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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
管理番号 1339664
審判番号 不服2015-13327  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-13 
確定日 2018-04-23 
事件の表示 特願2011-548606「構造化されたペプチドプロセシング」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日国際公開、WO2010/089116、平成25年 5月23日国内公表、特表2013-518558〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年2月4日を国際出願日とする出願であって、 平成27年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付の手続補正書が提出されたものであり、以降の手続は概ね以下のとおりである。
平成28年 6月13日付け 当審拒絶理由通知
平成28年12月13日 意見書、手続補正書
平成29年 1月13日付け 当審拒絶理由通知
平成29年 6月15日 意見書、手続補正書
平成29年 6月21日付け 当審拒絶理由通知(最後の拒絶理由通知)
平成29年 11月21日 意見書

第2 平成29年6月15日付け手続補正
平成29年6月15日付け手続補正は、特許請求の範囲の請求項1および請求項2を以下のとおりに補正するものである。

「【請求項1】
(a)遺伝学的ディスプレイ系において1以上のペプチドリガンド候補を提示するステップと、ここで、ペプチドリガンド候補は、分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含み、
(b)提示されたペプチドリガンド候補と分子足場とを反応させるステップと、
(c)前記ペプチドリガンド候補を複数のプロテアーゼに曝露するステップと、
(d)前記ペプチドリガンド候補を非プロテアーゼ標的タンパク質に対する結合についてスクリーニングし、非プロテアーゼ標的タンパク質に結合し、前記複数のプロテアーゼによる切断に耐性であるペプチドリガンドを選択するステップとを含む、2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンドをスクリーニングするための方法。
【請求項2】
(a)遺伝学的ディスプレイ系において1以上のペプチドリガンド候補を提示するステップと、ここで、ペプチドリガンド候補は、分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含み、
(b)提示されたペプチドリガンド候補と分子足場とを反応させるステップと、
(c)前記ペプチドリガンド候補を標的に対する結合についてプロテアーゼ非存在下でスクリーニングし、前記標的に結合する該ペプチドリガンド候補を選択するステップと、
(d)前記標的に結合する前記ペプチドリガンド候補を1以上のプロテアーゼに曝露するステップと、
(e)プロテアーゼ切断に耐性かつ前記標的に対して結合するペプチドリガンドをさらにスクリーニングするステップと
を含む、2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンドをスクリーニングするための方法。」


第3 当審の判断
1.外国語書面の翻訳文の記載について
外国語書面の翻訳文には、補正後の請求項1、2に特定される、「2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンド」が、「分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含」むものであることの明示的な記載はない。
そこで、外国語書面の翻訳文全体の記載について、さらに検討する。

(1)外国語書面の翻訳文の記載
本願の外国語書面の翻訳文には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。
(ア)「【0013】
適用できる系としては、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームもしくはポリソームディスプレイ、mRNAディスプレイおよび人工マイクロカプセルでのインビトロ発現が挙げられる。mRNAディスプレイ系は、Litovchick et al.,PNAS October 7,2008 vol.105 no.40;15293-15298に記載されている。好ましい技法は、糸状バクテリオファージを用いるファージディスプレイである。」
(イ)「【0015】
ペプチドリガンドは、分子足場に結合した少なくとも2つの反応基間に内在するアミノ酸配列により形成された、少なくとも1つのポリペプチドループを含む。好ましくは、ペプチドリガンドは2以上のループを含み、3、4またはそれ以上のループを含むこともできる。例えば、ポリペプチドは、3以上の反応基を含んでよく、それらの間には2以上のループが内在する。3つの反応基を含むポリペプチドは、直鎖状の形態の2つのループ、または環状化した場合は3つのループを支持することになる。
【0016】
本発明の方法の特定の用途は、ペプチドリガンドのレパートリーを作成することである。かかるレパートリーは、例えば、WO2009098450号に記載されるように、ポリペプチドのレパートリーをファージ上に提示させ、その後にそれらを分子足場にコンジュゲートすることにより作成することができる。」
(ウ)「【0038】
本明細書において言及される、ペプチドリガンドとは、分子足場と共有結合したペプチドをさす。一般に、かかるペプチドは、足場と共有結合を形成する能力のある2以上の反応基、および、ペプチドが足場と結合する場合にそれがループを形成するのでループ配列と呼ばれる前記反応基間に内在する配列を含む。
【0039】
反応基は、分子足場と共有結合を形成する能力のある基である。一般に、反応基はペプチド上のアミノ酸側鎖に存在する。好ましいものは、システイン、リジンおよびセレノシステインなどのアミノ含有基である。」
(エ)「【0047】
分子足場は、複数の点でペプチドを結び付けて、1以上の構造的特徴をペプチドに付与する能力のある分子である。分子足場は、ただ単にジスルフィド結合を置き換えないという点において、架橋剤ではなく、その代わりに、分子足場は2以上のペプチドの結合点を提供する。好ましくは、分子足場は、足場反応基と呼ばれる、少なくとも3つのペプチドの結合点を含む。これらの基は、ペプチド上の反応基と反応して共有結合を形成する能力がある。分子足場に好ましい構造は、下に記載される。」
(オ)「【0056】
(i)分子足場
分子足場は、「分子コア」または「連結化合物」と呼ばれることもある。好適には、分子足場は、分子対称性を有する。好適には、分子足場は3つの足場反応基を有し、3回対称性を有する。これには、単一の反応生成物のみを生成するという利点がある。分子足場が対称分子でない場合には、複数の反応生成物が生成される可能性がある。これは、複雑な状態を引き起こし得るか、または、所望の異性体をその他の反応生成物から分離することを必要とし得る。
【0057】
好適には、分子足場は小分子であってよい。好適には、分子足場は有機小分子である。
【0058】
好適には、分子足場は、天然モノマー、例えばヌクレオシド、糖、またはステロイドなどであってもよいし、またはそれらに基づいていてもよい。好適には、分子足場は、かかる物質の短いポリマー、例えば二量体または三量体を含んでよい。
【0059】
好適には、分子足場は、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、特に1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(「TBMB」)、またはその誘導体を含んでもよいし、それからなってもよい。
【0060】
別の適した分子足場は、2,4,6-トリス(ブロモメチル)メシチレンである。それは1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンに類似するが、ベンゼン環に結合した3つのメチル基をさらに含む。これは、さらなるメチル基が、ポリペプチドとのさらなる接触点を形成することができ、そのためにさらなる構造的制約を加える点で有利である。
【0061】
本発明の分子足場は、小分子かまたは巨大分子構造のいずれかから選択される。前記分子足場は、有機、無機または有機および無機成分からなる。
【0062】
好ましい実施形態では、分子足場は、例えば直鎖アルカンのような有機小分子である。より好適には、分子足場は、分枝アルカン、環状アルカン、多環式アルカン、アロメート(aromate)、複素環式アルカンまたは複素環式アロメートであり、これらは柔軟性が低い(すなわち、より硬質である)という利点をもたらす。最も好適には、分子足場は、ベンジル基を含む。
【0063】
もう1つの実施形態では、分子足場は、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは多糖のような巨大分子構造から選択される。
【0064】
本発明の分子足場は、本発明のコードされたライブラリーのポリペプチドの官能基が分子足場との共有結合を形成することを許容する化学基を含む。前記化学基は、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、無水物、スクシンイミド、マレイミド、アジド、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アシルを含む広い範囲の官能基から選択される。
【0065】
(ii)ポリペプチド
コードされたポリペプチドの反応基は、好適には天然もしくは非天然アミノ酸の側鎖により提供される。コードされたポリペプチドの反応基は、好適にはチオール基、アミノ基、カルボキシル基、グアニジウム基、フェノール基またはヒドロキシル基から選択される。コードされたポリペプチドの反応基は、好適にはアジド基、ケト-カルボニル基、アルキン基、ビニル基、またはハロゲン化アリール基から選択されてよい。分子足場に連結するためのコードされたポリペプチドの反応基は、好適にはポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端であり得る。
【0066】
一部の実施形態では、分子足場に連結するためのポリペプチドの反応基の各々は、同じ種類のものである。例えば、各々の反応基は、システイン残基であってよい。
【0067】
遺伝的にコードされたコンビナトリアル化学ライブラリーのメンバーの適切なアミノ酸は、任意の天然もしくは非天然アミノ酸により置換することができる。ポリペプチドを分子コアに架橋するための官能基をもつものは、これらの置換可能なアミノ酸から除去される。改変が可能な隣接するアミノ酸の群は、ポリペプチドセグメントと規定される。単一のポリペプチドセグメントのサイズは、好適には1?20アミノ酸の範囲である。ポリペプチドセグメントは、ランダム配列、定常配列またはランダムアミノ酸と定常アミノ酸を含む配列のいずれかを有する。反応基を含むアミノ酸は、本発明のコードされたポリペプチド内の規定された位置またはランダム位置のいずれかに位置する。
【0068】
一実施形態では、分子足場/分子コアと結合するための反応基を有する2つのアミノ酸により挟まれるポリペプチドセグメントは、10またはそれよりも少ないアミノ酸からなる短いアミノ酸配列である。前記コードされたポリペプチド配列と分子コアとの反応により、高い構造的制約を有するライブラリーメンバーが作製される。構造的に制約されたリガンドは、一般に特異性がより高く、より高い結合親和性を有する。
【0069】
(iii)ポリペプチドの反応基
本発明の分子足場は、ポリペプチド上の官能基また反応基を介してポリペプチドに結合させることができる。これらは、一般にポリペプチドポリマー中に見出される特定のアミノ酸の側鎖から形成される。かかる反応基は、システイン側鎖、リジン側鎖、あるいはN末端アミン基または任意のその他の適した反応基であってよい。
【0070】
好適には、少なくとも1つの反応基は、システイン基である。リジンまたはN末端アミンなどの基は、一般に便宜な時間枠内で独力で分子足場と結合するほど十分に反応性ではない。しかし、ひとたび分子足場が少なくとも1つのシステインに引き付けられるかまたは結合すれば、通常の反応速度論は、リジン結合またはアミン結合はそれ以降迅速かつ安定して形成され得ることが意味する。この理由から、好適には少なくとも1つの反応基はシステイン基である。
【0071】
ポリペプチド上にシステイン/リジン/アミン基以外の反応基を所望する場合、標的ポリペプチド上の最適な特定の官能性反応基と対とするために、異なる分子足場を選んでよい。
【0072】
好適には、システイン、リジンまたはアミン基を、目的のポリペプチド上の官能性または反応基として使用する。
【0073】
好適には、少なくとも3つの共有結合が分子足場と目的のポリペプチドとの間に形成される。」

(2)外国語書面の翻訳文の記載から理解される事項
上記(ア)?(オ)より、「2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンド」について、外国語書面の翻訳文には、次のような事項が記載されていると認められる。
まず、「ペプチドリガンド」は、好適には1?20アミノ酸を有する『単一のポリペプチド鎖』であり、該『単一のポリペプチド鎖』はファージのような遺伝的ディスプレイ系に提示され、そのアミノ酸配列中に、分子足場と反応する反応基となる残基を有する、システインなどの反応性アミノ酸を含有している
そして、該『単一のポリペプチド鎖』の反応性アミノ酸の残基である反応基に、2以上の足場反応基を有する『分子足場』の足場反応基を反応させて、共有結合を形成する。該『分子足場』が2つの足場反応基を有する場合には、該『単一のポリペプチド』中の2つの反応基と共有結合することで1つのループが形成され、該『分子足場』が3つの足場反応基を有する場合には、該『単一のポリペプチド鎖』中の3つの反応基と共有結合することで2つのループが形成される。『分子足場』は3つの足場反応基を有することが好適であるとされている。
また、段落【0068】に記載される「分子足場/分子コアと結合するための反応基を有する2つのアミノ酸により挟まれるポリペプチドセグメントは、10またはそれよりも少ないアミノ酸からなる短いアミノ酸配列である。」の記載にいう「反応基を有する・・・アミノ酸」とは、『単一のポリペプチド鎖』のアミノ酸配列中にあり、『分子足場』の足場反応基と反応する反応基を有するシステインのような反応性アミノ酸であり、上記記載にいう「2つのアミノ酸により挟まれるポリペプチドセグメント」とは、反応性アミノ酸2つに挟まれた部分であると認められる。そして、この「反応基を有する2つのアミノ酸により挟まれるポリペプチドセグメント」とは、『単一のポリペプチド鎖』の一部であると認められる。
さらに、「反応基を有する2つのアミノ酸により挟まれる」部分、すなわち“2つの反応基の「間」”の部分は『単一のポリペプチド鎖』のアミノ酸配列中に存在するから、『単一のポリペプチド鎖』のアミノ酸配列の違いによって、『単一のポリペプチド鎖』における反応性アミノ酸の位置や、2つの反応性アミノ酸間のアミノ酸の数が変わること、つまり、“2つの反応基の「間」”に内在するアミノ酸の数が変わることが理解される。
加えて、『単一のポリペプチド鎖』のアミノ酸配列の両末端に『分子足場』の反応基と結合する反応性アミノ酸が存在する場合には、『単一のポリペプチド鎖』の全体がループの“2つの反応基の「間」”に含まれることになり、ループが1つであれば、“2つの反応基の「間」”のアミノ酸配列は、『単一のポリペプチド鎖』の全体となり、ループが2つであれば、第1のループの“2つの反応基の「間」”のアミノ酸配列と第2のループの“2つの反応基の「間」”のアミノ酸配列とを合わせたアミノ酸配列が、『単一のポリペプチド鎖』の全体となることも理解される。

したがって、外国語書面の翻訳文の記載から、ペプチドリガンドのアミノ酸の数の上限が好適には20であること、そのときに、
・『分子足場』が2つの足場反応基を有し、ループが1つ形成される場合には、該ループの“2つの反応基の「間」”のアミノ酸配列には2(2つの反応性アミノ酸)?20のアミノ酸が存在し、
・『分子足場』が3つの足場反応基を有し、ループが2つ形成される場合には、2つのループの“2つの反応基の「間」”のそれぞれのアミノ酸配列を合わせたアミノ酸配列には、3(3つの反応性アミノ酸)?20のアミノ酸が存在すること、が理解される。

2.補正後の請求項1、2の特定について
補正後の請求項1、2には、「2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンド」の構造が、
「分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含」むことが特定されていると認められる。
そして、補正後の請求項1、2に記載される「2つの前記反応基間」とは、上記1.(2)で述べた、反応性アミノ酸2つに挟まれた部分である“2つの反応基の「間」”に相当すると認められ、「2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸」とは、“2つの反応基の「間」”のアミノ酸の数が2?20であることを特定していると認められる。また、ループが1つの場合には、反応基が2つ、“2つの反応基の「間」”が1つ存在し、ループが2つの場合には、反応基が3つ、“2つの反応基の「間」”が2つ存在すると認められる。

3.判断
「2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンド」について、「分子足場と共有結合を形成する2つ・・・の反応基」を有する場合、すなわち、『分子足場』が2つの足場反応基を有する場合に、1つのループが形成され、ループに存在する“2つの反応基の「間」”に内在するアミノ酸が「2?20のアミノ酸」であることは、上記1(2)のとおり、外国語書面の翻訳文の記載から一応理解することができる。
しかし、「分子足場と共有結合を形成する・・・3つの反応基」を有する場合、すなわち、『分子足場』が3つの足場反応基を有する場合に、ループに存在する“2つの反応基の「間」”に内在するアミノ酸が「2?20のアミノ酸」であることが外国語書面の翻訳文に記載されているとは認められない。
すなわち、『分子足場』が3つの足場反応基を有する場合には、2つのループが形成されるが、外国語書面の翻訳文に、この2つのループのそれぞれに存在する“2つの反応基の「間」”に、それぞれ「2?20のアミノ酸からなる配列」であること、つまり、2つの“2つの反応基の「間」”に、それぞれ20を上限とするアミノ酸を有することが記載されているとも、示唆されているとも認められない。
そうすると、外国語書面の翻訳文に、「2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンド」が、「分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含」むことが記載されているとは認められない。
したがって、補正後の請求項1、2における上記特定は、本願の外国語書面の翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとは認められない。

4.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成29年11月21日付け意見書において、
「外国語書面の翻訳文は、2つの前記反応基間に内在する2以上のアミノ酸からなる配列を含む少なくとも1つのループを記載しており(例えば段落[0011])、ポリペプチドセグメント(すなわちループ)のサイズが1?20アミノ酸の範囲であることを記載しています(例えば段落[0067])。審判官殿が言及された段落[0068]の記載は、段落[0067]に記載された実施形態のうちの特定の実施形態です。段落[0067]には、単一のポリペプチドセグメント(すなわちループ)の好適なサイズが1?20アミノ酸の範囲であることが記載されています。
したがって、外国語書面の翻訳文は、反応基間のアミノ酸の数が2?20に特定されるループを含むペプチドリガンド候補記載しており、平成29年6月15日付けでした手続補正は、下記の点で外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであると思料いたします。」と主張している。

そこで、以下、検討する。
審判請求人は、「ポリペプチドセグメント(すなわちループ)」としているが、「ポリペプチドセグメント(ペプチドリガンド)」と「ループ」とは、同じものではない。
上記1.(2)で述べたとおり、「ループ」は「ペプチドリガンド」に分子足場を反応させることによって形成されるものであり、「ループ」の反応性アミノ酸2つに挟まれた部分は、「ペプチドリガンド」の一部である。
したがって、審判請求人の主張は誤りである。

外国語書面の翻訳文には、ペプチドリガンド(ポリペプチドセグメント)のアミノ酸の数に関して、「単一のポリペプチドセグメントのサイズは、好適には1?20アミノ酸の範囲である。」(段落【0067】)と記載されており、また、ループの反応性アミノ酸2つに挟まれた部分のアミノ酸の数に関して、「分子足場/分子コアと結合するための反応基を有する2つのアミノ酸により挟まれるポリペプチドセグメントは、10またはそれよりも少ないアミノ酸からなる短いアミノ酸配列である。」(段落【0068】)と記載されている。
すなわち、外国語書面の翻訳文には、「ペプチドリガンド」全体のアミノ酸の数の上限が好適には20であること、「ループ」の反応性アミノ酸2つに挟まれた部分(“2つの反応基の「間」”)のアミノ酸の数の上限が10であることが記載されていると認められるが、「ループ」の反応性アミノ酸2つに挟まれた部分のアミノ酸の数の上限が20であることについては、記載されているとも示唆されているとも認められない。
例えば、「ペプチドリガンド」が2つの「ループ」を含み、2つの「ループ」の“2つの反応基の「間」”にそれぞれ20のアミノ酸からなる配列を有する場合には、「ペプチドリガンド」全体は39以上のアミノ酸を有することになると考えられるが、そのようなものは、外国語書面の翻訳文の段落【0067】における、ペプチドリガンド(ポリペプチドセグメント)が「1?20のアミノ酸の範囲」という記載と整合しないことになる。

5.小活
よって、平成29年6月15日付けでした手続補正は、外国語書面の翻訳文に記載された事項の範囲内においてしたものとは認められず、新規事項を追加するものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

以上のとおり、本願は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものであるが、平成29年6月15日付け手続補正による補正後の請求項1に記載される「2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループ」は、反応基間のアミノ酸が2?20であるから、反応基間のアミノ酸が2?10の範囲を包含するものである。
そして、平成29年6月21日付けの当審拒絶理由通知に、
「仮に、反応基間のアミノ酸が2?10に特定されたとしても、引用例2の段落【0136】に同様の事項が記載されていることを念のために指摘しておく。」と記載したとおり、補正後の請求項1は、平成29年1月13日付けの当審拒絶理由を解消しているとはいえないから、以下、その点についても述べる。


第4 平成29年1月13日付けの当審拒絶理由について
1.平成29年1月13日付けの当審拒絶理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(理由2)という理由を含むものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年6月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(a)遺伝学的ディスプレイ系において1以上のペプチドリガンド候補を提示するステップと、ここで、ペプチドリガンド候補は、分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含み、
(b)提示されたペプチドリガンド候補と分子足場とを反応させるステップと、
(c)前記ペプチドリガンド候補を複数のプロテアーゼに曝露するステップと、
(d)前記ペプチドリガンド候補を非プロテアーゼ標的タンパク質に対する結合についてスクリーニングし、非プロテアーゼ標的タンパク質に結合し、前記複数のプロテアーゼによる切断に耐性であるペプチドリガンドを選択するステップとを含む、2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している1以上のペプチドリガンドをスクリーニングするための方法。」

3.引用例
(1)本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第2008/149143号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるため、パテントファミリーである特表2010-528645号公報の記載を翻訳文として記載する。
「1.ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーからプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択する方法であって、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供するステップ、そのレパートリーとプロテアーゼをプロテアーゼ活性に好適な条件下で組合わせるステップ、およびプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択する、所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを回収するステップを含んでなり、ここでプロテアーゼは痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄液、肺ホモジネート、肺抽出液、膵臓抽出液、胃液、唾液または涙中に見出されるプロテアーゼから選択される前記方法。
・・・・
11.前記所望の生物学的活性が結合活性である、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
・・・・
14.前記結合活性が標的リガンドとの特異的結合である、請求項11に記載の方法。
15.前記標的リガンドが、ApoE、Apo-SAA、BDNF、カルジオトロフィン-1、CEA、CD40、CD40リガンド、CD56、CD38、CD138、EGF、EGF受容体、ENA-78、エオタキシン、エオタキシン-2、Exodus-2、FAPα、酸性FGF、塩基性FGF、繊維芽細胞成長因子-10、FLT3リガンド、フラクタルカイン(CX3C)、GDNF、G-CSF、GM-CSF、GF-β1、ヒト血清アルブミン、インスリン、IFN-γ、IGF-I、IGF-II、IL-1α、IL-1β、IL-1受容体、IL-1受容体1型、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8(72a.a.)、IL-8(77a.a.)、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18(IGIF)、インヒビンα、インヒビンβ、IP-10、ケラチノサイト成長因子-2(KGF-2)、KGF、レプチン、LIF、リンフォタクチン、ミューラー阻害物質、単球コロニー阻害因子、単球誘引タンパク質、M-CSF、MDC(67a.a.)、MDC(69a.a.)、MCP-1(MCAF)、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MDC(67a.a.)、MDC(69a.a.)、MIG、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3α、MIP-3β、MIP-4、骨髄前駆体インヒビター因子-1(MPIF-1)、NAP-2、ニュールツリン、神経成長因子、β-NGF、NT-3、NT-4、オンコスタチンM、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PF-4、RANTES、SDF1α、SDF1β、SCF、SCGF、幹細胞因子(SCF)、TARC、TGF-α、TGF-β、TGF-β2、TGF-β3、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF-α、TNF-β、TNF受容体I、TNF受容体II、TNIL-1、TPO、VEGF、VEGF A、VEGF B、VEGF C、VEGF D、VEGF受容体1、VEGF受容体2、VEGF受容体3、GCP-2、GRO/MGSA、GRO-β、GRO-γ、HCC1、1-309、HER 1、HER 2、HER 3、HER 4、血清アルブミン、vWF、アミロイドタンパク質(例えば、アミロイドα)、MMP12、PDK1、IgE、IL-13Rα1、IL-13Rα2、IL-15、IL-15R、IL-16、IL-17R、IL-17、IL-18、IL-18R、IL-23、IL-23R、IL-25、CD2、CD4、CD11a、CD23、CD25、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD56、CD138、ALK5、EGFR、FcER1、TGFb、CCL2、CCL18、CEA、CR8、CTGF、CXCL12(SDF-1)、キマーゼ、FGF、フューリン、エンドテリン-1、エオタキシン類(例えば、エオタキシン、エオタキシン-2、エオタキシン-3)、GM-CSF、ICAM-1、ICOS、IgE、IFNa、I-309、インテグリン、L-セレクチン、MIF、MIP4、MDC、MCP-1、MMP、好中球エラスターゼ、オステオポンチン、OX-40、PARC、PD-1、RANTES、SCF、SDF-1、siglec-8、TARC、TGFb、トロンビン、Tim-1、TNF、TRANCE、トリプターゼ、VEGF、VLA-4、VCAM、α4β7、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CCR8、αvβ6、αvβ8、cMET、CD8、vWF、アミロイドタンパク質(例えば、アミロイドα)、MMP12、PDK1、およびIgEからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
・・・・
17.前記レパートリーがディスプレイシステムを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
18.前記ディスプレイシステムがバクテリオファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、乳濁液コンパートメント化ディスプレイ、酵母ディスプレイ、ピューロマイシンディスプレイ、細菌ディスプレイ、プラスミド上のディスプレイ、または共有結合ディスプレイからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。」(特許請求の範囲)

(2)本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第2009/098450号 (以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるため、パテントファミリーである特表2011-514803号公報の記載を翻訳文として記載する。
(2-1)「1.ファージ粒子を含む複合体であって、
(i)ポリペプチド、
(ii)(i)のポリペプチドをコードする核酸、
(iii)上記ポリペプチドに結合した連結化合物
を含み、上記連結化合物は、少なくとも3つの異なる共有結合により上記ポリペプチドに結合している、上記複合体。」(特許請求の範囲)

(2-2)「発明の概要
本発明は、有利なことに、遺伝的にコード化された多様性、特に遺伝的にコード化されたポリペプチドライブラリーと、化学的修飾及び構造的制約の組合せを可能にする。
さらに、本明細書に開示される方法は、少なくとも3つの共有結合により連結化合物とポリペプチド分子の連結を初めて達成する。これは、ポリペプチドの構造的制約、特に、ポリペプチドの少なくとも2つのセグメントの互いに対する構造的制約という利点をもたらす。対照的に、従来の架橋方法、すなわち、2つの共有結合のみを形成する連結物質の使用では、ポリペプチドの単一セグメントしか制約しない。
本発明の利点はこれらの技術的特徴から生じるものであるが、例えばその三重結合構造により、本発明のコンジュゲート分子は2つ以上のペプチドループを有し、これらループは標的と相互作用することができる。複数の結合ループによって、単一ペプチドループのみを有する分子より高い結合親和性を得ることができる。
さらに、標的との相互作用のための2つ以上の結合ループを含む本発明の1分子の相互作用表面は、標的との単一ペプチドループしか含まない1分子の表面より広い。結合表面が広い方が、改善された結合親和性を提供することができ、及び/又は改善された特異性も提供することができる。
従って、一態様では、本発明は、
(i)ポリペプチド、
(ii)(i)のポリペプチドをコードする核酸、
(iii)上記ポリペプチドに結合した連結化合物
を含み、上記連結化合物は、少なくとも3つの異なる共有結合により上記ポリペプチドに結合している複合体を提供する。
さらに具体的には、本発明は、ファージ粒子を含む複合体であって、該ファージ粒子が、
(i)ポリペプチド、
(ii)(i)のポリペプチドをコードする核酸、
(iii)上記ポリペプチドに結合した連結化合物
を含み、上記連結化合物は、少なくとも3つの異なる共有結合により上記ポリペプチドに結合している、上記複合体を提供する。」(6頁1?38行)

(2-3)「遺伝的にコード化されたコンビナトリアル化学ライブラリーのメンバーの好適なアミノ酸は、任意の天然又は非天然アミノ酸で置換することができる。但し、ポリペプチドを分子コアに架橋するための官能基を含むものは、置換可能なアミノ酸から除外する。改変が可能な隣接アミノ酸の群は、ポリペプチドセグメントとして定義される。単一のポリペプチドセグメントの大きさは、好適には1?20アミノ酸の範囲である。ポリペプチドセグメントはランダム配列、定常配列、又はランダム及び定常アミノ酸を含む配列のいずれかを有する。官能基を含むアミノ酸は、本発明のコード化ポリペプチド内の規定位置又はランダムな位置のいずれかに配置する。
一実施形態では、連結化合物/分子コアとの結合のための2アミノ酸含有官能基によって結合されたポリペプチドセグメントは、10以下のアミノ酸からなる短いアミノ酸配列である。コード化ポリペプチド配列と分子コアとの反応により、高度の構造的制約を有するライブラリーメンバーが作製される。構造的に制約されたリガンドは、一般に、より特異的であり、より高い結合親和性を有する。構造的制約はまた、例えば、体液中でのタンパク質分解からリガンドを保護することができる。」(26頁11?28行)

4.引用発明
引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ペプチドのファージディスプレイレパートリーを提供するステップ、上記レパートリーとプロテアーゼをプロテアーゼ活性に好適な条件下で組合わせるステップ、プロテアーゼ耐性ペプチドを選択するステップ、標的リガンドと特異的結合するペプチドを回収するステップを含んでなる、プロテアーゼ耐性ペプチドを選択する方法。」

5.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「ファージディスプレイ」、「ペプチド」、「ペプチドのファージディスプレイレパートリー」、は、それぞれ本願発明の「遺伝学的ディスプレイ」、「ペプチドリガンド」、「ペプチドリガンド候補」に相当すると認められる。また、引用例1の請求項15において「標的リガンド」として列挙されるものからみて、引用発明の「標的リガンド」は、本願発明の「非プロテアーゼ標的タンパク質」に相当すると認められる。
そして、引用発明の「プロテアーゼ耐性ペプチドを選択するステップ」は本願発明の(d)ステップ中の「前記複数のプロテアーゼによる切断に耐性であるペプチドリガンドを選択するステップ」に相当し、引用発明の「標的リガンドと特異的結合するペプチドを回収するステップ」は、本願発明の「(d)前記ペプチドリガンド候補を非プロテアーゼ標的タンパク質に対する結合についてスクリーニングし、非プロテアーゼ標的タンパク質に結合」する「ペプチドリガンドを選択するステップ」に相当すると認められる。

したがって、両者は、
「(a)遺伝学的ディスプレイ系において1以上のペプチドリガンド候補を提示するステップと、、
(c)前記ペプチドリガンド候補を複数のプロテアーゼに曝露するステップと、
(d)前記ペプチドリガンド候補を非プロテアーゼ標的タンパク質に対する結合についてスクリーニングし、非プロテアーゼ標的タンパク質に結合し、前記複数のプロテアーゼによる切断に耐性であるペプチドリガンドを選択するステップとを含む、1以上のペプチドリガンドをスクリーニングするための方法。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

(相違点)
「ペプチドリガンド」について、本願発明では「ペプチドリガンド候補は、分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含み」、「2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している」ものであって、本願発明はそのようなものを作成するために「(b)提示されたペプチドリガンド候補と分子足場とを反応させるステップ」を含むのに対して、引用発明ではそのようなものではない点。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2は、引用例1と同じく、ペプチドのレパートリー(ポリペプチドライブラリー)に関する文献である。引用例2には、上記(2-1)(2-2)のとおり、ポリペプチドがファージにディスプレイされたものであること、このポリペプチドと連結化合物とを3つの共有結合により連結することによって、2つのペプチドループを有する複合体とすることが記載されており、このような複合体は高い結合親和性を有することも示されている。また、引用例2には「単一のポリペプチドセグメントの大きさは、好適には1?20アミノ酸の範囲である。」と記載され、ポリペプチドの分子全体のアミノ酸の長さを20アミノ酸以下とすることや、「連結化合物/分子コアとの結合のための2アミノ酸含有官能基によって結合されたポリペプチドセグメントは、10以下のアミノ酸からなる短いアミノ酸配列である」と記載され、ポリペプチドと連結化合物との3つの共有結合それぞれの間のアミノ酸の数を10以下とすることも示されていると認められる。
したがって、引用発明の「ペプチド」として、親和性に優れた構造である、ファージにディスプレイされたポリペプチドと連結化合物とを反応させ、3つの共有結合により連結し、2つのペプチドループを有するファージ粒子を含む複合体構造のものを用いること、その際に、ポリペプチドと連結化合物との3つの共有結合それぞれの間のアミノ酸の数を10以下とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
そして、引用例2に記載される複合体構造は、本願発明にいう、「ペプチドリガンド候補は、分子足場と共有結合を形成する2つまたは3つの反応基と、2つの前記反応基間に内在する2?20のアミノ酸からなる配列を含む1つまたは2つのループとを含み」、「2以上のアミノ酸残基において分子足場に共有結合している」ものに該当すると認められる。また、引用例2に記載された2つのペプチドループを有するファージ粒子を含む複合体構造を作成するために、ポリペプチドと連結化合物とを反応させるステップ、すなわち、本願発明に特定される「(b)提示されたペプチドリガンド候補と分子足場とを反応させるステップ」のような工程があることは明らかである。
したがって、上記相違点は、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明において、引用例1、2の記載から予測できない効果が奏されたとも認められない。
よって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.審判請求人の主張について
審判請求人は平成29年11月21日付け意見書において、「引用文献2は、非プロテアーゼ標的に対するプロテアーゼ耐性のペプチドリガンドを選択することについては記載していません。また、引用文献1の方法は、フォールディングした大きなポリペプチド(抗体のFcフラグメントの融合タンパク質)を対象としており、3次元構造を形成することができない50アミノ酸以下のような短いペプチドを対象とするものではありません。」と主張している。

しかし、プロテアーゼ耐性のペプチドリガンドを選択することは、引用例1(引用文献1)に記載されている。また、引用例1には、「ペプチドまたはポリペプチドのレパートリー」(特許請求の範囲 請求項1)と記載されており、この「ペプチド」は、約2?約50個のアミノ酸からなることも記載されている(23頁21?22行)から、大きなポリペプチドだけなく短いポリペプチドも対象とするものである。
なお、本願発明には、「50アミノ酸以下のような短いペプチドを対象とする」ことは特定されておらず、このことは、本願明細書にも記載されていない。

8.小活
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり、 平成29年6月15日付けでした手続補正は、外国語書面の翻訳文に記載された事項の範囲内においてしたものとは認められないから、本願は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-30 
結審通知日 2017-12-01 
審決日 2017-12-12 
出願番号 特願2011-548606(P2011-548606)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (C12N)
P 1 8・ 121- WZ (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 洋平小金井 悟  
特許庁審判長 大宅 郁治
特許庁審判官 中島 庸子
高堀 栄二
発明の名称 構造化されたペプチドプロセシング  
代理人 森本 聡二  
代理人 河村 英文  
代理人 水島 亜希子  
代理人 奥山 尚一  
代理人 中村 綾子  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  
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