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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1340003
審判番号 不服2017-2677  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-24 
確定日 2018-05-09 
事件の表示 特願2014-510346「ミクロ構造化光学フィルムに適したベンジル(メタ)アクリレートモノマー」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日国際公開、WO2012/158317、平成26年 7月 7日国内公表、特表2014-516094〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月25日(パリ条約による優先権主張 2011年5月13日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月26日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年10月20日付けで拒絶査定がされ、それに対して、平成29年2月24日に拒絶査定不服審判請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年4月12日付けで前置報告がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年2月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
(なお、平成29年2月24日に提出された手続補正書による補正は、請求項4についてのものであって、請求項9については、拒絶査定時の請求項9である、平成28年7月26日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された請求項9と同じであり、審判請求時には補正はされていない。請求項9は、国際出願時の請求項18として当初から独立請求項として存在していたが、平成27年3月26日に提出された手続補正書により、独立請求項である請求項9に変更され、その後、平成28年1月21日付けの拒絶理由に対して同年7月26日に提出された手続補正書により、ナノ粒子及び第1のモノマーの含有割合が限定されて、以下のとおりのものとなった。)

「重合性樹脂組成物であって、
ナノ粒子を10重量%?70重量%と、
少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む第1のモノマーを、最大で30重量%までと、
構造式
【化4】

(式中、少なくとも1つのR1は芳香族置換基を含み、
tが、1?4の整数であり、
R2は水素又はメチルである)を有する、少なくとも1種の第2の(メタ)アクリレートモノマーと、
を含有する、重合性樹脂組成物。」


第3 原査定の理由
原査定の拒絶理由の概要は、本願請求項1ないし9に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

第4 特許法第29条第2項(進歩性)
1.引用例の記載
本願の優先日前に頒布された下記の刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付加した。

(1)国際公開第2010/113600号(原査定で引用された引用文献1と同じ。以下、「引用例1」という。)

(a1)請求の範囲
「請求の範囲
[請求項1]
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体。
[化1]

(但し、Xで表される基は、下記式(2)?(7)で表される何れかの基であり、
1)Xで表される基が、下記式(2)?(5)で表される何れかの基である場合には、
[化2]


R_(1)及びR_(2)で表される基は各々独立に置換基を有してもよいベンゼン環を有する基、nは1?4の整数を表し、
2)Xで表される基が、下記式(6)及び(7)で表される何れかの基である場合には、
[化3]

R_(1)及びR_(2)は、各々独立に炭素数1?4の低級アルキル基又は置換基を有してもよいベンゼン環を有する基から任意に選ばれる基であって、R_(1)及びR_(2)のうち少なくとも一つは置換基を有してもよいベンゼン環を有する基、R_(3)は炭素数1?4の低級アルキル基、nは1?4の整数を表す。)
・・・
[請求項4]
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体が、一般式(8)?(13)の何れかである請求項2に記載の(メタ)アクリル酸エステル誘導体。
[化4]

(但し、mは1又は2の整数を表す。)
・・・
[請求項6]
請求項1?5の何れかに記載の(メタ)アクリル酸エステル誘導体を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
[請求項7]
請求項6に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる光学部材。
[請求項8]
前記活性エネルギー線が紫外線である請求項7に記載の光学部材。」

(a2)[0001]?[0013]
「[0001]
本発明は、光学材料として利用が可能な新規(メタ)アクリル酸エステル誘導体に関する。
背景技術
[0002]
現在、液晶テレビ、ノートパソコン、カーナビ、携帯電話、携帯ゲーム機などの液晶表示パネルの輝度向上を目的とした集光フィルム(プリズムシート)においては、液晶表示素子の小型化、高輝度化、高耐光性が要求されている。特に高輝度化のためには、プリズムシートの高屈折率化が不可欠である。
しかしながら、光学用樹脂は一般に高粘度又は固体であることが多く、溶剤又は反応性希釈剤で希釈して使用されているのが現状である。現在使用されている反応性希釈剤としては、フェニルチオエチルアクリレート(PTEA)、O-フェニルフェノキシエチルアクリレート(OPPEA)、ナフチルチオエチルアクリレート(NTEA)がある。PTEAは硫黄を含有しているため、高屈折率かつ低粘度ではあるが、耐光性が悪く、臭気が強いため、作業性が悪く好ましくない。
一方、上記OPPEA、NTEAは高屈折率であるが、高粘度であるため、配合物の粘度が高くなり、作業性が悪く好ましくない。
そこで、光学用樹脂として高屈折率を保ちつつ、賦形に最適な粘度に調整できる反応性希釈剤として、高屈折率でありかつ低粘度な(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の重合性モノマーが待望されていた。
・・・
[0004]
・・・
以上のように、現行の反応性希釈剤に対する要求性能は、高屈折率(例えば、n>1.55)、低粘度(例えば、100mPa・s以下)、高耐光性(例えば、1000hでΔY<10)、高希釈能、高光透過性、高UV硬化性であるが、これまでのところこれらの要求性能を満たす光学材料用として用いることが可能な(メタ)アクリル酸エステル誘導体は得られていないのが現状である。
・・・
[0006]
本発明の課題は、その硬化物が高屈折率であって、光学材料として利用が可能な低粘性の新規(メタ)アクリル酸エステル誘導体を提供することである。
・・・
[0013]
・・・即ち、本発明では、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体は低粘性であり、当該(メタ)アクリル酸エステル誘導体を用いた硬化物は高屈折率であり、上記課題を解決する。」

(a3)[0042]
「[0042]
本発明の樹脂組成物は、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体及びそれ以外の不飽和基含有化合物を含むことを特徴とする。(メタ)アクリル酸エステル誘導体成分以外の不飽和基含有化合物としては、例えば、反応性単量体や反応性オリゴマーがあげられ、(メタ)アクリレート系の反応性単量体や(メタ)アクリレート系の反応性オリゴマーが好ましい。」

(a4)[0064]?[0069]
「[0064]
本発明の樹脂組成物に紫外線を照射して硬化する場合、光重合開始剤(C)を使用するのが好ましい。
・・・
[0066]
本発明の樹脂組成物は、前記成分以外に離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、着色剤(例えば染料、顔料等)、無機フィラー、有機フィラー等を併用することができる。
[0067]
本発明の樹脂組成物は、上記の各成分を均一に混合、溶解することにより得ることができる。
[0068]
本発明の樹脂組成物は、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の透過スクリーン用、TFT用のプリズムレンズシート、眼鏡レンズなどのレンズ用として有用であるが、その他に各種コーティング剤、注型剤、接着剤あるいは印刷インキ等に有用である。
[0069]
本発明の組成物の硬化物は、電子線や紫外線等のエネルギー線を照射することにより得ることができる。具体的には本発明の樹脂組成物を、例えばフレネルレンズ又はレンチキュラーレンズの形状を有するスタンパー上に塗布し、該樹脂組成物の層を設け、その層の上に硬質透明基板を接着させ、次いでその状態で該硬質透明基板側から高圧水銀灯などにより、紫外線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから剥離する。この様にして好ましくは屈折率(23℃)が1.55以上、特に好ましくは1.56以上を有した軟質なフレネルレンズ或いはレンチキュラーレンズが得られる。」

(a5)[0070]?[0107]
「[0070]
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
[0071]
(実施例1)3,3-ジフェニルプロピルアクリレート(A)の合成
・・・
[0073]
(実施例2)2-(ジフェニルメトキシ)エチルアクリレート(B)の合成
・・・
[0075]
(実施例3)2-ベンジルベンジルアクリレート(C)の合成
・・・
[0078]
(実施例4)2-フェノキシベンジルアクリレート(D)の合成
実施例1と同様の方法で、3,3-ジフェニルプロピルアルコールの代わりに(2-フェノキシフェニル)メタノールを用いて、2-フェノキシベンジルアクリレートを合成した(収量69g、収率82%)。得られた生成物の屈折率(nD,25℃)は1.564、粘度(25℃)は17mPa・sであった。
[0079]
^(1)H-NMR(300MHz):δ(CDCl_(3)、内部標準TMS) 5.30(s、2H)、5.79(d、1H),6.09(q、1H),6.37(d,1H)、6.90-7.48(m、9H)
GC-MS(CI):m/z=255[M+H]^(+)
[0080]
[化13]

[0081]
(実施例5)2-(2-フェノキシフェノキシ)エチルアクリレート(E)の合成
・・・
[0084]
(実施例6)1,2-ジフェニルエチルアクリレート(F)の合成
・・・
[0087]
(実施例7)
実施例1で得られた3,3-ジフェニルプロピルアクリレート50部とアロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)50部を配合して組成物をえた。この組成物の屈折率(nD,25℃)は1.549であり、粘度(25℃)は230mPa・sであった。この組成物にイルガキュア754(製品名、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)の5部とダロキュアTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、チバ・スペシャリティケミカル社製)0.5部を配合し、76umのアプリケーターを用いてPET基材状に塗布し、250mJ/cm^(2)の高圧水銀灯を用いて紫外線を照射することにより、硬化物を得た。
硬化物の屈折率は1.576であり、透明性に優れていた。
[0088]
(実施例8)?(実施例12)
実施例7の3,3-ジフェニルプロピルアクリレート50部の替わりに、表1に記載の(メタ)アクリル酸エステル誘導体を用いる他は、実施例7と同様にして実施例8?12を行った。得られた硬化物の物性評価を表1に示す。
[0089]


[0090]
(実施例13)2-(N,N-ジフェニルアミノ)エチルアクリレート(G)の合成
・・・
[0103]
(実施例17)2-(N-ビフェニル-N-メチルアミノ)エチルアクリレート(K)の合成
・・・
[0106]
(実施例18)
実施例13で得られた2-(N,N-ジフェニルアミノ)エチルアクリレート50部とアロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)50部を配合して組成物を得た。この組成物の屈折率(nD,25℃)は1.5628であり、粘度(25℃)は134mPa・sであった。この組成物にイルガキュア754(製品名、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)の5部とダロキュアTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、チバ・スペシャリティケミカル社製)0.5部を配合し、76umのアプリケーターを用いてPET基材状に塗布し、250mJ/cm^(2)の高圧水銀灯を用いて紫外線を照射することにより、硬化物を得た。
硬化物の屈折率は1.598であり、透明性に優れていた。
[0107]
(実施例19)?(実施例22)
実施例18の2-(N,N-ジフェニルアミノ)エチルアクリレート50部の替わりに、表2に記載の(メタ)アクリル酸エステル誘導体を用いる他は、実施例18と同様にして実施例19?22を行った。・・・」
(2)特開2008-120605号公報(原査定で引用された引用文献2と同じ。以下、「引用例2」という。)

(b1)特許請求の範囲
「【請求項1】
有機ケイ素化合物により表面が修飾されてなる酸化ジルコニウム粒子であって、
この酸化ジルコニウム粒子の表面の活性が抑制されてなることを特徴とする表面修飾酸化ジルコニウム粒子。
・・・
【請求項4】
請求項1、2または3記載の表面修飾酸化ジルコニウム粒子を分散媒中に分散してなる分散液であって、
前記表面修飾酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒子径は、1nm以上かつ100nm以下であることを特徴とする表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液。
【請求項5】
前記表面修飾酸化ジルコニウム粒子の含有率は、1重量%以上かつ70重量%以下であることを特徴とする請求項4記載の表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液。
【請求項6】
請求項4または5記載の表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液に含まれる表面修飾酸化ジルコニウム粒子を透明樹脂中に分散してなる透明複合体であって、
この透明複合体の可視光線に対する透過率は、70%以上であることを特徴とする透明複合体。
・・・
【請求項8】
前記透明樹脂は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂のいずれか1種であることを特徴とする請求項6または7記載の透明複合体。
【請求項9】
請求項6、7または8記載の透明複合体を備えてなることを特徴とする光学部材。」

(b2)【0001】?【0012】
「【0001】
本発明は、表面修飾酸化ジルコニウム粒子と表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液及び透明複合体、光学部材並びに発光素子封止用組成物、発光素子に関し、更に詳しくは、酸化ジルコニウム粒子の表面を有機ケイ素化合物により修飾することで、高耐久性、高透明性を同時に維持しつつ、屈折率等の光学特性や硬度等の機械的特性を向上させることが可能な表面修飾酸化ジルコニウム粒子と表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液及び透明複合体、光学部材並びに発光素子封止用組成物、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムやコーティング膜などの樹脂の屈折率や機械的特性を向上させることを目的として、これらの樹脂中に酸化ジルコニウム粒子を分散させることが行われている。酸化ジルコニウム粒子は、金属や金属イオンを積極的に添加して触媒として用いる場合を除いて、酸化チタンや酸化亜鉛のように粒子の触媒活性を考慮することはない。例えば、酸化ジルコニウム粒子を樹脂中に分散(充填、複合化)させる場合、酸化ジルコニウム粒子を単に有機化合物や有機金属化合物を含む溶媒中に分散させた分散液を用いて樹脂と混合する方法が取られており、酸化ジルコニウム粒子自体の触媒活性を抑制する処置を取ることはない。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の樹脂中に酸化ジルコニウムを分散させることで、樹脂の屈折率や機械的特性を向上させたものにおいては、酸化ジルコニウム粒子が微弱でも表面活性を有している場合には、酸化ジルコニウム粒子を均一かつ安定的に分散させる目的で用いる有機化合物や有機金属化合物等の分散剤及び光学部材としての樹脂成分が、酸化ジルコニウム粒子の表面活性により酸化されたり、あるいは分解される等して、機械的特性が劣化したり、樹脂成分が変色して光透過性が低下したり等の問題点があった。
・・・
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、酸化ジルコニウム粒子の表面を有機ケイ素化合物を用いて修飾することで高耐久性、高透明性を同時に維持しつつ、屈折率等の光学特性や硬度等の機械的特性を向上させることが可能な表面修飾酸化ジルコニウム粒子と表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液及び透明複合体、光学部材並びに発光素子封止用組成物、発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸化ジルコニウム粒子の表面を有機ケイ素化合物を用いて修飾することにより、この表面の活性を抑制すれば、高耐久性、高透明性を同時に維持しつつ、屈折率等の光学特性や硬度等の機械的特性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」

(b3)【0039】?【0050】
「【0039】
「表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液」
本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液は、本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子を分散媒中に分散してなる分散液であり、この表面修飾酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒子径は、1nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ75nm以下、さらに好ましくは1nm以上かつ50nm以下である。
【0040】
ここで、表面修飾酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒子径を1nm以上かつ100nm以下と限定した理由は、平均分散粒子径が1nm未満であると、酸化ジルコニウム粒子自体が小さいために結晶性が乏しくなり、屈折率等の粒子特性を発現することが難しくなるからであり、一方、平均分散粒子径が100nmを超えると、この表面修飾酸化ジルコニウム粒子を樹脂に含有させて数μm程度の薄膜とした場合であっても透明性が低下するからである。
・・・
【0045】
「透明複合体」
本発明の透明複合体は、本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液に含まれる表面修飾酸化ジルコニウム粒子を透明樹脂中に分散してなる透明複合体であり、この透明複合体の可視光線に対する透過率は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0046】
ここで、この透明複合体の可視光線に対する透過率を70%以上と限定した理由は、透過率が70%未満であると、光透過性が悪化し、光学部材とした場合に光の損失が生じるからである。
本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液に含まれる表面修飾酸化ジルコニウム粒子はナノメートルサイズの粒子であるから、この表面修飾酸化ジルコニウム粒子を樹脂中に分散させて透明複合体とした場合においても、光散乱が小さく、複合体の透明性を維持することが可能である。
【0047】
この表面修飾酸化ジルコニウム粒子の含有率は、1重量%以上かつ95重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上かつ80重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上かつ70重量%以下である。
ここで、表面修飾酸化ジルコニウム粒子の含有率を1重量%以上かつ95重量%以下と限定した理由は、この範囲が表面修飾酸化ジルコニウム粒子が樹脂中にて良好な分散状態を取り、かつ屈折率等の光学特性や硬度等の機械的特性を改善し得る範囲であり、含有率が1重量%未満であると、屈折率が上がらず、また、95重量%を超えると、樹脂本来の柔軟性等の機械的特性が低下するからである。
【0048】
透明樹脂としては、可視光線あるいは近赤外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0049】
このような樹脂としては、・・・等が挙げられ、特に好ましくは、アクリル、エポキシ、シリコーンである。
【0050】
アクリル樹脂としては、単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートが用いられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。・・・」

(b4)【0062】?【0067】
「【0062】
一般に、酸化ジルコニウム粒子の屈折率は2.15から2.20程度であるから、この酸化ジルコニウム粒子の表面を修飾した本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子を上記の透明樹脂中に分散させることにより、アクリル樹脂の屈折率1.4から1.6程度、エポキシ樹脂の屈折率1.5程度、シリコーン樹脂の屈折率1.4から1.5程度と比べて、透明樹脂の屈折率をそれ以上に向上させることが可能である。
また、本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子は、靭性及び硬度が高いので、透明複合体の機械的特性を向上させるのに適している。
【0063】
「透明複合体の製造方法」
本発明の透明複合体は、次に挙げる方法により作製することができる。
まず、本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子を上記のアクリル、エポキシ、シリコーン等の樹脂中に均一に分散した樹脂組成物を作製する。
【0064】
この樹脂組成物を作製する方法としては、本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液と、上記のアクリル、エポキシ、シリコーン等の樹脂のモノマーやオリゴマーとを、ミキサー等を用いて混合し、その後、分散液の分散媒を揮発させる等により除去する方法が好適である。
ここで、樹脂のモノマーやオリゴマーが反応性を有する炭素二重結合(C=C)を有する場合には、単に混合するだけでも重合・樹脂化することができる。
【0065】
次いで、上記の樹脂組成物を用いて塗膜または成形体を作製する。
塗膜の場合には、上記の樹脂組成物を、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、ロールコート法等の塗工方法により基材上に塗工する方法が採られる。
また、成形体の場合には、上記の樹脂組成物を金型を用いて成形する方法、あるいは、上記の樹脂組成物を金型内または容器内に充填する方法が採られる。
次いで、この塗膜または成形体に、加熱処理、紫外線や赤外線等の照射処理、のいずれかを施して硬化させ、膜状またはバルク状の透明複合体を作製する。
なお、本発明の表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液を用いた場合には、上記の塗工あるいは充填の際に、分散液の分散媒を揮発させることも可能である。
【0066】
特に、アクリル樹脂等の紫外線(UV)硬化性樹脂を含む樹脂組成物を硬化させる方法としては、例えば、加熱法、光照射により開始されるラジカル重合反応を用いたモールド成形法、トランスファー成形法等が挙げられる。
このラジカル重合反応としては、熱による重合反応(熱重合)、紫外線等の光による重合反応(光重合)、ガンマ(γ)線による重合反応、あるいは、これらの複数を組み合わせた方法等が挙げられる。
【0067】
「光学部材」
本発明の光学部材は、上記の透明複合体を光学要素として備えたもので、光学要素としては、レンズ、プリズム等が挙げられる。
この光学部材としては、例えば、マイクロレンズアレイ、光学薄膜、光学フィルム、光学シート等が挙げられる。
また、この光学部材の用途としては、例えば、反射防止膜、防眩膜、ハードコート膜、光学接着層、散乱膜、拡散膜等が挙げられる。」

(b5)【0073】?【0092】(実施例)
「【0073】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0074】
A.塗膜の作製及び評価
「実施例1」
(酸化ジルコニウム粒子の作製)
・・・
【0075】
・・・平均一次粒子径が3nmの酸化ジルコニウム粒子を作製した。
【0076】
(表面修飾酸化ジルコニウム粒子分散液の作製)
上記の酸化ジルコニウム粒子10gに、分散媒としてトルエン85g、表面修飾材としてメトキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)社製)5gを加え、次いで、ホモジナイザーを用いて表面修飾および分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウム粒子のトルエン分散液を作製した。
この表面修飾酸化ジルコニウム粒子の分散粒度分布を、動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用い、データ解析条件として粒子径基準を体積基準として測定したところ、この平均分散粒度分布は1nm以上かつ20nm以下であった。
【0077】
(塗膜の作製)
上記の分散液をエバポレーターを用いて濃縮し、得られた濃縮液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリルレート(DPHA)および重合開始剤としてイルガキュアー500(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製)を混合し、硬化性アクリレート溶液を作製した。
次いで、この硬化性アクリレート溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコート法にて塗布し、得られた塗膜に紫外線(UV)を照射して硬化させ、厚み20μmの表面修飾酸化ジルコニウム粒子を含む透明樹脂からなる塗膜を作製した。
この塗膜の酸化ジルコニウム粒子の含有率は60重量%であった。
・・・
【0082】
「比較例1」
(酸化ジルコニウム粒子の作製)
実施例1に準じて一次粒子径が3nmの酸化ジルコニウム粒子を作製した。
【0083】
(酸化ジルコニウム粒子分散液の作製)
この酸化ジルコニウム粒子10gに、分散媒としてトルエンを85g、分散剤としてリン酸エステル(第一工業製薬(株)社製)を5g加え、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、酸化ジルコニウム粒子のトルエン分散液を作製した。
この酸化ジルコニウム粒子の分散粒度分布を、動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用い、データ解析条件として粒子径基準を体積基準として測定したところ、この平均分散粒度分布は1nm以上かつ20nm以下であった。
【0084】
(塗膜の作製)
上記の酸化ジルコニウム粒子のトルエン分散液を用い、実施例1に準じて酸化ジルコニウム粒子を含む透明樹脂からなる塗膜を作製した。
この塗膜の酸化ジルコニウム粒子の含有率は60重量%であった。
・・・
【0089】
「塗膜の評価」
実施例1?3及び比較例1?3それぞれの塗膜について、可視光線透過率、屈折率、硬度、加熱による変色の有無の評価を行った。
これらの評価で基準値が必要な場合には、100μmのPETフィルム上に酸化ジルコニウム粒子を添加していないアクリル樹脂を20μmの厚みで成膜したものを基準値用試料とした。
【0090】
(1)可視光線透過率
分光光度計(日本分光(株)社製)を用いて可視光線の透過率を測定した。
ここでは、上記の基準値用試料の測定値を基準値とし、この基準値と比較して可視光線透過率が90%以上のものを「○」、90%未満のものを「×」とした。
(2)屈折率
日本工業規格JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。
ここでは、酸化ジルコニウム粒子を添加していないアクリル樹脂の屈折率を基準として、屈折率が向上したものを「○」、向上しなかったものを「×」とした。
【0091】
(3)硬度
日本工業規格JIS K 5600-5-4「塗膜の機械的性質-引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠し、硬度を測定した。
ここでは、上記の基準値用試料の膜の硬度を基準値とし、この基準値より高い場合を「○」、この基準値より10%以上高い場合を「◎」、この基準値より低い場合を「×」とした。
(4)加熱による変色
測定用の塗膜を大気中、150℃にて24時間加熱し、加熱前後における塗膜の変色を目視にて観察した。
ここでは、上記の基準値用試料の加熱前後における塗膜の変色度合いを基準として、この基準と同等のものを「○」、この基準より変色の度合いが大きいものを「×」とした。
以上の評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】



2.引用例1に記載された発明
引用例1の「一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体(合議体注;一般式(1)の構造式の記載は省略する。以下、この審決において同様である。)」「を含有する活性エネルギー線硬化性組成物」(上記1.(a1)の請求項1及び6)なる記載、「本発明の樹脂組成物は、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体及びそれ以外の不飽和基含有化合物を含むことを特徴とする。(メタ)アクリル酸エステル誘導体成分以外の不飽和基含有化合物としては、・・・(メタ)アクリレート系の反応性オリゴマーが好ましい。」(同(a3)の[0042])なる記載、及び、「本発明の樹脂組成物に紫外線を照射して硬化する場合、光重合開始剤(C)を使用するのが好ましい。」(同(a4)の[0064])なる記載、並びに、「本発明の組成物の硬化物は、電子線や紫外線等のエネルギー線を照射することにより得ることができる。」(同(a4)の[0069])なる記載によれば、引用例1には、「一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリレート系の反応性オリゴマー、光重合開始剤を含有する紫外線等の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に関する発明が開示されているといえる。
そして、引用例1には、当該紫外線等の活性エネルギー線硬化性組成物の具体例として、引用例1の実施例10に、「一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体」である「2-フェノキシベンジルアクリレート」を50部、「(メタ)アクリレート系の反応性オリゴマー」である、「アロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)」を50部、光重合開始剤である「イルガキュア754(製品名、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)」5部及び「ダロキュアTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、チバ・スペシャリティケミカル社製)」0.5部を配合(つまり、含有)させてなる紫外線硬化性樹脂組成物が記載されている(上記1.(a5)の[0089]の表1の実施例10の欄)。(合議体注;「EO変性ビスフェノールAジアクリレート」の「EO」は、エチレンオキシドを意味するものと認める。)

そうすると、引用例1には、
「2-フェノキシベンジルアクリレート50部とアロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)50部、重合開始剤であるイルガキュア754(製品名、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)5部及びダロキュアTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、チバ・スペシャリティケミカル社製)0.5部を含有する紫外線硬化性樹脂組成物。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「2-フェノキシベンジルアクリレート」は、本願発明における「構造式【化4】(合議体注;構造式【化4】の記載は省略する。)を有する、少なくとも1種の第2の(メタ)アクリレートモノマー」において、式中のR1が芳香族置換基であるフェニル基を含む基である2-フェノキシ基であり、tが1で、R2が水素である化合物に相当する。また、引用発明の「アロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)」の「EO変性ビスフェノールAジアクリレート」は、本願発明における「少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む第1のモノマー」に相当する。
そして、引用発明の、上記第1及び第2のモノマーを含む「紫外線硬化性樹脂組成物」は、本願発明の「重合性樹脂組成物」に相当するし、引用発明において「重合開始剤であるイルガキュア754(製品名、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)5部及びダロキュアTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、チバ・スペシャリティケミカル社製)0.5部」を含有する点については、本願発明においては、「・・・を含有する、重合性樹脂組成物」と特定されており、他の成分を含有することを除外するものではないし、むしろ、本願明細書には、「UV硬化性の重合性組成物は、少なくとも1つの光反応開始剤を含む。」(【0064】)と記載され、また、実施例において「各々の重合性樹脂に0.36重量%のDarocure 1173光開始剤と0.40重量%のLucirin TPO光開始剤を添加した。」(【0117】)と記載されていることからも、相違点ではない。
そうすると、両者は、
「重合性樹脂組成物であって、
少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む第1のモノマーと、
構造式【化4】を有する、少なくとも1種の第2の(メタ)アクリレートモノマーと、
を含有する、重合性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。

<相違点1>
本願発明では、樹脂組成物が、「ナノ粒子を10重量%?70重量%」含有することが特定されているのに対して、引用発明では樹脂組成物はナノ粒子を含有していない点。

<相違点2>
本願発明では、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む第1のモノマーの含有量が「最大で30重量%まで」と特定されているのに対して、引用発明では、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む第1のモノマーに相当するEO変性ビスフェノールAジアクリレートを、「アロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)」として、全組成物(50+50+5+0.5=)105.5部中に50部、つまり、(50÷105.5×100=)47.4重量%含有している点。

4.判断
(1)相違点1及び2について
引用発明の樹脂組成物は、引用例1の「活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる光学部材」(上記1.(a1)の請求項7)、「本発明の樹脂組成物は、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の透過スクリーン用、TFT用のプリズムレンズシート、眼鏡レンズなどのレンズ用として有用である」、及び、「本発明の組成物の硬化物は、電子線や紫外線等のエネルギー線を照射することにより得ることができる。・・・この様にして好ましくは屈折率(23℃)が1.55以上、特に好ましくは1.56以上を有した軟質なフレネルレンズ或いはレンチキュラーレンズが得られる。」(同(a4)の[0068]?[0069])との記載から明らかなように、プリズムレンズシートや、眼鏡レンズなどのレンズ等の光学部材の用途に有用なものであるし、また、無機フィラーを併用してもよいものである(同(a4)の[0066])。
一方、引用発明と同様、レンズ、プリズム等の光学部材の用途に使用される硬化性樹脂組成物の技術に関するものであって、かつ、組成物に含有される樹脂が、(引用発明の2-フェノキシベンジルアクリレートを概念上含む)単官能アクリレートおよび/または(引用発明のEO変性ビスフェノールAジアクリレートを概念上含む)多官能アクリレートであってもよい組成物(上記1.の(b1)の、特に、請求項8及び9、(b2)、(b3)の、特に、【0048】?【0050】、(b4)の【0067】、及び、(b5)の特に、【0077】参照。)である点でも引用発明と一致する樹脂組成物を開示する引用例2には、光学部材に用いられる樹脂組成物に、粒子表面を有機ケイ素化合物により表面修飾した酸化ジルコニウム粒子を含有せしめることで、従来、屈折率や機械的特性を向上させることを目的として光学部材用の樹脂中に酸化ジルコニウム粒子を分散させた場合に、樹脂成分が酸化ジルコニウム粒子の表面活性により酸化、分解される等して機械的特性が劣化したり、樹脂成分が変色して光透過性が低下したり等の問題点(同(b2)の【0002】及び【0007】)を解決でき、高耐久性、高透明性を同時に維持しつつ、屈折率等の光学特性や硬度等の機械的特性が向上した光学部材用等の組成物とできること(同(b2)の【0011】及び【0012】)が記載され、酸化ジルコニウム粒子の屈折率は2.15から2.20程度であるから、表面修飾酸化ジルコニウム粒子をアクリル樹脂等の透明樹脂中に分散させることにより、アクリル樹脂の屈折率1.4から1.6程度と比べて、透明樹脂の屈折率をそれ以上に向上させることが可能であり、また、表面修飾酸化ジルコニウム粒子は、靭性及び硬度が高いので、透明複合体の機械的特性を向上させるのに適していること(同(b4)の【0062】)、表面修飾酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒子径が、屈折率等の粒子特性及び薄膜とした場合の透明性の点から1nm以上かつ100nm以下が好ましいことも記載されている(同(b1)の請求項4、(b3)の【0039】?【0040】)。
さらに、引用例2には、平均一次粒子径3nmの酸化ジルコニウム粒子から調製された平均分散粒子径が1?20nmあるいは40?90nmの表面修飾酸化ジルコニウム粒子と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリルレート(DPHA)及び重合開始剤を含有する紫外線硬化性アクリレート溶液からの、酸化ジルコニウム粒子含有率60重量%の硬化樹脂塗膜が、酸化ジルコニウム粒子を添加していないアクリル樹脂被膜よりも、可視光線透過率、屈折率、引っかき硬度の点で優れていたことが具体的に示されている(上記1.の(b5))。

そうすると、引用例1及び2を合わせ見た当業者であれば、引用発明において、引用例2に記載の平均分散粒子径が1nm以上かつ100nm以下の、有機ケイ素化合物で表面修飾された酸化ジルコニウム粒子を含有せしめることで、より樹脂組成物の屈折率を高くし、硬化して得られる光学部材として、より屈折率や光透過性といった光学特性が優れた光学部材とすることができることを自然に理解するといえ、引用発明において、樹脂組成物に引用例2に記載の平均分散粒子径が1nm以上かつ100nm以下の、有機ケイ素化合物で表面修飾された酸化ジルコニウム粒子(これは、本願発明の「ナノ粒子」に相当する。)を含有せしめることを動機付けられるといえる。
したがって、引用発明を、相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、表面修飾酸化ジルコニウム粒子の含有量に関し、引用例2には、有機ケイ素化合物で表面修飾された酸化ジルコニウム粒子の樹脂中の含有率は、表面修飾酸化ジルコニウム粒子が樹脂中にて良好な分散状態を取り、かつ屈折率等の光学特性や硬度等の機械的特性を改善し得る範囲である1重量%以上かつ95重量%以下が好ましいことが記載され、含有率が1重量%未満であると屈折率が上がらず、95重量%を超えると樹脂本来の柔軟性等の機械的特性が低下すること、10重量%以上かつ80重量%以下がより好ましく、20重量%以上かつ70重量%以下が更に好ましいことも記載されているし(上記1.の(b3)の【0047】)、具体的な実施例として、平均一次粒子径が3nmの酸化ジルコニウムから調製した、平均分散粒度分布が1?20nm、あるいは、40?90nmの表面修飾酸化ジルコニウム粒子を使用して、酸化ジルコニウム粒子を60重量%含有する硬化樹脂塗膜が得られたことも記載されている(同(b5)の実施例1?3)。
そして、これら(表面修飾)酸化ジルコニウム粒子の含有量の範囲は、本願発明におけるナノ粒子の含有量範囲と一致(実施例)、あるいはほとんどの範囲において一致しているのであるから、引用発明の樹脂組成物に表面修飾酸化ジルコニウム粒子を含有せしめる際に、引用例2の示唆にしたがって得られる硬化物の屈折率や機械的特性を考慮して、適宜含有量を調整し、本願発明で特定される範囲を満足する程度の量とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

さらに、引用発明において、樹脂組成物中のEO変性ビスフェノールAジアクリレート(これは、本願発明の「少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む第1のモノマー」に相当する。)の量を、最大で30重量%までとする点については、引用発明の樹脂組成物に表面修飾酸化ジルコニウム粒子を、引用例2において更に好ましい範囲とされる20重量%以上70重量%以下の範囲で配合する場合、引用発明における樹脂組成物中の2-フェノキシベンジルアクリレートとアロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)と重合開始剤との合計量は、30重量%を超え80重量%未満となるが、これを、引用発明におけるEO変性ビスフェノールAジアクリレートの含有量(「アロニックスM-211B(製品名、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、東亜合成社製)」が全組成物中47.4重量%)であることを考慮して換算し直した場合、アロニックスM-211Bの含有量はナノ粒子含有樹脂組成物中(0.474×30?0.474×80=)14.2?37.9重量%となるし、引用例2の実施例における表面修飾酸化ジルコニウム粒子含有量の60重量%で計算した場合には、(0.474×(100-60)=)19.0重量%となり、本願発明の範囲と一致する(実施例)か、大部分において一致する。そうすると、引用発明に、上記表面修飾酸化ジルコニウム粒子を引用例2で好適とされる含有量で含有せしめる場合には、樹脂組成物中のEO変性ビスフェノールAジアクリレートの含有量は、本願発明の特定を満足することになるから、この点は実質的には相違点とはならない。
仮に、実質的な相違点である場合であっても、引用発明において、樹脂組成物中のEO変性ビスフェノールAジアクリレートの含有量を本願発明で特定される範囲内の含有量とすることもまた、当業者が適宜なし得たことといえる。
よって、引用発明を、相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることも当業者が容易になし得たことである。

(2)本願発明の効果について
本願明細書には、本願発明の効果に関し、本願明細書の表1(【0119】)に、具体例として、下記の組成物1?3についての屈折率及び50℃でのセンチポイズ粘度が記載され、また、表2(【0127】)に、組成物1?3から調製された光学フィルムのゲイン試験の結果が記載されている。

(組成物1)
46.3重量部のZrO_(2)(ナノ粒子)、10.8重量部のHEAS及び2.5重量部のDCLA-SA(ナノ粒子の表面処理剤)、12.2重量部のPEA(フェノキシエチルアクリレート)、8.1重量部のSR601(エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;第1のモノマー)、20.3重量部のoPPA(2-フェニル-フェニルアクリレート)からなる重合性樹脂に、0.36重量%のDarocure 1173光開始剤及び0.40重量%のLucirin TPO光開始剤をブレンドした組成物
(組成物2)
55.0重量部のZrO_(2)(ナノ粒子)、12.8重量部のHEAS及び3.0重量部のDCLA-SA(ナノ粒子の表面処理剤)、23.4重量部のPBA(3-フェノキシベンジルアクリレート;第2の(メタ)アクリレートモノマー)、5.8重量部のBPDA-1(2,2’-ジエトキシ-ビフェニルジアクリレート;第1のモノマー)、0.005重量部のProstab5198に、0.36重量%のDarocure 1173光開始剤及び0.40重量%のLucirin TPO光開始剤をブレンドした組成物
(組成物3)
46.0重量部のZrO_(2)(ナノ粒子)、10.8重量部のHEAS及び2.5重量部のDCLA-SA(ナノ粒子の表面処理剤)、20.4重量部のPBA(第2の(メタ)アクリレートモノマー)、20.4重量部のEM2206(A-BPEF(第1のモノマー)とoPPEA(o-フェニルフェノキシアクリレート)の40:60のブレンド)、0.005重量部のProstab5198に、0.36重量%のDarocure 1173光開始剤及び0.40重量%のLucirin TPO光開始剤をブレンドした組成物

そして、表1及び表2によれば、ナノ粒子含有アクリル樹脂組成物として、ナノ粒子であるZrO_(2)を46.3重量部、アクリル樹脂であるPEA(フェノキシエチルアクリレート)を12.2重量部、SR601(エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;第1のモノマー)を8.1重量部、oPPA(2-フェニル-フェニルアクリレート)を20.3重量部含む屈折率1.626の樹脂組成物1から調製された比較実施例Aの輝度向上フィルムの相対ゲイン(単一シートで1.76、交差シートで2.73)に比べて、ナノ粒子を55.0重量部、アクリル樹脂であるPBA(3-フェノキシベンジルアクリレート;第2の(メタ)アクリレートモノマー)を23.4重量部、BPDA-1(2,2’-ジエトキシ-ビフェニルジアクリレート;第1のモノマー)を5.8重量部含む屈折率1.653の樹脂組成物2から調製された実施例1の輝度向上フィルムの相対ゲイン(単一シートで1.80、交差シートで2.87)、及び、ナノ粒子を46.0重量部、アクリル樹脂であるPBA(第2の(メタ)アクリレートモノマー)を20.4重量部、EM2206(A-BPEF(第1のモノマー)とoPPEA(o-フェニルフェノキシアクリレート)との40:60のブレンド)を20.4重量部とを含む屈折率1.637の樹脂組成物3から調製された実施例2の輝度向上フィルムの相対ゲイン(単一シートで1.79、交差シートで2.84)の方が優れることが示されており、当該結果からは、より屈折率の高い樹脂組成物からは、より輝度(相対ゲイン)が優れる輝度向上フィルムが製造できることは理解できる。
しかしながら、組成については、組成物1?3では、組成物を構成する主要成分であるナノ粒子の含有量、第1のモノマーの種類、第2のモノマーの種類あるいは含有量、他のアクリルモノマーの種類もそれぞれに異なっており、組成物中に含まれるいずれかの成分の存在と、相対ゲインに優れることとの相関関係を、当該記載から理解することは、直ちにはできない。
そして、本願明細書の【0006】?【0008】の、
「重合性樹脂組成物の反応生成物を含有する重合(例えばミクロ構造化)表面を含む光学フィルムがここで記載され、該重合性樹脂組成物がナノ粒子と、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む、少なくとも1種の第1のモノマーと、構造式1・・を有する、少なくとも1種の第2の(メタ)アクリレートモノマーと、を含有する。
更に、ベンジル(メタ)アクリレートモノマーとナノ粒子とを含む重合性樹脂組成物が記載されている。」なる記載、
【0018】の、
「本明細書で記述される第2の(メタ)アクリレートモノマー、並びに有機構成成分は、少なくとも1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56の屈折率を有する。」なる記載、
【0030】?【0031】の、
「重合性樹脂組成物中で用いられる、その様なベンジル(メタ)アクリレートモノマーの量は変えることができる。・・・重合性樹脂組成物の屈折率を増加させるために、低屈折率構成成分(複数可)の一部と置き換えてよい。・・・重合性樹脂組成物は、典型的には、少なくとも5%、最大で・・・30重量%の、少なくとも2つの重合性(メタ)アクリレート基を有する、1種以上の第1のモノマー又はオリゴマーと組み合わせて、式1による、1種以上の第2の(メタ)アクリレートモノマーを含む。」なる記載、及び、
本願明細書の比較実施例Aを構成する組成物1中に含まれるアクリレートモノマーであるフェノキシエチルアクリレート(PEA)について言及する【0004】の、
「重合性樹脂組成物において反応性希釈剤として使用されている一般的なモノマーの1つがフェノキシエチルアクリレートであり、これは屈折率が1.517・・・である。」なる記載、
【0109】の、
「実施例で使用した材料
3-フェノキシベンジルアクリレートモノマー(PBA)の合成
・・・3-フェノキシベンジルアクリレート(収率90.56%)屈折率は1.5648で粘度は25℃で16cpsであった。」なる記載、並びに、
【0069】の、
「表面修飾(例えば、コロイド状)ナノ粒子は、物品又は光学素子の耐久性及び/又は屈折率を向上させるのに有効な量で重合化構造体中に存在することができる。いくつかの実施形態では、表面修飾無機ナノ粒子の総量は、少なくとも10重量%・・・の量で、重合性樹脂又は光学物品中に存在することができる。重合性樹脂組成物がミクロ構造フィルムの流延及び硬化プロセスで使用するのに好適な粘度を有するため、その濃度は、典型的には70重量%未満であり、より典型的には60重量%未満である。」なる記載、
を、考慮しても、本願明細書の記載からは、表面修飾ナノ粒子が存在することで、物品又は光学素子の耐久性及び/又は屈折率を向上させることができること、及び、表面修飾ナノ粒子が存在する系において、特定の構造式を有する、屈折率が少なくとも1.50より大きい第2の(メタ)アクリレートモノマーである屈折率が、1.5648であるPBAを重合性樹脂組成物中に存在せしめた組成物2及び3とすることで、これより低い屈折率の重合性有機構成成分である屈折率が、1.517のPEAを含有する組成物1よりも屈折率を高くすることができることが理解できるのみである。

一方、引用例1には、本願発明の「第2の(メタ)アクリレートモノマー」に相当する「2-フェノキシベンジルアクリレート」の屈折率が1.564であること(上記1.の(a5)の[0078])、該化合物が具体例とされる一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体は、低粘性であり、当該(メタ)アクリル酸エステル誘導体を用いた硬化物は高屈折率となること(同(a2)の[0013])が記載されているし、引用例2には、(1)で記載したとおり、酸化ジルコニウム粒子の屈折率は2.15から2.20程度であるから、表面修飾酸化ジルコニウム粒子をアクリル樹脂等の透明樹脂中に分散させることにより、アクリル樹脂の屈折率1.4から1.6程度と比べて、透明樹脂の屈折率をそれ以上に向上させることが可能であり、また、透明複合体の機械的特性を向上させることができること(同(b4)の【0062】)、表面修飾酸化ジルコニウム粒子を含有せしめることで、高耐久性、高透明性を同時に維持しつつ、屈折率等の光学特性や引っかき硬度等の機械的特性が向上した光学部材用等の組成物とできること(同(b2)の【0011】及び【0012】及び(b5)の表1)が記載されているのであるから、上記の本願発明の効果はいずれも、引用例1及び2の記載から、当業者が予測し得る範囲内の効果に過ぎない。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書中で、実験結果報告書(参考資料1)を示し、「3-4.対比」において、「1)本願発明と引用発明1との主たる相違点」として、「本願発明は、多くの点において引用発明1と相違するが、とりわけ、ナノ粒子と、構造式(合議体注;構造式の記載は省略する。以下、同様。)を有する、少なくとも1種の第2の(メタ)アクリレートモノマーの両方を含有するという点において、引用発明1と相違する。」と述べ、続いて、「2)相違点がもたらす予測不能な効果」として、「本願発明は、かかる相違点により、光学素子の耐久性及び/又は屈折率が当業者の予測可能な範囲を超えて向上するという効果を奏する。・・・
・・・ナノ粒子に加え、上記特定の(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして用いた場合に、他のモノマーを第2のモノマーとして用いる場合と比較して、光学素子の耐久性及び/又は屈折率が向上することは公知でなく、この点について、引用文献1にも引用文献2にも何らの開示や示唆はない。
・・・本願明細書では、ZrO_(2)からなるナノ粒子を含むことを前提に、第2モノマーとして本願発明が特定する所定の(メタ)アクリレートモノマーを用いるか否かで比較を行っており、適切な第2モノマーを選択することで、光学素子の特性(耐久性及び/又は屈折率等)が向上することを確認している。このような、第2モノマーの選択による効果は、当業者が予測できない効果に他ならない。」(審判請求書の5頁下から2段落目?7頁1段落目)と主張する。
そして、「3)補足実験結果」の項目において、「予測不能な効果は、本願明細書の記載により十分に提示されているものと考えるが、この点を更に補足するため実験(ボール落下テストによる耐久性確認試験)を行ったので、その結果について説明する。」として、「実験結果報告書」(参考資料1)を提出しており、実験結果報告書には、種々に異なった組成からなる樹脂組成物サンプルから調製したプリズム層を有する輝度向上フィルムにステンレススチールボールベアリングを落下させ衝突させ、コントラストの違いからプリズムを構成する樹脂の損傷を確認して、耐久性として評価している。

まず、請求人が主張する、「ナノ粒子に加え、特定の(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして用いた場合に、他のモノマーを第2のモノマーとして用いる場合と比較して、光学素子の耐久性が向上する」という効果について検討する。
本願明細書には、「耐久性」に関しては、【0069】に、「表面修飾(例えば、コロイド状)ナノ粒子は、物品又は光学素子の耐久性及び/又は屈折率を向上させるのに有効な量で重合化構造体中に存在することができる。」と、表面修飾ナノ粒子を含有することの技術的意義として記載されていたのみであり、請求人が主張するような、「ナノ粒子を含むことを前提に、適切な第2モノマーを選択することで、光学素子の特性(耐久性)が向上する」ことを確認した旨の記載はないし、本願発明が、「ナノ粒子に加え、特定の(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして用いた場合に、他のモノマーを第2のモノマーとして用いる場合と比較して、光学素子の耐久性が向上する」という効果を奏するものであることを示す記載も何らされていなかった。その上、本願明細書には、実験結果報告書に記載される「ボール落下テストによる耐久性確認試験」についての言及もなく、【0069】に記載の「耐久性」が、プリズムについて当該試験により確認されている「耐久性」を意味していたと理解することもできない。
そうすると、請求人が主張する、「ナノ粒子に加え、特定の(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして用いた場合に、他のモノマーを第2のモノマーとして用いる場合と比較して、光学素子の耐久性が向上する」という効果についての主張は、本願明細書に裏付けのない主張であって、採用できない。

なお、念のため、請求人が「耐久性」に関して提出した実験結果報告書を参酌した場合についても検討する。
請求人は、審判請求書の10頁3段落目?11頁1段落目において、「耐久性」の点の効果に関し、「適切な第2モノマーを使用することがもたらす効果は、サンプル1?6の結果から明らかである。すなわち、本願の実施例に相当するサンプル2、4?6では、第2モノマーとして本願発明が特定する所定の(メタ)アクリレートモノマーを用いることにより、第2モノマーとして異なるモノマーを用いるサンプル1、3に比較して、一貫して耐久性が向上している。このような効果は、当業者が予測できない効果に他ならない。」、「本願発明は、ナノ粒子と、構造式・・・を有する、少なくとも1種の第2の(メタ)アクリレートモノマーの両方を含有させることを必須とするもので、その効果は単にZrO_(2)からなるナノ粒子を添加することによりもたらされるものではない。サンプル1、3において、サンプル2、4?6と同様にZrO_(2)からなるナノ粒子が添加されているにも関わらず、ナノ粒子が添加されていないサンプル7?9と比較して、耐久性の向上が不十分であることからも明らかである。」と主張しているが、前者の主張については、サンプル1?6は、樹脂組成物に含まれるナノ粒子の量や第1のモノマーの種類や量、第2のモノマーとして加えられる(メタ)アクリレート基を有する化合物の化学構造あるいは含有量等が異なっており、直接的な比較をすることができないし、最も組成の近いサンプル4ではサンプル1と比べて耐久性の値がやや改善しているが、第2のモノマーの化学構造が複数箇所で相違しており、この違いが本願発明の特定の第2モノマーの化学構造とした点のみによる効果の違いであることまでは理解できないし、仮にそう理解しても、第2モノマーがPBAである(追加)実施例サンプルと比較した場合には、耐久性の値が顕著に低くなっていることからすると、この効果の違いが、種々の置換基を含み得る本願発明で特定される第2のモノマー全体について奏される効果であるとまでは理解できない。
後者の主張については、サンプル8及び9は他のサンプルとは第1のモノマーが異なっており、直接他のサンプルの結果と比較することはできないし、サンプル7については、第1のモノマーが一致しているサンプル4及びサンプル6の比較において、耐久性の値がかなり異なっており、効果の違いが、種々の置換基を含み得る本願発明で特定される第2のモノマー全体について奏される効果であるとまでは理解できない。
よって、仮に請求人が提出した実験結果報告書を参酌した場合であっても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。

次に、「ナノ粒子に加え、特定の(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして用いた場合に、他のモノマーを第2のモノマーとして用いる場合と比較して、光学素子の屈折率が向上する」という効果を奏する旨の主張に関しては、(2)で記載したとおり、本願明細書の記載からは、表面修飾ナノ粒子が存在することで物品又は光学素子の耐久性及び/又は屈折率を向上させることができること、及び、表面修飾ナノ粒子が存在する系において、特定の構造式を有する、屈折率が少なくとも1.50より大きい第2の(メタ)アクリレートモノマー(屈折率が、1.5648であるPBA)を重合性樹脂組成物中に存在せしめた組成物とすることで、これより低い屈折率の重合性有機構成成分(屈折率が、1.517のPEA)を含有する組成物1よりも屈折率を高くすることができることが理解できるのみであって、「ナノ粒子」に加えて、「特定の(メタ)アクリレートモノマー」、すなわち、本願発明で特定される、種々の置換基構造であり得る芳香族置換基を含む置換基R1が、ベンジル基の任意の位置に1?4個置換した構造を有するあらゆる(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして用いる場合であっても、請求人が主張するように、「他のモノマー」、例えば、引用例1に記載の実施例に記載される種々の(メタ)アクリル酸エステル誘導体を第2のモノマーとして用いる場合と比較して、光学素子の屈折率が向上することまでは理解できない。
そうすると、請求人が主張する、「ナノ粒子に加え、特定の(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして用いた場合に、他のモノマーを第2のモノマーとして用いる場合と比較して、光学素子の屈折率が向上する」という効果についての主張は、種々の置換基構造であり得る芳香族置換基を含む置換基R1が、ベンジル基の任意の位置に1?4個置換した構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを第2のモノマーとして含み得る本願発明の全体についてまで、本願明細書に裏付けられているとはいえない点で、妥当とはいえない。
また、引用例1には、光学部材用の紫外線硬化性樹脂組成物として、引用発明とした、引用例1の一般式(1)の(メタ)アクリル酸エステル誘導体として「2-フェノキシベンジルアクリレート」を含有する実施例10の他に、実施例7?9、11、12、18?22の10種類の実施例が記載されているところ、この内、実施例9の「2-ベンジルベンジルアクリレート」は、本願発明の特定の第2の(メタ)アクリレートモノマーに相当するものである。また、他の実施例のアクリレートも、実施例10に記載のアクリレートモノマーと同様、高い屈折率を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体の具体例として記載された、高い屈折率の光学部材を提供可能なものであるところ、請求人は、実施例10(及び9)に記載される引用発明の樹脂組成物にナノ粒子を含有せしめる場合には、引用例1に記載の他のいずれの実施例の樹脂組成物にナノ粒子を含有せしめた場合と比べても、光学部材としたときの屈折率の向上の効果が顕著であって、引用例1に記載の各種実施例に記載の(メタ)アクリル酸エステル誘導体から、本願発明に相当する特定の化学構造のものを選択することで、引用例1及び引用例2の記載からは予期できない顕著な効果が奏されることを示しているのでもない。
一方、引用発明の樹脂組成物にナノ粒子を含有せしめることで屈折率が向上することは、引用例1及び2の記載から当業者が予測し得る範囲内の効果に過ぎないことは(2)で記載したとおりである。

よって、請求人の主張は採用できない。

さらに、請求人は、審判請求書の7頁の2段落目で、「・・・本願発明の第2のモノマーは(メタ)アクリレート基を1個のみ含むモノマーであることに留意されたい。そのような、架橋を形成しない種類のモノマーが、光学素子の特性(耐久性及び/又は屈折率等)に影響することは、当業者が予測できない効果である。」と主張するが、引用例1には、「本発明では、上記一般式(1)で表される・・・(メタ)アクリル酸エステル誘導体を用いた硬化物は高屈折率であり、上記課題を解決する。」(上記1.の(a2)[0013])と記載されており、(メタ)アクリレート基を1個のみ含むモノマーが、光学素子の特性に影響することは、当業者が予測可能なことである。
よって、請求人のこの点の主張も採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項9に係る発明)は、その優先日前に頒布された刊行物である引用例1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、他の請求項について検討するまでもなく、本願については拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-30 
結審通知日 2017-12-05 
審決日 2017-12-21 
出願番号 特願2014-510346(P2014-510346)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安積 高靖北澤 健一平井 裕彰  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 渕野 留香
西山 義之
発明の名称 ミクロ構造化光学フィルムに適したベンジル(メタ)アクリレートモノマー  
代理人 佃 誠玄  
代理人 吉野 亮平  
代理人 野村 和歌子  
代理人 赤澤 太朗  
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