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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E01C |
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管理番号 | 1340048 |
異議申立番号 | 異議2017-700633 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-06-21 |
確定日 | 2018-03-12 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6047256号発明「道路の塗装方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6047256号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-5〕について訂正することを認める。 特許第6047256号の請求項1,3-5に係る特許を維持する。 特許第6047256号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6047256号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年6月28日に特許出願され、平成28年11月25日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年6月21日に特許異議申立人谷口真魚(以下、「申立人」という。)より請求項1ないし5に対して特許異議の申立てがされ、平成29年9月27日付けで取消理由(発送日同年10月5日)が通知され、その指定期間内である同年12月4日に意見書の提出及び訂正請求がなさたものである。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の方法」と記載されているのを、「請求項1に記載の方法」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、「請求項1又は3に記載の方法」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、「請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の方法」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載から請求項2を引用しないものとするための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1?3の記載を引用する記載から請求項2を引用しないものとするための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1?4の記載を引用する記載から請求項2を引用しないものとするための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項1?4に係る訂正前の請求項2?5について、請求項3?5は、請求項2の記載を直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項2?5に対応する訂正後の請求項2?5は、一群の請求項である。 3 小括 したがって、上記訂正請求による訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項2?5について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 訂正後の請求項1?5に係る発明 本件訂正後の請求項1?5に係る発明は、下記のとおりのものである(以下、「本件発明1」等という。)。 なお、請求項2は、上記第2のとおり削除された。 本件発明1 「【請求項1】 ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを含む塗料組成物で道路を塗装する方法であって、 主剤と硬化剤のそれぞれを50?70°Cに加温し、それぞれの粘度を100?300cPとする工程と、 前記工程により温度及び粘度が調整された主剤と硬化剤とを別々に塗装ガンヘ送り込み、主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が1.00:1.05?1.00:0.95の範囲で塗装ガン内にて衝突混合させて、得られた混合物が該塗装ガンの先端部に取り付けられたスタティック混合機を通って、道路に吹き付けられ、道路の塗装が行われる工程とを含むことを特徴とする方法。」 本件発明3 「【請求項3】 前記主剤及び前記硬化剤が、無溶剤タイプであることを特徴とする請求項1に記載の方法。」 本件発明4 「【請求項4】 前記衝突混合により得られた混合物がスタティック混合機内を通過する距離が3?10cmであることを特徴とする請求項1又は3に記載の方法。」 本件発明5 「【請求項5】 前記塗装ガンと前記スタティック混合機の合計質量が2kg未満であることを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の方法。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1?5に係る特許に対して平成29年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア(ア)請求項1?5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証および/または甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?5に係る特許は、取り消されるべきものである。 (イ)請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、そして、甲第5号証、甲第6-1号証及び甲第7号証に記載される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。 イ 請求項2に係る特許は、その発明の詳細な説明が同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特表2014-521495号公報 甲第2号証:特開2005-139255号公報 甲第3号証:特開2001-49611号公報 甲第4号証:特開2009-155552号公報 甲第5号証:特表平6-511186号公報 甲第6-1号証:Probler P2 Elite Dispense Gun USER MANUAL、GRACO INC. AND SUBSIDIARIES、米国、2014.02.発行 甲第6-2号証:Probler P2 Elite ディスペンスガン ユーザーマニュアル、GRACO INC. AND SUBSIDIARIES、米国、2017.01.発行 甲第7号証:Probler Dispense Gun USER MANUAL、GRACO INC.、米国、2013.11.発行 甲第8号証:特開2003-190839号公報 3 甲号証の記載 (1)甲第1号証について ア 甲第1号証の記載 (ア)【請求項1】 「複数成分流体配合物の二つ以上の成分をそれぞれ圧力下で送出するための一組の比率定量ポンプと、 前記各流体成分を加熱するための加熱システムと、 前記各流体成分が圧力下で導入される混合・分注装置であって、衝突混合エレメントと、背圧エレメントと、一つ以上の静止型混合エレメントを収容した静止型混合器ハウジングと、混合した材料を分注するオリフィス部とを備える混合・分注装置と を備える複数成分スプレーシステムであって、 前記混合・分注装置の前記衝突混合エレメントは、前記各流体成分が圧力下で導入されて、衝突混合によって初期混合されるように構成された、入口ポート及び混合チャンバを有し、 前記混合・分注装置の前記オリフィス部は、前記静止型混合器ハウジングの下流に位置し、 前記背圧エレメントは、衝突混合エレメントの各流体成分用入口ポートと前記オリフィス部との間に位置し、 静止型混合エレメントの交換を容易にするため、前記静止型混合器ハウジングは容易且つ迅速に取外し可能であり、 前記スプレーシステムはさらに、 前記一組の比率定量ポンプによって発生した圧力を監視及び調節するための装置と、 前記流体成分の温度調節器と、 前記定量ポンプ間の設定比率を設定及び維持するための装置と を備える、複数成分スプレーシステム。 【請求項2】 前記温度が摂氏15?100度の範囲である、請求項1に記載のシステム。 ・・・・・ 【請求項10】 前記スプレーガンの重量が1.5kg未満である、請求項1に記載のシステム。」 (イ)「【0001】本発明は一般的に、装置を定期的に洗い流す若しくはパージするための溶剤、又は分注する材料の一部としての溶剤を使用せずに複数成分材料をスプレーするための方法及び装置に関する」 (ウ)「【0027】 本発明のスプレーシステムは、複数成分流体配合物の二つ以上の成分を、それぞれ圧力下で、ガンハウジング内に設置された混合・スプレー装置へ送出するための一組の比率定量ポンプと、各流体成分を、好ましくは混合・スプレー装置に入る各流体成分を独立して温度制御することを可能にする十分な制御下で、加熱するための加熱システムと、衝突混合エレメントと、各流体成分が別個の入口若しくは注入ポートを通って混合・スプレー装置の衝突混合エレメント部分に入る地点よりも下流に配置される、一つ以上の静止型混合エレメントを収容した静止型混合器ハウジングとを備える混合・分注装置と、衝突混合エレメント、及び流体導入地点とスプレーオリフィスとの間のどこかに好ましくは静止型混合エレメントの直上流に配置される背圧エレメントよりも下流に、配置されるスプレーオリフィスと、静止型混合器エレメントを収容する静止型混合器ハウジングを容易且つ迅速に取外すための手段とを備える。」 (エ)「【0029】・・・。本発明のシステムによれば、混合をガン内部で行い・・・」 (オ)「【0034】 図1は、一般に複数成分配合物を混合及びスプレーするための無溶剤システムを備える、本発明のスプレーシステム10の簡略化した概略線図であり、このシステムでは、部分A流体成分供給20と部分B流体成分供給30とが、部分A及び部分Bそれぞれのための一組の比率定量ポンプ40、50を通して圧送され、これらのポンプは、スプレーガン60とも称する本発明の混合・スプレー装置部分へ、機械的、電子的、若しくは当業者に公知の他の適切な手段によって設定可能な所定の体積比で、流体流を送出する。各流体を適切な圧力、温度、及び流量でスプレーガンへと送出すると共に、各流体成分を確実に一貫性をもって送出することができるように所望の体積比を充分な制御下で維持することができる、いくつかの機材パッケージが入手可能である。」 (カ)「【0041】 図7は、混合・スプレー装置80の好ましい実施態様の分解図である。この装置は衝突混合エレメント140からなり、この中に背圧エレメント150が挿入される。ワッシャ160は、この好ましい実施態様では衝突混合エレメント140上にねじ込まれる静止型混合器ハウジング180をシールする役割を果たす。静止型混合器エレメント140とガンハウジング90との間のシールを形成し、パージエアが逃げるのを防ぐと共に、混合・スプレー装置80とガンハウジング90との間に滑りばめを維持するために、Oリング170が使用される。静止型混合エレメント190が静止型混合器ハウジング180内に挿入され、スプレーオリフィス200によって所定位置に保持される。好ましいスプレーオリフィス200は、様々なサイズ及び形状のオリフィスで所定範囲の流量及び様々なスプレーパターンを提供する、簡単に取換え可能なリバーシブルチップ210を含む、一般に入手可能なタイプのものである。この図面には、流れ方向に対して垂直なチップ210を、オフ位置で示す。スプレーオリフィスは、ネジ付接続部によって静止型混合器ハウジング180に接続される。 【0042】 好ましい静止型混合エレメント190は、プラスチック製の使い捨てタイプであり、スプレーオリフィス200をねじって静止型混合器ハウジング180から外し、使い捨ての静止型混合エレメント190を回転させて取出し、新しいものを押し込んで交換することにより、迅速且つ簡単に交換可能である。次いでスプレーオリフィス200をねじって静止型混合器ハウジング180上に取付ければ、スプレーシステム10は再稼働可能となる。必要に応じて、この好ましい実施態様では、静止型混合器ハウジング180をねじって衝突混合エレメント140から外し、新たな静止型混合エレメント190が入った新たな静止型混合器ハウジング180と迅速に交換することができる。交換したものは、スプレー操作を妨げることなくライン外で再生可能である。このエレメントは、回転させて取出すか、熱で溶かす、焼く、若しくは焼き切る等の他の手段で取外すことができ、又は強制的に押出す及び/又は1リットル未満の少量の溶剤を使用して、このエレメントの取外しを補助することができる。さらに、好ましい実施態様では、様々な静止型混合器ハウジングが、いろいろな静止型混合エレメントを収容するための様々な長さ、様々な内径で、入手可能である。一つ以上のエレメント若しくは一つ以上のタイプのエレメントをハウジング内に設置して、当業者であれば特定の複数成分配合物に合わせて適当に決定できる様々な混合特性を提供することもできる。 ・・・ 【0044】 図9は、好ましい衝突混合エレメント140の側面図である。ネジ220によって静止型混合器ハウジング180に接続する。この図面に示す流体入口つまり注入ポート230は、複数の成分流体の一つが加圧下で注入されるところである。衝突混合エレメント140の反対側にもう一つあるが、同じ大きさとする必要はない。 ・・・ 【0047】 図12は、好ましい衝突混合エレメント140の断面側面図である。後端には、アクチュエータに取付けるためのネジ110があり、反対側つまり前端には、静止型混合器ハウジング180に取付けるためのネジ220がある。流体成分注入ポート230、240並びに衝突混合チャンバ250の配置は、この図面から非常にはっきりとわかる。前端に設けたより大きな背圧エレメント挿入用空洞270は、背圧エレメント150を挿入するところである。」 (キ)「【0058】 各流体成分間の体積比は、二成分配合物の場合、大きな困難を生じることなく、1:1から10:1までの範囲とすることができる。」 (ク)「【0074】 静止型混合器ハウジング180及びこれに関連する静止型混合エレメント190の長さは、適切な混合を行うのに必要な最小限の長さとする。この長さは、各操作周期の終わりに混合・スプレー装置80から一掃すべき混合材料の量を最小限とするために、最小限とする。静止型混合器ハウジング180の公称直径は1/4インチ(0.63cm)で、使い捨てプラスチックエレメント190を収容し、好ましい実施態様においてこのエレメントは、長さ1/4インチのセグメント、つまり「巻き」から形成され、各セグメントは静止型混合器ハウジング180内で巻きを形成している。これらは様々なスプレー機材供給者から容易に入手可能である。静止型混合エレメント190は、混合材料が溜まって、システムが作動不能となるほど流量を妨げている場合に、容易に回転させて取り出すことが できる、高密度ポリエチレン若しくはナイロン等、様々なプラスチック材料から製造される。好ましい実施態様で使用する静止型混合器は、巻き回数で特定される、4回、6回、8回、10回、及び12回のものである。・・・」 (ケ)「【0077】 本発明の実験に導入したRoosenの'490号特許の最初の配合物は、重量比による主要成分として石膏、硫酸カルシウムの二水和物を含む、二部分型複数成分配合物である。これは、最もシンプルには、部分Aがポリオールサイドを含む液体石膏であり、部分Bが当業界で一般にMDIと称される高分子ジフェニルメタンジイソシアネートである慣用の液体イソシアネートである、二部分型ポリウレタンとして表現することができる。・・・」 (コ)「【0078】 実験に使用したRoosenの'490号特許の最初の配合物(石膏41?42%PBW)の部分A及び部分Bの流体成分組成はそれぞれ以下の通りである。 石膏41?42%PBW配合物 部分A流体成分: 石膏 部分Aの48.95%PBW ヒマシ油 部分Aの45.33%PBW 二酸化チタン 部分Aの3.16%PBW 酸化鉄(黒) 部分Aの1.36%PBW 合成ゼオライト 部分Aの1.20%PBW 部分B流体成分: ダウ PAPI-27 MDI 部分Bの100%PBW 【0079】 複合配合物は、部分Aと部分Bとの最適比が5:1PBW若しくは83:17PBWであるが、80:20PBWから85:15PBWの範囲もあり、この範囲では特性は大きく異なるが、混合材料は適切に硬化する。定量ポンプについて用いるには、重量比を体積比に換算する 必要がある。この実験の目的のために、以下の二つの体積比を選択した。 4.66:1(部分A対部分B)PBV(体積比)、及び 5.00:1(部分A対部分B)PBV(体積比)。 【0080】 比率は、油圧作動式比率定量ユニット40、50のピストン及びシリンダを交換することにより、手動で再設定した。4.66:1PBVの比率は、低比率石膏配合物に使用するものであり、高比率石膏配合物の場合には5.00:1に変更した。石膏を部分A流体成分に追加することによりその比率が高くなると、適当な物理的特性で混合材料を効果的に硬化させるために、重量比及び体積比を増加させる必要があった。 【0081】 いくつかの実験では、部分A流体成分に添加する発泡剤として、エタノール40%、水60%の混合物を使用した。またいくつかの実験では、ジブチルスズジラウレート(DBTL)である硬化剤(触媒/促進剤)を部分A流体成分に添加した。これらの実験において、添加した発泡剤若しくは硬化剤の量は、いずれも0.25%PBWを越えなかった。 【0082】 ・・・静止型混合エレメント190を手で押し込むことにより、静止型混合器ハウジング180内にぴったりと嵌合する。静止型混合器ハウジング180は、使い捨てプラスチックエレメント190を保持しており、好ましい実施態様では、このエレメントは長さ1/4インチのセグメントつまり「巻き」で構成され、各セグメントが静止型混合器ハウジング180内で巻きを形成している。 【0083】 実験において変化させた機材構成、配合物、及び方法の詳細は以下の通りである。」 (サ)「【0090】 【表7】 石膏50?55%PBW 定量ポンプ40、50の比率4.66:1PBV ・・・ 部分Aの温度 150°F(66℃) 部分Bの温度 120°F(49℃) ・・・ 塗布の説明 成型シングル屋根板(厚さ1/4?1インチ(0.5?2.5cm)) 所見 優れた可撓性、仕上がり、及び外観が得られた」 当決定注:上記の【表7】は、石膏の重量比を50?55%とし、部分A体部分Bの体積比を4.66:1とし、部分A及び部分Bの温度を、それぞれ66℃及び49℃とした実験がなされ、その結果をまとめたものである。 (シ)「【0093】 混合の品質は、作製した試料に条線、傷、若しくは積層が数ヶ所しかない、若しくは全くない場合に、顕著に高いと判断する。石膏50%PBWを超える高石膏含有量でのスプレーを成功させる性能は、予期できない特別な結果であった。高温では、石膏62?65%PBWの部分A流体成分の粘度は約100,000cP(センチポイズ)であり、部分B流体成分の粘度は約100cPであり、前者は後者の約1,000倍高かった。」 (ス)「【0099】 本発明の無溶剤スプレーシステム10で作製する製品は多種多様である。本発明の最も明白な用途は、防食及び審美的理由のために表面をスプレーコーティングすることであり、・・・・」 (セ)「【0101】 道路標示線も、本発明のスプレーシステム10を用いて製造できるものの別の一例である。橋梁や、工場の床、飛行機の格納庫、駐車場等の通行面のコーティングも、硬化速度を加速して、若しくは硬化速度を加速せすに、使用できる本発明の性能を生かすことができる。例えば、道路に破線を形成する場合、各作業の終わりに溶剤を使ってシステムをパージする必要がないので、長さの決まっていない所定パターンの道路標示線を非常に効率的に無駄なく形成するように本発明のスプレーシステム10を適合させることは、比較的簡単である。道路標示線の各破線ごとに止まって、スプレーオリフィスを止める必要性について、上記の実験において、Roosenの'490号特許の配合物を用いて試験を行った。」 (ソ)下記の図面から、以下の事項が看てとれる。 a 図7:衝突混合エレメント140の先端部に、静止型混合エレメント190が挿入される静止型混合器ハウジング180が取り付けられる点。 b 図9及び図11:衝突混合エレメント140の端部に、静止型混合器ハウジング180を接続するためのネジ220が形成されている点。 c 図12:衝突混合チャンバ250が衝突混合エレメント140の内部に配置されている点。 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アによれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 (甲1発明) 「衝突混合エレメント140と静止型混合エレメント190を備える混合・分注装置を使用して、ポリオールサイドを含む液体石膏である部分Aと、液体イソシアネートである部分Bとを含む二部分型ポリウレタンで道路にスプレーする方法であって、 二部分型ポリウレタンの配合物である石膏の重量比が50?55%PBWのものにつき、 各流体成分を温度制御し、部分Aを66℃に加熱し、部分Bを49℃に加熱し、 各流体成分の部分Aと部分Bを衝突混合エレメント部分に注入し、部分Aと部分Bの体積比が4.66:1で、衝突混合エレメント140内の衝突混合チャンバ220にて衝突混合させて、得られた二部分型ポリウレタンが衝突混合エレメント140の先端部に取り付けられた静止型混合エレメント190を通って、道路にスプレーされ、道路標示線が製造される方法。」 (2)甲第2号証について ア 甲第2号証の記載 (ア)「【請求項1】 末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、活性水素含有化合物、及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する硬化剤とを反応させて得られる2液型ポリウレタン組成物であって、主剤及び/又は硬化剤が減粘剤として脂肪酸エステルを含有する主剤と硬化剤とを高圧2液型吹付け装置によって対象物に吹付け、硬化させて得られることを特徴とする2液型ポリウレタン組成物。」 (イ)「【0014】 スプレー工法において、主剤及び硬化剤の粘度は、常温で300?600mPa程度であり、スプレー施工に適用するに際して、主剤及び硬化剤をそれぞれ装置内で加熱し、所望の温度で粘度を略100mPa程度まで低減し、その温度を維持してスプレーガンに送り、2液を混合して被施工物(対象物)に吹付けるのが好ましい。 本発明において、減粘剤として脂肪酸エステルの使用量は、DOPを可塑剤として用いる場合に比べ少なくても、主剤の粘度を所望の値に調整できる。 【0015】 本発明で用いられる硬化剤は、活性水素含有化合物、有機酸金属塩を含む触媒を含有してなるものである。 活性水素含有化合物としては、通常、一分子中に2以上の水酸基を有するポリオール又は一分子中に2以上のアミノ基を有するポリアミンであり、ポリオールとポリアミンとを併用してもよい。 ポリオールとしては、例えば、比較的低分子量の多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールの変成物を挙げることができる。」 (ウ)「【0026】 本発明の2液型ポリウレタン組成物は、高圧2液型吹付け装置により、被施工物に吹付けて均一な塗膜を形成することができる。施工塗膜の厚みは1回の施工で0.5?5mm程度であり、必要により数回重ねて吹付けても良い。また、本発明の組成物は、低温(5℃)における初期硬化性も良好であり、ダレのない均一な膜を形成できる。 このような特徴を有する本発明の2液型ポリウレタン組成物は、各種の建造・構造物の塗装に有用であり、この組成物の塗膜を壁面並びに底面に形成した用水路又は水耕栽培用プール、建造物の屋根、床等の表面への塗膜形成施工が可能である。 これらの塗膜の性状は優れ、施工の作業性は優れている。」 (エ)「【0028】 実施例-1 主剤として、コスモネートPH(ピュアMDI:三井武田ケミカル社製)18.716重量部、およびアクトコールD-3000(数平均分子量3000のポリプロピレンエーテルジオール:三井武田ケミカル社製)41.284重量部とをファインエステルR-1000(ヌカ脂肪酸エステル:ミヨシ油脂社製)40.000重量部の存在下にて90℃、3時間反応させてNCO%5.0、粘度400mPa・s/25℃のプレポリマーを得た。 一方、硬化剤として、アクトコールD-700(数平均分子量700のポリプロピレンエーテルジオール:三井武田ケミカル社製)90.344重量部、Ethacure#100(ジエチルトルエンジアミン:アルベマール浅野製)9.156重量部、プキャットB-7(樹脂酸ビスマス:ビスマス金属含有量7%:日本化学産業製)1.500重量部、2-エチルヘキサン酸0.150重量部、チヌビンB-75(3種混合液状安定剤:チバガイギー社製)0.500重量部を混合、粘度400mPa・s/25℃の混合液を調整した。 主剤(A)と硬化剤(B)をA/B=3.3/1(容量比)、NCO Index 1.1にて、ガスマー社製H-20スプレーマシンを用いて吹付を行った。スプレーマシンへの送液はグラコ社製サプライポンプ(エアー駆動2:1タイプ)に空気圧0.5MPaをかけて行った。スプレーマシンは静止時圧力14MPa、スプレー時圧力10?12MPaで使用した。 液の温度調整は主剤プライマリーヒーター65℃、硬化剤プライマリーヒーター65℃、ホースヒーター60℃に設定した。 スプレーガンはグラスクラフト社製プロブラーガンのラウンドチャンバー#1を用いて吹付を行った。 モールドは厚さ約1.5mmのポリプロピレン板を用い、3?5回の積層を行い厚さ約2mmの塗膜を形成した。 【0029】 実施例2-7 実施例1と同様の方法で、使用する材料およびそれぞれの使用量を表1に示すように変えて塗膜を形成した。使用した材料及び使用量並びに評価結果を表1に纏めて示す」 (オ)「【0034】 スプレー工法による2液型ポリウレタン組成物は、各種建造物、構造物の表面に塗膜を形成するための施工方法、得られる塗膜の性能などに優れた工法として広く実用化されている。 本発明は、この工法に一段と優れた適用性を示す組成物として、また、使用される減粘剤及び硬化触媒などが、環境衛生上問題がなく、また、作業性及び安定性が改善できる。 このように、本発明は環境衛生面でも従来実用されている施工法に変わる方法として産業上極めて有用である。」 (カ)段落【0032】【表1】には、以下の事項が記載されている。 ・実施例-3及び実施例-4の主剤の粘度(mPa・s)(25℃)が、450である点。 ・実施例-3及び実施例-4の硬化剤の粘度(mPa・s)(25℃)が、300である点。 ・実施例-3及び実施例-4の主剤/硬化剤の配合比(容量比)が、1/1である点。 ・実施例-3及び実施例-4の主剤及び硬化剤の設定温度(℃)が60℃である点。 イ 甲第2号証に記載された発明 上記アによれば、甲第2号証(特に実施例3,4)には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 (甲2発明) 「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、活性水素含有化合物(ポリオールとポリアミンを併用)及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する硬化剤とを反応させて得られる2液型ポリウレタン組成物で、建造物の床等の表面へ塗膜を形成する方法であって、 粘度(mPa・s)(25℃)が450cPである主剤と粘度(mPa・s)(25℃)が300cPである硬化剤を、いずれも60°Cに温度調整し、 前記主剤と硬化剤とをグラスクラフト社製のプロブラーガンに送り、主剤と硬化剤の容量比が1/1でプロブラーガンにて混合させて、得られた2液型ポリウレタン組成物を建造物の床等の表面に吹き付けられ、壁面並びに底面に形成した用水路又は水耕栽培用プール、建造物の屋根、床等の表面に塗膜が形成される方法。」 (3)甲第3号証について ア 甲第3号証の記載 (ア)「【請求項1】ゲルタイムが30秒以上、300秒以下に調製された二成分型ポリウレタン樹脂の層に、ゲル化前に骨材を散布して得られる防滑舗装層。」 (イ)「【請求項3】二成分型ポリウレタン樹脂がイソシアネート成分と活性水素成分を含んでなり、その活性水素成分が・・・含硫芳香族ジアミンを含む請求項1記載の防滑舗装層。」 (ウ)「【請求項5】二成分型ポリウレタン樹脂の層が、二成分圧送・混合機を用いてスプレー塗布することにより形成されるものである請求項1記載の防滑舗装層。」 (エ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は加重・走行耐久性、防滑性、耐摩耗性、耐油性、防水性、下地伸縮追従性、施工性、硬化性に優れる屋外あるいは建造物内部の駐車場構造体、重車両走行帯、その他防滑性を必要とする通路に用いる防滑舗装層およびその施工方法に関するものである。」 (オ)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は吹き付ける速硬化型ポリウレタンエラストマーのゲル化時間を調節して、エラストマーの吹き付けと骨材散布作業との間に時間的な余裕を持たせ、該エラストマーと骨材の接着性が優れ、なおかつスロープ面でも垂れが起こらず、低温下においても数時間で実用強度が発現する、軽量で高強度、高伸び率の防滑舗装層およびその施工方法を提供することである。」 (カ)「【0008】イソシアネート成分は、有機イソシアネートまたはイソシアネート基の一部を、たとえば分子量100?10,000のポリオールと反応させて得られる部分プレポリマーであるが、必要に応じて可塑剤または難燃剤を添加しても良い。・・・」 (キ)「【0010】活性水素成分は、分子量100?10,000程度のポリオールと鎖延長剤として前記一般式(1)で示される含硫芳香族ジアミンを含み、必要により他の助剤、たとえば有機金属触媒、着色剤、難燃剤、消泡剤、可塑剤、充填剤、シランカップリング剤などを含んでいてもよい。・・・一般式(1)<省略>・・・。」 (ク)「【0014】本発明の防滑舗装層の形成は、イソシアネート成分および活性水素成分の二成分を圧送、混合、塗布し、樹脂層がゲル化するまでに骨材を散布することにより行われる。二成分の混合の形式としては、衝突混合、スタティック混合、ダイナミック混合などがあり、その装置としては前記防水層の形成で用いたと同じものが使用しうる。・・・」 (ケ)「【0015】 【実施例】次ぎに本発明の実施例、比較例、評価試験をあげて本発明をさらに具体的に説明する。 1.使用した原材料 ・L-M:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(NCO% 33.7)(BASF社製 ルプラネートM) ・L-MM103:カルボジイミド変性液状MDI(NCO% 29.0) (BASF社製 ルプラネートMM-103) ・・・・。」 (コ)「【0017】・・・ A-3 L-M(391g)にポリオール2(83g)とポリオール3(332g)を加え、窒素気流下80℃で3時間撹拌しながら反応させた後に、L-MM103(44g)およびDOP(150g)を加え、NCO%13、粘度500mPa.s/25℃、比重1.08(25℃)の部分プレポリマーを得た。」 (サ)「【0019】・・・ B-5 含硫ジアミン化合物2(249)にポリオール1(722g)を加え、30分間高速ディスパーで撹拌した後、顔料(20g)、耐候安定剤(3g)、消泡剤(1g)、硬化触媒2(5g)を順次添加、撹拌を行ない粘度620mPa.s/25℃、比重1.07の混合レジンを得た。 ・・・。」 (シ)「【0021】 4.ポリウレタン樹脂C-1?C-10の調製 C-1 主剤として70℃に加熱したA-1、硬化剤として60℃に加熱したB-1をそれぞれガスマー社製 H2000を用いて圧送し、プロブラーガンにて離型フィルム上に約2kg/m2吹き付けを行った。なお、このときのゲルタイムは150秒であった。また得られたエラストマーを25℃下で7日間硬化養生したのち脱型し、JIS K6253記載のタイプDデュロメータにてD硬度を測定したところ58であった。また、JIS K6301記載の引張物性試験を行ったところ引張強度22MPa、伸び率240%であった。 ・・・ C-5 主剤として60℃に加熱したA-3、硬化剤として60℃に加熱したB-5を用い、同様に圧送、吹き付けを行った。このときゲルタイムは200秒であった。また同様にして物性試験を行ったところ、D硬度45、引張強さ15MPa、伸び率300%であった。」 (ス)段落【0034】【表4】には、以下の事項が記載されている。 ・実施例6(防滑舗装層のエラストマーとしてC-5(1.5)が採用された例)の「垂れ性」、「オープンタイム(秒)」、「耐加重磨耗試験」、「繰り返し疲労試験」及び「滑り抵抗性」が、いずれも◎ないし○と評価されている点。 イ 甲第3号証に記載された発明 上記アによれば、甲第3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。 (甲3発明) 「イソシアネート成分(A-3)(NCO%13、粘度500mPa.s/25℃、比重1.08(25℃)の部分プレポリマー)と、活性水素成分(B-5)(含硫ジアミン化合物2(249)にポリオール1(722g)を加えた、粘度620mPa.s/25℃、比重1.07の混合レジン)とを含む二成分型ポリウレタン樹脂で、屋外あるいは建造物内部の駐車場構造体、重車両走行帯、その他防滑性を必要とする通路に用いる防滑舗装層を施工する方法であって、 主剤としてイソシアネート成分(A-3)を60℃に加熱し、硬化剤として活性水素成分(B-5)を60℃に加熱し、 加熱したイソシアネート成分(A-3)および加熱した活性水素成分(B-5)をそれぞれ圧送し、衝突混合して、プロプラ-ガンにて吹き付けられ、屋外あるいは建造物内部の駐車場構造体、重車両走行帯、その他防滑性を必要とする通路の防滑舗装層が形成される方法。」 (4)甲第4号証について ア 甲第4号証の記載 (ア)「【請求項1】ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール、芳香族ジアミン及びすべてのα位に配位した炭素原子が分岐した構造を有する2級ジアミンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する無溶媒主剤(1)、並びに、脂肪族多官能イソシアネートを含有する無溶媒硬化剤(2)からなることを特徴とする無溶媒2液型塗料組成物。」 (イ)「【0027】本発明の無溶媒2液型塗料組成物の塗布方法としては特に限定されないが、例えば、上記無溶媒主剤(1)と無溶媒硬化剤(2)の2液の成分を衝突混合させて噴霧する2液衝突混合スプレー塗布を挙げることができる。上記2液衝突混合スプレー塗布は、高圧2液衝突混合型吹付装置を使用することが好ましい。更に、塗布直前に上記無溶媒主剤(1)と無溶媒硬化剤(2)とを混合し、ドクターブレード法等の塗布方法により塗装することもできる。また、2液をエアレスで連続的に押し出す方法や、スタティックミキサーで混合し、連続的にスプレーする方法等も使用できる。上記無溶媒主剤(1)と無溶媒硬化剤(2)とを混合した際に、ゲルタイムが短すぎると均一な塗膜を得ることができないおそれがある。・・・」 (ウ)「【0042】本発明の無溶媒2液型塗料組成物は、遮熱塗料として使用することができるため、特に、道路面等の舗装体に用いた場合には、遮熱性塗膜を舗装体の表面に付与することができ、これによって、上述のようなヒートアイライド現象等の問題にも対応することができるため好ましい。上記舗装体としては特に限定されず、例えば、アスファルト舗装面、コンクリート舗装等を挙げることができる。」 イ 甲第4号証に記載の事項 甲第4号証には、上記アの(ア)?(ウ)に対応して、以下の(ア)?(ウ)の事項が記載されている。 (ア)ポリオールおよびジアミンのうち少なくとも一種の化合物を含有する無溶媒主剤(1)、並びに、イソシアネートを含有する無溶媒硬化剤(2)からなる、無溶媒2液型塗料組成物。 (イ)無溶媒主剤(1)と無溶媒硬化剤(2)の2液の成分を衝突混合させて噴霧する2液衝突混合スプレー塗布を行うこと。 (ウ)無溶媒2液型塗料組成物を、遮熱塗料として使用することができ、道路面等の舗装体に用いるのが好ましいこと。 (5)甲第5号証について ア 甲第5号証の記載 (ア)「作業の場合、本発明の装置を使用して混合及び分配する多数の成分の夫々は圧力下に成分供給タンク(図示されず)などから供給される。このような供給タンクの常用サイズは特定用途及びその要求に応じて5?30リットルにわたる。 ・・・・ 例えばポリウレタンフォーム系の場合、液体成分は公知のMDI.TODI又は他の芳香族、ナフサニック(naphthanic)もしくは脂肪族ジイソシアナートのような有機イソシアナートとエチレン、プロピレン、テトラメチレン、その他のグリコールのようなポリオ-ル、又は例えばポリェチレンプロピレンアジパートのようなポリエステルからなる。 引き続く重合のため混合室へ供給されるこれら液体成分の夫々の比は重要であり、ポリイソシアナートとポリオールの比は種々の性質及び特徴を有する生成物を得るため約0.8から1.2以上まで変化することが出来る。 選択的にポリウレタンフォーム系の場合、ポリオールはイソシアナートと反応してプレポリマーを形成することが出来、このプレポリマーは最終生成物を得るためジイソシアナート、トリイソシアナート又は他のイソシアナートと混合される液体成分の1つを含む。 本発明の多成分分配装置は前述のように特にポリウレタンフォーム系に有利に使用されるけれど、本装置は多数の成分を混合及び分配する任意の系に使用することが出来、特に多数の成分が互いに反応性であり、且つ各成分を混合及び分配するまで互いに別個に保持することが望ましい場合に有効である。」(8頁左上欄9行?右上欄19行) (イ)「中心孔112は多数の成分が孔112内で個々の成分の衝突混合の技術により混合される室を形成する。混合室112は挿入体100に形成された溝110の夫々と各溝110に結合し多数の射出ポート114.115、116及び117により連通する。 ・・・・ 液体成分の個々の流れを撹乱が発生するように室の対向壁に対して向けることによって達成される衝突混合は成分相互の良好且つ徹底的な混合を可能にし且つ室内の直交流問題が避けられる。一度多数の成分を混合室112へ導入し、徹底混合すると、付加的成分の混合室112への引き続く導入は混合した材料を分配のズル16の内部空間118へ押し込む。」(7頁右下欄3行-第8頁左上4行) (ウ)「第2段の混合過程を達成するため、ノズル16の内部空間118内の混合室挿入体100から下流の特に混合室112の出口開口の直近の位置に静的ミキサ120を備えることが出来る。 この方法で混合室112から流れる材料は直ちに静的ミキサに導入され、このミキサは螺旋通路を備え、材料はその混合を続けるためこの通路を介して押し込まれる。静的ミキサ120は分配ノズル16内の多数の成分の付加的混合を達成するため種々の他の形態を取りうることは明らかである。」(8頁右上欄23行?左下3行) (エ)「本発明の多成分分配装置は前述のように特にポリウレタンフォーム系に有利に使用されるけれど、本装置は多数の成分を混合及び分配する任意の系に使用することが出来、特に多数の成分が互いに反応性であり、且つ各成分を混合及び分配するまで互いに別個に保持することが望ましい場合に有効である。」(8頁右上欄15行?左下19行) イ 甲第5号証に記載の事項 甲第5号証には、上記アの(ア)?(エ)に対応して、以下の(ア)?(エ)の事項が記載されている。 (ア)多成分を分配する装置を使用して混合および分配する液体成分として有機イソシアナート成分、および、ポリオール成分であること。 (イ)多成分をそれぞれ入れる混合室が、混合衝突によって混合される室であること。 (ウ)衝突混合を行う混合室(112)の下流に、静的ミキサ(120)を備えること。 (エ)多成分分配装置を、多数の成分を混合及び分配する任意の系に使用することができること、特に多数の成分が互いに反応性であり、且つ各成分を混合及び分配するまで互いに別個に保持することが望ましい場合に有効であること。 (6)甲第6-1号証及び甲第6-2号証について 甲第6-1号証及び甲第6-2からは、以下の事項が看て取れる。 ア Probler P-2がポリウレア用ディスペンスガンであること。(1頁) イ イソシアネートおよびポリオールの2種類の液体が、この装置(Prob1er P-2塗装ガン)で用いられ塗装されること。(9頁) ウ Prob1er P-2に用いることができるオプションキットとして、静的ミキサーキット(Static Mixer Kit:スタティック混合キット)であるGC1956。(29頁) エ Probler p-2がGraco Company(グラコ社)の製品であること。(最終頁) (7)甲第7号証について 甲第7号証からは、以下の事項が看て取れる。 ア Prob1erが、ポリウレア用ディスペンスガンであること。(1頁) イ イソシアネートおよびポリオールの2種類の液体が、この装置(Prob1er塗装ガン)で用いられ塗装されること。(9頁) (8)甲第8号証について ア 甲第8号証の記載 (ア)「【請求項1】2液衝突混合型ガンの吐出口に取り付け、前記2液衝突混合ガンから噴霧された噴霧粒子を前記ノズルの内壁に衝突させて液状化させるノズルであって、内径5?20mmの部分の長さが100mm以上であることを特徴とする液状化ノズル。 ・・・ 【請求項3】請求項1または2に記載の液状化ノズルを2液衝突混合型ガンの吐出口に備えていることを特徴とする塗装機。 【請求項4】指触硬化時間が5分以上の2液速硬化型樹脂組成物を、請求項3に記載の塗装機を用いて、基材に対して塗装して硬化樹脂膜を得ることを特徴とする硬化樹脂膜形成方法。 ・・・ 【請求項6】前記2液速硬化型樹脂組成物は、2液ポリウレア硬化型樹脂組成物および/または2液ポリウレタン硬化型樹脂組成物である請求項4または5に記載の硬化樹脂膜形成方法。」 (イ)「【0014】上記液状化ノズルが取り付けられる2液衝突混合型ガンとしては特に限定されず、例えば、プロポーションユニットとして、米国ガスマー社製H-2000、米国ガスマー社製H-3500、米国ガスマー社製FF-1600、東邦機械工業社製2成分高圧吐出混合マシンMODEL HF-100等を挙げることができる。また、機械的セルフクリーニング機構をそなえた高圧2液衝突混合型吹付装置用混合塗エガンとしては、例えば、米国ガスマー社製「GX-7ガン」、米国ガスマー社製「GX-7ー400ガン」等を、また、エアクリーニング機構をそなえたものとしては。米国グラスクラフト社製「プロブラーガン」等を挙げることができる。これらガンの衝突混合圧力は、通常、6?16MPaである。」 (ウ)「【0018】このような2液速硬化型樹脂組成物としては、例えば、ポリイソシアネート成分と、ポリアミン成分および/またはポリオール成分とがらなるものである。上記2液の成分は、塗布作業性の観点から、塗装機に供される前に、例えば、衝突混合可能な粘度を充分に保つことができる温度、例えば、40°C以上に加温されていることが好ましい。」 イ 甲第8号証に記載の事項 甲第8号証には、上記アの(ア)?(ウ)に対応して、以下の(ア)?(ウ)の事項が記載されている。 (ア)液状化ノズル、それを備えた塗装機およびそれを用いた硬化樹脂膜形成方法。 (イ)米国グラスクラフト社製「ブロブラーガン」が、2液衝突混合型ガンであること。 (ウ)2液衝突混合ガンから噴霧される2液速硬化型樹脂組成物として、ポリイソシアネート成分と、ポリアミン成分および/またはポリオール成分とがらなるものであること。 4 判断 (1)特許法第29条第2項について ア 本件発明1について (ア) 甲1発明を主引用例とした場合の対比・判断 a 対比 (a)甲1発明の「部分A」は、ポリオールサイドを含んでおり、「部分B」は、イソシアネートを含んでいる。甲第1号証には、いずれの部分を主剤または硬化剤というか明示していないが、ここで、甲1発明の部分Aと部分Bの重量比あるいは体積比をみると、部分Aの方が大部分を占めることからみて、甲1発明におけるポリオールサイドを含む「部分A」が主な剤であるといえ、また、甲第1号証の段落【0081】には、「硬化剤(触媒/促進剤)を部分A流体成分に添加」とあり、部分Aが硬化剤を添加される側であると解されることから、ポリオールを含む「部分A」が主剤に該当し、イソシアネートを含む「部分B」が硬化剤に該当するといえる。 そうすると、甲1発明の「ポリオールサイドを含む液体石膏である部分A」は、本件発明1の「ポリオール樹脂」を「含む主剤」に該当し、また、甲1発明の「液体イソシアネートである部分B」は、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」に相当する。 (b)66℃の温度は、50?70℃の範囲に含まれることから、甲1発明の主剤である「部分A」を加熱して「66℃」に「温度制御」することは、本件発明1の「主剤」を加温して「50?70℃」に「温度制御」することに相当する。 (c)甲1発明の衝突混合エレメント部分は、混合・分注装置の一部、すなわちスプレーさせるための材料を混合するのみならず混合させた材料を吐出させる機能も持ちあわせるから、ガンといえる。したがって、甲1発明の各流体成分の部分Aと部分Bを注入する「衝突混合エレメント部分」は、本件発明1の主剤と硬化剤とを別々に送り込む「塗装ガン」に相当する。 (d)甲1発明の部分Aと部分Bを衝突混合させる場所である衝突混合チャンバ220は、衝突混合エレメントの内部にあるから、甲1発明の「衝突混合エレメント140内の衝突混合チャンバ220にて衝突混合させて」は、本件発明1の「塗装ガン内にて衝突混合させて」に相当する。 (e)甲1発明の「二部分型ポリウレタンで道路にスプレーする方法」は、本件発明1の「塗料組成物で道路を塗装する方法」に相当し、甲1発明の「衝突混合」の結果、「得られた二部分型ポリウレタン」は、本件発明1の「得られた混合物」に相当し、甲1発明の「静止型混合エレメント190」は、本件発明1の「スタティック混合機」に相当し、甲1発明の「道路にスプレーされ、道路標示線が製造される」は、本件発明1の「道路に吹き付けられ、道路の塗装が行われる工程」に相当する。 ところで、甲1発明の認定の根拠とした甲第1号証の【0084】【表7】には、配合物の石膏のPBWにつき、「石膏50?55%PBW」と記載されている。これに対して、甲第1号証の【0093】には、「石膏62?65%PBWの部分A流体成分の粘度は約100,000cP(センチポイズ)であり、部分B流体成分の粘度は約100cPであり、前者は後者の約1,000倍高かった。」と記載されている。 しかしながら、「石膏50?55%PBW」における部分A流体成分及び部分B流体成分の粘度については、甲第1号証には記載されておらず、「石膏62?65%PBW」における部分A流体成分及び部分B流体成分の粘度を、成分の異なる例、すなわち、「石膏50?55%PBW」(【表7】の実験)の各粘度とすることもできない。 したがって、甲1発明(石膏50?55%PBWのもの)において、部分Aを66℃で加熱し、部分Bを49℃で加熱した場合の粘度についてのデータは開示されていないといえる。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「ポリオール樹脂を含む主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを含む塗料組成物で道路を塗装する方法であって、 主剤を50?70°Cに加温する工程と、 前記主剤と硬化剤とを別々に塗装ガンヘ送り込み、塗装ガン内にて衝突混合させて、得られた混合物が該塗装ガンの先端部に取り付けられたスタティック混合機を通って、道路に吹き付けられ、道路の塗装が行われる工程とを含むことを特徴とする方法。」 <相違点> 1 本件発明1では、塗料組成物に含まれる主剤をポリオール樹脂およびアミンが含まれたものとし、主剤及び硬化剤のそれぞれを50?70°Cに加温し、それぞれの粘度を100?300cPとする調整をしているのに対して、甲1発明では、塗料組成物に含まれる主剤をポリオールサイドを含む液体石膏(アミンを含まない)とし、主剤を66°Cに加温しているものの、粘度が不明で有り、硬化剤を49℃に加温していて粘度が不明である点。 2 塗装ガン内にて衝突混合させる主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が、本件発明1では、1.00:1.05?1.00:0.95の範囲であるのに対して、甲1発明では、4.66:1である点。 b 判断 相違点1について検討する。 (a)甲1発明への甲2発明の適用についての検討 甲2発明は、壁面並びに底面に形成した用水路又は水耕栽培用プール、建造物の屋根、床等の表面に塗膜が形成される方法であり、防水性等担保のためにコーティングを行うものである。一方、甲1発明は、道路標示線が製造される方法であり、識別のための標示を行うものであるから、甲2発明のような防水性コーティングとは目的が異なっており、甲2発明の塗膜を道路標示線の塗膜として用いる動機付けはないというべきである。 したがって、甲1発明の二剤に換えて、甲2発明の二剤を採用し、相違点1にかかる本件発明1のようにすることは、当業者が容易になし得ることではない。 仮に、甲1発明の二剤に代えて甲2発明の二剤を適用することができたとしても以下のとおり判断する。 甲2発明の「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤」と、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」とは、「イソシアネートを含む剤」で共通し、 甲2発明の「活性水素含有化合物(ポリオールとポリアミンを併用)及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する硬化剤」と、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」とは、「ポリオール樹脂及びアミンを含む剤」で共通するものといえる。 ここで、本件特許明細書における硬化剤についての記載をみると、段落【0055】【表1】に示された実施例の硬化剤は、その成分うち全部もしくは大部分がポリイソシアネートで構成されている(硬化剤成分のうちポリイソシアネートの欄は「100」と記載され、溶剤の欄は空欄または「10」と記載されている)。 これに対して、甲第2号証において、「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤」に関する記載をみると、段落【0028】(上記3(2)ア(エ))には、「主剤として・・・・NCO%5.0、粘度400mPa・s/25℃のプレポリマーを得た。」と記載されているように、イソシアネート基を意味する「NCO」の成分は、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー全体に対する割合がわずか5.0%である。また、「ウレタンプレポリマー」とは、あらかじめウレタン化反応をある程度まで進行させた未硬化の液状物である。 そうすると、イソシアネート基を意味する「NCO」の割合がわずか5.0%しか含まれていない「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」を硬化剤と解することは合理的でなく、甲2発明の「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含む主剤」が、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」に相当するとはいえない。また、甲2発明の「活性水素含有化合物(ポリオールとポリアミンを併用)及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する硬化剤」についても、硬化剤と解するのが合理的であって、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」に相当するとはいえない。 したがって、仮に、甲1発明に甲2発明を適用したとしても、相違点1に係る本件発明1の構成とはならない。 よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (b)甲1発明への甲3発明の適用についての検討 甲3発明は、屋外あるいは建造物内部の駐車場構造体、重車両走行帯、その他防滑性を必要とする通路の防滑舗装層が形成される方法であり、防滑機能が付された舗装層を形成するために混合された樹脂が吹き付けられるものである。一方、甲1発明は、道路標示線が製造される方法であり、識別のための標示を行うものであるから、甲3発明のように、防滑機能が付された舗装層を形成することとは目的が異なっており、甲3発明の混合された樹脂を道路標示線を製造するための材料として用いる動機付けはないというべきである。 したがって、甲1発明の二剤に換えて、甲3発明の二剤を採用し、相違点1にかかる本件発明1のようにすることは、当業者が容易になし得ることではない。 仮に、甲1発明の二剤に代えて甲3発明の二剤を適用することができたとしても以下のとおり判断する。 甲3発明の「イソシアネート成分(A-3)」である部分プレポリマーの主剤と、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」とは、「イソシアネートを含む剤」で共通し、 甲3発明の「活性水素成分(B-5)」(含硫ジアミン化合物2(249)にポリオール1(722g)を加えたもの)の硬化剤と、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」とは、「ポリオール樹脂及びアミンを含む剤」で共通する共通するものといえる。 ここで、本件特許明細書における硬化剤についての記載をみると、段落【0055】【表1】に示された実施例の硬化剤は、その成分うち全部もしくは大部分がポリイソシアネートで構成されている(硬化剤成分のうちポリイソシアネートの欄は「100」と記載され、溶剤の欄は空欄または「10」と記載されている)。 これに対して、甲第3号証において、「イソシアネート成分(A-3)」の部分プレポリマーの主剤に関する記載をみると、段落【0017】(上記3(3)ア(コ))には、「A-3・・・NCO%13、粘度500mPa.s/25℃、比重1.08(25℃)の部分プレポリマーを得た」と記載されているように、イソシアネート成分を意味する「NCO」の成分は、部分プレポリマー全体に対する割合がわずか13%である。 そうすると、イソシアネート成分を意味する「NCO」の割合がわずか13%しか含まれていない「部分プレポリマー」を硬化剤と解することは合理的でなく、甲3発明の「イソシアネート成分(A-3)」の部分プレポリマーの主剤が、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」に相当するとは言えない。また、甲3発明の「活性水素成分(B-5)」(含硫ジアミン化合物2(249)にポリオール1(722g)を加えたもの)の硬化剤についても、硬化剤と解するのが合理的であって、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」に相当するとはいえない。 したがって、仮に、甲1発明に甲3発明を適用したとしても、相違点1に係る本件発明1の構成とはならない。 よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (c)甲1発明への甲2発明及び甲3発明の適用についての検討 上記のとおり、甲1発明への甲2発明の適用、甲1発明への甲3発明の適用の動機付けはいずれもない。また、仮に、甲1発明に甲2発明及び甲3発明を適用することができたとしても、上記のとおり、甲2発明及び甲3発明はいずれにも「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」及び「イソシアネートを含む硬化剤」の2剤は有しないというべきであるから、本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないというべきである。 さらに、甲第4号証ないし甲第8号証をみても、塗装方法において、二剤を「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」及び「イソシアネートを含む硬化剤」とした記載ないしは示唆はない。 したがって、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 c 申立人の主張について 申立人は、「甲1発明および甲2記載の発明は、『ポリオールを含む第1成分およびイソシアネートを含む第2成分から構成される2液型ポリウレタン組成物を、スプレーガンを用いて、被塗物に塗装する』という点で共通する。従って甲1発明および甲2記載の発明の技術分野は関連している。また、組成物の構成(2液型ポリウレタン組成物)および塗装方法(スプレーガンを用いた塗装方法)の両方が共通することから、作用、機能も共通する。従って、甲1発明に甲2記載の発明を適用する動機付けは有り、当業者であれば、甲1発明のスプレーシステムによる塗装方法において、甲2記載の2液型ポリウレタン組成物を用いて塗装し、甲2記載の温度に主剤および硬化剤を加温して100CP程度まで粘度を下げることを容易に想到することができる。」と主張する。(申立書56頁2-14行) また、「甲1発明、甲2記載の発明および甲3記載の発明は、いずれも『ポリオールを含む第1成分およびイソシアネートを含む第2成分から構成される2液型ポリウレタン組成物を、スプレーガンを用いて、被塗物に塗装する』という点で共通する。従って甲1発明、甲2記載の発明および甲3記載の発明の技術分野は関連している。また、組成物の構成および塗装方法の両方が共通することから、作用、機能も共通する。」と主張する。(申立書56頁27行-申立書57頁11行) 上述bで説示したとおり、甲1発明と、甲2発明及び甲3発明は、塗装する目的が異なっているから、甲1発明に対して、甲2発明及び甲3発明を適用する動機付けは無いというべきである。 また、甲2発明及び甲3発明の主剤及び硬化剤は、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」及び「イソシアネートを含む硬化剤」とは対応しておらず、仮に甲1発明に甲2発明及び甲3発明を適用したとしても、本件発明1の構成とはならない。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 d 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された発明又は事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲2発明を主引用例とした場合の対比・判断 a 対比 甲2発明の「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤」と、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」とは、「イソシアネートを含む剤」で共通し、 甲2発明の「活性水素含有化合物(ポリオールとポリアミンを併用)及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する硬化剤」と、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」とは、「ポリオール樹脂及びアミンを含む剤」で共通し、 甲2発明の「反応させて得られる2液型ポリウレタン組成物で」と、本件発明1の「含む塗料組成物で」とは、二剤を含む「塗料組成物」で共通し、 「60℃」は、「50?70℃」の範囲に含まれるから、甲2発明の「剤」と「剤」を「60℃に温度調整」することは、本件発明1の「剤」と「剤」のそれぞれを「50?70℃に加温」する工程に相当し、 甲2発明の「ブロブラーガン」は、塗装するためのガンであるから、「塗装ガン」であるといえ、また別々に塗装ガンに送ることが明らかであるので、甲2発明の「剤」と「剤」とを「グラスクラフト社製のプロブラーガンに送り」「ブロブラーガンにて混合させて」は、本件発明1の「剤」と「剤」とを「別々に塗装ガンへ送り込み塗装ガン内にて」「混合させて」に相当し、 比「1/1」は、比「1.00:1.05?1.00:0.95」の範囲に含まれ、「容量比」は、「体積比」と同じ「かさ」を表す意味であるから、甲2発明の「剤」「剤」との「容量比が1/1」は、本件発明1の「剤」と「剤」の「体積比」が「1.00:1.05?1.00:0.95の範囲」に相当し、 甲2発明の「得られた2液型ポリウレタン組成物」は、本件発明の「得られた混合物」に相当する。 また、 本件発明1の「道路に吹き付けられ」と甲2発明の「建造物の床等の表面に吹き付けられ」とは、対象物に「吹き付けられ」という点で共通し、 本件発明1の「道路の塗装が行われる」工程と甲2発明の「建造物の床等の表面へ塗膜を形成」することとは、「塗装」が行われる工程である点で共通する。 そうすると、一致点・相違点は、以下の通りである。 <一致点> ポリオール樹脂及びアミンを含む剤とイソシアネートを含む剤とを含む塗料組成物で塗装する方法であって、 各剤をそれぞれを50?70°Cに加温する工程と、 前記工程により温度が調整された各剤を別々に塗装ガンヘ送り込み、両剤の体積比が1.00:1.05?1.00:0.95の範囲で塗装ガン内にて混合させて、得られた混合物が対象物に吹き付けられ、塗装が行われる工程とを含む方法 <相違点> 3 各剤の位置づけにつき、本件発明1ではポリオール樹脂及びアミンを含む剤が主剤であり、イソシアネートを含む剤が硬化剤であるのに対して、甲2発明では、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する剤が主剤であり、活性水素含有化合物(ポリオールとポリアミンを併用)及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する剤が硬化剤である点。 4 50?70°Cに加温された各剤が、本件発明1では、粘度を100?300cPとされているのに対して、甲2発明では、どのような粘度となっているのか不明である点。 5 混合物が、本件発明1では、塗装ガン内にて衝突混合させて得られるものであって、該塗装ガンの先端部に取り付けられたスタティック混合機を通って対象物に吹き付けられるものであるのに対して、甲2発明では、塗装ガンにて混合させて得られるものであって、対象物に吹き付けられる点。 6 吹き付けられる対象が、本件発明1では、道路であるのに対して、甲2発明では建造物の床等の表面である点。 b 判断 上記相違点について検討する。 (a)相違点6について 甲2発明は、壁面並びに底面に形成した用水路又は水耕栽培用プール、建造物の屋根、床等の表面に塗膜が形成される方法であり、防水性等担保のためにコーティングを行うことを目的とするものである。また、甲第2号証には、壁面並びに底面に形成した用水路又は水耕栽培用プール、建造物の屋根、床等の表面に塗膜が形成される方法を、道路を塗装する方法に転用することについての記載も示唆もない。 また、甲第3号証、甲第5号証、甲第6-1,6-2号証、甲第7号証、さらには甲第1号証、甲第4号証、甲第8号証の記載をみても、道路を塗装する方法に転用することについての記載も示唆もない。 したがって、吹き付けられる対象を、相違点6に係る本件発明1のように道路とすることは、当業者が容易になし得ることではないというべきである。 (b)相違点3について 甲2発明の「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤」と、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」とは、「イソシアネートを含む剤」で共通し、 甲2発明の「活性水素含有化合物(ポリオールとポリアミンを併用)及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する硬化剤」と、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」とは、「ポリオール樹脂及びアミンを含む剤」で共通するものといえる。 ここで、本件特許明細書における硬化剤についての記載をみると、段落【0055】【表1】に示された実施例の硬化剤は、その成分うち全部もしくは大部分がポリイソシアネートで構成されている(硬化剤成分のうちポリイソシアネートの欄は「100」と記載され、溶剤の欄は空欄または「10」と記載されている)。 これに対して、甲第2号証において、「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤」に関する記載をみると、段落【0028】(上記3(2)ア(エ))には、「主剤として・・・・NCO%5.0、粘度400mPa・s/25℃のプレポリマーを得た。」と記載されているように、イソシアネート基を意味する「NCO」の成分は、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー全体に対する割合がわずか5.0%である。また、「ウレタンプレポリマー」とは、あらかじめウレタン化反応をある程度まで進行させた未硬化の液状物である。 そうすると、イソシアネート基を意味する「NCO」の割合がわずか5.0%しか含まれていない「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー」を硬化剤と解することは合理的でなく、甲2発明の「末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含む主剤」が、本件発明1の「イソシアネートを含む硬化剤」に相当するとはいえない。また、甲2発明の「活性水素含有化合物(ポリオールとポリアミンを併用)及び有機酸金属塩を含む触媒を含有する硬化剤」についても、硬化剤と解するのが合理的であって、本件発明1の「ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤」に相当するとはいえない。 また、甲第3号証、甲第5号証、甲第6-1,6-2号証、甲第7号証、さらには甲第1号証、甲第4号証、甲第8号証の記載をみても、本件発明1の「主剤」及び「硬化剤」に相当しうるとの記載ないしは示唆はない。 したがって、本件発明1の相違点3に係るようにすることは、甲第2号証、甲第1号証、甲第3号証?甲第8号証に記載された発明または事項に基いて容易になし得ることではないというべきである。 以上のとおりであるから、他の相違点を検討するまでのもなく、本件発明1は、甲第2号証、甲第1号証、甲第3号証?甲第8号証に記載された発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 d 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第2号証、甲第1号証ないし甲第8号証に記載される発明ないしは事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明3ないし5について 本件発明3ないし5は、本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ したがって、本件発明1、3ないし5は、甲第1号証?甲第8号証に記載された発明ないしは事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 請求項2に対する特許異議の申立てについて 上記第2のとおり、請求項2を削除する本件訂正が認められたので、請求項2に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1,3?5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1,3?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを含む塗料組成物で道路を塗装する方法であって、 主剤と硬化剤のそれぞれを50?70℃に加温し、それぞれの粘度を100?300cPとする工程と、 前記工程により温度及び粘度が調整された主剤と硬化剤とを別々に塗装ガンへ送り込み、主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が1.00:1.05?1.00:0.95の範囲で塗装ガン内にて衝突混合させて、得られた混合物が該塗装ガンの先端部に取り付けられたスタティック混合機を通って、道路に吹き付けられ、道路の塗装が行われる工程とを含むことを特徴とする方法。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記主剤及び前記硬化剤が、無溶剤タイプであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記衝突混合により得られた混合物がスタティック混合機内を通過する距離が3?10cmであることを特徴とする請求項1又は3に記載の方法。 【請求項5】 前記塗装ガンと前記スタティック混合機の合計質量が2kg未満であることを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-03-01 |
出願番号 | 特願2016-127344(P2016-127344) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(E01C)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 須永 聡 |
特許庁審判長 |
井上 博之 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 西田 秀彦 |
登録日 | 2016-11-25 |
登録番号 | 特許第6047256号(P6047256) |
権利者 | 大日本塗料株式会社 |
発明の名称 | 道路の塗装方法 |
代理人 | 五味渕 琢也 |
代理人 | 市川 英彦 |
代理人 | 五味渕 琢也 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 今藤 敏和 |
代理人 | 坪倉 道明 |
代理人 | 飯野 陽一 |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 飯野 陽一 |
代理人 | 青木 孝博 |
代理人 | 安藤 健司 |
代理人 | 岩瀬 吉和 |
代理人 | 櫻田 芳恵 |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 重森 一輝 |
代理人 | 今藤 敏和 |
代理人 | 重森 一輝 |
代理人 | 川嵜 洋祐 |
代理人 | 櫻田 芳恵 |
代理人 | 青木 孝博 |
代理人 | 安藤 健司 |
代理人 | 市川 英彦 |
代理人 | 川嵜 洋祐 |
代理人 | 城山 康文 |
代理人 | 城山 康文 |
代理人 | 坪倉 道明 |
代理人 | 岩瀬 吉和 |