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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01J
管理番号 1339789
審判番号 不服2016-14763  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-03 
確定日 2018-05-15 
事件の表示 特願2013-542066「遠隔ドーパント源を含むイオン注入機システム及び当該イオン注入機システムを備える方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月 7日国際公開、WO2012/074889、平成26年 2月27日国内公表、特表2014-505322、請求項の数(27)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年(2011年)11月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年11月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月25日付けで手続補正がされ、平成27年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成28年5月31日付け(発送 同年6月2日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年同月28日に請求の理由を補充する手続補正がされ、その後、当審において、平成29年10月23日付けで拒絶理由が通知され(以下「当審拒絶理由」という。)、平成30年3月23日付けで意見書が提出されるとともに手続補正及び誤訳訂正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし27に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明27」という。)は、平成30年3月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1ないし27は以下のとおりである。
「【請求項1】
イオン注入システムのイオン注入ツールへのドーパント源ガスの送出のためのドーパント源ガス供給装置であって、イオン注入システムはガスボックスを含み、前記ガスボックスは前記イオン注入システムが動作状態にあるときは接地に比べて高い動作電圧にあり、前記ガスボックスは前記イオン注入システムが非動作状態にあるときは前記高い動作電圧になく、
前記ガスボックス及び前記イオン注入ツールは外側筐体内にあり、前記ドーパント源ガス供給装置は、
前記外側筐体外にイオン注入システムの前記ガスボックスと遠隔関係で位置するように構成されたドーパント源ガス供給容器と、前記ガスボックス内に位置するように構成されたドーパント源ガスローカル容器と、前記ドーパント源ガスローカル容器と供給関係で前記ドーパント源ガス供給容器を相互接続する供給ラインであって、前記イオン注入ツールが非動作状態であり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成された供給ラインと、を備え、
前記供給ラインは、前記供給ラインを通るガスの流れを制御するように配置された中央演算処理装置を備えるアセンブリにより、前記イオン注入システムが非動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときにだけドーパント源ガスを流し、前記イオン注入システムが動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧であるときに排気又は不活性加圧ガスで充填されるように構成される、
ドーパント源ガス供給装置。
【請求項2】
イオン注入システムのイオン注入ツールへのドーパント源ガスの送出のためのドーパント源ガス供給装置であって、イオン注入システムはガスボックスを含み、前記ガスボックスは前記イオン注入システムが動作状態にあるときは接地に比べて高い動作電圧にあり、
前記ガスボックス及び前記イオン注入ツールは外側筐体内にあり、前記ドーパント源ガス供給装置は、前記ガスボックス外で前記外側筐体内に位置するように構成されたドーパント源ガス貯蔵分配容器と、前記ガスボックス内に位置するように構成された流れ回路であって、前記ガスボックスはその中にドーパント源ガス貯蔵分配容器を持たない、流れ回路と、前記ドーパント源ガス貯蔵分配容器からドーパント源ガスを受け、前記ガスボックスが前記高い動作電圧にあるときに前記ガスボックス内の前記流れ回路に前記ドーパント源ガスを送出するように構成された、電気的に絶縁されたドーパント源ガス供給ラインと、を備え、
前記ドーパント源ガス供給ラインへのドーパント源ガスの流れを開始するために弁頭内の弁を開くように配置された監視及び制御装置に結合された自動弁アクチュエータを含む、
ドーパント源ガス供給装置。
【請求項3】
前記外側筐体外に位置するように構成されたドーパント源ガス供給容器であって、前記外側筐体内に位置する前記ドーパント源ガス貯蔵分配容器と供給関係のドーパント源ガス供給容器を、前記ガスボックス外にさらに備える、請求項2に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項4】
ガスボックスと、前記ガスボックスからドーパント源ガスを受けるように構成されたイオン注入ツールと、を含む外側筐体を含むイオン注入システムであって、請求項1又は2に記載のドーパント源ガス供給装置を含む、イオン注入システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のドーパント源ガス供給装置を使用してイオン注入ツールへドーパント源ガスを送出する工程を含むイオン注入方法。
【請求項6】
請求項5に記載のイオン注入方法を使用して、半導体製品、フラットパネルディスプレイ製品、太陽エネルギー製品から構成された群から選択される製品を製造する、方法。
【請求項7】
ガスボックスを含むイオン注入システムのためのドーパント源ガス供給装置であって、
ガスボックスは動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧で接続される筐体であり、
前記イオン注入システムの前記ガスボックスと遠隔関係で位置するように構成されたドーパント源ガス供給容器と、
前記イオン注入システムの前記ガスボックス内に位置するように構成されたドーパント源ガスローカル容器と、
前記ドーパント源ガスローカル容器と供給関係で前記ドーパント源ガス供給容器を相互接続する供給ラインであって、前記イオン注入システムが非動作状態であるときだけ、前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成された供給ラインと、を備え、
前記供給ラインは、前記供給ラインを通るガスの流れを制御するように配置された中央演算処理装置を備えるアセンブリにより、前記イオン注入システムが非動作状態にあるときにだけドーパント源ガスを流し、前記イオン注入システムが動作状態にあるときに排気又は不活性加圧ガスで充填されるように構成される、
ドーパント源ガス供給装置。
【請求項8】
前記中央演算処理装置は、前記供給ラインを通るガスの流れを制御する少なくとも1つの弁に結合されて前記少なくとも1つの弁を開くようにされている、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項9】
前記供給ライン中に少なくとも1つの弁を含む、請求項8に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの弁は前記ドーパント源ガス供給容器の弁頭内の流量制御弁である、請求項8に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項11】
前記供給ラインは絶縁材料から構成される、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項12】
前記絶縁材料はポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項11に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項13】
前記供給ラインは単一導管を備える、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項14】
前記供給ラインは同軸二重導管を備える、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項15】
前記供給ラインは複数のガス流の通路を含む、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項16】
ドーパント源ガスの前記供給ラインをパージするためのガスパージングアセンブリをさらに備える、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項17】
前記ドーパント源ガス供給容器は、圧力調節された第1のガス貯蔵分配容器を備える、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項18】
前記ドーパント源ガスローカル容器は、前記ドーパント源ガスに対する吸着親和性を有する物理的吸着剤を含む第2のガス貯蔵分配容器を備える、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項19】
前記ドーパント源ガスローカル容器は、前記ドーパント源ガスに対する吸着親和性を有する物理的吸着剤を含む第2のガス貯蔵分配容器を備える、請求項17に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項20】
前記ドーパント源ガス供給容器は、アルシン、ホスフィン、三フッ化ホウ素、シランからなる群から選択されるドーパント源ガスを含む、請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置。
【請求項21】
請求項7に記載のドーパント源ガス供給装置を備えるイオン注入システム。
【請求項22】
ガスボックスを含むイオン注入処理システムの操作方法であって、ガスボックスは動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧で接続される筐体であり、ドーパント源ガス貯蔵分配ローカル容器が前記ガスボックス内に配置され、供給ラインにより、前記ドーパント源ガス貯蔵分配ローカル容器と、前記ガスボックスと遠隔関係で位置するドーパント源ガス供給容器と、が接続されていて、
前記イオン注入処理システムを監視し、前記イオン注入処理システムが動作状態であるかを判断する工程と、
前記イオン注入処理システムが非動作状態にあるときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガス貯蔵分配ローカル容器へドーパント源ガスを流す工程と、を含む方法。
【請求項23】
前記イオン注入処理システムの動作中、前記供給ラインを排気された状態又は加圧不活性ガスで充填された状態に維持する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ドーパント源ガス供給容器は、圧力調節された第1のガス貯蔵分配容器を備える、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ドーパント源ガス貯蔵分配ローカル容器は、前記ドーパント源ガスに対する吸着親和性を有する物理的吸着剤を含む第2のガス貯蔵分配容器を備える、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ドーパント源ガス貯蔵分配ローカル容器は、前記ドーパント源ガスに対する吸着親和性を有する物理的吸着剤を含む第2のガス貯蔵分配容器を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ドーパント源ガス供給容器は、アルシン、ホスフィン、三フッ化ホウ素、シランからなる群から選択されるドーパント源ガスを含む、請求項22に記載の方法。」

なお、請求項3は本願発明2を減縮した発明であり、請求項4ないし6は請求項1または2を減縮した発明であり、請求項8ないし21は請求項7を減縮した発明であり、請求項23ないし27は請求項22を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶理由に引用された特表2004-508681号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同じ。)。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、一般的に、イオン注入システムに関し、及びより具体的にはガス送出システム及びイオン注入システムまたは他の種類の装置での電圧ギャップを越えてガスを供給するための方法に関する。」

イ 「【0006】
イオン源12は、イオン源材料が射出される内部領域を明確にしているプラズマチャンバー18を含む。このイオン源材料はイオン化可能ガスまたは気化源材料を含んでいても良い。固体形態のイオン源材料は、一組の気化機19中へ堆積されても良い。二者択一的に、高圧または低圧型容器の何れかに収納されているガス源が使用されても良い。ガス状水素化アルシン(AsH_(3))やホスフィン(PH_(3))が、イオン注入機の砒素(As)及び燐(P)源として通常使用される。これ等の毒性のために、このようなガス状源は、イオン源12の近距離で、低圧SDS(安全送出システム)容器に収納されていることが多い。」

ウ 「【0019】
【発明の実施の形態】
ここでは本発明は、同様参照符号が明細書全体に渡って同様構成要件を参照するために使用されている図面に関して記載されている。本発明は、貯蔵場所及びイオン源が異なった電圧の電位にあるとき、イオン源ガスを貯蔵場所からイオン注入システムのイオン源へ送出するシステム及び方法を含む。本発明のシステムは、例えば中央ガス庫のようなイオン注入システムから離れた場所にある貯蔵位置に維持されているガスキャニスター内の例えば加圧ガスのようなイオン源ガスを含む。イオン源ガスは、第1電圧の電位、例えば接地回路の電位にある貯蔵場所に維持される。
【0020】
その後イオン源ガスは、他の種類の処理装置へのガス移動と同等の方法で、大量ガス分配ネットワークを経てイオン注入システムへと移動される。一端イオン源ガスが第2電圧の電位(即ち、約80KVまたはそれ以上)にあるイオン注入システムに隣接された所に来ると、ガスはイオン源ガスが第1電圧の電位から第2電圧の電位へと別々に増加されることを可能にする1個またはそれ以上の高電圧用アイソレータの構造体を経てイオン注入システムのガス用鋼製容器へと連結される。その後イオン源ガスは必要に応じて第2電圧の電位でイオン注入機に供給される。本発明のシステム及び方法は、イオン注入システムの電位から異なった電位でイオン源ガスの遠隔貯蔵を可能にし、それによりイオン源ガス材料の容易な貯蔵、補充及び交換を促進する。
【0021】
ここで図面に目を向けると、図2は本発明の例示的な特徴によるイオン源材料送出システム100を図示するブロック図である。送出システム100は、イオン注入装置が設置されている例えばクリーンルーム外のようなイオン注入システムから離れた位置にあるガス庫102を含む。本発明の一つの特徴によれば、ガス庫102は、そこでの多様な処理工程に必要な種々の処理ガスを収容する組立て施設内の中央ガス貯蔵場所である。ガス庫102は、多数のキャニスター及びSDS系容器のみに貯蔵されているのとは異なり、例えば加圧キャニスターのような様々な種類の容器に収納されているかも知れない違う種類の処理ガス類の貯蔵空間を含む。その結果、空のガスキャニスターを交換することは、単純にキャニスターを用途次第で切り離し、そしてガスの送出を中断することなしに新しい物に交換するだけで実施できる。本発明の例示的特徴によれば、ガス庫102内の処理ガスは、例えば回路の接地電位のような第1電位で維持される。
【0022】
送出システム100は更に、ガス庫102から処理ガスを、例えばイオン注入システムのような様々な異なった処理装置に移動させるために、ガス庫102に連結して作動する大量ガス移送システム104を含む。例えば、大量ガス移送システム104は、処理ガスをガス庫102から処理装置へ分配するために、弁、ゲージ、その他が関連している複数のガス管路を含んでいても良い。例えば、大量ガス移送システム104は、イオン源ガスの容易な切替を促進する(即ち、n型ドーパントからp型ドーパントへの切替を可能にする)ために、異なった供給源ガスがそこに存在することを可能にするのと同様な方法で、イオン源ガスの複数の異なった種類をガス庫102からイオン注入システムへ送出するために使える。大量ガス移送システム104の弁、ゲージ、その他は、用途次第でガス送出システムの領域を分離し、ガス管路の漏出をモニターし、ガス管路をパージしたりするのに利用されても良い。本発明の一つの例示的な特徴によると、多量ガス移送システム104に関連するガス管路は、電気的に絶縁されており、そしてガス庫102と関連する第1電圧の電位でその中を通過するガス送出を維持するために操作される。
【0023】
イオン源ガスは、大量ガス移送システム104を経て、イオン注入機械(図示略)に隣接し、そして関連していて、時にはイオン注入機ガス庫と呼ばれる排気用エンクロージャへと移動される。エンクロージャまたはガス用鋼製容器106の中では、イオン源ガスは、例えば回路の接地電位のような第1電圧の電位から、ガス送出のための高電圧用アイソレータの構造体108を経て、イオン注入機が作動する第2電圧の電位(即ち、約80KV)へと高められる。図2に図示したように、1個またはそれ以上のアイソレータ(電気絶縁コネクタ)108が、種々の異なったイオン源ガスをイオン注入機へ連結するために使用されても良い。それ故、高電圧用アイソレータの構造体108は、ガス庫の低電圧部分110aを高電圧部分110bに、安全でかつ信頼性が高い方法で連結する。
【0024】
高電圧用アイソレータの構造体108は、複数のイオン源処理ガスを、例えば、回路の接地電位のような便利な電位で貯蔵され、そして維持され、及び又、このようなガスを複数のイオン源ガスのコストを低減できるように例えば高圧で便利に貯蔵することを可能にする。
【0025】
図2は、異なった電圧にある2つのガス庫の間に連結された高電圧用アイソレータ108を図示するけれど、他のシステム構成も又使用可能であり、そして本発明の範囲に入ると企図されている。例えば、イオン注入機に関連する高電圧の1つのガス庫も存在し得るし、そしてアイソレータの構造体108は、ガスを低電圧で大量ガス移送システム104から高電圧ガス庫へと連結しても良い。二者択一的に、1個のガス庫は、例えば接地回路のような低電圧におかれて良く、そしてアイソレータの構造体108は、ガスを低電圧のガス庫から高電圧のイオン源へと連結しても良い。
【0026】
図3は、図2のシステム100で使用するための、大量ガス移送システム104の一部の例示的な概略図である。図3の大量ガス移送システム104は、イオン源ガスの4つの異なった種類の送出を供給するシステムを図示しているが、しかしながら、もっと多くのまたは少ない数のイオン源ガスを供給するシステムも又使用されても良く、そして本発明の範囲に入ると企図されている。送出システム104は、イオン源ガスをガス庫102から、イオン注入システムに関連する組立て施設内の領域へ運送する一組のイオン源ガス投入管路120a?120dを含む。図3のシステム104は、ただ1箇所のイオン注入システムへの分配を図示しているが、しかしながら、複数のイオン注入システムへの送出も使用され得、そして本発明の範囲に入ると企図されていることに注意されたい。
【0027】
他のガス投入管路122も又、例えば窒素のような不活性ガスを、連続した弁124a?124dを通過して、多数の管路120a?120d各々へ運んでいる送出システム104で提供されている。不活性ガス管路122は又、アイソレータ逆止弁126並びに逆止弁127a?127dを経て、高電圧用アイソレータ108の各々と連結している。更に、不活性ガス管路122は、下記に詳細に渡って説明されるように、高電圧用アイソレータ108に関連した漏洩をモニターするのに利用されうる圧力ゲージ128またはそれに関連しているモニター装置を有する。」

エ 「【0031】
不活性ガス管路122は又、必要に応じてイオン源ガス管路をパージするために利用されても良い。このような場合には、イオン源ガス管路弁121a?121dは閉じられ、そして不活性ガス管路弁124a?124dが開かれる。不活性ガスは、その後管路138を通って高電圧用アイソレータの構造体108の内側チューブ領域へと流れることができ、そしてこのようにしてイオン注入機側でイオン源ガス管路をフラッシュする。二者択一的にまたはこれに加えて、イオン源ガス管路弁(図示されていない)の他の組は閉じられ、そして不活性ガスが管路120a?120dを通ってガス庫102へと戻されても良い。いずれにしろ、図3及び図4のガス移送システム104、104’は、イオン源ガスをイオン源ガスがガス庫102に貯蔵されている所での電位と同等であり得る第1電圧の電位にある高電圧用アイソレータの構造体108へ供給する。
【0032】
図5は図2のガス用エンクロージャ106を詳細に図示した透視図である。特に、図5は1つまたはそれ以上の高電圧用アイソレータの構造体108は、イオン源ガスを第1電圧の電位(即ち、接地回路)にあるガス用エンクロージャの第1部分110aから、第2電圧の電位(即ち、イオン注入機の作動電位)にあるガス用エンクロージャの第2部分110bへ連結するために使用されても良い。図5に図示されているように、ガス移送システム104の一部分は、ガス用エンクロージャ106の第1部分110aに入る。イオン源ガスは、例えばVCR型の取付具のようなカップリング152を経て高電圧用アイソレータの内側チューブ150に入る。カップリング152は金属/絶縁物転移154を経て内側チューブ150へと連結する。内側チューブ150は、一端(第1部分110a)の第1電位を、他端(第2部分110b)の第2電位から分離するのを助けるために、例えばガラス、セラミック、石英、ガラス/セラミック、叉は他の誘電体のような絶縁材料で作られている。」

オ 「【0034】
図6aは、本発明の1つの例示的特徴による高電圧用アイソレータの構造体108の断面を図示する。上記に簡単に説明したように、高電圧用アイソレータの構造体108は、一般的に円筒形外側チューブ部分162(図5のチューブ158に相当する)により取り巻かれている一般的に円筒形内側チューブ部分160(図5のチューブ150に相当する)を有する細長い一般的に円筒形チューブを含む。内側チューブ部分160は、第1端部164からその第2端部166を通過してイオン源ガスを移送する。特に、第1端部164はVCR型取付具のようなカップリング168で終結し、そしてガス用エンクロージャ106の低電圧部分110aにあるガス移送システム104へと高電圧用アイソレータ108を連結する。更に、第2端部166は、VCR型取付具のようなカップリング170で終結し、そしてアイソレータ108をガス用エンクロージャ106の高電圧部分110bを経てイオン注入機に連結する。
【0035】
内側チューブ160は、例えば硼珪酸ガラスのような電気的に絶縁材料で作られている。しかしながら二者択一的に、他の電気絶縁材料も使用可能であり、そして本発明の範囲に入ると企図されている。例えば、他の例示的な材料は、珪酸アルミニュームガラス、セラミック材料、その他(即ち、商品名パイレックス(Pyrex)(R)、デュラン(Duran)(R)、コーニング(Corning)(R)7740他)を含んでいても良いが、これらに限定されない。外側チューブ162は、はめ込み式配置で内側チューブ162を取り巻き、そして内側チューブよりも大きな直径を有し、それ故にその間の間隙172を定義している。間隙172は、不活性ガスが外側チューブ162と内側チューブ160の外側の中を流れるのを可能にするが、もし内側チューブ160の中のイオン源ガスに関連する圧力と違う(即ち、大きな)圧力で維持される場合には、内側チューブ160からイオン源ガスの漏洩を防止するように作動される。外側チューブ162は又、例えばポリプロピレン、テフロン(R)、そのほかの電気絶縁材料で作られている。」

カ 図2は次のとおりである。
【図2】


(2)引用発明
上記(1)によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「イオン注入装置が設置されているイオン注入システムから離れた位置にあるガス庫102を含む送出システム100であって、
ガス庫102内の処理ガスは、回路の接地電位のような第1電位で維持され、
前記送出システム100は更に、ガス庫102から処理ガスを、イオン注入システムに移動させるために、ガス庫102に連結して作動する大量ガス移送システム104を含み、
イオン源ガスは、大量ガス移送システム104を経て、イオン注入機械に隣接しているイオン注入機ガス庫(排気用エンクロージャ)へと移動され、
前記エンクロージャまたはガス用鋼製容器106の中では、イオン源ガスは、回路の接地電位のような第1電圧の電位から、ガス送出のための高電圧用アイソレータの構造体108を経て、イオン注入機が作動する第2電圧の電位へと高められ、
前記高電圧用アイソレータの構造体108は、ガス庫の低電圧部分110aを高電圧部分110bに、安全でかつ信頼性が高い方法で連結する、
イオン源材料送出システム100。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶理由に引用された特開昭62-98543号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「(A.産業上の利用分野)
本発明は新規なイオンビーム発生装置、特にイオン源としてヘリウム、水素あるいはアルゴン等のガスを用いる気体イオン源方式のイオンビーム発生装置に関するものである。」(1頁右欄9?13行)

イ 「ガスリザーバ11は例えばステンレス製で上記引き出し電圧と略同じ電圧が接地との間に与えられており、表面が例えばシリコンゴム等の絶縁物で被覆されている。Ebはガスリザーバ11にその高い電位を与える電圧発生源である。10はガス管8の碍子9とガスリザーバ11との間の部分に設けられたリークバルブである。ガスリザーバ11は切離し可能な連結部12、ガス管13、バルブ14を介してガスボンベ15と連結されており、イオンビームの発生に先立って予めガスボンベ15からガスリザーバ11へイオン源ガスである例えばヘリウムガスが供給され、その供給が終了するとガスリザーバ11とガスボンベ15とが機械的に分離される。そして、ガスリザーバ11とガスボンベ15とが分離された状態でイオンビームの発生が行なわれる。従って、イオンビーム発生時にガスボンベ15が高電位になるということはなく、常に接地レベルに保たれ、触れても感電する惧れはない。」(3頁左下欄19行?右下欄18行)

ウ 第1図は次のとおりである。


(2)引用文献2に記載の事項
上記(1)によれば、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されている(以下「引用文献2に記載の事項」という。)。
「ガスリザーバ11は切離し可能な連結部12、ガス管13、バルブ14を介してガスボンベ15と連結されており、イオンビームの発生に先立って予めガスボンベ15からガスリザーバ11へイオン源ガスが供給され、その供給が終了するとガスリザーバ11とガスボンベ15とが機械的に分離され、ガスリザーバ11とガスボンベ15とが分離された状態でイオンビームの発生が行なわれ、イオンビーム発生時にガスボンベ15が高電位になるということはなく、常に接地レベルに保たれ、触れても感電する惧れはない、気体イオン源方式のイオンビーム発生装置。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶理由に引用された特開2004-39475号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン源への材料ガスの供給方法及びその装置に関し、詳細には、半導体を初めとする各種材料の定量、組成分析に用いる分析装置分野、もしくは、イオンを材料に注入するイオン注入分野、イオンを照射することで殺菌、その他の効果があるイオン照射分野などで用いるイオン源に関するものである。」

イ 「【0003】
前者のガスボンベをイオン源と同じ高電圧部に設置して行う方法では、ガスボンベ自体が高電圧部に設置されイオン源チャンバと同電位であることから配管に金属管を用いることができ配管が施工しやすくなるなどの利点を有する。しかし、イオン源に供給する材料ガスを充填したガスボンベ及び、このガスボンベをイオン源に接続するバルブや流量制御器等を備える配管を高電圧部に一緒に設置しなければならず、高電圧部のスペースを広げることが難しいことからガスボンベを出来る限り小さくする必要があった。ガスボンベが小さいと、ガスボンベの交換頻度が多くなる。しかし、ガスボンベの交換は、ガスボンベが高電圧部に設置されているため、その都度、イオン源の稼動を停止し電圧を下げてから交換する必要があり、簡単には交換ができない。
【0004】
一方、後者のガスボンベを大地電位に設置して行う方法では、ガスボンベが大地電位に設置できることから、上記高電圧部に設置する場合のような設置スペースの制約が無くなり、ガスボンベを大きくできる。また、個数も多く設置でき切り替えて使用できるなどの利点を有する。しかし、大地電位に設置されたガスボンベと高電圧部との間の配管は、高電圧部側に絶縁管を接続しガスボンベ側と絶縁する必要があるが、絶縁管とガスボンベ側の金属管との継手部分から材料ガスが外部へ漏れることが懸念される。
【0005】
また、高電圧が100kV以上の高い電圧のイオン源を対象とする場合には、高電圧を絶縁するために、図3、4に示すように、高電圧部21を含め高電圧電源22、更には加速管23をタンク24で覆い、タンク24の内部にSF6ガス等を高圧力で封入することが行われている。この場合、ガスボンベ25を高電圧部21に設置する形式の場合(図3)には、上記ガスボンベを高電圧部に設置する形式と同様の問題を有する上に、更にガスボンベ25を交換する都度、タンク24内のSF6ガスを回収し、タンク24を開け閉めし、再度SF6ガスを加圧して投入する必要がある。」

ウ 図3は次のとおりである。
【図3】


(2)引用文献3に記載の事項
上記(1)によれば、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されている(以下「引用文献3に記載の事項」という。)。
「高電圧が100kV以上の高い電圧のイオン源を対象とする場合には、高電圧を絶縁するために、高電圧部21を含め高電圧電源22、更には加速管23をタンク24で覆い、タンク24の内部にSF6ガス等を高圧力で封入する、イオン源への材料ガスの供給装置。」

4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶理由に引用された特表2002-500090号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、流体成分が収着媒体によって収着的に保持され、分注操作により収着媒体から脱着的に放出される容器から流体を選択的に分注するための貯蔵および分注システムに関する。さらに詳しくは、本発明は、分注操作の間、貯蔵および分注システムを通ってキャリアガスの流れによって収着物流体が供給されるかかるタイプの貯蔵および分注システムに関する。」

イ 「【0047】
さて、図面を参照し、図1は貯蔵および分注容器12を含む貯蔵および分注システム10の模式図である。該貯蔵および分注容器12は、例えば、約3から約10の範囲であり得る直径に対する高さのアスペクト比を有する細長い特徴の通常のガスシリンダー容器を含むことができる。かかる容器12の内部容量11には適当な収着剤媒体16のベッド14が設けられる。
【0048】
ポート19において分注容量12の主要ボディと漏洩密にカップリングした通常のシリンダーヘッド流体分注アセンブリ18がその上方端部にて容器12に設けられる。ポート19は、シリンダーの内部容量11からの分注アセンブリ18への流体流動を可能とする。シリンダーから分注されるべき流体中への粒状固体の捕獲を妨げるために、該ポート19にはその中にフリット、スクリーン、グリッドまたは他の濾過手段を設けることができる。所望ならば、加熱脱着を誘導するために加熱ジャケット19が設けられるが、本発明の目的では、容器中の収着剤物質からの収着可能流体の脱着は最小に維持される加熱媒体脱着にて行うのが好ましく、最も好ましくは収着剤媒体のいずれの加熱もなくして行う。このようにして、貯蔵および分注容器は雰囲気条件、例えば、15psia未満の運転圧力および42℃未満の温度に維持することができる。
【0049】
収着剤媒体16は、貯蔵され、それから収着物流体が適当に脱着可能な容器12から引き続いて分注されるべき流体に対する収着的親和性を有するいずれの適当な収着的に効果的な物質を含むこともできる。その例は、結晶性アルミノシリケート組成物、例えば、約4から約13Åの範囲のポアサイズを持つミクロポアアルミノシリケート組成物、および/または約20から約40Åの範囲のポアサイズを持つメソポア結晶性アルミノシリケート組成物;かなり均一な球状粒子形状のビーズ状活性炭収着剤のごとき炭素収着剤物質、例えば、BAC-MP、BAC-LP、BAC-G-70Rビーズ状炭素材料(Kreha Corporation of America,New York,NY.)シリカ、アルミナ、マクロ網状ポリマー、多孔性シリコン、キーゼルグアー、リン酸アルミニウム、粘土、ポリマー(多孔性ポリテトラフルオロエチレンポリマー、マクロ網状ポリマーおよびガラス状ドメインポリマー)、アルミニウムホスホシリケート等を含む。
【0050】
本発明の実施における好ましい収着剤物質はゼオライトおよび炭素収着剤を含む。
【0051】
炭素収着剤物質の好ましい形態はポリアクリロニトリル、スルホン化ポリスチレン-ジビニルベンゼンのごとき合成炭化水素樹脂の熱分解によって形成された炭素で;セルロース系チァー;木炭;およびヤシ殻、ピッチ、木材、石油、石炭等のごとき天然源物質から形成された活性炭を含む。
【0052】
好ましい炭素収着剤物質は活性炭であり、これは造粒された木炭を適当な高温まで加熱することによって生成された炭素の高度な収着剤形態である。最も好ましいものは活性炭のいわゆるビーズ状炭素形態であり、ここに、ビーズ、すなわち高度に均一な直径の球状粒子は約0.1から約1cmの範囲の直径、より好ましくは約0.25から約2mmの直径を有することができる。
【0053】
収着剤物質は、適当には、加工または処理されて、それが、流体貯蔵および分注システムの性能に悪影響し得る微量成分を欠くことを確実とする。例えば、収着剤を例えばフッ化水素酸への洗浄処理に付して、それが金属および酸化性遷移金属種のごとき微量成分がほとんどないようにする。
【0054】
続いて図1を参照し、SFDSからの収着物流体の分注を容易とする目的でキャリアガス源20が設けられる。キャリアガス源20は、圧縮容器またはキャリアガスを供するための不活性ガス発生源の形態とすることができる。キャリアガスは好ましくは元来不活性のものであり、窒素、ヘリウム、アルゴン等を含むことができる。
【0055】
キャリアガス供給源22はライン24によってキャリアガス侵入ポート27を通って収着物ガス分注容器12に接続され、それにより、キャリアガス供給源22と分注容器12とのガス流動連絡を確立する。スルーフロー効果および収着剤媒体16とのキャリアガス接触の程度を最大化するために、ガス侵入ポート27は分注ポート19からの収着物流体分注容器の対向端部に位置させる。
【0056】
FSDS容器の内部容量にキャリアガス流を分配し、それにより、FSDS容器中の収着剤物質からの収着可能流体の最大抽出およびキャリアガス流へのその摂取を達成するように働く、ノズル、散布器、分配器フロースプレッダー、ディスパーサー等のごとき手段(図示せず)を容器に設けることができる。
【0057】
示した実施形態におけるキャリアガス分注アセンブリ28には、FSDSを通っての供給源22からのキャリアガスの流動を調節する手段を組み合わせる。キャリアガス分注アセンブリ28は、適当には、モニタリングおよび流量調節手段を含むことができる。
【0058】
キャリアガス分注アセンブリ28を用いて、キャリアガス挿入チューブ25を介するライン24を通っての収着物流体分注容器12へのキャリアガス流速をモニタする。隔離バルブ26は、収着物ガス分注容器12へのキャリアガス流を遮断する別の手段としてライン24に設けられる。キャリアガス侵入ポート27には、キャリアガス供給源21の交換(チェンジアウト)を促進するためにチューブカップリング手段(図示せず)を装備する。
【0059】
キャリアガス分注アセンブリ28および収着物流体アセンブリは共に、示すように、キャリアガスおよび排出ポート19を通って容器から排出される収着物流体のガス混合物中の所望の収着物流体濃度に依存して流体流を調節するためのマイクロプロセッサ21または他の適当な制御手段に制御可能に連結することができる。さらなるマイクロプロセッサ連結を、示すごとく、加熱ジャケット15に対してなして、所望ならば、加熱脱着を選択的に制御する目的で加熱ジャケットの選択的作動または脱作動を行うことができる。
【0060】
その中に捕獲された収着可能流体を含有するキャリアガス流は、図1に示すように、容器12から、導管、チューブ、配管、フローチャンネル、または貯蔵および分注容器の外に流体を分注するための他の流路手段を含むことができる排出ライン9に排出される。排出ライン9から、キャリアガス混合物を、イオンインプラントチャンバまたはドーピング装置またはキャリアガス流の収着物流体成分が利用される他のプロセスシステムのごとき、使用の下流位置(図1は示さず)まで通すことができる。」

ウ 図2は次のとおりである。
【図2】


(2)引用文献4に記載の事項
上記(1)によれば、引用文献4には、以下の技術的事項が記載されている(以下「引用文献4に記載の事項」という。)。
「ガスシリンダー容器12の内部容量11には適当な収着剤媒体16のベッド14が設けられる貯蔵および分注システム。」

5 引用文献5について
(1)原査定の拒絶理由に引用された特開2007-324095号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン化室とガス導入系間を絶縁する絶縁配管を用いたプラズマ処理方法及び装置に関する。
特に、イオン照射装置、イオン注入装置、イオンミリング装置、イオンビーム加工装置等のガス導入部に高電圧が印加されるプラズマ処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原料ガスをプラズマ化し、これに高電圧を印加して加速し、イオンビームとして試料に照射する装置として、イオンビーム注入装置、イオンミリング装置、イオンビーム加工装置などがあるが、ここではそれらを一括してプラズマ処理装置と呼ぶことにする。プラズマ処理装置においては、イオン化方法、ガス種、ガス圧などの様式は様々である。また、イオン化方法には、高周波によるもの、マイクロ波によるもの、フィラメントによるもの、電子銃によるものなどがあるが、いずれにしてもイオン源の部分には高電圧が印加される。従って、原料ガスは高電圧のイオン化室に接続されなければならない。・・・
【0005】
(2)ガスボンベ接地電位方式
この方式においては、ガスボンベを接地電位として、ガスボンベと1KV以上の高電位のイオン化室との間に絶縁配管を設けて絶縁する。
つぎに、図3を用いてガスボンベを接地電位方式の一例として、イオン源にECRプラズマ装置を用いたプラズマ処理装置について説明する。
図3において、コイル301に電流を流し磁場を発生させながら、導波管302を通してマイクロ波を真空窓303に入射すると、イオン化室304の内部にプラズマ305が発生する。
このときイオン化室304及び処理チャンバー306は排気装置307により真空に引かれている。
同時にガスボンベ308からガス流量制御器309を介して任意の流量に調整された原料ガスが金属配管310を通ってイオン化室に導入される。
その時イオン化室304の圧力は0.05?0.5Pa程度である。
また、イオンを加速し試料311に照射するために、処理チャンバー306を接地電位にし、イオン化室304を加速電源312により高電位にする。
イオン化室304と処理チャンバー306の間には絶縁碍子313により互いに絶縁されている。
同様に互いに絶縁されているグリッド導電板314、315および316に任意の電位を与えることにより、プラズマ305からイオン317が引き出され、加速されて試料311に照射される。
このとき、ガスボンベ308は接地電位にあるので、ガスボンベ308とガス流量制御器309との間を絶縁配管318により絶縁し、ガス流量制御器309、および金属配管310は、イオン化室と同じ電圧になる高電圧架台319に載せる。
さらに、絶縁配管318内部のガス圧力は放電を防止するために、10^(3)Pa?10^(5)Pa程度に調整されている」

イ 図2は次のとおりである。
【図2】


(2)引用文献5に記載の事項
上記(1)によれば、引用文献5には、以下の技術的事項が記載されている(以下「引用文献5に記載の事項」という。)。
「ガスボンベを接地電位として、ガスボンベと1KV以上の高電位のイオン化室との間に絶縁配管を設けて絶縁し、する。
イオンを加速し試料311に照射するために、処理チャンバー306を接地電位にし、イオン化室304を加速電源312により高電位にし、
イオン化室304と処理チャンバー306の間には絶縁碍子313により互いに絶縁され、
互いに絶縁されているグリッド導電板314、315および316に任意の電位を与えることにより、プラズマ305からイオン317が引き出され、加速されて試料311に照射される、
ガスボンベ308は接地電位にあるので、ガスボンベ308とガス流量制御器309との間を絶縁配管318により絶縁し、ガス流量制御器309、および金属配管310は、イオン化室と同じ電圧になる高電圧架台319に載せる、
ガス導入部に高電圧が印加されるプラズマ処理装置。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「イオン注入システムから離れた位置にあるガス庫102」は、本願発明1の「前記外側筐体外にイオン注入システムの前記ガスボックスと遠隔関係で位置するように構成されたドーパント源ガス供給容器」に相当する。

イ 引用発明の「イオン注入装置が設置されているイオン注入システムから離れた位置にあるガス庫102を含む送出システム100」は、本願発明1の「イオン注入システムのイオン注入ツールへのドーパント源ガスの送出のためのドーパント源ガス供給装置」に相当する。

ウ 引用発明の「ガス庫102から処理ガスを、イオン注入システムに移動させるために、ガス庫102に連結して作動する大量ガス移送システム104」は、本願発明1の「前記ドーパント源ガスローカル容器と供給関係で前記ドーパント源ガス供給容器を相互接続する供給ライン」に相当する。

エ 引用発明の「イオン注入機械に隣接しているイオン注入機ガス庫(排気用エンクロージャ)」は、本願発明1の「ガスボックスを含」む「イオン注入システム」に相当する。

オ 引用発明の「ガス庫の」「高電圧部分110b」は、本願発明1の「前記ガスボックス内に位置するように構成されたドーパント源ガスローカル容器」に相当する。

カ 引用発明の「イオン注入機械」及び「イオン注入機械に隣接しているイオン注入機ガス庫(排気用エンクロージャ)」が何らかの筐体に収容されていることは、本願優先日当時周知の技術事項であるから、引用発明は、本願発明1の「前記ガスボックス及び前記イオン注入ツールは外側筐体内にあり」との構成を実質的に備える。

以上によれば、本願発明1と引用発明は、
「イオン注入システムのイオン注入ツールへのドーパント源ガスの送出のためのドーパント源ガス供給装置であって、イオン注入システムはガスボックスを含み、
前記ガスボックス及び前記イオン注入ツールは外側筐体内にあり、前記ドーパント源ガス供給装置は、
前記外側筐体外にイオン注入システムの前記ガスボックスと遠隔関係で位置するように構成されたドーパント源ガス供給容器と、前記ガスボックス内に位置するように構成されたドーパント源ガスローカル容器と、前記ドーパント源ガスローカル容器と供給関係で前記ドーパント源ガス供給容器を相互接続する供給ラインと、を備える、
ドーパント源ガス供給装置。」
の点において一致し、以下の各点において相違する。

相違点1:「ガスボックス」が、本願発明1においては、「前記イオン注入システムが動作状態にあるときは接地に比べて高い動作電圧にあり、前記ガスボックスは前記イオン注入システムが非動作状態にあるときは前記高い動作電圧になく」と特定されるのに対し、引用発明においてはこのように特定されない点。

相違点2:「供給ライン」が、本願発明1においては、「前記イオン注入ツールが非動作状態であり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成され」、「前記供給ラインを通るガスの流れを制御するように配置された中央演算処理装置を備えるアセンブリにより、前記イオン注入システムが非動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときにだけドーパント源ガスを流し、前記イオン注入システムが動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧であるときに排気又は不活性加圧ガスで充填されるように構成され」ると特定されるのに対し、引用発明においては、このように特定されない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1及び2について検討する。
引用発明は、「ガス庫の低電圧部分110aを高電圧部分110bに、安全でかつ信頼性が高い方法で連結する」ために「高電圧用アイソレータの構造体108」を用いることで、ガス庫内に本願発明1の「ドーパント源ガスローカル容器」に相当する「高電圧部分110b」の他に「低電圧部分110a」を備えるものであるから、イオン注入システムの動作状態に応じて「ガス庫」の電圧の状態を考慮する必要性がない。
したがって、引用発明の「ガス庫」の「高電圧部分110b」及び「低電圧部分110a」を一つにして、「ガス庫」の電圧の状態に応じて、「供給ライン」を制御する構成となす技術的必要性はなく、引用発明において、このような構成とする動機も見当たらない。
そして、引用文献2ないし5にも、このように構成することが容易であったとする記載はなく、引用発明において、上記相違点にかかる本願発明1の「ガスボックス」が、「前記イオン注入システムが動作状態にあるときは接地に比べて高い動作電圧にあり、前記ガスボックスは前記イオン注入システムが非動作状態にあるときは前記高い動作電圧になく」、「供給ライン」が、「前記イオン注入ツールが非動作状態であり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成され」、「前記供給ラインを通るガスの流れを制御するように配置された中央演算処理装置を備えるアセンブリにより、前記イオン注入システムが非動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときにだけドーパント源ガスを流し、前記イオン注入システムが動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧であるときに排気又は不活性加圧ガスで充填されるように構成され」るものとなすことが、当業者であれば容易になし得たことであるということはできない。

2 本願発明2、7及び22について
本願発明2、7及び22も、本願発明1の「ガスボックス」が、「前記イオン注入システムが動作状態にあるときは接地に比べて高い動作電圧にあり、前記ガスボックスは前記イオン注入システムが非動作状態にあるときは前記高い動作電圧になく」、「供給ライン」が、「前記イオン注入ツールが非動作状態であり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成され」、「前記供給ラインを通るガスの流れを制御するように配置された中央演算処理装置を備えるアセンブリにより、前記イオン注入システムが非動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときにだけドーパント源ガスを流し、前記イオン注入システムが動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧であるときに排気又は不活性加圧ガスで充填されるように構成され」との構成、ないし、当該構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3ないし6、8ないし21、23ないし27について
請求項3は、本願発明2を減縮した発明であり、請求項4ないし6は、請求項1または2を減縮した発明であり、請求項8ないし21は、請求項7を減縮した発明であり、請求項23ないし27は、請求項22を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、(平成27年12月25日付け手続補正による)請求項1、4?5、7?20、23?27、30に係る発明は、引用文献1?3に基づいて当業者が容易に発明し得たものであり、請求項21?22、28?29に係る発明は、引用文献1?4に基づいて当業者が容易に発明し得たものであり、請求項2、4、6?8に係る発明は、引用文献3、5に基づいて当業者が容易に発明し得たものであり、請求項3に係る発明は、引用文献1、3、5に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年3月23日付け手続補正により補正された請求項1?27は、それぞれ、「ガスボックス」が、「前記イオン注入システムが動作状態にあるときは接地に比べて高い動作電圧にあり、前記ガスボックスは前記イオン注入システムが非動作状態にあるときは前記高い動作電圧になく」、「供給ライン」が、「前記イオン注入ツールが非動作状態であり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成され」、「前記供給ラインを通るガスの流れを制御するように配置された中央演算処理装置を備えるアセンブリにより、前記イオン注入システムが非動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときにだけドーパント源ガスを流し、前記イオン注入システムが動作状態にあり前記ガスボックスが前記高い動作電圧であるときに排気又は不活性加圧ガスで充填されるように構成され」との構成、ないし、当該構成に対応する構成を有するものとなっており、本願発明1ないし27は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない

第6 当審拒絶理由について
当審拒絶理由では(以下、当審拒絶理由中の請求項はいずれも平成27年12月25日付け手続補正による。)、
「[理由1]
ア 本願請求項9に係る発明は、「ガスボックス」に係り、「ガスボックスを含むイオン注入システムのためのドーパント源ガス供給装置であって、前記イオン注入システムの前記ガスボックスと遠隔関係で位置するように構成されたドーパント源ガス供給容器と、前記イオン注入システムの前記ガスボックス内に位置するように構成されたドーパント源ガスローカル容器と」を備えることを発明特定事項とする。
また、本願請求項25に係る発明は、「ガスボックス」に係り、「ガスボックスを含むイオン注入処理システムの操作方法であって、ドーパント源ガス貯蔵分配ローカル容器を前記ガスボックス内に配置する工程と、供給ラインにより、前記ドーパント源ガス貯蔵分配ローカル容器と、前記ガスボックスと遠隔関係で位置するドーパント源ガス供給容器と、を接続する工程と」を含むことを発明特定事項とする。
イ 本願明細書の発明の詳細な説明によれば、本願発明の解決すべき課題は、
(ア)「イオン注入機装置の効率及び効果を向上させる」こと(【0003】)。
(イ)「ドーパント源材料の供給、取り扱い及び使用における安全性の向上」(【0004】)。
(ウ)「ガスボックスは、動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧で接続される筐体である。」(【0007】)
(エ)「従来のイオン注入システム構成では、イオン注入システムガスボックス内に配置されたガス供給容器の取り換えを行うために、半導体製造施設内のイオン注入システムの近辺からSCBA着用技術者以外の要員を立ち退かせなければならない。」(【0008】)
(オ)「取り換えに伴う危険性に加えて、製造作業中の不都合な時間にドーパント源ガス供給容器が使い果たされ、イオン注入システムをシャットダウンしなければなら」ず「半導体製造施設の経済面」「に深刻な悪影響を与える可能性がある」(【0009】)こと。
であると理解される。
また、当該課題を解決するための前提条件は、「ガスボックスは、動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧で接続される筐体である」(【0007】)ことにあるとも理解される。
しかしながら、上記アによれば、本願求項9、25及び同項を引用する請求項10?24、26?30は、当該「ガスボックスは、動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧で接続される筐体である」と特定されない。
そうすると、本願求項9、25及び同項を引用する請求項10?24、26?30は、本願発明の解決すべき課題の前提条件がなく、当該課題を解決しない発明を含むところ、当該本願発明の解決すべき課題を解決しない発明は、発明の詳細な記載に記載されていない発明である。
したがって、本願求項9、25及び同項を引用する請求項10?24、26?30は、発明の詳細な記載に記載されていない発明を含むと認められる。
よって、本願求項9、25及び同項を引用する請求項10?24、26?30に係る発明が本願明細書の発明の詳細な説明に記載されているものとは認められないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

[理由2]
(1)請求項1、2、9、25について
ア 本願請求項1をA、B、Cに分説すると以下のとおりである
「A 接地に比べて高い動作電圧にあるガスボックスからイオン注入ツールへのドーパント源ガスの送出のためのドーパント源ガス供給装置であって、
前記ガスボックス及び前記イオン注入ツールは外側筐体内にあり、前記ドーパント源ガス供給装置は、
B 前記外側筐体外にイオン注入システムの前記ガスボックスと遠隔関係で位置するように構成されたドーパント源ガス供給容器と、前記ガスボックス内に位置するように構成されたドーパント源ガスローカル容器と、前記ドーパント源ガスローカル容器と供給関係で前記ドーパント源ガス供給容器を相互接続する供給ラインであって、前記イオン注入ツールが非動作状態でありかつ前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成された供給ラインと、を備える、
C ドーパント源ガス供給装置。」
イ 上記「ア」「A」の記載によれば、「ドーパント源ガス供給装置」は、「外側筐体内にあるガスボックス」から「外側筐体内にあるイオン注入ツール」へのドーパント源ガスの送出を行うもの、つまり、「外側筐体内にあるガスボックス」と「外側筐体内にあるイオン注入ツール」の間に介在するものであると理解される。
これに対して、上記「ア」「B」の記載によれば、「ドーパント源ガス供給装置」は、「外側筐体外にあるドーパント源ガス供給容器」と「ガスボックス内に位置するように構成されたドーパント源ガスローカル容器」と「供給ライン」とを備えるものであると理解される。
そうすると、上記「ア」「A」の記載と上記「ア」「B」の記載は整合しないから、請求項1の記載では、「ドーパント源ガス供給装置」が、「ガスボックス」、「イオン注入ツール」及び「外側筐体」を含むのか否か特定できない。
したがって、本願請求項1は記載が不明確である。
請求項2、9、25も同様である。

(2)請求項7、8について
ア 本願請求項7は以下のとおりである
「請求項1又は2に記載のドーパント源ガス供給装置を使用する工程を含むイオン注入方法。」
イ 上記記載では、「イオン注入方法」の発明において、「ドーパント源ガス供給装置」をどのように「使用する」のか特定がなく、いかなる「工程」の発明であるか不明のため、本願請求項7は記載が不明確である。
請求項7を引用する請求項8も同様である。

(3)請求項11について
ア 本願請求項11は以下のとおりである
「前記中央演算処理装置は、前記供給ラインを通るガスの流れを制御する少なくとも1つの弁と作動的に結合される、請求項10に記載のドーパント源ガス供給装置。」
イ 上記記載における、「作動的に」結合とは、技術的にどのような構成を特定するのか不明であるため(発明の詳細な説明にも明記がなく)本願請求項11は記載が不明確である。
なお、本願の発明の詳細な説明の段落【0095】には「弁頭アセンブリは、ガス供給ライン212へのドーパント源ガスの流れを開始するために弁頭内の弁を開くために作動的な手動ハンドルを含み得る。代替案として、弁頭アセンブリは、ガス供給ライン212へのドーパント源ガスの流れを開始するために弁頭内の弁を開くように配置された監視及び制御装置(図4に示さない)に結合され得る自動弁アクチュエータを含み得る。」と記載されており、制御装置は弁を開くように結合される旨の記載があり、他に段落【0029】に請求項11と同様に記載されるにとどまる。

[理由3]
(1)「アーク放電及びプラズマ放電の危険性」について
本願の発明の詳細な説明の記載によれば、「ローカル容器が高電圧にあり、供給容器が接地電位にあり、ドーパント源ガス供給ライン全体に当該高電圧勾配を生成すれば」供給ライン中に「アーク放電及びプラズマ放電」が発生する点、及び、「アーク放電及びプラズマ放電」が「危険」であるとされる。
しかしながら、「供給ラインは・・・高分子材料、又は適切なガラス又はセラミック材、又は絶縁性質を有する他の適切な建設資材で形成され得る。」(【0046】)と記載されており、実体的には供給ラインは絶縁性質を有するところ、なぜ、「ローカル容器が高電圧にあり、供給容器が接地電位にあ」ると、「ドーパント源ガス供給ライン全体に当該高電圧勾配を生成」するのか発明の詳細な説明に記載がなく理解できない。
また、なぜ供給ラインに「アーク放電及びプラズマ放電」が発生するのか、また、当該供給ラインに発生する「アーク放電及びプラズマ放電」がどのように危険であるのかについても発明の詳細な説明に記載がなく理解できない。

(2)「ガスボックスは、動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧で接続される筐体である」点について
上記[理由1]「イ」「(ア)」「【0007】」に記載されているとおり、「ガスボックスは、動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧」とされる。
また、同時に「ローカル容器が高電圧にあり、供給容器が接地電位にあ」るとされる(【0041】)。
しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、本願請求項1に記載された発明において、「ガスボックス」と「ローカル容器」が別の部材である技術的意義、及び、「ガスボックス」内に「ローカル容器」が設けられる技術的意義が明らかにされていないため、本願請求項1に記載された発明の前提条件となる構成である、「ガスボックス」は「動作中にイオン源装置にイオン源装置と同じ高電圧」となるとともに「ローカル容器が高電圧」となることの技術的意味が不明である。

(3)発明の詳細な説明の段落【0044】には下記の記載がある。
「代替案として、供給ラインを介した供給容器からガスボックス内のローカル容器までのドーパント源ガスの輸送の完了後、供給ラインは、イオン源のその後の高電圧動作と、ガスボックスとその中のローカル容器との対応する高電圧状態と、に対処するために十分に高い圧力で不活性ガスで充填されることができる。」
しかしながら、「供給ラインは、イオン源のその後の高電圧動作と、ガスボックスとその中のローカル容器との対応する高電圧状態と、に対処する」とは日本語として意味する事項が不明確である。

(4)本願請求項1は、「前記イオン注入ツールが非動作状態でありかつ前記ガスボックスが前記高い動作電圧でないときだけ前記ドーパント源ガス供給容器から前記ドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すように構成された供給ラインと、を備える」と特定するが、イオン注入ツールが動作状態、あるいは、ガスボックスが高い動作電圧であるときにガスを流すと、どの様な問題が生じるのか、発明の詳細な説明の段落【0042】に「ドーパント源ガス輸送は、イオン注入システムが非動作状態にあるときだけ発生するので、アーク放電及びプラズマ放電の危険性は、供給容器からガスボックス内のローカル容器へのドーパント源ガスの接地電圧での輸送においては存在しない。」と記載されるにとどまり明りょうに説明されておらず、イオン注入ツールが動作状態、あるいは、ガスボックスが高い動作電圧であるときにドーパント源ガス供給容器からドーパント源ガスローカル容器へドーパント源ガスを流すとどの様な問題が生じるのか、上記(1)と同様の理由で理解できない。
また、イオン注入ツールが動作状態にあるときは、ドーパント源ガス供給容器あるいは供給ラインが高い動作電圧となるのかについても発明の詳細な説明に明記がなく、上記(1)と同様の理由で不明である。」
として、特許法第36条第6項第1号、同項第2号及び特許法第36条第4項第1号の拒絶の理由を通知しているが、平成30年3月23日付けの補正書(上記第2)のとおり補正し、同日付けの誤訳訂正で訂正し、さらに、同日付けの意見書で釈明した結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし27は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし5に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-20 
出願番号 特願2013-542066(P2013-542066)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01J)
P 1 8・ 537- WY (H01J)
P 1 8・ 121- WY (H01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 健二  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
小松 徹三
発明の名称 遠隔ドーパント源を含むイオン注入機システム及び当該イオン注入機システムを備える方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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