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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1339915
審判番号 不服2017-1981  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-10 
確定日 2018-05-22 
事件の表示 特願2013-552681「圧電性結晶上の多層薄膜蒸着を決定する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日国際公開、WO2012/106609、平成26年 4月17日国内公表、特表2014-509390、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年2月3日(パリ条約による優先権主張 2011年2月3日(以下、「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年5月9日付けで手続補正がなされたが、平成28年10月13日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、平成28年10月18日に拒絶査定の謄本が送達され、これに対し、平成29年2月10日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成29年11月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年3月28日付けで手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次の通りである。

本願請求項1-17に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平07-004943号公報

第3 当審拒絶理由の概要

1 本願請求項1-9、13-16に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平07-004943号公報

2 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項13に「未知の音響インピーダンスおよび未知の密度を有する材料の層」と記載されているが、材料の密度が未知で、どのようにして、請求項13記載の「決定された前記質量および面積測定値に基づいて前記蒸着層の厚みを推定する工程」において、厚みを推定できるのか不明である。

第4 本願発明
本願の請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、平成30年3月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、11は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
圧電結晶上の蒸着膜の厚みを測定する方法において、
a)圧電結晶ブランクの基本共振周波数を決定する工程と、
b)前記結晶ブランクに電極を取り付ける工程と、
c)複合されたブランクおよび取り付けられた電極の基本共振周波数を決定する工程と、
d)前記結晶ブランクおよび電極上に、材料の第1の蒸着層を取り付ける工程と、
e)前記ブランク、前記電極および前記蒸着層を含む複合共振子の共振周波数を決定する工程と、
f)前記共振周波数で算出された、前記結晶ブランク、電極、および蒸着層それぞれにわたる音響位相遅れを決定する工程と、
g)前記材料の位相遅れ情報および密度から前記蒸着層の厚みを算出する工程と、
を含み、
前記結晶ブランクおよび前記電極上への任意の蒸着層にわたる前記音響位相遅れは、前記蒸着層における特定の音響インピーダンスに基づいて決定され、
前記厚みの決定を用いて、前記蒸着層の固有共振周波数を算出する工程をさらに含み、 前記結晶ブランクおよび前記電極上への任意の蒸着層にわたる前記音響位相遅れは、関係:
[数1]


により決定され、
式中、Zは、特定の音響インピーダンスであり、Tは、先の蒸着層の音響位相遅れの正接関数であり、Kは、任意の先の蒸着層にわたる音響位相遅れの複合パラメータであり、Nは、現在蒸着されている層の指数を指し、i、j、k、l、mは、以前の蒸着層を示すダミーの指数である、方法。」

「【請求項11】
圧電結晶ブランク上の薄膜蒸着により未知の材料の特定の音響インピーダンスを決定する方法において、
特定の音響インピーダンスを有する圧電結晶ブランクを提供する工程と、
前記圧電結晶ブランクの基本共振周波数を決定する工程と、
特定の音響インピーダンスおよび密度を有する電極を前記結晶ブランクに取り付ける工程と、
前記結晶ブランクおよび取り付けられた電極の基本共振周波数を測定する工程と、
前記共振周波数で、前記結晶ブランクおよび前記取り付けられた電極にわたる音響位相遅れ情報を算出する工程と、
前記電極の算出された前記音響位相遅れ情報および前記密度に基づいて前記電極の厚みを決定する工程と、
前記結晶ブランクおよび前記取り付けられた電極の質量を決定する工程と、
未知の音響インピーダンスおよび既知の密度を有する材料の層を、先に取り付けられた前記電極および結晶ブランク上に蒸着させる工程と、
前記結晶ブランク、前記電極および前記蒸着させる工程によって蒸着された蒸着層を含む複合共振子の基本共振周波数を測定する工程と、
前記結晶ブランク、前記取り付けられた電極および前記蒸着層を秤量する工程と、
前記秤量する工程によって測定された重量測定値に基づいて前記蒸着層の質量を決定する工程と、
前記結晶ブランク上の前記蒸着層の面積を決定する工程と、
決定された前記質量および面積測定値に基づいて前記蒸着層の厚みを推定する工程と、
測定された前記共振周波数で、前記結晶ブランク、前記電極および前記蒸着層にわたる音響位相遅れ情報を算出する工程と、
前記位相遅れ情報および前記推定する工程によって推定された前記蒸着層の厚み測定値に基づいて、前記蒸着層の特定の音響インピーダンスを決定する工程と、
を含み、
前記結晶ブランクおよび前記電極上への任意の蒸着層にわたる前記音響位相遅れは、前記蒸着層における特定の音響インピーダンスに基づいて決定され、
前記特定の音響インピーダンスを決定する工程は、前記音響位相遅れ情報および決定された前記層の厚みを含む、非線形方程式を組み立てる工程をさらに含み、
組み立てられた前記非線形方程式は、
[数4]


であり、
式中、Z_(2)は、前記蒸着層の特定の音響インピーダンスであり、T_(2)は、前記蒸着層の音響位相遅れの正接関数であり、Z_(1)は、前記電極の特定の音響インピーダンスであり、T_(1)は、前記電極の音響位相遅れの正接関数であり、Z_(0)は、前記結晶ブランクの特定の音響インピーダンスであり、T_(0)は、前記結晶ブランクの音響位相遅れの正接関数である、方法。」

本願発明2-10、13は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明12は、本願発明11を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由で引用された引用文献1(特開平07-004943号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【請求項1】 成膜チャンバ内に設置された圧電結晶上への膜の堆積を測定することにより基板上における膜の膜厚及び成膜速度を制御できるようにした成膜監視・制御装置において、圧電結晶の基本共鳴周波数fcを測定する手段と、この測定手段で測定した圧電結晶の基本共鳴周波数fcを用いて、tfiを圧電結晶上のi番目の膜の膜厚、zi をi番目の膜の音響インピーダンス比、ρfiをi番目の膜の密度、ρq を圧電結晶の密度、vq を圧電結晶のすべり波速度、tq を圧電結晶の厚さ、kaiを波数ベクトルとする時、膜厚と周波数との関係式、



及びこの式により計算される各層の膜厚の履歴を内部にもつ手段とを有することを特徴とする成膜監視・制御装置。」

「【0006】
【作用】このように構成された本発明の装置においては、各層の膜厚及び成膜速度を計算する手段により膜厚と周波数との関係式に基いて多層膜蒸着時の膜厚を容易に求めることができる。すなわち、成膜チャンバー内に置かれた圧電結晶に第1層目の物質が蒸着されると、その物質の音響インピーダンス比と密度とを与えれば共振周波数をもとに第1層目の膜厚が計算される。続いて第2層目の物質が圧電結晶に蒸着されると、先に計算された第1層目の膜厚及び第2層目の物質の音響インピーダンス比と密度を与えることにより共振周波数をもとに第2層目の膜厚が逐次計算される。この計算手順が繰り返されて何層でも膜厚を正確に計算できるようになる。
【0007】
【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1には本発明の実施例による成膜監視・制御装置をブロック線図で示し、1は成膜チャンバを成す蒸着室で、内部には蒸発源2及びATカットの圧電結晶から成るマイクロバランスセンサ3が配置されている。なお、成膜される基板は図面では省略されている。マイクロバランスセンサ3は発振回路4に接続され、この発振回路4からの共振周波数はカウンタ回路5により測定される。発振回路4及びカウンタ回路5はマイクロバランスセンサ3の圧電結晶の基本共鳴周波数fcを測定する手段を構成している。カウンタ回路5で測定された共振周波数は、膜厚及び蒸着速度を計算する手段を構成しているマイクロプロセッサ6に送られ、マイクロプロセッサ6では送られてきた共振周波数に基きこれに別個に入力される各層の物質の音響インピーダンス比と密度とにより膜厚と周波数との関係式からその層の膜厚及び蒸着速度が計算される。こうして算出されたデータは周辺回路7に送られ、蒸発源2の電源8を制御するのに用いられる。マイクロプロセッサ6は16ビットCPと演算プロセッサとの組合わせから成ることができ、例えば100 層時にミリ秒オーダで、また1000層でも1秒程度で計算できるようにされて得る。それにより、層数の多い光学膜付けにおいても十分に蒸着プロセス中での膜厚及び蒸着速度の制御が可能となる。」

上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「成膜チャンバ内に設置された圧電結晶上への膜の堆積を測定することにより基板上における膜の膜厚及び成膜速度を制御できるようにした成膜監視・制御装置において(【請求項1】)、
圧電結晶の基本共鳴周波数fcを測定する手段と、この測定手段で測定した圧電結晶の基本共鳴周波数fcを用いて、tfiを圧電結晶上のi番目の膜の膜厚、zi をi番目の膜の音響インピーダンス比、ρfiをi番目の膜の密度、ρq を圧電結晶の密度、vq を圧電結晶のすべり波速度、tq を圧電結晶の厚さ、kaiを波数ベクトルとする時、膜厚と周波数との関係式(下記)、
及びこの式により計算される各層の膜厚の履歴を内部にもつ手段とを有し(【請求項1】)、
成膜チャンバを成す蒸着室で、内部には蒸発源2及びATカットの圧電結晶から成るマイクロバランスセンサ3が配置され、
マイクロバランスセンサ3は発振回路4に接続され、この発振回路4からの共振周波数はカウンタ回路5により測定され、発振回路4及びカウンタ回路5はマイクロバランスセンサ3の圧電結晶の基本共鳴周波数fcを測定する手段を構成しており(【0007】)、
成膜チャンバー内に置かれた圧電結晶に第1層目の物質が蒸着されると、その物質の音響インピーダンス比と密度とを与えれば共振周波数をもとに第1層目の膜厚が計算され、続いて第2層目の物質が圧電結晶に蒸着されると、先に計算された第1層目の膜厚及び第2層目の物質の音響インピーダンス比と密度を与えることにより共振周波数をもとに第2層目の膜厚が逐次計算され、この計算手順が繰り返されて何層でも膜厚を正確に計算できるようになる(【0006】)、
成膜監視・制御装置。

関係式:



第6 特許法第29条第2項について
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「圧電結晶上への膜の堆積を測定すること」は、本願発明1の「圧電結晶上の蒸着膜の厚みを測定する方法」に相当する。

イ 引用発明の「圧電結晶から成るマイクロバランスセンサ3」は「発振回路4に接続され、この発振回路4からの共振周波数はカウンタ回路5により測定され」るので、「マイクロバランスセンサ3」の「圧電結晶」に電極が取り付けられていることは明らかである。
したがって、引用発明の「圧電結晶から成るマイクロバランスセンサ3」を「配置」することは、「圧電結晶」に電極を取り付ける工程を有しているといえ、当該工程は、本願発明1の「結晶ブランクに電極を取り付ける工程」に相当する。

ウ 上記イより、引用発明の「マイクロバランスセンサ3」の「圧電結晶」に電極が取り付けられていることは明らかであるので、引用発明の「成膜チャンバー内に置かれた圧電結晶に第1層目の物質が蒸着される」ことは、本願発明の「d)前記結晶ブランクおよび電極上に、材料の第1の蒸着層を取り付ける工程」に相当する。

エ 上記イより、引用発明の「マイクロバランスセンサ3」の「圧電結晶」に電極が取り付けられていることは明らかであり、引用発明は「蒸着室」の「内部」の「圧電結晶から成るマイクロバランスセンサ3」に接続された「発振回路4からの共振周波数」が、「カウンタ回路5により測定され」る「マイクロバランスセンサ3の圧電結晶の基本共鳴周波数fc」であるので、
引用発明の「圧電結晶に第1層目の物質が蒸着され」たときの「マイクロバランスセンサ3の圧電結晶の基本共鳴周波数fc」は、電極を取り付けた「圧電結晶」と蒸着された「第1層目の物質」の複合共振子について測定したものである。
したがって、引用発明の「圧電結晶に第1層目の物質が蒸着され」たときの「マイクロバランスセンサ3の圧電結晶の基本共鳴周波数fc」を測定することは、本願発明1の「e)前記ブランク、前記電極および前記蒸着層を含む複合共振子の共振周波数を決定する工程」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「圧電結晶上の蒸着膜の厚みを測定する方法において、
結晶ブランクに電極を取り付ける工程と、
前記結晶ブランクおよび電極上に、材料の第1の蒸着層を取り付ける工程と、
前記ブランク、前記電極および前記蒸着層を含む複合共振子の共振周波数を決定する工程と、
を含む、方法」

(相違点1)
本願発明1は、「圧電結晶ブランクの基本共振周波数を決定する工程」を含むのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点2)
本願発明1は、「複合されたブランクおよび取り付けられた電極の基本共振周波数を決定する工程」を含むのに対して、引用発明は、関係式によると、「kao」を求めるために、第1層目の物質の蒸着前に「fc」を測定していることは明らかであるので、引用発明は、第1層目の物質の蒸着前に、電極を取り付けた「圧電結晶」の「基本共鳴周波数fc」を測定しているが、「圧電結晶」および「取り付けられた電極」の「基本共振周波数」について測定することは、特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1は、「前記共振周波数で算出された、前記結晶ブランク、電極、および蒸着層それぞれにわたる音響位相遅れを決定する工程と、前記材料の位相遅れ情報および密度から前記蒸着層の厚みを算出する工程と」を含むのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点4)
本願発明1は、「記結晶ブランクおよび前記電極上への任意の蒸着層にわたる前記音響位相遅れは」、「前記蒸着層における特定の音響インピーダンスに基づいて決定され」かつ「関係:
[数1]


により決定され、
式中、Zは、特定の音響インピーダンスであり、Tは、先の蒸着層の音響位相遅れの正接関数であり、Kは、任意の先の蒸着層にわたる音響位相遅れの複合パラメータであり、Nは、現在蒸着されている層の指数を指し、i、j、k、l、mは、以前の蒸着層を示すダミーの指数である」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点5)
本願発明1は、「前記厚みの決定を用いて、前記蒸着層の固有共振周波数を算出する工程」を含むのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず、上記相違点4について検討する。
引用発明は、関係式:


によって、各層の膜圧を計算するが、上記関係式には、本願発明の[数1]


のような関係は記載されておらず、また、引用発明において、膜厚の計算に、上記関係式に換えて上記[数1]を用いる理由も見当たらない。

したがって、上記相違点4に係る本願発明1の構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1-3、5について検討するまでもなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-10、13について
本願発明2-10についても、上記相違点4に係る本願発明1の「記結晶ブランクおよび前記電極上への任意の蒸着層にわたる前記音響位相遅れは」、「前記蒸着層における特定の音響インピーダンスに基づいて決定され」かつ「関係:[数1](略)により決定され、式中、Zは、特定の音響インピーダンスであり、Tは、先の蒸着層の音響位相遅れの正接関数であり、Kは、任意の先の蒸着層にわたる音響位相遅れの複合パラメータであり、Nは、現在蒸着されている層の指数を指し、i、j、k、l、mは、以前の蒸着層を示すダミーの指数である」と同一の構成を備えるものであるから、 本願発明1と同じ理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明11、12について
本願発明11、12は、「圧電結晶ブランク上の薄膜蒸着により未知の材料の特定の音響インピーダンスを決定する方法」の発明であり、上記相違点4に係る本願発明1の構成である「関係:[数1](略)」において、N=2とした、「非線形方程式[数4]


」の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 特許法第36条第6項第2号について
当審拒絶理由の通知に応答して提出された平成30年3月28日付けの手続補正書により、
請求項13の「未知の音響インピーダンスおよび未知の密度を有する材料の層」という記載は、
請求項11の「未知の音響インピーダンスおよび既知の密度を有する材料の層」に補正されており、請求項11及び請求項11を引用する請求項12に係る発明は明確になった。

第8 原査定について
当審拒絶理由の通知に応答して提出された平成30年3月28日付けの手続補正書により、請求項は、請求項1ないし13となるとともに、請求項1-10、13は、「「記結晶ブランクおよび前記電極上への任意の蒸着層にわたる前記音響位相遅れは」、「前記蒸着層における特定の音響インピーダンスに基づいて決定され」かつ「関係:[数1](略)により決定され、式中、Zは、特定の音響インピーダンスであり、Tは、先の蒸着層の音響位相遅れの正接関数であり、Kは、任意の先の蒸着層にわたる音響位相遅れの複合パラメータであり、Nは、現在蒸着されている層の指数を指し、i、j、k、l、mは、以前の蒸着層を示すダミーの指数である」、請求項11、12は、「前記特定の音響インピーダンスを決定する工程は、前記音響位相遅れ情報および決定された前記層の厚みを含む、非線形方程式を組み立てる工程をさらに含み、組み立てられた前記非線形方程式は、[数4](略)であり、式中、Z_(2)は、前記蒸着層の特定の音響インピーダンスであり、T_(2)は、前記蒸着層の音響位相遅れの正接関数であり、Z_(1)は、前記電極の特定の音響インピーダンスであり、T_(1)は、前記電極の音響位相遅れの正接関数であり、Z_(0)は、前記結晶ブランクの特定の音響インピーダンスであり、T_(0)は、前記結晶ブランクの音響位相遅れの正接関数である」という発明特定事項を有するものとなった。
上記「第6」で検討したように、当該事項は、原査定における引用文献1には記載されておらず、引用文献1に記載された発明(引用発明)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-07 
出願番号 特願2013-552681(P2013-552681)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01B)
P 1 8・ 121- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岸 智史  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
清水 稔
発明の名称 圧電性結晶上の多層薄膜蒸着を決定する方法  
代理人 大島 孝文  
代理人 加藤 公延  

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