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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1339758
審判番号 不服2017-6048  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-26 
確定日 2018-04-26 
事件の表示 特願2015- 3299「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月14日出願公開、特開2016-128873〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月9日の出願であって、平成28年12月13日付けで手続補正がなされ、平成29年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月26日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に、手続補正がなされ、その後、当審において、同年12月4日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、平成30年1月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願発明は、平成30年1月31日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
所定のタイミングでパッチ画像を形成し、形成される画像の位置ずれを調整する画像形成装置であって、
感光体と、
前記感光体に形成された静電潜像に帯電したトナーを供給してトナーによる可視画像を前記感光体上に形成する現像ユニットと、
一方方向に回転して、前記現像ユニットによって前記感光体上に形成された前記トナーによる可視画像をその上に一次転写される中間転写体と、
バイアスの印加により、前記感光体上に形成された前記トナーによる可視画像を前記中間転写体の上に一次転写させる一次転写ローラーと、
前記一次転写ローラーにバイアスを印加する第一のバイアス印加部と、
バイアスの印加により、前記中間転写体上に一次転写された前記トナーによる可視画像を、記録媒体上に二次転写する二次転写ローラーと、
前記二次転写ローラーにバイアスを印加する第二のバイアス印加部と、
前記中間転写体の回転方向における前記二次転写ローラーの下流側に配置され、前記中間転写体の表面にブラシの先端部分が当接し、前記中間転写体の表面を予備清掃するプレブラシと、
前記プレブラシにバイアスを印加するプレブラシバイアス印加部と、
前記中間転写体の回転方向における前記プレブラシの下流側に配置され、前記中間転写体の表面に当接して前記中間転写体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードと、
前記中間転写体上に一次転写されたトナーにより形成された前記パッチ画像の前記中間転写体からの除去に際し、前記二次転写ローラーが設けられた位置を前記トナーが通過する時に、前記第二のバイアス印加部および前記プレブラシバイアス印加部により、帯電した前記トナーの極性と逆の極性のバイアスをそれぞれ前記二次転写ローラーおよび前記プレブラシに印加するよう制御する第一の制御部と、
前記第一の制御部が作動し、前記トナーの帯電量が低下した後に、前記第二のバイアス印加部により、帯電した前記トナーの極性と同じ極性のバイアスを前記二次転写ローラーに印加し、前記プレブラシバイアス印加部により、前記プレブラシに前記トナーの極性と逆の極性のバイアスを前記プレブラシに印加するよう制御する第二の制御部とを備え、
前記第一の制御部は、記録媒体としての用紙上に二次転写する際の前記第二のバイアス印加部による印加されるバイアス電流値が-40μAであった場合に、前記第二のバイアス印加部により前記二次転写ローラーへ-40μA以下のバイアスを印加するよう制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記第一の制御部は、前記二次転写ローラーが設けられた位置を前記トナーが通過する時に、前記プレブラシバイアス印加部により、前記プレブラシに前記トナーの極性と逆の極性のバイアスを前記プレブラシに印加するよう制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第二の制御部は、前記プレブラシバイアス印加部によるバイアスの印加を、電流値の絶対値として40μA以上とするよう制御する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置が配置されている環境の絶対水分量を計測する絶対水分量計測部を備え、
前記第一および第二の制御部は、前記絶対水分量計測部により計測された前記画像形成装置が配置されている環境の絶対水分量が、1.4g/m^(3)以下の時に作動する、請求項1?3のいずれか1項に記載の画像形成装置。」(以下、請求項1乃至請求項4にかかる各発明を、それぞれ、「本願発明1」乃至「本願発明4」といい、これらを総称して「本願発明」という。)


第3 引用刊行物
1.引用刊行物の記載
(1)引用刊行物1
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成21年3月12日に頒布された刊行物である特開2009-53412号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に設けられ、現像剤像が転写される中間転写体と、
像担持体上に形成された現像剤像を前記中間転写体上に1次転写させる1次転写手段と、
電圧印加手段により電圧が印加されることで、前記1次転写手段により前記中間転写体上に1次転写された現像剤像を記録材に2次転写させる2次転写手段と、
前記中間転写体上の現像剤を除去するクリーニング手段と、
を備えた画像形成装置において、
前記2次転写手段により2次転写が行われる際に前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加される電圧に対して電界の向きが等しい第1電圧を、前記中間転写体を移動動作させた状態で、前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加させ、前記第1電圧の印加開始から所定時間経過後、前記第1電圧に対して電界の向きが逆となる第2電圧を、前記中間転写体を移動動作させた状態で、前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加させる制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段が前記電圧印加手段により前記第1電圧を前記2次転写手段に印加させることにより、前記中間転写体上の現像剤が前記2次転写手段に回収され、さらに、前記2次転写手段に回収されなかった前記中間転写体上の現像剤が前記クリーニング手段により回収され、
前記制御手段が前記電圧印加手段により前記第2電圧を前記2次転写手段に印加させることにより、前記2次転写手段に回収された現像剤が前記中間転写体上に再転写され、さらに、前記中間転写体上に再転写された現像剤が前記クリーニング手段により回収されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像形成装置が設置される環境の湿度と温度とのうち少なくともいずれか一方を検出する環境検出手段を有し、
前記制御手段は、前記環境検出手段の検出結果に応じて、前記電圧印加手段により前記2次転写手段へ印加される電圧値を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記環境検出手段により検出された湿度又は温度が高い程、前記電圧印加手段により前記2次転写手段へ印加される電圧値を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写体上の現像剤の量を検出する現像剤量検出手段を有し、
前記制御手段は、前記現像剤量検出手段の検出結果に応じて、前記電圧印加手段により前記2次転写手段へ印加される電圧値を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記現像剤量検出手段により検出された現像剤量が大きい程、前記電圧印加手段により前記2次転写手段へ印加される電圧値を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記所定時間は、前記中間転写体のうち前記1次転写手段により1次転写された現像剤像の存在する全領域が前記2次転写手段に達するまでに要する時間であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記1次転写手段により前記中間転写体上に現像剤像が1次転写された状態で画像形成装置による画像形成動作が中断され、その後、画像形成動作が再開される場合に、前記制御手段による制御が実行されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の
画像形成装置。」
イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録媒体上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。」
ウ.「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に開示されているような、中間転写体に弾性ブレードを当接させることで現像剤をクリーニングする方法では、次のような理由により、クリーニング不良が発生してしまうことが懸念される。
【0007】
それは、記録材のピックアップミス、ジャム等が発生した場合における後処理時等、すなわち記録材に現像剤が転写されず大量の現像剤が弾性ブレード部に送り込まれた場合、現像剤を十分に掻き取ることができず、現像剤がブレードをすり抜けてしまうことによる。
【0008】
また、ファーブラシを用いて中間転写体上の現像剤を回収する方法においても、大量の現像剤が送り込まれた場合に回収しきれず、クリーニング不良が発生してしまうことが懸念される。
【0009】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、画像形成装置の大型化、複雑化、高コスト化を抑制し、大量の現像剤がクリーニング部に送り込まれた場合であっても良好にクリーニングすることのできる画像形成装置を提供することを目的とする。」
エ.「【0018】
画像形成部は、まず、画像処理部が変換した露光時間に基づいて点灯させる露光光により静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して単色現像剤像を形成する。そして、この単色現像剤像を重ね合わせて多色現像剤像を形成し、この多色現像剤像を記録材10へ転写し、その記録材10上の多色現像剤像を定着させるものである。
【0019】
画像形成部は、給送部11、感光ドラム(以下、感光体)22、注入帯電器23、現像剤カートリッジ25、現像手段26、転写ローラ21、中間転写体27、転写ローラ28、クリーニング手段29、定着部30によって構成されている。ここで、感光体22、注入帯電器23、現像剤カートリッジ25、現像手段26は、現像色(本実施例ではイエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K))に対応して並設されたステーション毎に設けられている。ここで、感光体22は像担持体を構成し、注入帯電器23は1次帯電手段を構成し、転写ローラ21は1次転写手段を構成し、転写ローラ28は2次転写手段を構成している。」
オ.「【0023】
現像手段26としては、静電潜像を可視化するために、ステーション毎にイエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の現像を行う4個の現像器26Y,26M,26C,26Kが備えられている。そして、各現像器には、スリーブ26YS,26MS,26CS,26KSが設けられている。各々の現像器は脱着可能に取り付けられている。」
カ.「【0033】
本実施例では、クリーニング手段29として、中間転写体27に弾性ブレードを当接させることで現像剤をクリーニングする方法を用いている。また、弾性ブレードの材質としてウレタンゴムを用いている。クリーニング手段としては特に限定されるものではない。すなわち、クリーニング手段及びその材質は画像形成装置の構成(仕様)に従って適宜最適なものが決定されるとよく、背景技術の項で説明したようなファーブラシを用いる手段などであってもよい。」

上記ア乃至カの記載から、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「給送部、注入帯電器、現像剤カートリッジ、静電潜像を可視化するために、ステーション毎にイエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の現像を行う4個の現像器が備えられている現像手段、定着部と、
移動可能に設けられ、現像剤像が転写される中間転写体と、
像担持体上に、露光光により静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して現像剤像を形成し、形成された現像剤像を前記中間転写体上に1次転写させる転写ローラである1次転写手段と、
電圧印加手段により電圧が印加されることで、前記1次転写手段により前記中間転写体上に1次転写された現像剤像を記録材に2次転写させる転写ローラである2次転写手段と、
前記中間転写体上の現像剤を除去するクリーニング手段としての弾性ブレードと、
から構成される画像形成部を備えた画像形成装置において、
前記2次転写手段により2次転写が行われる際に前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加される電圧に対して電界の向きが等しい第1電圧を、前記中間転写体を移動動作させた状態で、前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加させ、前記第1電圧の印加開始から所定時間経過後、前記第1電圧に対して電界の向きが逆となる第2電圧を、前記中間転写体を移動動作させた状態で、前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加させる制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段が前記電圧印加手段により前記第1電圧を前記2次転写手段に印加させることにより、前記中間転写体上の現像剤が前記2次転写手段に回収され、さらに、前記2次転写手段に回収されなかった前記中間転写体上の現像剤が前記クリーニング手段により回収され、
前記制御手段が前記電圧印加手段により前記第2電圧を前記2次転写手段に印加させることにより、前記2次転写手段に回収された現像剤が前記中間転写体上に再転写され、さらに、前記中間転写体上に再転写された現像剤が前記クリーニング手段により回収される、画像形成装置。」

(2)引用刊行物2
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成13年7月10日に頒布された刊行物である特開2001-188452号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の方向に移動する像担持体上に、重合法により製造された球形トナーを用いて画像情報に基づくトナー像を形成し、該トナー像を最終的に所定の記録媒体に転写および定着することにより該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置における、前記像担持体上のトナー像が転写された後の前記像担持体表面に残留する残留トナーを除去するクリーニング装置において、
前記像担持体表面の残留トナーを掻き取る弾性部材と、該弾性部材よりも像担持体移動方向上流側に配置され、前記残留トナーを粉砕して該像担持体上に微粒トナーを生成する微粒トナー生成手段とを有することを特徴とするクリーニング装置。

【請求項3】 前記像担持体が、トナー像を担持する感光体からの転写を受け該転写されたトナー像を担持して所定の方向に移動する中間転写体であることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。

【請求項19】 前記微粒トナー生成手段は、導電性の繊維が植毛された回転ブラシを備え、かつ該回転ブラシが、トナーの帯電極性とは逆極性の直流バイアスが印加されたものであることを特徴とする請求項3記載のクリーニング装置。」
イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる像担持体のクリーニング装置およびそのクリーニング装置を備えた画像形成装置に関する。」
ウ.「【0012】
【発明が解決しようとする課題】画像形成装置の感光体や中間転写体などの像担持体のクリーニング装置としては、エッジを像担持体の走行方向に対してカウンタ方向に向けて当接させたドクタ方式のものが多く用いられているが、この方式のクリーニング装置を備えた画像形成装置に前述の重合法により製造された球形トナーを用いようとすると、次のような種々の問題を起こすことが知られている。
【0013】一般に、重合法により製造された球形トナーは粒径分布が狭いために、上記のようなクリーニングブレードによりクリーニングすることが非常に困難であることが知られている。それは、球形トナーの一部がクリーニングブレードをすり抜けてしまうためとされており、その詳細なメカニズムについて、これまでに様々な説明がなされている。一般的な説明としては、クリーニングブレードのエッジに集積した球形トナーは、トナー粒子個々の接触面積が大きくかつ同程度の粒径を有しているため、互いに他を乗り越えて位置を移動させることが困難であり、また流動性が高くパッキング性が強いので最密充填状態になり易く、しかも像担持体表面との接触面積が大きく像担持体との摩擦力が大きいため滑りにくく、あたかも1つの集合体のようになって強い力でクリーニングブレードを押し上げ、その下をすり抜けてしまうといわれている。
【0014】このような原因で球形トナーのクリーニング性が低下するので、クリーニングブレードの圧接力を単に増加させただけではクリーニング性を改善することはできないばかりでなく、感光体の寿命を短縮させてしまう恐れがあるためむやみに圧接力を増加するわけにはいかない。
【0015】このような球形トナーのクリーニング性に関する問題に関して、これまでに種々の改善案が提案されている。例えば、特開平5-011503号公報には、バイアスロールを用いた静電的なトナー除去方式が開示されている。しかし、この方式では、バイアスロールに単純にバイアスを付与しただけなので機械的な除去力が欠けておりトナー除去効果が小さいという問題がある。
【0016】また、特開平5-188643号公報ほかには、球形トナーを用いた場合のクリーニングブレードのクリーニング性を改善するために、像担持体表面の摩擦係数を低減させる潤滑物質を像担持体上に供給する手段を備えたクリーニング装置が開示されている。このクリーニング装置は、潤滑物質により像担持体表面の摩擦係数を低減することにより、たとえ球形トナーが最密充填状態になったとしても像担持体表面を滑りやすいのでクリーニングブレードをすり抜けにくくすることができるという効果を狙ったものである。
【0017】しかし、このような摩擦低減物質を長期間にわたって像担持体表面に均一に塗布し続けることは極めて困難である。また、この摩擦係数低減物質として提案されているものの多くは吸湿性を有しており、高温高湿条件のもとで像担持体表面にフィルム状に付着しやすいため、帯電状態に悪影響を与え画像に欠損を生じる等の不具合を引き起こすことがある。その点については比較的良好な性能を示すものとしてステアリン酸亜鉛を挙げることができるが、この物質は高価なために画像形成装置での使用には適さない。また、このような摩擦低減物質を帯電ロールのような接触式の帯電装置と組み合わせて使用すると帯電装置を汚す原因となり帯電不良を惹き起こしやすいという問題もある。
【0018】また、特開平5-19663号公報には、クリーニングブレード上流側に像担持体に圧接する加圧ロールを設け、加圧ロールと像担持体とのニップ部で球形トナーを潰して不定形粒子とすることにより、球形トナーの最密充填状態を発生させない様にしたクリーニング方法が開示されている。しかし、トナーが加圧ロールと像担持体により押し潰されることによりフィルミング現象を起こしやすく、フィルム状となったトナーが感光体に付着するという問題がある。また、この方法ではトナーに加圧力がかかるのはほんの一瞬であり球形トナーを十分に粉砕することができない。球形トナーを不定形粒子に十分に変形させるためには加圧ロールの硬度を上げ、像担持体への加圧力を大きくしなければならないが、そのようにした場合は、像担持体表面層を損傷しやすいという問題や像担持体駆動トルクの上昇といった新たな問題を生じる恐れがある。
【0019】さらに、特開平8-254873号公報には、4色フルカラー画像形成装置において、4色のうちの3色の現像剤に重合法で製造した球形トナーを用い他の1色の現像剤に粉砕法で製造した不定形トナーを用いることにより、クリーニングブレードのニップ付近で球形トナーと不定形トナーとを混合させて最密充填状態の発生を防止するようにしたクリーニング方法が開示されている。しかし、この方法にも次のような問題がある。すなわち、この方法は、1つの感光体上に互いに異なる色のトナー像を順次形成する方式の画像記録装置の感光体クリーニング装置に適用することはできるが、4色タンデム方式のカラー画像形成装置の場合には、不定形トナーを用いた色の感光体にはクリーニング装置が必要であり、完全なクリーナレスシステムとすることは不可能である。
【0020】以上説明したとおり、上記の各改善案は、重合法により製造された球形トナーを用いる画像形成装置の感光体用のクリーニング装置としては不完全であると同時に、感光体クリーナレスとした時の中間転写体のクリーニング装置としての使用にも適さない。すなわち、転写効率の良い重合球形トナーの特質を十分に生かし切れておらず、高画質化とランニングコストの低減化を計ることは極めて難しい。
【0021】本発明は、上記事情に鑑み、重合法により製造された球形トナーを用いる画像形成装置の像担持体上の残留トナーを効率よく除去することのできる低コストのクリーニング装置、およびそのクリーニング装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする。」
エ.「【0155】図18は、第3の実施例の中間転写体クリーニング装置の概略構成図である。
【0156】図18に示すように、この中間転写体クリーナユニット20は、中間転写体2の表面に対向した開口部24aを有する筐体24、中間転写体2の表面に中間転写体2の回転方向Aに対しカウンタ方向に向けて所定のオーバーラップ量で接するように配設された、二次転写後の中間転写体2表面の残留トナーを掻き取るウレタンゴム製のクリーニングブレード25と、そのクリーニングブレード25よりも中間転写体移動方向Aの上流側に配置され、残留トナーを粉砕して中間転写体2上に微粒トナーを生成する静電ブラシ21とを有する、二次転写後の中間転写体表面に残留した残留トナーを除去するクリーニング装置である。
【0157】なお、本実施例におけるクリーニングブレード25は、本発明にいう弾性部材に相当するものであり、本実施例における静電ブラシ21は、本発明にいう微粒トナー生成手段に相当するものである。
【0158】本実施例では、静電ブラシ21、すなわち微粒トナー生成手段は、中間転写体2の表面と接触しながら中間転写体2の移動速度の1.5倍以上の回転速度で中間転写体移動方向Aと順方向に回転する、太さが1テックス以上の導電性の繊維を、表面での繊維密度が5000本/cm^(2)以上となるように植毛してなる回転ブラシを備えたものであり、かつその回転ブラシには、トナーの帯電極性とは逆極性の直流バイアスが印加されており、残留トナーを粉砕して中間転写体2上に微粒トナーを生成する作用のほかに、中間転写体表面に残留した残留トナーを除去する作用をも行えるように構成されている。
【0159】静電ブラシ21の周速は、好ましくは中間転写体2の周速の1.5倍?3倍程度であることが望ましい。周速が遅すぎると残留トナー除去性能が低下し、速すぎると回転ムラが生じて画質に悪影響を与える恐れがある。特に、静電ブラシ21の周速を、中間転写体2の周速の1.5倍以上とするとともに、太さが1テックス以上の導電性ナイロン繊維を、表面での繊維密度が5000本/cm^(2)以上となるように植毛してなる回転ブラシとした場合は、重合法で製造した球形トナーを、回転ブラシの衝撃力で割ることができるので、トナーダム生成に寄与する微粒トナーを生成することができるので好ましい。
【0160】本実施例のクリーナユニット20は、以上のほかに、静電ブラシ21よりも速い周速で回転駆動され、静電ブラシ21と所定の食い込み量で接触するように配設された、アルミニウムロール表面にフッ素コーティングが施されたデトーニングロール22、デトーニングロール22の表面に所定の食い込み量で接触するように配設され、デトーニングロール22表面に付着したトナーを掻き取るリン青銅薄板のスクレーパ23、およびスクレーパ23で掻き取られたトナーを回収系に送るオーガ26を備えている。
【0161】デトーニングロール22の周速は、好ましくは静電ブラシの1.2倍程度以上であることが望ましい。この周速が遅すぎると静電ブラシ21からのトナー移動が不十分となり、速すぎるとスクレーパ23によるトナー掻取りが不十分となる。
【0162】静電ブラシ21およびデトーニングロール22に印加されるバイアスは、ともに同極性であり、デトーニングロール22のバイアスは、静電ブラシ21のそれよりも絶対値の大きいバイアスとする。
【0163】中間転写体上の残留トナーには、次の3つの種類がある。第1の種類は、二次転写後に中間転写体上に残留した二次残留トナーであり、第2の種類は、感光体上のトナー像濃度や色バランスをチェックするためのパッチ像が感光体から転写されたものであり、第3の種類は、ジャム発生時に感光体上に残留するトナー像が中間転写体上に転写されたものである。第2および第3の種類のトナーの極性は、現像トナー極性と同極性であるが、第1の種類のそれは逆極性である。バイアスの極性は、除去すべきトナーの絶対量の多い、第2、第3の種類のトナー除去に合わせて、これらの種類のトナー極性と逆の極性を選択する。すなわち、現像トナーの極性がマイナスならば、静電ブラシ21とデトーニングロール22に与えるバイアスは、プラスの極性とすることが好ましい。
【0164】重合トナーとしては、分散重合法によって凝集成長させた、平均粒径5.5μmの重合トナーを用いた。この重合トナーの製造工程は次のとおりである。すなわち、スチレンアクリル粒子分散液と色剤粒子の分散液、またワックス粒子の分散液を混合し、粒子を凝集させる工程、凝集粒子を加熱して癒着させる工程、および洗浄工程を経て、球形状の重合トナーが製造される。分散粒子の凝集工程における温度、凝集時間、分散液濃度などを制御することにより、トナー粒径および形状をコントロールすることができる。本実施例で用いた重合トナーは、トナー形状の長径MLと投影面積Aで表わされる形状係数ML^(2)/Aが120未満のものである。
【0165】重合法での分散粒子の凝集時に、粒子どうしの間に間隙が生じ、加熱癒着の際に気泡として残る傾向がある。そのため一般に、粉砕法によって製造されたトナーよりも脆く、衝撃に弱いという一面があるが、上記分散粒子の凝集工程における各パラメータの調整により、適切な耐衝撃性を得ることができる。
【0166】本実施例の中間転写体クリーニング装置によれば、中間転写体表面の残留トナーあるいはトナー像は、静電ブラシ21により静電的に外添剤が分離されトナーが選択的に除去回収されるので、静電ブラシ21にトナーが選択的に除去回収されることにより、クリーニングブレード25のブレードエッジ部に到達するトナー量を大幅に減少させることができる。また、トナー表面から外添剤が静電的に分離されるので、多くの外添剤をニップ部に供給することが可能となり、これによってニップ部の非流動域には外添剤が溜まり、理想的なトナーダムの形成に寄与する。」

上記ア乃至エの記載から、引用刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「所定の方向に移動する像担持体上に、重合法により製造された球形トナーを用いて画像情報に基づくトナー像を形成し、該トナー像を最終的に所定の記録媒体に転写および定着することにより該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置における、前記像担持体上のトナー像が転写された後の前記像担持体表面に残留する残留トナー(感光体上のトナー像濃度や色バランスをチェックするためのパッチ像が感光体から転写されたもの)を除去するクリーニング装置を備えた画像形成装置において、
前記像担持体表面の残留トナーを掻き取る弾性部材と、該弾性部材よりも像担持体移動方向上流側に配置され、前記残留トナーを粉砕して該像担持体上に微粒トナーを生成する微粒トナー生成手段とを有し、
前記像担持体が、トナー像を担持する感光体からの転写を受け該転写されたトナー像を担持して所定の方向に移動する中間転写体であり、
前記微粒トナー生成手段は、導電性の繊維が植毛された回転ブラシを備え、かつ該回転ブラシが、トナーの帯電極性とは逆極性の直流バイアスが印加されたものである、クリーニング装置を備えた画像形成装置。」

第4 対比
そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、
1.後者の「画像形成装置」、「像担持体」、「静電潜像」、「現像剤」、「現像剤像」、「移動可能に設けられ、現像剤像が転写される中間転写体」、「中間転写体上の現像剤を除去するクリーニング手段としての弾性ブレード」、及び「電圧印加手段」は、それぞれ、前者の「画像形成装置」、「感光体」、「静電潜像」、「トナー」、「トナーによる可視画像」、「一方方向に回転して、現像ユニットによって感光体上に形成されたトナーによる可視画像をその上に一次転写される中間転写体」、「中間転写体の表面に当接して前記中間転写体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレード」、及び「第二のバイス印加部」に相当する。
2.後者の「現像剤」は、「静電潜像を現像して現像剤像を形成」するものであって、静電潜像に対して静電的に吸着するものであるから、「帯電したトナー」といえる。
3.後者の「現像手段」は、像担持体上に、露光光により形成された静電潜像を可視化するために、ステーション毎にイエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の現像を行う4個の現像器が備えられているものであるから、前者の「可視画像を前記感光体上に形成する現像ユニット」に相当する。
4.後者の「1次転写手段」は、「像担持体上に、露光光により静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して現像剤像を形成し、形成された現像剤像を前記中間転写体上に1次転写させる転写ローラ」であって、現像剤像の転写に際して、静電気力、すなわち、バイアスの印加により転写を行うことは技術常識であるから、後者の「像担持体上に形成された現像剤像を中間転写体上に1次転写させる転写ローラを構成する1次転写手段」は、前者の「感光体上に形成されたトナーによる可視画像を中間転写体の上に一次転写させる一次転写ローラー」に相当する。
また、上記のとおり、1次転写の際にバイアスを印加していることは明らかであるから、「一次転写ローラーにバイアスを印加する第一のバイアス印加部」が設けられているといえる。
5.後者の「2次転写手段」は、「電圧印加手段により電圧が印加されることで、前記1次転写手段により前記中間転写体上に1次転写された現像剤像を記録材に2次転写させる転写ローラ」であるから、前者の「バイアスの印加により、中間転写体上に一次転写されたトナーによる可視画像を、記録媒体上に二次転写する二次転写ローラー」に相当する。
6.後者の「制御手段」は、「2次転写手段により2次転写が行われる際に電圧印加手段により2次転写手段に印加される電圧に対して電界の向きが等しい第1電圧を、中間転写体を移動動作させた状態で、前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加させ、前記第1電圧の印加開始から所定時間経過後、前記第1電圧に対して電界の向きが逆となる第2電圧を、前記中間転写体を移動動作させた状態で、前記電圧印加手段により前記2次転写手段に印加させる制御を行い、
前記電圧印加手段により前記第1電圧を前記2次転写手段に印加させることにより、前記中間転写体上の現像剤が前記2次転写手段に回収され、さらに、前記2次転写手段に回収されなかった前記中間転写体上の現像剤が前記クリーニング手段により回収され、
前記電圧印加手段により前記第2電圧を前記2次転写手段に印加させることにより、前記2次転写手段に回収された現像剤が前記中間転写体上に再転写され、さらに、前記中間転写体上に再転写された現像剤が前記クリーニング手段により回収される」ものであるから、「中間転写体上に一次転写されたトナーにより形成された画像の中間転写体からの除去に際し、二次転写ローラーが設けられた位置をトナーが通過する時に、第二のバイアス印加部により、帯電したトナーの極性と逆の極性のバイアスを二次転写ローラーに印加するよう制御する第一の制御部と、
第一の制御部が作動し、トナーの帯電量が低下した後に、第二のバイアス印加部により、帯電したトナーの極性と同じ極性のバイアスを二次転写ローラーに印加するよう制御する第二の制御部とを備え」るといえる。

したがって、両者は、
「画像形成装置であって、
感光体と、
前記感光体に形成された静電潜像に帯電したトナーを供給してトナーによる可視画像を前記感光体上に形成する現像ユニットと、
一方方向に回転して、前記現像ユニットによって前記感光体上に形成された前記トナーによる可視画像をその上に一次転写される中間転写体と、
バイアスの印加により、前記感光体上に形成された前記トナーによる可視画像を前記中間転写体の上に一次転写させる一次転写ローラーと、
前記一次転写ローラーにバイアスを印加する第一のバイアス印加部と、
バイアスの印加により、前記中間転写体上に一次転写された前記トナーによる可視画像を、記録媒体上に二次転写する二次転写ローラーと、
前記二次転写ローラーにバイアスを印加する第二のバイアス印加部と、
前記中間転写体の表面に当接して前記中間転写体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードと、
前記中間転写体上に一次転写されたトナーにより形成された画像の前記中間転写体からの除去に際し、前記二次転写ローラーが設けられた位置を前記トナーが通過する時に、前記第二のバイアス印加部により、帯電した前記トナーの極性と逆の極性のバイアスをそれぞれ前記二次転写ローラーに印加するよう制御する第一の制御部と、
前記第一の制御部が作動し、前記トナーの帯電量が低下した後に、前記第二のバイアス印加部により、帯電した前記トナーの極性と同じ極性のバイアスを前記二次転写ローラーに印加するよう制御する第二の制御部とを備えた、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1が、「所定のタイミングでパッチ画像を形成し、形成される画像の位置ずれを調整する」画像形成装置であるのに対し、引用発明1は、その点、明らかでない点。

[相違点2]
本願発明1が、「前記中間転写体の回転方向における前記二次転写ローラーの下流側に配置され、前記中間転写体の表面にブラシの先端部分が当接し、前記中間転写体の表面を予備清掃するプレブラシと、前記プレブラシにバイアスを印加するプレブラシバイアス印加部と、前記中間転写体の回転方向における前記プレブラシの下流側に配置され」たクリーニングブレードと、前記中間転写体上に一次転写されたトナーにより形成された「前記パッチ画像」の前記中間転写体からの除去に際し、前記二次転写ローラーが設けられた位置を前記トナーが通過する時に、「前記プレブラシバイアス印加部」により、帯電した前記トナーの極性と逆の極性のバイアスをそれぞれ前記二次転写ローラー「および前記プレブラシ」に印加するよう制御する第一の制御部と、前記第一の制御部が作動し、前記トナーの帯電量が低下した後に、前記第二のバイアス印加部により、帯電した前記トナーの極性と同じ極性のバイアスを、「前記プレブラシバイアス印加部により、前記プレブラシに前記トナーの極性と逆の極性のバイアスを前記プレブラシに印加する」よう制御する第二の制御部とを備えるものであるのに対して、引用発明1は、そのようなものでない点。

[相違点3]
本願発明1が、第一の制御部は、「記録媒体としての用紙上に二次転写する際の前記第二のバイアス印加部による印加されるバイアス電流値が-40μAであった場合に、前記第二のバイアス印加部により前記二次転写ローラーへ-40μA以下のバイアスを印加するよう制御する」ものであるのに対して、引用発明1は、そのようなものでない点。


第5 判断
上記各相違点について検討する。
1.[相違点1]について
引用発明2の「パッチ像」、及び「画像形成装置」は、それぞれ、本願発明1の「パッチ画像」、及び「画像形成装置」に相当する。そして、引用発明2の「色バランス」は、各原色トナーの形成位置と量に依るものであるから、引用発明2の「画像形成装置」は、形成される画像の位置ずれを調整するものであるといえる。そして、引用発明2の「パッチ像」は、感光体上のトナー像濃度や色バランスをチェックするためのものであるから、その「パッチ像」の形成は所定のタイミングで行われているといえる。
そうすると、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明2に示されている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、画像形成装置という共通の技術分野に属し、また、良好にクリーニングすることのできる画像形成装置を提供する、という、共通の課題を有するものである。
そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

2.[相違点2について]
引用発明2の「中間転写体」、「回転ブラシ」、「像担持体表面の残留トナーを掻き取る弾性部材」、「バイアス」、及び「トナーの帯電極性とは逆極性」は、それぞれ、本願発明1の「中間転写体」、「プレブラシ」、「クリーニングブレード」、「バイアス」、及び「トナーの極性と逆極性」に相当する。
引用発明2の「回転ブラシ」を備えた「クリーニング装置」は、像担持体上のトナー像が転写された後の前記像担持体表面に残留する残留トナー(感光体上のトナー像濃度や色バランスをチェックするためのパッチ像が感光体から転写されたもの)を除去するものであるから、「中間転写体の回転方向における前記二次転写ローラーの下流側に配置され」といえる。また、引用発明2の「回転ブラシ」を備えた「微粒トナー生成手段」は、弾性部材よりも像担持体移動方向上流側に配置されるものであるから、引用発明2の「弾性部材」は、「中間転写体の回転方向におけるプレブラシの下流側に配置され」といえる。
引用発明2の「回転ブラシ」を備えた「微粒トナー生成手段」は、「弾性部材よりも像担持体移動方向上流側に配置され、前記残留トナーを粉砕して該像担持体上に微粒トナーを生成する」ものであるから、引用発明2の「回転ブラシ」は、「中間転写体の表面にブラシの先端部分が当接し、前記中間転写体の表面を予備清掃するプレブラシ」といえる。
引用発明2の「回転ブラシ」には、トナーの帯電極性とは逆極性の直流バイアスが印加されるから、引用発明2の「回転ブラシ」は、「『プレブラシにトナーの極性と逆の極性のバイアスを前記プレブラシに印加する』『プレブラシバイアス印加部』」を有するものといえる。
そうすると、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明2に示されている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、画像形成装置という共通の技術分野に属し、また、良好にクリーニングすることのできる画像形成装置を提供する、という、共通の課題を有するものである。
そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

3.[相違点3]について
上記相違点3に係る本願発明1の発明事項である第一の制御部は、「記録媒体としての用紙上に二次転写する際の前記第二のバイアス印加部による印加されるバイアス電流値が-40μAであった場合に、前記第二のバイアス印加部により前記二次転写ローラーへ-40μA以下のバイアスを印加するよう制御する」ものについて、本願明細書をみると、
「【0073】
表3を参照して、実施例4については、時間T1において印加する二次転写ローラー38へのバイアス電流値を-20μAとし、実施例5については、時間T1において印加する二次転写ローラー38へのバイアス電流値を-30μAとし、実施例6については、時間T1において印加する二次転写ローラー38へのバイアス電流値を-40μAとし、実施例7については、時間T1において印加する二次転写ローラー38へのバイアス電流値を-50μAとし、実施例8については、時間T1において印加する二次転写ローラー38へのバイアス電流値を-60μAとしている。なお、表3における周回数は、二次転写ローラー38の周回数である。
【0074】
実施例4において、周回数が5回であるものの、実施例5?実施例8については、周回数が3回である。この周回数については、できるだけ少ない方が良い。すなわち、早期にトナー汚れを解消することを意味する。したがって、より確実に周回数を少ない値である3回とするよう、二次転写ローラー38へ印加するバイアス電流値は、-40μA以下とするのが良い。この-40μAという電流値は、用紙を転写する際のバイアス電流値でもある。すなわち、第一の制御部として、第二のバイアス印加部44bにより印加するバイアス値の絶対値を、記録媒体としての用紙上に二次転写する際に印加するバイアス値の絶対値以下とするよう制御する。」
と記載されている。
上記記載より、記録媒体としての用紙上に二次転写する際の第二のバイアス印加部による印加されるバイアス電流値が、-20μAより、-40μAであった方が周回数が少なく早期にトナー汚れを解消し得ることが認められるが、トナーの電気的性質からすれば、バイアス電流の絶対値が大きければ大きいほど、転位しやすくなることは技術的に明らかなことであるから、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項の「記録媒体としての用紙上に二次転写する際の前記第二のバイアス印加部による印加されるバイアス電流値が-40μA」とした点に格別の臨界的意義があるものではない。
また、上記記載から、本願発明1において、第一の制御部として、第二のバイアス印加部44bにより印加するバイアス値の絶対値を、記録媒体としての用紙上に二次転写する際に印加するバイアス値の絶対値以下とすることに、格別な技術的意義は認められない。
よって、引用発明1において、第一の制御部は、「記録媒体としての用紙上に二次転写する際の前記第二のバイアス印加部による印加されるバイアス電流値が-40μAであった場合に、前記第二のバイアス印加部により前記二次転写ローラーへ-40μA以下のバイアスを印加するよう制御する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明1の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、及び引用発明2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願発明1は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-26 
結審通知日 2018-02-27 
審決日 2018-03-15 
出願番号 特願2015-3299(P2015-3299)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
発明の名称 画像形成装置  
代理人 北野 修平  
代理人 田中 勝也  

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