更に,アクセス制限の掛かったセキュリティ文書,サムネイル画像未作成の文書の表示手段を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿を読み取って蓄積した文書の一覧をリスト表示した後(S21),画面上の「サムネイル」キーを押下して,蓄積文書の内容を示すサムネイル表示への切り替えを指示すると(S22),アクセス制限が掛かっていない文書でサムネイル画像を作成済みであれば(S24のNO),サムネイル画像を表示し(S25),アクセス制限が掛かったセキュリティ文書の場合は,アクセス不可要因を示すアイコンを表示し,サムネイル画像を表示しない(S26)。ここで,セキュリティ文書に対するパスワード入力などにより認証を得ると,該文書のサムネイル画像を表示する。なお,文書のサムネイル画像を作成中の場合は空白表示とし,作成が完了した時点でサムネイル画像を表示する。
【選択図】図15」

F 「【0055】
(実施例1)
まず,図9に示すリスト表示画面から図10に示すサムネイル表示画面に切り替える動作を,図13,14のフローチャートを中心にして説明する。
ここで,液晶タッチパネル31に表示される図9の画面は,画像メモリ66やハードディスク75等の画像記憶装置に既に蓄積した文書をリスト形式で表示したものである。 蓄積済み文書をリスト形式で図9に示すように画面表示して(ステップS1),この画面にある「サムネイル」キーを押下することにより,蓄積文書のリスト表示からサムネイル表示への切り替えを指示する(ステップS2)。この結果,蓄積済み文書に関する図10のようなサムネイル形式に切り替える処理が起動される。
…(中略)…
【0058】
この結果,図10に示すように,文書1,2,4は,サムネイル画像が表示されるが,未作成の文書6については,サムネイル表示がされない。なお,文書3,5については,アクセス制限が掛かったセキュリティ文書であることを示し,この段階では,文書内容を示すサムネイル画像としては表示されず,アクセス不可要因をあらわすアイコン(「鍵」マーク)のみが表示される。このセキュリティ文書の扱いについては後述する。
…(中略)…
【0060】
図10のように,一画面に表示できるサムネイル数が6個であれば,図13の場合と同様に,文書1から6までの文書のサムネイル表示更新をループ処理により行う(ステップS13)。
この際,表示対象文書のサムネイル画像が作成済みか否かの判定を行い(ステップS14),作成済みであれば(ステップS14のYES),サムネイル画像の表示を行う(ステップS15)。一方,作成中などにより,まだ作成されていない場合は(ステップS14のNO),表示処理を行わず,空白表示になる。しかし,この場合,6個の表示対象文書全てについてサムネイル画像が作成済みであるので,図11に示すように,セキュリティ文書以外の全ての表示対象文書について,文書内容を示すサムネイル画像が表示される。」

4 参考文献1に記載されている技術的事項

原出願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2010-41451号公報(平成22年2月18日出願公開,以下,「参考文献1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0025】
本動作説明に先立って,前提となる画像形成装置の構成に言及する。本画像形成装置は,ユーザが所持するカードキー69との間で認証情報に係るデータ交換を通じて装置の使用を許可するカードキー認証モードと,ユーザ識別情報及び暗証番号(認証情報)のキー入力操作をユーザに要求することを通じて装置の使用を許可するパネル認証モードとを二通り備えており,原則として,カードキー認証モードで動作している。以下の実施例では,原則通りの処理であるカードキー認証モードでの,画像形成装置の動作について説明してゆく。
【0026】
図3に示すように,ICカード通信部67は,ICカードキー69のアクセスを常時監視している。このとき,複数の文書に係るプライベートプリントジョブの遂行を試みるために装置の元にやってきたユーザが,ICカードキー69を画像形成装置におけるICカードリーダライタ(不図示)にセットすると,ICカード通信部67は,ICカードキー69のアクセスを検知する(ステップS11)とともに,ICカードキー69に記憶されているユーザ識別情報を読み取り,読み取ったICカードキー69のユーザ識別情報を,主制御部11宛に転送する。
【0027】
主制御部11(具体的には,認証部77)は,ICカード通信部67から転送されてきたユーザ識別情報と,認証情報記憶部73に予め登録されているユーザ識別情報等を照合することで,カードキー認証を介してアクセスしてきたユーザが正規ユーザか否かに係るユーザ認証を行う(ステップS12)。なお,ユーザ認証に際して,暗証番号によるログイン管理機能を追加しても良い。
【0028】
ステップS12のユーザ認証の結果,アクセスユーザが正規ユーザである旨の承認がなされると,操作情報取得部71は,アクセスユーザが操作キー部55を介して入力した操作情報を取得し(ステップS13),取得した操作情報を認証部77に渡す。
【0029】
これを受けて認証部77は,ステップS13で取得した操作情報に基づいて,このアクセスユーザが複数の文書をプライベートプリント対象として指定したか否かを調べる。この調査の結果,プライベートプリント対象となる複数の文書が指定されているとき(図4参照のこと。図4の例では,3つの文書がプライベートプリント対象として指定されている。),さらに,指定された複数の各文書にパスワード(文書認証情報)が設定されているか否かを調べる。なお,プライベートプリント対象となる複数文書の指定は,例えば図4に示す画面上において,複数の文書を指定した後に,「印刷」ボタンを押下操作することで遂行される。
【0030】
この調査の結果,プライベートプリント対象としての指定文書にパスワードが設定されている旨の判定が下されたとき(ステップS14の”Yes”),表示制御部75は,当該複数の文書に係るパスワード(文書認証情報)入力を促す催促画面(図5(1)参照)をタッチパネル部53における表示画面上に表示させる(ステップS15)。
【0031】
この催促画面を視た当該ユーザが,当該複数の文書に係るパスワード(文書認証情報)入力を行うと,その操作情報が認証部77へと渡される。なお,パスワード(文書認証情報)の入力は,例えば図5(1)に示す催促画面上において,所定のパスワードを入力操作した後に,「OK」ボタンを押下操作することで遂行される。さて,当該複数の文書に係るパスワード(文書認証情報)入力に係る操作情報を受けて,認証部77は,認証情報記憶部73の記憶内容と,前記操作情報と,に基づいて,文書認証情報の正当性に係る認証を行う(ステップS16)。
【0032】
ステップS16における認証の結果,前記複数の文書に係るパスワード(文書認証情報)が正当である旨の判定が下されたとき(ステップS16の”Yes”),表示制御部75は,当該複数の文書に係る印刷開始指示待ち画面(図5(2)参照)をタッチパネル部53における表示画面上に表示させる(ステップS17)。
【0033】
この指示待ち画面を視た当該ユーザが,当該複数の文書に係る印刷開始の指示を行うと(ステップS18の”Yes”),その操作情報が印刷制御部79へと渡される。なお,印刷開始の指示は,例えば図5(1)に示す印刷開始指示待ち画面上において,「印刷開始」ボタンを押下操作することで遂行される。さて,この操作情報を受けて,印刷制御部79は,当該複数の文書に係るプリントジョブをエンジン部41に一括して遂行させるための制御を行う(ステップS19)。」

第4 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「画像形成装置」は,「ユーザのPCとネットワークを介して接続されたマルチファンクション機器として構成され,取得された画像データを蓄積するハードディスク」を備えるところ,「ハードディスク」は画像データの登録に用いられることは明らかであるから,引用発明の「画像形成装置」,「ハードディスク」は,それぞれ本願発明の「画像形成装置」,「記憶手段」に相当する。

(2)引用発明の「要求手段」は「前記画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメールを受信したユーザに対して,ユーザ情報(ユーザ名とパスワード)を入力するよう要求」し,「第1判断手段」は,「前記メールを受信したユーザにより入力されたユーザ名と,前記メールに記載のパスワードが前記画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する」ところ,「メールを受信したユーザ」は上位概念では“画像形成装置のユーザ”とみることができること,入力された「ユーザ情報(ユーザ名とパスワード)」が登録済のものと照合するか確認していることは明らかであるから,これら手段により,「画像形成装置」のユーザを,入力された「ユーザ情報」に基づき認証し,認証されたユーザが画像データへのアクセス権をもつか否かを判断するといえる。
一方,本願発明では,「第1の認証手段」が「画像形成装置を使用するユーザを認証」し,「判定手段」が「該認証されたユーザに対して前記画像データへのアクセス権限の有無を判定する」ところ,「画像形成装置を使用するユーザ」は,本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0057】-【0059】の記載からすると,「画像形成装置」の機能の少なくとも1つを使用することが可能なユーザであると認められ,上位概念では“画像形成装置のユーザ”とみることができるから,これら手段により,「画像形成装置」のユーザを認証し,該認証されたユーザに対して前記画像データへのアクセス権限の有無を判定するといえ,“第1の認証処理手段”を構成するとみることができる。
そうすると,引用発明の「前記画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメールを受信したユーザに対して,ユーザ情報(ユーザ名とパスワード)を入力するよう要求する要求手段」と,「前記メールを受信したユーザにより入力されたユーザ名と,前記メールに記載のパスワードが前記画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する第1判断手段」を合わせた構成と,
本願発明の「該画像形成装置を使用するユーザを認証する第1の認証手段」と,「該認証されたユーザに対して前記画像データへのアクセス権限の有無を判定する判定手段」を合わせた構成とは,後記する点で相違するものの,
“該画像形成装置のユーザを認証し,該認証されたユーザに対して前記画像データへのアクセス権限の有無を判定する第1の認証処理手段”
である点で共通するといえる。

(3)引用発明の「表示制御手段」は,「前記画像データのアクセス権なしと判断した場合に,画像データのアクセス処理を終了し,前記画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促」し,「第2判断手段」は「登録されたユーザにより入力されたユーザ名と,ユーザ登録されているパスワードとにより,前記画像データのダウンロードが可能なアクセス権をもつか否かを判断する」ところ,「第1判断手段」が画像データのアクセス権ありと判断した場合に,入力された「ユーザ名」と「ユーザ登録されているパスワード」が登録済のものと照合するか確認していることは明らかであり,上記(2)での検討より,「第1判断手段」は“第1の認証処理手段”の一部を構成するとみることができるから,「表示制御手段」及び「第2判断手段」により,“第1の認証処理手段”による判定結果に基づいて画像データにアクセスするユーザを認証するといえ,“第2の認証処理手段”を構成するといえる。
一方,本願発明では,「第2の認証手段」は「該判定手段による判定結果に基づいて前記画像データにアクセスするユーザを認証する」ところ,上記(2)での検討より,「判定手段」は“第1の認証処理手段”の一部を構成するとみることができるから,「第2の認証手段」は,“第1の認証処理手段”による判定結果に基づいて画像データにアクセスするユーザを認証する“第2の認証処理手段”とみることができる。
そうすると,引用発明の「前記画像データのアクセス権なしと判断した場合に,画像データのアクセス処理を終了し,前記画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す表示制御手段」と,「登録されたユーザにより入力されたユーザ名と,ユーザ登録されているパスワードとにより,前記画像データのダウンロードが可能なアクセス権をもつか否かを判断する第2判断手段」を合わせた構成と,
本願発明の「該判定手段による判定結果に基づいて前記画像データにアクセスするユーザを認証する第2の認証手段」とは,後記する点で相違するものの,
“該第1の認証処理手段による判定結果に基づいて前記画像データにアクセスするユーザを認証する第2の認証処理手段”
である点で共通するといえる。

(4)上記(3)での検討から,引用発明の「表示制御手段」は,「前記画像データのアクセス権なしと判断した場合に,画像データのアクセス処理を終了し,前記画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促」すところ,「第1判断手段」が画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す“認証情報入力画面”を表示し,「第1判断手段」が画像データのアクセス権なしと判断した場合に,“認証情報入力画面”を表示しないことは明らかであり,上記(2)での検討より,「第1判断手段」は“第1の認証処理手段”の一部を構成するとみることができるから,“第2の認証処理手段”は,“第1の認証処理手段”によりユーザにアクセス権限が有ると判定された場合,ユーザの認証情報を入力するための“認証情報入力画面”を表示させ,“第1の認証処理手段”によりユーザにアクセス権限が無いと判定された場合,“認証情報入力画面”を非表示とするといえる。
そうすると,引用発明の「前記画像データのアクセス権なしと判断した場合に,画像データのアクセス処理を終了し,前記画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す表示制御手段」と,「登録されたユーザにより入力されたユーザ名と,ユーザ登録されているパスワードとにより,前記画像データのダウンロードが可能なアクセス権をもつか否かを判断する第2判断手段」を合わせた構成と,
本願発明の「前記判定手段によりユーザにアクセス権限が有ると判定された場合,画像データの画像を視認可能に表示することなく,ユーザの認証情報を入力するための認証情報入力画面を表示させ,前記判定手段によりユーザにアクセス権限が無いと判定された場合,前記認証情報入力画面を非表示とする」「第2の認証手段」とは,後記する点で相違するものの,
“該第2の認証処理手段は,前記第1の認証処理手段によりユーザにアクセス権限が有ると判定された場合,ユーザの認証情報を入力するための認証情報入力画面を表示させ,前記第1の認証処理手段によりユーザにアクセス権限が無いと判定された場合,前記認証情報入力画面を非表示とする”
点で共通するといえる。

2 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>
「 画像データを登録する記憶手段を備えた画像形成装置であって,
該画像形成装置のユーザを認証し,該認証されたユーザに対して前記画像データへのアクセス権限の有無を判定する第1の認証処理手段と,該第1の認証処理手段による判定結果に基づいて前記画像データにアクセスするユーザを認証する第2の認証処理手段とを備え,
該第2の認証処理手段は,前記第1の認証処理手段によりユーザにアクセス権限が有ると判定された場合,ユーザの認証情報を入力するための認証情報入力画面を表示させ,前記第1の認証処理手段によりユーザにアクセス権限が無いと判定された場合,前記認証情報入力画面を非表示とすることを特徴とする画像形成装置。」

<相違点1>
第1の認証処理手段に関し,本願発明では,「第1の認証手段」が「画像形成装置を使用するユーザを認証」し,「判定手段」が「第1の認証手段」によって「認証されたユーザに対して前記画像データへのアクセス権限の有無を判定する」のに対して,
引用発明では,「第1判断手段」が「画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメール」を「受信したユーザにより入力されたユーザ名と,前記メールに記載のパスワードが前記画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する」ものの,画像データへのアクセス権有無の判断対象となるユーザは,画像形成装置の使用が認証されたユーザであるか明記されていない点。

<相違点2>
ユーザにアクセス権限が有ると判定された場合の第2の認証処理手段による認証情報入力画面の表示に関し,本願発明では,「第2の認証手段」が「画像データの画像を視認可能に表示することなく,ユーザの認証情報を入力するための認証情報入力画面を表示させ」るのに対して,
引用発明では,「表示制御手段」が「ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す」点。

第5 当審の判断

上記相違点1及び2について検討する。

1 相違点1について

引用発明では,「第1判断手段」が「画像データが存在するリンク先とパスワードが記載されたメール」を「受信したユーザにより入力されたユーザ名と,前記メールに記載のパスワードが前記画像データへのアクセス権をもつか否かを判断する」ところ,上記「第4 対比」の1,(2)での検討より,画像データへのアクセス権を有するユーザであるか否かの判断の対象は,入力されたユーザ情報に基づき認証されたユーザであるといえる。
また,引用例2記載技術のような,「画像処理装置の使用について認証されたユーザについて,所定の機能処理を使用(アクセス)する権限の有無を判断し,権限を有する機能処理を使用するための画面情報を表示すること」は,当該技術分野において広く知られた技術であった。
そして,引用発明と引用例2記載技術とは,画像形成装置におけるユーザ認証を用いた機能使用権限の管理を課題とする点で共通するといえ,加えて,画像形成装置の使用について認証されたユーザに対して,要求に応じて画像データへのアクセス権限の有無を判断することは,例えば,参考文献1(上記Gを参照)に記載されるように,原出願の出願前には当該技術分野における周知技術であったことを踏まえれば,引用発明において,画像データへのアクセス権を有するユーザであるか否かの判断の対象を,画像形成装置の使用について認証されたユーザに変更することは適宜なし得たことである。
そうすると,引用発明において引用例2記載技術を適用し,入力されたユーザ情報に基づき認証されたユーザについて,画像データへのアクセス権をもつか否かを判断することに代えて,画像形成装置を使用することが認証されたユーザについて,画像データへのアクセス権をもつか否かを判断するために,画像形成装置を使用するユーザを認証する第1の認証手段,第1の認証手段によって認証されたユーザに対して画像データへのアクセス権限の有無を判定する判定手段を構成すること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について

引用発明では,「表示制御手段」が「前記画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルと共にハイパーテキストデータを表示し,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促す」ところ,ユーザに対して表示する「サムネイル」は,アクセス権ありと判断された画像データに対応する縮小画像,あるいは部分画像などの概略画像であり,画像データ取得の認証前に,当該画像データを識別するための情報の1つとして使用するといえる。
そして,画像形成装置において,アクセス制限のかかったセキュリティ文書に対するパスワード入力などによる認証前に,文書画像を識別するための情報として文書画像のサムネイル表示は行わないことは,例えば,引用例3(上記E,Fを参照)に記載されるように,原出願の出願前には当該技術分野における周知技術であり,画像データへのアクセスを要求するユーザの認証前に,画像データの概略画像を視認可能にするか否かは,アクセスされる画像データのセキュリティ特性に応じて適宜選択し得た事項である。
そうすると,引用発明において上記周知技術を適用し,画像データのアクセス権ありと判断した場合に,ユーザのブラウザに,対応する画像データのサムネイルを表示した後に,前記画像データの取得を要求するユーザに対して再度ユーザ名とパスワードの入力を促すことに代えて,第2の認証手段が,画像データの画像を視認可能に表示することなく,再度ユーザ名とパスワードの入力を促すこと,すなわち,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

3 小括

上記で検討したごとく,相違点1,2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明,引用例2記載技術,及び,引用例3,参考文献1に記載の当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

第6 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-09 
結審通知日 2018-02-13 
審決日 2018-03-05 
出願番号 特願2015-134917(P2015-134917)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金沢 史明  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 辻本 泰隆
須田 勝巳
発明の名称 画像形成装置及びユーザ認証方法  
代理人 特許業務法人 東和なぎさ国際特許事務所  

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