• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1339973
審判番号 不服2017-13323  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-05-10 
事件の表示 特願2013- 27171「画像表示装置、画像表示方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日出願公開、特開2014-157428〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月14日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月 2日付け:拒絶理由通知書
平成29年 1月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 6月16日付け:拒絶査定
平成29年 9月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年9月8日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年9月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項17の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。

「生体が有する対象物を検出して表示する画像表示装置における画像表示方法であって、
生体の画像を取得する取得ステップと、
前記生体の画像を複数の領域に分割する領域分割ステップと、
前記複数の領域のそれぞれにおいて対象物を検出する対象物検出ステップと、
前記複数の領域のそれぞれにおける前記対象物の量である検出量を算出する算出ステップと、
前記検出量の大きさに応じた図形を、前記複数の領域のそれぞれに対応する位置に配置したマップ画像を作成するマップ作成ステップと、
前記マップ画像を表示する表示ステップとを含み、
前記マップ作成ステップでは、前記複数の領域のそれぞれごとに、当該領域に対応する位置に、前記検出量が大きいほど、より濃い色の図形を配置すること、又は、より大きな密度で図形を配置することで、前記マップ画像を作成する
画像表示方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年1月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項19の記載は次のとおりである。

「生体が有する対象物を検出して表示する画像表示装置における画像表示方法であって、
生体の画像を取得する取得ステップと、
前記生体の画像を複数の領域に分割する領域分割ステップと、
前記複数の領域のそれぞれにおいて対象物を検出する対象物検出ステップと、
前記複数の領域のそれぞれにおける前記対象物の量である検出量を算出する算出ステップと、
前記検出量の大きさに応じた図形を、前記複数の領域のそれぞれに対応する位置に配置したマップ画像を作成するマップ作成ステップと、
前記マップ画像を表示する表示ステップとを含む
画像表示方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項19に記載した発明を特定するために必要な事項である「マップ作成ステップ」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項19に記載された発明と補正後の請求項17に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項17に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりであり、下記のとおり説明のために当審において(A)ないし(G)の符号を付して再掲する(以下、構成Aないし構成Gと称する。)。

〔本件補正発明〕
(A)生体が有する対象物を検出して表示する画像表示装置における画像表示方法であって、
(B)生体の画像を取得する取得ステップと、
(C)前記生体の画像を複数の領域に分割する領域分割ステップと、
(D)前記複数の領域のそれぞれにおいて対象物を検出する対象物検出ステップと、
(E)前記複数の領域のそれぞれにおける前記対象物の量である検出量を算出する算出ステップと、
(F1)前記検出量の大きさに応じた図形を、前記複数の領域のそれぞれに対応する位置に配置したマップ画像を作成するマップ作成ステップと、
(G)前記マップ画像を表示する表示ステップとを含み、
(F2)前記マップ作成ステップでは、前記複数の領域のそれぞれごとに、当該領域に対応する位置に、前記検出量が大きいほど、より濃い色の図形を配置すること、又は、より大きな密度で図形を配置することで、前記マップ画像を作成する
(A)画像表示方法。

(2)引用文献、引用発明
(2-1)引用文献の記載
原審の拒絶理由に引用された、特開2003-187251号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「美容分析における特徴抽出」(発明の名称)として、図面とともに以下の記載がなされている(下線は強調のため当審で付与した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、美容分析における特徴抽出を伴う方法、組み合わせ、装置、システム、および製造品に関する。 本発明は、しわ、そばかす、割れ爪、爪の変色、および他の状態のような、肌、毛髪、および爪の状態を、分析のために、画像から抽出し、分離するのに特に有益であり得る。
(略)
【0013】本発明の一実施形態は、肌の分析を実行する方法を含み得る。本発明によると、肌の分析は、肌状態の同定および/または定量化を含み得る。肌状態の例は、肌のきめ、弾力性、乾燥、セルライトの量、発汗、老化、しわ、黒色腫、脱皮、剥離、色の均一性、微小循環、てかり、柔らかさ、滑らかさ、保水性、皮脂生成、清潔さ、刺激性、赤色化、血管運動、血管拡張、血管収縮、色素沈着、そばかす、または肌に影響を及ぼす他のいかなる可視的状態も含み得る。
【0014】本発明による実施例はまた、対象者の顔面の肌の少なくとも一部の画像の受信も含み得る。本発明によると、画像は、対象者の顔面全体または対象者の顔面の一部の画像を含み得る。画像には対象者の顔面の肌の精密な写真が含まれてよい、または画像には対象者の顔面の肌の凹凸をマッピングした立体的なプロットが含まれてよい。図1のフローチャートに示したように、顔面の肌の画像を、多数のメカニズムのうちの1つを介してブロック50で受信できる。最も広い意味では、顔面の画像を取得するメカニズムは、必ずしも本発明の一部分である必要がなく、画像は、ウェブカメラ、フィルムカメラ、アナログカメラ、ディジタルカメラ、スキャナ、超音波撮像装置、または対象者の顔つきの表示を獲得するための他のいかなるメカニズムでも取得することができる。画像は、電子的または物理的に受信することができる。顔面の画像を受信するための電子的な手段は、例えば、ネットワークを介しての受信、記憶媒体への受信、ファクシミリ受信、または物理的な形態での受信を含む。
(略)
【0016】また本発明によれば、方法は、画像内で少なくとも1つの肌状態の同定を含み得る。この段階の実施例を図1のブロック52に図示した。肌状態は前述の1つ以上の状態であり得、画像処理技術で同定することができる。画像処理技術は、画像内で肌状態の1つ以上の発現を同定するように設計されたソフトウェアプログラム、コンピュータ、特定用途向け集積回路、電子装置、および/またはプロセッサを含み得る。画像処理分野の当業者に知られている多様な画像処理アルゴリズムを、顔面画像内で肌状態の1つ以上の発現を同定するために用いることができる。これらの技術は、例えば、図2に例示されているように、顔面の画像を処理し、分割された画像200を生成するソフトウェアを使用し得る。分割された画像200では、顔面の画像をどのように構成要素部分204に分割することができるかを示すために、破線202が用いられている。当業者に知られている画像認識技術は、しわ206および208のような状態を同定するために、構成要素部分204それぞれを分析することができる。
【0017】しわの同定に関して画像処理がどのように機能するかを視覚的に示す例を図3Aおよび図3Bに示す。図3Aは、対象者302の最初の顔面の画像300を示す。図示されているように、画像は、対象者の右頬領域306と左頬領域308、および対象者の右目領域307と左目領域309のしわを表している。図3Bでは、画像300は処理済みで、しわ306-309を線で同定し、この線の形状により同定したしわの輪郭を表すことができ、この線の強さによりしわの深さを表すことができる。図3Bでは同定を図示したが、最も広義には、本発明では図画による表示は必ずしも必要であるというわけではない。どちらかといえば、同定はプロセッサ内で行われる。そのようなプロセッサの例として、コンピュータ、特定用途向け集積回路、電子装置、および前述の方法で同定作業を行う任意の装置が挙げられる。」

イ.「【0024】図5は、本発明を実行可能な環境500を例示する。対象者502は、中央処理ユニット506に接続しているウェブカメラ504のようなカメラを用いて顔面の画像を自分で取得することができる。内部連結されている表示装置508により、対象者は取得した画像を見ることができる。この「対象者側」または「顧客側」の構造は、ホームコンピューティングシステム内で具体化されてもよいし、キオスクや移動通信装置に配置されてもよいし、サロン、事業所、または小売店の専門家が実行する処理システムの一部であってもよい。画像を取得するシステムを、ネットワーク512を介して画像処理装置510に接続することができる。ネットワークは上述の例を含む。画像処理機能は、全て画像処理装置510内で達成されてよく、または中央処理ユニット506内で部分的に達成されてもよい。あるいは、図6に示されているように、本発明はネットワークに繋がっていないシステム600で行うこともができる。
【0025】システム600は(ウェブカメラ、ディジタルカメラ等のような)画像取得装置602、コンピュータ604、ホストサーバ606、検索可能なデータベース608、および3本の通信リンク610-612を含み得る。通信リンクは、配線で接続されていてよく、ワイヤレスでもよく、または少なくとも1つのネットワークを含んでいてもよい。画像情報を得るために、対象者(または対象者の命令)が画像取得装置602を操作してもよい。コンピュータ604によって表示された指示により、画像取得プロセスが容易になってもよい。次いで、画像情報は、第1の通信リンク610を用いてコンピュータ604に中継され得る。この中継はディジタル形態で行われてもよく、アナログ形態で行われてもよい。その後、対象者は分析のためにコンピュータに肌の状態を示すことができる。あるいは、コンピュータが自動的に、所定のあるいは規定の重症度を越える状態を同定してもよい。次に、特定の肌状態を抽出し定量化するために、コンピュータ604は画像を処理することができる。抽出、処理、そして定量化の結果は、その後、1つの形態または異なる形態で対象者に表示され得る。表示された結果は、図11から図13に示したような例示的な画像1100、1200および1300のような、対象者に対する特徴の表示を含み得て、および/または図4Aから図4Cに示したような統計的およびグラフによる表示を含み得る。結果はまた、対象者および他の人々の美容分析から計算された人口統計学的な統計値を含んでもよい。」

ウ.「【0027】本発明の他の実施形態は、図7のフローチャート700で示された肌分析を行うための方法を含み得る。図7の段階702では、センサー情報を受信する。センサー情報は、対象者の特徴(例えば、身体的な、生理学的な、生物学的な、および審美的な)を特定する任意の情報でよい。前述したように、センサー情報は、従来の画像でよいが、本発明では他の情報源からのセンサー情報を用いることができる。例えば、図8Aの例示的な画像800を、図8Bの超音波による立体的なプロット802に対比させ、センサー情報として段階702で受信することができる。画像800は対象者の顔面の肌についての情報を含み、顔面の肌の一部は超音波撮像装置でスキャンされていてもよい。図8Aの破線で囲まれた区画802は、スキャンされ得る部分のうちの1つを表している。図8Bの立体的なプロット802は、破線で囲まれた区画802で表された顔面の肌の部分の詳細な表面の写像である。
【0028】図7の段階702でセンサー情報を受信した後、段階704で、美容分析のために、身体外部の状態の好ましい状態および好ましくない状態を同定するように対象者は要求され得る。美容分析で利用可能な好ましい状態および好ましくない状態は、肌状態を含み得る。前述のように、当該技術の当業者に知られており且つ本発明の特徴および原理に適合する様々なアルゴリズムを、状態を反映する特徴を抽出するために利用することができる。図9および図10は、それぞれ、てかりおよびしわの特徴を抽出するための2つの例示的なアルゴリズムを示している。この例示的なアルゴリズムについての詳細な説明はこの後に述べる。
【0029】図7の段階706で特徴を抽出した後、段階708でその特徴を処理することができる。処理は特徴の表示を生成すること、およびその特徴の表示を画像800上に重ね合わせることを含み得る。例えば、図11および図12は、それぞれ、本発明の特徴および原理による、第1および第2の特徴の表示を例示している。図11において、処理された画像1100は、段階706の特徴抽出の間に決定された、高い反射率指数を有する対象者の顔面の肌の部分を印す影付き領域1102を含んでいる。反射率指数は、てかりに関する肌状態を表す特徴である。高い反射率指数は、てかりが過度であることを示す。図12において、第2の処理された画像1200は、段階706の特徴抽出の間に決定された、非常なしわの深さを有する対象者の顔面の肌の部分を印す線1202を含んでいる。しわの深さは、しわに関する肌状態を表す特徴である。非常なしわの深さは、可視的なしわが過度にあることを示す。上記では、例示した特徴の表示のように、影付き領域1102および線1202を使用したが、任意の印または可視的な手がかり、およびそれらの変形を代わりに使用してもよい。変形は、例えば、印また可視的な指標の色、重度、頻度および形状を含む。」

エ.「【0035】図9は、本発明の原理による特徴抽出アルゴリズム900を例示している。アルゴリズム900は反射率指数を画像120から抽出する。段階902では、当該分野で知られている技術を用いて、画像800で肌状態を同定する。当業者であれば理解されるように、同じく当該分野で知られている方法を用いて、段階904で構成要素部分それぞれについて平均反射率指数が測定される。
【0036】段階904での平均反射率指数の測定のための例示的な方法は、分割された画像内で、最も明るいおよび最も暗い構成要素部分を決定することを含み得る。最も明るいおよび最も暗い構成要素部分には、それぞれ1および0の反射率指数を割り当てることができる。残りの構成要素部分は、最も明るいおよび最も暗い構成要素部分に関連して、残りの構成要素部分の明度に基づく1と0の間の反射率指数を割り当てることができる。段階906で、反射率分布を生成するために、反射率指数を並び替えることができる。
【0037】図15は、本発明の特徴および原理による反射率分布1500を例示している。図15は、所定の指数範囲内にある画像の構成要素部分の割合を示している。横軸1502は縦棒1506に対する反射率指数の範囲を示す。縦軸1504は、縦棒1506に対応する反射率範囲内にある反射率指数を有する構成要素部分の割合を示す。例えば、第1の縦棒1508は、画像の構成要素部分の6%が、0から0.1の範囲の反射率指数を有することを示す。第2の縦棒1510は、構成要素部分の6%が、0.1から0.2の範囲の反射率指数を有することを示す。
【0038】反射率指数の分布1500に関する統計値は、段階908で計算され得る。例えば対象者の顔面の肌の平均的なてかり度を表すために、総平均的な反射率指数を計算することができる。対象者の顔面の肌のてかりの多様性を表すために、反射率の標準偏差を計算することができる。段階910で、高い反射率指数を有する構成要素部分を抜粋するために、反射率指数を閾値と比較することにより、過度のてかりを有する分割画像領域を決定することができる。例えば、0.8より大きい反射率指数を有する構成要素部分はラベリングすることができる。図11に示されているように、ラベリングには、過度のてかりを有する領域を示すために構成要素部分に影を付けることが含まれてよい。」

(2-2)引用発明
(2-2-1)上記ア.によれば、引用文献1には、「対象者の顔面の肌状態を分析すること」が記載され、分析する肌状態には「てかりに関する肌状態」が含まれることと、「ウェブカメラで前記対象者の顔面の画像を取得すること」と、「前記顔面の画像を処理し、分割された画像を生成すること」と、「前記分割された画像では、前記顔面の画像を構成要素部分に分割すること」と、「顔面の画像の構成要素部分それぞれを分析すること」が記載されている。

(2-2-2)上記イ.によれば、引用文献1には、分析を行う環境には「表示装置」が備わり、コンピュータが「画像」を処理して「特定の肌状態を抽出し定量化すること」と、図11の画像1100のような「特徴の画像」を「表示すること」が記載されている。
ここで、特定の「肌状態」は「てかりに関する肌状態」を含むから、引用文献1には、「画像からてかりに関する肌状態を特徴抽出し特徴を定量化すること」と、「特徴の画像を表示装置に表示すること」が記載されているといえる。

(2-2-3)上記ウ.によれば、引用文献1には、「反射率指数は、てかりに関する肌状態を表す特徴である」こと、「高い反射率指数は、てかりが過度であることを示す」ことが記載され、上記エ.によれば、引用文献1には、反射率指数は、「構成要素部分それぞれについて平均反射率指数を測定すること」により求めることと、当該平均反射率指数の測定は、「分割された画像内で、最も明るいおよび最も暗い構成要素部分を決定することを含み、最も明るいおよび最も暗い前記構成要素部分には、それぞれ1および0の反射率指数を割り当て、残りの構成要素部分は、最も明るいおよび最も暗い構成要素部分に関連して、残りの構成要素部分の明度に基づく1と0の間の反射率指数を割り当てること」により行うことと、「高い反射率指数を有する前記構成要素部分を抜粋するために、反射率指数を閾値と比較することにより、過度のてかりを有する分割画像領域を決定することと、前記過度のてかりを有する領域を示すために構成要素部分に影を付けること」により、特徴の画像1100を生成することが記載されている。

以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成aないし構成gと称する。

(引用発明)
(a)対象者の顔面のてかりに関する肌状態を分析して特徴の画像を表示装置に表示する方法であって、
(b)ウェブカメラで前記対象者の顔面の画像を取得することと、
(c)前記顔面の画像を処理し、分割された画像を生成することと、前記分割された画像では、前記顔面の画像を構成要素部分に分割することと、
(d)前記顔面の画像を構成要素部分それぞれを分析することと、前記分析することは、前記顔面の画像からてかりに関する肌状態を特徴抽出し特徴を定量化することであり、
(e)前記特徴を定量化することは、前記対象者の顔面の肌状態であるてかりを表す特徴を抽出することであって、前記構成要素部分それぞれについて平均反射率指数を測定することと、当該測定することは、前記分割された画像内で、最も明るいおよび最も暗い構成要素部分を決定することを含み、最も明るいおよび最も暗い前記構成要素部分には、それぞれ1および0の反射率指数を割り当て、残りの構成要素部分は、最も明るいおよび最も暗い構成要素部分に関連して、残りの構成要素部分の明度に基づく1と0の間の反射率指数を割り当てることであり、
(f)高い反射率指数を有する前記構成要素部分を抜粋するために、反射率指数を閾値と比較することにより、過度のてかりを有する分割画像領域を決定することと、前記過度のてかりを有する領域を示すために構成要素部分に影を付けることで前記特徴の画像を生成することと、
(g)前記特徴の画像を前記表示装置に表示することと、
(a)を含む方法。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(3-1)本件補正発明の構成Bと、引用発明の構成bとの対比
引用発明において、ウエブカメラにより取得する「対象者の顔面の画像」は、本件補正発明の「生体の画像」であるといえるから、引用発明の構成bは、本件補正発明の構成Bと一致する。

(3-2)本件補正発明の構成Cと、引用発明の構成cとの対比
引用発明の「顔面の画像を処理し、分割された画像を生成することと、前記分割された画像では、前記顔面の画像を構成要素部分に分割すること」は、本件補正発明において、画像を「複数の領域に分割する」ことに相当するから、引用発明の構成cは、本件補正発明の構成Cと一致する。

(3-3)本件補正発明の構成D、Eと、引用発明の構成d、eとの対比
本件補正発明における「対象物」は、請求項には具体的に特定されていないが、本件出願の明細書の段落【0049】には、「シミ、しわ、小皺、そばかす、メラニン、黒子、にきび、水分および油分のうちの少なくとも1つ」と記載されている。
一方、引用発明において分析する肌状態の「てかり」は、肌表面の油分と水分のバランスにおいて、油分量が多い状態において生じる現象であり、油分量が多いほど、肌のてかりが大きく現れることは、広く知られた常識的事項であるから、引用発明において、肌のてかりを表す特徴として抽出される「反射率指数」の大きさは、肌表面で検出される油分量の多さを示すものといえる。
してみれば、引用発明の構成d、eの処理の結果として得られる反射率指数は、肌表面の油分を検出して、その量の多さを算出したものということができるから、引用発明の構成dとeとからなる処理は、本件補正発明の構成DとEとからなる処理に相当するといえる。
したがって、引用発明の構成d及びeは、本件補正発明の構成D及びEと一致する。

(3-4)本件補正発明の構成F1、F2、Gと、引用発明の構成f、gとの対比
引用発明の構成fにより生成する「過度のてかりを有する領域を示すために構成要素部分に影を付け」た「画像」は、てかりの程度、すなわち、油分量の大きさに応じた画像であるから、本件補正発明の「検出量の大きさに応じた画像」に相当するといえる。
してみれば、引用発明の構成fと本件補正発明の構成F1及びF2とは、「検出量の大きさに応じた画像を作成する画像作成ステップ」である点で共通し、引用発明の構成gと本件補正発明の構成Gとは、作成した「画像を表示するステップ」である点で共通するといえる。
ただし、画像作成ステップが作成し、表示ステップが表示する「画像」が、本件補正発明は、「複数の領域のそれぞれごとに、当該領域に対応する位置に、前記検出量が大きいほど、より濃い色の図形を配置すること、又は、より大きな密度で図形を配置すること」で作成される、「複数の領域のそれぞれに対応する位置に図形を配置したマップ画像」であるのに対し、引用発明は、「過度のてかりを有する領域を示すために構成要素部分に影を付け」た画像である点で相違する。

(3-5)本件補正発明の構成Aと、引用発明の構成aとの対比
上記(3-3)及び(3-4)における検討を踏まえると、引用発明の構成aの「対象者の顔面の肌状態のてかりを分析して特徴の画像を表示装置に表示する方法」は、本件補正発明の構成Aの「生体が有する対象物を検出して表示する画像表示装置における画像表示方法」に相当するといえる。
したがって、引用発明の構成aは、本件補正発明の構成Aと一致する。

(3-6)一致点、相違点
したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
生体が有する対象物を検出して表示する画像表示装置における画像表示方法であって、
生体の画像を取得する取得ステップと、
前記生体の画像を複数の領域に分割する領域分割ステップと、
前記複数の領域のそれぞれにおいて対象物を検出する対象物検出ステップと、
前記複数の領域のそれぞれにおける前記対象物の量である検出量を算出する算出ステップと、
検出量の大きさに応じた画像を作成する画像作成ステップと、
前記画像を表示する表示ステップとを含む、
画像表示方法。

(相違点)
画像作成ステップが作成し、表示ステップが表示する「画像」が、本件補正発明は、「複数の領域のそれぞれごとに、当該領域に対応する位置に、前記検出量が大きいほど、より濃い色の図形を配置すること、又は、より大きな密度で図形を配置すること」で作成される、「複数の領域のそれぞれに対応する位置に図形を配置したマップ画像」であるのに対し、引用発明は、「過度のてかりを有する領域を示すために構成要素部分に影を付け」た画像である点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
例えば、人口統計データ等のGIS(地理的情報システム)や各種の気象関連図に見られるように、領域によって異なる大きさのデータを表現する手法として、データの大きさの基準とする閾値を複数設定し、領域毎のデータの大きさに基づいて、当該閾値により定まる範囲に応じて予め定めた色を有する図形(矩形など)を、当該領域に対応する位置に配置し、マップ画像として表現することは、具体例を示すまでもなく、広く知られた手法であり、その色を、データが大きいほど濃い色となるように定めることも、普通に採用される周知技術であるといえる。
ここで、引用発明の反射率指数は、顔面の画像を分割した構成要素部分に対して1から0の範囲の数値として割り当てられているから、顔面の領域によって異なる大きさのデータであるといえる。
また、引用文献1の図15及び段落【0037】には、反射率指数の分布が例示されるとともに、同段落【0017】には、「線の強さによりしわの深さを表す」との記載があることや、同段落【0029】には、「例示した特徴の表示のように、影付き領域1102および線1202を使用したが、任意の印または可視的な手がかり、およびそれらの変形を代わりに使用してもよい。変形は、例えば、印また可視的な指標の色、重度、頻度および形状を含む。」との記載があることから、引用文献1には、顔面の肌の状態について、過度な状態にある部分領域を特定して表示することに加えて、状態の重度について表示させることも示唆されているといえる。
してみれば、引用発明において、てかりが過度であるか否かの基準とする一つの閾値を用いて、過度にてかりを有する分割画像領域のみに影を付けて表示する構成に代えて、上記した周知技術を採用し、反射率指数の大きさの基準とする閾値を複数設定し、領域毎に決定した反射率指数に基づいて、当該閾値により定まる範囲に応じて、反射率指数が大きい領域には、濃い色の図形を配置し、小さい領域には、薄い色の図形を配置することにより、顔面の領域毎の肌のてかりの重度を表示する構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
そして、本件補正発明の作用、効果も、引用発明及び引用文献1の記載ならびに周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。
よって、引用発明において、上記相違点に係る本件補正発明の構成を得ることは、引用文献1の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1の記載ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年9月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成29年1月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項19に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項19に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2003-187251号公報
引用文献2.特開2009-213751号公報
引用文献3.特開2006-53859号公報
引用文献4.特開2004-265406号公報
引用文献5.特開2002-200050号公報
引用文献6.特開2004-209227号公報

3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項ならびに引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2にて検討した本件補正発明から、「マップ作成ステップ」についての限定事項である、「前記複数の領域のそれぞれごとに、当該領域に対応する位置に、前記検出量が大きいほど、より濃い色の図形を配置すること、又は、より大きな密度で図形を配置することで、前記マップ画像を作成する」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1の記載ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献1の記載ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-02 
結審通知日 2018-03-06 
審決日 2018-03-23 
出願番号 特願2013-27171(P2013-27171)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 篠原 功一
渡辺 努
発明の名称 画像表示装置、画像表示方法、及び、プログラム  
代理人 道坂 伸一  
代理人 新居 広守  
代理人 寺谷 英作  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ