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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1339972
審判番号 不服2017-10967  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-24 
確定日 2018-05-10 
事件の表示 特願2015-248729号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開、特開2017-113069号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月21日の出願であって、平成28年8月30日付けで拒絶理由が通知され、同年11月7日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年4月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年7月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1?2の記載を含む補正であり、平成28年11月7日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、本件補正箇所を示す。)。

(補正前:平成28年11月7日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技機前面に取り付けられた透明パネルとして、第1素材による第1の透明パネルと、
前記第1素材よりも曲げ剛性が低い第2素材による第2の透明パネルを有し、
前記第1の透明パネルと前記第2の透明パネルについては、パネル面の面積が小さい方が前記第2の透明パネルで、パネル面の面積が大きい方が前記第1の透明パネルとされ、
前記第1の透明パネルは、発熱体との距離が前記第2の透明パネルよりも短くされた
遊技機。」

(補正後:本件補正である平成29年7月24日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技機前面に取り付けられた透明パネルとして、第1素材による第1の透明パネルと、
前記第1素材よりも曲げ剛性が低い第2素材による第2の透明パネルを有し、
前記第1の透明パネルと前記第2の透明パネルについては、パネル面の面積が小さい方が前記第2の透明パネルで、パネル面の面積が大きい方が前記第1の透明パネルとされ、
前記第1の透明パネルと該第1の透明パネルに最も近い発熱体との距離は、前記第2の透明パネルと該第2の透明パネルに最も近い発熱体との距離よりも短くされた
遊技機。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の透明パネル」および「第2の透明パネル」と「発熱体」との「距離」の関係について、補正前の「前記第1の透明パネルは、発熱体との距離が前記第2の透明パネルよりも短くされた」なる記載を「前記第1の透明パネルと該第1の透明パネルに最も近い発熱体との距離は、前記第2の透明パネルと該第2の透明パネルに最も近い発熱体との距離よりも短くされた」なる記載に限定する補正を行うものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同様第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示した次のとおりのものである(A?Dは本件補正発明を分説するため当審で付した。)。

「A 遊技機前面に取り付けられた透明パネルとして、第1素材による第1の透明パネルと、
前記第1素材よりも曲げ剛性が低い第2素材による第2の透明パネルを有し、
B 前記第1の透明パネルと前記第2の透明パネルについては、パネル面の面積が小さい方が前記第2の透明パネルで、パネル面の面積が大きい方が前記第1の透明パネルとされ、
C 前記第1の透明パネルと該第1の透明パネルに最も近い発熱体との距離は、前記第2の透明パネルと該第2の透明パネルに最も近い発熱体との距離よりも短くされた
D 遊技機。」

(2)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-200498号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0005】
・・・
(請求項1)
請求項1記載の発明は、液晶パネル(81A)を正面側にして設置される液晶表示装置(81)と、この液晶表示装置(81)を固定対象に固定するための少なくとも前方が開口する固定枠と、前記液晶表示装置(81)の液晶パネル(81A)の前面に配置される透明な保護パネル(強化ガラス84)と、・・・」

(イ)「【0020】
なお遊技機1は、メイン基板により行われる当選判定の抽選結果が所定の当選役に当選し、前記ストップスイッチ12の操作により当選図柄が入賞の態様となるように回転リール10を停止させることができると入賞となり、ホッパーユニット15からメダルが払い出されたり、ボーナスゲームなどの有利な遊技が開始されるようになっている。
(上扉4)
次に、上扉4の構造について詳述する。
上扉4は、図3に示すように、装飾枠7を固定して上扉4の外観を成す上扉枠6と、上扉枠6の内側に設けられる基体9と、基体9の正面側に配置される上パネル8とを備えている。上扉枠6は、中央よりも下側が前後に貫通する開口部61となっている枠本体60からなる枠部材である。基体9は、略中央部に、前後に貫通する開口部9Aが形成された板部材である。開口部9Aの両側には発光体が内蔵された発光表示部9Bが設けてあり、開口部9Aの下方には、7セグメント表示器等から成る表示部9Cが設けられている。上パネル8は、透明なアクリル板に種々の絵柄を印刷して成り、中央部に透明な可視部を設けて、図柄表示窓8Aを形成してある。基体9の正面側に上パネル8を固定し、上扉枠6に収納固定することにより、上パネル8が上扉枠6の開口部61を裏面側から塞ぐ。そして、上扉4を閉めた状態で、筐体2の内部に収納されているリールユニット200の回転リール10が、図柄表示窓8Aから視認できるようになっている。
【0021】
ここで、上扉枠6の枠本体60には、図4に示すように、開口部61の上側に、装飾枠7を固定するための装飾枠固定部62が設けられているとともに、開口部61の両側の脚部60Aには、サイドランプ固定部63が形成されている。そして、サイドランプ固定部63には、後述する拡散ランプユニット40が取り付けられている。なお、サイドランプ固定部63は、拡散ランプユニット40の一部を成すものとなっているが、これについては後述する。」
【0022】
さらに、枠本体70の背面側上部には、装飾枠7に搭載されている演出用デバイスの作動を制御するための表示制御基板を有する表示制御基板ユニット30が設けられている。表示制御基板ユニット30は、CPU、ROMなど種々の電子部品を装着した表示制御基板を、基板ケースに収納したものである。・・・
【0024】
(拡散ランプユニット40)
・・・装飾枠7の上部ランプ固定部72に配置される拡散ランプユニット40のLED基板41は、図5に示すように、表示制御基板ユニット30の前面に取り付いている。」

(ウ)「【0028】
(液晶ユニット80)
液晶ユニット80は、図9及び図11に示すように、液晶表示装置81を裏枠82及び前枠83の間に挟み、前枠83の正面側に配置した強化ガラス84を保持フック90で固定した構成となっている。液晶表示装置81は、液晶パネル81Aと駆動回路基板等を備えた市販の液晶モジュールである。裏枠82は、図11に示すように、液晶表示装置81を収納可能な箱形の枠であり、その背面には、液晶表示装置81の作動を制御するための液晶制御基板86が固定され、裏ケース85が取り付けられる。液晶制御基板86に設けられたチップには、CPU機能があってもよいし、単なるROMであってもよい。前枠83は、裏枠82に収納された液晶表示装置81の正面側に配置される中央が開口する枠体であり、この中央開口83Dから液晶パネル81Aの画面を視認できるようになっている。強化ガラス84は、前枠83の中央開口83Dを正面側から覆う透明な板ガラスであり、液晶パネル81Aを保護するためのものである。保持フック90は、ポリアセタール樹脂などの弾力性の高い素材によって形成されており、強化ガラス84の左右の縁部を挟持して押さえるためのものである。そして、裏枠82、前枠83、保持フック90は、固定ネジ87によって一体的に固定されるとともに、強化ガラス84は保持フック90によって液晶パネル81Aの前面に保持される。そして、裏枠82を装飾枠7の枠本体70の裏面に固定することにより、液晶ユニット固定部75から液晶パネル81Aが視認可能となる状態で、装飾枠7に装着されるようになっている。」

(エ)【図1】には、遊技機1としてのスロットマシンの外観斜視図が図示されており、装飾枠7および上パネル8が遊技機1の前面に取り付けられていることが図示されている。

(オ)【図5】には、装飾枠7の分解斜視図が図示されており、液晶ユニット80が装着されて装飾枠7の前面に強化ガラス84が位置していること、ならびに、LED基板41および表示制御基板ユニット30は、強化ガラス84より上部に位置していることが図示されている。

上記(ア)?(ウ)の記載事項および上記(エ)?(オ)の図示内容から、以下の事項がいえる。なお、(a)、(c)?(d)は、本件補正発明の構成A、C?Dに対応した事項を示している。

(a)上記(ア)の【0005】に「透明な保護パネル(強化ガラス84)」、上記(ウ)の【0028】に「強化ガラス84は、前枠83の中央開口83Dを正面側から覆う透明な板ガラスであり、液晶パネル81Aを保護するためのものである。・・・強化ガラス84は保持フック90によって液晶パネル81Aの前面に保持される。そして、裏枠82を装飾枠7の枠本体70の裏面に固定することにより、液晶ユニット固定部75から液晶パネル81Aが視認可能となる状態で、装飾枠7に装着されるようになっている。」と記載され、上記(オ)の【図5】に、装飾枠7の前面に強化ガラス84が位置していることが図示されているから、装飾枠7の前面に取り付けられた透明パネルであって、板ガラスからなる強化ガラス84が記載されているといえる。さらに、上記(エ)の【図1】に、装飾枠7および上パネル8が遊技機1の前面に取り付けられていることが図示されているから、装飾枠7の前面に取り付けられた上記強化ガラス84は遊技機1の前面に取り付けられているともいえる。
また、上記(イ)の【0020】に「上パネル8は、透明なアクリル板に種々の絵柄を印刷して成り、中央部に透明な可視部を設けて、図柄表示窓8Aを形成してある。」と記載され、上記(エ)の【図1】に、装飾枠7および上パネル8が遊技機1の前面に取り付けられていることが図示されているから、遊技機1の前面に取り付けられた透明パネルであって、アクリル板からなる上パネル8が記載されているといえる。
したがって、引用文献1には、遊技機1の前面に取り付けられた透明パネルとして、板ガラスからなる強化ガラス84と、アクリル板からなる上パネル8とを有していることが記載されているといえる。

(c)上記(ウ)の【0028】に「液晶ユニット80は、図9及び図11に示すように、液晶表示装置81を裏枠82及び前枠83の間に挟み、前枠83の正面側に配置した強化ガラス84を保持フック90で固定した構成となっている。液晶表示装置81は、液晶パネル81Aと駆動回路基板等を備えた市販の液晶モジュールである。裏枠82は、図11に示すように、液晶表示装置81を収納可能な箱形の枠であり、その背面には、液晶表示装置81の作動を制御するための液晶制御基板86が固定され、裏ケース85が取り付けられる。液晶制御基板86に設けられたチップには、CPU機能があってもよいし、単なるROMであってもよい。」と記載されているから、強化ガラス84は、液晶表示装置81を挟んで反対側に液晶制御基板86が備えられていることが記載されいるといえる。また、上記(イ)の【0020】に「上パネル8は、透明なアクリル板に種々の絵柄を印刷して成り、中央部に透明な可視部を設けて、図柄表示窓8Aを形成してある。基体9の正面側に上パネル8を固定し、上扉枠6に収納固定することにより、上パネル8が上扉枠6の開口部61を裏面側から塞ぐ。」、【0021】に「上扉枠6の枠本体60には、図4に示すように、開口部61の上側に、装飾枠7を固定するための装飾枠固定部62が設けられている」と記載され、(オ)の【図5】に、装飾枠7に液晶ユニット80が装着されることが図示されているから、上パネル8は液晶ユニット80が装着される装飾枠7よりも下方に位置して配置されることが記載されているといえる。これらのことから、引用文献1には、上パネル8よりも強化ガラス84の方が駆動回路基板または液晶制御基板86に近いことが記載されているといえる。
また、上記(イ)の【0022】に「枠本体70の背面側上部には、装飾枠7に搭載されている演出用デバイスの作動を制御するための表示制御基板を有する表示制御基板ユニット30が設けられている。表示制御基板ユニット30は、CPU、ROMなど種々の電子部品を装着した表示制御基板を、基板ケースに収納したものである。」、【0024】に「装飾枠7の上部ランプ固定部72に配置される拡散ランプユニット40のLED基板41は、図5に示すように、表示制御基板ユニット30の前面に取り付いている。」と記載され、上記(オ)の【図5】に、LED基板41および表示制御基板ユニット30は、強化ガラス84より上部に位置していることが図示されているから、引用文献1には、上パネル8よりも強化ガラス84の方が強化ガラス84より上部に位置しているLED基板41または表示制御基板に近いことも記載されているといえる。
したがって、引用文献1には、強化ガラス84は、駆動回路基板、液晶制御基板86、強化ガラス84より上部に位置しているLED基板41または表示制御基板のいずれかの基板との距離が上パネル8よりも短くされたことが記載されているといえる。

(d)上記(イ)の【0020】に「遊技機1」と記載されている。

したがって、上記(ア)?(ウ)の記載事項、上記(エ)?(オ)の図示内容および上記(a)、(c)?(d)の認定事項を総合すれば、引用文献1には、次の発明が記載されている(以下、「引用文献1発明」という。a、c?dは引用文献1発明を分説するため当審で付した。)。

「a 遊技機1の前面に取り付けられた透明パネルとして、板ガラスからなる強化ガラス84と、アクリル板からなる上パネル8とを有し、
c 強化ガラス84は、駆動回路基板、液晶制御基板86、強化ガラス84より上部に位置しているLED基板41または表示制御基板のいずれかの基板との距離が上パネル8よりも短くされた
d 遊技機1。」

(3)対比
本件補正発明と引用文献1発明とを対比する。対比の見出しとしての(a)、(c)?(d)は引用文献1発明の分説構成と対応させた。

(a)本願明細書の例えば【0050】に「曲げ剛性の高い素材の一例としては、強化ガラス素材を挙げることができる。また、曲げ剛性の低い素材の一例としては、合成樹脂を挙げることができる。合成樹脂としては、例えばアクリル素材やポリカーボネート素材を挙げることができる。」と記載されているように、一般にアクリルは強化ガラスよりも曲げ剛性が低い素材であり、また、本件補正発明の「第1素材」に強化ガラス素材が含まれ、「第2素材」にアクリル素材が含まれるから、引用文献1発明の「板ガラスからなる強化ガラス84」、「アクリル板からなる上パネル8」は、それぞれ本件補正発明の「第1素材による第1の透明パネル」、「前記第1素材よりも曲げ剛性が低い第2素材による第2の透明パネル」に相当する。
したがって、引用文献1発明の「遊技機1の前面に取り付けられた透明パネルとして、板ガラスからなる強化ガラス84と、アクリル板からなる上パネル8とを有」することは、本件補正発明の「遊技機前面に取り付けられた透明パネルとして、第1素材による第1の透明パネルと、前記第1素材よりも曲げ剛性が低い第2素材による第2の透明パネルを有」することに相当する。

(c)引用文献1発明の「駆動回路基板」、「液晶制御基板86」、「LED基板41」、「表示制御基板」は少なくとも熱を放出する部品であるといえるから、それぞれ本件補正発明の「発熱体」に相当する。
また、上記(a)で言及したように引用文献1発明の「強化ガラス84」、「上パネル8」は、それぞれ本件補正発明の「第1の透明パネル」、「第2の透明パネル」に相当する。
したがって、引用文献1発明の「強化ガラス84は、駆動回路基板、液晶制御基板86、強化ガラス84より上部に位置しているLED基板41または表示制御基板のいずれかの基板との距離が上パネル8よりも短くされた」ことと、本件補正発明の「前記第1の透明パネルと該第1の透明パネルに最も近い発熱体との距離は、前記第2の透明パネルと該第2の透明パネルに最も近い発熱体との距離よりも短くされた」こととは、「第1の透明パネルと発熱体との距離は、前記第2の透明パネルと発熱体との距離よりも短くされた」ことで共通する。

(d)引用文献1発明の「遊技機1」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)、(c)?(d)の検討より、本件補正発明と引用文献1発明とは、

「A 遊技機前面に取り付けられた透明パネルとして、第1素材による第1の透明パネルと、
前記第1素材よりも曲げ剛性が低い第2素材による第2の透明パネルを有し、
C’ 第1の透明パネルと発熱体との距離は、前記第2の透明パネルと発熱体との距離よりも短くされた
D 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前記第1の透明パネルおよび前記第2の透明パネルについて、本件補正発明は、「パネル面の面積が小さい方が前記第2の透明パネルで、パネル面の面積が大きい方が前記第1の透明パネルとされ」(構成B)るのに対して、引用文献1発明は、パネル面の面積の大小関係が限定されていない点。
[相違点2]
本件補正発明は、「第1の透明パネル」および「第2の透明パネル」と「発熱体」との「距離」が、「前記第1の透明パネルと該第1の透明パネルに最も近い発熱体との距離は、前記第2の透明パネルと該第2の透明パネルに最も近い発熱体との距離よりも短くされた」(構成C)のに対して、引用文献1発明は、そのような特定がなされていない点。

(4)判断
(ア)上記[相違点1]について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-307186号公報(以下、「引用文献2」という。)の【0018】に「ミニリール表示窓部13の上方には、透明液晶からなる20インチの大型の液晶表示装置11が設けられている。液晶表示装置11の表示画面には、演出画像などの種々の情報が表示される。」と記載され、また、【図1】にパチスロ機1の外観を示す正面図であって、ミニリール表示窓部13よりも液晶表示装置11が大きい構成が図示されているから、引用文献2には、液晶表示装置のパネル面の面積がリールの表示窓のパネル面の面積よりも大きい構成が記載されているといえる(以下、引用文献2の記載事項という)。
ここで、引用文献1発明と引用文献2の記載事項とはともに遊技機において液晶表示装置およびリールの表示窓を備える技術で共通している。
よって、引用文献1発明の液晶パネル81Aを保護するための強化ガラス84と回転リール10を覆う上パネル8とにおいて、引用文献2の記載事項である液晶表示装置のパネル面の面積がリールの表示窓のパネル面の面積よりも大きい構成を適用し、上記相違点1に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)上記[相違点2]について検討する。
発熱体の熱による発熱体の周囲の部品の変形や劣化を防ぐため、発熱体の周囲の部品を耐熱性を有する素材とすることは周知技術(必要であれば、特開2000-300717号公報の【0006】、特開平10-108939号公報の【0024】、実願昭62-199986(実開平01-104191号)のマイクロフィルムの第9頁第4-11行目の記載を参照)であり、また、強化ガラスはアクリルより耐熱性が高いことは技術常識(必要であれば、特開2006-130447号公報の【0039】、登録実用新案第3144818号公報の【0032】の記載を参照)である。
そうすると、引用文献1発明の駆動回路基板、液晶制御基板、LED基板、表示制御基板も発熱体であるから、該基板からの熱による基板周囲の部品の変形や劣化を防ぐため、透明パネル等の各部品の素材を選択する際、上記周知技術および上記技術常識を適用して、上記基板に対して最も近い位置関係となる透明パネルの素材として耐熱性が相対的に高い強化ガラスを選択することは、当業者が適宜なし得た事項である。
なお、発熱体との距離に対して透明パネルの素材を曲げ剛性の関係のみで限定していても、耐熱性の性質ではなんら限定されていないことから、例えば、発熱体との距離が短くなる透明パネルが、曲げ剛性が相対的に高くても耐熱性が低い素材も含まれることになるので、本願明細書の【0140】に記載される「液晶保護パネル25は回胴保護パネル26に比べて耐熱性の高い素材を適用する。これにより、熱による透明パネル(液晶保護パネル25)の変形等を防止することができる。」という効果は必ずしも得られるものではないことは明らかであるので、本願請求項1に記載される構成に限定したことによる特別有利な効果も認められない。

(ウ)まとめ
そうすると、引用文献1発明において、引用文献2の記載事項、上記周知技術および上記技術常識を採用して、上記相違点1-2に係る本件補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)審判請求人の主張について
平成29年7月24日付け審判請求書において請求人は
「上パネル8に最も近い発熱体の情報も開示されていません。従って、最も近い発熱体との距離に応じて透明パネルの素材を選択していることは記載も示唆もされておらず、本願発明の構成を導くことは困難であります。
また、仮に保護パネル84に最も近い発熱体が液晶表示装置81であり、上パネル8に最も近い発熱体がLED基盤41であると図面等から推測したとしても、それぞれの距離の比較については一切の記載も示唆もないため、本願発明の構成を導くことは困難であります。
引用文献2についても、透明パネルそれぞれに最も近い発熱体についての記載がありません。また、透明パネルと発熱体との距離についても記載及び示唆がありません。従って、当業者といえども引用文献2の記載から本願発明の構成を導くことは困難であります。
また、引用文献1と引用文献2を組み合わせたとしても、本願構成を導くことは困難であり、本願発明に想到することは容易ではありません。」
と主張している。

請求人の上記主張について検討すると、上記(4)で検討したとおり、引用文献1発明においても、発熱体である基板からの熱による基板周囲の部品の変形や劣化を防ぐために、透明パネル等の各部品の素材を選択する際に上記周知技術および上記技術常識を適用して、上記基板に対して最も近い位置関係となる透明パネルの素材として耐熱性が相対的に高い強化ガラスを選択することは、当業者が適宜なし得た事項であるとともに、上記(4)で言及したとおり、本願請求項1に記載される構成に限定していたとしても特別有利な効果を奏するものではないことが明らかであるから、該主張は採用できない。

(6)小括
本件補正発明は、引用文献1発明、引用文献2の記載事項、上記周知技術および上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正発明は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成28年11月7日付けの手続補正書により補正された、上記「第2 1.本件補正の概要」において示した次のとおりものである(A?Dは本願発明を分説するため当審で付した。)。

「A 遊技機前面に取り付けられた透明パネルとして、第1素材による第1の透明パネルと、
前記第1素材よりも曲げ剛性が低い第2素材による第2の透明パネルを有し、
B 前記第1の透明パネルと前記第2の透明パネルについては、パネル面の面積が小さい方が前記第2の透明パネルで、パネル面の面積が大きい方が前記第1の透明パネルとされ、
C 前記第1の透明パネルは、発熱体との距離が前記第2の透明パネルよりも短くされた
D 遊技機。」

1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-200498号公報である引用文献1の記載事項は、上記「第2 3.(2)」において示したとおりのものである。

2.対比・判断
本願発明と引用文献1発明との対比でも、(a)、(d)については上記「第2 3.(3)対比」において示した(a)、(d)のとおりであるから、ここでは(c)の検討をする。

(c)上記「第2 3.(3)対比」の(c)で言及したように引用文献1発明の「駆動回路基板」、「液晶制御基板86」、「LED基板41」、「表示制御基板」は、それぞれ本願発明の「発熱体」に相当する。
また、上記「第2 3.(3)対比」の(a)で言及したように引用文献1発明の「強化ガラス84」、「上パネル8」は、それぞれ本願発明の「第1の透明パネル」、「第2の透明パネル」に相当する。
したがって、引用文献1発明の「強化ガラス84は、駆動回路基板、液晶制御基板86、強化ガラス84より上部に位置しているLED基板41または表示制御基板のいずれかの基板との距離が上パネル8よりも短くされた」ことは、本願発明の「前記第1の透明パネルは、発熱体との距離が前記第2の透明パネルよりも短くされた」ことに相当する。

以上(a)、(c)?(d)の検討より、本願発明と引用文献1発明とは、

「A 遊技機前面に取り付けられた透明パネルとして、第1素材による第1の透明パネルと、
前記第1素材よりも溶融粘度が低い第2素材による第2の透明パネルを有し、
C 前記第1の透明パネルは、発熱体との距離が前記第2の透明パネルよりも短くされた
D 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前記第1の透明パネルおよび前記第2の透明パネルについて、本願発明は、「パネル面の面積が小さい方が前記第2の透明パネルで、パネル面の面積が大きい方が前記第1の透明パネルとされ」(構成B)るのに対して、引用文献1発明は、パネル面の面積の大小関係が限定されていない点。

そして、該[相違点1]については上記「第2 3.(4)判断」の(ア)に記載したとおり、引用文献1発明の液晶パネル81Aを保護するための強化ガラス84と回転リール10を覆う上パネル8とにおいて、引用文献2の記載事項である液晶表示装置のパネル面の面積がリールの表示窓のパネル面の面積よりも大きい構成を適用し、上記相違点1に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そうすると、引用文献1発明において、引用文献2の記載事項を適用して、上記相違点1に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-01 
結審通知日 2018-03-13 
審決日 2018-03-26 
出願番号 特願2015-248729(P2015-248729)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 川崎 優
青木 洋平
発明の名称 遊技機  
代理人 中川 裕人  
代理人 岩田 雅信  

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