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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B21D
管理番号 1340053
異議申立番号 異議2017-700326  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-04 
確定日 2018-02-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6004295号発明「プレス機械の安全装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6004295号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第6004295号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 特許第6004295号の請求項1に係る発明は,平成29年7月24日にされた訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
これに対して,平成29年9月29日付けで取消理由(決定の予告)を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,特許権者からは応答がなかった。
そして,上記の取消理由(決定の予告)は妥当なものと認められるので,本件請求項1に係る特許は,この取消理由(決定の予告)によって取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プレス機械の安全装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキやパネルベンダーなどのプレス機械の安全装置に係り、さらに詳しくは、金型のサイズ変更に対応する光学式の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス機械による加工作業時、作動中の上下金型間にワーク(被加工物)以外の物体が不用意に挿入されて介在したような場合、たとえば作業者が手を金型間に誤って介在させた場合など、人体損傷事故を未然に防止する必要がある。すなわち、上下金型間に人体などの異物を検知すると即座に安全装置がONとなり、金型の作動を緊急停止させる。
【0003】
一般に、かかる安全装置の仕組みは、多くは金型間に検知光をビーム状などにして投光することで光路を形成し、その検知光の光路がワーク以外の異物で遮られると、それを安全装置のレーザセンサが検出して金型の作動を緊急停止させる光学方式が周知である。レーザセンサは、フォトトランジスタなどの光源を有する投光器を金型の長手方向の一端側に配置してビーム状の検知光を投光する。他端側には受光器が配置され、投光器から投光された検知光をその受光器で受光することで光路を形成する。それにより、ビーム状検知光の光路がワーク以外の異物で遮断されると、それを検出して安全装置は上型の上下方向への作動を緊急停止させる。
【0004】
ところで、上型の種類やサイズが変更されて下型との間の対向隙間距離が変わる場合、サイズが大きくなった上型に干渉して光路が遮られるので、ビーム状検知光の光路のそれまでの光路の高さレベルを設定し直す必要がある。
【0005】
このように、金型変更に対応して検知光の光路の高さレベルを再設定する安全装置について提案されている(特許文献1)。また、検知光の光軸を異物が遮断すると金型の作動を緊急停止させる技術も提案されている(特許文献2)。
【0006】
一方、ワークが異なる別の種類のものになればそれに応じて金型も交換されるが、そうした場合とは限らず、1つのワークにおいて曲げ部位ごとに、あるいはその曲げ部位が複数の曲げ工程を1サイクルとして二度曲げ、三度曲げなどする場合がある。その場合、曲げ工程ごとに頻繁に金型を交換する必要がある。金型の交換は高度な技能を必要としかつ交換に費やす時間もかかる。交換中、製造ラインを止めて製造中断を余儀なくされる。金型を簡易かつ迅速に交換することは、そのつど安全装置の安全性を確保することはもとより、メーカーの積年の課題である作業効率のアップと加工時間の短縮により、製品コストの低減を実現する大きな要素である。
【0007】
図6は、曲げ部位が複数の曲げ工程を1サイクルとしているワークWの一例を示す。薄鋼板などのパネル材をワークWとして、その端部の曲げ部位が曲げ工程W1、曲げ工程W2、曲げ工程W3からなっているような場合である。その場合、それぞれW1,W2,W3の各曲げ工程ごとに対応する金型を交換する。ワークの曲げ部位ごとに、あるいはその曲げ部位が複数の曲げ工程を1サイクルとするような場合の金型交換に、自動金型交換装置(ATC:Auto Tool Changer)は特にその効果を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【参考文献1】
実用新案登録第3181769号公報
【参考文献2】
特開平7-214172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
金型交換時、金型のサイズに対応して安全装置の検知光軸の高さレベルを設定する提案は上記特許文献1,2他、多くの技術が開示されている。しかしながら、1つのワークにおいて曲げ部位が複数の個所からなっている場合、あるいは1つの曲げ部位が複数の曲げ工程を1サイクルとして頻繁に金型交換を要するような場合、特許文献1,2では安全装置の安全性確保はもとより交換作業の短縮と迅速性に欠ける。
【0010】
以上から、本発明の目的は、異サイズの上下型の複数対をセットに保持してそれらを短時間で迅速に自動交換するATC装置を備えたプレス機械において、金型変更による検知光の光軸高さレベルを再設定して安全性を迅速に確保できる安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る代表的なプレス機械の安全装置は、金型の上型を保持して所定ストローク間を往復動するラムを有し、一方、前記上型とこれに対の下型との上下金型間に投光器から投光した検知光を受光器で受光して光路を形成するとともに、前記光路が遮断されたことの検出信号を出力する光学式センサを有し、前記光路が遮断されたことの光学式センサによる検出信号に基づいて前記上下金型の作動を停止させる停止信号を出力する制御ユニットを有するプレス機械の安全装置において、被加工物の複数の曲げ部位に対応するためにサイズの異なる前記上下金型の複数対を保持し、前記制御ユニットから出力された選択信号によって前記複数対の中から対応する上下金型を選択する自動金型交換装置と、前記制御ユニットから選択信号に同期して出力されたセンサ移動指示信号によって、前記光学式センサの投光器および受光器を移動させることで光路の高さレベルを変更するアクチュエータと、を備え、一の前記上下金型における前記上型と前記下型の間隙距離は、他の前記上下金型における前記上型と前記下型の間隙距離と相違しており、前記被加工物の曲げ部位が複数の曲げ部を有し、前記複数の曲げ部に対する複数の曲げ工程を1サイクルとして前記曲げ部位の加工を行うときに、その1サイクルの曲げ工程ごとに対応する前記上下金型を前記自動金型交換装置によって選択するとともに前記アクチュエータによって前記光学式センサの投光器および受光器を移動させて光路の高さレベルを設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の代表的な請求項1記載のプレス機械の安全装置によれば以下の効果が得られる。被加工物の曲げ部位が複数の曲げ工程を1サイクルとしてなっているような場合、その曲げ工程に対応する上下金型を自動金型交換装置によって迅速に選択し、選択された上下金型ごとに光学式センサによる検知光の光路の高さレベルを設定し直すので、安全装置としての目的を達成することはもとより、複数種の金型交換に費やす交換時間を大幅に短縮して作業効率をアップさせるとともに、製造コストの低減に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な実施形態である安全装置を実装したプレスブレーキの斜視図。
【図2】同要部の一形態を示す正面図
【図3】同要部の他の一形態を示す正面図
【図4】ATC装置例の上下型を示す側面図
【図5】同ATC装置例の光軸変化を示す側面図
【図6】ワーク加工例を示す模式図
【符号の説明】
【0014】
1・・・プレスブレーキ
2・・・ベッド
3・・・ボルスタ
4・・・ラム
5・・・フレーム
10・・・光学式の安全装置
11a・・・投光器
11b・・・受光器
12・・・安全装置昇降用エアシリンダ
20・・・自動金型交換装置(ATC)
21a,22a,23a・・・上型
24a,25a,26a・・・下型
A1?A3・・・第1?第3型上型ユニット
B1?B3・・・第1?第3型下型ユニット
C1?C3・・・検知光の光軸
H1,H2・・・光軸のずれ距離
h1?h3・・・上下金型間の間隙
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるプレス機械の安全装置の好適な実施形態について図1?図6に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明は好適な一実施形態であるが、本発明の思想を満足する範囲内であればかかる一実施形態に限定されることなく他の実施形態も可能である。
【0016】
図1は、好適な本実施形態の安全装置の実装例として、ACサーボ駆動式プレスブレーキ1の全体図を示す。図2および図3は作動時の2つの態様を示すそれぞれ正面図である。機体の筐体を構成する両側サイドにフレーム5を有し、その両フレーム5間に渡ってベッド1が一体構造化されて設けられている。このベッド1上にはベッド長さ略一杯にボルスタ3が固定され、このボルスタ3に次に説明する金型の下型24a(25a,26a)が固定して保持される。また、ベッド1の上方にはオープンハイトの空間を設けてラム4が天地方向でいう上下方向に往復動可能に配置されている。ラム4は所定のストローク間を上下往復動し、その駆動源と動力伝達機構はいずれも説明を略すが、ACサーボモータの回転出力がボールねじやリンク機構などを介して伝達される。そうしたラム4の下降によって保持した上型にワークへの所定の加圧力を付与する。
【0017】
図1に示すように、ラム4に装着されて一体に上下動するATC装置20について要点を説明する。図6に例示したように、ワークWの曲げ部位が複数の曲げ工程を1サイクルとしている場合にかかるATC装置20はその機能を最大に発揮する。ATC装置20は、第1型を構成する上型ユニットA1と下型ユニットB1を有し、第2型を構成する上型ユニットA2と下型ユニットB2、そして第3型を構成する上型ユニットA3と下型ユニットB3を備えている。それら各上下型ユニットを選択可能に1つの装置化してラム4の下端部に装着されている。それら第1?第3型の上下型ユニットのいずれを使用するかは、本機オペレータである作業者によって選択されたオン/オフの切換選択信号によって切換できる。あるいは、図6に示すワークWの曲げ部W1?W3の各工程形状に対応して予め加工順序のプログラムを組み、それに基づいた電子制御で自動切換を行うことができる。これらすべての入出力I/O信号の処理により、中央制御装置(CPU)からなる制御ユニット(図示略)では各種センサからの検出信号、作業者操作による選択信号などの入力信号に基づき、比較制御、判断制御によって各種アクチュエータへの作動を指示する作動信号の出力という一連の電子制御が行われる。
【0018】
第1?第3型の各上下型ユニットは、それぞれホルダ21b,22b,23bに保持された上型21a,22a,23aを有し、これらと対を成す上記ボルスタ3上の下型24a,25a,26aを配置して構成されている。図4に示すように、セットされた状態で上型21aと下型24aとの間隙距離h1、上型22aと下型25aとの間隙距離h2、上型23aと下型26aとの間隙距離h3を開けて選択信号による作動に備える。また、図5に示すように、それら間隙距離h1,h2,h3の間に挿通するように検知光による光路が形成され、その光路の中心である光軸C1,C2,C3が所定の高さレベルにその度に再設定されるようになっている。
【0019】
図1,図2および図5に示すように、機体正面からみて左右両側サイドのフレーム5の外側に、本実施形態の光学式安全装置10が配置されている。かかる光学式安全装置10は主要部にレーザセンサ(光学式センサ)を設けて構成され、たとえば、左側には光源を備えた投光器11aが配置され、この投光器11aから投光されたレーザビームを受光する受光器11bが右側に配置されている。図中のC1-C1ラインは投光されたレーザビーム光路の光軸を示す。検知光は光種に特定されない。たとえば、可視光、赤外光、そして紫外光などを光源に用いることができる。それら投光の光源種類に応じて、レーザセンサの方式としてフォトトランジスタ、フォトカプラ、フォトダイオードなどを採用することができる。
【0020】
光軸C1,C2,C3の高さレベルへの再設定は、上記投光器11aと受光器11bを同期して天地方向へ上下移動させるエアシリンダ(アクチュエータ)12の作動で行われる。エアシリンダ12の作動は制御ユニットからの作動信号によって行われるように構成されている。
【0021】
以上の構成から、曲げ部位の形状に対応して第1型?第3型の各上下型ユニットが作業者の選択操作、あるいは制御ユニットのメモリに記憶されている加工プログラムによって選択される。
【0022】
たとえば、第1型の上下型ユニットA1,B1から第2型の上下型ユニットA2,B2に金型変換するべく制御ユニットから作動信号が出力される。上下型ユニットA1,B1の上下型21a,24aから上下型ユニットA2,B2の上下型22a,25aへの移動によって、間隙h1から間隙h2へと金型間距離が広がる(図4参照)。金型変換を指示する制御ユニットから作動信号が出力される。それにほぼ同期して制御ユニットからセンサ移動指示信号がエアシリンダ12に出力される。エアシリンダ12が作動して投光器11aと受光器11bを同期させ、この場合は間隙h2に広がるので、上方に移動させる。それによって、図5に示すように、光軸C1から光軸C2へ高さレベル差H1だけ上げて設定される。第2型から第3型への金型交換も同様な手順で行われる。
【0023】
かかる光軸の高さレベル変更によって、光軸がこの場合上型に干渉して遮られるという事態は避けられ、安全装置としての安全性は迅速に確保される。
【0024】
以上から理解されるように、ATC装置20の作動によって複数種の金型が迅速に交換され、特にワークの曲げ部位が二度曲げ、三度曲げといった複数の曲げ工程を1サイクルとして頻繁に金型交換される場合に極めて有効である。そして、かかる頻繁な金型交換が行われるごとに迅速かつ確実に安全装置の安全性を確保することができる。
【0025】
なお、本発明の思想や主旨を逸脱しない範囲内でその他の実施形態、応用例、変形例、そしてそれらの組み合わせも可能である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の上型を保持して所定ストローク間を往復動するラムを有し、一方、前記上型とこれに対の下型との上下金型間に投光器から投光した検知光を受光器で受光して光路を形成するとともに、前記光路が遮断されたことの検出信号を出力する光学式センサを有し、前記光路が遮断されたことの光学式センサによる検出信号に基づいて前記上下金型の作動を停止させる停止信号を出力する制御ユニットを有するプレス機械の安全装置において、
被加工物の複数の曲げ部位に対応するためにサイズの異なる前記上下金型の複数対を保持し、前記制御ユニットから出力された選択信号によって前記複数対の中から対応する上下金型を選択する自動金型交換装置と、
前記制御ユニットから選択信号に同期して出力されたセンサ移動指示信号によって、前記光学式センサの投光器および受光器を移動させることで光路の高さレベルを変更するアクチュエータと、
を備え、
一の前記上下金型における前記上型と前記下型の間隙距離は、他の前記上下金型における前記上型と前記下型の間隙距離と相違しており、
前記被加工物の曲げ部位が複数の曲げ部を有し、前記複数の曲げ部に対する複数の曲げ工程を1サイクルとして前記曲げ部位の加工を行うときに、その1サイクルの曲げ工程ごとに対応する前記上下金型を前記自動金型交換装置によって選択するとともに前記アクチュエータによって前記光学式センサの投光器および受光器を移動させて光路の高さレベルを設定することを特徴とするプレス機械の安全装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-16 
出願番号 特願2015-92272(P2015-92272)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (B21D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 石川 健一  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 刈間 宏信
近藤 裕之
登録日 2016-09-16 
登録番号 特許第6004295号(P6004295)
権利者 株式会社吉野機械製作所
発明の名称 プレス機械の安全装置  
代理人 井上 満  
代理人 井上 満  
代理人 豊岡 静男  

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