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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1339571 |
審判番号 | 不服2017-6962 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-15 |
確定日 | 2018-04-19 |
事件の表示 | 特願2015-232210「触感呈示装置及び触感呈示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日出願公開、特開2017-111462〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成27年11月27日の出願であって、平成28年8月5日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月17日に手続補正がされ、平成29年2月8日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月15日に拒絶査定不服審判が請求がされたものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年10月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 タッチセンサと、 前記タッチセンサのタッチ面に触感を呈示させる触感呈示部と、 前記タッチセンサに対する物体の接近を検出する近接センサと、 前記接近の位置に応じた触感を呈示させるように前記触感呈示部の駆動を開始するコントローラと、 を備える触感呈示装置。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された、特表2010-506302号公報(以下「引用例」という。)には、次の記載がある。 a)「【0004】 徐々に、携帯装置は、タッチパネルのみのインターフェースにとって有利になり、物理的なボタンから脱却しつつある。この移行は、柔軟性を増加させ、パーツ点数を減少させ、および故障しやすい機械的ボタンへの依存を減少させることを可能にし、製品設計の新たな傾向に即したものである。タッチパネル入力装置を使用する場合、ボタン押圧操作の機械的確認、または他のユーザインターフェース操作を、触覚によりシミュレートすることができる。 【0005】 携帯装置に関して、コストは重要な促進要因である。したがって、触覚的効果を生成するために、例えば、偏心回転質量(「ERM」)モータまたは電磁モータ等の、単一の低コストのアクチュエータが一般的に使用される。これらのアクチュエータは、強い振幅で触覚出力を生成することができる。しかしながら、それらはまた、最大触覚出力を達成するために一定の時間(例えば、約50ms)を必要とする。また、これらのアクチュエータは、タッチパネル装置のタッチセンサ入力を操作する場合、ユーザにフィードバックを提供するためにも使用される。例えば、ユーザが、タッチパネル上のボタンを押圧する場合、機械的ボタンを押圧する感覚を与えるために、触覚的効果が出力される。ユーザがインターフェースのボタンを選択したと同時に、触覚的効果を出力することが望ましい。しかしながら、アクチュエータを望ましい振幅に到達させるために時間がかかるため、触覚的効果は、ボタン押圧事象に遅れる。これが遅れ過ぎると、ユーザは、ボタンの押圧と触覚的効果を単一の事象として認識することはない。」 b)「【0010】 図1は、一実施形態による携帯電話機10のブロック図である。電話機10は、スクリーン11と、「キー」を含み、メニュー等を含む他のタイプのユーザインターフェースを含み得る入力領域であるタッチパネル13とを含む。他の実施形態において、電話機10のキーは、機械的タイプキーであり得る。電話機10の内部には、電話機10において振動を生成する触覚フィードバックシステムがある。一実施形態においては、電話機10全体に振動が生成される。他の実施形態において、タッチパネル13全体またはタッチパネル13の個々のキーを含む、電話機10の特定部分は、触覚フィードバックシステムにより触覚的に作動可能とすることができる。 【0011】 触覚フィードバックシステムは、プロセッサ12を含む。プロセッサ12には、メモリ20と、振動アクチュエータ18に連結されるアクチュエータ駆動回路16とが連結される。図1の実施形態は携帯電話機であるが、実施形態は、任意のタイプの送受器もしくはモバイル/携帯装置、または振動を生成するためにアクチュエータを使用するいかなる装置にも実装され得る。例えば、他の実施形態は、タッチパネルを含まない場合があるが、他のタイプの入力領域を有する触覚装置である。タッチパネル以外の他の入力領域は、ミニジョイスティック、スクロールホイール、リモコンスティックとしてのDパッド、キーボード、タッチセンサ面等であり得る。携帯電話機のように、これらの装置に対しても、触覚的効果が入力領域および/または装置全体に生成されることが望ましい。 【0012】 プロセッサ12は、任意のタイプの汎用プロセッサであり得るか、または特定用途向け集積回路(「ASIC」)等の、触覚的効果を提供するように特別に設計されたプロセッサであり得る。プロセッサ12は、電話機10全体を操作するプロセッサと同一であってもよいし、または別々のプロセッサであってもよい。プロセッサ12は、高レベルパラメータに基づき、どのような触覚的効果を奏するようにさせるか、および、触覚的効果が奏される順番を決定し得る。一般に、特定の触覚的効果を定義する高レベルパラメータは、振幅、周波数、および持続時間を含む。また、ストリーミングモータコマンド等の低レベルパラメータも、特定の触覚的効果を決定するために使用され得る。 【0013】 プロセッサ12は、駆動回路16に制御信号を出力し、該駆動回路16は、所望の触覚的効果をもたらすために必要とされる電流および電圧をアクチュエータ18に供給するために使用される電子要素および回路を含む。アクチュエータ18は、電話機10において振動を生成する触覚装置である。アクチュエータ18は、電話機10のユーザに振動触覚力を(例えば、電話機10のハウジングを介して)印加することが可能な、1つ以上の力印加機構を含み得る。メモリ装置20は、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)またはリードオンリーメモリ(「ROM」)等の、任意のタイプの記憶装置であり得る。メモリ20は、プロセッサ12によって実行される命令を記憶する。また、メモリ20は、プロセッサ12の内部に位置してもよいし、内部および外部メモリの任意の組み合わせであってもよい。 【0014】 近接センサ14は、プロセッサ12に連結される。近接センサ14は、指(またはスタイラス)が、タッチパネル13に接触していなくても、ごく接近しているときを検出する。また、近接センサ14は、タッチパネル13に対する指の位置(例えば、x、y、z)、方向、速度、および加速度、配向(例えば、ロール、ピッチ、ヨー)等も検出し得る。近接センサ14は、指が、タッチパネル13の上方に置かれると、プロセッサ12に入力としてのその情報を提供する。この入力は、電話機10に対する触覚フィードバックを生成する場合、プロセッサ12により使用され得る。 【0015】 近接センサ14は、タッチパネル13への指または他の物体の近接が感知されることを可能にする、いかなる技術も使用し得る。例えば、それは、容量、電場、誘導、ホール効果、リード、渦電流、磁気抵抗、光学的影、光学的可視光、光学的IR、光学的色認識、超音波、アコースティックエミッション、レーダ、熱、ソナー、導電、または抵抗等を含む、感知技術に基づくことができる。 【0016】 一実施形態において、近接センサ14は、それぞれが、タッチパネル13の上方で感知領域を生成し、物体が感知領域を乱しまたは遮断する場合、信号を生成する、1つ以上の近接センサを含む。各感知領域は、典型的には妨害された場合、それぞれの信号を生成する。一実施形態においては、単一の感知領域が設けられていて、タッチパネル13の表面全体をカバーしている。他の実施形態においては、単一の感知領域は、タッチパネル13の表面の一部のみをカバーしている。他の実施形態においては、複数の感知領域が使用されてタッチパネル13の表面全体をカバーしている。いかなる数の感知領域も使用され得る。場合によっては、追跡を行うために、感知領域はさらに、画素化した一連のノードとして分布され得る。」(下線は、当審で付与。以下、同様。) c)「【0022】 一実施形態において、ユーザが、タッチパネル上方で指を迷わせて、表示されたボタンのグリッド上方を移動している場合において、ユーザが指を1つのボタンの上方から次のボタンの上方へと移動させると、第1の触覚的効果が奏される。第1の触覚的効果は、1つのボタンの縁部から次へボタンへと移動する感覚をシミュレートするために、短くソフトな触覚的効果とすることができる。この第1の触覚的効果は、ユーザがボタンを作動させることなく、ボタンの位置の表示をユーザに提供する。第2の触覚的効果は、ユーザがスクリーンに実際に触れ、ボタンを選択しようと行動する場合に奏される。第2の触覚的効果は、はっきりとしたボタンクリックをシミュレートする、強い触覚的効果であり得る。 【0023】 図3は、一実施形態による、タッチパネル13へのユーザの近接に応答して触覚的効果を生成する際の、電話機10により実行される機能のフロー図である。一実施形態において、図3の機能は、メモリに記憶され、プロセッサにより実行されるソフトウェアにより実行される。他の実施形態において、機能は、ハードウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアのいかなる組み合わせによっても実行され得る。 【0024】 202において、近接センサ14は、タッチパネル13の上方における、または他の何らかの方法でその近傍における、指、スタイラス、または他の物体の存在および位置を感知する。感知された位置は、タッチパネル13に対する指のxおよびy座標を含み得る。 【0025】 204において、タッチパネル上の機能は、指の位置に基づき決定される。例えば、タッチパネル13上の複数ボタンのグラフィカルユーザインターフェースが表示されると、指が上方にある最も近いボタンおよびそのボタンの機能が決定される。 【0026】 206において、プロセッサ12は、機能および指の位置に基づき、触覚的効果を開始する。タッチパネル上の機能に応じて、異なる触覚的効果が、プロセッサ12により生成され得る。本実施形態において、指は、タッチパネル13に実際に触れないため、触覚的効果は、電話機10を持っているもう一方の手により感じられる。」 これら引用例の記載及び関連する図面から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「電話機10は、スクリーン11と、「キー」を含み、メニュー等を含む他のタイプのユーザインターフェースを含み得る入力領域であるタッチパネル13とを含み、 電話機10の内部には、電話機10において振動を生成する触覚フィードバックシステムがあり、電話機10全体に振動が生成され、 触覚フィードバックシステムは、プロセッサ12を含み、プロセッサ12には、振動アクチュエータ18に連結されるアクチュエータ駆動回路16とが連結され、 プロセッサ12は、駆動回路16に制御信号を出力し、該駆動回路16は、所望の触覚的効果をもたらすために必要とされる電流および電圧をアクチュエータ18に供給し、 アクチュエータ18は、電話機10において振動を生成する触覚装置であり、アクチュエータ18は、電話機10のユーザに振動触覚力を(例えば、電話機10のハウジングを介して)印加することが可能な、1つ以上の力印加機構を含み得、 近接センサ14は、プロセッサ12に連結され、近接センサ14は、指(またはスタイラス)が、タッチパネル13に接触していなくても、ごく接近しているときを検出し、また、近接センサ14は、タッチパネル13に対する指の位置(例えば、x、y、z)、方向、速度、および加速度、配向(例えば、ロール、ピッチ、ヨー)等も検出し得、近接センサ14は、指が、タッチパネル13の上方に置かれると、プロセッサ12に入力としてのその情報を提供し、この入力は、電話機10に対する触覚フィードバックを生成する場合、プロセッサ12により使用され得、 近接センサ14は、それぞれが、タッチパネル13の上方で感知領域を生成し、物体が感知領域を乱しまたは遮断する場合、信号を生成し、追跡を行うために、感知領域はさらに、画素化した一連のノードとして分布され得るものであり、 近接センサ14は、タッチパネル13の上方における、指、スタイラス、または他の物体の存在および位置を感知し、感知された位置は、タッチパネル13に対する指のxおよびy座標を含み得、 タッチパネル上の機能は、指の位置に基づき決定され、例えば、タッチパネル13上の複数ボタンのグラフィカルユーザインターフェースが表示されると、指が上方にある最も近いボタンおよびそのボタンの機能が決定され、 プロセッサ12は、機能および指の位置に基づき、触覚的効果を開始し、タッチパネル上の機能に応じて、異なる触覚的効果が、プロセッサ12により生成され得る 電話機10。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明を対比すると、次のことがいえる。 (1)引用発明の「「キー」を含み、メニュー等を含む他のタイプのユーザインターフェースを含み得る入力領域であるタッチパネル13」は、本願発明の「タッチセンサ」に相当する。 (2)引用発明の「触覚フィードバックシステム」は、「電話機10において振動を生成する」ものであり、「電話機10全体に振動が生成され」る「電話機10のユーザに振動触覚力を(例えば、電話機10のハウジングを介して)印加する」ものであるから、「タッチパネル13」のタッチ面も振動しユーザに振動触覚力を印加するのは明らかであり、引用発明の「触覚フィードバックシステム」は、本願発明の「前記タッチセンサのタッチ面に触感を呈示させる触感呈示部」に相当する。 (3)引用発明の「近接センサ14は、タッチパネル13の上方における、指、スタイラス、または他の物体の存在および位置を感知し」、「近接センサ14は、指(またはスタイラス)が、タッチパネル13に接触していなくても、ごく接近しているときを検出」するから、引用発明の「近接センサ14」は、本願発明の「前記タッチセンサに対する物体の接近を検出する近接センサ」に相当する。 (4)引用発明は、「近接センサ14は、タッチパネル13の上方における、指、スタイラス、または他の物体の存在および位置を感知し、感知された位置は、タッチパネル13に対する指のxおよびy座標を含み得」、「タッチパネル上の機能は、指の位置に基づき決定され」、「プロセッサ12は、機能および指の位置に基づき、触覚的効果を開始し、タッチパネル上の機能に応じて、異なる触覚的効果が、プロセッサ12により生成され得る」ものであるから、引用発明は、「近接センサ14が感知した、タッチパネル13の上方における指の位置に基づき、タッチパネル上の機能は決定され、プロセッサ12は、当該機能および指の位置に基づき、触覚的効果を開始し、当該機能に応じて、異なる触覚的効果を生成する」といい得るものである。 そして、引用発明の「タッチパネル上の機能」は「タッチパネル13の上方における指の位置」に基づき決定されるものであるから、引用発明の「当該機能および指の位置に基づき、触覚的効果を開始」することは、「タッチパネル13の上方における指の位置に基づき、触覚的効果を開始」するといえる。 また、引用発明の「タッチパネル上の機能」は「タッチパネル13の上方における指の位置」に基づき決定されるものであるから、引用発明の「当該機能に応じて、異なる触覚的効果を生成する」ことは、「タッチパネル13の上方における指の位置に応じて、触覚的効果を生成する」ともいえる。 したがって、引用発明は、「プロセッサ12は、タッチパネル13の上方における指の位置に基づき、触覚的効果を開始し、タッチパネル13の上方における指の位置に応じて、触覚的効果を生成する」といい得るものである。 そして、引用発明の「触覚フィードバックシステムは、プロセッサ12を含み」、「近接センサ14は、プロセッサ12に連結され」ているから、引用発明の「触覚フィードバックシステム」の「プロセッサ12」は、本願発明の「触感呈示部」を制御する「コントローラ」に相当し、引用発明の「タッチパネル13の上方における指の位置に基づき、触覚的効果を開始し、タッチパネル13の上方における指の位置に応じて、触覚的効果を生成する」「プロセッサ12」は、本願発明の「前記接近の位置に応じた触感を呈示させるように前記触感呈示部の駆動を開始するコントローラ」に相当する。 (5)引用発明の「電話機10」は、「内部には、電話機10において振動を生成する触覚フィードバックシステムがあり」、「電話機10のユーザに振動触覚力を(例えば、電話機10のハウジングを介して)印加することが可能な」ものであるから、「触感呈示装置」ともいい得るものである。 よって、両者は、全ての発明特定事項において一致し、両者の間に相違点はない。 4.請求人の主張について 請求人は審判請求の理由において、「引用発明1は、タッチパネル13への指または他の物体の近接を感知すると触覚的効果が生成されるものの、物体の接近の位置に応じた触覚的効果が生成されるものではなく、上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。」、「引用発明1は、指の“位置”に基づき“機能”が決定されるものの、“触覚的効果”は“機能”に応じるものであって、“位置”に応じるものではなく、上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。」、「本願発明は、引用発明に比べ、タッチ位置に応じた自然な触感を呈示させることができるという顕著な効果を奏します。」 と主張している。 しかしながら、上記「3.」の「(4)」で述べたように、引用発明の「タッチパネル上の機能」は「タッチパネル13の上方における指の位置」に基づき決定されるものであるから、引用発明の「当該機能に応じて、異なる触覚的効果を生成する」ことは、「タッチパネル13の上方における指の位置に応じて、異なる触覚的効果を生成する」といえるものであり、請求人の主張は採用できない。 5.むすび 以上によれば、本願発明は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-14 |
結審通知日 | 2018-02-20 |
審決日 | 2018-03-05 |
出願番号 | 特願2015-232210(P2015-232210) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木内 康裕、岩橋 龍太郎 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 山田 正文 |
発明の名称 | 触感呈示装置及び触感呈示方法 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 内海 一成 |
代理人 | 太田 昌宏 |