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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1339707
審判番号 不服2017-9997  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-05 
確定日 2018-04-25 
事件の表示 特願2014-77573号「「遊技台」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日出願公開、特開2015-198686号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成26年4月4日の出願であって、平成28年7月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月23日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月3日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月15日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月19日付けで、同年3月15日に提出された手続補正書でした補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年6月26日)、それに対し、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年7月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
平成29年7月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成28年9月23日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1における
「第一の可動体と、
第二の可動体と、
第三の可動体と、
を備えた遊技台であって、
前記第一の可動体は、前記第二の可動体を有する可動体であり、
前記第一の可動体は、第一の位置と第二の位置とに少なくとも移動可能な可動体であり、
前記第二の可動体は、少なくとも第二の動作を実行可能な可動体であり、
前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第二の状態である場合に、前記第二の動作を実行可能な可動体であり、
前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第一の状態である場合に、前記第二の動作を実行しない可動体であり、
前記第一の状態とは、前記第一の可動体が前記第一の位置にある状態のことであり、
前記第二の状態とは、前記第一の可動体が前記第二の位置にある状態のことであり、
前記第一の可動体と前記第三の可動体は異なる可動体であり、
前記第一の可動体は、前記第一の状態から動作可能な可動体であり、
前記第三の可動体は、第三の状態から動作可能な可動体であり、
前記第三の状態とは、前記第三の可動体が第三の位置にある状態のことであり、
前記第一の位置と前記第三の位置は異なる位置であり、
前記第一の位置とは、前記第一の可動体の初期位置のことであり、
前記第三の位置とは、前記第三の可動体の初期位置のことであり、
前記第三の可動体は、第三の動作を実行可能な可動体であり、
前記第三の動作とは、前記第三の可動体が前記第三の状態に戻る動作のことであり、
前記第一の可動体は、第一の動作を実行可能な可動体であり、
前記第一の動作とは、前記第一の可動体が前記第一の位置から遠ざかる動作を開始してから前記第一の状態に戻るまでの動作のことであり、
第三の時期において前記第三の可動体が前記第三の状態でないと前記第三の動作が実行され、
電源が投入されると前記第一の動作が実行され、
前記第三の動作の後にも前記第一の動作が実行される、
ことを特徴とする遊技台。」は、

審判請求時に提出された手続補正書(平成29年7月5日付け)における
「第一の可動体と、
第二の可動体と、
第三の可動体と、
を備えた遊技台であって、
前記第一の可動体は、前記第二の可動体を有する可動体であり、
前記第一の可動体は、第一の位置と第二の位置とに少なくとも移動可能な可動体であり、
前記第二の可動体は、少なくとも第二の動作を実行可能な可動体であり、
前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第二の状態である場合に、前記第二の動作を実行可能な可動体であり、
前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第一の状態である場合に、前記第二の動作を実行しない可動体であり、
前記第一の状態とは、前記第一の可動体が前記第一の位置にある状態のことであり、
前記第二の状態とは、前記第一の可動体が前記第二の位置にある状態のことであり、
前記第一の可動体と前記第三の可動体は異なる可動体であり、
前記第一の可動体は、前記第一の状態から動作可能な可動体であり、
前記第三の可動体は、第三の状態から動作可能な可動体であり、
前記第三の状態とは、前記第三の可動体が第三の位置にある状態のことであり、
前記第一の位置と前記第三の位置は異なる位置であり、
前記第一の位置とは、前記第一の可動体の初期位置のことであり、
前記第三の位置とは、前記第三の可動体の初期位置のことであり、
前記第三の可動体は、第三の動作を実行可能な可動体であり、
前記第三の動作とは、前記第三の可動体が前記第三の状態に戻る動作のことであり、
前記第一の可動体は、第一の動作を実行可能な可動体であり、
前記第一の動作とは、前記第一の可動体が前記第一の位置から遠ざかる動作を開始してから前記第一の状態に戻るまでの動作のことであり、
電源が投入されると前記第一の動作が実行され、
図柄変動表示が実行される期間において前記第三の可動体が前記第三の状態でないと前記第三の動作が実行される場合があり、該第三の動作の後にも前記第一の動作が実行される、
ことを特徴とする遊技台。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

2 補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第三の動作」に関して、「第三の時期において前記第三の可動体が前記第三の状態でないと前記第三の動作が実行され」、「前記第三の動作の後にも前記第一の動作が実行される」を「図柄変動表示が実行される期間において前記第三の可動体が前記第三の状態でないと前記第三の動作が実行される場合があり、該第三の動作の後にも前記第一の動作が実行される、」と限定することを含むものである。

そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面等の記載からみて、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?8に係る発明は、その請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Wは、分説するため当審で付した。)。
「A 第一の可動体と、
B 第二の可動体と、
C 第三の可動体と、
を備えた遊技台であって、
D 前記第一の可動体は、前記第二の可動体を有する可動体であり、
E 前記第一の可動体は、第一の位置と第二の位置とに少なくとも移動可能な可動体であり、
F 前記第二の可動体は、少なくとも第二の動作を実行可能な可動体であり、
G 前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第二の状態である場合に、前記第二の動作を実行可能な可動体であり、
H 前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第一の状態である場合に、前記第二の動作を実行しない可動体であり、
I 前記第一の状態とは、前記第一の可動体が前記第一の位置にある状態のことであり、
J 前記第二の状態とは、前記第一の可動体が前記第二の位置にある状態のことであり、
K 前記第一の可動体と前記第三の可動体は異なる可動体であり、
L 前記第一の可動体は、前記第一の状態から動作可能な可動体であり、
M 前記第三の可動体は、第三の状態から動作可能な可動体であり、
N 前記第三の状態とは、前記第三の可動体が第三の位置にある状態のことであり、
O 前記第一の位置と前記第三の位置は異なる位置であり、
P 前記第一の位置とは、前記第一の可動体の初期位置のことであり、
Q 前記第三の位置とは、前記第三の可動体の初期位置のことであり、
R 前記第三の可動体は、第三の動作を実行可能な可動体であり、
S 前記第三の動作とは、前記第三の可動体が前記第三の状態に戻る動作のことであり、
T 前記第一の可動体は、第一の動作を実行可能な可動体であり、
U 前記第一の動作とは、前記第一の可動体が前記第一の位置から遠ざかる動作を開始してから前記第一の状態に戻るまでの動作のことであり、
V 電源が投入されると前記第一の動作が実行され、
W 図柄変動表示が実行される期間において前記第三の可動体が前記第三の状態でないと前記第三の動作が実行される場合があり、該第三の動作の後にも前記第一の動作が実行される、
ことを特徴とする遊技台。」

(2)刊行物
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願前に頒布された刊行物である特開2013-240419号公報(以下「刊行物1」という。)には、可動役物を備えた遊技機に関して、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、可動役物を備えた遊技機に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の遊技機では、可動役物の初期位置を検出する位置検出部を設けているが、可動役物が下方向へ移動する途中の位置や下方向への移動を完了したときの位置を検出していないため、可動役物が下方向へ移動する途中の位置や下方向への移動を完了した位置において第2可動部を作動させようとした場合、可動役物が正しい位置に来ていないと、第2可動部が他の部材と干渉してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、繰出される可動役物が作動時に他の部材と干渉する虞を低減可能な遊技機を提供することを目的とする。」

(イ)「【0015】
センター役物装置30の枠体部31の上枠部31aには、可動役物装置100が取り付けられ、可動役物装置100は、液晶画面6aの前方に配置された可動役物101を備えて、後に詳述するように、可動役物101を待機位置P0(図2参照)から繰出完了位置P2(図13参照)まで繰出すように構成されている。可動役物101は、待機位置P0にあるとき、上枠部31aに一体化するように液晶画面6aの周辺部の前方部に配置され、繰出完了位置P2にあるとき、液晶画面6aの中央部の前方部に配置される。なお、本実施形態では、図2、10、13に示すように、可動役物101の下端で可動役物101の位置を示すものとする。
・・・
【0030】
第1電動モータ302は、ベース板301に取り付けられ、作動時、歯車機構303を介在させて、ベース板301に回動可能に支持された回転板304を回転させる。回転板304は、第1電動モータ302の作動時、可動役物101を図2に示す待機位置P0から図13に示す繰出完了位置P2まで繰出す際には、正面から見て時計回り方向に回転し、繰出完了位置P2から待機位置P0に引込む際には、正面から見て反時計回り方向に回転する。回転板304には、前面側に突出する係止突起309が設けられ、係止突起309は、原動摺動体319の後述する後板部320の上部の後面側に形成された矩形状に前方に凹む係止凹部320aに係合されている。なお、回転板304は、図8に示す状態から略180°回転して、可動役物101を待機位置P0から繰出完了位置P2に繰出し、また、略180°逆転して、可動役物101を繰出完了位置P2から待機位置P0に復帰させることとなる。
・・・
【0043】
可動役物101は、小可動体103、104と、小可動体103、104を保持する役物本体105とを備えて構成され、役物本体105は、第2画像表示器102を備えて、中央部前面に第2画像表示器102の液晶画面102aを配置させている。役物本体105は、小可動体103、104を支持する小可動体支持部112、112と、待機状態における左右に突出部108aを有して、突出部108a、108aに小可動体支持部112、112が取り付けられた略円形状の小可動体支持板108と、小可動体支持板108の前側に重ねて設けられて液晶画面102aが配置される略楕円形状の前板部材110と、小可動体支持板108の後側に小可動体支持板108と同心に取り付けられた略円形状の回転板115と、回転板115が回転可能に取り付けられるとともに第2電動モータ107が取り付けられた略円形状のベース部材111とを備えている。そして、可動役物101は、上述したように繰出装置300の作動によって液晶画面6aに沿った移動(本実施形態では、上下動)を行うとともに、第2電動モータ107によって作動することにより、小可動体103、104が、役物本体105に沿って揺動する第1の動作(図14参照)と、遊技盤面に沿って役物本体105の周囲を回転(旋回)する第2の動作(図15参照)とを行うように構成されている。
・・・
【0053】
次に、ランプ制御基板24は、可動役物作動コマンドが第2の動作を行うものである場合には(S106でYES)、ステップS107に進み、可動役物作動コマンドが第2の動作を行うものでない場合には(S106でNO)、ステップS112に進む。ランプ制御基板24は、ステップS107に進むと、RAM内に設けているステップ数カウンタをゼロクリアし、第1電動モータ302を単位ステップ数だけ正方向に回転させて(S108)、可動役物101をさらに繰出す。そして、ステップ数カウンタを1増加させる(S109)。このステップ数カウンタにより、ランプ制御基板24は、ステップ数カウンタが1以上であれば、第1電動モータ302が可動役物101を繰出すように駆動したと判定し、ステップ数カウンタが1以上でなければ、第1電動モータ302が可動役物101を繰出すように駆動していないと判定することができる。なお、本実施形態では、ランプ制御基板24は、第1電動モータ302が可動役物101を所定位置(具体的には、繰出完了位置P2)まで繰出すように駆動したか否かを判定することとし、このため、ステップ数カウンタが所定数であるか否かを判定する(S110)。この所定数は、動作許可位置P1から繰出完了位置P2まで可動役物101を繰出すのに必要なステップ数に相当する。
【0054】
そして、ランプ制御基板24は、第1電動モータ302が可動役物101を繰出完了位置P2まで繰出すように駆動していないと判定した場合には(S110でNO)、ステップS108に戻り、第1電動モータ302が可動役物101を繰出完了位置P2まで繰出すように駆動したと判定した場合には(S110でYES)、第2の動作を可動役物101に行わせる(S111)。第2の動作は、小可動体103、104を前板部材110に沿って回転させる動作であり、ランプ制御基板24は、第2電動モータ107を所定ステップ数だけ正方向に回転させることにより、第2の動作を可動役物101に行わせる。したがって、図15に示すように、小可動体103、104は、(a)の初期状態から、(b)の状態、(c)の状態、(d)の状態、再び(a)の状態、というように繰り返して状態を遷移させた後、役物本体105に設けられた図示しない初期位置検出センサで位置を検出されることにより、(a)の初期状態に復帰する。また、小可動体103、104は、第2の動作時、図13の二点鎖線で示す範囲Aを動作範囲とするが、この第2の動作を行っても、第2の動作時に周囲に存在する他の部材と干渉することはない。また、この範囲Aは、第1の動作時における小可動体103、104の動作範囲よりも、遊技盤面に沿った面積が広い。」

(ウ)上記(ア)?(イ)の記載事項を総合すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?uは、本件補正発明のA?Uに対応させて付与した。)。
「a 可動役物101(【0015】)と、
b 小可動体103、104(【0043】)と、
c を備えた遊技機(【0001】)であって、
d 可動役物101は、小可動体103、104を備えて構成され(【0043】)、
e、i、l、p 可動役物101は、待機位置P0から繰出完了位置P2に繰出され、また、繰出完了位置P2から待機位置P0に復帰させられ(【0030】)、
f 小可動体103、104は、遊技盤面に沿って役物本体105の周囲を回転(旋回)する第2の動作を行い(【0043】)、
g、j 小可動体103、104は、可動役物101が繰出完了位置P2まで繰出すように駆動されたと判定された場合(S110でYES)に、第2の動作を行い(S111)(【0054】)、
h 小可動体103、104は、可動役物101が、繰出完了位置P2まで繰出すように駆動されていないと判定された場合に(S110でNO)、ステップS108に戻り、第1電動モータ302を単位ステップ数だけ正方向に回転させて可動役物101をさらに繰出し(【0053】、【0054】)、
t、u 作動時、可動役物101を待機位置P0から繰出完了位置P2に繰出し、また、繰出完了位置P2から待機位置P0に復帰させた(【0030】)
遊技機。」

イ 刊行物2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願前に頒布された刊行物である特開2013-236681号公報には、弾球遊技機に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の図柄を変動表示する表示装置を備えた弾球遊技機或いは回胴式遊技機等の遊技機に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、二つの可動体が動作範囲のある位置で干渉するような配置となっている場合については考慮されていない。従って、上記の電源投入時の処理をそのまま実行した場合には、可動体動作確認処理で二つの可動体が接触し、壊れてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数の可動体が動作範囲のある位置で干渉するように配置されている場合であっても、可動体動作確認処理で両可動体が接触し、壊れてしまうことを防止できる遊技機を提供することを目的とする。」

(イ)「【0051】
センター飾り体34aの上部には、上下方向に移動する可動体37aが配置されている。可動体37aは、通常、ほとんど視認できない位置にあるので、隠れている部分を破線で示した。
【0052】
また、センター飾り体34aの右側には竜の頭部の形状をした可動体37bが配置されている。可動体37a、37bは、いずれも遊技における演出や大当り期待度に応じて動作する。
【0053】
可動体37a、37bは、本発明の「第1可動体」、「第2可動体」に相当する。なお、パチンコ遊技機1には、可動体37a、37b以外にも複数可動体が設けられているが、図面上省略している。」

(ウ)「【0090】
図6Aは、可動体37aが動作(可動体37bは静止)したときの様子を示している。可動体37aは、通常状態では、センター飾り体34a上部の盤面装飾LED35の裏側に位置しているが(可動体37aの原点位置。図3参照)、遊技における演出の1つとして液晶表示装置36の前方を覆う位置まで下降する。そして、演出の終了と共に、可動体37aは上昇し、再度、原点位置に戻る。
【0091】
また、パチンコ遊技機1の電源投入時に行われる可動体の動作確認処理では、可動体37aがその動作経路上で正常に動作するか確認する。従って、動作確認処理においても、可動体37aは、一度、下限位置まで下降し、その後、上昇して原点位置に戻る。
【0092】
次に、図6Bは、可動体37bが動作(可動体37aは静止)したときの様子を示している。可動体37bは、通常、センター飾り体34aの右側の領域に視認可能な状態で収められているが(可動体37bの原点位置c。図6A参照)、遊技における演出の1つとして動作する。
【0093】
図6Bに示すように、竜の頭部の形状をした可動体37bは、その口が開くような動作をする。例えば、この動作に伴って液晶表示装置36で竜が口から吐き出す炎の画像を表示し、可動体37bと液晶表示装置36が連動した演出が可能となっている。そして、この演出の終了と共に、可動体37bは再度、原点位置に戻る。」

(エ)「【0197】
また、遊技中については、可動体の演出動作が終了した際に、第1、第2可動体原点位置判定処理及び原点位置復帰処理を行って、可動体を常に原点位置にセットするようにしてもよい。」

(オ)上記(ア)?(エ)の記載事項を総合すると、刊行物2には次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる(a?wは、本件補正発明のA?Wに対応させて付与した。)。
「a センター飾り体34aの上部に配置されている、上下方向に移動する可動体37a(【0051】)と、
c、k センター飾り体34aの右側に配置されている、竜の頭部の形状をした可動体37b(【0052】)と
を備えた弾球遊技機(【0001】)であって、
e、i、j、l、p 可動体37aは、センター飾り体34a上部の原点位置に位置し、液晶表示装置36の前方を覆う位置まで下降し(【0090】)、
m、n、o、q 竜の頭部の形状をした可動体37bは、センター飾り体34aの右側の領域の原点位置に位置し、その口が開くような動作をし(【0092】、【0093】)、
r、s 演出の終了と共に、可動体37bは再度、原点位置に戻り(【0093】)、
t、u、v 電源投入時に行われる可動体37aの動作確認処理では、可動体37aは、一度、下限位置まで下降し、その後、上昇して原点位置に戻り(【0091】)、
w 遊技中は、第1可動体(可動体37a)、第2可動体(可動体37b)の演出動作が終了した際に、第1、第2可動体原点位置判定処理及び原点位置復帰処理を行って、第1、第2可動体を常に原点位置にセットする(【0053】、【0197】)
弾球遊技機。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。
(a、b、d)刊行物発明における「可動役物101」、「小可動体103、104」は、構成dによると「可動役物101は、小可動体103、104を備えて構成され」る関係にある。
そうすると、刊行物発明における構成aの「可動役物101」と、構成bの「小可動体103、104」とは、それぞれ、本件補正発明における構成Aの「第一の可動体」、構成Cの「第三の可動体」に相当し、構成dの「可動役物101は、小可動体103、104を備えて構成され」ることは、本件補正発明における構成Dの「第一の可動体は、第二の可動体を有する可動体であ」ることに相当する。

(c)刊行物発明における構成cの「遊技機」と、本件補正発明における構成Cの「第三の可動体」「を備えた遊技台」とは、「遊技台であ」る点で共通する。

(e、i、l、p)刊行物発明における構成e、i、l、pの「待機位置P0」は、本件補正発明における構成Pの「初期位置」に相当すると共に、構成E、Iの「第一の位置」にも相当する。
そして、刊行物発明における構成e、i、l、pの「待機位置P0」にある状態は、本件補正発明における構成I、Lの「第一の状態」に相当する。
また、刊行物発明における構成e、pの「繰出完了位置P2」は、本件補正発明における構成Eの「第二の位置」に相当する。
そうすると、刊行物発明における構成e、i、l、pの「可動役物101は、待機位置P0から繰出完了位置P2に繰出され」ることは、本件補正発明における構成Eの「第一の可動体は、第一の位置と第二の位置とに少なくとも移動可能な可動体であ」ること、及び、構成Lの「第一の可動体は、第一の状態から動作可能な可動体であ」ることに相当する。
したがって、刊行物発明における構成e、i、l、pは、本件補正発明における構成E、I、L、Pに相当する。

(f)刊行物発明における「遊技盤面に沿って役物本体105の周囲を回転(旋回)する第2の動作」は、本件補正発明における「第二の動作」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成fの「小可動体103、104は、遊技盤面に沿って役物本体105の周囲を回転(旋回)する第2の動作を行」うことは、本件補正発明における構成Fの「第二の可動体は、少なくとも第二の動作を実行可能な可動体であ」ることに相当する。

(g、j)上記(e、p)によると、刊行物発明における「繰出完了位置P2」は、本件補正発明における構成Eの「第二の位置」に相当することから、構成g、jの「可動役物101が繰出完了位置P2まで繰出すように駆動されたと判定された」状態は、構成Jの「第一の可動体が第二の位置にある状態のことであ」る「第一の可動体が第二の状態である」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成g、jの「小可動体103、104は、可動役物101が繰出完了位置P2まで繰出すように駆動されたと判定された場合(S110でYES)に、第2の動作を行」うことは、本件補正発明における構成Gの「第二の可動体は、第一の可動体が第二の状態である場合に、第二の動作を実行可能な可動体であ」ること、構成Jの「第二の状態とは、第一の可動体が第二の位置にある状態のことであ」ることに相当する。

(h)刊行物発明における「可動役物101が、繰出完了位置P2まで繰出すように駆動されていないと判定された場合」は、状態が、第2の動作が行われるステップ(S111)より前のステップ(S108)に戻り、第1電動モータ302を単位ステップ数だけ正方向に回転させて可動役物101をさらに繰出すことから、構成hの場合、構成g、jの「第2の動作」は行われないものである。
そして、可動役物101が「待機位置P0」にある場合には、「可動役物101が、繰出完了位置P2まで繰出すように駆動されていないと判定」されるから、「第2の動作」が行われないことは明らかである。
したがって、刊行物発明における構成hの「小可動体103、104は、可動役物101が、繰出完了位置P2まで繰出すように駆動されていないと判定された場合に(S110でNO)、ステップS108に戻り、第1電動モータ302を単位ステップ数だけ正方向に回転させて可動役物101をさらに繰出」すことは、本件補正発明における構成Hの「第二の可動体は、第一の可動体が第一の状態である場合に、第二の動作を実行しない可動体であ」ることに相当する。

(t、u)刊行物発明における「可動役物101を待機位置P0から繰出完了位置P2に繰出」すことは、本件補正発明における構成Uの「第一の可動体が第一の位置から遠ざかる動作を開始」することに相当する。
同様に、刊行物発明における「繰出完了位置P2から待機位置P0に復帰」させることは、本件補正発明における構成Uの「第一の状態に戻るまでの動作」を行うことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成t、uの「作動時、可動役物101を待機位置P0から繰出完了位置P2に繰出し、また、繰出完了位置P2から待機位置P0に復帰させ」ることは、本件補正発明における構成Tの「第一の可動体は、第一の動作を実行可能な可動体であ」ること、構成Uの「第一の動作とは、第一の可動体が第一の位置から遠ざかる動作を開始してから第一の状態に戻るまでの動作のことであ」ることに相当する。

上記(a)?(t、u)によれば、本件補正発明と刊行物発明は、
「A 第一の可動体と、
B 第二の可動体と、
を備えた遊技台であって、
D 前記第一の可動体は、前記第二の可動体を有する可動体であり、
E 前記第一の可動体は、第一の位置と第二の位置とに少なくとも移動可能な可動体であり、
F 前記第二の可動体は、少なくとも第二の動作を実行可能な可動体であり、
G 前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第二の状態である場合に、前記第二の動作を実行可能な可動体であり、
H 前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第一の状態である場合に、前記第二の動作を実行しない可動体であり、
I 前記第一の状態とは、前記第一の可動体が前記第一の位置にある状態のことであり、
J 前記第二の状態とは、前記第一の可動体が前記第二の位置にある状態のことであり、
L 前記第一の可動体は、前記第一の状態から動作可能な可動体であり、
P 前記第一の位置とは、前記第一の可動体の初期位置のことであり、
T 前記第一の可動体は、第一の動作を実行可能な可動体であり、
U 前記第一の動作とは、前記第一の可動体が前記第一の位置から遠ざかる動作を開始してから前記第一の状態に戻るまでの動作のことである
遊技台。」
の点で一致し、構成C、K、M?O、Q?S、V、Wに関して次の点で相違する。

[相違点1](構成C、K、M?O、Q?S)
第三の可動体に関して、
本件補正発明は、第一の可動体とは異なる可動体である第三の可動体を備え(構成C、K)、第三の可動体は、第三の状態から動作可能な可動体であり、第三の状態とは、第三の可動体が第三の位置にある状態のことであり、第一の位置と前記第三の位置は異なる位置であり(構成M?O)、第三の位置とは、第三の可動体の初期位置のことであり、第三の可動体は、第三の動作を実行可能な可動体であり、第三の動作とは、第三の可動体が前記第三の状態に戻る動作のことであ(構成Q?S)るのに対して、
刊行物発明は、第三の可動体を備えない点。

[相違点2](構成V、W)
本件補正発明は、電源が投入されると第一の動作が実行され、図柄変動表示が実行される期間において第三の可動体が第三の状態でないと第三の動作が実行される場合があり、該第三の動作の後にも第一の動作が実行されるのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

(4)当審の判断
ア 相違点1,2について
上記相違点1、2は、第三の可動体に関する技術であるのでまとめて検討する。
刊行物2発明における構成aの「上下方向に移動する可動体37a」は、本件補正発明における構成Aの「第一の可動体」に相当する。
そして、刊行物2に発明おける構成c、kの「竜の頭部の形状をした可動体37b」は、構成aの「上下方向に移動する可動体37a」とは異なるものであるから、本件補正発明における構成C、Kの「第三の可動体」に相当する。
また、刊行物2発明における構成e、i、j、l、pの「センター飾り体34a上部の原点位置」は、本件補正発明における構成E、I、Pの「第一の位置」、及び、「第一の可動体の初期位置」に相当し、「センター飾り体34a上部の原点位置に位置」する状態は、本件補正発明における構成H、I、Lの「第一の状態」に相当する。同様に、刊行物2発明における構成e、i、j、l、pの「液晶表示装置36の前方を覆う位置」は、本件補正発明における構成E、Jの「第二の位置」に相当し、「液晶表示装置36の前方を覆う位置まで下降」する状態は、本件補正発明における構成G、Jの「第二の状態」に相当する。したがって、刊行物2発明における構成e、i、j、l、pは、本件補正発明における構成E、I、J、L、Pに相当する。
また、刊行物2発明における構成m、n、o、qの「センター飾り体34aの右側の領域の原点位置」は、本件補正発明における構成N、O、Qの「第三の位置」、及び、「第三の可動体の初期位置」に相当し、「センター飾り体34aの右側の領域の原点位置に位置」する状態は、本件補正発明における構成M、Nの「第三の状態」に相当する。したがって、刊行物2発明における構成m、n、o、qは、本件補正発明における構成M、N、O、Qに相当する。
また、刊行物2発明における構成r、sの「可動体37bは再度、原点位置に戻」ることは、本件補正発明における構成Sの「第三の可動体が第三の状態に戻る動作」を行うことに相当し、構成R、Sの「第三の動作」を行うことにも相当する。したがって、刊行物2発明における構成r、sは、本件補正発明における構成R、Sに相当する。
また、刊行物2発明における構成t、u、vの「可動体37aの動作確認処理」は、「一度、下限位置まで下降し、その後、上昇して原点位置に戻」る動作処理であるから、本件補正発明における構成T、U、Vの「第一の可動体が第一の位置から遠ざかる動作を開始してから第一の状態に戻るまでの動作のことであ」る「第一の動作を実行可能な」処理に相当し、「電源投入時」は、本件補正発明における構成Vの「電源が投入されると」に相当する。したがって、刊行物2発明における構成t、u、vは、本件補正発明における構成T、U、Vに相当する。
さらに、刊行物2発明における構成wの「遊技中」は、本件補正発明における構成Wの「図柄変動表示が実行される期間」に相当し、「第1、第2可動体原点位置判定処理及び原点位置復帰処理を行って、可動体を常に原点位置にセットする」ことは、「原点位置判定処理」の結果、第2可動体(可動体37b)が原点位置にないと判定されると、第2可動体を原点位置に復帰させる「原点位置復帰処理を行」うことになるから、本件補正発明における構成Wの「第三の可動体が第三の状態でないと第三の動作が実行される場合があ」ることに相当する。したがって、刊行物2発明における構成wと、本件補正発明における構成Wとは、「図柄変動表示が実行される期間において第三の可動体が第三の状態でないと第三の動作が実行される場合があ」ることで共通する。
したがって、刊行物2発明は、本件補正発明における
「A 第一の可動体と、
C 第三の可動体と、
を備えた遊技台であって、
E 前記第一の可動体は、第一の位置と第二の位置とに少なくとも移動可能な可動体であり、
I 前記第一の状態とは、前記第一の可動体が前記第一の位置にある状態のことであり、
J 前記第二の状態とは、前記第一の可動体が前記第二の位置にある状態のことであり、
K 前記第一の可動体と前記第三の可動体は異なる可動体であり、
L 前記第一の可動体は、前記第一の状態から動作可能な可動体であり、
M 前記第三の可動体は、第三の状態から動作可能な可動体であり、
N 前記第三の状態とは、前記第三の可動体が第三の位置にある状態のことであり、
O 前記第一の位置と前記第三の位置は異なる位置であり、
P 前記第一の位置とは、前記第一の可動体の初期位置のことであり、
Q 前記第三の位置とは、前記第三の可動体の初期位置のことであり、
R 前記第三の可動体は、第三の動作を実行可能な可動体であり、
S 前記第三の動作とは、前記第三の可動体が前記第三の状態に戻る動作のことであり、
T 前記第一の可動体は、第一の動作を実行可能な可動体であり、
U 前記第一の動作とは、前記第一の可動体が前記第一の位置から遠ざかる動作を開始してから前記第一の状態に戻るまでの動作のことであり、
V 電源が投入されると前記第一の動作が実行され、
W’図柄変動表示が実行される期間において前記第三の可動体が前記第三の状態でないと前記第三の動作が実行される場合がある
遊技台。」に対応する構成を備えるものである。

そして、本件補正発明の構成Q、Wによると、「第三の状態」とは、第三の可動体が初期位置にある状態のことであるとされ、構成Sによると、「第三の動作」とは、第三の可動体が第三の状態に戻る動作のことであるとされていることからみて、本件補正発明における構成Wの「図柄変動表示が実行される期間に」「第三の動作が実行される場合」の「第三の動作」に、第三の可動体が初期位置に位置しないことに基づいて、第三の可動体を初期位置へ復帰させるために実行される動作を含む以外にも、第三の可動体を演出の一貫として初期位置に戻すために実行される動作のみも含むものである。
同様に、本件補正発明における構成Wの「第三の動作の後」に「実行される」「第一の動作」は、構成Uによると、「第一の可動体が第一の位置から遠ざかる動作を開始してから第一の状態に戻るまでの動作」のことであるから、「第一の動作」に、第一の可動体の動作確認のために実行される動作を含む以外にも、演出の一貫として実行される第一の可動体の動作のみも含むものである。

ところで、遊技機の技術分野において、1つの可動体について、変動遊技の開始に伴い、可動体を初期位置に戻す復帰動作を行った後に、他の可動体について、初期位置から遠ざかる動作を開始してから、初期位置に戻す動作を行うことは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2013-215362号公報には、第2可動体について、変動開始時に異常が検知された場合、当該変動の開始とほぼ同時に基準位置に復帰させること(【0098】)、当該変動開始から所定時間経過後に第1可動体についての上下方向の往復運動を開始する場合のある(【0040】、【0140】)ぱちんこ遊技機(【0001】)について記載され、
特開2013-34707号公報の【0001】、【0306】?【0310】、【0317】?【0323】、【図43】?【図44】には、第1可動体の原点位置への復帰動作を行った後に、第2可動体の動作タイミングにおいて、原点位置から進出位置まで駆動させた後、原点位置に復帰させる動作を行わせる遊技機について記載されている。)。

ここで、刊行物発明と刊行物2発明とは、初期位置である第一の位置から遠ざかる動作を開始してから、第一の位置にある状態に戻るまでの第一の動作を実行可能な第一の可動体を備える遊技機である点で共通する。
また、刊行物発明と刊行物2発明とは、可動役物が動作時に他の部材と干渉する虞を低減させるという共通の課題を解決するものである。
したがって、第一の可動体、及び、第二の可動体を備える刊行物発明に、第三の可動体を備える刊行物2発明を適用して、第一の可動体、及び、第二の可動体に加えて、第三の可動体も備えることにより、上記相違点1、2に係る本件補正発明の構成C、K、M?O、Q?S、V、W’を備えることは当業者が容易になし得たものである。
そして、その際に、上記周知の技術事項を考慮することにより、第一の動作を電源投入時のみならず、図柄変動表示が実行される期間における第三の動作後にも実行可能とし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成Wとすることは、当業者が必要に応じてなし得たものである。
また、本件補正発明により奏される効果は、刊行物発明、刊行物2発明、及び、周知の技術事項から当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。

イ 請求人の主張について
請求人は、平成29年7月5日付けの審判請求書において、本件補正発明と刊行物発明とは、刊行物発明が本件補正発明における構成V、Wを備えない点で相違すると共に、この点については、平成29年2月3日付けの最後の拒絶の理由において提示された引用文献2?4にも開示されていない旨主張し、本件補正発明は、上記構成を備えることにより、「図柄変動表示が実行される期間において第三の可動体が第三の状態でないと第三の動作が実行されることで、図柄変動表示中においても、第三の可動体を作動不良から復帰させることができる場合があり、この第三の動作の後にも第一の動作が実行されることで、動第一の可動体の動作確認ができる場合があり、経年的な劣化で一部の可動体に作不良が生じた場合は、他の可動体にも動作不良が生じる可能性があり、一部の可動体が復帰動作を実行した場合に、他の可動体について初期動作を行わせることで、その動作確認を行うことができる場合がある、という格別の効果を発揮します。」(第11頁第1?9行)と主張する。

そこで、先ず、請求人が主張する、本件補正発明が構成Wを備えることにより奏する効果である「図柄変動表示中においても、第三の可動体を作動不良から復帰させることができる場合があ」ること(以下「効果イ」という。)について検討する。
当該主張において、請求人は、本件補正発明が、あたかも、第三の動作については、第三の可動体を作動不良から復帰させるためのものであるかのような主張を行っているが、上記アにおいて検討したように、本件補正発明における構成Wの「第三の動作」に、第三の可動体が初期位置に位置しないことに基づいて、第三の可動体を初期位置へ復帰させるために実行される動作を含む以外にも、第三の可動体を演出の一貫として初期位置に戻すために実行される動作のみも含むものであることから、請求人の上記主張は本願の特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるので採用することはできない。
しかも、刊行物2発明は、その構成wにより「遊技中は、第1可動体(可動体37a)、第2可動体(可動体37b)の演出動作が終了した際に、第1、第2可動体原点位置判定処理及び原点位置復帰処理を行って、第1、第2可動体を常に原点位置にセットする」ものであるから、上記請求人が主張する本件補正発明により奏される効果イは、刊行物2発明においても奏される効果であるといえる。
さらに、遊技機の技術分野において、「図柄変動表示中においても、第三の可動体を作動不良から復帰させることができる場合があ」ることは、上記アにおいても検討したように本願出願前に周知の技術事項でもある。

次に、上記請求人が主張する本件補正発明により奏される効果である「第三の動作の後にも第一の動作が実行されることで、第一の可動体の動作確認ができる場合があり、経年的な劣化で一部の可動体に動作不良が生じた場合は、他の可動体にも動作不良が生じる可能性があり、一部の可動体が復帰動作を実行した場合に、他の可動体について初期動作を行わせることで、その動作確認を行うことができる場合がある」(下線は、当審にて付与した。以下「主張ロ」という。)ことについて検討する。
当該主張において、請求人は、本件補正発明が、あたかも、一部の可動体については、復帰動作を行い、他の可動体については、当該復帰動作の後に初期動作を行わせることまで特定するものであるかのような主張を行っているが、上記アにおいて検討したように、本件補正発明における構成Wの「第三の動作の後」に「実行される」「第一の動作」に、第一の可動体の動作確認のために実行される動作を含む以外にも、演出の一貫として実行される第一の可動体の動作のみも含むものであることから、請求人の上記主張は本願の特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるので採用することはできない。
そして、本件補正発明における「第一の動作」に、演出の一貫として実行される第一の可動体の動作のみを含むものであるとした場合については、上記アにおいて示したように本願出願前に周知の技術事項である。

したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

ウ 小括
上記ア?イにおいて検討したように、本件補正発明は、刊行物発明、刊行物2発明、及び、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年9月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「A 第一の可動体と、
B 第二の可動体と、
C 第三の可動体と、
を備えた遊技台であって、
D 前記第一の可動体は、前記第二の可動体を有する可動体であり、
E 前記第一の可動体は、第一の位置と第二の位置とに少なくとも移動可能な可動体であり、
F 前記第二の可動体は、少なくとも第二の動作を実行可能な可動体であり、
G 前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第二の状態である場合に、前記第二の動作を実行可能な可動体であり、
H 前記第二の可動体は、前記第一の可動体が第一の状態である場合に、前記第二の動作を実行しない可動体であり、
I 前記第一の状態とは、前記第一の可動体が前記第一の位置にある状態のことであり、
J 前記第二の状態とは、前記第一の可動体が前記第二の位置にある状態のことであり、
K 前記第一の可動体と前記第三の可動体は異なる可動体であり、
L 前記第一の可動体は、前記第一の状態から動作可能な可動体であり、
M 前記第三の可動体は、第三の状態から動作可能な可動体であり、
N 前記第三の状態とは、前記第三の可動体が第三の位置にある状態のことであり、
O 前記第一の位置と前記第三の位置は異なる位置であり、
P 前記第一の位置とは、前記第一の可動体の初期位置のことであり、
Q 前記第三の位置とは、前記第三の可動体の初期位置のことであり、
R 前記第三の可動体は、第三の動作を実行可能な可動体であり、
S 前記第三の動作とは、前記第三の可動体が前記第三の状態に戻る動作のことであり、
T 前記第一の可動体は、第一の動作を実行可能な可動体であり、
U 前記第一の動作とは、前記第一の可動体が前記第一の位置から遠ざかる動作を開始してから前記第一の状態に戻るまでの動作のことであり、
X 第三の時期において前記第三の可動体が前記第三の状態でないと前記第三の動作が実行され、
V 電源が投入されると前記第一の動作が実行され、
Y 前記第三の動作の後にも前記第一の動作が実行される、
ことを特徴とする遊技台。」
ここで、本願発明は、本件補正発明の構成A?Vを含むものであり、本件補正発明における構成Wについて、その内容を一部変更して構成X、Yとするものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項及び刊行物発明の認定については、前記「第2[理由]3(2)ア 刊行物1」に記載したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2の記載事項及び刊行物2発明の認定は、構成a?vについては、前記「第2[理由]3(2)イ 刊行物2」に記載したとおりであり、構成wについては、構成x、yとして認定し直す。
そして、刊行物2には、構成x、yに関して、「上記のように、本実施形態の遊技機は、動作範囲内のある位置で互いが干渉するように配置された第1、第2可動体を有する。電源投入時には、各可動体が各々の原点位置にいるか否かを判定し、原点位置にいない可動体に対してその原点位置に復帰させる。その後、所定の順番で可動体動作確認処理を行う。これにより、両可動体が接触し、壊れてしまうことを防止できる。」(【0191】)こと、「本実施形態では、第1、第2可動体原点位置判定処理、原点位置復帰処理、可動体動作確認処理を遊技機の電源投入時に行う処理として説明したが、これに限られない。例えば、遊技者が遊技を終えてから所定時間経過した際に、上記の各処理を行ってもよい。」(【0196】)ことが記載されている。
したがって、刊行物2には次の発明(以下「刊行物2’発明」という。)が記載されていると認められる(a?yは、本願発明のA?Yに対応させて付与した。)。
「a センター飾り体34aの上部に配置されている、上下方向に移動する可動体37a(【0051】)と、
c、k センター飾り体34aの右側に配置されている、竜の頭部の形状をした可動体37b(【0052】)と
を備えた弾球遊技機(【0001】)であって、
e、i、j、l、p 可動体37aは、センター飾り体34a上部の原点位置に位置し、液晶表示装置36の前方を覆う位置まで下降し(【0090】)、
m、n、o、q 竜の頭部の形状をした可動体37bは、センター飾り体34aの右側の領域の原点位置に位置し、その口が開くような動作をし(【0092】、【0093】)、
r、s 演出の終了と共に、可動体37bは再度、原点位置に戻り(【0093】)、
t、u、v 電源投入時に行われる可動体37aの動作確認処理では、可動体37aは、一度、下限位置まで下降し、その後、上昇して原点位置に戻り(【0091】)、
x、y 動作範囲内のある位置で互いが干渉するように配置された第1可動体(可動体37a)、第2可動体(可動体37b)を有し、電源投入時には、各可動体が各々の原点位置にいるか否かを判定し、原点位置にいない可動体に対してその原点位置に復帰させ、その後、所定の順番で可動体動作確認処理を行い(【0053】、【0191】)、
第1、第2可動体原点位置判定処理、原点位置復帰処理、可動体動作確認処理を遊技者が遊技を終えてから所定時間経過した際に行ってもよい(【0196】)
弾球遊技機。」

3 対比
本願発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。
そうすると、本願発明と刊行物発明とは、本件補正発明と刊行物発明との対応関係と同様に、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点1](構成C、K、M?O、Q?S)
第三の可動体に関して、
本願発明は、第一の可動体とは異なる可動体である第三の可動体を備え(構成C、K)、第三の可動体は、第三の状態から動作可能な可動体であり、第三の状態とは、第三の可動体が第三の位置にある状態のことであり、第一の位置と前記第三の位置は異なる位置であり(構成M?O)、第三の位置とは、第三の可動体の初期位置のことであり、第三の可動体は、第三の動作を実行可能な可動体であり、第三の動作とは、第三の可動体が前記第三の状態に戻る動作のことであ(構成Q?S)るのに対して、
刊行物発明は、第三の可動体を備えない点。

[相違点2’](構成V、X、Y)
本願発明は、第三の時期において第三の可動体が第三の状態でないと第三の動作が実行され、電源が投入されると第一の動作が実行され、第三の動作の後にも第一の動作が実行されるのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

4 判断
(1)相違点1,2’について
上記相違点1、2’は、第三の可動体に関する技術であるのでまとめて検討する。
刊行物2’発明における構成x、yは、「可動体動作確認処理」を電源投入時のみならず、「遊技者が遊技を終えてから所定時間経過した際に」も行うことを特定するものである。
そして、刊行物2’発明における構成x、yの「遊技者が遊技を終えてから所定時間経過した際」は、本願発明における構成Xの「第三の時期」に相当する。
また、刊行物2’発明における構成x、yの「第1、第2可動体原点位置判定処理、原点位置復帰処理」を「行う」ことは、「原点位置判定処理」の結果、第2可動体(可動体37b)が原点位置にないと判定されると、第2可動体を原点位置に復帰させる「原点位置復帰処理」を「行う」ことであるから、本願発明における構成Xの「第三の可動体が第三の状態でないと第三の動作が実行され」ることに相当する。
したがって、刊行物2’発明における構成x、yは、本願発明における構成Xの「第三の時期において第三の可動体が第三の状態でないと第三の動作が実行され」ることに相当する。

また、刊行物2’発明における構成x、yの「可動体動作確認処理」は、「電源投入時に」「各可動体が各々の原点位置にいるか否かを判定し、原点位置にいない可動体に対してその原点位置に復帰させ、その後、所定の順番で」行われるものである。
そうすると、刊行物2’発明における構成x、yは、「遊技者が遊技を終えてから所定時間経過した際に」、「第1、第2可動体原点位置判定処理」を行って、第2可動体が原点位置にないと判定されると、第2可動体を原点位置に復帰させる「原点位置復帰処理」を行い、「その後、所定の順番で可動体動作確認処理を行」うこと、すなわち、第1可動体の動作確認処理が行われることになるから、本願発明における構成Yの第三の時期において「第三の動作の後にも第一の動作が実行される」ことに相当する

したがって、刊行物2’発明は、前記「第2[理由]3(4)ア 相違点1,2について」と同様にして、本願発明における構成C、K、M?O、Q?S、X、V、Yに対応する構成を備えるものである。

そして、刊行物発明と刊行物2’発明とは、初期位置である第一の位置から遠ざかる動作を開始してから、第一の位置にある状態に戻るまでの第一の動作を実行可能な第一の可動体を備える点で共通する。
また、刊行物発明と刊行物2’発明とは、可動役物が動作時に他の部材と干渉する虞を低減させるという共通の課題を解決するものである。
したがって、第一の可動体、及び、第二の可動体を備える刊行物発明に、第三の可動体を備える刊行物2’発明を適用して、上記相違点1、2’に係る本願発明の構成C、K、M?O、Q?S、X、V、Yを備えることは当業者が容易になし得たものである。
また、本願発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、刊行物2’発明から当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-23 
結審通知日 2018-02-26 
審決日 2018-03-09 
出願番号 特願2014-77573(P2014-77573)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 圭史  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 長崎 洋一
萩田 裕介
発明の名称 遊技台  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  

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