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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1339940
審判番号 不服2017-8067  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-05 
確定日 2018-06-04 
事件の表示 特願2012-175411「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月24日出願公開、特開2014- 35379、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月7日の出願であって、平成27年8月7日付け、平成28年7月21日付け、及び同年12月6日付けで手続補正がされ、平成29年3月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされ、平成30年1月31日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月6日付けで手続補正がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1乃至8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明8」という。)は、平成30年4月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、及び本願発明2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
画像が形成される像担持体と、
前記像担持体と転写ニップ部を形成し、前記像担持体に形成された画像を前記転写ニップ部において記録媒体に転写する転写手段と、
記録媒体を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録媒体を搬送路へ給送する給送手段と、
前記給送手段によって前記搬送路へ給送された記録媒体を停止させることなく前記転写手段へ向けて搬送する搬送手段と、
前記転写手段よりも記録媒体の搬送方向上流側の所定位置で記録媒体を検知する検知手段と、
前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、
前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い画像形成装置において、
前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも長い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも速い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を短くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像が形成される像担持体と、
前記像担持体と転写ニップ部を形成し、前記像担持体に形成された画像を前記転写ニップ部において記録媒体に転写する転写手段と、
記録媒体を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録媒体を搬送路へ給送する給送手段と、
前記給送手段によって前記搬送路へ給送された記録媒体を停止させることなく前記転写手段へ向けて搬送する搬送手段と、
前記転写手段よりも記録媒体の搬送方向上流側の所定位置で記録媒体を検知する検知手段と、
前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、
前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い画像形成装置において、
前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも短い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも遅い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を長くすることを特徴とする画像形成装置。」

なお、本願発明3乃至8の概要は以下のとおりである。
本願発明3は、本願発明1又は2を減縮した発明である。
本願発明4は、本願発明1乃至3のいずれかを減縮した発明である。
本願発明5は、本願発明1乃至4のいずれかを減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1乃至5のいずれかを減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1乃至6のいずれかを減縮した発明である。
本願発明8は、本願発明1乃至7のいずれかを減縮した発明である。


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成3年12月10日に頒布された引用文献1(実願平2-28064号(実開平3-119854号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「2.実用新案登録請求の範囲
給紙装置から搬送された転写紙に、感光体に形成された画像を転写装置により転写する画像形成装置において、
給紙装置と転写装置との間に設けられ、転写紙の先端を検出する先端検出手段と、
先端検出手段の設置位置とあらかじめ定められた位置合せ位置との距離と、あらかじめ定められた位置合せタイミング時間とプリント開始から先端検出手段で転写紙を検出した時間との差から可変速度を算出する可変速算出手段と、
可変速算出手段で算出した可変速度で転写紙を搬送する可変速搬送手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。」(1頁4?17行)
(2)「[産業上の利用分野]
この考案は、例えばレーザプリンタ,複写機等の画像形成装置、特に転写紙の画像位置合せ精度の向上に関するものである。
[従来の技術]
レーザプリンタ等においては、感光体上に形成された画像を転写紙に転写するときに、画像と転写紙の位置を精度よく合せることが良質な画像を得るために必要である。
第5図はレーザプリンタの給紙装置と転写装置の部分を示す構成図である。図に示すように、レーザプリンタは帯電チャージャ2で表面を帯電させた感光体1に光学系3からレーザビームを照射し静電的な潜像を形成する。この静電的潜像に現像ユニット4でトナーを付着させ可視化して画像を形成する。
一方、給紙トレイ5に収納された転写紙6は給紙ローラ7と分離ローラ8及びレジストローラ9により搬送路10に給送される。この転写紙6の先端が先端検出センサ11で検出されると、即時あるいは所定時間おいてレジストローラ9の回転を一時停止して転写紙6を待機させる。そして、画像形成タイミングと同期させて再びレジストローラ9を回転して転写紙6の給送を再開することにより、感光体1に形成された画像と転写紙6の位置合せを行ない、転写チャージャ12で画像を転写紙6に転写している。」(1頁下から2行?3頁5行)
(3)「この考案はかかる短所を解決するためになされたものであり、感光体上の画像と転写紙の位置合せを高精度に行なうことができる画像形成装置を得ることを目的とするものである。」(4頁1?4行)
(4)「第1図において、11はレジストローラ9と転写チャージャ12との間に設けられた先端検出センサ、13は可変速算出手段、14はメモリ、15はレジストローラ9を駆動するステッピングモータ、16はステッピングモータ15の駆動部である。
可変速算出手段13は先端検出センサ11の出力信号とあらかじめメモリ14に記憶されたデータとから、レジストローラ9の回転速度を可変する可変速度を演算する。
上記のように構成されたレジストローラ駆動部の動作を説明するにあたり、まずこの考案の原理を第2図の給紙ローラ7から転写チャージャ12までの配置模式図及び第3図の転写紙先端軌跡を示す特性図を参照して説明する。
第2図に示すように転写紙6の静止位置である分離ローラ8を基準にして、先端検出センサ11までの距離をL_(1)、画像と転写紙6の位置合せを行なう範囲の搬送方向下流限の位置17までの距離をL_(2)、転写チャージャ12までの距離をL_(3)とする。第3図はこれらの距離を縦軸にとり、プリント開始してから転写紙6が搬送された時間を横軸にとって示した転写紙6の先端軌跡である。
第3図において、Aはレジストローラ9を標準回転速度v_(0)で回転した場合を示す。この標準回転速度v_(0)は、転写紙6に給紙部,搬送部等で滑り等が発生しない状態を想定し、一定速度でレジストローラ9を回転させると、感光体1の画像と転写紙6の位置合せが完全に行なわれるという理想的な速度である。
また、第3図のB,Cは転写紙6が滑り等により遅れて搬送された場合を示し、Dは何らかの理由で転写紙6が進んで搬送された場合を示す。
図に示すように、プリント開始時の時間をt_(0)とし、標準回転速度v_(0)でレジストローラ9を回転させると、図のAに示すように、時間t_(10)で転写紙6の先端が先端検出センサ11の位置に達する。この標準回転速度v_(0)でレジストローラ9を続けて回転させると、時間t_(2)で転写紙6の先端が、画像と転写紙6の位置合せを行なう範囲の搬送方向下流限の位置17まで達する。そして時間t_(3)で転写紙6の先端が転写チャージャ12に達して感光体1の画像と完全に位置合せされる。
一方、図のB,C,Dに示すように、転写紙6に遅れや進みがあると転写紙6の先端が先端検出センサ11の位置に達する時間t_(1n)(n=1?3)が、標準回転速度v_(0)でレジストローラ9を回転した場合とは相違する。この場合、時間t_(2)で転写紙6の先端が位置17まで達するようにレジストローラ9の回転速度を可変し、それ以後は標準回転速度v_(0)でレジストローラ9を回転すると、転写紙6を一時停止させることなしに、画像と転写紙6の位置合せを行なうことができる。」(5頁11行?8頁4行)
(5)上記(1)、及び(2)より、実用新案登録請求の範囲の「感光体」、「給紙装置」、「転写紙」、「可変速搬送手段」、及び「転写装置」は、それぞれ、[従来の技術]の「感光体1」、「給紙トレイ5」、「転写紙6」、「レジストローラ9」、及び「転写チャージャ12」に対応する。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「帯電チャージャで表面を帯電させた感光体に光学系からレーザビームを照射し静電的な潜像を形成し、この静電的潜像に現像ユニットでトナーを付着させ可視化して画像を形成し、給紙装置に収納された転写紙は給紙ローラと分離ローラ及び可変速搬送手段により搬送路に給送され、この転写紙の先端が先端検出センサで検出されると、即時あるいは所定時間おいて可変速搬送手段の回転を一時停止して転写紙を待機させ、そして、画像形成タイミングと同期させて再び可変速搬送手段を回転して転写紙の給送を再開することにより、感光体に形成された画像と転写紙の位置合せを行ない、転写装置で画像を転写紙に転写する画像形成装置において、
給紙装置と転写装置との間に設けられ、転写紙の先端を検出する先端検出手段と、
先端検出手段の設置位置とあらかじめ定められた位置合せ位置との距離と、あらかじめ定められた位置合せタイミング時間とプリント開始から先端検出手段で転写紙を検出した時間との差から可変速度を算出する可変速算出手段と、
可変速算出手段で算出した可変速度で転写紙を搬送する可変速搬送手段と、
を備えた画像形成装置。」

2.引用文献2について
平成29年8月8日付け前置報告書で引用され、本願の出願日前の平成17年3月31日に頒布された引用文献2(特開2005-84375号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのサイズを検知するシートサイズ検知手段と、画像を読み取る複数の読取画素を有し、該複数の読取画素が前記シートの搬送方向に対して垂直方向に並ぶように、前記搬送されるシートの通過領域であって、前記給送パスに配置されたシート読取手段を備えた画像形成装置において、
前記シート読取手段の前記複数の読取画素を繰り返し読み出すことにより前記搬送されるシートの位置ズレ量を検知するずれ量検知手段と、前記シートサイズ検知手段の検知結果に基づいて前記シート読取手段の検知領域を決定し、前記ずれ量検知手段による位置ズレ量に基づいて前記シート読取手段の検知領域における有効信号領域を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート読取手段は、画像形成部にシートを所定のタイミングで搬送するレジストローラと前記画像形成部との間に配置されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
入力された画像データに基づいて像担持体にレーザを照射して静電潜像を形成し、該静電潜像を現像してシートに転写することにより画像を形成する画像形成装置であって、前記ずれ量検知手段によって検知されたシートの位置ずれ量に基づき、前記搬送方向に対して垂直方向におけるレーザの書き出し開始位置を決定することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記シートの位置ずれ量は、前記搬送方向に対して垂直方向の横ズレ量及び/又は斜行量であることを特徴とする請求項1?3の何れかに記載の画像形成装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真技術を用いたLBP(レーザビームプリンタ)や複写機等の画像形成装置に関する。特に、画像を用紙に転写する際に、用紙の縁に余白を設けない縁無しプリントに関する。」
(3)「【0020】
そこで、本発明は、用紙送りタイミングを高精度に検知できるとともに、縁無しプリント実施時においても高品位な画像を提供することが可能で、出力紙を1枚1枚チェックすることなく、ユーザが満足するような記録位置精度を得ることができる画像形成装置の提供を目的とする。」
(4)「【0044】
[紙送りタイミングと画像書き出しタイミング]
図2は感光ドラムに至る紙搬送パスに配置された印字位置調整機構を示す図である。
【0045】
図2において、205は紙搬送パスである。206は両面記録用の循環パスである。31は前述した感光ドラムである。202は感光ドラム31に潜像を形成するレーザ素子である。尚、このレーザ素子202の配置は便宜的に描かれており、実際の配置とは異なる。203は紙搬送ローラ(レジストローラ)であり、紙搬送パス205に沿って送られてくる用紙を一旦突き当てた状態で滞留させた後、所定の紙送りタイミングに合わせて感光ドラム31側に送り出す。
【0046】
204は用紙位置を検出するために画像を読み取る画像読取センサ(イメージセンサ)であり、CCDやCIS等の光電変換素子アレイから構成される。本実施の形態では、CIS(コンタクトイメージセンサ)が用いられる。このCIS204は感光ドラム31から距離L1だけ離れたレジストローラ203側に配置されている。又、CIS204は、後述する画像形成ポイント(a点)から距離L2だけ離れたレジストローラ203側に配置されている。更に、CIS204は後述するBD検出器108から紙送り方向に対して垂直方向に距離L3だけ離れて配置されている。
【0047】
108はレーザ素子(単にレーザと言う)202の照射時期を検出するビームディテクト(BD)検出器である。レーザ光は、ポリゴンミラーによってBD検出器108に照射された後、振られて感光ドラム31上に照射されると、感光ドラム31上には、潜像が形成される。
【0048】
図中、a点は画像形成ポイントを示す。例えば、用紙がa点を5mm過ぎたタイミングでレーザ202による画像形成を行った場合、感光ドラム31の回転と用紙107の搬送が同期して行われ、結果として、出力画像は用紙先端から5mmの位置に形成される。
【0049】
又、図中、b点は転写ポイントを示し、c点はレーザ書き出しポイントを示す。レーザ書き出しポイントc点で、レーザ102によって感光ドラム31上に潜像が形成されると、現像ユニットを経由し、転写ポイントb点でトナーが用紙上に転写され、画像形成が行われる。
【0050】
この画像形成の際、レジストローラ203から送り出された用紙107は、紙搬送パス205に沿って感光ドラム31側に搬送され、CIS204によって先端検知されてから距離L2だけ進んだときに、感光ドラム31にレーザ光を照射するように制御が行われる。具体的には、用紙107が距離L2進む時間をタイマでカウントし、その時間が経過すると、レーザ光を感光ドラム31に照射する。
【0051】
更に高精度にレーザ書き出し位置を調整するためには、用紙の紙送り方向(便宜上、副走査方向と言う)のタイミング及びこの紙送り方向に対して垂直方向(便宜上、主走査方向と言う)のタイミングを検知し、この検知情報に従ってレーザ光による書き出しを制御する必要がある。
【0052】
即ち、CIS204で用紙の先端位置が検知されてから画像形成の開始時期を決定し、用紙が距離L2だけ進んだときにレーザによる書き出しを開始することで、副走査方向の画像の書き出し位置を調整することができる。従って、距離L2は、CIS204が用紙107の先端を検出してから、この用紙の送り方向に対して垂直方向のズレを検出し、それぞれの方向におけるレーザ光の書き出しのタイミングを設定するまでの時間に相当する距離を少なくとも有していることが必要になる。
【0053】
又、通常の画像形成装置では、用紙の搬送スピードと感光ドラム31の回転速度は等しく設定されている。これは、CIS204から距離L2だけ進んだ位置(画像形成ポイントa点)から、転写ローラ39と感光ドラム31のニップ位置である用紙への転写位置(転写ポイントb点)までの距離L1-L2と、レーザの書き出し位置(書き出しポイントc点)から用紙への転写位置(転写ポイントb点)までの感光ドラム31上の円周(周回)距離とが等しいことを意味する。
【0054】
そして、CIS204で用紙の横端位置(横レジ)が検知されると、ビームディテクタ(BD)108からCIS204の下端までの距離L3に、CIS204の下端から用紙の横端位置までの距離xを加えた距離(x+L3)を算出し、ビームディテクタ108によってレーザ光が検知されてから上記算出された距離だけレーザ光が主走査方向に振られた後、レーザによる書き出しを開始することで、主走査方向の画像の書き出し位置を調整することができる。
【0055】
このようなレーザ光による副走査方向及び主走査方向の画像の書き出し位置の調整は、後述するタイミングコントロールユニット(TCU)105によって行われる。即ち、TCU105は、レジストローラ203をオンにして用紙の搬送を開始させた後、CIS204からの検知信号に基づき、書き出しタイミングをレーザ制御回路27に出力する。レーザ制御回路27は、TCU105から出力された書き出しタイミングに同期し、画像処理回路(図示せず)から送られてきた画像データを基にレーザ素子202を駆動する。」
(5)上記(1)、及び(4)より、【特許請求の範囲】の「シート」、「像担持体」、及び「シート読取手段」は、【0053】の「用紙」、「感光ドラム31」、及び「CIS204」に対応する。

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「シートのサイズを検知するシートサイズ検知手段と、画像を読み取る複数の読取画素を有し、該複数の読取画素が前記シートの搬送方向に対して垂直方向に並ぶように、前記搬送されるシートの通過領域であって、前記給送パスに配置されたシート読取手段を備えた画像形成装置において、
前記シート読取手段の前記複数の読取画素を繰り返し読み出すことにより前記搬送されるシートの位置ズレ量を検知するずれ量検知手段と、前記シートサイズ検知手段の検知結果に基づいて前記シート読取手段の検知領域を決定し、前記ずれ量検知手段による位置ズレ量に基づいて前記シート読取手段の検知領域における有効信号領域を制御する制御手段とを備え、
前記シート読取手段は、画像形成部にシートを所定のタイミングで搬送するレジストローラと前記画像形成部との間に配置され、
入力された画像データに基づいて像担持体にレーザを照射して静電潜像を形成し、該静電潜像を現像してシートに転写することにより画像を形成する画像形成装置であって、前記ずれ量検知手段によって検知されたシートの位置ずれ量に基づき、前記搬送方向に対して垂直方向におけるレーザの書き出し開始位置を決定し、
シートの搬送スピードと像担持体の回転速度は等しく設定され、シート読取手段から距離L2だけ進んだ位置(画像形成ポイントa点)から、転写ローラ39と像担持体のニップ位置であるシートへの転写位置(転写ポイントb点)までの距離L1-L2と、レーザの書き出し位置(書き出しポイントc点)からシートへの転写位置(転写ポイントb点)までの像担持体上の円周(周回)距離とが等しい、画像形成装置。」

3.引用文献3について
平成28年5月17日付け拒絶理由に引用され、本願の出願日前の平成13年7月31日に頒布された引用文献3(特開2001-206583号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 記憶装置に記憶された画像情報に基づき、同一画像を複数の用紙に形成することが可能な画像形成装置において、
複数の用紙を1枚づつ分離して給紙する給紙手段と、
前記給紙手段の給紙速度とは独立した可変の搬送速度を備え、前記給紙手段によって給紙された用紙を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された用紙の斜行補正を行なうレジスト手段と、
前記給紙手段から前記レジスト手段に至る用紙搬送経路内に配置され、前記給紙手段によって給紙された用紙を検知する用紙検知手段と、
前記用紙検知手段が用紙を検知した用紙検知タイミングに基づいて前記搬送手段の搬送速度を決定する速度決定手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 回転する画像担持体と、前記画像担持体の回転面上に画像を形成する作像手段とを更に有し、
前記レジスト手段は、前記搬送手段によって搬送された用紙の移動を一時停止させ、前記作像手段によって前記画像担持体上に形成された画像が該用紙の所定の位置に転写されるようにタイミングを図って該用紙の搬送を再開することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像形成装置、搬送速度決定方法、及び記憶媒体に関し、特に、記憶装置に記憶された画像情報に基づき、同一画像を複数の用紙に形成することが可能な画像形成装置、当該画像形成装置に適用される搬送速度決定方法、及び当該搬送速度決定方法を実行するプログラムを記憶した記憶媒体に関する。」
(3)「【0013】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で紙間を更に短くすることができ、且つジャムの発生が無く、同じプロセス速度であっても高い印字精度を確保しつつ、効率よく生産性を向上させることができる画像形成装置、搬送速度決定方法、及び記憶媒体を提供することを目的とする。」

したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「記憶装置に記憶された画像情報に基づき、同一画像を複数の用紙に形成することが可能な画像形成装置において、
複数の用紙を1枚づつ分離して給紙する給紙手段と、
前記給紙手段の給紙速度とは独立した可変の搬送速度を備え、前記給紙手段によって給紙された用紙を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された用紙の斜行補正を行なうレジスト手段と、
前記給紙手段から前記レジスト手段に至る用紙搬送経路内に配置され、前記給紙手段によって給紙された用紙を検知する用紙検知手段と、
前記用紙検知手段が用紙を検知した用紙検知タイミングに基づいて前記搬送手段の搬送速度を決定する速度決定手段とを有し、
回転する画像担持体と、前記画像担持体の回転面上に画像を形成する作像手段とを更に有し、
前記レジスト手段は、前記搬送手段によって搬送された用紙の移動を一時停止させ、前記作像手段によって前記画像担持体上に形成された画像が該用紙の所定の位置に転写されるようにタイミングを図って該用紙の搬送を再開する画像形成装置。」

4.引用文献4について
平成28年5月17日付け拒絶理由に引用され、本願の出願日前の平成19年4月5日に頒布された引用文献4(特開2007-86726号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部にて形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上に担持されるトナー像を用紙に転写せしめる転写部材と、
前記トナー像を前記転写部材により前記用紙に転写する転写位置に向けて前記用紙を搬送するレジストローラと、
前記レジストローラと前記転写位置との間に設けられ、前記用紙を検知するセンサと、
前記レジストローラの駆動を制御する制御部と、を有する画像形成装置において、
前記制御部は、
前記像担持体の表面の線速度よりも速い第1の搬送速度で前記レジストローラの駆動を開始し、
前記レジストローラの駆動を開始する駆動信号の出力時から、搬送される用紙の先端が前記センサにより検知されるまでに要した時間を計測し、
計測した時間と基準時間を比較し、
比較結果に基づき前記レジストローラの搬送速度を前記第1の搬送速度から第2の搬送速度に減速するタイミングを決定し、
決定されたタイミングにて前記レジストローラの搬送速度を前記第1の搬送速度から第2の搬送速度に減速し、
前記第2の搬送速度にて、前記用紙を前記転写位置へ搬送するように制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記駆動信号の出力時から、前記用紙が前記転写位置に到達するまでの時間が一定時間となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記レジストローラを駆動する駆動源がステッピングモータであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の搬送速度は、前記像担持体の表面の線速度と同じ速度であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。特に、像担持体上に担持せしめたトナー像を、精度良く用紙の所定の位置に転写するように、転写位置への用紙の到達時間が一定となるように搬送することができる画像形成装置に係わる。」
(3)「【0014】
従って、本発明の目的は、レジストローラから転写位置に用紙を到達せしめる搬送時間を一定にするように、用紙を高精度に搬送することで、転写位置における用紙の所定の位置にトナー像を転写し、用紙間における画像ズレを発生しない画像形成装置を提供することにある。」

したがって、上記引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部にて形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上に担持されるトナー像を用紙に転写せしめる転写部材と、
前記トナー像を前記転写部材により前記用紙に転写する転写位置に向けて前記用紙を搬送するレジストローラと、
前記レジストローラと前記転写位置との間に設けられ、前記用紙を検知するセンサと、
前記レジストローラの駆動を制御する制御部と、を有する画像形成装置において、
前記制御部は、
前記像担持体の表面の線速度よりも速い第1の搬送速度で前記レジストローラの駆動を開始し、
前記レジストローラの駆動を開始する駆動信号の出力時から、搬送される用紙の先端が前記センサにより検知されるまでに要した時間を計測し、
計測した時間と基準時間を比較し、
比較結果に基づき前記レジストローラの搬送速度を前記第1の搬送速度から第2の搬送速度に減速するタイミングを決定し、
決定されたタイミングにて前記レジストローラの搬送速度を前記第1の搬送速度から第2の搬送速度に減速し、
前記第2の搬送速度にて、前記用紙を前記転写位置へ搬送するように制御し、
前記制御部は、前記駆動信号の出力時から、前記用紙が前記転写位置に到達するまでの時間が一定時間となるように制御し、
前記レジストローラを駆動する駆動源がステッピングモータであり、
前記第2の搬送速度は、前記像担持体の表面の線速度と同じ速度である、画像形成装置。」

5.引用文献5について
平成28年5月17日付け拒絶理由に引用され、本願の出願日前の平成21年10月29日に頒布された引用文献5(特開2009-249093号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部に収容された用紙を1枚ずつ搬送して給紙する搬送機構部と、
用紙の搬送路中に設けられ、前記搬送機構部によって搬送される用紙を検知する検知手段と、
前記搬送機構部による用紙の搬送速度を制御することにより、前記検知手段で検知された用紙がさらに下流側の所定位置に到達するタイミングを調整する制御手段と、
前記搬送機構部が用紙を搬送する際の定常速度とは異なる複数の減速速度又は増速速度を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記搬送機構部により前記給紙部から用紙の給紙が開始されてから前記検知手段がその用紙を検知するまでの到達時間を計測し、その到達時間に基づいて前記搬送機構部の速度変更を行うかを決定し、速度変更を行う場合には前記記憶手段に記憶された複数の減速速度又は増速速度のうちから前記到達時間に応じて一の減速速度又は増速速度を選択すると共に、その選択した一の減速速度又は増速速度と前記到達時間とに基づいて減速時又は増速時における速度保持時間を算出して前記搬送機構部を制御することにより、前記搬送機構部による搬送速度を前記定常速度から前記一の減速速度又は増速速度に減速又は増速させ、前記速度保持時間の経過後に前記搬送機構部による搬送速度を前記定常速度に復帰させることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記複数の減速速度又は増速速度のうちから前記到達時間に応じて一の減速速度又は増速速度を選択するための複数の閾値を更に記憶しており、
前記制御手段は、前記到達時間を前記複数の閾値のそれぞれと比較することにより、前記搬送機構部の速度変更を行うかを決定すると共に、前記複数の減速速度又は増速速度のうちから一の減速速度又は増速速度を選択することを特徴とする請求項1記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記複数の閾値のそれぞれは、前記複数の減速速度又は増速速度のそれぞれに対応しており、
各閾値は、それに対応する減速速度又は増速速度と、前記定常速度と、前記定常速度からそれに対応する減速速度又は増速速度まで減速又は増速させるのに要する減速又は増速遷移時間と、それに対応する減速速度又は増速速度で最小限保持しなければならない最小速度保持時間と、それに対応する減速速度又は増速速度から再び前記定常速度まで増速又は減速させるのに要する増速又は減速遷移時間とに基づいて決定されることを特徴とする請求項2記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記到達時間に応じて前記搬送機構部による用紙の搬送速度を前記定常速度から減速制御するものであり、
前記記憶手段は、前記複数の減速速度として、前記定常速度よりも低速の第1減速速度と第2減速速度の少なくとも2つの減速速度を記憶すると共に、前記複数の閾値として、第1閾値と第2閾値の少なくとも2つの閾値を記憶しており、前記第1減速速度は前記第2減速速度よりも低速であり、前記第1閾値は前記第2閾値よりも小さい値に設定されており、
前記制御手段は、前記到達時間が前記第1閾値よりも小さい場合には前記第1減速速度を選択し、前記到達時間が前記第1閾値よりも大きく、かつ前記第2閾値よりも小さい場合には前記第2減速速度を選択して減速制御を行うことを特徴とする請求項2又は3記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記到達時間に応じて前記搬送機構部による用紙の搬送速度を前記定常速度から増速制御するものであり、
前記記憶手段は、前記複数の増速速度として、前記定常速度よりも高速の第1増速速度と第2増速速度の少なくとも2つの増速速度を記憶すると共に、前記複数の閾値として、第1閾値と第2閾値の少なくとも2つの閾値を記憶しており、前記第1増速速度は前記第2増速速度よりも高速であり、前記第1閾値は前記第2閾値よりも大きい値に設定されており、
前記制御手段は、前記到達時間が前記第1閾値よりも大きい場合には前記第1増速速度を選択し、前記到達時間が前記第1閾値よりも小さく、かつ前記第2閾値よりも大きい場合には前記第2増速速度を選択して増速制御を行うことを特徴とする請求項2又は3記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の用紙搬送装置と、
前記用紙搬送装置によって搬送供給される用紙に対して画像形成を行う画像形成手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を1枚ずつ搬送する用紙搬送装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に搬送される用紙が所定位置に到達するタイミングを調整する技術に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解決することを目的としてなされたものであり、用紙が所定位置に到達するタイミングのずれを小さく抑制し、より高精度に用紙間隔の補正を行うことができるようにした用紙搬送装置及び画像形成装置を提供するものである。」

したがって、上記引用文献5には次の発明(以下、「引用発明5の1」という。)が記載されていると認められる。
「給紙部に収容された用紙を1枚ずつ搬送して給紙する搬送機構部と、
用紙の搬送路中に設けられ、前記搬送機構部によって搬送される用紙を検知する検知手段と、
前記搬送機構部による用紙の搬送速度を制御することにより、前記検知手段で検知された用紙がさらに下流側の所定位置に到達するタイミングを調整する制御手段と、
前記搬送機構部が用紙を搬送する際の定常速度とは異なる複数の減速速度又は増速速度を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記搬送機構部により前記給紙部から用紙の給紙が開始されてから前記検知手段がその用紙を検知するまでの到達時間を計測し、その到達時間に基づいて前記搬送機構部の速度変更を行うかを決定し、速度変更を行う場合には前記記憶手段に記憶された複数の減速速度又は増速速度のうちから前記到達時間に応じて一の減速速度又は増速速度を選択すると共に、その選択した一の減速速度又は増速速度と前記到達時間とに基づいて減速時又は増速時における速度保持時間を算出して前記搬送機構部を制御することにより、前記搬送機構部による搬送速度を前記定常速度から前記一の減速速度又は増速速度に減速又は増速させ、前記速度保持時間の経過後に前記搬送機構部による搬送速度を前記定常速度に復帰させ、
前記記憶手段は、前記複数の減速速度又は増速速度のうちから前記到達時間に応じて一の減速速度又は増速速度を選択するための複数の閾値を更に記憶しており、
前記制御手段は、前記到達時間を前記複数の閾値のそれぞれと比較することにより、前記搬送機構部の速度変更を行うかを決定すると共に、前記複数の減速速度又は増速速度のうちから一の減速速度又は増速速度を選択し、
前記複数の閾値のそれぞれは、前記複数の減速速度又は増速速度のそれぞれに対応しており、
各閾値は、それに対応する減速速度又は増速速度と、前記定常速度と、前記定常速度からそれに対応する減速速度又は増速速度まで減速又は増速させるのに要する減速又は増速遷移時間と、それに対応する減速速度又は増速速度で最小限保持しなければならない最小速度保持時間と、それに対応する減速速度又は増速速度から再び前記定常速度まで増速又は減速させるのに要する増速又は減速遷移時間とに基づいて決定され、
前記制御手段は、前記到達時間に応じて前記搬送機構部による用紙の搬送速度を前記定常速度から減速制御するものであり、
前記記憶手段は、前記複数の減速速度として、前記定常速度よりも低速の第1減速速度と第2減速速度の少なくとも2つの減速速度を記憶すると共に、前記複数の閾値として、第1閾値と第2閾値の少なくとも2つの閾値を記憶しており、前記第1減速速度は前記第2減速速度よりも低速であり、前記第1閾値は前記第2閾値よりも小さい値に設定されており、
前記制御手段は、前記到達時間が前記第1閾値よりも小さい場合には前記第1減速速度を選択し、前記到達時間が前記第1閾値よりも大きく、かつ前記第2閾値よりも小さい場合には前記第2減速速度を選択して減速制御を行う、用紙搬送装置と、
前記用紙搬送装置によって搬送供給される用紙に対して画像形成を行う画像形成手段と、
を備える、画像形成装置。」
また、上記引用文献5には次の発明(以下、「引用発明5の2」という。)も記載されていると認められる。
「給紙部に収容された用紙を1枚ずつ搬送して給紙する搬送機構部と、
用紙の搬送路中に設けられ、前記搬送機構部によって搬送される用紙を検知する検知手段と、
前記搬送機構部による用紙の搬送速度を制御することにより、前記検知手段で検知された用紙がさらに下流側の所定位置に到達するタイミングを調整する制御手段と、
前記搬送機構部が用紙を搬送する際の定常速度とは異なる複数の減速速度又は増速速度を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記搬送機構部により前記給紙部から用紙の給紙が開始されてから前記検知手段がその用紙を検知するまでの到達時間を計測し、その到達時間に基づいて前記搬送機構部の速度変更を行うかを決定し、速度変更を行う場合には前記記憶手段に記憶された複数の減速速度又は増速速度のうちから前記到達時間に応じて一の減速速度又は増速速度を選択すると共に、その選択した一の減速速度又は増速速度と前記到達時間とに基づいて減速時又は増速時における速度保持時間を算出して前記搬送機構部を制御することにより、前記搬送機構部による搬送速度を前記定常速度から前記一の減速速度又は増速速度に減速又は増速させ、前記速度保持時間の経過後に前記搬送機構部による搬送速度を前記定常速度に復帰させ、
前記記憶手段は、前記複数の減速速度又は増速速度のうちから前記到達時間に応じて一の減速速度又は増速速度を選択するための複数の閾値を更に記憶しており、
前記制御手段は、前記到達時間を前記複数の閾値のそれぞれと比較することにより、前記搬送機構部の速度変更を行うかを決定すると共に、前記複数の減速速度又は増速速度のうちから一の減速速度又は増速速度を選択し、
前記複数の閾値のそれぞれは、前記複数の減速速度又は増速速度のそれぞれに対応しており、
各閾値は、それに対応する減速速度又は増速速度と、前記定常速度と、前記定常速度からそれに対応する減速速度又は増速速度まで減速又は増速させるのに要する減速又は増速遷移時間と、それに対応する減速速度又は増速速度で最小限保持しなければならない最小速度保持時間と、それに対応する減速速度又は増速速度から再び前記定常速度まで増速又は減速させるのに要する増速又は減速遷移時間とに基づいて決定され、
前記制御手段は、前記到達時間に応じて前記搬送機構部による用紙の搬送速度を前記定常速度から増速制御するものであり、
前記記憶手段は、前記複数の増速速度として、前記定常速度よりも高速の第1増速速度と第2増速速度の少なくとも2つの増速速度を記憶すると共に、前記複数の閾値として、第1閾値と第2閾値の少なくとも2つの閾値を記憶しており、前記第1増速速度は前記第2増速速度よりも高速であり、前記第1閾値は前記第2閾値よりも大きい値に設定されており、
前記制御手段は、前記到達時間が前記第1閾値よりも大きい場合には前記第1増速速度を選択し、前記到達時間が前記第1閾値よりも小さく、かつ前記第2閾値よりも大きい場合には前記第2増速速度を選択して増速制御を行う、用紙搬送装置と、
前記用紙搬送装置によって搬送供給される用紙に対して画像形成を行う画像形成手段と、
を備える、画像形成装置。」


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
後者の「感光体」は、画像が形成されるものであることは明らかであるから、前者の「画像が形成される像担持体」に相当する。
後者の「転写紙」は、前者の「記録媒体」に相当し、後者の「転写装置」は、画像を転写紙に転写するものであることは明らかであるから、前者の「前記像担持体に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段」に相当する。
後者の「給紙装置」は、転写紙を収納するものであることは明らかであるから、前者の「記録媒体を収容する収容手段」に相当する。
後者の「給紙ローラ」と「分離ローラ」は、給紙装置に収容された転写紙を搬送路に給送するものであることは明らかであるから、前者の「収容手段に収容された記録媒体を搬送路へ給送する給送手段」に相当する。
後者の「可変速搬送手段」は、転写紙を給送し、以て、感光体に形成された画像と転写紙の位置合わせを行い、転写装置で画像を転写するものであることは明らかであるから、前者の「転写手段へ向けて搬送する搬送手段」に相当する。
後者の「先端検出手段」は、給紙装置と転写装置との間に設けられ、転写紙の先端を検出するものであることは明らかであるから、前者の「転写手段よりも記録媒体の搬送方向上流側の所定位置で記録媒体を検知する検知手段」に相当する。
後者は、「帯電チャージャで表面を帯電させた感光体に光学系からレーザビームを照射し静電的な潜像を形成し、この静電的潜像に現像ユニットでトナーを付着させ可視化して画像を形成し、給紙装置に収納された転写紙は給紙ローラと分離ローラ及び可変速搬送手段により搬送路に給送され、この転写紙の先端が先端検出センサで検出されると、即時あるいは所定時間おいて可変速搬送手段の回転を一時停止して転写紙を待機させ、そして、画像形成タイミングと同期させて再び可変速搬送手段を回転して転写紙の給送を再開することにより、感光体に形成された画像と転写紙の位置合せを行ない、転写装置で画像を転写紙に転写する」ものであって、画像を転写紙に転写する前に、感光体に画像を形成することは明らかであるから、後者は、「記録媒体が転写手段に到達するよりも前に、検知した記録媒体に対応する画像の形成を像担持体に対して開始する画像形成手段」を有していることは明らかである。
後者の「画像形成装置」は、前者の「画像形成装置」に相当する。

したがって、両者は、
「画像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段と、
記録媒体を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録媒体を搬送路へ給送する給送手段と、
前記給送手段によって前記搬送路へ給送された記録媒体を前記転写手段へ向けて搬送する搬送手段と、
前記転写手段よりも記録媒体の搬送方向上流側の所定位置で記録媒体を検知する検知手段と、
前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有する、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1が、「前記像担持体と転写ニップ部を形成し」、前記像担持体に形成された画像を「前記転写ニップ部において」記録媒体に転写する転写手段を有するのに対し、引用発明1は、そのようなものを有していない点。

[相違点2]
本願発明1が、前記給送手段によって前記搬送路へ給送された記録媒体を「停止させることなく前記転写手段へ向けて搬送する」搬送手段を有するのに対し、引用発明1は、そのようなものを有していない点。

[相違点3]
本願発明1が、「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって」、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、
「前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い画像形成装置において、
前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも長い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも速い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を短くする」ものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

(2)判断
ア.新規性について
そうすると、引用発明1は、上記相違点1乃至3に係る本願発明1の発明特定事項を具備していない。
したがって、本願発明1が、引用発明1であるとすることはできない。

イ.進歩性について
上記相違点3について検討する。
引用発明2の「レーザの書き出し位置(書き出しポイントc点)」、「転写ローラ39と像担持体のニップ位置であるシートへの転写位置(転写ポイントb点)」、及び「シート読取手段」は、それぞれ、本願発明1の「像担持体に対して画像が形成される位置」、「転写ニップ部」、及び「検知手段」に相当する。
そして、引用発明2は、シート読取手段から距離L2だけ進んだ位置(画像形成ポイントa点)から、転写ローラ39と像担持体のニップ位置であるシートへの転写位置(転写ポイントb点)までの距離L1-L2と、レーザの書き出し位置(書き出しポイントc点)からシートへの転写位置(転写ポイントb点)までの像担持体上の円周(周回)距離とが等しいものであるから、「前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い」といえる。
しかし、引用発明2には、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項における「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも長い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも速い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を短くする」については、何ら記載も示唆もされていない。
また、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項における「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも長い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも速い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を短くする」が設計的事項といえる理由もない。
そして、本願発明1は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項における「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも長い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも速い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を短くする」により、「画像形成装置の大型化を抑制しつつ、高スループット化および画像形成位置の精度を高めることが可能となる。」(本願明細書【0008】参照。)との効果を奏するものである。

また、原査定で提示されたいずれの引用文献にも、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。

したがって、上記相違点1、及び相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1とを対比すると、
後者の「感光体」は、画像が形成されるものであることは明らかであるから、前者の「画像が形成される像担持体」に相当する。
後者の「転写紙」は、前者の「記録媒体」に相当し、後者の「転写装置」は、画像を転写紙に転写するものであることは明らかであるから、前者の「前記像担持体に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段」に相当する。
後者の「給紙装置」は、転写紙を収納するものであることは明らかであるから、前者の「記録媒体を収容する収容手段」に相当する。
後者の「給紙ローラ」と「分離ローラ」は、給紙装置に収容された転写紙を搬送路に給送するものであることは明らかであるから、前者の「収容手段に収容された記録媒体を搬送路へ給送する給送手段」に相当する。
後者の「可変速搬送手段」は、転写紙を給送し、以て、感光体に形成された画像と転写紙の位置合わせを行い、転写装置で画像を転写するものであることは明らかであるから、前者の「転写手段へ向けて搬送する搬送手段」に相当する。
後者の「先端検出手段」は、給紙装置と転写装置との間に設けられ、転写紙の先端を検出するものであることは明らかであるから、前者の「転写手段よりも記録媒体の搬送方向上流側の所定位置で記録媒体を検知する検知手段」に相当する。
後者の「画像形成装置」は、前者の「画像形成装置」に相当する。

したがって、両者は、
「画像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段と、
記録媒体を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録媒体を搬送路へ給送する給送手段と、
前記給送手段によって前記搬送路へ給送された記録媒体を前記転写手段へ向けて搬送する搬送手段と、
前記転写手段よりも記録媒体の搬送方向上流側の所定位置で記録媒体を検知する検知手段と、を有する、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明2が、「前記像担持体と転写ニップ部を形成し」、前記像担持体に形成された画像を「前記転写ニップ部において」記録媒体に転写する転写手段を有するのに対し、引用発明1は、そのようなものを有していない点。

[相違点2]
本願発明2が、前記給送手段によって前記搬送路へ給送された記録媒体を「停止させることなく前記転写手段へ向けて搬送する」搬送手段を有するのに対し、引用発明1は、そのようなものを有していない点。

[相違点4]
本願発明2が、「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、
前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い画像形成装置において、
前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも短い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも遅い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を長くする」ものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

(2)判断
ア.新規性について
そうすると、引用発明1は、上記相違点1、2、及び4に係る本願発明2の発明特定事項を具備していない。
したがって、本願発明2が、引用発明1であるとすることはできない。

イ.進歩性について
上記相違点4について検討する。
引用発明2の「レーザの書き出し位置(書き出しポイントc点)」、「転写ローラ39と像担持体のニップ位置であるシートへの転写位置(転写ポイントb点)」、及び「シート読取手段」は、それぞれ、本願発明2の「像担持体に対して画像が形成される位置」、「転写ニップ部」、及び「検知手段」に相当する。
そして、引用発明2は、シート読取手段から距離L2だけ進んだ位置(画像形成ポイントa点)から、転写ローラ39と像担持体のニップ位置であるシートへの転写位置(転写ポイントb点)までの距離L1-L2と、レーザの書き出し位置(書き出しポイントc点)からシートへの転写位置(転写ポイントb点)までの像担持体上の円周(周回)距離とが等しいものであるから、「前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い」といえる。
しかし、引用発明2には、上記相違点4に係る本願発明2の発明特定事項における「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも短い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも遅い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を長くする」については、何ら記載も示唆もされていない。
また、上記相違点4に係る本願発明2の発明特定事項における「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも短い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも遅い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を長くする」が設計的事項といえる理由もない。
そして、本願発明2は、上記相違点4に係る本願発明2の発明特定事項における「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも短い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも遅い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を長くする」により、「画像形成装置の大型化を抑制しつつ、高スループット化および画像形成位置の精度を高めることが可能となる。」(本願明細書【0008】参照。)との効果を奏するものである。

また、原査定で提示されたいずれの引用文献にも、上記相違点4に係る本願発明2の発明特定事項は記載も示唆もされていない。

したがって、上記相違点1、及び相違点2について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


3.本願発明3乃至8について
ア.新規性について
本願発明3乃至8は、本願発明1又は本願発明2の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記1.(2)ア.又は2.(2)ア.と同様の理由により、本願発明3乃至8が、引用発明1であるとすることはできない。

イ.進歩性について
本願発明3乃至8は、本願発明1又は本願発明2の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明3乃至8は、上記1.(2)イ.又は2.(2)イ.と同様の理由により、引用文献1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1について
・請求項 1-10
・引用文献等 1

●理由2について
・請求項 1-10
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.実願平02-028064号(実開平03-119854号)のマイクロフィルム」
というものである。

しかしながら、請求項1に係る発明は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項である「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、
前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い画像形成装置において、
前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも長い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも速い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を短くする」を備えており、また、請求項2に係る発明は、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項である「前記検知手段によって記録媒体を検知してから所定時間が経過した時であって、前記記録媒体が前記転写手段に到達するよりも前に、検知した前記記録媒体に対応する画像の形成を前記像担持体に対して開始する画像形成手段と、を有し、
前記画像形成手段によって前記像担持体に対して画像が形成される位置から前記転写ニップ部までの前記像担持体の沿面上における距離よりも、前記検知手段が記録媒体を検知する前記所定位置から前記転写ニップ部までの搬送路上における距離の方が長い画像形成装置において、
前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも短い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも遅い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を長くする」を備えており、上記第4のとおり、本願発明1乃至8は、上記引用発明1であるとすることはできないし、また、本願発明1乃至8は、上記引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
当審では、
「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1乃至10の搬送手段は、「給紙ローラ102」を包含するものである。
そうすると、請求項1乃至10に係る発明は、本願発明の課題を解決する手段を記載したものとはいえない。
(2)「速度」及び「時点」について何ら特定のない請求項1及び請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。」
との拒絶の理由を通知しているが、平成30年4月6日付けの補正において、上記指摘(1)に対して、請求項1、及び2は、「収容手段に収容された記録媒体を搬送路へ給送する給送手段」との補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。
また、上記指摘(2)に対しては、同日付けの補正において、上記指摘(1)に対して、請求項1は、「前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも長い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも速い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を短くすることを」との補正がなされ、請求項2は、「前記検知手段が第1の記録媒体の後端を検知した時点から、前記第1の記録媒体に後続する第2の記録媒体の先端を検知する時点までの検知時間が基準時間よりも短い場合、前記搬送手段は、前記検知手段が前記第2の記録媒体の先端を検知した時点から、前記第2の記録媒体の先端が前記転写手段に到達する時点までの期間に、前記第1の記録媒体の後端と前記第2の記録媒体の先端の間隔が前記基準時間に対応する基準間隔となるように、前記転写手段によって前記第2の記録媒体に画像が転写される際の第1の速度よりも遅い第2の速度で前記第2の記録媒体を搬送し、前記画像形成手段は、前記検知時間に基づいて前記所定時間を長くすること」との補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-23 
出願番号 特願2012-175411(P2012-175411)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 537- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
発明の名称 画像形成装置  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 下山 治  

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