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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1339705
審判番号 不服2016-16199  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-31 
確定日 2018-04-25 
事件の表示 特願2012-61471「基板処理装置,半導体装置の製造方法及びプログラム。」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月30日出願公開,特開2013-197232〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成24年3月19日の出願であって,その主な手続の経緯は,以下のとおりである。
平成27年 3月 3日 手続補正書提出
平成28年 1月 8日付け 拒絶理由通知
平成28年 3月11日 意見書及び手続補正書提出
平成28年 7月28日付け 拒絶査定
平成28年10月31日 審判請求書及び手続補正書提出
平成29年11月21日付け 拒絶理由通知
平成30年 1月19日 意見書及び手続補正書提出

2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成30年1月19日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】
真空雰囲気で基板を搬送する搬送室と,
前記搬送室に隣接し,前記基板を一時的に収容する第1予備室と,
前記搬送室に隣接し,前記基板を一時的に収容する第2予備室と,
前記搬送室に設けられ前記基板を搬送する基板搬送部と,
前記搬送室に隣接して設けられ前記基板を処理する処理室と,
前記搬送室と前記第1予備室との間に設けられた第1ゲートバルブと,
前記搬送室と前記処理室との間に設けられた第2ゲートバルブと,
前記搬送室と前記第2予備室との間に設けられた第3ゲートバルブと,
前記第1ゲートバルブを開とし,前記基板搬送部が未処理の前記基板を前記第1予備室から前記搬送室内へ搬出して旋回する動作中に,前記第1ゲートバルブの閉と前記第2ゲートバルブの開とを,前記第1ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に前記第2ゲートバルブの開動作が開始されるように連続して行い,前記第1ゲートバルブを閉じる時間と前記第2ゲートバルブを開ける時間との合計が前記基板搬送部の旋回動作時間よりも長くなるように前記基板搬送部,前記第1ゲートバルブおよび前記第2ゲートバルブを制御し,
その後,前記処理室内で処理された処理済みの前記基板を前記処理室内から前記搬送室内へ搬出した後に,前記未処理の基板を前記搬送室内から前記処理室内へ搬入するように前記基板搬送部を制御し,
その後,前記基板搬送部が前記処理済みの基板を保持して旋回する動作中に,前記第2ゲートバルブの閉と前記第3ゲートバルブの開とを,前記第2ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に前記第3ゲートバルブの開動作が開始されるように連続して行い,前記第2ゲートバルブを閉じる時間と前記第3ゲートバルブを開ける時間との合計が前記基板搬送部の旋回動作時間よりも長くなるように前記基板搬送部,前記第2ゲートバルブおよび前記第3ゲートバルブを制御し,
その後,前記処理済みの前記基板を前記搬送室内から前記第2予備室内へ搬入するように前記基板搬送部を制御する制御部と,
を有する基板処理装置。」

3.引用例の記載事項及び引用発明
当審で通知した平成29年11月21日付け拒絶理由通知で引用した,本願出願前に頒布された刊行物である再公表特許WO97/34742号(以下「引用例」という。)には,以下の事項及び発明が記載されている(なお,下線は,理解の便のために当審で付したものである。)。

(1)第14ページ第3ないし9行
「技術分野
この発明は半導体製造装置やLCD製造装置などに適用されるもので,ワーク搬送ロボットを配設した1つのトランスファチャンバに隣接して複数のプロセスチャンバを配設し,ワーク搬送ロボットによってウェハまたはLCD等のワークを或るプロセンスチャンバから他のプロセスチャンバへ搬送するようにしたマルチチャンバ型の製造装置において,前記ワーク搬送ロボットの効率の良い搬送動作を実現するための改良に関する。」

(2)第14ページ第10ないし27行
「背景技術
この種のマルチチャンバ型の半導体製造装置は,例えば図16のように構成されている。
図16において,ウェハ搬送ロボット1が配設されるトランスファチャンバ2の周囲には,ウェハに対する各種の半導体加工処理を実行するためのプロセスチャンバ3a?3eと,外部からワークの搬入を行うためのワーク搬入チャンバ4と,外部へのワークの搬出を行うワーク搬出チャンバ5とが設けられている。
プロセスチャンバ3a?3eとトランスファチャンバ2との間,トランスファチャンバ2とワーク搬入チャンバ4との間,およびトランスファチャンバ2とワーク搬出チャンバ5との間には,開閉自在のゲートバルブ6a?6gが夫々設けられており,これらゲートバルブ6a?6gを開することによって各チャンバ間が連通されるようになっている。また,トランスファチャンバ2,プロセスチャンバ3a?3eおよびワーク搬入搬出チャンバ4,5は真空状態に保たれており,ワーク搬入搬出チャンバ4,5→トランスファチャンバ2→プロセスチャンバ3a?3eの順に真空度が高くなるようになっている。なお,ゲートバルブ6a?6gは,真空度を確保するために2つ以上のゲートバルブを同時に開くことはできないという制限がある。すなわち,或るゲートバルブを開く際は,他のゲートバルブが完全に閉まった状態で所要のゲートバルブの開制御を開始する。」

(3)第15ページ第12行ないし第16ページ第15行
「係る構成において,ウェハ搬送ロボット1によってウェハWをプロセスチャンバ3cからプロセスチャンバ3dに移送する場合の手順は以下のようになる。
まず,プロセンスチャンバ3c内でウェハWを支持しているリフタが下降され,ウェハWがロボット1のハンド13に載置されると(図17点P1),ハンド13に内蔵されているウェハ検出センサがオンになる。このオンが確認されると,ロボット1はアーム11,12を縮めてウェハWを点P2に移動する。そして,ウェハWの点P2への移動が終了すると,ロボット1はこの点P2で一旦停止し,退避終了信号をシステム全体を制御するシステムコントローラ(図示せず)に出力する。
システムコントローラでは,上記退避終了信号を受信すると,ゲートバルブ6cを閉じる制御を開始する。そして,システムコントローラが,ゲートバルブ6cの閉を確認すると,ゲートバルブ6dを開する制御を実行する。なお,ゲートバルブ6c,6dの開閉の際,2つ以上のゲートバルブを同時に開くことはできないという前述した制限によって,ゲートバルブ6cの閉の後にゲートバルブ6dを開するようにしている。
一方,ロボット1は,退避終了信号をシステムコントローラに出力すると,上記ゲートバルブ6c,6dの開閉動作に並行して点P2から点P3への移動を行い,点P3に到達すると,ここで再度停止する。そして,ロボット1は,点P3で停止した時点でゲートバルブ6dの開閉状態を確認し,ゲートバルブ6dの開を確認した後に,点P4への移動を開始する。すなわち,ロボット1はゲートバルブ6dの開を確認することができるまで,点P3で待機する。
点P4への移動の際,ロボット1は,プロセスチャンバ3dのウェハWを載置するべき位置P4までアーム11,12を伸張し,位置P4で位置決め停止を行った後に移動終了信号をシステムコントローラに送出する。
移動終了信号を受信したシステムコントローラでは,プロセンスチャンバ3dのリフタを上昇し,ウェハWをロボット1のハンドからリフタ上に移載する。以上が一連のウェハ搬送動作である。」

(4)第16ページ第13ないし15行
「なお,これらの図において,Tはゲートバルブ6cの閉を開始してからゲートバルブ6dの開を終了するまでに要する時間(システム固有の固定値)であり,これは全てのゲートバルブで共通である。」

(5)図8(a)
図8(a)には,従来の速度パターンと,ゲートバルブ6cの閉を開始してからゲートバルブ6dの開を終了するまでに要する時間Tとの関係が示されている。


(6)図16
図16には,マルチチャンバ型の製造装置の全体が示されている。


(7)図17
図17には,マルチチャンバ型の製造装置において,ロボット1が移動する点P_(1)ないしP_(4)が示されている。


(8)引用発明
上記(3)における「システムコントローラでは,上記退避終了信号を受信すると,ゲートバルブ6cを閉じる制御を開始する。そして,システムコントローラが,ゲートバルブ6cの閉を確認すると,ゲートバルブ6dを開する制御を実行する。」という記載は,ゲートバルブ6cの閉の後にゲートバルブ6dの開を行うことを意味するといえる。
また,上記(4)には「Tはゲートバルブ6cの閉を開始してからゲートバルブ6dの開を終了するまでに要する時間」との記載があり,上記(5)の図8aを参照すると,ロボット1が点P_(2)から旋回を開始し(旋回速度が0から上昇し),点P_(3)で旋回を終了する(旋回速度が0となる)までの時間よりも,Tの時間の方が長いことを理解できる。
これらの事項を,技術常識をふまえて整理すると,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「真空状態でウェハWを搬送するトランスファチャンバ2と,
前記トランスファチャンバ2に隣接し,前記ウェハWの搬入を行うワーク搬入チャンバ4と,
前記トランスファチャンバ2に隣接し,前記ウェハWの搬出を行うワーク搬出チャンバ5と
前記トランスファチャンバ2に設けられ前記ウェハWを搬送するロボット1と,
前記トランスファチャンバ2に隣接して設けられ前記ウェハWを処理するプロセスチャンバ3aと,
前記トランスファチャンバ2に隣接して設けられ前記ウェハWを処理するプロセスチャンバ3cと,
前記トランスファチャンバ2に隣接して設けられ前記ウェハWを処理するプロセスチャンバ3dと,
前記トランスファチャンバ2と前記ワーク搬入チャンバ4との間に設けられたゲートバルブ6gと,
前記トランスファチャンバ2と前記プロセスチャンバ3aとの間に設けられたゲートバルブ6aと,
前記トランスファチャンバ2と前記プロセスチャンバ3cとの間に設けられたゲートバルブ6cと,
前記トランスファチャンバ2と前記プロセスチャンバ3dとの間に設けられたゲートバルブ6dと,
前記トランスファチャンバ2と前記ワーク搬出チャンバ5との間に設けられたゲートバルブ6fと,
前記ゲートバルブ6cを開とし,前記ロボット1が前記ウェハWを前記プロセスチャンバ3cから前記トランスファチャンバ2へ搬入して旋回する動作中に,前記ゲートバルブ6cの閉の後に前記ゲートバルブ6dの開を行い,前記ゲートバルブ6cを閉じる時間と前記ゲートバルブ6dを開ける時間との合計Tが前記ロボット1の旋回動作時間よりも長くなるように前記ロボット1,前記ゲートバルブ6cおよび前記ゲートバルブ6dを制御し,
ゲートバルブ6dの開を確認した後に,ウェハWをプロセスチャンバ3dに搬入するようにロボット1を制御するシステムコントローラと,を有する半導体製造装置。」

4.対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「真空状態」が本願発明の「真空雰囲気」に相当することは明らかであり,以下同様に,「ウェハW」が「基板」に,「トランスファチャンバ2」が「搬送室」に,「ウェハWの搬入を行うワーク搬入チャンバ4」が「基板を一時的に収容する第1予備室」に,「ウェハWの搬出を行うワーク搬出チャンバ5」が「基板を一時的に収容する第2予備室」に,「ロボット1」が「基板搬送部」に,「プロセスチャンバ3a」が「処理室」に,「ゲートバルブ6g」が「第1ゲートバルブ」に,「ゲートバルブ6a」が「第2ゲートバルブ」に,「ゲートバルブ6f」が「第3ゲートバルブ」に,「システムコントローラ」が「制御部」に,「半導体製造装置」が「基板処理装置」に相当する。
以上から,本願発明と引用発明は,以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「真空雰囲気で基板を搬送する搬送室と,
前記搬送室に隣接し,前記基板を一時的に収容する第1予備室と,
前記搬送室に隣接し,前記基板を一時的に収容する第2予備室と,
前記搬送室に設けられ前記基板を搬送する基板搬送部と,
前記搬送室に隣接して設けられ前記基板を処理する処理室と,
前記搬送室と前記第1予備室との間に設けられた第1ゲートバルブと,
前記搬送室と前記処理室との間に設けられた第2ゲートバルブと,
前記搬送室と前記第2予備室との間に設けられた第3ゲートバルブと,
制御部と,を有する基板処理装置。」

<相違点1>
本願発明の制御部は,「前記第1ゲートバルブを開とし,前記基板搬送部が未処理の前記基板を前記第1予備室から前記搬送室内へ搬出して旋回する動作中に,前記第1ゲートバルブの閉と前記第2ゲートバルブの開とを,前記第1ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に前記第2ゲートバルブの開動作が開始されるように連続して行い,前記第1ゲートバルブを閉じる時間と前記第2ゲートバルブを開ける時間との合計が前記基板搬送部の旋回動作時間よりも長くなるように前記基板搬送部,前記第1ゲートバルブおよび前記第2ゲートバルブを制御」するものであるのに対して,引用発明の制御部は,基板搬送部,第1ゲートバルブ及び第2ゲートバルブをどのように制御するか明確でない点。

<相違点2>
本願発明の制御部は,「その後,前記処理室内で処理された処理済みの前記基板を前記処理室内から前記搬送室内へ搬出した後に,前記未処理の基板を前記搬送室内から前記処理室内へ搬入するように前記基板搬送部を制御」するものであるのに対して,引用発明の制御部は,基板搬送部をどのように制御するのか明確でない点。

<相違点3>
本願発明の制御部は,「その後,前記基板搬送部が前記処理済みの基板を保持して旋回する動作中に,前記第2ゲートバルブの閉と前記第3ゲートバルブの開とを,前記第2ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に前記第3ゲートバルブの開動作が開始されるように連続して行い,前記第2ゲートバルブを閉じる時間と前記第3ゲートバルブを開ける時間との合計が前記基板搬送部の旋回動作時間よりも長くなるように前記基板搬送部,前記第2ゲートバルブおよび前記第3ゲートバルブを制御し,その後,前記処理済みの前記基板を前記搬送室内から前記第2予備室内へ搬入するように前記基板搬送部を制御」するものであるのに対して,引用発明の制御部は,処理済みの基板を,別の処理室(プロセスチャンバ3d)内に搬入するように基板搬送部,第2ゲートバルブ及び別の処理室のゲートバルブ(ゲートバルブ6d)を制御している点。

5.相違点についての検討及び判断
(1)相違点1について
ア.引用発明の制御部は,プロセスチャンバ3cとプロセスチャンバ3dの間の基板の搬送,すなわち処理室と処理室の間の基板の搬送について,ゲートバルブ6cを開とし,基板搬送部が基板をプロセスチャンバ3cから搬送室内へ搬入して旋回する動作中に,ゲートバルブ6cの閉の後にゲートバルブ6dの開を行い,ゲートバルブ6cを閉じる時間とゲートバルブ6dを開ける時間との合計Tが基板搬送部の旋回動作時間よりも長くなるように基板搬送部,ゲートバルブ6c及びゲートバルブ6dを制御している。
このような制御を行う理由は,上記3.(2)に示すように,「ゲートバルブ6a?6gは,真空度を確保するために2つ以上のゲートバルブを同時に開くことはできないという制限がある」ことによるものであるが,この制限は,ゲートバルブ6aから6gまでの全てを律するものであり,ゲートバルブ6g及び6a,すなわち第1ゲートバルブ及び第2ゲートバルブにも同じ制限が生じる。そうすると,引用発明において,第1予備室と処理室の間で基板を搬送する際のゲートバルブの制御を,処理室と処理室の間で基板を搬送する際のゲートバルブの制御と同様に行うという発想は,当業者であれば当然に想到し得る事項にすぎない。
イ.また,ゲートバルブ6cの閉の後にゲートバルブ6dの開を行うことについて,上記3.(3)に「システムコントローラが,ゲートバルブ6cの閉を確認すると,ゲートバルブ6dを開する制御を実行する」と記載されており,これを当業者が実施しようとすれば,ゲートバルブ6cの閉を確認した後に,何らかの作業や待ち時間を差し挟むことなく,ゲートバルブ6dを開く制御を行うようにすることは通常想到し得る事項である。したがって,当業者であれば,第1ゲートバルブと第2ゲートバルブについても,第1ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に第2ゲートバルブの開動作を連続して行うように構成することは明らかである。
ウ.さらに,上記3.(4)に「Tはゲートバルブ6cの閉を開始してからゲートバルブ6dの開を終了するまでに要する時間(システム固有の固定値)であり,これば全てのゲートバルブで共通である」と記載されているから,ゲートバルブ6aから6gまでの全てについて,時間Tは共通であり,当然に,第1予備室の第1ゲートバルブの閉を開始してから処理室の第2ゲートバルブの開を終了するまでの時間Tは,基板搬送部の旋回動作時間よりも長い時間といえる。
エ.そして,引用発明の第1予備室は,基板の搬入を行うためのチャンバであるから,その基板が未処理であることや,当該未処理の基板を基板搬送部で第1予備室から搬送室内へ搬出するように制御することは当然である。
オ.したがって,引用発明の制御部について,第1ゲートバルブを開とし,基板搬送部が未処理の基板を第1予備室から搬送室内へ搬出して旋回する動作中に,第1ゲートバルブの閉と第2ゲートバルブの開とを,第1ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に第2ゲートバルブの開動作が開始されるように連続して行い,第1ゲートバルブを閉じる時間と第2ゲートバルブを開ける時間との合計が基板搬送部の旋回動作時間よりも長くなるように基板搬送部,第1ゲートバルブ及び第2ゲートバルブを制御するように構成することは,当業者が容易に想到できた事項である。

(2)相違点2について
ア.引用発明は,未処理のウェハWをプロセスチャンバ3cに搬入する際の制御については不明であり,また,処理済みのウェハWを別のプロセスチャンバ3dに搬入する際の制御については,ゲートバルブ6dの開を確認した後に,ウェハWをプロセスチャンバ3dに搬入するようにロボット1を制御しており,プロセスチャンバ3dに基板を搬入する前に,プロセスチャンバ3dが空き状態であることを前提としている。
イ.しかし,複数の基板を同じように処理する際には,処理済み基板の搬出・未処理基板の搬入・未処理基板の処理という一連の動作を連続的に繰り返すことで,効率を高めることが一般的であり,その際に,処理済みの基板を処理室内から搬送室内へ搬出した後に,未処理の基板を搬送室内から処理室内へ搬入するように基板搬送部を制御することは,特開2012-54536号公報の段落[0094],特開2004-146714号公報の段落[0033]及び特開2003-264213号公報の段落[0017]に示すように周知の技術である。
ウ.したがって,引用発明においても,基板の処理を連続的に行って効率を高めるように,処理室内で処理された処理済みの基板を処理室内から搬送室内へ搬出した後に,未処理の基板を搬送室内から処理室内へ搬入するように基板搬送部を制御することは,当業者が容易に想到できた事項である。

(3)相違点3について
ア.引用発明では,1つの基板に複数種類の処理を重畳して行うことを前提として,処理済みの基板を,別の処理室内に搬入するように制御を行っているが,基板に何種類の処理を行うかどうかは,基板の仕様に応じて決定すべき事項であるし,1つの基板に1種類の処理のみを行うことは,例えば特開2012-54536号公報の段落[0098]に示すように周知の技術である。また,1つの基板に1種類の処理のみを行う際には,処理済みの基板を第2予備室内に搬入すべきことは当然である。
したがって,引用発明において,処理済みの基板を,別の処理室内に搬入することに代えて,第2予備室内に搬入するように制御することは,当業者が容易に想到できた事項である。
イ.そして,上記(1)ア.で説示した理由と同様の理由により,当業者は,引用発明において,処理室と第2予備室の間で基板を搬送する際のゲートバルブの制御は,処理室と処理室の間で基板を搬送する際のゲートバルブの制御と同様に行うことは,当業者であれば当然に想到し得る事項にすぎない。
ウ.また,上記(1)イ.で説示した理由と同様の理由により,当業者は,第2ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に第3ゲートバルブの開動作を連続して行うように構成するといえる。
エ.さらに,上記(1)ウ.で説示した理由と同様の理由により,処理室の第2ゲートバルブの閉を開始してから第2予備室の第3ゲートバルブの開を終了するまでの時間Tは,基板搬送部の旋回動作時間よりも長い時間といえる。
オ.そして,引用発明の第2予備室は,基板の搬出を行うためのチャンバであるから,その基板が処理済みであることや,当該処理済みの基板を基板搬送部で搬送室内から第2予備室内へ搬入するように制御することは当然である。
カ.したがって,引用発明の制御部について,基板搬送部が処理済みの基板を保持して旋回する動作中に,第2ゲートバルブの閉と第3ゲートバルブの開とを,第2ゲートバルブの閉動作が完了すると同時に第3ゲートバルブの開動作が開始されるように連続して行い,第2ゲートバルブを閉じる時間と第3ゲートバルブを開ける時間との合計が基板搬送部の旋回動作時間よりも長くなるように基板搬送部,第2ゲートバルブ及び第3ゲートバルブを制御し,その後,処理済みの基板を搬送室内から第2予備室内へ搬入するように基板搬送部を制御することは,当業者が容易に想到できた事項である。

(4)作用効果について
本願発明が奏する作用や効果は,引用発明や周知の技術が奏する作用や効果を超えるものとはいえない。

6.意見書における請求人の主張について
平成30年1月19日に提出された意見書において,本願発明と引用発明の差異について,引用例には,本願発明に特有の構成が開示も示唆もされていない旨を主張(第3ページ(c)欄)し,その根拠として,引用例には,未処理の基板と処理済みの基板を入れ替える動作について記載がない旨を主張(第3ページ(d)欄)し,引用例には,ゲートバルブ6cの閉動作とゲートバルブ6dの開動作を連続して行うことについて記載も示唆もない旨を主張(第3ページ(g)欄)している。
しかし,基板を入れ替える動作については,上記(2)で説示するように,当業者が容易に想到できた事項であり,上記(1)イ.で説示するように,引用例に記載されたゲートバルブの制御を当業者が実施しようとすれば,ゲートバルブ6cの閉動作とゲートバルブ6dの開動作を連続して行うように構成することは明らかであるから,請求人の主張は採用できない。

7.むすび
したがって,本願発明は,引用発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-27 
結審通知日 2018-02-28 
審決日 2018-03-13 
出願番号 特願2012-61471(P2012-61471)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 儀同 孝信  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 柏原 郁昭
刈間 宏信
発明の名称 基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム。  
代理人 特許業務法人アイ・ピー・ウィン  

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