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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1339641
審判番号 不服2017-4807  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-05 
確定日 2018-04-18 
事件の表示 特願2015- 40872「電気またはハイブリッド駆動装置用トランスミッション」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日出願公開、特開2015-129585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は2010年3月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月6日(以下、「優先日」という。)、オランダ国)を国際出願日とする特願2011-552898号の一部を平成27年3月3日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月22日付けで拒絶理由が通知され、同年6月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月29日付け(発送日:同年12月6日)で拒絶査定され、これに対し、平成29年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ、この審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年4月5日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年4月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成29年4月5日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正により補正する前の請求項1(平成28年6月28日付け手続補正書)
「電気および/またはハイブリッド駆動装置用トランスミッションであって、電気駆動の場合に、電気モータ/発電機に接続されることができるとともに、ハイブリッド駆動の場合に、前記電気モータ/発電機におよび内燃機関に接続されることができる入力と、負荷に接続されることができる出力とを有し、前記電気モータ/発電機または前記内燃機関は主駆動装置を形成し、
前記トランスミッションは、前記入力と前記出力との間の2つの並列な伝達経路からなり、
それぞれの前記伝達経路には、唯一のカップリング手段及び1つの減速機があり、
前記減速機の少なくとも一方は、1ではないギヤ比を有する歯車減速機であり、
前記カップリング手段の一方の第1カップリング手段は、爪クラッチまたは爪ブレーキまたはシンクロメッシュを有し、
前記カップリング手段の他方の第2カップリング手段は、摩擦クラッチまたは摩擦ブレーキまたはさらなる電気モータ/発電機により形成され、
前記歯車減速機は、第1回転部材が前記入力に接続されるとともに第2回転部材が前記出力に接続される少なくとも3つの回転部材を有する遊星歯車装置により形成され、
第3回転部材は、関連する前記伝達経路内にある前記第1カップリング手段または前記第2カップリング手段に接続される、
トランスミッション。」
を、
「電気および/またはハイブリッド駆動装置用トランスミッションであって、電気駆動の場合に、電気モータ/発電機に接続されることができるとともに、ハイブリッド駆動の場合に、前記電気モータ/発電機におよび内燃機関に接続されることができる唯一の入力と、負荷に接続されることができる出力とを有し、前記電気モータ/発電機または前記内燃機関は主駆動装置を形成し、
前記トランスミッションは、前記入力と前記出力との間の2つの並列な伝達経路からなり、
それぞれの前記伝達経路には、唯一のカップリング手段及び1つの減速機があり、
前記減速機の少なくとも一方は、1ではないギヤ比を有する歯車減速機であり、
前記カップリング手段の一方の第1カップリング手段は、爪クラッチまたは爪ブレーキまたはシンクロメッシュを有し、
前記カップリング手段の他方の第2カップリング手段は、摩擦クラッチまたは摩擦ブレーキまたはさらなる電気モータ/発電機により形成され、
前記歯車減速機は、第1回転部材が前記入力に接続されるとともに第2回転部材が前記出力に接続される少なくとも3つの回転部材を有する遊星歯車装置により形成され、
第3回転部材は、関連する前記伝達経路内にある前記第1カップリング手段または前記第2カップリング手段に接続される、
トランスミッション。」
(下線は、審判請求人が補正箇所を示すために付した。)
とする補正を含むものである。

2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「入力」について「唯一の」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)引用例に記載された事項
ア 引用例1及び引用発明
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-313405号公報(以下、「引用例1」という。)には、変速装置及びそれを用いた車両について、図面(特に【図1】-【図4】参照)とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モータと差動機構から構成される変速装置と、それを用いた車両に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンの低燃費化を図る駆動システムとして、モータの駆動力を利用するハイブリッド車がある。」

(イ)「【0006】上記に鑑み本発明は、モータによる無段変速機能を実現し、効率の良い変速装置を提供することを第1の課題とする。
【0007】また本発明は、燃料消費量を低減できる車両を提供することを第2の課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記第1の課題は、駆動輪に回転運動を与える駆動軸とエンジンの出力軸の間に設けられ、エンジン回転を変速して前記駆動軸に伝達する変速装置において、電動機により可変される変速比でエンジン出力軸回転を駆動軸に伝達する差動機構と、前記差動機構と並列に接続され、固定された変速比でエンジンの出力軸回転を駆動軸に伝達する動力伝達機構とを備えることにより解決される。
【0009】また上記第1の課題は、モータにより入力軸と出力軸の回転数を制御する差動機構と、入力軸の回転数を出力軸に伝達する動力伝達機構を備え、これらの差動機構と動力機構の入力軸と出力軸をそれぞれ共通とすることにより解決される。特に、これらの差動機構と動力機構の入力軸と出力軸までのギア比を異なる値に設定することによって効率を向上できる。」

(ウ)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施形態を図1を用いて説明する。
【0012】図1はエンジン1のエネルギーを用いて駆動軸2を介して車輪3a,3bを回転し、車体を駆動する自動車である。本発明の重要な構成要素である遊星歯車4はそれぞれサンギア4s,プラネタリキャリア4p,リングギア4rから構成されている。遊星歯車4のサンギア4sは電力変換器9で制御されるモータ8により駆動される。なお、10はバッテリなどの電力貯蔵装置でモータ8が必要とするエネルギーを供給したり、モータ8で発電したエネルギーを蓄電するために用いられる。
【0013】また、歯車6は締結装置11によりエンジン1の入力軸と締結できる構成となっている。したがって、エンジン1の駆動トルクを遊星歯車4あるいは歯車6に伝達できる構成となっており、遊星歯車4あるいは歯車6から出力された出力トルクが車両駆動トルクとなる。これによって、車両は運転者が意図した加減速を得ることができる。また、電力変換器9により、モータのトルクやモータ速度を制御することで、サンギア4sを駆動すれば、車両駆動トルクやエンジン速度を調整することが可能である。さらに、遊星歯車4のリングギア4rをエンジン1の入力軸に締結する締結装置12,エンジン1の回転を止める締結装置13及び車輪3a,3bの回転を締結する締結装置14から成る。さらに、図1に示すように出力軸の歯車5,7のギア比を異なる値に設定している。
【0014】次に図1に示す実施形態でのエンジン1,モータ8の制御を行うためには、アクセルやブレーキの踏み込み量、前後進・ニュートラル等を指示する切り替え信号等、運転者が意図する運転指令を入力すると共に、車両速度,バッテリの充電状態、各部の温度等の車両状態も入力すると、これらの値の応じた運転方法を決定して運転モードを決定する。ここで運転モードは、エンジン1を停止してモータ8を駆動するモータ駆動モード,エンジンの駆動力を用いる1速モード,2速モード、及びCVTモードから構成される。以下、図1に示す実施形態における運転モード及び変速動作について説明する。
【0015】1速モードは車両速度が低速で、かつ駆動力が必要な場合で、変速状態はローギアに相当するものである。すなわち、図1においてモータ8の速度を0とする速度制御を行う。これによりモータ8は電気的にロック状態にする。また、締結装置11?14は開放しておく。このような処理を行うことにより、入力と出力のギア比が大きい遊星歯車4がサンギア4sを固定した状態でエンジン1により駆動されることになり、歯車5によってエンジン1の駆動トルクが駆動軸2を介して車輪3a,3bに伝達される。すなわち、マニュアル変速機をローギアに設定したことと等価になるためエンジンのトルクを増大できる。したがって、エンジン制御を行うことにより、必要な車両駆動トルクを制御することが可能となる。
【0016】2速モードについて、図2を用いて説明する。
【0017】2速モードは車両速度が中速度以上で、かつ低トルク領域の場合で、エンジン効率を向上できるハイギアに相当するものである。すなわち、モータ8については制御を停止し、フリーラン状態にする。また、締結装置11によりエンジンの入力軸と歯車6を締結しておき、その他の締結装置12?14は開放しておく。このような処理を行うことにより、1速モードとは反対に入力と出力のギア比が小さい歯車6がエンジン1の入力軸に固定された状態でエンジン1により駆動されることになり、歯車7によってエンジン1の駆動トルクが駆動軸2を介して車輪3a,3bに伝達される。すなわち、マニュアル変速機をハイギアに切り替えたことと等価になるために、この状態でエンジン1のエンジン制御を行うことにより、エンジン1は常に高効率運転が可能となる。
【0018】図1に示す第1の実施形態における変速動作については図3,図4を用いて説明する。まず、図3に示すように、エンジン1の速度N1から車輪3a,3bの速度N2に増速する場合の動作を説明する。この場合は締結装置11?14を開放し、変速手段の遊星歯車4により変速を行うことで実現できる。ここでエンジン1の速度N1は遊星歯車4のプラネタリキャリア4pに伝達される。遊星歯車4では、サンギア4sに接続されているモータ8を駆動し、モータ8の回転数とプラネタリキャリア4pの回転数からリングギア4rの速度をN2に変速させる変速動作を行うことによりエンジン1の速度は増速側へ移り、図3に示すように○から□に動作点が変わることになる。
【0019】次に、図4に示すように、エンジン1の速度N3から車輪3a,3bの速度N4に減速する場合の動作を説明する。この場合も締結装置11?14を開放し、変速手段の遊星歯車4により変速を行うことで実現できる。すなわち、車輪3a,3bの速度N4は遊星歯車4のリングギア4rの回転数となる。そこで、モータ8を遊星歯車4のリングギア4rとプラネタリキャリア4pの回転数の差分で決まる回転数で発電動作をさせることによりエンジン1の速度は減速側へ移り、図4に示すように黒丸から黒四角に動作点が変わることになる。
【0020】また、エンジン1の回転数を変速なしで駆動する場合は、図5に示すように締結装置12で遊星歯車4のリングギア4rとプラネタリキャリア4pを締結し、エンジン出力を直接車輪に伝達する。さらに、モータ8を駆動あるいは発電動作をさせることにより、車輪3a,3bに伝達するトルクの大きさを調整することができる。」

(エ)「【0023】なお、図1の実施形態において締結装置13,14が記してあるが、前述したように本発明の変速装置は締結装置13,14が無くても変速動作が実現できる。次に、本発明の第1の実施形態において、締結装置13,14を用いる場合について説明する。」

(オ)上記記載事項(ウ)の「1速モードは車両速度が低速で、かつ駆動力が必要な場合で、変速状態はローギアに相当するものである。すなわち、図1においてモータ8の速度を0とする速度制御を行う。これによりモータ8は電気的にロック状態にする。」(段落【0015】)との記載及び「2速モードは車両速度が中速度以上で、かつ低トルク領域の場合で、エンジン効率を向上できるハイギアに相当するものである。すなわち、モータ8については制御を停止し、フリーラン状態にする。」(段落【0017】)との記載から、1速及び2速モードで、モータ8はロックあるいはフリーラン状態にあって駆動されないことが理解できるから、残された駆動装置であるエンジン1は主駆動装置であると認められる。

(カ)上記記載事項(ウ)の「これによりモータ8は電気的にロック状態にする。また、締結装置11?14は開放しておく。このような処理を行うことにより、入力と出力のギア比が大きい遊星歯車4がサンギア4sを固定した状態でエンジン1により駆動されることになり、」(段落【0015】)との記載及び【図1】の図示内容から、遊星歯車4は、少なくともサンギア4sを固定した状態で、1ではないギヤ比を有する歯車減速機であることが理解できる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「ハイブリッド車のエンジン1用変速装置であって、エンジン1に接続されることができる唯一の入力軸と、車輪3a、3bに接続されることができる出力軸とを有し、前記エンジン1は主駆動装置を形成し、
前記変速装置は、前記入力軸と前記出力軸との間の2つの並列な動力伝達機構の伝達経路及び差動機構の伝達経路からなり、
動力伝達機構の伝達経路には、締結装置11及び歯車6、7を有する減速機があり、差動機構の伝達経路には、モータ8、遊星歯車4のリングギヤ4rとプラネタリキャリア4pを締結する締結装置12及び遊星歯車4があり、遊星歯車4は、1ではないギア比を有する歯車減速機であり、
差動機構の伝達経路はモータ8を有し、
前記歯車減速機は、プラネタリキャリア4pが前記入力軸に接続されるとともにリングギア4rが前記出力軸に接続される、プラネタリキャリア4p、リングギア4r、サンギア4sを有する遊星歯車4により形成され、
サンギア4sは、差動機構の伝達経路内にあるモータ8に接続される、
変速装置。」

イ 引用例2
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実公平7-43535号公報(以下、「引用例2」という。)には、変速切換装置に関し、図面(特に【第1図】及び【第4図】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「そして、クラツチ爪体24が円筒形伝達部材23やカム爪体34に対して次第に進角し、設定角度進角した後にクラツチ爪体24の第一の凸部32が動力伝達部31の凸部29に当接してクラツチ爪体24とカム爪体34と円筒形伝達部品23とが一体的に回転するようになる。このとき、クラツチ爪体24の第二のクラツチ爪33とカム爪体34の第二のカム爪35との間の位相差がなくなり、第二のクラツチ爪33がギヤ16の第一のクラツチ爪20に対向するとともにカム爪35がギヤ16の第一のカム爪21に対向した際にスプリング37の付勢力によつてクラツチ爪体24がカム爪体34とともにギヤ16側にスライドし、第一及び第二の斜面付カム爪21,35同士及び第一及び第二のクラツチ爪20,33同士が噛み合う。そして、入力軸2の回転がクラツチ体15とギヤ16とクラツチ爪体24とを介して出力軸3に伝達され、低速伝達状態に戻る。
なお、本実施例においては、湿式摩擦クラツチ22を作動させた際に高速伝達状態となり、湿式摩擦クラツチ22の作動を停止させている際に低速伝達状態となる変速装置について説明したが、ギヤ12,13の歯数を変更すること等により湿式摩擦クラツチ22を作動させた際に低速伝達状態となる変速装置としてもよい。」(第4ページ左欄第41行-右欄第12行)

(イ)上記記載事項(ア)及び図示内容から、引用例2には、変速装置のクラッチを、クラツチ爪体24を有するクラッチとしたことが記載されていると認められる。

ウ 引用例3
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2006-528310号公報(以下、「引用例3」という。)には、単一クラッチ変速装置に関し、図面(特に【図2】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0019】
図2は、単一クラッチ自動手動型変速装置18の第1実施形態を示している。ブラボー駆動装置32からの垂直な出力シャフトは、本発明の変速装置器具のための入力シャフト32である。ベアリング34がこのシャフトを支持している。入力シャフト32の外部にはギヤ36が取り付けられている。ギヤ36は、入力シャフト32に対して平行に延びている副シャフト40に取り付けられたギヤ38に噛み合っている。このギヤは、シフト機構42の位置によって決まるが、そのギヤとともに回転する副シャフトに係合してもよく、あるいはその副シャフトの周りに自由に回転してもよい。このシフト機構は、図2では、44で係合する位置と46で係合解除する位置との2つの位置に示されている。このシフト機構は、油圧的に、機械的に、あるいは電気的に、または他の任意の適切な手段によって作動することができる。」

(イ)上記記載事項(ア)に照らせば、【図2】からは、単一クラッチ自動手動変速装置18のシフト機構42を、爪クラッチを有するものとした点が見て取れる。

エ 引用例4
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-137332号公報(以下、「引用例4」という。)には、ハイブリッド車用駆動装置及びその制御方法に関し、図面(特に【図1】参照。)とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0026】
この図1に示すように、この駆動装置1のシステム構成は、駆動力の伝達経路に沿って、エンジンE、第一クラッチC1、モータ・ジェネレータM/G、第二クラッチC2としても機能する変速機2、車輪Wの順に直列に接続された構成として表すことができる。なお、図1では、本実施形態に係る駆動装置1のシステム構成を分かりやすく表現するために、変速機2の内部を第二クラッチC2と変速機構7とに分離して機能的に表現している。」

(イ)上記記載事項(ア)に照らせば、【図1】からは、駆動装置としてモータ・ジェネレータM/G及びエンジンEを採用し、この駆動装置を変速機2の入力に接続し、モータ・ジェネレータM/G又はエンジンEを主駆動装置とするハイブリッド車の構成が見て取れる。

オ 引用例5
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-179242号公報(以下、「引用例5」という。)には、ハイブリッド車用の変速時モード切り替え制御装置に関し、図面(特に【図1】参照。)とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の変速時モード切り替え制御装置を適用可能なハイブリッド駆動装置を具えたフロントエンジン・リヤホイールドライブ式ハイブリッド車両のパワートレーンを示し、1はエンジン、2は駆動車輪(後輪)である。
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置し、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合してモータ/ジェネレータ5を設ける。」

(イ)上記記載事項(ア)に照らせば、【図1】からは、ハイブリッド駆動装置としてモータ/ジェネレータ5及びエンジン1を採用し、このハイブリッド駆動装置を自動変速機3の入力軸3aに接続し、モータ/ジェネレータ5又はエンジン1を主駆動装置とするハイブリッド車両の構成が見て取れる。

カ 引用例6
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-30802号公報(以下、「引用例6」という。)には、自動変速同期式複合原動機システムに関し、図面(特に【図1-2】参照。)とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】変速機を備えた自動車用原動機システムにおいて、原動機と変速機の間に通常設けられる変速ショックの緩衝機構、たとえばクラッチ、トルクコンバータ、流体クラッチまたはこれらに類する機構、を省略して簡易化し、自由自在の変速動作を可能にしながら、従来よりも変速ショックを軽減できる自動車用原動機システムとその制御装置に関する。この技術の主たる活用分野は原動機として電動機か電動機を含む複合原動機を採用した電気自動車においてであるが、従来型の原動機システムにも適用可能である。」

(イ)「【0036】図1-1には請求項1に関する原動機システムが図示してある。この構成では、100.原動機と、その回転速度を検出するための、190.回転速度センサー2と、原動機出力軸に連結された、200.変速機と、その出力回転速度を検出する、290.回転速度センサー1を備えている。」

(ウ)「【0043】図1-2には請求項2に関する実施例を図示した。このものは請求項1における100.原動機が、101.熱機関と、102.伝動装置と、103.電動機によって構成されている。その他の構造については請求項1と同様である。」

(エ)上記記載事項(ア)-(ウ)に照らせば、【図1-2】からは、原動機100として電動機103及び熱機関101を採用し、この原動機100を変速機200の入力に接続し、電動機103又は熱機関101を主駆動装置とする、電動機を含む複合原動機を採用した電気自動車の構成が見て取れる。

キ 引用例7
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-13912号公報(以下、「引用例7」という。)には、ハイブリッド車両およびその制御方法に関し、図面(特に【図25】参照。)とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0108】図25は、第2ギヤ112と第3ギヤ113を噛合した状態を示している。アシストモータ140のロータ142はプラネタリギヤ200のプラネタリキャリア軸206と結合する。従って、図25に示す通り、エンジン150から出力された動力は、アシストモータ140、プラネタリギヤ200を経て駆動軸116に伝達される。これは、実施例におけるオーバードライブ結合(図3)に相当する結合状態である。」

(イ)上記記載事項(ア)に照らせば、【図25】からは、駆動装置としてアシストモータ140及びエンジン150を採用し、この駆動装置をプラネタリギア200のプラネタリキャリア軸206に接続し、アシストモータ140又はエンジン150を主駆動装置とするハイブリッド車両の構成が見て取れる。

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「変速装置」は、本願補正発明の「トランスミッション」に相当し、以下同様に、「入力軸」は「入力」に、「車輪3a、3b」は「負荷」に、「出力軸」は「出力」に、「エンジン1」は「内燃機関」に、「2つの並列な動力伝達機構の伝達経路及び差動機構の伝達経路」は「2つの並列な伝達経路」に、「締結装置11」「締結装置12」及び「モータ8」は「カップリング手段」に、「動力伝達機構の歯車6、7を有する減速機」及び「遊星歯車4」は「減速機」に、「締結装置11」は「一方の第1カップリング手段」に、「差動機構の伝達経路のモータ8」は「他方の第2のカップリング手段」に、「モータ8」は「さらなる電気モータ/発電機」に、「プラネタリキャリア4p」は「第1回転部材」に、「リングギア4r」は「第2回転部材」に、「プラネタリキャリア4p、リングギア4r、サンギア4s」は「少なくとも3つの回転部材」に、「サンギア4s」は「第3回転部材」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「エンジン1」と、本件補正発明の「電気および/またはハイブリッド駆動装置」とは、「駆動装置」という限りで共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点1-3で相違する。

[一致点]
「トランスミッションであって、唯一の入力と、負荷に接続されることができる出力とを有し、電気モータ/発電機または内燃機関は主駆動装置を形成し、
前記トランスミッションは、前記入力と前記出力との間の2つの並列な伝達経路からなり、
それぞれの前記伝達経路には、カップリング手段及び1つの減速機があり、
前記減速機の少なくとも一方は、1ではないギヤ比を有する歯車減速機であり、
前記カップリング手段の他方の第2カップリング手段は、摩擦クラッチまたは摩擦ブレーキまたはさらなる電気モータ/発電機により形成され、
前記歯車減速機は、第1回転部材が前記入力に接続されるとともに第2回転部材が前記出力に接続される少なくとも3つの回転部材を有する遊星歯車装置により形成され、
第3回転部材は、関連する前記伝達経路内にある前記第1カップリング手段または前記第2カップリング手段に接続される、
トランスミッション。」

[相違点1]
本願補正発明は、トランスミッションが「電気および/またはハイブリッド駆動装置用トランスミッション」であって、トランスミッションの唯一の入力が「電気駆動の場合に、電気モータ/発電機に接続されることができるとともに、ハイブリッド駆動の場合に、前記電気モータ/発電機におよび内燃機関に接続されることができる」ものであり、主駆動機関が「前記電気モータ/発電機または前記内燃機関」であるのに対し、引用発明は、変速装置がエンジン1用変速装置であって、入力軸がエンジン1に接続されることができるものであり、主駆動機関がエンジン1である点。

[相違点2]
本願補正発明は、「それぞれの前記伝達経路には、唯一のカップリング手段」があり、「前記カップリング手段の他方の第2カップリング手段は、摩擦クラッチまたは摩擦ブレーキまたはさらなる電気モータ/発電機により形成され」るのに対し、引用発明は、「動力伝達機構の伝達経路」に「締結装置11」があり、「差動機構の伝達経路」には「締結装置12」及び「モータ8」の2つがある点。

[相違点3]
本願補正発明の「一方の第1カップリング手段」は「爪クラッチまたは爪ブレーキまたはシンクロメッシュ」を有するのに対し、引用発明の「締結装置11」は何を有するのか不明な点。

(3)当審の判断
以下、相違点1-3について検討する。

ア 相違点1について
ハイブリッド車の技術分野において、駆動装置に電気モータ/発電機及び内燃機関を採用し、この駆動装置をトランスミッションの入力に接続し、電気モータ/発電機又は内燃機関を主駆動装置とする構成は、本願の優先日前に周知の構成(以下、「周知技術1」という。引用例4-7参照。)であると認められる。
そして、引用発明も、ハイブリッド車の技術分野に属する発明であるから、引用発明のエンジン1を駆動装置とする構成を、周知技術1に置き換え、電気モータ/発電機及び内燃機関を駆動機関とする構成を想起することに、特段の困難性は認められない。
そうすると、前記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に成し得たことである。

イ 相違点2について
引用例1に「なお、図1の実施形態において締結装置13,14が記してあるが、前述したように本発明の変速装置は締結装置13,14が無くても変速動作が実現できる。」(上記(1)ア(エ)の段落【0023】)との記載があり、変速動作が実現できる範囲で、締結装置は無くし得ると解される。
そして、引用発明の締結装置12は、遊星歯車4のリングギヤ4rとプラネタリキャリア4pを締結して遊星歯車4のギア比を1とし、「エンジン1の回転数を変速なしで駆動する場合」(上記(1)ア(ウ)の段落【0020】)に利用されるが、遊星歯車4のギア比を1とすることは、サンギア4sの回転速度をプラネタリキャリア4pの回転速度と一致するようにモータ8の回転速度を制御することによっても実現可能であることは、当業者であれば容易に理解できるものと認められる。
そうすると、締結装置12が無くても、引用発明の変速装置の変速動作は実現できるのであるから、引用発明から締結装置12を無くすことで、動力伝達機構の伝達経路には、唯一の締結装置11があり、差動機構の伝達経路には、唯一のモータ8があるようにして、前記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明に基いて当業者が容易に成し得たことである。

ウ 相違点3について
変速装置の技術分野において、変速装置の締結装置を、爪クラッチを有する締結装置とすることは周知の技術手段(以下、「周知技術2」という。引用例2及び3参照。)である。
そして、引用発明の変速装置の締結装置11にこの周知技術2を採用することについて、特段の困難性は認められない。
そうすると、前記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明及び周知技術2に基いて当業者が容易に成し得たことである。

また、本願補正発明による効果は、全体としてみても、引用発明並びに周知技術1及び2から当業者が予測できる程度のものであって、格別顕著なものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明の内容
平成29年4月5日付けの手続補正は上記のように却下されたので、本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年6月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1に、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶理由に引用された刊行物である引用例1の記載事項及び引用発明並びに周知技術1及び2を示すために引用された引用例2-7の記載事項は、前記第2[理由]3(1)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、前記第2[理由]2で検討したように、本願発明の発明特定事項を限定したものに該当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2[理由]3(3)に記載したとおり、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-20 
結審通知日 2017-11-21 
審決日 2017-12-04 
出願番号 特願2015-40872(P2015-40872)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16H)
P 1 8・ 121- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 小関 峰夫
内田 博之
発明の名称 電気またはハイブリッド駆動装置用トランスミッション  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
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