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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01G
審判 全部申し立て 6項4号請求の範囲の記載形式不備  C01G
管理番号 1340049
異議申立番号 異議2017-700501  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-23 
確定日 2018-03-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6030277号発明「多孔質チタン酸塩化合物粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6030277号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、2、4、5〕、〔6-8〕について訂正することを認める。 特許第6030277号の請求項1、4ないし6、8に係る特許を維持する。 特許第6030277号の請求項2、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 I.手続の経緯
特許第6030277号の請求項1、2、4ないし8に係る特許についての出願は、平成27年9月29日(優先権主張2014年10月24日、日本国)を国際出願日とするものであり、平成28年10月28日に特許権の設定登録がなされ、平成29年5月23日付けで特許異議申立人の三田翔より特許異議申立書が提出され、平成29年8月24日付けの取消理由を特許権者の大塚化学株式会社に通知し、特許権者より同年10月3日付けで訂正請求及び意見書が提出され、また、特許権者より同年10月12日付け(受付10月13日)で上申書が提出され、同年10月27日付けの通知書を特許異議申立人に通知したところ、特許異議申立人より同年11月24日付けで意見書が提出されたものである。

II.訂正の適否についての判断
1)訂正の内容
a 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上である」とあるのを、「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmである」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する)。

b 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

c 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1又は2に」とあるのを、「請求項1に」に訂正する。

d 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上である」とあるのを、「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmである」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。

e 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

f 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「請求項6又は7に」とあるのを、「請求項6に」に訂正する。

2)訂正の理由
(ア)一群の請求項についての説明
上記訂正事項1ないし3に係る訂正前の請求項1、2、4及び5は、当該訂正事項1を含む請求項1の記載を、請求項2、4及び5がそれぞれ引用しているものであるから、当該訂正前の請求項1、2、4及び5に対応する訂正後の請求項1、2、4及び5は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項を構成する。
また、上記訂正事項4ないし6に係る訂正前の請求項6、7及び8は、当該訂正事項4を含む請求項6の記載を、請求項7及び8がそれぞれ引用しているものであるから、当該訂正前の請求項6、7及び8に対応する訂正後の請求項6、7及び8は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項を構成する。

(イ)訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明
a 訂正事項1
(a)訂正の目的について
上記訂正事項1は、請求項1の「細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上である」を、「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmである」に訂正するものである。
訂正後の請求項1は、多孔質チタン酸塩化合物粒子の細孔直径の測定方法、及び多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径を限定するものであり、上記の訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としている。
(b)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(a)の理由から明らかなように、上記訂正事項1は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、特許掲載公報の特許請求の範囲、及び明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
細孔直径の測定方法については、特許掲載公報の明細書段落[0044]に、「得られた粉末の細孔は、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定し」と記載されている。
平均粒子径については、特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項2に「多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、5?500μmである」と記載されている。
従って、上記の訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

b 訂正事項2
(a)訂正の目的について
上記訂正事項2(請求項2の削除)は、請求項2を削除するものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に相当するものである。
(b)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。

c 訂正事項3
(a)訂正の目的について
上記訂正事項3(請求項4の従属先の訂正)は、上記訂正事項2により請求項2を削除する訂正をしたことに伴い、従属先として請求項2が含まれないようにするために行われており、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に相当するものである。
(b)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3は、請求項2を削除する訂正に伴って、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(c)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

d 訂正事項4
(a)訂正の目的について
上記訂正事項4は、請求項6の「細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上である」を、「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmである」に訂正するものである。
訂正後の請求項6は、多孔質チタン酸塩化合物粒子の細孔直径の測定方法、及び多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径を限定するものであり、上記訂正事項4は、上記訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としている。
(b)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項4は、上記訂正事項1と同様に、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項4は、上記訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

e 訂正事項5
(a)訂正の目的について
上記訂正事項5(請求項7の削除)は、請求項7を削除するものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に相当するものである。
(b)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項5は、請求項7を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。

f 訂正事項6
(a)訂正の目的について
上記訂正事項6(請求項8の従属先の訂正)は、上記訂正事項5により請求項7を削除する訂正をしたことに伴い、従属先として請求項7が含まれないようにするために行われており、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に相当するものである。
(b)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項6は、請求項7を削除する訂正に伴って、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。

3)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1、2、4、5][6-8]について、訂正することを認める。

III.本件特許発明について
上記のとおり訂正が認められるので、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1、4ないし6、8に係る発明(以下「本件特許訂正発明1、4ないし6、8」という。)は、訂正後の請求項1、4ないし6、8に記載された次の事項のとおりのものと認める。(当審注:下線部は訂正箇所であり、特許権者が付与したものである。)
「【請求項1】
組成式A_(2)Ti_(6)O_(13)[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上]で表されるチタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmであることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【請求項2】
(削除)
【請求項4】
請求項1に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有していることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物を含有していることを特徴とする摩擦材。
【請求項6】
チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmである多孔質チタン酸塩化合物粒子を製造する方法であって、チタン源とアルカリ金属塩とをメカニカルに粉砕し、粉砕混合物を準備する工程と、前記粉砕混合物を乾式造粒し、造粒物を準備する工程と、前記造粒物を焼成する工程を備えていることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記チタン酸塩化合物が、組成式A_(2)TinO_((2n+1))[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2?8]で表されることを特徴とする、請求項6に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法。」

IV.特許異議申立について
特許異議申立人は、以下で示す甲第1号証ないし甲第6号証を証拠方法として提出すると共に、以下で示す(A)ないし(H)を特許異議申立理由として主張する、ものと認める。
ア 証拠方法
甲第1号証:特開2008-303121号公報
甲第2号証:日本セラミックス協会学術論文誌96[11]1087-92(1988))
甲第3号証:SAE Internationa、An Evaluation Method of Brake Pad for New Titanates、2009-01
甲第4号証:国際公開2008/123558号明細書
甲第5号証:特開平10-139894号公報
甲第6号証:実験成績証明書

イ 特許異議申立理由
(A)訂正前の請求項1に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、(甲第6号証)に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。(以下、「申立理由(A)」という。)

(B)訂正前の請求項2に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証、甲第4号証、(甲第6号証)に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。(以下、「申立理由(B)」という。)

(C)訂正前の請求項4に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、(甲第6号証)に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。(以下、「申立理由(C)」という。)

(D)訂正前の請求項5に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証、甲第4号証、(甲第6号証)に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。(以下、「申立理由(D)」という。)

(E)訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証ないし甲第4号証、(甲第6号証)に記載された発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(E)」という。)

(F)訂正前の請求項6ないし8に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証、(甲第6号証)に記載された発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(F)」という。)

(G)訂正前の請求項1、2、4ないし8の記載には、多孔質チタン酸塩化合物粒子の『細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であること』が規定され、本件特許明細書の実施例の段落【0044】には、図1に示す平均粒子径169μmの多孔質チタン酸塩化合物粒子の細孔直径を水銀ポロシメーターを用いて測定したことが記載されている。しかしながら、水銀ポロシメーターを用いて多孔質チタン酸塩化合物粒子表面の細孔を測定しようとすると、上記細孔のみならず多孔質チタン酸塩化合物粒子間の隙間も計測されてしまうことから、多孔質チタン酸塩化合物粒子の『細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積』の割合を算出することができない。
また、本点に関し、本件特許明細書の段落【0028】には、『内部に大きな空洞』を有する粒子が好ましくない旨が記載されていることから、粒子内部に『大きな空洞』が形成される場合もあると思料するが、この場合、例えば、粒子内部に形成される『大きな空洞』と粒子間に形成される隙間とが同程度である場合に両者をどのように区別しているのか不明である。
このため、本件特許の発明の詳細な説明には、訂正前の請求項1、2、4ないし8に係る発明を当業者が実施し得る程度に明確かつ十分な記載がなされていない。
したがって、訂正前の請求項1、2、4ないし8の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものである。(以下、「申立理由(G)」という。)

(H)訂正前の請求項1、2、4ないし8の記載には、多孔質チタン酸塩化合物粒子の『細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であること』が規定されているところ、上述したとおり、本件特許明細書の実施例の段落【0044】には、多孔質チタン酸塩化合物粒子の『細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積』の割合を算出する方法が十分に記載されていないことから、訂正前の請求項1、2、4ないし8の記載は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(H)」という。)

V.取消理由通知に記載した取消理由について
平成29年8月24日付けの取消理由通知に記載した取消理由は、次のものである。
訂正前の請求項1、2、4ないし8に係る発明(以下、「本件訂正前特許発明」という。)は、「細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることを発明特定事項にするものである。
以下、上記「%」が、[(細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積)/(全孔容積)]×100という計算式により得られることを前提にして、本件特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし8の記載が、上記発明特定事項を包含する「多孔質チタン酸塩化合物粒子」、「樹脂組成物」、「摩擦材」および「多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法」の発明を明確に記載するものであるかについて検討する。
(i)本件特許明細書には、「得られた粉末の細孔は、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定し」(【0044】)との記載があることからして、細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積と共に全孔容積についても、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)により得られるものであるということができる。
ここで、全孔容積は、測定される孔径の範囲(条件)によって、異なってくるものであるところ、本件特許明細書および図面を見たとしても、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)において測定される孔径の範囲(条件)が一義的であるかどうか不明である、つまり、この水銀ポロシメーターを用いることをもって、全孔容積が一義的に得られるかどうか不明である。
(ii)本件特許明細書の「本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子の粒子形状は、球状、不定形状等の粉末状であることが好ましく、非繊維状であることが好ましい。特に、球状であることが好ましい。」(【0021】との記載からして、本件特許発明の粒子が例えば球状であるとしたとき、これの孔容積は、球状粒子の細孔の容積(以下、「容積a」という。)だけでなく、粒子の凝集体にあっては、粒子と粒子の隙間の容積(以下、「容積b」という。)も孔容積になるといえるところ、本件特許明細書および図面を見たとしても、容積a、bの和を全孔容積とするのか、または、容積aのみをもって全孔容積とするのか不明である。 また、訂正前の請求項1、2、4ないし8の記載は、粒子形状を特定するものではないことからして、本件訂正前特許発明は、中空状(殻)粒子をも包含するものであり、中空状(殻)粒子であるとき、本件特許明細書および図面を見たとしても、中空部の容積が全孔容積に含まれるかどうかについても不明である。
(iii)上記(i)および(ii)からして、本件特許明細書および図面を見たとしても、全孔容積が一義的に得られるかどうか不明であり、また、何をもって全孔容積とするのか不明である(全孔容積の定義が不明である)ことからして、全孔容積の技術的意味は、不明確である、更にいうと、全孔容積を包含する上記発明特定事項についても不明確であるといわざるを得ない。
そして、上記発明特定事項が当業者における自明の事項であるということはできない。
したがって、訂正前の請求項1、2、4ないし8の記載は、上記発明特定事項を包含する「多孔質チタン酸塩化合物粒子」、「樹脂組成物」、「摩擦材」および「多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法」の発明を明確に記載するものではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものである。(以下、「申立理由(I)」という。)

上記で示したように、本件特許明細書および図面を見たとしても、全孔容積の技術的意味は、不明確である、更にいうと、全孔容積を包含する上記発明特定事項についても不明確であるといわざるを得ない。
そして、上記発明特定事項が当業者における自明の事項であるということはできない。
したがって、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載するものではないので、、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものである。(以下、「申立理由(J)」という。)

VI.当審の判断
ア 申立理由I、Jについて
本件特許訂正発明1、4ないし6、8は、「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることを発明特定事項にするものである。
ここで、本件の国際出願日における国際特許出願の明細書には、「本発明において、上記積算細孔容積は、好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは15%以上である。上記積算細孔容積の好ましい上限値は40%であり、さらに好ましくは30%である。上記積算細孔容積が小さすぎると、摩擦材に用いた場合に、優れた耐フェード性が得られない場合がある。上記積算細孔容積が大きすぎると、チタン酸塩化合物の結晶粒間の結合部分が弱くなり、多孔質構造が保てなくなる場合がある。上記積算細孔容積は、水銀圧入法により測定することができる。」(【0019】)、「得られた粉末の細孔は、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定し、0.01?1.0μmの細孔直径範囲にある積算細孔容積は21.1%、細孔分布の極大値は0.11μmであった。」(【0044】)との記載がある。
また、権利者が提出した乙第1号証(全自動多機能水銀ポロシメータ Quantachrome社 全自動細孔分布測定装置POREMASTERシリーズのカタログ)には、POREMASTER(ポアマスター)-60-GTの機器仕様が、細孔直径950μm?3.6nm、圧力1.6kPa(約0.2psi)?420MPa(約60000psi)であり、水銀ポロシメータ内の圧力を真空状態にした後に加圧すること、および、乙第2号証(株式会社UBE科学分析センター 全自動細孔径分布測定装置(http://www.ube-ind.co.jp/usal/documents/i0301_570.htm))には、全自動細孔分布測定装置(水銀ポロシメータ)としてのQuantachrome社製、PoreMaster(ポアマスター) 60-GTの性能が、測定範囲0.5psia?60,000psia、400μm?0.0036nmであることの記載がある。

以下、上記発明特定事項について、上記で示した記載に基く検討を行うこととする。
ア-1 上記で示したように、本件の国際出願日における国際特許出願の明細書の【0019】【0044】には、水銀圧入法により積算細孔容積を測定する水銀ポロシメーターとして、Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GTを使用すること、つまり、型番まで特定された水銀ポロシメーターを使用することの記載があることからみて、本件の優先権主張日において、上記発明特定事項における「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)」が実在していたことは明らかであるというべきである。

ア-2 上記で示した記載からして、上記発明特定事項における水銀ポロシメーターと、乙第1、2号証の水銀ポロシメーターとは、Quanta Chrome(Quantachrome)社製、ポアマスター60-GTという同じ型番であり、また、型番が同じである以上、その基本的な特性(機器仕様)等に差異があるとはいえないことからして、乙第1、2号証が公知であるかどうかに関わらず、上記発明特定事項における水銀ポロシメーターは、乙第1、2号証に示されているとおりの「細孔直径950μm?3.6nm、圧力1.6kPa(約0.2psi)?420MPa(約60000psi)」、「400μm?0.0036nm、0.5psia?60,000psia」という性能(機器仕様)を有し、水銀ポロシメータ内の圧力を真空状態にした後に加圧することで細孔内に水銀を圧入するものであるというべきである。

ア-3 一般に、細孔に水銀を圧入する際、粒子の細孔のみならず、粒子の凝集体における粒子と粒子の間の隙間に、さらに、殻状の粒子(中空粒子)の中空部にも、水銀が流入できるところであれば区別なく圧入されるとみるのが当然であり、また、本件特許明細書において「本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子は、上述のように細孔直径が小さいことから、多孔質粒子内への熱硬化性樹脂が含浸するのを抑制できる。そのため、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子を含有する樹脂組成物を摩擦材として使用したとき、この多孔質粒子がフェードガスの抜け穴となる。このため、原料混合物を結着成形する工程での成形圧力を低めに調整しなくても、優れた耐フェード性が得られるものと考えられる。」(【0033】)等の記載があるとしても、さらに、特許権者が提出した平成29年10月3日付けの意見書において「本件特許発明では、平均粒子径の下限値を5μmにしておりますので、粒子間の隙間による孔容積が、細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積に与える影響は小さいと考えられます。」と述べられているとしても、本件特許明細書において、細孔が、粒子の細孔のみに限定されることを示す明示はなく、また、特許権者よりの同意見書において、粒子の細孔に限定されない旨の主張がなされていることからして、上記発明特定事項の「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることにおける「細孔」は、粒子の細孔に限られないとみるのが妥当である。

ア-4 一般に、細孔内に水銀を圧入するとき、細孔径が小さくなるにしたがって、圧入のための圧力を高める必要があるのは当然であるところ、径が950μm(400nm)の細孔に水銀を圧入したとき、950μm(400nm)よりも大きい径の細孔にも水銀は圧入されているとみるのが妥当である。つまり、水銀が圧入される細孔の径の上限値、および、そのときの圧力を特定することに技術的意義はないといえることからして、上記発明特定事項における「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)」の特性(機器仕様)の「細孔直径950μm?3.6nm、圧力1.6kPa(約0.2psi)?420MPa(約60000psi)」、「400μm?0.0036nm、0.5psia?60,000psia」は、水銀が圧入される細孔の径の下限値(3.6nm)、および、そのときの圧力(60,000psi)の特定に技術的意義があること、および、孔径が3.6nm以上である細孔(上記「ア-3」からして、粒子の細孔、粒子の凝集体における粒子と粒子の間の隙間等)の積算容積が測定されることを示すものであるということができる。

ア-5 上記発明特定事項における「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)」を用いた測定において、前処理(超音波処理等)をどのようにするかで細孔の積算容積等が変わるとしても、仮に、前処理(超音波処理等)を行わないものであっても、上記発明特定事項の「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることを満たすものについては、本件特許訂正発明1、4ないし6、8になり得るとみるのが妥当である。
また、水銀ポロシメータ内の圧力を真空状態にした後に加圧することで細孔内に水銀を圧入するとき、真空状態の圧力の違いに基く影響は、水銀の圧入され難さに現れるところ、水銀の圧入圧力の最大値の60,000psiからみた真空状態の圧力は、極めて微々たるものであることからして、真空状態の圧力の差に基く影響(水銀の圧入され難さに現れる影響)も極めて微々たるものであるというべきである。
そうすると、上記発明特定事項において、前処理(超音波処理等)をどのようにするか、および、真空状態の圧力をどれくらいにするかについては、特に、考慮するまでもないものであるとみるのが妥当である。

ア-6 上記発明特定事項の「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることについて、当該「%」を得る際、これを得るための計算式の「分母」になる「全積算細孔容積」は、上記「ア-4」からして、「孔径が3.6nm以上の細孔(上記「ア-3」からして、粒子の細孔、粒子の凝集体における粒子と粒子の間の隙間等)の積算容積」にあたり、また、同式の「分子」になる「細孔直径0.01(10nm)?1.0μmの範囲の積算細孔容積」は、上記「孔径が3.6nm以上の細孔の積算容積」の内の一部領域の積算容積であるという点で明確であり、更に、上記「ア-5」についても勘案すると、「全積算細孔容積」および「細孔直径0.01(10nm)?1.0μmの範囲の積算細孔容積」は、上記発明特定特定事項における「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)」を用いることで、一義的に得られるものであり、そうである以上、これらに基いて上記「%」も一義的に得られるものであるというべきである。

ア-7 小活
上記「ア-1」ないし「ア-6」からして、本件特許明細書は、何をもって全孔容積(全積算細孔容積)とするのかを明らかにし、また、全孔容積が一義的に得られることも明らかにするものであるので、全孔容積の技術的意味は明らかである、更にいうと、全孔容積を包含する上記発明特定事項についても明確であるということができる。
さらに、上記で示したように、本件特許明細書は、全孔容積(全積算細孔容積)の技術的意味を明らかにするものであるといえるので、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載するものである。
よって、上記取消理由I.Jをもって、本件特許訂正発明1、4ないし6、8を取り消すことはできない。

イ 取消理由G、Hについて
異議申立人が主張する特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないという理由(取消理由G)、および、同条第4項第1号の規定を満たさないという理由(取消理由H)は、上記取消理由I、Jに内包されるものであるといえることからして、上記「ア」で示した理由と同じ理由より、上記取消理由G.Hをもって、本件特許訂正発明1、4ないし6、8を取り消すことはできない。

ウ 当審の取消理由通知で採用しなかった取消理由AないしFについて
ウ-1 甲号証各号に記載された事項
甲第1号証には、複数の柱状粒子が配向して一体化した形状で、平均粒子径が3.1μmの六チタン酸ナトリウム(Na_(2)Ti_(6)O_(13))(実施例1、図1)、該六チタン酸ナトリウムとフェノール樹脂とを含有するディスクパッド(実施例3)の記載がある。
甲第2号証には、10?20μm程度のNa_(2)・6TiO_(2)凝集体(3.1.1欄、図2)、Na_(2)・6TiO_(2)とシリコーン樹脂とを含有する塗料(2.3欄)の記載がある
甲第3号証には、平均直径が27.6μmのNa_(2)Ti_(6)O_(13)(表2のDSR)、Na_(2)Ti_(6)O_(13)と他の摩擦材原料とを混合してブレーキパッドを形成すること(2頁目右上欄第1?3行、図10)の記載がある。
甲第4号証には、棒状、柱状または円柱状で、平均短径は3.0μm、平均長さ(平均長径)は5.9μm、平均アスペクト比は1.97のK_(2)Ti_(6)O_(13)の単相結晶(実施例1、図3)、K_(2)Ti_(6)O_(13)のと結合剤(フェノール樹脂)とを含有する摩擦材(実施例11)の記載がある。
甲第5号証には、「多孔質チタン酸酸化化合物粒子が、粒子内空隙率:10?50%、平均粒径:10?100μmの球形状粒子であることを特徴とする請求項1に記載の耐フェード性にすぐれたブレーキ用摩擦材。」、「上記多孔質チタン酸化合物粒子は、下記の〔1〕式で示される層状もしくはトンネル型構造を有するチタン酸アルカリ金属(層状構造:二チタン酸アルカリ金属,三チタン酸アルカリ金属,四チタン酸アルカリ金属等,トンネル構造:六チタン酸アルカリ金属,八チタン酸アルカリ金属等)」【0007】、「〔多孔質チタン酸化合物粒子の製造〕以下の製造工程における原料組成物を構成する化合物粉末は、平均粒径10μm以下のものを使用した。また、原料組成物の造粒粉の平均粒径は、いずれも約40μmである。
(1)六チタン酸アルカリ金属の単相多孔質粒子(AI)の製造:精製アナターゼ(TiO_(2))粉末と炭酸カリウム(K_(2)CO_(3))粉末とを、TiO_(2)/K_(2)Oのモル比が約6となる割合に混合し、適量の水(固形分の約2倍量)を加えてスラリーを調製する。これを湿式噴霧乾燥機で処理して造粒粉となし、焼成処理(1100℃×1Hr)する。焼成反応生成物を解砕処理(振動ふるい)に付して球形状を有する粒子からなる粉末を得る。
組 成 :K_(2)Ti_(6)O_(13)
粒径(平均):33μm
空隙率 :15%」(【0021】【参考例】)との記載がある。
そして、甲第6号証は、実験成績証明書であり、再現実験1は、甲第1号証の実施例1の再現実験であり、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日本電子製JSM-T200)を用いて形状を観察し、X線回折測定装置(PANalyticalGmbH製X‘Pert PRO)を用いて単相であることを確認し、超音波分散等を行うことなくレーザー回折粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA-920)を用いて平均粒子径(メディアン径)を測定し、さらに、水銀ポロシメータ((株)島津製作所オートポアIII9400)を用いて細孔容積分布図を得るものであり、再現実験2は、甲第2号証の3.1.1欄(または2.1欄)の再現試験であり、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日本電子製JSM-7800F)を用いて形状を観察し、X線回折測定装置(PANalyticalGmbH製X‘Pert PRO)を用いて単独相であることを確認し、レーザー回折粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA-920)を用いて平均粒子径(メディアン径)を測定し、さらに、水銀ポロシメータ((株)島津製作所オートポアIII9400)を用いて細孔容積分布図を得るものであり、再現実験3は、甲第4号証の実施例11(実施例1)の再現試験であり、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日本電子製JSM-7800F)を用いて形状を観察し、X線回折測定装置(PANalyticalGmbH製X‘Pert PRO)を用いて単相であることを確認し、レーザー回折粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA-920)を用いて平均粒子径(メディアン径)を測定し、さらに、水銀ポロシメータ((株)島津製作所オートポアIII9400)を用いて細孔容積分布図を得るものである。

まず、本件特許訂正発明1、4ないし6、8と、甲第1号証ないし甲第5号証とを対比する。
甲第1号証ないし甲第5号証には、本件特許訂正発明1、4ないし6、8の発明特定事項の「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることについて記載も示唆もなく、また、これが本件特許の優先権主張日前の周知技術であるとも言い難い。

次に、本件特許訂正発明1、4ないし6、8と、甲第6号証とを対比する。
甲第6号証の再現実験1ないし3は、細孔容積分布に関して、水銀ポロシメータ((株)島津製作所オートポアIII9400)を用い、孔径0?100μmの範囲の積算細孔容積に対する0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積の比(割合)を求めるものである。
ここで、本件特許訂正発明1、4ないし6、8は、「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)」を用いるのに対して、甲第6号証の再現実験1ないし3は、「水銀ポロシメータ((株)島津製作所オートポアIII9400)」を用いる点で、両者は相違している。
そして、上記「VI」の「ア」(特に、「ア-6」)で示したように、本件特許訂正発明1、4ないし6、8の上記発明特定事項における「%」を得る際、これを得るための計算式の「分母」になる「全積算細孔容積」は、「孔径が3.6nm以上の細孔の積算容積」にあたり、これに対して、甲第6号証の再現実験1ないし3は、同「分母」にあたるものは、「孔径0?100μmの範囲の積算細孔容積」であり、この点についても両者は相違している。
そうすると、本件特許訂正発明1、4ないし6、8の発明特定事項の「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることと、甲第6号証の再現実験1ないし3の結果とを単純に比較することはできず、両者が一致するとまでいうことはできない。

したがって、本件特許訂正発明1、4は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、(甲第6号証)に記載されたものであるとはいえず、本件特許訂正発明5は、甲第1号証、甲第4号証、(甲第6号証)に記載されたものであるとはいえず、本件特許訂正発明1、4、5は、甲第1号証ないし甲第4号証、(甲第6号証)に記載された発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるとはいえず、および、本件特許訂正発明6、8は、甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証、(甲第6号証)に記載された発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、申立理由A、C、D、E、Fをもって、本件特許訂正発明1、4ないし6、8を取り消すことはできない。

VII 異議申立人提出の平成29年11月24日付け意見書の主張について
VII-1 特許法第36条第6項第2号および同法第4項第1号について
異議申立人の主張(VII-1)は、大略、以下のとおりである。
(1)本件特許権者が提出した乙第1号証および乙第2号証は、パンフレットないしはインターネット掲載情報の印刷物であって、その頒布日または公衆に利用可能になった日が出願日以前の日であるか否かが特定されておらず、出願時における当業者の技術常識を示す証拠として採用し得るものではない。

(2)本件(特許)明細書には、水銀ポロシメーターによる細孔測定時における真空度の条件および圧力条件が記載されておらず、仮に乙第1号証や乙第2号証を参酌し得たとしても、係る条件が一義的に定まらないことから、全孔容積を一義的に定めることができず、その技術的な意味が不明であることは明らかである。

(3)本件(特許)明細書には、水銀ポロシメーターによる測定の前処理条件(超音波処理等)が記載されておらず、係る条件が一義的に定まらないことから、本観点からも全孔容積を一義的に定めることができず、その技術的意味が不明であることは明らかである。

(4)本件(特許)明細書に記載された方法においては、細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積には、球状粒子の細孔の容積とともに粒子と粒子の隙間の容積(前処理を行うか否かによる影響を受ける細孔容積)も含まれ、さらに中空状(殻)粒子においては中空部の容積も含まれることから、細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積について一義的に定めることができず、その技術的意味が不明である。

(5)上記(1)ないし(4)より、本件訂正請求項1、4ないし6、8は、依然として、不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものではなく、また、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許訂正発明1、4ないし6、8を実施し得る程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものではない。

異議申立人の主張(VII-1)に対する当審の判断
上記「VI」の「ア」で示した理由と同じ理由より、異議申立人の主張する上記(1)ないし(5)には理由がないというべきであるので、本件訂正請求項1、4ないし6、8は、明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たし、また、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許訂正発明1、4ないし6、8を実施し得る程度に明確かつ十分に記載されたものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満すものである。

VII-2 特許法第29条第1項第3号および同条第2項について
異議申立人の主張(VII-2)は、大略、以下のものである。
本件特許訂正発明1、4ないし6、8は、実質的に、本件特許訂正前発明1、4ないし6、8に対応し、平成29年5月23日提出の特許異議申立書に記載した理由により、依然として、特許法第29条第1項第3号の規定違反ないしは同条第2項の規定違反に該当する。

異議申立人の主張(VII-2)に対する当審の判断
上記「VI」の「イ」で示した甲第1号証ないし甲第6号証に記載された事項からみて、甲第1号証ないし甲第5号証には、本件特許訂正発明1、4ないし6、8の発明特定事項の「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることについて記載も示唆もなく、また、これが本件特許の優先権主張日前の周知技術であるとも言い難い。
そして、同じく、上記発明特定事項の「水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスクー60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であ」ることと、甲第6号証の再現実験1ないし3の結果とを単純に比較することはできず、両者が一致するとまでいうことはできない。
したがって、本件特許特許発明1、4ないし6、8は、特許法第29条第1項第3号の規定違反ないしは同条第2項の規定違反に該当するとはいえない。

VIII.むすび
以上のとおり、訂正後の請求項1、4ないし6、8に係る特許を取り消すことはできず、また、他に訂正後の請求項1、4ないし6、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、訂正前の請求項2、7に係る特許は、訂正により削除されたため、該請求項2、7に対して、特許異議申立人の三田翔がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式A_(2)Ti_(6)O_(13)[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上]で表されるチタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmであることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【請求項2】
(削除)
【請求項4】
請求項1に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有していることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物を含有していることを特徴とする摩擦材。
【請求項6】
チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60-GT)を用いて測定した細孔直径0.01?1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、平均粒子径が5?500μmである多孔質チタン酸塩化合物粒子を製造する方法であって、
チタン源とアルカリ金属塩とをメカニカルに粉砕し、粉砕混合物を準備する工程と、
前記粉砕混合物を乾式造粒し、造粒物を準備する工程と、
前記造粒物を焼成する工程を備えていることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記チタン酸塩化合物が、組成式A_(2)Ti_(n)O_((2n+1))[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2?8]で表されることを特徴とする、請求項6に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-01 
出願番号 特願2016-555146(P2016-555146)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C01G)
P 1 651・ 113- YAA (C01G)
P 1 651・ 538- YAA (C01G)
P 1 651・ 537- YAA (C01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 廣野 知子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 山本 雄一
豊永 茂弘
登録日 2016-10-28 
登録番号 特許第6030277号(P6030277)
権利者 大塚化学株式会社
発明の名称 多孔質チタン酸塩化合物粒子及びその製造方法  
代理人 特許業務法人宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  
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