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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
管理番号 1340071
異議申立番号 異議2016-701127  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-08 
確定日 2018-03-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5932232号発明「アノード支持型ハーフセル及びこれを用いたアノード支持型セル、並びにアノード支持型ハーフセルの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5932232号の明細書、特許請求の範囲を、平成29年12月15日付けの手続補正書によって補正された平成29年8月18日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、〔7?13〕について訂正することを認める。 特許第5932232号の請求項1?2、4?7、10?13に係る特許を維持する。 特許第5932232号の請求項3、8?9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5932232号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成23年3月25日に特許出願され、平成28年5月13日に特許権の設定登録がされ、同年6月8日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月8日に特許異議申立人 井上敬也(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年2月2日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内の同年4月6日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正請求がされ、同年6月16日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内の同年8月18日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正請求がされ、同年9月8日付けで訂正請求があった旨が当審より通知され、その指定期間内に異議申立人から意見書が提出されなかったが、同年11月14日付けで当審より訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年12月15日付けで同年8月18日付けの訂正請求についての手続補正書と意見書とが提出されたものである。
なお、当該手続補正書により補正された平成29年8月18日付けの訂正請求書を、以下、「本件訂正請求書」といい、当該訂正請求書による訂正請求を、以下では、「本件訂正請求」という。


第2 本件訂正の適否についての判断
本件訂正請求による請求の趣旨、及び、訂正の内容は、本件訂正請求書の記載によれば、それぞれ以下のとおりのものである。
なお、平成29年4月6日付けの訂正請求書による訂正請求は、本件訂正請求がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げたものとみなされる。

1. 請求の趣旨
本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6、7?13について訂正することを求める。

2. 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?15のとおりである。なお、訂正箇所には下線を付した。
(1) 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?3のいずれか1項に記載のアノード支持型のハーフセルの製造方法であって、」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるにあたり、「電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)」に関し、訂正前の請求項1に「差(Δh)が100μm以下」とあるのを、「差(Δh)が89μm以下」に減縮して、請求項7を、
「アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有するアノード支持型ハーフセルであって、
前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、
前記電解質層の空隙率は10%以下であり、
前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、
前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、
前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、
前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であり、
前記電解質層は、セラミックス質を主成分として含み、
前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであり、
前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であるアノード支持型ハーフセルの製造方法であって、
前記アノード支持基板と前記電解質層とを含む多層焼成体を作製する工程と、
前記多層焼成体の周縁部を切断辞去する工程と、
を有することを特徴とするアノード支持型ハーフセルの製造方法。」
に訂正する。

(2) 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?3のいずれか1項に記載のアノード支持型のハーフセルの製造方法」とあるうち、請求項2を引用するものについて、訂正事項1により訂正される請求項7を引用する請求項10に係る発明として、
「【請求項10】
前記アノード支持基板の厚さは100μm以上、3mm以下、
前記アノード層の厚さは5μm以上、100μm以下、
前記電解質層の厚さは5μm以上、50μm以下、
である請求項7に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。 」
に訂正する。

(3) 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?3のいずれか1項に記載のアノード支持型のハーフセルの製造方法」とあるうち、請求項3を引用するものについて、訂正事項1?2により訂正される請求項7または10を引用する請求項11に係る発明として、
「【請求項11】
前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.003?0.35である請求項7または10に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。 」
に訂正する。

(4) 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項8について、訂正事項1?3により訂正される請求項7、10、11のいずれか1項を引用する請求項12に係る発明として、
「【請求項12】
前記周縁部を切断除去する工程は、レーザー切断装置を用いて切断除去するものである請求項7、10、11のいずれか1項に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。 」に訂正するとともに、当該請求項8を削除する。

(5) 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項9について、訂正事項1?4により訂正される請求項7、10、11、12のいずれか1項を引用する請求項13に係る発明として、
「【請求項13】
請求項7、10、11、12のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたアノード支持型ハーフセルにスクリーン印刷でカソード層を形成するものであるアノード支持型セルの製造方法。 」に訂正するとともに、当該請求項9を削除する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に
「前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、
前記電解質層の空隙率は10%以下であり、」とあるのを、
「前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、
前記電解質層の空隙率は10%以下であり、
前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.04?0.35であり、」に訂正し、その結果として、請求項1を引用する請求項2?6も訂正する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に
「差(Δh)が100μm以下」とあるのを、
「差(Δh)が89μm以下」に訂正し、その結果として、請求項1を引用する請求項2?6も訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項1に「であることを特徴とするアノード支持型ハーフセル。」とあるのを、
「であることを特徴とするアノード支持型ハーフセル。(ただし、前記アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含むハーフセルを除く。) 」に訂正し、その結果として、請求項1を引用する請求項2?6も訂正する。

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれか1項に記載のアノード支持型ハーフセル」とあるのを、
「請求項1または2に記載のアノード支持型ハーフセル」に訂正し、その結果として、請求項4を引用する請求項5?6も訂正する。
する。

(11) 訂正事項11
明細書の段落【0011】において、「差(Δh)が100μm以下」とあるのを、
「差(Δh)が89μm以下」に訂正する。

(12) 訂正事項12
明細書の段落【0016】において、「差(Δh)が100μm以下」とあるのを、
「差(Δh)が89μm以下」に訂正する。

(13) 訂正事項13
明細書の段落【0080】において、
「Δhが100μm以下」とあるのを、「Δhが89μm以下」に、
「Δhが100μmを超える」とあるのを、「Δhが89μmを超える」に、
「Δhを100μm以下」とあるのを、「Δhを89μm以下」に、それぞれ訂正する。

(14) 訂正事項14
明細書の段落【0082】において、
「Δhが100μm以下」とあるのを、「Δhが89μm以下」に、
「Δhが100μmを超える」とあるのを、「Δhが89μmを超える」に、
「Δhを100μm以下」とあるのを、「Δhを89μm以下」に、それぞれ訂正する。

(15) 訂正事項15
明細書の段落【0084】において、
「Δhが100μm以下」とあるのを、「Δhが89μm以下」に、
「Δhが100μmを超える」とあるのを、「Δhが89μmを超える」に、
「Δhを100μm以下」とあるのを、「Δhを89μm以下」に、それぞれ訂正する。


2. 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求
の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項7が請求項1?3のいずれかの記載を引用するものであったところ、請求項1の記載を引用するものについて、当該請求項1の記載を引用しないものとするにあたって、「電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)」に関し、「差(Δh)が100μm以下」とあるのを、訂正前の明細書の【0064】?【0076】、【0078】、【0081】、【0083】の記載に基づき、「差(Δh)が89μm以下」に減縮するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることと特許請求の範囲の減縮とを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項7の「請求項1?3のいずれか1項に記載のアノード支持型のハーフセルの製造方法」のうちの請求項2を引用するものについて、訂正事項1により訂正される請求項7を引用する請求項10に係る発明として訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(3) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項7の「請求項1?3のいずれか1項に記載のアノード支持型のハーフセルの製造方法」のうちの請求項3を引用するものについて、訂正事項1?2により訂正される請求項7または10を引用する請求項11に係る発明として訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(4) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項8について、特許法施行規則第24条の3第4号の規定に反することのないように、訂正事項1?3により訂正される請求項7、10、11のいずれか1項を引用する請求項12に係る発明として訂正するとともに、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮と明瞭でない記載の釈明とを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(5) 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項9について、特許法施行規則第24条の3第4号の規定に反することのないように、訂正事項1?4により訂正される請求項7、10、11、12のいずれか1項を引用する請求項13に係る発明として訂正するとともに、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮と明瞭でない記載の釈明とを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(6) 訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項1について、「アノード支持基板の厚さ(T1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)」に関し、訂正前の請求項3、訂正前の明細書の【0021】、【0071】?【0076】、【0081】、【0083】の記載に基づき、「0.04?0.35」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。また、請求項1を引用する請求項2?6についても同様である。

(7) 訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項1について、「電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)」に関し、「差(Δh)が100μm以下」とあるのを、訂正前の明細書の【0064】?【0076】、【0078】、【0081】、【0083】の記載に基づき、「差(Δh)が89μm以下」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。また、請求項1を引用する請求項2?6についても同様である。

(8) 訂正事項8
訂正事項8は、訂正前の請求項1について、「アノード支持型ハーフセル」に関し、「(ただし、前記アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含むハーフセルを除く。)」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(9) 訂正事項9
訂正事項9は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(10) 訂正事項10
訂正事項10は、訂正前の請求項4が請求項1?3のいずれか1項を引用していたところ、訂正事項9に伴って、請求項4を請求項1または2を引用する請求項とするものであり、請求項4の引用請求項数を減少するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(11) 訂正事項11?15
訂正事項11?15は、「電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)」に関し、訂正前の発明の詳細な説明における「100μm以下」、「100μmを超える」との記載を、訂正前の明細書の【0064】?【0076】、【0078】、【0081】、【0083】の記載に基づき、それぞれ、「89μm以下」、「89μmを超える」に訂正するものであって、それらの訂正により、発明の詳細な説明の記載と、訂正事項1?5、7により変更された、特許請求の範囲の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12) 独立特許要件について
本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用される請求項はなく、したがって、訂正事項1?10には、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用されない。

(13) 一群の請求項について
訂正前の請求項2?9は、訂正前の請求項1を引用する請求項であり、訂正前の請求項1?9に対応する訂正後の請求項1?13は一群の請求項であるところ、本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法120条の5第4項に適合する。
また、訂正後の請求項7に係る訂正事項1は、請求項1?6との引用関係の解消を目的とする訂正を含んでおり、さらに、訂正後の請求項10?13に係る訂正事項2?5は、訂正後の請求項10?13を訂正後の請求項7を引用する請求項とする訂正を含んでいるため、訂正後の請求項7、10?13は一群の請求項を形成することとなるところ、それらの訂正事項は、上記の検討のとおり、適法なものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項7?13について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項7、10?13は、請求項1?6の一群の請求項とは別途訂正する一群の請求項であると認める。


3. 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-13〕について訂正することを認める。


第3 本件訂正発明
上記第2のとおり訂正することを認めるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明13」ということがあり、また、これらを、まとめて、「本件訂正発明」ということがある。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。訂正箇所には下線を付した。
なお、訂正前の請求項3、8?9に係る発明は存在しないものとなるとともに、本件訂正発明10?13が存在するものとなったが、本件訂正発明12、本件訂正発明13は、それぞれ、訂正前の請求項8に係る発明、訂正前の請求項9に係る発明に対応しており、本件訂正発明7、本件訂正発明10、本件訂正発明11は訂正前の請求項7に係る発明に対応している。
また、本件特許の明細書は、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりのものである。
「【請求項1】
アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有するアノード支持型ハーフセルであって、
前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、
前記電解質層の空隙率は10%以下であり、
前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.04?0.35であり、
前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、
前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、
前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、
前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であり、
前記電解質層は、セラミックス質を主成分として含み、
前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであり、
前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴とするアノード支持型ハーフセル。(ただし、前記アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含むハーフセルを除く。)
【請求項2】
前記アノード支持基板の厚さは100μm以上、3mm以下、
前記アノード層の厚さは5μm以上、100μm以下、
前記電解質層の厚さは5μm以上、50μm以下、
である請求項1に記載のアノード支持型ハーフセル。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
請求項1または2に記載のアノード支持型ハーフセルにカソード層を形成したことを特徴とするアノード支持型セル。
【請求項5】
前記カソード層の厚さの標準偏差は3μm以下である請求項4に記載のアノード支持型セル。
【請求項6】
請求項4または5に記載のアノード支持型セルを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有するアノード支持型ハーフセルであって、
前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、
前記電解質層の空隙率は10%以下であり、
前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、
前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、
前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、
前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であり、
前記電解質層は、セラミックス質を主成分として含み、
前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであり、
前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であるアノード支持型ハーフセルの製造方法であって、
前記アノード支持基板と前記電解質層とを含む多層焼成体を作製する工程と、
前記多層焼成体の周縁部を切断除去する工程と、
を有することを特徴とするアノード支持型ハーフセルの製造方法。
【請求項8】 (削除)
【請求項9】 (削除)
【請求項10】
前記アノード支持基板の厚さは100μm以上、3mm以下、
前記アノード層の厚さは5μm以上、100μm以下、
前記電解質層の厚さは5μm以上、50μm以下、
である請求項7に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
【請求項11】
前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.003?0.35である請求項7または請求項10に記載のアノード支持型セルの製造方法。
【請求項12】
前記周縁部を切断除去する工程は、レーザー切断装置を用いて切断除去するものである請求項7、10、11のいずれか1項に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
【請求項13】
請求項7、10、11、12のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたアノード支持型ハーフセルにスクリーン印刷でカソード層を形成するものであるアノード支持型セルの製造方法。 」


第4 特許異議の申立てについて
1. 申立理由の概要
異議申立人は、以下の甲第1号証?甲第21号証を提出して、以下の申立理由1?4によって、訂正前の請求項1?9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1) 申立理由1
訂正前の請求項1?9に係る発明は、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(例えば、甲第2号証、甲第3号証、甲第13号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第20号証、および、甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(特許異議申立書第9頁第2行?第41頁第6行)。

(2) 申立理由2
訂正前の請求項1?9に係る発明は、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(例えば、甲第2号証、甲第3号証、甲第13号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第20号証、および、甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(特許異議申立書第9頁第2行?第41頁第6行)。

(3) 申立理由3
訂正前の請求項1?9に係る発明は、次の(3-1)?(3-7)の理由により、発明の詳細な説明において「発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである(特許異議申立書第41頁第9行?第54頁末行)。

(3-1) 本件の発明の詳細な説明には、製造例1の記載箇所以外に、「アノード支持型ハーフセルの周縁部の反りを低減する」という課題を解決するための発明特定事項を具備させる具体的手段が記載された箇所は存在しないのに対し、訂正前の請求項1?9に係る発明は、製造例1以外の態様を広範に含んでいる。

(3-2) 本件の発明の詳細な説明には、「アノード支持型ハーフセルの周縁部の反りを低減する」という課題を解決するための具体的手段として、「多層焼結体の全幅85mmから幅10mmの周縁部を切断除去する」ことが記載されているのに対して、訂正前の請求項1?9に係る発明は、「多層焼結体の全幅85mmから幅10mmの周縁部を切断除去する」ことを有しておらず、発明の詳細な説明において開示された内容を、訂正前の請求項1?9に係る発明にまで、拡張ないし一般化できない。

(3-3) 本件の発明の詳細な説明に記載された課題は、アノード支持基板を作製するための焼成工程と電解質層を作製するための焼成工程とを別々に行う製法を採用する場合において発生する課題であるが、当該製法を採用することを有しない、訂正前の請求項1?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された課題が発生し得ない態様を含んでいる。

(3-4) 本件の発明の詳細な説明には、アノード支持型ハーフセルの大きさが65mm×65mmである場合にΔhが100μmである条件を満たすことによって、課題が解決できることが記載されているだけであるが、訂正前の請求項1?9に係る発明は、アノード支持型ハーフセルの大きさを規定する発明特定事項を一切有さないために、課題を解決できない場合まで含んでいる。

(3-5) アノード支持型ハーフセルにおいて、Δhが100μm以下であっても、例えば電解質層周縁端部からハーフセルの中心方向に10mmの位置において大きな反りが発生している場合には、課題が解決できないことは明らかであるが、訂正前の請求項1?9に係る発明は、そのような場合まで含んでいる。

(3-6) 本件の発明の詳細な説明には、アノード支持型ハーフセルが電解質側に沿った態様だけが記載されていることは明らかであるが、訂正前の請求項1?9に係る発明は、アノード支持型ハーフセルの反りの方向を規定する発明特定事項を一切有さない。

(3-7) 訂正前の請求項1?9に係る発明は、アノード支持型ハーフセルを構成するアノード支持基板、アノード層、電解質層の各層の厚さが均一であることについての発明特定事項を一切有さないため、当該各層の厚さが不均一である場合を含んでいるが、そのような場合には、例えばアノード支持基板の厚さが面方向の一方向に漸減した態様では、周縁端部の反りが大きくてもΔhが100μm以下となることがあるため、訂正前の請求項1?9に係る発明は課題を解決できない場合まで含んでいる。

(4) 申立理由4
訂正前の請求項4に係る発明は、「アノード支持型セル」という物の発明であるが、当該請求項には、「アノード支持型ハーフセルにカソード層を形成した」とあり、焼成後のアノード支持型ハーフセルにカソード層を形成するというその物の製造方法が記載されているところ、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合に、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られるが、その事情の存在は見出せないから、訂正前の請求項4に係る発明および、それに従属する訂正前の請求項5?6は明確でなく、訂正前の請求項4?6に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである(特許異議申立書第55頁第1?19行)。

[異議申立人が提出した証拠方法]
甲第1号証:特開2004-296093号公報
甲第2号証:特表2003-519023号公報
甲第3号証:特開2001-247373号公報
甲第4号証:特開昭60-203383号公報
甲第5号証:特開昭61-126987号公報
甲第6号証:特開平6-79715号公報
甲第7号証:特開2010-27359号公報
甲第8号証:特開2000-281438号公報
甲第9号証:特開2001-89252号公報
甲第10号証:特開2001-10866号公報
甲第11号証:国際公開第99/59936号
甲第12号証:特開2006-59610号公報
甲第13号証:特開2001-351647号公報
甲第14号証:特表2007-519176号公報
甲第15号証:特開平8-119732号公報
甲第16号証:特開2008-182136号公報
甲第17号証:特開2011-18783号公報
甲第18号証:特表2006-524902号公報
甲第19号証:特表2008-541336号公報
甲第20号証:特開2006-24371号公報
甲第21号証:特開2007-299690号公報


2. 取消理由の概要
訂正前の請求項1?9に係る特許(以下、「本件特許1」?「本件特許9」ということがある。また、これらを、まとめて「本件特許」ということがある。)に対して、平成29年2月2日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

1) 本件特許1?本件特許6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に違反して特許を受けたものであり、本件特許は取り消すべきものと認められる。
2) 本件特許1?本件特許6に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものであり、本件特許は取り消すべきものと認められる。

刊行物1:特表2006-524902号公報(甲第18号証)

3) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)によれば、本件特許発明は、「アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、その周縁部の反り上がりが低減されており、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できるアノード支持型ハーフセルを提供すること」と、「セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルを提供すること」とを、発明が解決しようとする課題(以下、単に「課題」という。)にしていると認められ(【0006】?【0010】)、そして、発明の詳細な説明によれば、前記の課題は、アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルの周縁部の反りを低減することにより、最終的に得られるアノード支持型セルの周縁部の反りを低減できるとの知見に基づいており、具体的には、製造例1に記載した方法で作製されたアノード支持型ハーフセル、および、そのアノード支持型ハーフセルを用いて得られたアノード支持型セルは、「アノード支持型ハーフセルの電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)」(以下、単に、「Δh」という。)が89μm以下であることから、解決し得るとされている(【0009】、【0064】?【0084】、【図1】?【図4】)。
これに対し、本件特許発明1は、Δhが100μm以下であるとの発明特定事項を備えており、例えば、【図1】に示されているように、Δhが103μmである多層焼成体A、あるいは、【図3】に示されているように、Δhが105μmである多層焼成体Bに対して、Δhが100μmとなるように、当該多層焼成体に対して、例えば3?5μmの表面研磨や周縁部除去を行って、アノード支持型ハーフセルを得た場合(以下、「Δhが100μmのアノード支持型ハーフセルの場合」という。)まで包含しているが、発明の詳細な説明には、【図1】に示されているΔhが103μmである多層焼成体A、あるいは、【図3】に示されているΔhが105μmである多層焼成体Bによって、前記した課題を解決し得るまでの開示は見当たらないところ、Δhが100μmのアノード支持型ハーフセルの場合は、【図1】、あるいは、【図3】に図示されている3次元形状に対して、例えば3?5μmの表面研磨や周縁部除去が行われたにすぎない3次元形状をしていることからして、そのような3次元形状は、前記多層焼成体Aや前記多層焼成体Bの3次元形状とほとんど同じになるため、Δhが100μmのアノード支持型ハーフセルの場合に、前記した課題を解決し得るとまではいえないため、発明の詳細な説明には、本件特許発明1によって、前記した課題が解決し得るまでの開示がされているとはいえない。
よって、 本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 また、本件特許発明2?9は、 本件特許発明1と同様の理由で、発明の詳細な説明に記載したものでない。
したがって、本件特許は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである。


3. 取消理由(決定の予告)の概要
平成29年4月6日付けの訂正請求書によって訂正請求された、請求項1?9に係る特許(以下、「本件特許1’」?「本件特許9’」という。)に対して、平成29年6月16日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

本件特許1’?本件特許9’について訂正することを認める。本件特許1’?本件特許6’の特許を取り消す。本件特許7’?本件特許9’の特許を維持する。
1) 本件特許1’?6’に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に違反して特許を受けたものであり、本件特許は取り消すべきものと認められる。
2) 本件特許1’?6’に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものであり、本件特許は取り消すべきものと認められる。

刊行物1:特表2006-524902号公報(甲第18号証)


4. 当審の判断
4A 上記3.の1)?2)の取消理由(決定の予告)について
(A-1) 刊行物1の記載事項・視認事項
刊行物1には、以下の事項が記載され、視認される(当審注:「…」は記載の省略を表す。以下、同じ。)。
1ア. 「高密度セラミック電解質を使用している固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、発電のための最も魅力的な技術のうちの一つと考えられる。典型的なSOFCでは、多孔質金属ベースのアノードと、多孔質金属又はセラミックのカソードは、固体電解質によって隔てられている。その力学的、電気的、化学的及び熱的特性の故に、イットリアで安定化された酸化ジルコニウム(YSZ)は、現在最も一般的に用いられている電解質材料である。現時点では、典型的なSOFCのアノードはニッケル・YSZサーメットから作製されており、また、カソードは、典型的には、ランタンマンガナイト、ランタンフェライト又はランタンコバルタイトから作製されている。…」(段落0003)

1イ. 「…燃料電池は、一般的に、図2に概略示してあるような三層形態であって、燃料電池100は、電解質層110、アノード層120及びカソード層130を含む。アノード層120及びカソード層130は、電解質層110の両側にある。
固体酸化物型燃料電池は、まず最初にアノード支持体を提供し、次いで、該アノード支持体に電解質層を施用して、アノード・電解質二重層を形成することによって、本発明の一つの面にしたがって作製できる。次に、カソード層を該電解質に施用する。そのようにして作製された燃料電池は、一般的に「アノード支持」電池と呼ばれている。」(段落0016?0017)

1ウ. 「…電解質層110は、セラミックイオン伝導体材料、例えばイットリアで安定化された酸化ジルコニウム(YSZ)、又はZrO_(2)-8モル%Y_(2)O_(3)、又は同様な特性を有する任意の他の材料である。Daiichi製のHSY8.0を含むいくつかの市販されているYSZ材料を用いることができ、そして図6及び図7の二重層を形成する際に用いることができる。
アノードは、セラミックイオン伝導体と導電体との複合混合物であるニッケル・YSZサーメットであることができる。一般的に、ニッケルは、サーメットにおいてNiOの形態で提供され、還元環境に暴露するとNiへと転化する。アノード層120におけるNiの量は、電気化学反応の導電及び遂行を可能にするのに充分であって、典型的には、還元後にはアノード層120の約30?60固体体積%、例えば約40固体体積%である。一つの面では、アノード層120は、バルクアノード層で支持された活性アノード層を有していて、且つ該活性アノード層が電解質層に面している複数層構造として形成される。活性アノードとバルクアノードは、主として支持体として役立つので、同一であることができる…」(段落0020?0021)

1エ. 「図4に例示してあるように、一つの技術では、電解質及び活性アノードの単一テープシート及びバルクアノードの多数のテープシートを用いて、より実質的なバルクアノード層330上ですべて支持されている比較的薄い活性アノード層320上において比較的薄い電解質層310を有する単一の積層されたアノード・電解質二重層300を作製する。次に、積層されたアノード・電解質二重層300を、例えば、1時間、1375℃で焼結する。
焼結後、二重層300中の電解質層310は、好ましくは、3?30μm、例えば5?15μm、又は約8μmの厚さを有する。二重層300中の活性アノード320は、好ましくは、3?30μm、例えば5?15μm、又は約8μmの厚さを有する。二重層300中のバルクアノード330は、好ましくは、200?1000μm、例えば400?600μm、又は約550μmの厚さを有する。」(段落0023?0024)

1オ. 「驚くべきことに、アノードに添加された比較的少量の炭化ケイ素(SiC)によって、反りの形成が劇的に低減されることを見出した。而して、本発明の一つの面では、アノードの複合混合物は、この室温での反りを低減又は除去するのに充分なSiC量を含む。アノード層120におけるSiC量は任意の有効量で存在できるが、典型的には、還元後に、アノード層120を基準として、約1?約20固体体積%であり、そしてそれは約0.5?約10重量%に相当する。SiCは、特定のアノード層、例えば、図4において、テープの個別パイルから成る最下部のアノード支持体層に添加することができるか、又は、更に好ましくは、SiCは、一般的に、バルクアノード層330の実質的な部分の中に均一に分散され、例えば、バルクアノード層330の実質的に全体に均一に分散される。バルクアノード層330全体に均一に分散されるとき、濃度の範囲の下端は、例えば0.5?5重量%であることができる。SiCで改質された二重層の典型的な走査型電子顕微鏡写真は、図5に示してあり、その写真からは、SiC粒子が、バルクアノード層330全体に概ね均一に分散されていることが認められる。」(段落0026)

1カ. 「図7には、バルクアノード全体に概ね均一に分散させてSiC粒子1重量%を添加することによって改質された図6の二重層が例示してある。図6と図7を比較すると、このSiCを添加することにより、室温での反りを劇的に低減できることが分かる。反った平板Pの側面図である図8に記載されている寸法について説明すると、反りの量は、プレートPの対向側(opposing sides)と接触している2つの仮想の平行平面間の距離D(プレートPの厚さTを下回る)である中心点の撓みによって定量される。撓みは、非撓みプレートPの長さLが長くなると共に増大する傾向があることは理解できる。また、より厚いプレートPは、反りに抵抗する構造剛性が増しているので、撓みは、プレートPの厚さTが増加すると共に減少する傾向がある。本発明の一つ形態では、電解質・アノード二重層300は、約3cm超える長さL、約750μm未満の厚さT、…好ましくは、撓みは、長さ1cmあたり0.02mm未満又は0.01mm未満である。…」(段落0028)

1キ. 「SOFC電池100は、任意の従来法によって、例えば、電極層上にカソード層をスクリーン印刷し、次いで別の焼結工程を行うことによって、アノード・電解質二重層300から形成できる。一つの面では、アノード・電解質二重層300を室温まで冷やした後にカソード層の形成を行うことによって、二重層300の取扱いが容易になり、別の場所又は別の処理操作への輸送がし易くなる。例えば、アノード・電解質二重層300は一つの場所で大量に製造することができ、そして、施用されるカソード層及び最終的なSOFCの形成は別の製造場所で行うことが企図される。」(段落0029)

1ク. 「【図2】


上記1イ.の記載を踏まえると、図2からは、アノード層120と電解質層110とを含むアノード・電解質二重層における該電解質層110にカソード層130を施用して作製された、アノード支持電池と呼ばれる固体酸化物型燃料電池100が見て取れる。

1ケ. 「【図4】


上記1ウ.?1オ.の記載を踏まえると、図4?図5からは、8モル%のイットリアで安定化された酸化ジルコニウム(以下、「YSZ」という。)からなる約8μmの厚さの電解質層310とニッケル・YSZサーメットからなる約8μmの厚さの活性アノード320とが、約550μmの厚さのニッケル・YSZサーメット全体にSiC粒子が、室温での反りを低減又は除去するのに充分な量で、均一に分散しているバルクアノード層330で支持されているアノード・電解質二重層300であって、Niの量は還元後の前記活性アノード320と前記バルクアノード層330とにおいて約40固体堆積%である、アノード・電解質二重層300が見て取る。

1コ. 「【図7】

【図8】


上記1オ.?1カ.の記載を踏まえると、図7?図8からは、バルクアノード層330全体に添加量1重量%のSiC粒子を均一に分散させることによって、室温での反りを劇的に低減した、約3cm超える長さL、約750μm未満の厚さT、長さL1cmあたり0.05mm未満の室温での撓みを有するアノード・電解質二重層300が見て取れる。

1サ. 「実際に、これらの少量のSiC添加は、電池の性能に悪影響を与えないだけでなく、いくつかの場合では、還元前及び還元後の両方で、またある温度範囲にわたって、二重層の曲げ強さを実際に増大させることを見出した。…
他のケイ素化合物(例えば、ケイ素酸化物)も、上記SiCのいくらか又はすべての代替としてアノードに添加することができる。熱重量分析を用い、そして、添加されたSiCが、以下の分解反応:
SiC + 2O_(2) -> SiO_(2) + CO_(2)
を経ると仮定すると、SiCの約18%が、1375℃で焼結中に、SO_(2)へと転化することを見出した。而して、アノード作製中にSiO_(X)を直接添加すると、同様に、完了されたアノード・電解質二重層における反りは低減するはずである。
アノードに添加される他のケイ素化合物の量は0?10重量%であることができる。
一般的に、ケイ素化合物の混合物を使用するとき、添加されるケイ素化合物(いくらかのSiCを含む)の総量は0.5?10重量%である。…」(段落0031?0033)

1シ. 「第一及び第二の対向表面を画定しているセラミックイオン伝導性電解質層;該電解質層の第一表面に面している導電性アノード層;及び該電解質層の該第二表面に面している導電性カソード層を含み;そしてその場合、該導電性アノード層の少なくとも一部分が、炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含む、燃料ガスを酸化体ガスと電気化学的に反応させてDC出力電圧を生成するための固体酸化物型燃料電池。」(請求項1)

(A-2) 引用発明
2ア. 刊行物1には、上記1コ.によれば、バルクアノード層330全体に添加量1重量%のSiC粒子を均一に分散させた、約3cm超える長さL、約750μm未満の厚さT、長さL1cmあたり0.05mm未満の室温での撓みを有するアノード・電解質二重層300が記載され、また、前記アノード・電解質二重層300は、上記1オ.?1カ.によれば、SiC量を室温での反りを除去するのに10重量%までの充分な量とすれば、撓みがない非撓みプレートとすることができること、すなわち、バルクアノード層330全体に室温での反りを除去するのに10重量%までの充分な量のSiC粒子を均一に分散させた、約3cm超える長さ、約750μm未満の厚さを有し、室温での撓みがない非撓みプレートからなるアノード・電解質二重層300も記載されており、これらのアノード・電解質二重層300は、上記1ケ.によれば、YSZからなる約8μmの厚さの電解質層310とニッケル・YSZサーメットからなる約8μmの厚さの活性アノード320とが、約550μmの厚さのニッケル・YSZサーメット全体にSiC粒子が、室温での反りを低減又は除去するのに1?10重量%までの量で、均一に分散している前記バルクアノード層330で支持されているアノード・電解質二重層300であって、Niの量は還元後の前記活性アノード320と前記バルクアノード層330とにおいて約40固体体積%であることが記載されているといえる。

2イ. また、上記2ア.に示した、約550μmの厚さのニッケル・YSZサーメット全体にSiC粒子が、室温での反りを低減又は除去するのに1?10重量%までの量で、均一に分散している前記バルクアノード層330に関して、刊行物1全体からは、上記1サ.?1シ.によれば、約550μmの厚さのニッケル・YSZサーメット全体に炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物が、室温での反りを低減又は除去するのに約0.5重量%?10重量%の量で、均一に分散している前記バルクアノード層330とすることが把握できるといえる。

2ウ. また、刊行物1には、上記1キ.?1ク.によれば、前記アノード・電解質二重層300にカソード層130を施用した、アノード支持電池と呼ばれる固体酸化物型燃料電池100も記載されているといえる。

2エ. 上記2ア.?2イ.に示したことを踏まえると、アノード・電解質二重層300において、バルクアノード層330全体に炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を均一に分散させて室温での反りを低減又は除去させた場合に注目すると、刊行物1には、「YSZからなる約8μmの厚さの電解質層310とニッケル・YSZサーメットからなる約8μmの厚さの活性アノード320とが、約550μmの厚さのニッケル・YSZサーメット全体に炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物が約0.5重量%?10重量%の量で均一に分散しているバルクアノード層330で支持されているアノード・電解質二重層300であって、Niの量は還元後の前記活性アノード320と前記バルクアノード層330とにおいて約40固体体積%であり、約3cm超える長さ、約750μm未満の厚さを有し、室温での撓みが低減又は除去されたプレートからなるアノード・電解質二重層300」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

2オ. また、上記2ア.?2エ.に示したことを踏まえると、刊行物1には、「引用発明1のアノード・電解質二重層300にカソード層130を施用した、アノード支持電池と呼ばれる固体酸化物型燃料電池100」(以下、「引用発明2」という。)も記載されていると認められる。


(A-3) 本件訂正発明と引用発明との対比・判断
3ア. 本件訂正発明1と引用発明1との対比・判断
(ア) 本件訂正発明1と引用発明1とを対比するに、技術常識からして、引用発明1における「バルクアノード層330」、「活性アノード320」、「電解質層310」は、それぞれ、本件訂正発明1における「アノード支持基板」、「アノード層」、「電解質層」に相当し、引用発明1における「電解質層310と」「活性アノード320とが、」「バルクアノード層330で支持されているアノード・電解質二重層300」は、本件訂正発明1における「アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有するアノード支持型ハーフセル」に相当する。また、引用発明1における「YSZ」とは、上記1ケ.によれば、8モル%のイットリアで安定化された酸化ジルコニウムを表していることから、材料としては、本件訂正発明1における「2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア」であることに相当し、そして、引用発明1における「ニッケル・YSZサーメット」が、材料としては、本件訂正発明1における「導電成分と骨格成分とを含み、前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア」であることに相当していることを考慮すると、引用発明1が「ニッケル・YSZサーメットからなる」「活性アノード320」と「ニッケル・YSZサーメット全体にSiC粒子が均一に分散しているバルクアノード層330」とを備えることは、本件訂正発明1における「前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア」「であ」ることに相当し、また、引用発明1の「YSZからなる」「電解質層310」は、本件訂正発明1における「前記電解質層は、セラミックス質を主成分として含み、前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであ」ることに相当する。
そうすると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

<相違点>
相違点1: 空隙率について、本件訂正発明1では、「前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、前記電解質層の空隙率は10%以下であ」るとの特定があるのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。

相違点2: 前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)について、本件訂正発明1では、「0.04?0.35であ」るとの特定があるのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。

相違点3: 前記導電成分と前記骨格成分の比率について、本件訂正発明1では、「前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であ」るとの特定があるのに対し、引用発明1では、Niの量は還元後の前記活性アノード320と前記バルクアノード層330とにおいて約40固体体積%であるものの、質量%での特定がない点。

相違点4: アノード支持型ハーフセルについて、本件訂正発明1では、「前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下である」との特定があるのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。

相違点5: アノード支持型ハーフセルが、本件訂正発明1では、「アノード支持型ハーフセル。(ただし、前記アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含むハーフセルを除く。)」のに対し、引用発明1では、ニッケル・YSZサーメット全体に炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物が約0.5重量%?10重量%の量で均一に分散しているバルクアノード層330で支持されている、すなわち、アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含む点。

(イ) そして、上記相違点につき検討するに、上記相違点5によって、本件訂正発明1が引用発明1のアノード支持型ハーフセルを包含しないものとなっていることは明らかである。
してみれば、本件訂正発明1は、刊行物1に記載された発明ではない。

(ウ) また、上記(A-1)1オ.?1カ.、及び、1サ.?1シ.によれば、引用発明1のアノード支持型ハーフセルにおいては、アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含むとの技術的事項は、室温での撓みを低減又は除去するためには、必須の事項であって、この技術的事項を備えないものとすることは、刊行物1の記載に照らし、合理性を欠くことである。
してみると、引用発明1のアノード支持型ハーフセルにおいて、アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含むとの技術的事項を備えないものとすること、すなわち、上記相違点5に係る本件訂正発明1の特定事項を備えたものとすることは、刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易になし得たことともいえない。

(エ) したがって、本件訂正発明1は、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易になし得たものともいえない。


3イ. 本件訂正発明2と引用発明1との対比・判断
(カ) 本件訂正発明2と引用発明1とを対比するに、本件訂正発明2は請求項1を引用するものであり、上記(ア)と同様の検討により、少なくとも上記相違点1?5の点で相違している。

(キ) そして、上記相違点については、上記(イ)?(ウ)と同様の検討により、本件訂正発明2も、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易になし得たものともいえない。


3ウ. 本件訂正発明4と引用発明2との対比・判断
(サ) 本件訂正発明4と引用発明2とを対比するに、本件訂正発明4は請求項1を引用するものであり、上記(ア)と同様の検討により、少なくとも上記相違点1?5の点で相違している。

(シ) そして、上記相違点については、上記(イ)?(ウ)と同様の検討により、本件訂正発明4も、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易になし得たものともいえない。


3エ. 本件訂正発明5?6と引用発明2との対比・判断
(タ) 本件訂正発明5?6と引用発明2とを対比するに、本件訂正発明5?6は請求項4を引用するものであるから、上記(サ)と同様の検討により、少なくとも上記相違点1?5の点で相違している。

(チ) そして、上記相違点については、上記(シ)と同様の検討により、本件訂正発明5?6も、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易になし得たものともいえない。


(A-4) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1?6は、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易になし得たものともいえないから、特許法第29条第1項第3号または同法同条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえず、上記3.の1)?2)の取消理由(決定の予告)によって、本件訂正発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。


4B 上記2.の1)?2)の取消理由について
上記2.の1)?2)の取消理由は、上記3.の1)?2)の取消理由(決定の予告)と同じ取消理由であるところ、上記4Aでの検討と同様にして、本件訂正発明1?6は、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易になし得たものともいえないから、上記2.の1)?2)の取消理由によって、本件訂正発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。


4C 上記2.の3)の取消理由について
上記2.の3)の取消理由は、本件特許発明は発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである旨の取消理由である。

(C-1) 本件訂正請求書に添付した訂正明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
ア. 「【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード支持型ハーフセルに関するものであり、特に周縁部の反りを低減したアノード支持型ハーフセルに関するものである。」

イ. 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、アノード支持型セルにおいて、電解質層や電極が印刷されるアノード支持基板の周縁端部のバリ高さを低くすることにより電池性能を高めていた。すなわち、アノード支持基板の周縁端部のバリ高さを低くして、周縁部を平滑にすれば、最終的に得られるアノード支持型セルにおいても周縁部を平滑にできると考えられていた。これは、一度焼成されたアノード支持基板は、充分に強度が高められているため、その後の工程においても変形することはないと考えられていたためである。そのため、従来は、アノード支持基板単層の状態での周縁部の平滑性のみを検討しており、これに電解質層が積層された後については、周縁部の反り等は一切検討されていなかった。
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、アノード支持基板の周縁部を平滑にした場合でも、このアノード支持基板を用いて作製されるアノード支持型セルの周縁部に反りが生じることが確認された。そして、このアノード支持型セルの周縁部の反りは、アノード支持基板又はアノード支持基板グリーンシートと電解質層前駆体との積層体を焼成する際に、電解質層前駆体が収縮して、アノード支持基板の周縁端部が電解質膜側に引っ張られ、反り上がることで生じることが判明した。
【0008】
このように、アノード支持型セルの周縁部に反りが存在すると、セルスタックとして多層積層されて大きな積層荷重を受けた際に、反りに起因する局部的な応力集中による割れや破損等を生じることがあり、また、燃料電池を構成する際の単セルとガス管との接合部、単セル同士の接合部又は単セル間に配置されるインターコネクタ(セパレータ)と単セルとの接合部等のシール性が悪くなり、動作時にガス漏れを生じることがあった。さらに、アノード支持型ハーフセルの段階で、その周縁部に反りが存在すると、スクリーン印刷によりカソード層を印刷する際に、アノード支持型ハーフセルと印刷版との接触が不均一となり、カソード層の厚さムラや印刷抜けを生じるという問題があった。
【0009】
本発明者らは、上記のようなアノード支持型セル又はアノード支持型ハーフセルの周縁部の反りによって生じる問題を解決するべく、研究を進めた結果、アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルの周縁部の反りを低減することにより、最終的に得られるアノード支持型セルの周縁部の反りを低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、その周縁部の反り上がりが低減されており、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できるアノード支持型ハーフセルを提供することを目的とする。また、本発明は、セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルを提供することも目的とする。」

ウ. 「【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することができた本発明のアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴とする。アノード支持型ハーフセルにおいて、その周縁部の反りを低減すれば、スクリーン印刷によりカソード層を形成する際に、電解質層と印刷版とが均一に接触するため、カソード層の膜厚の均一性が向上し、且つ、印刷抜けが低減される。さらに、ハーフセルの周縁部の反りを低減しておくことにより、最終的に得られるアノード支持型セルの周縁部の反りも低減できるため、多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルが得られる。

【0013】
本発明には、前記アノード支持型ハーフセルにカソード層を形成したアノード支持型セル;このアノード支持型セルを有する固体酸化物形燃料電池も含まれる。上記アノード支持型セルを有する固体酸化物形燃料電池は、アノード支持型セルの割れによる劣化が抑制され、長寿命であるとともに、周縁部のシール性に優れ、動作時のガス漏れが抑制され、発電効率が向上する。」

エ. 「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有しており、電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴とする。…

【0018】
本発明のアノード支持型ハーフセルは、周縁部の反りが低減されているため、スクリーン印刷によりカソード層を印刷する場合に、アノード支持型ハーフセルと印刷版とを均一に接触させることができる。そのため、スクリーン印刷により、厚さの均一性の高いカソード層を形成することができ、且つ、印刷抜けを抑制できる。また、本発明のアノード支持型ハーフセルを用いてアノード支持型セルを作製する場合、電解質層上にカソード層前駆体を形成し焼成することとなる。ここで、カソード層前駆体の焼成時の収縮量は小さいので、この焼成によってアノード支持基板や電解質層がカソード層側に反り上がることはない。よって、本発明のアノード支持型ハーフセルを用いれば、周縁部の反りが低減されたアノード支持型セルが得られる。

【0021】
前記アノード支持型ハーフセルにおいて、アノード支持基板の厚さ(T1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は、0.003以上が好ましく、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.04以上であり、0.35以下が好ましく、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。アノード支持基板の厚さに対する電解質層の厚さが大きくなるほど、電解質層の焼成収縮による反り上がりが大きくなるため、本発明の効果が一層顕著になる。
【0022】
前記アノード支持基板は、導電性を与えるための導電成分と、支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とする。
【0023】
前記導電成分は、アノード支持基板に導電性を与える上で必須の成分であり、…金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄又はこれらの酸化物が好ましい。
【0024】
前記骨格成分は、アノード層及びアノード支持基板の耐積層荷重強度と耐レドックス性を確保する上で重要な成分である。…骨格成分としては、安定化ジルコニア、セリア系、ランタンガレートが好ましく、安定化ジルコニアがより好ましく、特に好ましいのは2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアである。
【0025】
前記導電成分と骨格成分との比率は、これらの合計を100質量%としたとき、導電成分と骨格成分との比(導電成分/骨格成分)を30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%/60質量%以上、70質量%/30質量%以下である。…

【0027】
また、アノード支持基板の空隙率は、20%以上が好ましく…アノード支持基板の空隙率が上記範囲内であれば、アノード支持基板の機械的強度とガス通過性をバランス良く両立できる。
【0028】
アノード支持基板上に電解質層が形成されるが、この際、アノード支持基板と電解質層との間にアノード層を設けてもよい。…
前記アノード層は、前記アノード支持基板と同様に、導電性を与えるための導電成分と、支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とする。導電成分、骨格成分としては、前記アノード支持基板と同様のものが挙げられる。

【0030】
前記電解質層は、セラミックス質を主成分とする。前記セラミックス質としては、…酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム等で安定化されたジルコニアが好適である。

【0033】
電解質層の空隙率は、10%以下が好ましく…電解質層の空隙率が上記範囲内であれば、電解質層の機械的強度が十分となるとともに、燃料ガスや空気のガスタイト性も良好となる。
【0034】
本発明のアノード支持型ハーフセルの製造方法としては、例えば、アノード支持基板と電解質層とを含む多層焼成体(積層体)を作製する工程;この多層焼成体の周縁部を切断除去する工程を含む方法が挙げられる。多層焼成体の周縁部を切断除去することにより、反り上がった部分が除去され、周縁部の反りが低減されたアノード支持型ハーフセルが得られる。

【0057】
アノード支持型セル
本発明のアノード支持型セルは、前記アノード支持型ハーフセルにおいて、前記電解質の前記アノード層が積層された面と反対の面に、カソード層が形成されている。上述したように前記アノード支持型ハーフセルは、周縁部の反りが低減されているため、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できる。よって、本発明のアノード支持型セルは、カソード層の厚さが均一であり、且つ、印刷抜けによる欠陥が低減されている。また、本発明のアノード支持型セルは、周縁部の反りが低減されており、セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れている。

【0062】
固体酸化物形燃料電池
本発明の固体酸化物形燃料電池は、上記アノード支持型セルを有することを特徴とする。上記アノード支持型セルは、その周縁部の反りが低減されている。そのため、上記アノード支持型セルを有する固体酸化物型燃料電池は、アノード支持型セルの割れによる劣化が抑制され、長寿命であるとともに、周縁部のシール性に優れ、動作時のガス漏れが抑制され、発電効率が向上する。」

オ. 「【実施例】

【0064】
1.周縁部の反り
アノード支持型ハーフセルを電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式非接触三次元形状測定装置(UBM社製、商品名「UBM1-14型」マイクロフォーカス エキスパート)を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより、電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)を測定し、差(Δh)を求めた。…
【0065】
2.アノード支持基板、電解質の空隙率
製造例で作製したアノード支持型ハーフセルを切断し、走査型電子顕微鏡を用いて断面の10,000倍拡大写真を撮影した。得られた断面拡大写真における任意の厚さ方向5μm×平面方向10μmの領域をMicrosoft社の画像作成用ソフトであるペイント(登録商標)Ver.5.1に取り込み、白黒表示に変換した。かかる画像では、空隙部分は黒色で表示され、充填部分は白色で表示される。得られた画像をImage Metrology社製のイメージ解析ソフトである走査型プローブイメージプロセッサーVer.4.5.1.0(以下、「SPIP」という)を用いて、画像に占める空隙部分の割合を求めた。なお、処理前の画像では黒色と白色の中間である灰色部分が存在するが、誤差を低減するために、SPIPにおける0?20,000のグレースケールを8,000に設定することにより黒色部分と白色部分とのコントラストを明確にした。
【0066】
3.荷重割れ試験
表面が平滑で平行度を保った2枚のアルミナ板(ニッカトー社製、「SSA-S」)にハーフセルを挟んだ状態で設置した。上部アルミナ板の上から、材料試験機(インストロン社製、「4301型」)を用いて圧縮荷重をかけていき、ハーフセルが割れた際の圧縮荷重を測定した。圧縮荷重は、2.0kN(200kgf)を最大とし、圧縮荷重2.0kNでも割れない場合は、「割れなし」と評価した。
【0067】
4.スクリーン印刷によるカソード電極形成の安定性及びアノード支持型セルのシール性
製造例で得られた一辺75mmの正方形のアノード支持型ハーフセル上に、カソード層ペーストを、一辺60mmの正方形にスクリーン印刷することで、カソード層グリーンシートを形成した。

【0068】
製膜後、100℃で30分間乾燥した後のカソード層グリーンシートの厚さをマイクロメータで測定した。測定は、カソード層を1片1cmの正方形の格子に区分して、この格子点上について、1枚あたり計25点測定した。…測定した厚さの標準偏差を求めることで、カソード層形成の安定性の評価とした。
【0069】
また、このカソード層を1000℃で2時間焼成して、アノード支持型セルを作製した。このセルのシール性を評価するため、セル周縁部3mmの部分にシール材としてガラスペーストを塗布し、インターコネクタで挟んでセルの電気性能評価装置にセットした。その後、セルを800℃まで昇温し、3%加湿水素をアノード側へ導入して、開回路起電圧(OCV)を測定した。理論起電圧は、約1.10Vである。OCVが理論起電圧より大きく低下しているものは、シール部分が十分に機能していないため燃料ガスがリークしている。よって、OCVが小さいものほど、シール性が悪いと判断できる。
【0070】
5.アノード支持基板、アノード層、電解質層の厚さ
製造例で得たアノード支持型ハーフセルを厚さ方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、各層の厚さを測定した。
【0071】
製造例1
1-1.アノード支持基板グリーンシートの作製
導電成分としての酸化ニッケル(正同化学社製、平均粒子径0.7μm、90体積%径1.2μm)60質量部、骨格成分としての3モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(第一希元素社製、商品名「HSY-3.0」、平均粒子径0.7μm、90体積%径1.9μm)40質量部、空孔形成剤としてのカーボンブラック(SECカーボン社製、SGP-3、平均粒子径3.3μm、10体積%径1.5μm)10質量部、溶媒としてのトルエン60質量部とエタノール40質量部の混合溶剤、バインダーとしてのブチラール樹脂(積水化学社製、品名「BM-S」)10質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業社製)3質量部、分散剤としてのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤2質量部を、ボールミルにより混合し、スラリーを調製した。
得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、70℃で5時間乾燥させて、厚さ300μmのアノード支持基板グリーンシートを作製した。
【0072】
1-2.アノード層グリーンシートの作製
導電成分としての酸化ニッケル(キシダ化学社製、平均粒子径0.75μm、90体積%径1.4μm)60質量部、骨格成分としての3モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(第一希元素社製、商品名「HSY-3.0」、平均粒子径0.7μm、90体積%径1.9μm)40質量部、空孔形成剤としてのカーボンブラック(SECカーボン社製、SGP-3、平均粒子径3.3μm、10体積%径1.5μm)6質量部、溶媒としてのトルエン60質量部とエタノール40質量部の混合溶剤、バインダーとしてのブチラール樹脂(積水化学社製、品名「BM-S」)10質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業社製)3質量部、分散剤としてのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤2質量部を、ボールミルにより混合し、スラリーを調製した。
得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、100℃で1時間乾燥させて、厚さ20μmのアノード層グリーンシートを作製した。
【0073】
1-3.アノード層グリーンシートとアノード支持基板グリーンシートの積層体の作製
上記で得たアノード支持基板グリーンシートの上部に上記で得たアノード層グリーンシートを積層した。アノード支持基板グリーンシートとアノード層グリーンシートを積層したものを、ホットプレス機を用いて、60℃、0.5MPa、30秒間熱プレスし、積層体を作製した。
【0074】
1-4.電解質膜の形成
セラミックス粉末として、スカンジア安定化ジルコニア未焼結粉末(第一希元素社製、商品名「10Sc1CeSZ」、平均粒子径0.60μm)60質量部、バインダーとしてエチルセルロース(和光純薬工業社製)を5質量部、溶媒としてα-テルピネオール(和光純薬工業社製)を40質量部、可塑剤としてジブチルフタレート(和光純薬工業社製)を6質量部、分散剤としてソルビタン酸エステル系界面活性剤(三洋化成社製、商品名「イオネットS-80」)5質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M-80S」、ロール材質;アルミナ)を用いて解砕した。
【0075】
解砕後の電解質ペーストをスクリーン印刷により、上記で得た積層体のアノード層グリーンシート上に、厚さ15μmとなるように印刷し、100℃で30分間乾燥させた。乾燥後、一辺が100mmの正方形状に打抜き、アノード支持基板グリーンシート、アノード層前駆体及び電解質層前駆体の積層体を作製した。該積層体を1300℃、2時間焼成して、多層焼成体を作製した。焼成後の多層焼成体は、一辺が85mmの正方形状であった。また、アノード支持基板の厚さは250μm、アノード層の厚さは15μm、電解質層の厚さは10μmであった。アノード支持基板の厚さ(T1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は、0.04であった。また、アノード支持基板の空隙率は32%、電解質層の空隙率は5%であった。作製した多層焼成体の内2枚(それぞれ多層焼成体A、多層焼成体Bとする。)について、周縁部の反りを測定した。…
【0076】
レーザー切断装置(住友重機械メカトロニクス社製YAGレーザ装置、型式「JK702H」)を用いて、焼成後の多層焼成体の周縁部を切断除去してアノード支持型ハーフセルを得た。具体的には、焼成後のアノード支持型ハーフセルの周縁端から10mmの部分を、全て除去した。上記多層焼成体Aの周縁部を除去したアノード支持型ハーフセルA、上記多層焼成体Bの周縁部を除去したアノード支持型ハーフセルBについて、周縁端部の反りを測定した。…
【0077】
製造例2
製造例1と同様にして、アノード支持基板グリーンシート、アノード層前駆体及び電解質層前駆体の積層体を作製した。ただし、打ち抜く大きさを、一辺が77mmの正方形状にした。その後、製造例1と同様に、該積層体を1300℃、2時間焼成して、多層焼成体を作製した。焼成後の多層焼成体は、一辺が65mmの正方形状であった。また、アノード支持基板の厚さは、250μm、アノード層の厚さは15μm、電解質層の厚さは10μmであった。
【0078】
前記製造例1に記載した方法でアノード支持型ハーフセルを複数枚作製し、製造例2に記載した方法で多層焼成体を複数枚作製した。得られたアノード支持型ハーフセル、多層焼成体について、周縁部の反り等を評価し、結果を表1?3に示した。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示したように、Δhが89μm以下である製造例1で得られたアノード支持型ハーフセルは、いずれも圧縮荷重2.0kNでも割れなかった。これに対してΔhが89μmを超える製造例2の多層焼成体では、1.5kN、1.7kNで割れてしまった。これらの結果から、Δhを89μm以下とすることにより、セルスタックとして多層積層されて大きな積層荷重を受けた際にも、割れや破損等を生じることを抑制できることがわかる。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示したように、Δhが89μm以下である製造例1で得られたアノード支持型ハーフセルは、カソード層厚さの標準偏差が3μm以下であり、厚さの均一性に優れていることがわかる。これに対して、Δhが89μmを超える製造例2の多層焼成体では、カソード層厚さの標準偏差が5μmを超えており、その厚さが非常にバラついていることがわかる。これらの結果から、Δhを89μm以下とすることにより、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できることがわかる。
【0083】
【表3】

【0084】
表3に示したように、Δhが89μm以下である製造例1で得られたアノード支持型ハーフセルは、いずれもOCVが1V以上であり、シール性に優れていることがわかる。これに対して、Δhが89μmを超える製造例2の多層焼成体では、いずれもOCVが0.8未満と小さく、シール性が悪いことがわかる。これらの結果から、Δhを89μm以下とすることにより、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルが得られることがわかる。」


(C-2) 判断
カ. 上記(C-1)ア.?イ.によれば、本件訂正請求書に添付した訂正明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「訂正明細書の発明の詳細な説明」ということがある。)には、本件訂正発明1のアノード支持型ハーフセルは、「アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、その周縁部の反り上がりが低減されており、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できるアノード支持型ハーフセルを提供すること」と「セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルを提供すること」とを、発明が解決しようとする課題(以下、単に「課題」という。)とすることが記載されていると認められる。

キ. そして、上記(C-1)ウ.によれば、上記カ.の課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴としていると、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されている。

ク. そして、上記(C-1)エ.によれば、上記カ.の課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルにおいては、「アノード支持基板の厚さ(T1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は、0.003以上で0.35以下が好ましく、」(【0021】)、「前記アノード支持基板は、導電性を与えるための導電成分と、支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材」とし(【0022】)、「前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄又はこれらの酸化物が好まし」く(【0023】)、「前記骨格成分は、アノード層及びアノード支持基板の耐積層荷重強度と耐レドックス性を確保する上で重要な成分で」「特に好ましいのは2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであ」り(【0024】)、「前記導電成分と骨格成分との比率は、これらの合計を100質量%としたとき、導電成分と骨格成分との比(導電成分/骨格成分)を30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下が好ましく」(【0025】)、「また、アノード支持基板の空隙率は、20%以上が好ましく、」(【0027】)、「アノード支持基板上に電解質層が形成されるが、この際、アノード支持基板と電解質層との間にアノード層を設けてもよ」く、「 前記アノード層は、前記アノード支持基板と同様に、導電性を与えるための導電成分と、支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材と」し、「導電成分、骨格成分としては、前記アノード支持基板と同様のものが挙げられ」(【0028】)、「前記電解質層は、セラミックス質を主成分と」し、「前記セラミックス質としては、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム等で安定化されたジルコニアが好適であ」り(【0030】)、「電解質層の空隙率は、10%以下が好まし」(【0033】)いということが、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されている。

ケ. さらに、上記キ.の説明の妥当性は、訂正明細書の発明の詳細な説明における、上記(C-1)オ.に示される、製造例1?2についての記載によって、裏付けられている。
すなわち、上記(C-1)オ.によれば、製造例1?2で作製されたアノード支持型ハーフセルは、いずれも、アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有するアノード支持型ハーフセルであって、前記アノード支持基板の空隙率は32%、前記電解質層の空隙率は5%以下であり、前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、前記導電成分は、金属ニッケルの酸化物、前記骨格成分は、3モル%のイットリアで安定化されたジルコニアであり、前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が60質量%/40質量%であり、前記電解質層は、セラミックス質を主成分として含み、前記セラミックス質は、酸化スカンジウムで安定化されたジルコニアであるという構造を備えており、製造例1で作製されたアノード支持型ハーフセルは、「アノード支持型ハーフセルの電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh、以下、当該Δhを、単に、「Δh」ということがある。)」が89μm以下であるのに対し、製造例2で作製されたアノード支持型ハーフセルは、前記Δhがそれよりも大きいとされているところ、前記Δhが89μm以下である、製造例1のアノード支持型ハーフセルによると、その周縁部の反り上がりが低減されており、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できるアノード支持型ハーフセルを提供でき、また、セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルを提供できるため、上記カ.の課題を解決することができたのに対し、前記Δhが89μmよりも大きい、製造例2のアノード支持型ハーフセルによると、上記カ.の課題を解決することができなかったことから、上記カ.の課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルは前記Δhが89μm以下であることを特徴としているとの上記キ.の説明の妥当性が裏付けられている。

コ. さらに、アノード支持型ハーフセルにおける前記Δhが89μm以下であっても、当該アノード支持型ハーフセルの構造が製造例1で作製されたアノード支持型ハーフセルと同じでなければ、上記カ.の課題を解決し得ない場合があると認定し得るまでの具体的かつ客観的な根拠の存在は認められない。

サ. 上記キ.?コ.の検討を踏まえると、上記カ.の課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴としており、前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は、0.003以上0.35以下が好ましく、前記アノード支持基板は、導電性を与えるための導電成分と支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とし、前記導電成分は金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄又はこれらの酸化物が好ましく、前記骨格成分は2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであることが特に好ましく、前記導電成分と前記骨格成分との比率は、これらの合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)を30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下とすることが好ましく、また、アノード支持基板の空隙率は、20%以上が好ましく、前記アノード支持基板と前記電解質層との間にアノード層を設けてもよく、 前記アノード層は、前記アノード支持基板と同様に、導電性を与えるための導電成分と支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とし、前記導電成分、前記骨格成分としては、前記アノード支持基板と同様のものが挙げられ、前記電解質層はセラミックス質を主成分とし、前記セラミックス質としては、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム等で安定化されたジルコニアが好適であり、電解質層の空隙率は10%以下が好ましい、アノード支持型ハーフセルであるということが、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていることとなる。

シ. ここで、上記第3に示される本件訂正発明1を参照すると、本件訂正発明1のアノード支持型ハーフセルは、上記サ.に示される、上記カ.の課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルの範囲内であることは明らかであるから、本件訂正発明1の発明は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていることは明らかである。

ス. また、上記第3に示される本件訂正発明2のアノード支持型ハーフセル、本件訂正発明4?5のアノード支持型セル、本件訂正発明6の固体酸化物型燃料電池についても、本件訂正発明1の発明特定事項の全てを備えたものであり、上記カ.?シ.の検討と同様にして、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているといえる。

セ. また、上記(C-1)ウ.?エ.によれば、上記カ.の課題を解決することができた、上記サ.に示されるアノード支持型ハーフセルの製造方法について、「アノード支持基板と電解質層とを含む多層焼成体(積層体)を作製する工程;この多層焼成体の周縁部を切断除去する工程を含む方法が挙げられる。多層焼成体の周縁部を切断除去することにより、反り上がった部分が除去され、周縁部の反りが低減されたアノード支持型ハーフセルが得られる。」(【0034】)ことが、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されており、そして、その説明の妥当性が、上記(C-1)オ.に示される、製造例1?2についての記載によって、裏付けられていると認められる。

ソ. そうすると、訂正明細書の発明の詳細な説明には、上記カ.の課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルの製造方法は、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであり、電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴とするアノード支持型ハーフセルを、アノード支持基板と電解質層とを含む多層焼成体(積層体)を作製する工程と、この多層焼成体の周縁部を切断除去する工程とを含む方法であって、前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は、0.003以上0.35以下が好ましく、前記アノード支持基板は、導電性を与えるための導電成分と支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とし、前記導電成分は金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄又はこれらの酸化物が好ましく、前記骨格成分は2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであることが特に好ましく、前記導電成分と前記骨格成分との比率は、これらの合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)を30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下とすることが好ましく、また、アノード支持基板の空隙率は、20%以上が好ましく、前記アノード支持基板と前記電解質層との間にアノード層を設けてもよく、 前記アノード層は、前記アノード支持基板と同様に、導電性を与えるための導電成分と支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とし、前記導電成分、前記骨格成分としては、前記アノード支持基板と同様のものが挙げられ、前記電解質層はセラミックス質を主成分とし、前記セラミックス質としては、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム等で安定化されたジルコニアが好適であり、電解質層の空隙率は10%以下が好ましい、アノード支持型ハーフセルの製造方法であることが記載されていることとなる。

タ. ここで、上記第3に示される本件訂正発明7を参照すると、本件訂正発明7のアノード支持型ハーフセルの製造方法は、上記ソ.に示される、上記カ.の課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルの製造方法の範囲内であることは明らかであるから、本件訂正発明7の発明も、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていることは明らかである。

チ. また、上記第3に示される本件訂正発明10?12のアノード支持型ハーフセルの製造方法、本件訂正発明13のアノード支持型セルの製造方法についても、本件訂正発明7の発明特定事項の全てを備えたものであり、上記セ.?タ.の検討と同様にして、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているといえる。


(C-3) 小括
以上のとおり、本件訂正発明は、本件訂正請求書に添付した訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、上記2.の3)の取消理由によって、本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。


4D 申立理由について
事案に鑑み、上記1.に示した申立理由については、上記1.(4)の申立理由4、上記1.(3)の申立理由3、上記1.(1)?(2)の申立理由1?2の順に検討を行うこととする。

(D-1) 上記1.(4)の申立理由4について
上記1.(4)の申立理由4は、訂正前の請求項4に係る発明が不明確であるとする申立理由であって、その請求項4は、物である「アノード支持型セル」に係る発明であるところ、その発明における、「アノード支持型ハーフセルにカソード層を形成した」との発明特定事項は、焼成後のアノード支持型ハーフセルにカソード層を形成するというその物の製造方法が記載されていることを意味するため、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合に該当することを申立理由の前提としている(特許異議申立書第55頁第1?19行)。
しかしながら、上記第3に示した本件訂正発明4における「アノード支持型ハーフセルにカソード層を形成した」との発明特定事項は、アノード支持型セルにおけるアノード支持型ハーフセルにカソード層を形成した状態を特定したにすぎないから、物である「アノード支持型セル」を明確に把握することができる。
よって、上記1.(4)の申立理由4は、その申立理由の前提において、誤りがあるといわざるを得ない。
よって、上記1.(4)の申立理由4は採用し得ない。


(D-2) 上記1.(3)の申立理由3について
上記1.(3)の申立理由3は、訂正前の請求項1?9に係る発明は、上記1.(3)の(3-1)?(3-7)の理由により、発明の詳細な説明において「発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨の申立理由である(特許異議申立書第41頁第8行?第54頁末行)。

しかしながら、上記4Cで検討したとおり、本件訂正発明は、本件訂正請求書に添付した訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

また、上記1.(3)の(3-1)?(3-7)の理由は、それらの理由を裏付け得る具体的かつ客観的な証拠が提出されているわけではないから、いずれも、単なる主張にとどまる。
そして、これらの理由のうち、上記1.(3)の(3-2)、(3-4)、(3-5)、(3-6)の理由は、いずれも、本件の発明の詳細な説明には、製造例1の記載箇所以外に、「アノード支持型ハーフセルの周縁部の反りを低減する」という課題を解決するための発明特定事項を具備させる具体的手段が記載された箇所は存在しないとの、上記1.(3)の(3-1)の理由を基礎としているところ、上記4C(C-1)ウ.によれば、課題を解決することができたアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴としているとの記載が、訂正明細書の発明の詳細な説明にあるし、当該特徴を備えていたとしても、課題を解決することができないと認定し得る態様を、具体的かつ客観的な証拠に基づいて把握することができるわけではないから、上記1.(3)の(3-1)、(3-2)、(3-4)、(3-5)、(3-6)の理由は、いずれも、妥当性を欠いている。

また、前記の理由のうちの上記1.(3)の(3-3)の理由は、本件の発明の詳細な説明に記載された課題は、アノード支持基板を作製するための焼成工程と電解質層を作製するための焼成工程とを別々に行う製法を採用する場合において発生する課題であるとの認識に基づいていると認められるが、上記4C(C-1)イ.によれば、本件訂正発明は、課題に、「アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できるアノード支持型ハーフセルを提供すること」を含んでいるところ、そのような課題は、技術常識からして、アノード支持基板を作製するための焼成工程と電解質層を作製するための焼成工程とを別々に行う製法を採用する場合においてしか発生し得ない課題であると断ずることはできないから、上記1.(3)の(3-3)の理由は、技術常識に照らし、妥当性を欠いているといわざるを得ない。

また、前記の理由のうちの上記1.(3)の(3-7)の理由は、本件発明は、アノード支持型ハーフセルを構成するアノード支持基板、アノード層、電解質層の各層の厚さが不均一である場合を含んでいるとの認識に基づいていると認められるが、上記4C(C-1)イ.によれば、本件訂正発明は、課題に、「アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できるアノード支持型ハーフセルを提供すること」を含んでいるところ、そのような課題は、アノード支持型ハーフセル自体の厚みが不均一の場合には、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できないことからして、アノード支持型ハーフセル自体の厚みが均一であることを前提としていることは明らかであるし、アノード支持型ハーフセル自体の厚みを均一にするには、アノード支持型ハーフセルを構成するアノード支持基板、アノード層、電解質層の各層の厚さを均一にする必要があることは技術常識であることを考慮すると、上記1.(3)の(3-7)の理由も、技術常識に照らし、妥当性を欠いているといわざるを得ない。

よって、上記1.(3)の申立理由3は採用し得ない。


(D-3) 上記1.(1)?(2)の申立理由1?2について
上記1.(1)の申立理由1は、訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲第1号証を主たる証拠とし、その甲第1号証に記載された発明と従来周知の事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の申立理由であるし、上記1.(2)の申立理由2は、訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲第1号証を主たる証拠とし、その甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明と従来周知の事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の申立理由であり、いずれの申立理由も、甲第1号証を主たる証拠とする申立理由であるので、まとめて、妥当性の検討を行うこととする。

(3a) 甲各号証の記載事項
(3a-1) 甲第1号証(特開2004-296093号公報)の記載事項
1ア. 「【請求項1】
導電成分(A)40?80質量%と骨格成分(B)20?60質量%とから構成され、気孔率が20?50%である燃料電池用アノード支持基板であって、該基板断面を1000倍に拡大した90μm×120μmの領域を、エネルギー分散形X線分析装置を用いたエネルギー分散法(EDS)により観察したマッピング写真において、導電成分(A)と骨格成分(B)とが混在している箇所[AB]と、混在しておらず導電成分(A)しか存在しない箇所[A]とがあり、該箇所[A]が5箇所以上に点在すると共に、点在している該箇所[A]の最大長径が8?100μm、平均長径が5?50μmであり、且つ3点曲げ強度が200MPa以上であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板。
【請求項2】
導電成分(A)がFe,Ni,Coよりなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物であり、骨格成分(B)が2.5?10モル%のイットリアで安定化されたジルコニアおよび/または3?12モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアである請求項1に記載のアノード支持基板。
…」(特許請求の範囲)

1イ. 「【発明の属する技術分野】
本発明は固体電解質形燃料電池用のアノード支持基板に関し、特に、電極膜と固体電解質膜を複合して得られるセルを多数枚積層しスタックとした燃料電池として実用化する際に、大きな積層荷重下に高温で且つ酸化性雰囲気と還元性雰囲気に交互に曝される苛酷な条件で使用した場合でも、クラックや割れなどを生じることのない優れた強度特性の固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板とその製法に関するものである。」(【0001】)

1ウ. 「固体酸化物形燃料電池の代表的な構造は、平板状固体電解質膜の片面側にアノード電極、他方面側にカソード電極を設けた自立膜型セルを縦方向に多数積層したスタックが基本であり、燃料電池の発電性能を高めるには、固体電解質膜を緻密且つ薄肉化することが有効とされている。ちなみに固体電解質膜には、発電源となる燃料ガスと空気の混合を確実に阻止し得る緻密性と、導電ロスを極力抑えることのできる優れたイオン導電性が求められ、そのためには極力薄肉で且つ緻密質であることが求められるからである。しかも燃料電池は、前述の如くアノード電極/固体電解質膜/カソード電極を有するセルと、燃料ガスと空気を分離・流通させるためのセパレータとを交互に多数積層した構造を有しており、固体電解質膜には大きな積層荷重がかかる他、作動温度は700?1000℃程度で相当の熱ストレスを受けるので、高レベルの強度と耐熱性が要求される。
この様な要求特性から、固体酸化物形燃料電池用固体電解質膜の素材としては主としてジルコニア主体のセラミックシートが使用されており、該シートの両面にスクリーン印刷などによってアノード電極とカソード電極を形成したセルが使用されている。
本発明者らは、こうした固体酸化物形燃料電池用の平板状固体電解質膜についてかねてより研究を進めており、積層荷重や熱ストレスに耐える物性と形状特性(ウネリや反り、バリなどの低減とそれに伴う局部応力による割れ防止)を確保しつつ、イオン導電ロスを低減するため極力薄肉化し、更には電極印刷の均一性と密着性を高めるため表面粗さを適正化する方向で研究を進め、先に特許文献1?3などに開示の技術を提案している。
これらの技術で、固体電解質膜を大幅に薄肉且つ緻密化し得ると共に、形状特性の改善、即ちウネリ、反り、バリなどの低減により、セルを積層したときの耐積層荷重強度や耐熱ストレス性、更には電極印刷の密着性や均質性も大幅に改善することができた。
本発明者らはその後も燃料電池の性能向上を期して研究を進めており、その一環として特許文献4には、固体電解質膜として用いるセラミックシートの改良に代えて、支持膜型セル用の酸化ニッケル及び安定化ジルコニアを含有するアノード支持基板として利用可能な多孔質セラミックシートとその製法及び当該製法に用いるセッターを開示した。ちなみに固体電解質膜は、薄肉化するほど積層荷重によって割れを起こし易くなるため、薄肉化するにしても自ずと限度があり、導電ロスの低減にも限界があるので、固体電解質膜の薄膜化には上記支持膜型燃料電池セルの方が有利と考えられるからである。
しかし、固体電解質膜を支持するための基板には、通電のための導電性が求められるが、前記固体電解質膜とは違って、発電源となる燃料ガスと空気、或は燃料の酸化によって生成するガス(炭酸ガスや水蒸気など)の通過・拡散を許す通気性が求められるため、多孔質のセラミック材によって構成される。しかもこの基板には、セル自体の強度を持たせるための支持機能も要求されるが、導電性の点では未だ十分とはいえず、また多孔質であることに由来して耐クラック性や耐衝撃性も十分とはいえず、改善の余地が残されている。」(【0003】?【0008】)

1エ. 「【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは…アノード支持基板にアノード電極、固体電解質膜、カソード電極を順次コーティングして支持膜型の燃料電池用セルとするために用いられるアノード支持基板を対象として改良研究を進めており、耐熱衝撃性、機械的強度、ガス透過性、導電性などの特性に優れた多孔質セラミックシートの開発を進めている。
該アノード支持基板の性能に重大な影響を及ぼす課題として、前述の如く多段積層構造のスタックからなる燃料電池装置を用いて高温条件下で稼動と中断を繰り返した時に、アノード電極側にN_(2)などの空気パージ用不活性ガスを導入しない場合は、例えば特開平4-36962号公報に記載されている様に、支持基板にクラックや割れを生じることがある。その理由は次の様に考えられる。
1)アノード支持基板は、燃料電池としての稼動時に600?1000℃程度の高温条件下で水素などの燃料ガスにより還元性雰囲気に曝され、中断時には外部から空気の流入によって酸化性雰囲気に曝される。該酸化・還元の繰返しによってアノード支持基板の構成素材が状態変化を起こすと内部歪みや素材劣化が生じ、これがクラックや割れ発生の原因になることが考えられる。
2)アノード支持基板の導電成分を構成する素材として酸化ニッケルなどを使用した場合、酸化ニッケルは還元性雰囲気で還元され金属ニッケルとなって導電性を示し、その時に約40体積%程度収縮する(田川博章著:「固体酸化物燃料電池と地球環境」アグネ承風社発行、1998年)。逆に酸化性雰囲気では再び酸化されて酸化ニッケルに変わるが、金属ニッケルが酸化ニッケルに酸化されるときには反対に約40%の体積膨張を起こす。こうした状態変化に伴う膨張・収縮の繰返しによって内部歪みが助長されると共に、この変化は基板の骨格成分の強度にも悪影響を及ぼし、クラックや割れの発生を誘発する。
従って、燃料電池として実用可能な性能を保障するには、アノード支持基板として上記1),2)に示した様なアノード支持基板を構成する組成物の酸化・還元に伴うクラックや割れの発生を防止することが重要となる。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、燃料電池用のアノード支持基板として重要な特性である通気性を確保しつつ、前記1)、2)などに起因するクラックや割れの発生を可及的に抑えたアノード支持基板とその製法を提供することにある。なお本明細書においては、前記1)、2)などを原因とするクラックや割れに耐える特性を、上記主たる要因を踏まえて「耐レドックス性」という。」(【0014】?【0019】)

1オ. 「【発明の実施の形態】
本発明者らは前述した様な解決課題の下で、アノード支持基板として必要なガス通過・拡散性を確保しつつ、苛酷な使用条件、特に積層荷重を受けた状態で熱衝撃や酸化性雰囲気と還元性雰囲気に繰返し曝されたときの耐クラック性や耐割れ性(耐レドックス性)を高めるべく研究を進めてきた。
その結果、上述した如く、該支持基板を構成する導電成分(A)と骨格成分(B)の含有比率を特定範囲に選定すると共に、気孔率を特定範囲に設定し、しかも該支持基板の断面を1000倍に拡大した90μm×120μmの領域を、エネルギー分散形X線分析装置を用いたエネルギー分散法(EDS)により観察したマッピング写真)において、導電成分(A)と骨格成分(B)とが混在している箇所[AB]と、混在しておらず導電成分(A)しか存在しない箇所[A]とがあり、該箇所[A]が5箇所以上に点在すると共に、点在している該箇所[A]の最大長径と平均長径が特定範囲に納まるものは、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板としての前記要求特性を見事に満足し得るものになることを突き止め、上記本発明に想到したものである。
従って本発明のアノード支持基板は、前述の如く優れた導電性と十分なガス通過・拡散性を有すると共に、卓越した耐レドックス性を有する…」(【0023】?【0025】)

1カ. 「次に、本発明に係るアノード支持基板の製法について説明する。
本発明のアノード支持基板は、前記微粒導電成分粉末(a1)と粗粒導電成分粉末(a2)および骨材成分粉末(b)の所定量を、バインダー(c)および分散媒(d)、必要により分散剤や可塑剤などと共に均一に混合してスラリー状とし、これをドクターブレード法、カレンダーロール法、押出し法など任意の手段で平滑なフィルム(例えばポリエステルフィルムなど)上に適当な厚みで塗布し、乾燥して分散媒(d)を揮発除去することによりグリーンシートを得る。

そして本発明のアノード支持基板は、前述の原料素材からなるスラリーを、例えばポリエステルの如き樹脂シート上に適当な厚さとなる様に塗工し、乾燥してグリーンシートとした後、これを所定のサイズに打抜き加工した後、…棚板上の多孔質セッターに載置し、あるいは多孔質セッターで挟持した状態で、空気雰囲気下に1100?1500℃、好ましくは1200?1450℃程度の温度、最も一般的には1250?1400℃程度で1?5時間程度加熱焼成する方法が採用される。

かくして得られる本発明のアノード支持基板を燃料電池用として実用化するには、耐レドックス性や要求強度およびガスの通気・拡散性を満たしつつ通電ロスを可及的に抑えるため、基板厚さを0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上で、3mm以下、より好ましくは1mm以下とするのが良い。」(【0067】?【0080】)

1キ. 「本発明のアノード支持基板を固体酸化物形燃料電池用部材として使用するに当っては、該支持基板の片面にアノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われるが、それら電極や薄膜電解質の形成法は特に制限されず、VSPの如きプラズマ溶射法、フレーム溶射法、PVD(物理蒸着)法、マグネトロンスパッタリング法、電子ビームPVD法等の気相法;スクリーン印刷法、ゾル-ゲル法、スラリーコート法等の湿式法を適宜使用することができる。薄膜アノードや薄膜カソードの厚さは通常3?300μm、好ましくは5?100μmに、また薄膜電解質の厚さは通常3?100μm、好ましくは5?30μmに調整される。」(【0081】)

1ク. 「そして最近では、気相法以外にも、多孔質の該支持基板にアノード電極をスクリーン印刷などによって形成し、その上に固体電解質膜をコーティング等で形成した後、更にその上にカソード電極をスクリーン印刷などによって形成する方法を採用することにより、固体電解質膜を一段と薄肉化し、導電ロスを更に低減させる方法も検討されている。」(【0009】)


(3a-2) 甲第2号証(特表2003-519023号公報)の記載事項
2ア. 「 未焼成の焼結性材料から成る第1層及び第2層を、第1層の一方の主面上に第2層があり、かつ第2層が第1層の少なくとも一つの縁部にまで延在するように積層し、ここで、第2層の材料は、焼成時における収縮率が第1層の材料よりも小さいものであり、次いで未焼成の焼結性材料から成る縁部用ストリップを、上記の少なくとも一つの縁部に沿って第1層の他方の主面に適用し、第1層及び第2層で未焼成の積層構造体を形成し、ここで、上記ストリップの材料は焼成時における収縮率が第1層の材料よりも小さいものであり、次いで上記未焼成の積層構造体を焼成して焼結された積層構造体を形成する、焼結された積層構造体の形成方法。」(【請求項1】)

2イ. 「(背景技術)
粒子状のセラミック材料あるいは、サーメットのようなセラミック類似の材料から成り、異なる収縮率を有する2層を積層し、次いで焼結する場合、収縮率の大きな層の収縮が収縮率の小さい層の抵抗により抑制される結果、積層構造体の縁部が収縮率の小さい層から遠ざかるようにカールする傾向がある。これは、カールした縁部が好ましくない場合大きな問題となり、例えば、積層構造体が平板型固体電解質燃料電池の一部を構成するような場合であって、積層構造体の縁部にシールを設けるような場合が挙げられる。本発明は、特に平板型固体電解質燃料電池に適用可能であり、便宜上、以降、概ねその積層構造体に関して説明する。…」(【0002】)

2ウ. 「図1は、固体電解質型燃料電池の下部構造の一部を示しており、その下部構造は、アノード層10と、電解質層12と、下部構造の縁部分14とを有している。下部構造全体は、大きさ約110×90mmの矩形形状であり、アノード層10の厚さは約0.5?1.0mm、例えば、0.9mmであり、一方、固体電解質層12は厚さが約10?50ミクロン、例えば約20ミクロンである。…
…完全な燃料電池は、電解質層12の他方側に焼結された多孔性カソード層を含んでいる。
図1にその一部が示された下部構造は、未焼成のアノード材料をテープキャスティングすることにより形成することができ…バインダ量として未焼成アノード材料の約23重量%を用いて粒子を保持することにより、多孔質構造を形成することができる。
未焼成の固体電解質材料はテープキャストされ、次いで未焼成のアノード材料上にロール積層される。…バインダ量として未焼成電解質材料の約23重量%を用いて粒子を保持することができる。未焼成の電解質材料に対し比較的高いバインダ量を用いるのが好ましいのは、多孔性のアノード材料の収縮率と調和させるようにするためである。しかし、材料の密度が異なり、さらに約900?約1400℃の温度で下部構造を焼結するような場合、これは困難である。なぜなら、アノード層は多孔性であればある程、より収縮しようとするので、図1の一縁部14に示すように、下部構造は、高密度の電解質層から遠ざかるようにカールするからである。
燃料電池では、下部構造の縁部のカールは好ましいものではない。そのため、アノード層を研磨するか、又はカールした縁部を切取る必要がある。あるいは、未焼成の電解質材料をアノード層の上に配置して焼成する前に、アノード層をまず焼成することもできる…
本発明によれば、図1に基いて説明された下部構造の縁部のカールは、未焼成のアノード材料より高密度の未焼成材料から成る縁部用ストリップ16を、電解質材料から離れた未焼成のアノード材料の主面18上に縁部分14に沿って配設することにより軽減することができる。
図示したように、ストリップ16は幅が約7mm、厚さは約20?50ミクロン…である。縁部用ストリップ16の未焼成材料は、実質的に電解質層12の材料と同じ、すなわち、密度が同程度のYSZであって、バインダ量がストリップの未焼成材料全体の17?25重量%のものである。未焼成のストリップ材料の好ましいバインダ量としては、縁部分14のカールを軽減できる程度の量を試行錯誤的に決定することができる。一実施形態において、バインダ量は、電解質層の未焼成材料に対する約23重量%に対し、約20重量%が好ましいものである。
…図示したように、未焼成のストリップを未焼成のアノード材料の中に押込む。次いで、下部構造全体を通常約1400℃で焼成すると、焼成後、縁部が少なくとも実質的に平坦である下部構造を得ることができる。実施例においては、縁部のカールは、焼結された積層構造体のバッチにおいて0.2mm以下、多くは縁部のカールが0.1mm以下である。一方、縁部用ストリップのない前述の比較例では、縁部のカールは少なくとも2mm、大きいもので5mmである。」(【0024】?【0032】)

2エ. 「

」(【図1】)

2オ. 「

」(【図2】)


(3a-3) 甲第3号証(特開2001-247373号公報)の記載事項
3ア. 「【請求項1】 レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、シート面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められるシートの最大反り高さが300μm以下であり、且つシート最大外径長さに対する反り率が0.2%以下であることを特徴とするセラミックシート。
【請求項2】 平板状固体電解質型燃料電池の電解質膜または電極シートとして使用されるものである請求項1に記載のセラミックシート。」(【特許請求の範囲】)

3イ. 「【発明の属する技術分野】本発明はセラミックシートとその製法に関し、特に平板状固体電解質型燃料電池の固体電解質膜や電極シートなどの素材として使用したときにクラックや割れなどを生じ難く、また表面平滑性が良好で電極塗布や回路形成のためのスクリーン印刷などの不均一を生じることのない品質安定性に優れたセラミックシートとその製法に関するものである。」(【0001】)

3ウ. 「特に、燃料電池の実用化に向けて発電容量を増大するため固体電解質膜などはますます大版化する傾向があり、この様な大版セラミックシートを例えば50枚、あるいは100枚程度以上重ね合わせて組付け燃料電池としたとき、該シートに大きな反りがあると、該最大反り部分およびその周辺部に局部的な内部応力が生じ、燃料電池の稼動時に積載荷重や熱ストレスを受けたときに当該個所にクラックや割れが発生し易くなる。
また該セラミックシートを燃料電池の固体電解質膜や電極シートなどとして使用する際には、該シートに電極塗布や回路形成のためのスクリーンン印刷を施す必要があるが、該シートに大きな反りが存在すると、印刷厚さが不均一になったり、極端な場合は一部がかすれて印刷されない部分ができることもあり、重大な製品欠陥を生じる原因になる。
ところでセラミックシートの一般的な製法は、セラミック原料粉末と有機質バインダーおよび分散媒からなるスラリーを、ドクターブレード法、カレンダー法、押出し法等によってシート状に成形し、これを乾燥し分散媒を揮発させてグリーンシートを得、これを所定形状に打抜き加工してから焼成し、有機質バインダーを分解除去すると共にセラミック粉末を相互に焼結させる方法であり、グリーンシートは焼結過程で長さにして70?90%程度、面積にして50?80%程度に収縮する。従って、該焼結時にグリーンシート表面で有機質バインダーの分解除去速度が不均一になったり、あるいは焼結に伴う収縮がシート表面で不均一になると、得られるセラミックシート表面に大きな反りが生じる原因となり、これが上記の様な製品欠陥を引き起こすものと考えられる。」(【0008】?【0010】)


(3a-4) 甲第4号証(特開昭60-203383号公報)の記載事項
4ア. 「酸化物系セラミックのレ-ザ切断方法」(発明の名称)

4イ. 「酸化物系セラミックの切断面に沿って予め該セラミックと共晶反応を起こして融点を低下させる金属酸化物をコーティングした後、レーザで切断することを特徴とする酸化物系セラミックのレーザ切断方法。」(特許請求の範囲)

4ウ. 「酸化物系セラミックは耐熱、耐食性が優れる為に各種産業分野で使用される機会が多くなってきたが、金属材料と比較して硬く、脆い為に加工性が悪く、通常の工具では切断、切削等の機械加工は不可能であった。上記セラミックスを、切断する方法として

(3)パルスレーザ加工機によりセラミックを蒸発させながら切断する。
等の方法があったが、…(3)の方法は最近注目をあびている切断方法であるが、レーザがパルス発振である為に切断(通常5mm/min程度)速度が遅く多大な切断時間を要するという欠点があった。」(第1頁左下欄第13行?同頁右下欄第16行)

4エ. 「被切断物に板厚5mm、大きさ50mm×50mmのZrO_(2)を用い、その切断線の表側にTiO_(2)を溶射し厚さ200μにコーティングした。これを炉中で1200℃に予熱した後、CO_(2)レーザ加工機で直線状に切断した。」(第3頁右上欄末行?同頁左下欄第4行)


(3a-5) 甲第5号証(特開昭61-126987号公報)の記載事項
5ア. 「セラミツクス材のレ-ザ切断方法」(発明の名称)

5イ. 「セラミックス材の切断部の裏面に捨て材を設け、前記セラミックス材の表面側から前記切断部にレーザビームを照射して前記セラミックス材を切断することを特徴とするセラミックス材のレーザ切断方法。」(特許請求の範囲)

5ウ.「〔産業上の利用分野〕
この発明は、セラミツクス材の切断部にレーザビームを照射してセラミツクス材を切断するセラミツクス材のレーザ切断方法に関する。」(第1頁左下欄第11?14行)

5エ. 「〔従来の技術〕
従来、この種レーザ切断方法は、…レーザ装置(1)の下部の集光位置に、複数の支持脚(2)に支持された板状のセラミツクス材(3)の切断部(4)を設置し、レーザ装置(1)のレンズ(5)により集光されたレーザビーム(6)を切断部(4)に上部表面側から照射して行っている。」(第1頁左下欄第15行?同頁右下欄第1行)

5オ. 「ところで前述の切断方法によると、…切断により生じた溶融除去物、すなわち切断除去物(9)が、切断されたセラミツクス材(3)の下部裏面の切断端部に付着する。
そして一般に、セラミツクス材の熱伝導度が低いため、切断除去物(9)の保有熱により、…切断されたセラミツクス材(3)の下部裏面の切断端部に局部的なクラツク(10)が発生し、とくに、高温域で液相になるジルコニアやアルミナを含むセラミツクスによりセラミツクス材(3)が形成される場合には、クラツク(10)の発生が著しい。」(第1頁右下欄第5?15行)


(3a-6) 甲第6号証(特開平6-79715号公報)の記載事項
6ア. 「セラミック切断方法」(発明の名称)

6イ. 「セラミック単層基板ないし複数枚積層した各層のセラミック基板を、レ-ザ-、電子ビ-ム等の非接触加工あるいは研削、ウォ-タジェット等の接触加工により切断するセラミック切断方法において、上記セラミック基板の表面、裏面あるいはそれらの両面に対して、切断ラインの少なくとも内側または両側に、該切断ラインに平行な金属パタ-ンを配置し、かつ該切断ラインと該金属パタ-ンとの間の寸法を、切断加工により生じるクラック長以上の距離に設定することを特徴とするセラミック切断方法。」(【請求項1】)

6ウ. 「コンピュ-タや家庭用品等のエレクトロニクス部品に使用されるセラミック基板は、焼成後にレ-ザ等で切断されている。この場合、切断する対象は、セラミック多層基板ではなく、単層のセラミック基板であり、実装密度も比較的低いものであった。…」(【0003】)

6エ. 「ところで、最近では、エレクトロニクスの高密度化に伴って、多層基板化、素子有効エリアの有効面積の大型化の傾向にあるため、この場合におけるクラックレスおよびクラック長の極小化技術が必要となっている。…」(【0004】)

6オ. 「図3は、本発明の一実施例を示すセラミック積層基板の切断パタ-ンの側断面図、平面図および変形平面図である。図中、4は切断線、6は積層板、6A,6B,6Cは表面からの各層、6X,6Y,6Zは裏面からの各層、7a?7zは金属パタ-ンである。(b)は平面図であって、切断線4の内側に配置された金属パタ-ン7aは、(ハ)で示すように、コ-ナ部が直角の形状を持っているが、変形例として、(c)に示すように、R曲面でもよい。また、コ-ナC面にしてもよい。(a)の断面図に示すように、6A層?6Z層の多層に積層された各層間にも最外層を含めて7a?7zの各金属パタ-ンを形成している。このように、本実施例では、複数枚積層した全ての層のセラミック基板6の表面または裏面、または表面と裏面の両方に対して切断ライン4の少なくとも内側に平行に金属パタ-ン7を設置する。そして、切断ライン4と平行金属パタ-ン間の寸法Dは、切断方法により生じるクラック長Lに対してD≧Lにする。これは、セラミック基板を用いレ-ザ-または電子ビ-ム等の非接触加工高エネルギ-ビ-ムにより外周加工することによった発生するマイクロクラック(寸法L)の影響対策である。…」(【0008】)

6カ. 「…なお、実験した結果、積層数44層、合計板厚6mmのムライト系セラミックを、0.2mm以下のクラックでレ-ザ-ビ-ム加工することができた。」(【0010】)

6キ. 「

」(【図3】)


(3a-7) 甲第7号証(特開2010-27359号公報)の記載事項
7ア. 「【請求項1】
ジルコニアを含む燃料電池用セルを用いてリサイクルジルコニア粉末を製造する方法において、
(A)当該燃料電池用セルを酸で処理して電極材料を溶解する工程(第1セル溶解工程)
(B)第1セル溶解工程で得られたジルコニア材料を粉砕する工程(粉砕工程)
からなることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末の製造方法。

【請求項4】
請求項1?3に記載の方法を用いて得られるリサイクルジルコニア粉末の平均粒子径が0.1?35μmであることを特徴とするリサイクルジルコニア粉末。
【請求項5】
Sc、Y、Ybから選択される少なくとも1種の酸化物で安定化されたジルコニアからなる粉末である請求項4記載のリサイクルジルコニア粉末。
【請求項6】
請求項4または5に記載のリサイクルジルコニア粉末を原料ジルコニア粉末とし、または当該リサイクルジルコニア粉末と未使用ジルコニア粉末とからなる原料ジルコニア粉末として成形し、焼成して得られることを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法。

【請求項8】
請求項6に記載の方法を用いて得られることを特徴とするジルコニア焼結体。
【請求項9】
請求項8に記載のジルコニア焼結体を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質。
【請求項10】
請求項8に記載のジルコニア焼結体または請求項9に記載の固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項11】
請求項4または5に記載の原料ジルコニア粉末と、NiO粉末とからなる原料燃料極粉末を用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用燃料極または燃料極基板。」(【特許請求の範囲】)

7イ. 「(第1セル溶解工程)
ジルコニアを含む燃料電池用セル中の電極材料を酸で溶解し、電極材料が溶解されたジルコニア材料を得る工程である。ジルコニアを含む燃料電池用セルとは、電解質支持型燃料電池用セルあるいは燃料極支持型燃料電池用セルのうち、電解質がジルコニア材料からなるセル、および/または燃料極や空気極の電極材料の一部にジルコニア材料を含むセルであって、当該セル製造時あるいは製造後に生じる寸法等の規格外セル、破損したセルの破片や、発電終了後の使用済みセルのことを言う。…
燃料電池用セルは、電解質、燃料極、空気極、中間層および/または燃料極基板等から構成される。…
燃料極および燃料極基板の材料は、Ni、Fe、Co、Ru等の酸化物(なお、これらは発電雰囲気中では金属状態)から成る電子導電成分と、上記の安定化ジルコニアおよび/またはGd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびSm_(2)O_(3)から選択される少なくとも1種の酸化物を10?35モル%含むセリア系酸化物から成る骨格成分とからなる。好ましくは、NiOと、8?10モル%Y_(2)O_(3)安定化ジルコニア、9?12モル%Sc_(2)O_(3)安定化ジルコニアまたは、15?30モル%のGd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Sm_(2)O_(3)でドープされたセリアからなるサーメットである。また、サーメット中の電子導電成分と上記骨格成分の混合比は、電子導電成分が40?70質量%、上記骨格成分が30?60質量%である。

第1セル溶解工程で溶解される電極材料とは、上記セル組成中の燃料極材料、空気極材料、中間層材料および/または燃料極基板材料中の安定化ジルコニアとセリアを除くその他の電極材料である。具体的には、燃料極材料では…電子導電成分や、上記セリア系酸化物中のGd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Sm_(2)O_(3)等の骨格成分の一部が例示される。…」(【0015】?【0022】)

7ウ. 「(3)グリーンシートの焼成
ジルコニアグリーンシートを焼成する際には、1枚づつ棚板に当該グリーンシートを載置して焼成することも可能であるが、量産化のために当該ジルコニアグリーンシートと多孔質スペーサーシートとを交互に積み重ねた積層体として焼成することが好ましい。…

具体的な焼成の条件は特に制限されず、常法によればよい。…ジルコニア粉末を焼結し、本発明の厚さが0.03?0.5mmのジルコニア焼結体シートを得る。その全面積は5?2000cm^(2)、好ましくは50?1000cm^(2)、さらに好ましくは100?500cm^(2)である。
かくして得られる本発明のジルコニア焼結体シートは、厚さが0.03?0.5mmであり、…未使用ジルコニア粉末を用いて製造したジルコニア焼結体シートと同等の強度を有するものである。」(【0041】?【0043】)

7エ. 「 当該ジルコニア焼結体シートまたは固体酸化物形燃料電池用電解質と空気極と燃料極とにより電解質支持型固体酸化物形燃料電池が形成される。あるいは、固体酸化物形燃料電池用電解質と空気極と燃料極と燃料極支持基板とにより燃料極支持型固体酸化物形燃料電池が形成される。」(【0046】)


(3a-8) 甲第8号証(特開2000-281438号公報)の記載事項
8ア. 「【請求項1】シート状のジルコニア焼結体からなり、シート両面の表面粗さが、いずれも最大高さ(Ry)で0.3?3μmであり、且つ算術平均粗さ(Ra)で0.02?0.3μmであることを特徴とするジルコニアシート。

【請求項3】 ジルコニア焼結体が、2?7モル%の酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウムからなるものである請求項1または2に記載のジルコニアシート。
【請求項4】 固体電解質膜として使用されるものである請求項1?3のいずれかに記載のジルコニアシート。」(【特許請求の範囲】)

8イ. 「【発明の属する技術分野】本発明はジルコニアシートとその製法に関し、特にスクリーン印刷などで両面に電極形成を行なう様な場合に、シートと電極との密着性を高め得る様に改善されたジルコニアシートとその製法に関するものである。」(【0001】)

8ウ. 「本発明のジルコニアシートは、実質的に酸化ジルコニウムのみからなるものであっても勿論構わないが、例えば燃料電池の固体電解質膜用などとして使用されるシートにはより高度の熱的、機械的、電気的、化学的特性が要求されるので、こうした要求特性を満足させるには、2?7モル%、より好ましくは2.5?6モル%、更に好ましくは3.5?5モル%の酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム(正方晶及び/又は立方晶ジルコニア)がより好ましいものとして推奨される。」(【0032】)


(3a-9) 甲第9号証(特開2001-89252号公報)の記載事項
9ア. 「レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、シート面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められるシート表面のディンプル高さが100μm以下であることを特徴とするセラミックシート。」(【請求項1】)

9イ. 「セラミックシートの素材となるセラミックとしては、ジルコニア、アルミナ、チタニア、窒化アルミニウム、ホウ珪酸ガラス、コージェライト、ムライトなど様々の単独、混合もしくは複合酸化物が挙げられるが、本発明が特に有効に利用されるのは、平板状固体電解質型燃料電池の固体電解質膜や電極用シートである。固体電解質膜用として特に好ましいのはジルコニア系セラミックであり、具体的には、ジルコニアにMgO,CaO,SrO,BaOなどのアルカリ土類金属酸化物、Y_(2)O_(3),La_(2)O_(3),Ce_(2)O_(3),Pr_(2)O_(3),Nd_(2)O_(3),Sm_(2)O_(3),Eu_(2)O_(3),Gd_(2)O_(3),Tb_(2)O_(3),Dy_(2)O_(3),Ho_(2)O_(3),Er_(2)O_(3),Yb_(2)O_(3)などの希土類金属酸化物、更にはSc_(2)O_(3),Bi_(2)O_(3),In_(2)O_(3)などの安定化剤を1種もしくは2種以上含有するジルコニア系セラミックが挙げられ、その中には他の添加剤としてSiO_(2),Al_(2)O_(3),Ge_(2)O_(3),SnO_(2),Ta_(2)O_(5),Nb_(2)O_(5)などが含まれていてもよい。」(【0036】)


(3a-10) 甲第10号証(特開2001-10866号公報)の記載事項
10ア. 「レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、シート面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められるシート周縁部のバリ高さが±100μm以下であることを特徴とするセラミックシート。」(【請求項1】)

10イ. 「セラミックシートの素材となるセラミックとしては、ジルコニア、アルミナ、チタニア、窒化アルミニウム、ホウ珪酸ガラス、コージェライト、ムライトなど様々の単独、混合もしくは複合酸化物が挙げられるが、本発明が特に有効に利用されるのは、平板状固体電解質型燃料電池の固体電解質膜用として特に好ましいのはジルコニア系セラミックであり、具体的には、ジルコニアにMgO,CaO,SrO,BaOなどのアルカリ土類金属酸化物、Y_(2)O_(3),La_(2)O_(3),Ce_(2)O_(3),Pr_(2)O_(3),Nd_(2)O_(3),Sm_(2)O_(3),Eu_(2)O_(3),Gd_(2)O_(3),Tb_(2)O_(3),Dy_(2)O_(3),Ho_(2)O_(3),Er_(2)O_(3),Yb_(2)O_(3)などの希土類金属酸化物、更にはSc_(2)O_(3),Bi_(2)O_(3),In_(2)O_(3)などの安定化剤を1種もしくは2種以上含有するジルコニア系セラミックが挙げられ、その中には他の添加剤としてSiO_(2),Al_(2)O_(3),Ge_(2)O_(3),SnO_(2),Ta_(2)O_(5),Nb_(2)O_(5)などが含まれていてもよい。」(【0036】)


(3a-11) 甲第11号証(国際公開99/59936号)の記載事項
11ア. 「酸化ニッケル及び安定化ジルコニアを含有してなる多孔性セラミックスシートの製造に用いられるセッターであって、
〔NiO〕単位を40?90重量%含有しているシート状セラミックス体である多孔性セラミックスシート製造用セッター。」(請求項1)

11イ. 「原料粉末として安定化ジルコニア粉末20?50重量%及び酸化ニッケル粉末50?80重量%を含有してなるスラリーをシート状に成形してなるグリーンシートを、請求項1…に記載のセッター上に載置した状態で、1200?1400℃で焼成することを特徴とする多孔性セラミックスシートの製造方法。」(請求項3)

11ウ. 「技術分野
本発明は、多孔性セラミックスシート、具体的には主として固体電解質型燃料電池に用いられるニッケル及び安定化ジルコニアからなる多孔性セラミックスシート…に関するものである。」(明細書第1頁第3?7行)

11エ. 「〔多孔性セラミックスシートの製造方法〕
本発明の多孔性セラミックスシートの製造方法は、 安定化ジルコニア粉末20 ?50重量%及び酸化ニッケル粉末50?80重量%含有してなる組成物をシート状に成形してなるセラミックスシート用グリーンシートを、本発明のセッター上に載置して、1200?1400℃で焼成する方法である。」(明細書第8頁第16?20行)

11オ. 「〔多孔性セラミックスシート〕

本発明の多孔性セラミックスシートは、酸化ニッケル及び安定化ジルコニアを含有してなる多孔性セラミックスシートであり、酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合比率は、酸化ジルコニウム20?50重量%、酸化ニッケル50?80重量%、好ましくは酸化ジルコニウム30?40重量%、酸化ニッケル60?70重量%であることが好ましい。 安定化ジルコニアとしては、ZrO_(2)に、安定化剤としてMgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属の酸化物;Y_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、CeO_(2)、Pr_(2)O_(3)、Nd_(2)O_(3)、Sm_(2)O_(3)、Eu_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Tb_(2)O_(3)、Dy_(2)O_(3)、Er_(2)O_(3)、Tm_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)等の希土類元素の酸化物;Sc_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、In_(2)O_(3)等から選ばれる1種若しくは2種以上の酸化物を固溶させたものが用いられ、これらのうち、特に2?12モル%のイットリアで安定化された酸化ジルコニウム(YSZ) が好ましく用いられる。」(明細書第10頁第14行?第11頁第4行)


(3a-12) 甲第12号証(特開2006-59610号公報)の記載事項
12ア. 「燃料極と空気極と両者の間に配置される固体電解質膜とを備えた固体電解質型燃料電池の製造方法において、
相対密度が30?70%の燃料極用グリーンの一面に、固体電解質膜用グリーンを成膜した後、収縮率が10?20%となる条件下に両者を同時焼成し、燃料極と固体電解質膜とを形成することを特徴とする固体電解質型燃料電池の製造方法。」(【請求項5】)

12イ. 「(1)固体電解質用ペーストの作製
…原料粉末の平均粒径が異なる三種類のペーストを得た。
(2)燃料極用グリーンの作製
…円盤型の燃料極用グリーンを得た。…
(3)燃料極グリーン上への固体電解質膜用グリーンの成膜
前記の(2)で作製した円盤型の燃料極グリーン上に、前記の(1)で作製した固体電解質ペーストを、スピンコート法で成膜した。…
(4)同時焼成
このようにして作製した燃料極グリーン/固体電解質膜用グリーンを、約100℃で1時間乾燥後、電気炉を用いて1450℃で5時間焼成し、多孔質燃料極/固体電解質膜の焼結体を得た。…」(【0043】?【0046】)


(3a-13) 甲第13号証(特開2001-351647号公報)の記載事項
13ア. 「燃料極を基板とし、該燃料極の上に成膜された電解質膜と、該電解質膜の上に成膜された空気極とからなる単電池を有する固体電解質型燃料電池において、
前記電解質膜を、平均粒径が0.1?1μmの範囲の細粒と、平均粒径が1?5μmの範囲の粗粒とを原料とし、前記細粒と前記粗粒の比率を1?3:9?7に混合して構成したことを特徴とする固体電解質型燃料電池。」(【請求項1】)

13イ. 「このように、電解質膜6を複数の異なる粒径の原料を用い、電解質膜6の焼結性と燃料極4の焼結性とを整合させることができるため、燃料極4と電解質膜6とを共焼結した場合、両者間に膨張率や収縮率の相違が発生せず、電解質膜6の亀裂や燃料極4からの剥離、更に燃料極4の反りなどを生じさせることがない。…
また、スクリーン印刷により電解質膜6、および空気極8を形成することにより、スクリーン版20を通過させて電解質スラリ24等を塗布することからも、適度な凹凸が形成され、燃料極4と電解質膜6、および電解質膜6と空気極8との間の密着性を高めることができる。さらに、支持体である燃料極4に所定の形状、厚みの電解質膜6や空気極8を簡易、迅速に塗布、形成することができ、また、燃料極4を仮焼することなく、燃料極4の原料を成形した後直接電解質スラリ24を燃料極4に塗布できることから、手間とコストを大幅に削減することができる。」(【0022】?【0023】)

13ウ. 「実験例
実験は、本発明にかかる電解質膜と、比較例として従来の電解質膜とをそれぞれ形成し、その表面形状を観察した。
双方の燃料極は、NiO粉末およびイットリア安定化ジルコニア粉末(YSZ)を重量比60:40で混合したサーメットであり、造孔材としてグラファイト粉末を添加してスプレードライ法により造粒し、水溶性のバインダで混錬し、プレスにより5cm角に成形した。
本発明にかかる電解質膜は、原料として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)の粒子を用い、更に粗粉として2μmの粒径の粒子と細粉として0.5μmの粒径の粒子とをそれぞれ重量比で9:1の割合となるよう混合したものである。かかる原料に非水溶性のバインダを添加し、スクリーン印刷法により燃料極上に塗布した。
一方従来例としての単電池の電解質膜は、原料として、平均粒径0.02μmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の粒子を用いており、燃料極に同様にスクリーン印刷法で塗布した。
電解質の原料を塗布した燃料極は、それぞれ所定の温度(約1400?1500℃)で共焼結した。」(【0028】?【0032】)


(3a-14) 甲第14号証(特表2007-519176号公報)の記載事項
14ア. 「電解質シートと、
前記電解質シートの両側面に配置されていてかつ少なくとも1つのセルを形成する少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードと、を含み、
前記電解質シートは、(i)複数の凹部を備えた凹凸構造を有する表面を含んでいて前記電解質シートの最も薄い部分が前記電解質シートの最も厚い部分に比べて少なくとも0.5マイクロメートル厚くなっている厚さが非均一の実質的に非孔質の物体を有し、かつ(ii)0.5オーム/cm^(2)以下のオーム抵抗を有する、ことを特徴とする固体酸化物電極電解質アセンブリ。」(【請求項1】)

14イ. 「電解質シート10は、実質的に非孔質の(すなわち、実質的に閉じられた孔を含まないで、気孔率が5%未満である)物体であり、電解質シート10の最も厚い部分が該電解質シートの最も薄い部分に比べて少なくとも0.5マイクロメートル厚くなっている。気孔率3%未満であることが好ましく、気孔率が1%未満であることがより好ましい。電解質シート10の最も薄い部分と最も厚い部分との間の差Δtが0.5マイクロメータ乃至平均厚さtの90%の間にあることも好ましい。…」(【0019】)

14ウ. 「好適な電解質シート10は、部分安定化ジルコニア又は安定化ジルコニアからなる群から選択される多結晶セラミックから形成され、該部分安定化、若しくは安定化ジルコニアには、Y,Ce,Ca,Mg,Sc,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Ti,Sn,Nb,Ta,Mo,Wおよびこれらの混合物の酸化物からなる群から選択されたドーパントが添加されている。」(【0030】)


(3a-15) 甲第15号証(特開平8-119732号公報)の記載事項
15ア. 「Yおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1種の酸化物からなる安定化剤を固溶したZrO_(2)粉末にYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1種を含む化合物を酸化物換算で0.01?10モル%の割合で添加混合し、この混合物を成形後、1200?1700℃の酸化性雰囲気中で焼成することを特徴とする固体電解質の製造方法。」(【請求項1】)

15イ. 「【産業上の利用分野】本発明は、固体電解質型燃料電池セルや、酸素センサなどに用いられる固体電解質の製造方法に関するものである。」(【0001】)

15ウ. 「本発明による固体電解質の製造方法によれば、出発原料としてまず、安定化剤を固溶するZrO_(2)粉末を作製する。このZrO_(2)粉末中に固溶させる安定化剤としてはYおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物が挙げられる。…
このZrO_(2)固溶体粉末は、ZrO_(2)粉末に所定の割合でY、Yb、Sc、Er、Nd、Dy、Ce、SmおよびGdの群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を安定化剤として添加混合したものを1000?1700℃の酸化性雰囲気中で熱処理して固相反応することにより得ることができる。」(【0008】?【0009】)

15エ. 「…燃料電池において使用される場合、固体電解質は緻密質であることが重要であり、気孔率として1%以下、特に0.5%以下であることが望ましい。」(【0016】)


(3a-16) 甲第16号証(特開2008-182136号公報)の記載事項
16ア. 「積層したグリーンシートの最外層に収縮抑制シートを積層して積層体を形成し、前記積層体をセッターの上に載せた状態で焼成した後、前記収縮抑制シートの焼成物を除去して多層セラミック基板を製造する方法であって、
前記セッターの載置面の面積が前記グリーンシートの一主面の面積よりも小とされていることを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。」(【請求項1】)

16イ. 「【技術分野】
本発明は、積層したグリーンシートの最外層に収縮抑制シートを配した状態で焼成を行う多層セラミック基板の製造方法に関する。」(【0001】)

16ウ. 「【背景技術】
電子機器等の分野においては、電子デバイスを実装するためのセラミック基板が広く用いられ、近年では、電子機器の小型軽量化や多機能化等の要望に応え、且つ高信頼性を有するセラミック基板として多層セラミック基板が提案され、実用化されている。多層セラミック基板は、複数のセラミック層を積層することにより構成されており、各セラミック層に配線導体や電子素子等を一体に作り込むことで回路基板の高密度化が可能となっている。
前記多層セラミック基板は、複数のグリーンシートを積層した後、これを脱バインダし、焼成することにより形成される。焼成は、焼結用セッターの上に積層体を並べた状態で行われる。そして、前記グリーンシートは、この焼成工程等における焼結に伴って必ず収縮し、多層セラミック基板の寸法精度を低下させる大きな要因となっている。具体的には、前記収縮に伴って収縮バラツキが発生し、最終的に得られる多層セラミック基板においては、寸法精度は、0.5%程度に留まっている。また、グリーンシートの収縮により、多層セラミック基板の最表面に形成された導体パターンが位置ずれを起こすことも問題となっている。
このような状況から、多層セラミック基板の焼成工程において、グリーンシートの面内方向の収縮を抑制し、厚さ方向にのみ収縮させる、いわゆる無収縮焼成方法が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1等にも記載されるように、前記焼成温度でも収縮しないシートをグリーンシートの積層体に貼り付け、この状態で焼成を行うと、前記面内方向の収縮が抑制され、厚さ方向にのみ収縮する。この方法によれば、多層セラミック基板の面内方向の寸法精度を例えば0.05%程度にまで改善することが可能である。また、多層セラミック基板の最表面の導体パターンの位置ずれを防ぐこともできる。」(【0002】?【0004】)

16エ. 「【発明が解決しようとする課題】
ところで、無収縮焼成方法により得られた多層セラミック基板には、図6に示すように、反りと呼ばれる特有の変形が発生することが知られている。すなわち、焼成後の多層セラミック基板111においては、セッター112と対向していた側の面すなわち下面はほぼ平坦とされているものの、他方の面すなわち上面が凹状に湾曲した形状を有している。その結果、多層セラミック基板の上面においては中央部分に比べて外周縁部の高さが高くなるが、中央部分からの高さ(反り量)が所定範囲を超えた部分については、不要領域として切断、除去しなければならない。すなわち、多層セラミック基板の一主面において外周縁部と中央部分との高さの差が大きいと、それに応じて外周縁部の不要領域を広く設定する必要があるため、有効な基板領域が減少してしまう。したがって、多層セラミック基板の反り量を極力小さくすることが望まれる。
本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、いわゆる無収縮焼成方法に特有の問題である多層セラミック基板の反りを抑制することが可能な多層セラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。」(【0005】?【0006】)

16オ. 「

」(【図6】)


(3a-17) 甲第17号証(特開2011-18783号公報)の記載事項
17ア. 「 セラミック粉末を含む複数のセラミックグリーン層を積層してなり、多層セラミック基板となる製品部と前記製品部を囲むマージン部とからなる中央領域と、前記中央領域を囲む外縁領域とを有する積層体を作製する工程と、
前記積層体の、前記中央領域と前記外縁領域との間に第1の切り込み溝を形成する工程と、
前記積層体を、前記セラミック粉末の焼結条件で焼成する工程と、
前記積層体を前記第1の切り込み溝に沿って分割し、前記外縁領域を除去して前記中央領域を得る工程と、
前記中央領域から前記マージン部を除去して前記製品部を得る工程と、
を備える、多層セラミック基板の製造方法。」(【請求項1】)

17イ. 「【技術分野】
本発明は、複数のセラミックグリーン層を積層して形成する多層セラミック基板の製造方法に関するものである。」(【0001】)

17ウ. 「【背景技術】
多層セラミック基板は、電子部品を実装するための配線パターンや、内部にLやCなどの受動素子を形成することができるため、高周波モジュールなどに広く用いられている。多層セラミック基板を得るためには、複数のセラミックグリーン層を積層して積層体を作製し、これを焼成する工程を経る。1つの積層体からは、1つの多層セラミック基板を得る場合と、複数の多層セラミック基板を得るいわゆる多数個取りの方法が行われる場合とがある。いずれの場合にしても、積層体にはあらかじめ多層セラミック基板として利用する製品部分(以下、「製品部」という。)の周囲にマージン部分(以下、「マージン部」という。)を設けるのが一般的である。このマージン部は、製品として用いられることはないものの、製品部に電子部品を実装するための位置表示マークなどを形成するために用いられる。そのため、マージン部は、できるだけ平坦な部分を用いなければならない。
ところが、マージン部が設けられる積層体の端部には、焼成工程において歪みや反りなどの変形が生じやすい。それ故に、積層体の端部の変形の大きな部分から変形の小さい部分までをマージン部として確保しなければならず、その分、製品部を小さくせざるを得なかった。
そこで、従来から、焼成工程における積層体の端部の歪みや反りなどの変形を抑制する方法が提案されている。…」(【0002】?【0004】)


(3a-18) 甲第18号証(特表2006-524902号公報)の記載事項
上記4Aの(A-1)に記載したとおり。


(3a-19) 甲第19号証(特表2008-541336号公報)の記載事項
19ア. 「例1
酸化還元の安定なSOFCアノード及びアノード支持構造を含むSOFC電池は、後に続く加工するステップ:
1.アノード支持層をテープに鋳造すること;
2.アノード支持層に活性なアノード層をスプレー塗装すること;
3.アノード構造に電解質をスプレー塗装すること;
4.3つの層状の構造の焼結をすること;
5.焼結された3つの層状の構造に活性なカソードをスプレー塗装すること;
6.カソードの焼結をすること
を介して得られた。
アノード支持体用のスラリーが、55重量%のNiOの範囲内の重量比で、且つ、5重量%のCr_(2)O_(3)の追加と共に、NiOの粉末及び3モルのイットリアで安定化させられたジルコニアを分散させることによって作られた。結合材が、分散の後に追加されたと共に、スラリーがテープに鋳造された。テープの乾燥させられた厚さは、約500μmであった。
活性なアノード用のスラリーは、53重量%のNiOの範囲内の重量比で、且つ、7重量%のTiO_(2)の追加と共に、NiO及び8モルのイットリアで安定化させられたジルコニアを含んだ。このスラリーは、アノード支持体スラリーと同様に、製造された。約15μmの厚さの層のスプレー塗装をすると共に乾燥させることをした後で、およそ10μmの厚さを備えた8モルのイットリアで安定化されたジルコニアの電解質が、アノード層に堆積させられた。そのパッケージは、1300℃で空気中において焼結された。」(【0052】?【0054】)


(3a-20) 甲第20号証(特開2006-24371号公報)の記載事項
20ア. 「 平板型固体酸化物形燃料電池であって、セル基板の四隅に曲面Rをつけることによりセルの反りを軽減し、電極反応での接触抵抗および分極抵抗を低減してなることを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池。」(【請求項1】)

20イ. 「固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下適宜SOFCと略称する)の単電池すなわちセルは、固体酸化物電解質を挟んで燃料極および空気極が配置され、燃料極/電解質/空気極の三層ユニットで構成される。…図1はそのSOFCのセルの態様例を説明する図で、断面図を示している。図1のとおり、セル1は、燃料極2の上に電解質膜3が配置され、電解質膜3の上に空気極4が配置されて構成される。」(【0002】?【0005】)

20イ. 「…支持膜式SOFCのセルを模式的に示せば前述図1のように平面になる。しかし、セルは、その作製に際して焼成工程を必須とし、燃料極や電解質など、熱膨張率の異なる複数のセラミックス材料を重ね合わせて焼結することから、セラミックス材料間の熱膨張率の差が原因で、完全な平面ないしスタック化するに際して許容できる範囲の平面にはなり難く、反りや歪みが生じる。図4はその状態を示す図で、図4(a)は断面図、図4(b)は空気極側すなわち表面から見た斜視図、図4(c)は燃料極側すなわち裏面から見た斜視図である。
まず、セルの燃料極2側すなわちその裏面は、図4(a)、図4(c)に示すように、中央部が凹み(窪み)、周縁部に向けて漸次湾曲して反りないし歪みが生じる。そして、図4(b)?(c)中、Yとして示す四隅の部位が最も反りが大きい。すると、支持膜式SOFCのセルをスタック化した際に、その反りないし歪みにより、接触抵抗や分極抵抗が増大し、電気的接触にむらが生じて接触抵抗が増大し、発電性能を低下させてしまう。
一方、セルの空気極4側すなわちその表面は、図4(a)、図4(b)に示すように、中央部が膨らみ、周縁部に向けて漸次湾曲して反りないし歪みが生じる。このセルをインターコネクタを介してスタック化する際には、その空気極4面にインターコネクタを当接させるが、その反りないし歪みにより、空気極4面とインターコネクタ間の接触が阻害され、電気的接触にむらが生じて接触抵抗を増大させ、発電性能を低下させてしまう。」(【0008】?【0010】)

20ウ. 「

」(【図4】)

20エ. 「図6は本発明を説明する図で、図6(a)は平面図、図6(b)は空気極側すなわち表面から見た斜視図、図6(c)は燃料極側すなわち裏面から見た斜視図である。図6(a)?(c)のとおり、セル基板の四隅を研削機等で研削するか、または研磨機等で研磨して曲面Rをつける。なおその際、必要に応じて四隅の部分の下面の一部を研削または研磨してもよい。曲面Rは、図6(b)?(c)中Zとして示す部分の曲面であり、前述図4(b)?(c)中Yとして示す部分に対応する部分である。図6(b)?(c)では四隅のうち一隅にZの標示をしているが、他の三隅についても同様である。
図4のY部分と図6のZ部分を対比して見ると明らかなとおり、本発明適用前の、曲面RをつけていないセルにおけるYとして示す最も反りが大きい四隅の部位が、本発明を適用して曲面Rをつけたセルにおける、Zとして示す四隅の部位では、その反りがより小さく緩和されている。本発明においては、これにより、セルの反りを軽減し、電極反応での接触抵抗および分極抵抗を低減するものである。
図7は、図4のセルの断面と図6のセルの断面を対比して示した図である。本発明適用前の曲面Rをつけていないセルでは反りが大きいため、空気極の最上部と燃料極の最下部との間隔が大きい。これに対して、本発明適用後の曲面Rをつけたセルでは反りが小さいため、空気極の最上部と燃料極の最下部との間隔が小さい。」(【0020】?【0022】)

20オ. 「

」(【図6】)

20カ. 「

」(【図7】)


(3a-21) 甲第21号証(特開2007-299690号公報)の記載事項
21ア. 「 焼結体より構成されて支持基板となる燃料極基板と、この燃料極基板の上に設けられた焼結体より構成された電解質層と、この電解質層の上に設けられた空気極とを備えた固体酸化物形燃料電池の作製方法において、
ジルコニア系酸化物の粉体に金属酸化物の粉体を混合した混合粉体に造孔材が添加されて形成された第1スラリーより未焼結の燃料極基板が形成された状態とする第1工程と、
未焼結の前記燃料極基板の上に、前記混合粉体より形成された第2スラリーより未焼結の燃料極中間層が形成された状態とする第2工程と、
未焼結の前記燃料極中間層の上に、ジルコニア系酸化物の粉体で形成された第3スラリーより未焼結の電解質層が形成された状態とする第3工程と、
未焼結の前記燃料極基板,未焼結の前記燃料極中間層,及び未焼結の前記電解質層を加熱し、焼結された燃料極基板,焼結された燃料極中間層,及び焼結された電解質層が形成された状態とする第4工程と、
前記電解質層の上に空気極が形成された状態とする第5工程と
を少なくとも備え、
前記造孔材は、加熱により気化する粉体から構成されたものである
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池の作製方法。」(【請求項1】)

21イ. 「燃料極支持型セルの特徴としては電解質層の薄膜化があり、電解質層を薄くする利点としては、セルの内部抵抗の低減に加え、セルの反りを抑制できることが挙げられる。平板型セルでは、セルの反りがスタック化での強度や集電の状態に大きな影響を及ぼすため、平坦であることが望ましい。燃料極支持型のセルでは、燃料極となる材料のペースト層と、電解質となる材料のペースト層とを積層した後に、これらを焼結し、燃料極の上に電解質層が形成された状態としている。このように形成される固体酸化物形燃料電池において、一般に、電解質の方が燃料極よりも焼結性が高く収縮率が大きい傾向があるが、燃料極基板の厚さに対し、電解質の厚さを小さくするほどセルの反りが抑制されることが確認されている。
しかしながら、電解質層が薄くなるほど電解質層の強度が小さくなるため、焼結過程に亀裂の生成などの損傷を受けやすくなり、リーク発生の頻度が高くなる傾向がある。特に、燃料極の気孔率確保の観点から添加されている造孔材の存在により、損傷が発生しやすい状態となっている。…造孔材が気化する際のガスの圧力により、電解質層が損傷を受けやすい状態となる。このようにして電解質層が損傷を受けてリークパスが存在している状態となると、燃料電池の短絡やガスの混入などが発生し、発電効率の低下を招きセル性能を低下させる。このように、燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池では、燃料電池の作製において、電解質層に発生する損傷が大きな問題となっている。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池において、より高い効率で発電が行える構成が、電解質層の損傷が抑制された状態で作製できるようにすることを目的とする。」(【0011】?【0013】)

21ウ. 「 本発明に係る固体酸化物形燃料電池の作製方法は、焼結体より構成されて支持基板となる燃料極基板と、この燃料極基板の上に設けられた焼結体より構成された電解質層と、この電解質層の上に設けられた空気極とを備えた固体酸化物形燃料電池の作製方法において、ジルコニア系酸化物の粉体に金属酸化物の粉体を混合した混合粉体に造孔材が添加されて形成された第1スラリーより未焼結の燃料極基板が形成された状態とする第1工程と、未焼結の燃料極基板の上に、混合粉体より形成された第2スラリーより未焼結の燃料極中間層が形成された状態とする第2工程と、未焼結の燃料極中間層の上に、ジルコニア系酸化物の粉体で形成された第3スラリーより未焼結の電解質層が形成された状態とする第3工程と、未焼結の燃料極基板,未焼結の燃料極中間層,及び未焼結の電解質層を加熱し、焼結された燃料極基板,焼結された燃料極中間層,及び焼結された電解質層が形成された状態とする第4工程と、電解質層の上に空気極が形成された状態とする第5工程とを少なくとも備え、造孔材は、加熱により気化する粉体から構成されているようにしたものである。したがって、燃料極が、燃料極基板と燃料極中間層とから構成され、燃料極中間層に比較して燃料極基板の方が、より高い気孔率に形成される。」(【0014】)


(3b) 甲第1号証に記載された発明
ア. 上記(3a-1)1ア.?1オ.によれば、甲第1号証には、通気性を確保しつつ、耐レドックス性を備えたアノード支持基板を提供するとの課題を解決するための、
「導電成分(A)40?80質量%と骨格成分(B)20?60質量%とから構成され、前記導電成分(A)がFe,Ni,Coよりなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物であり、前記骨格成分(B)が2.5?10モル%のイットリアで安定化されたジルコニアおよび/または3?12モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、気孔率が20?50%である燃料電池用アノード支持基板であって、該基板断面を1000倍に拡大した90μm×120μmの領域を、エネルギー分散形X線分析装置を用いたエネルギー分散法(EDS)により観察したマッピング写真において、前記導電成分(A)と前記骨格成分(B)とが混在している箇所[AB]と、混在しておらず前記導電成分(A)しか存在しない箇所[A]とがあり、該箇所[A]が5箇所以上に点在すると共に、点在している該箇所[A]の最大長径が8?100μm、平均長径が5?50μmであり、且つ3点曲げ強度が200MPa以上である、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板」が記載されていると認められる。

イ. また、上記ア.のアノード支持基板について、甲第1号証には、上記(3a-1)1カ.によれば、「基板厚さを0.2mm以上、3mm以下」とすることが記載され、また、上記(3a-1)1キ.によれば、「本発明のアノード支持基板を固体酸化物形燃料電池用部材として使用するに当っては、該支持基板の片面にアノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われるが、それら電極や薄膜電解質の形成法は特に制限されず、気相法;スクリーン印刷法、ゾル-ゲル法、スラリーコート法等の湿式法を適宜使用することができ、薄膜アノードや薄膜カソードの厚さは通常3?300μm、また薄膜電解質の厚さは通常3?100μmに調整される」ことが記載されていると認められる。

ウ. また、上記ア.のアノード支持基板について、甲第1号証には、上記(3a-1)1カ.によれば、「原料素材からなるスラリーを、例えばポリエステルの如き樹脂シート上に適当な厚さとなる様に塗工し、乾燥してグリーンシートとした後、これを所定のサイズに打抜き加工した後、棚板上の多孔質セッターに載置し、あるいは多孔質セッターで挟持した状態で、空気雰囲気下に1100?1500℃で1?5時間程度加熱焼成する方法」で製造されることが記載されており、また、上記イ.の、「本発明のアノード支持基板を固体酸化物形燃料電池用部材として使用するに当っては、該支持基板の片面にアノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われるが、それら電極や薄膜電解質の形成法は特に制限されず、気相法;スクリーン印刷法、ゾル-ゲル法、スラリーコート法等の湿式法を適宜使用することができ」ることに関し、上記(3a-1)1ク.によれば、「最近では、気相法以外にも、多孔質の該支持基板にアノード電極をスクリーン印刷などによって形成し、その上に薄膜電解質をコーティング等で形成した後、更にその上にカソード電極をスクリーン印刷などによって形成する方法を採用することが記載されていると認められる。

エ. 上記ア.?イ.からして、甲第1号証には、固体酸化物形燃料電池に注目すると、「導電成分(A)40?80質量%と骨格成分(B)20?60質量%とから構成され、前記導電成分(A)がFe,Ni,Coよりなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物であり、前記骨格成分(B)が2.5?10モル%のイットリアで安定化されたジルコニアおよび/または3?12モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、気孔率が20?50%であり、厚さを0.2mm以上、3mm以下とした、燃料電池用アノード支持基板であって、該基板断面を1000倍に拡大した90μm×120μmの領域を、エネルギー分散形X線分析装置を用いたエネルギー分散法(EDS)により観察したマッピング写真において、前記導電成分(A)と前記骨格成分(B)とが混在している箇所[AB]と、混在しておらず前記導電成分(A)しか存在しない箇所[A]とがあり、該箇所[A]が5箇所以上に点在すると共に、点在している該箇所[A]の最大長径が8?100μm、平均長径が5?50μmであり、且つ3点曲げ強度が200MPa以上である、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われ、前記アノード電極や前記カソード電極の厚さは3?300μm、また前記薄膜電解質の厚さは3?100μmである、固体酸化物形燃料電池」(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。

オ. また、上記ア.?ウ.からして、甲第1号証には、固体酸化物形燃料電池の製造方法に注目すると、「導電成分(A)40?80質量%と骨格成分(B)20?60質量%とから構成され、前記導電成分(A)がFe,Ni,Coよりなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物であり、前記骨格成分(B)が2.5?10モル%のイットリアで安定化されたジルコニアおよび/または3?12モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、気孔率が20?50%であり、厚さを0.2mm以上、3mm以下とした、燃料電池用アノード支持基板であって、該基板断面を1000倍に拡大した90μm×120μmの領域を、エネルギー分散形X線分析装置を用いたエネルギー分散法(EDS)により観察したマッピング写真において、前記導電成分(A)と前記骨格成分(B)とが混在している箇所[AB]と、混在しておらず前記導電成分(A)しか存在しない箇所[A]とがあり、該箇所[A]が5箇所以上に点在すると共に、点在している該箇所[A]の最大長径が8?100μm、平均長径が5?50μmであり、且つ3点曲げ強度が200MPa以上である、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板を、原料素材からなるスラリーを樹脂シート上に適当な厚さとなる様に塗工し、乾燥してグリーンシートとした後、これを所定のサイズに打抜き加工した後、棚板上の多孔質セッターに載置し、あるいは多孔質セッターで挟持した状態で、空気雰囲気下に1100?1500℃で1?5時間程度加熱焼成することによって製造し、その後、当該固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極をスクリーン印刷によって形成し、その上に薄膜電解質をコーティング等で形成した後、更にその上にカソード電極をスクリーン印刷などによって形成する固体酸化物形燃料電池の製造方法において、前記アノード電極や前記カソード電極の厚さは3?300μm、また前記薄膜電解質の厚さは3?100μmに調整される、固体酸化物形燃料電池の製造方法」(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。


(3c) 従来周知の技術事項
カ. 甲第2号証には、上記(3a-2)2ア.?2ウ.によれば、アノード層10と電解質層12とからなる固体電解質型燃料電池の下部構造の縁部に関し、アノード層10をまず焼成するということは行わずに、未焼成のアノード層10と未焼成の電解質層12とからなる積層構造体を焼成した場合に、当該アノード層10の収縮率と当該電解質層12の収縮率との相違に起因して、積層構造体の縁部に、上記(3a-2)2エ.に図示されているようなカールが生ずるところ、焼成時の収縮率が未焼成のアノード材料よりも小さい未焼成材料から成る縁部用ストリップ16を、上記(3a-2)2オ.に図示されているように、未焼成時に配設しておくことによって、前記下部構造の縁部のカールを軽減するという発明が記載されている。

キ. 甲第3号証には、上記(3a-3)3ア.?3ウ.によれば、セラミック原料粉末と有機質バインダーおよび分散媒からなるスラリーを成形して得られるグリーンシートを所定形状に打抜き加工してから焼成して製造されるセラミックシートであって、平板状固体電解質型燃料電池の電解質膜または電極シートとして使用されるセラミックシートに関し、クラックや割れなどを生じ難く、また表面平滑性が良好で電極塗布や回路形成のためのスクリーン印刷などの不均一を生じることのないようにするために、当該シート面に、レーザー光学式三次元形状測定装置のレーザー光を照射してその反射光を三次元解決することにより求められる前記シートの最大反り高さを300μm以下とし、且つ前記シート最大外径長さに対する反り率を0.2%以下にするという発明が記載されている。

ク. 甲第4号証には、上記(3a-4)4ア.?4エ.によれば、通常の工具では切断、切削等の機械加工が不可能である、酸化物系セラミックの切断方法に関し、当該酸化物系セラミックの切断面に沿って予め該セラミックと共晶反応を起こして融点を低下させるTiO_(2)等の金属酸化物をコーティングした後に、レーザで切断するという発明が記載されている。

ケ. 甲第5号証には、上記(3a-5)5ア.?5オ.によれば、クラックの発生が著しい、セラミツクス材のレーザ切断方法に関し、前記セラミツク材の切断部の裏面に捨て材を設け、前記セラミツク材の表面側から前記切断部にレーザービームを照射して前記セラミツク材を切断するという発明が記載されている。

コ. 甲第6号証には、上記(3a-6)6ア.?6キ.によれば、焼成後にレーザ等で切断されているセラミック切断方法に関し、複数枚積層した各層のセラミック基板を、レーザ等の非接触加工により切断するセラミック切断方法において、マイクロクラックの影響対策のために、上記(3a-6)6キ.に図示されているように、前記セラミック基板の表面、裏面あるいはそれらの両面に対して、切断ラインの少なくとも内側または両側に、該切断ラインに平行な金属パターンを配置し、かつ該切断ラインと該金属パターンとの間の寸法を、切断加工により生じるクラック長以上の距離に設定するという発明が記載されている。

サ. 甲第7号証には、上記(3a-7)7ア.?7エ.によれば、ジルコニアを含む燃料電池用セルは、電解質、燃料極、空気極、中間層および/または燃料極基板等の電極材料から構成され、その中の燃料極および燃料極基板の材料は、NiO等の電子導電成分と安定化ジルコニアおよび/またはセリア系酸化物から成る骨格成分とからなるサーメットであり、そのサーメット中の電子導電成分と骨格成分の混合比は、電子導電成分が40?70質量%、骨格成分が30?60質量%であるが、それらの電極材料を酸で溶解し、粉砕して得られたリサイクルジルコニア粉末に関し、前記リサイクルジルコニア粉末を用いて得られるジルコニア焼結体シートを固体酸化物型燃料電池用電解質としたり、前記リサイクルジルコニア粉末とNiO粉末とを用いて固体酸化物型燃料電池用燃料極または燃料極基板を得るという発明が記載されている。

シ. 甲第8号証には、上記(3a-8)8ア.?8ウ.によれば、固体電解質膜用のジルコニアシートの両面にスクリーン印刷などで電極形成を行う場合に、ジルコニアシートと電極との密着性を高める様に改善された、固体電解質膜用のジルコニアシートに関し、前記シート両面の表面粗さが、いずれも最大高さで0.3?3μmであり、且つ算術平均粗さで0.02?0.3μmであるという発明が記載されている。

ス. 甲第9号証には、上記(3a-9)9ア.?9イ.によれば、平板状固体電解質型燃料電池の固体電解質膜用のセラミックシートに関し、そのシート表面にレーザー光学式三次元形状測定装置のレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる前記シート表面のディンプル高さが100μm以下であり、前記シートの素材としては、ジルコニア系セラミックが特に好ましいということが記載されている。

セ. 甲第10号証には、上記(3a-10)10ア.?10イ.によれば、平板状固体電解質型燃料電池の固体電解質膜用のセラミックシートに関し、そのシート表面にレーザー光学式三次元形状測定装置のレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められるシート周縁部のバリ高さが±100μm以下であり、前記シートの素材としては、ジルコニア系セラミックが特に好ましいということが記載されている。

ソ. 甲第11号証には、上記(3a-11)11ア.?11オ.によれば、固体電解質型燃料電池に用いられる酸化ニッケル及び安定化ジルコニアからなる多孔性セラミックスシートの製造に関し、原料粉末として安定化ジルコニア粉末20?50重量%及び酸化ニッケル粉末50?80重量%を含有してなるスラリーをシート状に成形してなるグリーンシートを、〔NiO〕単位を40?90重量%含有しているシート状セラミックス体であるセッター上に載置した状態で、1200?1400℃で焼成することが記載され、また、酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合比率は、酸化ニッケル60?70重量%、安定化ジルコニア40?30重量%であることが好ましく、また、安定化ジルコニアとしては、2?12モル%のイットリアで安定化された酸化ジルコニウム(YSZ) が好ましく用いられるということも記載されている。

タ. 甲第12号証には、上記(3a-12)12ア.?12イ.によれば、相対密度が30?70%の燃料極用グリーンの一面に固体電解質ペーストをスピンコート法で成膜して燃料極グリーン/固体電解質膜用グリーンを作製した後、収縮率が10?20%となる条件下に両者を同時焼成し、燃料極と固体電解質膜とを形成する固体電解質型燃料電池の製造方法の発明が記載されている。

チ. 甲第13号証には、上記(3a-13)13ア.?13ウ.によれば、燃料極を基板とし、該燃料極の上に成膜された電解質膜と、該電解質膜の上に成膜された空気極とからなる単電池を有する固体電解質型燃料電池の製造に関し、前記燃料極と前記電解質膜とを共焼結する場合に、前記電解質膜の亀裂や前記燃料極の反りを生じさせることがないように、前記電解質膜を、平均粒径が0.1?1μmの範囲の細粒と、平均粒径が1?5μmの範囲の粗粒とを原料とし、前記細粒と前記粗粒の比率を1?3:9?7に混合するという発明が記載されている。

ツ. 甲第14号証には、上記(3a-14)14ア.?14ウ.によれば、電解質シートとして、複数の凹部を備えた凹凸構造を有する表面を含んでいて前記電解質シートの最も薄い部分が前記電解質シートの最も厚い部分に比べて少なくとも0.5マイクロメートル厚くなっている厚さが不均一の実質的に非孔質の物体を有し、かつ、0.5オーム/cm^(2)以下のオーム抵抗を有する、固体酸化物電極電解質アセンブリに関する発明が記載されている。

テ. 甲第15号証には、上記(3a-15)15ア.?15エ.によれば、固体電解質型燃料電池セルに用いられる固体電解質の製造方法に関し、出発原料としてまず、安定化材を固溶するZrO_(2)粉末を作製すること、また、前記固体電解質は緻密質であることが重要であり、気孔率としては0.5%以下が望ましいことが記載されている。

ナ. 甲第16?17号証には、上記(3a-16)16ア.?16オ.及び上記(3a-17)17ア.?17ウ.によれば、各セラミック層に配線導体や電子素子等を一体に作り込むことで回路基板の高密度化が可能である、多層セラミック基板の製造方法が記載されている。

ニ. 甲第18号証には、上記4Aの(A-2)での検討と同様にして、上記4Aの(A-2)2エ.?オ.に示されるとおりの発明が記載されている。

ヌ. 甲第19号証には、上記(3a-19)19ア.によれば、アノード支持体用のスラリーがテープに鋳造されて、厚さ約500μmのアノード支持層が形成され、前記アノード支持層に活性なアノード層用のスラリーがスプレー塗装されて、約15μmの厚さの活性なアノード層が形成され、前記活性なアノード層におよそ10μmの厚さを備えた8モルのイットリアで安定化されたジルコニアの電解質がスプレー塗装され、それらの3つの層状の構造の焼結をし、その焼結された3つの層状の構造に活性なカソードがスプレー塗装され、前記カソードの焼結をすることを介して得られた、アノード支持構造を含むSOFC電池の発明が記載されている。

ネ. 甲第20号証には、上記(3a-20)20ア.?20カ.によれば、燃料極/電解質/空気極の三層ユニットで構成される平板型固体酸化物形燃料電池に関し、その作製に際しては焼成工程を必須とし、燃料極や電解質など熱膨張率の異なる複数のセラミックス材料を重ね合わせて焼結することから、セラミクス材料間の熱膨張率の差が原因で、上記(3a-20)20イ.に示されるような、燃料極側の中央部が窪み、周縁部に向けて漸次湾曲して反りないし歪みが生じるが、上記(3a-20)20オ.に示されるように、最も反りが大きい四隅の部位に曲面Rをつけることにより、上記(3a-20)20カ.に示されるように、前記反りないし歪みを低減するということが記載されている。

ノ. 甲第21号証には、上記(3a-21)21ア.?21ウ.によれば、焼結体より構成されて支持基板となる燃料極基板と、この燃料極基板の上に設けられた焼結体より構成された電解質層と、この電解質層の上に設けられた空気極とを備えた燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池の作製方法に関し、前記燃料極基板となる材料のペースト層と、前記電解質層となる材料のペースト層とを積層した後に、これらを焼結して形成される、燃料極支持型セルにおいては、燃料極基板の厚さに対し、電解質の厚さを小さくするほどセルの反りが抑制されることが確認されているが、電解質層が薄くなるほど電解質層の強度が小さくなり、焼結過程に亀裂の生成などの損傷を受けやすくなる傾向があるため、燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池では、燃料電池の作製において、電解質に発生する損傷が大きな問題となっていることから、燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池において、このような問題を解消して、より高い効率で発電が行える構成が、電解質層の損傷が抑制された状態で作製できるようにするために、ジルコニア系酸化物の粉体に金属酸化物の粉体を混合した混合粉体に造孔材が添加されて形成された第1スラリーにより形成された未焼結の燃料極基板と、未焼結の前記燃料極中間層と、未焼結の前記電解質層とを加熱して、焼結された燃料極基板と焼結された燃料極中間層と焼結された電解質層とが形成された状態とする工程と、前記電解質層の上に空気極が形成された状態とする工程とを少なくとも備える、燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池の作製方法において、前記造孔材を加熱により気化する粉体から構成して、燃料極基板と燃料極中間層とから構成される燃料極において、燃料極中間層に比較して燃料極基板の方が、より高い気孔率となるように形成するという発明が記載されている。


(3d) 本件訂正発明と甲1発明との対比・判断
上記(3b)エ.のとおり、甲1発明1が固体酸化物形燃料電池であることから、まず、本件訂正発明4?6のアノード支持型セルと甲1発明1の固体酸化物形燃料電池とについて、順次、対比・判断を行い、次いで、本件訂正発明1?2のアノード支持型ハーフセルと甲1発明1の固体酸化物形燃料電池とについて、順次、対比・判断を行い、その後、上記(3b)オ.のとおり、甲1発明2が固体酸化物形燃料電池の製造方法であることから、本件訂正発明13のアノード支持型セルの製造方法と甲1発明2の固体酸化物形燃料電池の製造方法とについて対比・判断を行い、さらに、本件訂正発明7、10?12のアノード支持型ハーフセルの製造方法と甲1発明2の固体酸化物形燃料電池の製造方法とについて、順次、対比・判断を行うこととする。

(3d-1) 本件訂正発明4と甲1発明1との対比・判断
ア. 本件訂正発明4と甲1発明1とを対比するに、技術常識からして、甲1発明1における「固体酸化物形燃料電池」、「カソード電極」は、それぞれ、本件訂正発明4における「アノード支持型セル」、「カソード層」に相当し、また、甲1発明1における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板」、「アノード電極」、「薄膜電解質」は、それぞれ、本件訂正発明4における「アノード支持基板」、「アノード層」、「電解質層」に相当し、また、甲1発明1における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われ」ることは、本件訂正発明4における「アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有する」「アノード支持型ハーフセルにカソード層を形成したこと」ことに相当し、また、甲1発明1における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板」は「気孔率が20?50%であ」ること、甲1発明1における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板」は「導電成分(A)40?80質量%と骨格成分(B)20?60質量%とから構成され、前記導電成分(A)がFe,Ni,Coよりなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物であり、前記骨格成分(B)が2.5?10モル%のイットリアで安定化されたジルコニアおよび/または3?12モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであ」ることは、それぞれ、本件訂正発明4における「前記アノード支持基板の空隙率は20%以上」、「前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であ」ることに相当する。
そうすると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

<相違点>
相違点1’: 電解質層の空隙率が、本件訂正発明4では、「10%以下であ」るのに対し、甲1発明1では明らかでない点。

相違点2’: アノード支持基板の厚さ(T1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が、本件訂正発明4では、「0.04?0.35であ」るのに対し、甲1発明1では、アノード支持基板の厚さ0.2mm以上、3mm以下に対し、電解質層の厚さは3?100μmであることから、0.001?0.5と広範囲である点。

相違点3’: アノード層が、本件訂正発明4では、「導電成分と骨格成分とを含み、前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であ」るのに対し、甲1発明1では明らかでない点。

相違点4’: 電解質層が、本件訂正発明4では、「セラミックス質を主成分として含み、前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであ」るのに対し、甲1発明1では明らかでない点。

相違点5’: 本件訂正発明4では、「前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下である」との特定があるのに対し、甲1発明1では、そのような特定がない点。


イ. そこで、上記相違点1’?5’に係る発明特定事項を備える本件訂正発明4が、甲1発明1に従来周知の技術事項(甲第2号証?甲第21号証)を適用することによって、容易に想到し得るものであるか否かを検討してみるに、甲1発明1は、上記(3b)エ.のとおり、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われる、固体酸化物形燃料電池の発明であるから、甲第2号証?甲第21号証に記載される技術事項のうち、固体酸化物形燃料電池以外の技術事項を甲1発明1に適用することには合理性がないし、また、固体酸化物形燃料電池の技術事項であっても、例えば、電解質膜シートが基板となる場合、あるいは、アノード電極が基板となるため、アノード支持基板が用いられない場合等、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われる技術事項ではないことが明かな技術事項を甲1発明1に適用することにも合理性がないところ、上記(3c)に示したとおり、甲第4?6号証および甲第16?17号証に記載される技術事項は、いずれも、固体酸化物形燃料電池以外の技術事項であるし、また、甲第2?3号証、甲第8?10号証、甲第12?15号証および甲第20号証に記載される技術事項は、いずれも、固体酸化物形燃料電池の技術事項であっても、電解質膜シートが基板となる場合、あるいは、アノード電極が基板となるため、アノード支持基板が用いられない場合に該当し、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極の形成が行われる技術事項ではないことが明かな技術事項であるから、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明1に適用することにも合理性がない。
してみると、甲第7号証、甲第11号証、甲第18?19号証および甲第21号証に記載される技術事項を甲1発明1に適用することには合理性があるものの、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明1に適用することには、合理性がないといえる。
また、仮に、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明1に適用できると認定し得る、具体的かつ客観的な証拠が甲第1?21号証の他にあったとしても、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証には、上記相違点2’と5’に係る本件訂正発明4の発明特定事項については記載も示唆もされていない。

ウ. また、甲第7号証、甲第11号証、甲第19号証および甲第21号証に記載される技術事項を甲1発明1に適用しても、上記(3c)に示したように、
甲第7号証からは、リサイクルジルコニア粉末を得るために酸で溶解される、ジルコニアを含む燃料電池用セルは電解質、燃料極、空気極、中間層および/または燃料極基板等の電極材料から構成されるところ、その中の燃料極および燃料極基板の材料は、NiO等の電子導電成分と安定化ジルコニアおよび/またはセリア系酸化物から成る骨格成分とからなるサーメットであり、そのサーメット中の電子導電成分と骨格成分の混合比は、電子導電成分が40?70質量%、骨格成分が30?60質量%であるということが把握されるにすぎないし、
また、甲第11号証からは、固体電解質型燃料電池に用いられる酸化ニッケル及び安定化ジルコニアからなる多孔性セラミックスシートにおける、酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合比率は、酸化ニッケル60?70重量%、安定化ジルコニア40?30重量%であることが好ましく、また、安定化ジルコニアとしては、2?12モル%のイットリアで安定化された酸化ジルコニウム(YSZ) が好ましということが把握されるにすぎないし、
また、甲第19号証からは、アノード支持構造を含むSOFC電池においては、厚さ約500μmのアノード支持層の上に、約15μmの厚さの活性なアノード層が形成され、前記活性なアノード層におよそ10μmの厚さの8モルのイットリアで安定化されたジルコニアの電解質が形成され、その電解質の上に活性なカソードが形成されるということ、すなわち、アノード支持基板の厚さ(t1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が10/500=0.02ということが把握されるにすぎないし、
また、甲第21号証からは、燃料極支持型セルにおいては、燃料極基板の厚さに対し、電解質の厚さを小さくするほどセルの反りが抑制されることが確認されているが、電解質層が薄くなるほど電解質層の強度が小さくなり、焼結過程に亀裂の生成などの損傷を受けやすくなる傾向があるため、燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池では、燃料電池の作製において、電解質に発生する損傷が大きな問題となっているところ、このような問題は、燃料極支持型の固体酸化物形燃料電池において、燃料極中間層に比較して燃料極基板の方が、より高い気孔率となるように形成することによって解消できるということが把握されるにすぎないことから、
甲第7号証、甲第11号証、甲第19号証および甲第21号証に記載の技術事項からは、上記相違点2’と5’に係る本件発明4の発明特定事項を導出することはできない。

エ. また、上記(3a)に示した、甲第18号証に記載される技術事項を甲1発明1に適用すると、上記4A(A-3)3ア.での検討と同様にして、本件訂正発明4に包含されないものとなる。

オ. よって、本件訂正発明4は、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


(3d-2) 本件訂正発明5?6と甲1発明1との対比・判断
本件訂正発明5?6と甲1発明1とを対比するに、本件訂正発明5?6は請求項4を引用するものであるから、上記(3d-1)ア.での検討と同様にして、少なくとも上記相違点1’?5’の点で相違していることとなる。
そして、上記相違点1’?5’に係る発明特定事項を備える本件訂正発明5?6が、甲1発明1に従来周知の技術事項(甲第2号証?甲第21号証)を適用することによって、容易に想到し得るものであるか否かを検討してみても、上記(3d-1)イ.?エ.での検討と同様にして、本件訂正発明5?6は、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


(3d-3) 本件訂正発明1?2と甲1発明1との対比・判断
甲1発明1は、上記(3b)エ.のとおり、固体酸化物形燃料電池であることから、甲1発明1において、あるいは、甲第1号証の記載から、固体酸化物形燃料電池の製造の際の中間生成物である、アノード支持型ハーフセルに係る発明が認定できるか否かは明らかではないものの、一応、甲1発明1からアノード支持型ハーフセルに係る発明が認定できたと仮定して、本件訂正発明1?2と甲1発明1とを対比すると、上記(3d-1)ア.での検討と同様にして、上記相違点1’?5’の点で相違していることとなる。
そして、上記相違点1’?5’に係る発明特定事項を備える本件訂正発明1?2が、甲1発明1に従来周知の技術事項(甲第2号証?甲第21号証)を適用することによって、容易に想到し得るものであるか否かを検討してみても、上記(3d-1)イ.?エ.での検討と同様にして、本件訂正発明1?2は、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


(3d-4) 本件訂正発明13と甲1発明2との対比・判断
カ. 本件訂正発明13と甲1発明2とを対比するに、技術常識からして、甲1発明2における「固体酸化物形燃料電池の製造方法」、「カソード電極」は、それぞれ、本件訂正発明13における「アノード支持型セルの製造方法」、「カソード層」に相当し、また、甲1発明2における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板」、「アノード電極」、「薄膜電解質」は、それぞれ、本件訂正発明13における「アノード支持基板」、「アノード層」、「電解質層」に相当し、また、甲1発明2における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極をスクリーン印刷によって形成し、その上に薄膜電解質をコーティング等で形成した後、更にその上にカソード電極をスクリーン印刷などによって形成する」ことは、本件訂正発明13における「アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有する」「アノード支持型ハーフセルにスクリーン印刷でカソード層を形成する」ことに相当し、また、甲1発明2における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板」は「気孔率が20?50%であ」ること、甲1発明2における「固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板」は「導電成分(A)40?80質量%と骨格成分(B)20?60質量%とから構成され、前記導電成分(A)がFe,Ni,Coよりなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物であり、前記骨格成分(B)が2.5?10モル%のイットリアで安定化されたジルコニアおよび/または3?12モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであ」ることは、それぞれ、本件訂正発明13における「前記アノード支持基板の空隙率は20%以上」、「前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であ」ることに相当する。
そうすると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

<相違点>
相違点1’’: 電解質層の空隙率が、本件訂正発明13では、「10%以下であ」るのに対し、甲1発明2では明らかでない点。

相違点2’’: アノード層が、本件訂正発明13では、「導電成分と骨格成分とを含み、前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であ」るのに対し、甲1発明2では明らかでない点。

相違点3’’: 電解質層が、本件訂正発明13では、「セラミックス質を主成分として含み、前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであ」るのに対し、甲1発明2では明らかでない点。

相違点4’’: 本件訂正発明13では、「前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下である」との特定があるのに対し、甲1発明2では、そのような特定がない点。

相違点5’’: 本件訂正発明13では、「前記アノード支持基板と前記電解質層とを含む多層焼成体を作製する工程と、前記多層焼成体の周縁部を切断除去する工程と、を有するアノード支持型ハーフセルの製造方法で製造された」との特定があるのに対し、甲1発明2では、そのような特定がない点。


キ. そこで、上記相違点1’’?5’’に係る発明特定事項を備える本件訂正発明13が、甲1発明2に従来周知の技術事項(甲第2号証?甲第21号証)を適用することによって、容易に想到し得るものであるか否かを検討してみるに、甲1発明2は、上記(3b)オ.のとおり、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極を形成する、固体酸化物形燃料電池の製造方法の発明であるから、甲第2号証?甲第21号証に記載される技術事項のうち、固体酸化物形燃料電池の製造方法以外の技術事項を甲1発明2に適用することには合理性がないし、また、固体酸化物形燃料電池の製造方法の技術事項であっても、例えば、電解質膜シートが基板となる場合、あるいは、アノード電極が基板となるため、アノード支持基板が用いられない場合等、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極を形成する技術事項ではないことが明かな技術事項を甲1発明2に適用することにも合理性がないところ、上記(3c)に示したとおり、甲第4?6号証および甲第16?17号証に記載される技術事項は、いずれも、固体酸化物形燃料電池の製造方法以外の技術事項であるし、また、甲第2?3号証、甲第8?10号証、甲第12?15号証および甲第20号証に記載される技術事項は、いずれも、固体酸化物形燃料電池の製造方法の技術事項であっても、電解質膜シートが基板となる場合、あるいは、アノード電極が基板となるため、アノード支持基板が用いられない場合に該当し、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面に、アノード電極、その上に薄膜電解質、更にその上にカソード電極を形成する技術事項ではないことが明かな技術事項であるから、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明1に適用することにも合理性がない。
してみると、甲第7号証、甲第11号証、甲第18?19号証および甲第21号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用することには合理性があるものの、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用することには、合理性がないといえる。
また、仮に、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用できると認定し得る、具体的かつ客観的な証拠が甲第1?21号証の他にあったとしても、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証には、上記相違点4’’?5’’に係る本件訂正発明13の発明特定事項については記載も示唆もされていない。

ク. また、甲第7号証、甲第11号証、甲第19号証および甲第21号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用しても、上記(3d-1)ウ.での検討と同様にして、甲第7号証、甲第11号証、甲第19号証および甲第21号証に記載の技術事項からは、上記相違点4’’?5’’に係る本件訂正発明13の発明特定事項を導出することはできない。

ケ. また、上記(3a)に示した、甲第18号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用しても、甲第18号証には、アノード支持型セルの製造方法において、カソード層を形成する前の多層焼成体の周縁部を切断除去する工程を有せしめることについての記載も示唆もないことから、上記相違点5’’に係る本件発明13の発明特定事項を導出することはできない。

コ. よって、本件訂正発明13も、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


(3d-5) 本件訂正発明7と甲1発明2との対比・判断
サ. 甲1発明2は、上記(3b)オ.のとおり、固体酸化物形燃料電池の製造方法であることから、甲1発明2において、あるいは、甲第1号証の記載から、固体酸化物形燃料電池の製造の際の中間生成物である、アノード支持型ハーフセルの製造方法に係る発明が認定できるか否かは明らかではないものの、一応、甲1発明2からアノード支持型ハーフセルの製造方法に係る発明が認定できたと仮定して、本件訂正発明7と甲1発明2とを対比すると、上記(3d-4)カ.での検討と同様にして、上記相違点1’’?4’’の点の他に、以下の点でも相違し、その余の点で一致していることとなる。

<相違点>
相違点6’’: 本件訂正発明7では、「前記アノード支持基板と前記電解質層とを含む多層焼成体を作製する工程と、前記多層焼成体の周縁部を切断除去する工程と、を有する」との特定があるのに対し、甲1発明2では、そのような特定がない点。

シ. そこで、上記相違点1’’?4’’、6’’に係る発明特定事項を備える本件訂正発明7が、甲1発明2に従来周知の技術事項(甲第2号証?甲第21号証)を適用することによって、容易に想到し得るものであるか否かを検討してみるに、アノード支持型ハーフセルの製造方法に係る発明における上記相違点6’’は、アノード支持型セルの製造方法に係る発明における上記相違点5’’に対応する相違点であることを考慮すると、上記(3d-4)キ.での検討と同様にして、甲第7号証、甲第11号証、甲第18?19号証および甲第21号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用することには合理性があるものの、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用することには、合理性がないといえる。
また、仮に、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用できると認定し得る、具体的かつ客観的な証拠が甲第1?21号証の他にあったとしても、甲第2?6号証、甲第8?10号証、甲第12?17号証および甲第20号証には、上記相違点4’’、6’’に係る本件訂正発明7の発明特定事項については記載も示唆もされていない。

ス. また、甲第7号証、甲第11号証、甲第19号証および甲第21号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用しても、上記(3d-1)ウ.での検討と同様にして、甲第7号証、甲第11号証、甲第19号証および甲第21号証に記載の技術事項からは、上記相違点4’’、6’’に係る本件訂正発明7の発明特定事項を導出することはできない。

セ また、上記(3a)に示した、甲第18号証に記載される技術事項を甲1発明2に適用しても、甲第18号証には、アノード支持型ハーフセルの製造方法において、多層焼成体の周縁部を切断除去する工程を有せしめることについての記載も示唆もないことから、上記相違点6’’に係る本件発明7の発明特定事項を導出することはできない。

ソ. よって、本件訂正発明7も、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


(3d-6) 本件訂正発明10?12と甲1発明2との対比・判断
本件訂正発明10?12と甲1発明2とを対比するに、本件訂正発明10?12は請求項7を引用するものであるから、上記(3d-5)サ.での検討と同様にして、少なくとも上記相違点1’’?4’’、6’’の点で相違していることとなる。
そして、上記相違点1’’?4’’、6’’に係る発明特定事項を備える本件訂正発明10?12が、甲1発明2に従来周知の技術事項(甲第2号証?甲第21号証)を適用することによって、容易に想到し得るものであるか否かを検討してみても、上記(3d-5)シ.?セ.での検討と同様にして、本件訂正発明10?12は、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


(3d-7) 補足
タ. 上記1.(1)?(2)の申立理由1?2について、異議申立人は、訂正前の請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、以下の点でのみ相違する旨主張している(特許異議申立書第9頁第2行?第30頁第17行)。
相違点A:訂正前の請求項1に係る発明は、前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が100μm以下であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、その点について明記されていないこと。

チ. そして、異議申立人は、上記相違点Aに係る発明特定事項を備える訂正前の請求項1に係る発明は、以下の(チ-1)?(チ-5)の点から、甲第1号証に記載された発明と従来周知の事項に基づいて、あるいは、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明と従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、また、訂正前の請求項2?9に係る発明も、訂正前の請求項1に係る発明と同様、甲第1号証に記載された発明と従来周知の事項に基づいて、あるいは、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明と従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している(特許異議申立書第30頁第18行?第41頁第6行)。

(チ-1) 甲第1号証の段落0005には、固体酸化物形燃料電池の技術分野において、反りを低減することが望まれていることが記載され、また、例えば甲第2号証、甲第3号証、甲第13号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第20号証、甲第21号証等の記載から、固体酸化物形燃料電池のアノード支持型ハーフセルを焼成により作製する際に反り(縁部のカール)が発生すること、および、そのような反りはシール性低下や割れの原因となるため好ましくないことは従来周知の事項であるため、シール性低下や割れの原因とならないように、反り(すなわちΔh)の大きさをどの程度とするかは(例えば、100μm以下とすることは)、適宜になし得ることに過ぎない。

(チ-2) アノード支持型ハーフセルの反り(すなわちΔh)が0.1mm(すなわち、100μm)以下であることが好ましい点は甲第2号証に記載されており、アノード支持型ハーフセルをはじめとする多層焼成体の反った縁部を除去して反りを低減することは、例えば甲第2号証、甲第16号証、甲第17号証等に記載されているように、従来周知であるし、多層焼成体の反った縁部を除去することによって反りを低減することは、いわば単純な(原始的な)方法であるし、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明は技術分野を一にするものであることから、甲第2号証に記載された発明と従来周知の事項とを甲第1号証に記載された発明に適用して、甲第1号証に記載された発明において、アノード支持型ハーフセルの縁部を切り取って、焼成により発生する反り(すなわちΔh)を100μm以下にすることは、容易に想到し得るものである。

(チ-3) 甲第1号証に記載された発明は、訂正前の請求項1に係る発明と、アノード支持型ハーフセルの層構成や、各層の空隙率や構成材料の点ですべて一致するため、甲第1号証に記載されたアノード支持基板にアノード電極、その上に薄膜電解質を形成してハーフセルを再現した場合、該ハーフセルには、訂正前の請求項1に係る発明と同様の反りが発生すると考えられ、また、アノード支持型ハーフセルをはじめとする多層焼成体の反った縁部を除去して反りを低減することは、例えば甲第2号証、甲第16号証、甲第17号証等に記載されているように、従来周知であるため、前記再現したハーフセルに発生した反りを、縁部を切断・除去することによって低減するように試みることは、極めて自然な行為であるし、セラミックス積層体の切断方法としてレーザー切断を採用することは、例えば甲第4?6号証に記載されているように、従来周知であるため、前記再現したハーフセルの縁部を切断・除去する際に従来周知のレーザー切断を採用することは、適宜になし得ることに過ぎない。

(チ-4) 甲第1号証に記載された発明は、訂正前の請求項1に係る発明と、アノード支持型ハーフセルの層構成や、各層の空隙率や構成材料の点ですべて一致するため、「本願発明では所定の成分組成、及び成分比率を有するアノード支持型ハーフセルにおいて、アノード支持基板の空隙率を20%以上、電解質層の空隙率を10%以下に調整することによって、焼成後の積層体の周縁部を切断する細の熱膨張差に起因する反りの発生を低減して、該切断後の反りを低減している」旨の本件特許の審査段階での特許権者の主張によれば、甲第1号証に記載されたアノード支持基板にアノード電極、その上に薄膜電解質を形成してハーフセルを再現し、該ハーフセルの縁部をレーザー切断により切断・除去することによって、訂正前の請求項1に係る発明と同一の構成が得られることは自明である。

(チ-5) アノード支持基板、アノード電極、および、薄膜電解質を同時焼成することは、例えば甲第13号証、甲第20号証、甲第21号証に記載されているように、従来周知であり、また、異なる複数層の材料を同時焼成する際に各層の性質の違いによって反りが発生するという課題も従来周知の課題であり、甲第1号証に記載されたアノード支持基板にアノード電極、その上に薄膜電解質を形成しているハーフセルを製造する場合に、反りが発生するという課題が存在することは周知であり、該周知の課題を解決するために、アノード支持型ハーフセルをはじめとする多層焼成体の反った縁部を除去して反りを低減するという、例えば甲第2号証、甲第16号証、甲第17号証等に記載されているように、従来周知の手段を採用することは、容易に想到し得るものである。


ツ. 異議申立人の上記1.(1)?(2)の申立理由1?2の主張についての判断
(ツ-1) 上記タ.と上記(チ-3)?(チ-4)とに示した異議申立人の主張は、甲第1号証に記載された発明は、訂正前の請求項1に係る発明と、アノード支持型ハーフセルの層構成や、各層の空隙率や構成材料の点ですべて一致するとの認識に基づく主張であるが、甲第1号証の記載よれば、上記(3b)で検討したとおり、甲第1号証に記載された発明は、上記(3b)のエ.?オ.に示した、甲1発明1の固体酸化物形燃料電池および甲1発明2の固体酸化物形燃料電池の製造方法であり、これらの発明と本件訂正発明とを対比すると、上記(3d-1)ア.、上記(3d-2)、上記(3d-3)、上記(3d-4)カ.、上記(3d-5)サ.、上記(3d-6)に示したとおり、甲第1号証に記載された発明は、訂正前の請求項1に係る発明と、アノード支持型ハーフセルの層構成や、各層の空隙率や構成材料の点ですべて一致するとはいえないことからして、異議申立人の前記の主張は、甲第1号証の記載に基づいた主張ではなく、妥当性を欠いている。

(ツ-2) 上記(チ-1)に示したように、異議申立人は、甲第1号証の段落0005には、固体酸化物形燃料電池の技術分野において、反りを低減することが望まれていることが記載されている旨主張しているが、甲第1号証における、段落0005を含む上記(3a-1)1ウ.には、固体酸化物形燃料電池において、平板状固体電解質膜を基板に用いる場合に、その平板状固体電解質膜の表面粗さを適正化することによって、その平板状固体電解質膜のウネリ、反り、バリが低減できることが記載されるにとどまり、異議申立人の上記(チ-1)の主張を裏付け得る記載は存在しないし、また、本件訂正発明が発明特定事項として備えているのは、異議申立人が主張するような、固体酸化物形燃料電池の単なる反りではなくて、「前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)」であるところ、このような本件訂正発明のΔhに対し、上記(3a)によれば、甲第2号証には、燃料電池の下部構造の縁部のカールは、実施例においては、0.1mm以下であるとの記載はあるものの、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用した三次元解析により前記h1と前記h2との差を求めたまでの記載はないから、当該縁部のカールが前記した本件訂正発明のΔhと同じことを意味しているとはいえないし、また、甲第3号証、甲第13号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第20号証、および、甲第21号証にも、前記した本件訂正発明のΔhに関しては記載も示唆もされていないのであるから、本件訂正発明のΔhが甲第2号証等に記載されているとの認識に基づく、上記(チ-1)?(チ-2)に示した異議申立人の主張も妥当性を欠いている。

(ツ-3) また、上記(チ-2)に示したように、異議申立人は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明は技術分野を一にするものであることから、甲第2号証に記載された発明を甲第1号証に記載された発明に適用し得る旨主張しているが、甲第2号証記載の発明は、上記(3c)カ.に示したとおり、アノード層10と電解質層12とからなる固体電解質型燃料電池の下部構造の縁部に関し、アノード層10をまず焼成するということは行わずに、未焼成のアノード層10と未焼成の電解質層12とからなる積層構造体を焼成するものであるのに対し、甲1発明2は、上記(3b)オ.に示したとおり、固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板の片面にアノード電極をスクリーン印刷によって形成し、その上に薄膜電解質をコーティング等で形成した後、更にその上にカソード電極をスクリーン印刷などによって形成するものであり、すなわち、前記アノード支持基板をまず焼成した後、そのアノード支持基板の片面にアノード電極、薄膜電解質、カソード電極を順次形成していくというものであるから、甲1発明に甲第2号証記載の発明を適用することに合理性がないため、上記(チ-2)に示した異議申立人の主張も妥当性を欠いている。

(ツ-4) また、上記(チ-5)に示したように、異議申立人は、異なる複数層の材料を同時焼成する際に各層の性質の違いによって反りが発生するという課題も従来周知の課題であり、甲第1号証に記載されたアノード支持基板にアノード電極、その上に薄膜電解質を形成しているハーフセルを製造する場合に、反りが発生するという課題が存在することは周知である旨主張しているが、甲第1号証の記載よれば、上記(3b)で検討したとおり、甲第1号証に記載された発明は、上記(3b)のエ.?オ.に示したように、アノード支持基板にアノード電極、その上に薄膜電解質を形成しているハーフセルを同時焼成して製造するものではないから、上記(チ-5)に示した異議申立人の主張も妥当性を欠いている。

(ツ-5) そして甲第1?21号証の記載に基づくと、上記(3d-1)?(3d-6)の検討のとおり、本件訂正発明1?2、4?7、10?13は、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、主たる証拠である甲第1号証に記載された発明、従たる証拠である甲第2号証に記載された発明、および、従来周知の事項(甲第2号証?甲第21号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ツ-6) 上記(ツ-1)?(ツ-5)のため、異議申立人の上記1.(1)?(2)の申立理由1?2の主張は採用し得ない。


(D-4) 小括
以上のとおり、上記1.に示した申立理由によって、本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。


第4 むすび
以上のとおり、取消理由(決定の予告)、取消理由、特許異議の申立理由、及び、証拠によっては、請求項1?2、4?7、10?13に係る特許を、取り消すことができない。
さらに、他に請求項1?2、4?7、10?13に係る特許を、取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3、8?9に係る特許は存在しないものとなったため、請求項3、8?9に対して、異議申立人がした特許異議の申立ては却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アノード支持型ハーフセル及びこれを用いたアノード支持型セル、並びにアノード支持型ハーフセルの製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード支持型ハーフセルに関するものであり、特に周縁部の反りを低減したアノード支持型ハーフセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池はクリーンエネルギー源として注目されており、その用途は家庭用発電から業務用発電、さらには自動車用発電等を主体にして、急速に改良研究及び実用化研究が進められている。
【0003】
固体酸化物形燃料電池の代表的な構造は、平板状固体電解質膜の片面側にアノード電極、他方面側にカソード電極を設けたセルを縦方向に多数積層したスタックが基本となっている。ここで、固体酸化物形燃料電池の発電性能を高めるためには、固体電解質膜を緻密且つ薄肉化することが有効とされている。これは、固体電解質膜には発電源となる燃料ガスと空気の混合を確実に阻止する緻密性と、導電ロスを極力抑えることのできる優れたイオン導電性が求められるためである。しかしながら、固体電解質膜を薄肉化するほど、セルを多数積層した場合に積層荷重によって割れが生じやすくなる傾向がある。そこで固体電解質膜をより薄肉化するために、固体電解質のアノード電極側に、アノード電極及び固体電解質膜を支持するアノード支持基板を設けたアノード支持型セルが提案されている。
【0004】
このようなアノード支持型セルについて、その性能を改良する技術が種々検討されている。例えば、特許文献1には、アノード支持基板の周縁端部のバリ高さを低くすることにより、耐積層荷重性や、電極印刷や固体電解質膜を形成する際の印刷適正においても優れた特性が得られることが記載されている(特許文献1(第16頁第10?19行)参照)。しかし、特許文献1は、アノード支持基板単層のバリ高さに関するものであり、アノード支持基板にアノード層や電解質層を形成したアノード支持型ハーフセルに関しては検討されていない。
また、アノード支持基板に関するものではないが、特許文献2には、固体電解質自立膜に使用されるセラミックシートについて、その周縁端部のバリ高さを±100μm以下にすることで、燃料電池の性能を向上できることが記載されている(引用文献2(段落[0016])参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/098724号
【特許文献2】特開2001-10866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、アノード支持型セルにおいて、電解質層や電極が印刷されるアノード支持基板の周縁端部のバリ高さを低くすることにより電池性能を高めていた。すなわち、アノード支持基板の周縁端部のバリ高さを低くして、周縁部を平滑にすれば、最終的に得られるアノード支持型セルにおいても周縁部を平滑にできると考えられていた。これは、一度焼成されたアノード支持基板は、充分に強度が高められているため、その後の工程においても変形することはないと考えられていたためである。そのため、従来は、アノード支持基板単層の状態での周縁部の平滑性のみを検討しており、これに電解質層が積層された後については、周縁部の反り等は一切検討されていなかった。
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、アノード支持基板の周縁部を平滑にした場合でも、このアノード支持基板を用いて作製されるアノード支持型セルの周縁部に反りが生じることが確認された。そして、このアノード支持型セルの周縁部の反りは、アノード支持基板又はアノード支持基板グリーンシートと電解質層前駆体との積層体を焼成する際に、電解質層前駆体が収縮して、アノード支持基板の周縁端部が電解質膜側に引っ張られ、反り上がることで生じることが判明した。
【0008】
このように、アノード支持型セルの周縁部に反りが存在すると、セルスタックとして多層積層されて大きな積層荷重を受けた際に、反りに起因する局部的な応力集中による割れや破損等を生じることがあり、また、燃料電池を構成する際の単セルとガス管との接合部、単セル同士の接合部又は単セル間に配置されるインターコネクタ(セパレータ)と単セルとの接合部等のシール性が悪くなり、動作時にガス漏れを生じることがあった。さらに、アノード支持型ハーフセルの段階で、その周縁部に反りが存在すると、スクリーン印刷によりカソード層を印刷する際に、アノード支持型ハーフセルと印刷版との接触が不均一となり、カソード層の厚さムラや印刷抜けを生じるという問題があった。
【0009】
本発明者らは、上記のようなアノード支持型セル又はアノード支持型ハーフセルの周縁部の反りによって生じる問題を解決するべく、研究を進めた結果、アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルの周縁部の反りを低減することにより、最終的に得られるアノード支持型セルの周縁部の反りを低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アノード支持基板と電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、その周縁部の反り上がりが低減されており、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できるアノード支持型ハーフセルを提供することを目的とする。また、本発明は、セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することができた本発明のアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有するアノード支持型ハーフセルであって、電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴とする。アノード支持型ハーフセルにおいて、その周縁部の反りを低減すれば、スクリーン印刷によりカソード層を形成する際に、電解質層と印刷版とが均一に接触するため、カソード層の膜厚の均一性が向上し、且つ、印刷抜けが低減される。さらに、ハーフセルの周縁部の反りを低減しておくことにより、最終的に得られるアノード支持型セルの周縁部の反りも低減できるため、多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルが得られる。
【0012】
前記アノード支持基板は、ニッケル、コバルト、鉄及びこれらの酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種と、安定化ジルコニア、セリア及びランタンガレートよりなる群から選択される少なくとも1種とを含むことが好ましく、前記電解質層が安定化ジルコニア、セリア及びランタンガレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は0.003?0.35であることが好ましい。
【0013】
本発明には、前記アノード支持型ハーフセルにカソード層を形成したアノード支持型セル;このアノード支持型セルを有する固体酸化物形燃料電池も含まれる。上記アノード支持型セルを有する固体酸化物形燃料電池は、アノード支持型セルの割れによる劣化が抑制され、長寿命であるとともに、周縁部のシール性に優れ、動作時のガス漏れが抑制され、発電効率が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と電解質層とを有し、その周縁部の反り上がりが低減されている。そのため、本発明のアノード支持型ハーフセルは、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できる。また、本発明のアノード支持型ハーフセルを用いて作製されるアノード支持型セルは、周縁部の反りが低減されており、セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】多層焼成体Aのレーザー光学式非接触三次元形状測定結果を示す図である。
【図2】アノード支持型ハーフセルAのレーザー光学式非接触三次元形状測定結果を示す図である。
【図3】多層焼成体Bのレーザー光学式非接触三次元形状測定結果を示す図である。
【図4】アノード支持型ハーフセルBのレーザー光学式非接触三次元形状測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のアノード支持型ハーフセルは、アノード支持基板と、前記アノード支持基板に積層された電解質層とを有しており、電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴とする。なお、差(Δh)とは、高さ(h1)と高さ(h2)との差の絶対値である。前記差(Δh)は、50μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0017】
電解質層は、その前駆体を焼成により緻密層と変化させるため、焼成時の収縮量が非常に大きくなる。そのため、アノード支持基板又はそのグリーンシートと電解質層前駆体とを積層して焼成を行うと、アノード支持基板の周縁端部が電解質層の収縮により引っ張られ、電解質層側に反り上がるようになる。本発明のアノード支持型ハーフセルは、このように反り上がった周縁部を除去することにより、周縁部の反りを低減したものである。
【0018】
本発明のアノード支持型ハーフセルは、周縁部の反りが低減されているため、スクリーン印刷によりカソード層を印刷する場合に、アノード支持型ハーフセルと印刷版とを均一に接触させることができる。そのため、スクリーン印刷により、厚さの均一性の高いカソード層を形成することができ、且つ、印刷抜けを抑制できる。また、本発明のアノード支持型ハーフセルを用いてアノード支持型セルを作製する場合、電解質層上にカソード層前駆体を形成し焼成することとなる。ここで、カソード層前駆体の焼成時の収縮量は小さいので、この焼成によってアノード支持基板や電解質層がカソード層側に反り上がることはない。よって、本発明のアノード支持型ハーフセルを用いれば、周縁部の反りが低減されたアノード支持型セルが得られる。
【0019】
前記アノード支持型ハーフセルの厚さ(T)に対する前記差(Δh)の比(Δh/T)は0.5以下が好ましく、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下である。前記比(Δh/T)が小さい程、セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルとなる傾向がある。なお、前記比(Δh/T)の下限は、当然0である。
【0020】
前記アノード支持型ハーフセルの厚さ(T)は、110μm以上が好ましく、より好ましくは130μm以上、さらに好ましくは160μm以上であり、3mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。アノード支持型ハーフセルの厚さが上記範囲内であれば、アノード支持型セルとした場合に、機械的強度が十分であるとともに、燃料ガスの拡散性も良好なものとなる。
【0021】
前記アノード支持型ハーフセルにおいて、アノード支持基板の厚さ(T1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は、0.003以上が好ましく、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.04以上であり、0.35以下が好ましく、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。アノード支持基板の厚さに対する電解質層の厚さが大きくなるほど、電解質層の焼成収縮による反り上がりが大きくなるため、本発明の効果が一層顕著になる。
【0022】
前記アノード支持基板は、導電性を与えるための導電成分と、支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とする。
【0023】
前記導電成分は、アノード支持基板に導電性を与える上で必須の成分であり、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、ルテニウム等の金属;酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄のように燃料電池稼動時の還元性雰囲気で導電性金属に変化する金属酸化物;あるいはこれらの酸化物を2種以上含有するニッケルフェライトやコバルトフェライトのような複合金属酸化物が挙げられる。これらは単独で使用し得るほか、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用できる。これらの中でも、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄又はこれらの酸化物が好ましい。
【0024】
前記骨格成分は、アノード層及びアノード支持基板の耐積層荷重強度と耐レドックス性を確保する上で重要な成分である。前記骨格成分としては、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、チタニア、窒化アルミニウム、ムライト等の単独もしくは複合物が使用される。これらの中でも最も汎用性の高いのは安定化ジルコニアであり、該安定化ジルコニアとしては、ジルコニアに、安定化剤としてMgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属の酸化物;Y_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、CeO_(2)、Pr_(2)O_(3)、Nd_(2)O_(3)、Sm_(2)O_(3)、Eu_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Tb_(2)O_(3)、Dy_(2)O_(3)、Er_(2)O_(3)、Tm_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)等の希土類元素の酸化物;Sc_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、In_(2)O_(3)等から選ばれる1種若しくは2種以上の酸化物を固溶させたもの、あるいは更に、これらに分散強化剤としてアルミナ、チタニア、Ta_(2)O_(5)、Nb_(2)O_(5)等が添加された分散強化型ジルコニア等が好ましいものとして例示される。また、骨格成分として、CeO_(2)やBi_(2)O_(3)にCaO、SrO、BaO、Y_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Ce_(2)O_(3)、Pr_(2)O_(3)、Nb_(2)O_(3)、Sm_(2)O_(3)、Eu_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Tb_(2)O_(3)、Dr_(2)O_(3)、Ho_(2)O_(3)、Er_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、PbO、WO_(3)、MoO_(3)、V_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、Nb_(2)O_(5)の1種もしくは2種以上を添加したセリア系又はビスマス系、更には、LaGaO_(3)の如きガレート系セラミックも使用可能である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、骨格成分としては、安定化ジルコニア、セリア系、ランタンガレートが好ましく、安定化ジルコニアがより好ましく、特に好ましいのは2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアである。
【0025】
前記導電成分と骨格成分との比率は、これらの合計を100質量%としたとき、導電成分と骨格成分との比(導電成分/骨格成分)を30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%/60質量%以上、70質量%/30質量%以下である。ここで言う導電成分の量は、導電成分が酸化物として存在するときの量で、酸化物に換算した量である。
【0026】
アノード支持基板の厚さ(T1)は、100μm以上が好ましく、より好ましくは120μm以上、さらに好ましくは150μm以上であり、3mm以下が好ましく、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、特に好ましくは500μm以下である。アノード支持基板の厚さが上記範囲内であれば、アノード支持基板の機械的強度とガス通過性をバランス良く両立できる。
【0027】
また、アノード支持基板の空隙率は、20%以上が好ましく、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上であり、50%以下が好ましく、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。アノード支持基板の空隙率が上記範囲内であれば、アノード支持基板の機械的強度とガス通過性をバランス良く両立できる。
【0028】
アノード支持基板上に電解質層が形成されるが、この際、アノード支持基板と電解質層との間にアノード層を設けてもよい。なお、アノード支持基板がアノードとして作用し得る場合には、アノード層は設けなくてもよい。
前記アノード層は、前記アノード支持基板と同様に、導電性を与えるための導電成分と、支持基板の骨格成分となるセラミック質を主たる構成素材とする。導電成分、骨格成分としては、前記アノード支持基板と同様のものが挙げられる。
【0029】
アノード層の厚さは、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、100μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。アノード層の厚さが上記範囲内であれば、電極反応が効率的に行われ、アノード支持型セルとした場合に、発電性能がより良好となる。
【0030】
前記電解質層は、セラミックス質を主成分とする。前記セラミックス質としては、通常電解質層の材料として用いられるものであればとくに限定されず、例えば、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム等で安定化されたジルコニア;イットリア、サマリア、ガドリニア等でドープされたセリア;ランタンガレート、及びランタンガレートのランタン又はガリウムの一部がストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、コバルト、鉄、ニッケル、銅等で置換されたランタンガレート型ペロブスカイト構造酸化物等を使用することができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム等で安定化されたジルコニアが好適である。
【0031】
特に、セラミックス質として、3モル%以上10モル%以下の酸化イットリウムで安定化されたジルコニア、4モル%以上12モル%以下の酸化スカンジウムで安定化されたジルコニア、8モル%以上12モル%以下の酸化スカンジウムと4モル%以上15モル%以下の酸化イッテルビウムで安定化されたジルコニアを用いることが好ましい。また、これらの安定化ジルコニアに、アルミナ、シリカ、チタニア等を焼結助剤や分散強化剤として添加した材料も好適に用いることができる。
【0032】
電解質層の厚さ(T2)は、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。電解質層の厚さが上記範囲内であれば、アノード支持型セルとした場合に、発電性能がより良好となる。
【0033】
電解質層の空隙率は、10%以下が好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。電解質層の空隙率が上記範囲内であれば、電解質層の機械的強度が十分となるとともに、燃料ガスや空気のガスタイト性も良好となる。
【0034】
本発明のアノード支持型ハーフセルの製造方法としては、例えば、アノード支持基板と電解質層とを含む多層焼成体(積層体)を作製する工程;この多層焼成体の周縁部を切断除去する工程を含む方法が挙げられる。多層焼成体の周縁部を切断除去することにより、反り上がった部分が除去され、周縁部の反りが低減されたアノード支持型ハーフセルが得られる。
【0035】
前記アノード支持基板と電解質層とを含む積層体を作製する方法としては、例えば、アノード支持基板グリーンシートと電解質層前駆体とを積層した積層体を形成した後、一括して焼成する方法(態様1);アノード支持基板グリーンシート、アノード層グリーンシート及び電解質層前駆体をこの順で積層した積層体を形成した後、一括して焼成する方法(態様2);アノード支持基板グリーンシートを焼成し、アノード支持基板を作製し、この上に電解質層前駆体を積層し、この積層体を焼成する方法(態様3);アノード支持基板グリーンシートを焼成し、アノード支持基板を作製し、この上にアノード層グリーンシートを積層し、さらにその上に電解質層前駆体を積層し、この積層体を焼成する方法(態様4);等が挙げられる。これらの中でも、態様2が好ましい。以下、前記積層体を形成する方法の一例として前記態様2を説明する。
【0036】
前記アノード層グリーンシート及びアノード支持基板グリーンシートは、導電成分の粉末、骨格成分の粉末及び気孔形成剤を、バインダーと溶媒、及び必要により分散剤や可塑剤等と共に均一に混合してスラリーを調製し、調製したスラリーを、ドクターブレード法、カレンダーロール法、押出し法等任意の方法で平滑なシート(例えばポリエステルシート等)上に適当な厚みで敷き延べ、乾燥して溶剤を揮発除去することにより得られる。
【0037】
前記導電成分粉末は、平均粒子径(D_(50))が0.2μm以上、5μm以下で90体積%径(D_(90))が15μm以下が好ましく、より好ましくは平均粒子径が0.3μm以上、3μm以下で90体積%径が10μm以下、さらに好ましくは平均粒子径が0.4μm以上、2μm以下で90体積%径が8μm以下が好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、粒度分布から求められるメジアン径、すなわち50体積%径(D_(50))をいうものとする。これら平均粒子径と90体積%径は、堀場製作所製のLA-920等のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、0.2質量%メタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒として測定した粒度分布から求めることができる。
【0038】
前記骨格成分粉末は、平均粒子径(D_(50))が0.1μm以上、3μm以下で90体積%径(D_(90))が6μm以下が好ましく、より好ましくは平均粒子径が0.1μm以上、1.5μm以下で90体積%径が3μm以下、さらに好ましくは平均粒子径が0.2μm以上、1μm以下で90体積%径が2μm以下が好ましい。
【0039】
前記気孔形成剤としては、グリーンシート焼成時に焼失するものであればその種類は問わず、アクリル系樹脂等からなる架橋微粒子集合体;小麦粉、トウモロコシ澱粉(コーンスターチ)、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の天然有機質粉体;メラミンシアヌレート等の熱分解性もしくは昇華性の樹脂粉体;カーボンブラックや活性炭等の炭素質粉体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記気孔形成剤の平均粒子径は0.5μm以上、100μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以上、50μm以下が好ましい。また。前記気孔形成剤の10体積%径は0.1μm以上、10μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上、5μm以下である。
【0041】
前記気孔形成剤の使用量は、前記導電成分粉末と骨格成分粉末との合計100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上であり、40質量部以下が好ましく、より好ましくは30質量部以下である。気孔形成剤の使用量を上記範囲内とすることにより、焼成時の熱分解によって適度に気孔が形成され、アノード支持基板及びアノード層のガス透過性や物理的強度がより良好となる。
【0042】
前記バインダーとしては、特に限定されず、従来公知の有機質のバインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えば、エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記溶媒としては、特に限定されず、アルコール類、グリコールエーテル類、脂肪族炭化水素系、ケトン類、エステル類等多種の有機溶剤を使用することができる。前記有機溶剤としては、具体的には、α-テルピネオール、ジヒドロターピネオール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、1-ヘキサノール、グリセリン、ポリエチレングリコール等のアルコール類;ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ケロシン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオールアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも塗工後の乾燥を早めるために、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、アセトン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が好ましい。
【0044】
前記分散剤はセラミックス粉末の解膠や分散を促進するものである。前記分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質;クエン酸、酒石酸等の有機酸;イソブチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体及びそのアンモニウム塩あるいはアミン塩;ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体及びそのアンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
前記可塑剤は、電解質層に柔軟性を付与するものである。前記可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジトリデシル等のフタル酸エステル類;プロピレングリコール等のグリコール類やグリコールエーテル類;フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、セバチン酸系ポリエステル等のポリエステル類が挙げられる。
【0046】
なお、アノード層用スラリー及びアノード支持基板用スラリーの各原料の配合量は、所望の物性に応じて適宜調製すればよい。またスラリーから得られたシートの乾燥条件は、溶媒を蒸発できる程度にすればよく、例えば70℃以上120℃以下程度で1時間以上10時間以下程度加熱すればよい。
【0047】
そして、アノード層グリーンシートとアノード支持基板グリーンシートの積層体を作製する方法としては、アノード層グリーンシート及びアノード支持基板グリーンシートそれぞれ別々に作製し、これらを積層し、加熱プレスすることにより積層体とする方法;アノード支持基板グリーンシートを作製した後、この上にアノード層グリーンシートをスクリーン印刷で形成する方法;等が挙げられる。加熱プレスの条件は、特に限定されず、例えば30℃以上100℃以下程度で、0.2MPa以上2MPa以下、10秒間以上5分間以下プレスすればよい。また、アノード支持基板については、所望の強度を確保するために、複数枚のグリーンシートを積層して用いてもよい。スクリーン印刷は、アノード支持基板グリーンシートあるいは複数のアノード支持基板グリーンシートを積層した積層体の上に、アノード層ペーストをスクリーン印刷する。
【0048】
次に、得られた積層体のアノード層グリーンシート上に前記電解質ペーストをスクリーン印刷する。前記電解質ペーストは、少なくともセラミックス質の原料となるセラミックス粉末及び溶媒を混合して電解質ペーストを調製する。
【0049】
前記セラミックス粉末は、平均粒子径が0.3μm以上、0.7μm以下と微細なものを用いることが好ましい。また、セラミックス粉末としては、粒径分布の小さいものが好適である。具体的には、平均粒子径が0.3μm以上、0.7μm以下であり、且つ、90体積%径(D_(90))が1.2μm以下であるものが好ましく、より好ましくは平均粒子径が0.4μm以上、0.6μm以下であり、90体積%径が1.0μm以下である。
【0050】
前記溶媒としては、特に限定されず、前記アノード層用スラリーの材料として挙げたものから選択して使用することができる。溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、スクリーン印刷により電解質層前駆体を形成する場合、溶媒としては特に限定されず、アルコール類、グリコールエーテル類、脂肪族炭化水素類、ケトン類、エステル類等多種の有機溶剤を使用することができる。前記有機溶剤の具体例としては、α-テルピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオールアセテート、ケロシン、1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ブタノン、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、トルエン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等が好ましい。溶媒の使用量は、特に限定されず、スクリーン印刷を行う際の電解質ペーストの粘度を考慮して適宜調節すればよい。
【0051】
前記電解質ペーストには、セラミックス粒子及び溶媒に加えて、バインダー、分散剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等を添加してもよい。前記バインダー、分散剤や可塑剤は、成膜する電解質前駆体の材料に合わせて、前記アノード層用スラリーの材料として挙げたものから選択して使用することができる。電解質ペーストは、上記成分を適量混合することにより調製する。その際、各粒子を細かくしたり粒子径を均一化するために、ボールミル等を用いて粉砕しつつ混合してもよい。また、各成分の添加の順番は特に制限されず、従来方法に従えばよい。
【0052】
アノード層グリーンシート上に電解質ペーストを成膜する際のスクリーン印刷は、従来行われている方法と同様に行えばよい。アノード層グリーンシート上に塗工された電解質ペーストは、乾燥して溶剤を揮発除去する。電解質ペーストの乾燥条件は、溶媒を蒸発できる程度にすればよく、例えば70℃以上120℃以下程度で15分間以上10時間以下程度加熱すればよい。
【0053】
アノード支持基板グリーンシート、アノード層グリーンシート及び電解質層前駆体をこの順で積層した積層体の焼成温度は、1100℃以上が好ましく、より好ましくは1200℃以上、さらに好ましくは1290℃以上であり、1500℃以下が好ましく、より好ましくは1400℃以下、さらに好ましくは1330℃以下である。また、焼成時の焼成時間は、0.1時間以上が好ましく、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1時間以上であり、10時間以下が好ましく、より好ましくは7時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。
【0054】
多層焼成体の周縁部を切断する方法としては、レーザー切断装置、ダイヤモンドカッターを用いる方法が挙げられる。これらの中でもレーザー切断装置を用いることが好ましい。レーザー切断装置を用いることにより、切断後の断面への微小クラックの発生を抑制でき、また、曲面加工も容易に行うことができる。なお、レーザー切断装置を用いた場合、レーザーによって局所的に加熱されることで、アノード支持基板と電解質層との熱膨張差に起因する反りを生じることがある。しかし、アノード支持基板や電解質層の空隙率を調整することにより、この熱膨張差に起因する反りの発生を低減することができる。
【0055】
切断除去においては、焼成後の多層焼成体の全長を100%としたとき、周縁端部から切断部までの距離を5%以上とすることが好ましく、より好ましくは7%以上、さらに好ましくは9%以上であり、20%以下とすることが好ましく、より好ましくは17%以下、さらに好ましくは15%以下である。周縁端部から切断部までの距離を上記範囲内とすれば、反り上がりを十分に低減することができ、且つ、多層焼成体の無駄を抑えることができる。
【0056】
周縁部の切断除去は、多層焼成体の全周について行うが、周縁端部から切断部までの距離は、全周縁について統一することが好ましい。焼成後の多層焼成体は、その周縁部が全周にわたって同程度の反り上がりが生じている。よって、全周を同程度に切断除去することにより、切断処理後のアノード支持型ハーフセルの周縁部も、その周縁部が全周にわたって同程度の反りが残存するようになる。このように、全周縁端の反りが同程度であれば、セルスタックとして多層積層した場合の割れや破損を一層抑制できる。なお、周縁部の一部分を除去した場合や、多層焼成体の中央部で分割した場合には、切断処理後のアノード支持型ハーフセルは、周縁部の反りに偏りが生じることとなり、セルスタックとして多層積層されて大きな積層荷重を受けた際に、反りに起因する局部的な応力集中による割れや破損等を生じることがある。
【0057】
アノード支持型セル
本発明のアノード支持型セルは、前記アノード支持型ハーフセルにおいて、前記電解質の前記アノード層が積層された面と反対の面に、カソード層が形成されている。上述したように前記アノード支持型ハーフセルは、周縁部の反りが低減されているため、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できる。よって、本発明のアノード支持型セルは、カソード層の厚さが均一であり、且つ、印刷抜けによる欠陥が低減されている。また、本発明のアノード支持型セルは、周縁部の反りが低減されており、セルスタックとして多層積層した場合でも割れや破損を生じ難く、且つ、周縁部のシール性に優れている。
【0058】
前記カソード層は、カソード層材料を、バインダーと溶媒、及び必要により分散剤や可塑剤等と共に均一に混合してペーストを調製し、調製したペーストを電解質層上にスクリーン印刷等により塗工し、乾燥、焼成することで形成できる。
【0059】
前記カソード層材料としては、電子導電性に優れ、酸化雰囲気下でも安定なペロブスカイト形酸化物からなるものが一般的に用いられる。具体的には、La_(0.8)Sr_(0.2)MnO_(3)、La_(0.6)Sr_(0.4)CoO_(3)、La_(0.6)Sr_(0.4)FeO_(3)、La_(0.6)Sr_(0.4)Co_(0.2)Fe_(0.8)O_(3)等、ランタンの一部をストロンチウムで置換したランタンマンガナイト、ランタンフェライトやランタンコバルタイト等がカソード層材料として好ましい。また、カソード層に酸素イオン導電性を付与するために、希土類元素等をドープしたセリアを適宜混合してもよい。
【0060】
カソード層用のペーストに用いられるバインダー、溶媒、分散剤、可塑剤等は、電解質ペーストと同様のものを使用すればよい。なお、各原料の配合量は、所望の物性に応じて適宜調製すればよい。得られたペーストを電解質層上に塗工する方法は、特に限定されないが、スクリーン印刷が好適である。スクリーン印刷は、従来行われている方法と同様に行えばよい。
【0061】
電解質層上に塗工されたカソード層用ペーストを、乾燥、焼成してカソード層を形成する。カソード用ペーストの乾燥条件は、溶媒を蒸発できる程度にすればよく、例えば70℃以上120℃以下程度で15分間以上10時間以下程度加熱すればよい。またカソード層前駆体の焼成条件は、その原料及び厚さに応じて適宜調節すればよいが、例えば、700℃以上1300℃以下程度で2時間以上10時間以下程度焼成すればよい。電解質上に形成されるカソード層の厚さは10μm以上80μm以下が好ましい。
【0062】
固体酸化物形燃料電池
本発明の固体酸化物形燃料電池は、上記アノード支持型セルを有することを特徴とする。上記アノード支持型セルは、その周縁部の反りが低減されている。そのため、上記アノード支持型セルを有する固体酸化物型燃料電池は、アノード支持型セルの割れによる劣化が抑制され、長寿命であるとともに、周縁部のシール性に優れ、動作時のガス漏れが抑制され、発電効率が向上する。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0064】
1.周縁部の反り
アノード支持型ハーフセルを電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式非接触三次元形状測定装置(UBM社製、商品名「UBM1-14型」マイクロフォーカス エキスパート)を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより、電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)を測定し、差(Δh)を求めた。
なお、測定装置の仕様は、光源;半導体レーザー(780nm)、スポット径;1μm、垂直分離能;0.01μmであり、スキャンピッチは0.2mmとした。
【0065】
2.アノード支持基板、電解質の空隙率
製造例で作製したアノード支持型ハーフセルを切断し、走査型電子顕微鏡を用いて断面の10,000倍拡大写真を撮影した。得られた断面拡大写真における任意の厚さ方向5μm×平面方向10μmの領域をMicrosoft社の画像作成用ソフトであるペイント(登録商標)Ver.5.1に取り込み、白黒表示に変換した。かかる画像では、空隙部分は黒色で表示され、充填部分は白色で表示される。得られた画像をImage Metrology社製のイメージ解析ソフトである走査型プローブイメージプロセッサーVer.4.5.1.0(以下、「SPIP」という)を用いて、画像に占める空隙部分の割合を求めた。なお、処理前の画像では黒色と白色の中間である灰色部分が存在するが、誤差を低減するために、SPIPにおける0?20,000のグレースケールを8,000に設定することにより黒色部分と白色部分とのコントラストを明確にした。
【0066】
3.荷重割れ試験
表面が平滑で平行度を保った2枚のアルミナ板(ニッカトー社製、「SSA-S」)にハーフセルを挟んだ状態で設置した。上部アルミナ板の上から、材料試験機(インストロン社製、「4301型」)を用いて圧縮荷重をかけていき、ハーフセルが割れた際の圧縮荷重を測定した。圧縮荷重は、2.0kN(200kgf)を最大とし、圧縮荷重2.0kNでも割れない場合は、「割れなし」と評価した。
【0067】
4.スクリーン印刷によるカソード電極形成の安定性及びアノード支持型セルのシール性
製造例で得られた一辺75mmの正方形のアノード支持型ハーフセル上に、カソード層ペーストを、一辺60mmの正方形にスクリーン印刷することで、カソード層グリーンシートを形成した。
ここでカソードペーストは以下の様にして調整した。カソード粉末としてLa_(0.6)Sr_(0.4)Co_(0.2)Fe_(0.8)O_(3)粒子(セイミケミカル社製)60質量部、バインダーとしてエチルセルロース(和光純薬工業社製)5質量部、溶媒としてα-テルピネオール(和光純薬工業社製)40質量部、可塑剤としてジブチルフタレート(和光純薬工業社製)6質量部、分散剤としてソルビタン酸エステル系界面活性剤(三洋化成社製、商品名「イオネット(登録商標)S-80」)5質量部を乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M-80S」、ロール材質;アルミナ)を用いて解砕した。
【0068】
製膜後、100℃で30分間乾燥した後のカソード層グリーンシートの厚さをマイクロメータで測定した。測定は、カソード層を1片1cmの正方形の格子に区分して、この格子点上について、1枚あたり計25点測定した。なお、測定では、アノード支持型ハーフセルとカソード層グリーンシートの合計厚さを測定し、その値からアノード支持型ハーフセルの厚さを減じてカソード層グリーンシートの厚さとした。測定した厚さの標準偏差を求めることで、カソード層形成の安定性の評価とした。
【0069】
また、このカソード層を1000℃で2時間焼成して、アノード支持型セルを作製した。このセルのシール性を評価するため、セル周縁部3mmの部分にシール材としてガラスペーストを塗布し、インターコネクタで挟んでセルの電気性能評価装置にセットした。その後、セルを800℃まで昇温し、3%加湿水素をアノード側へ導入して、開回路起電圧(OCV)を測定した。理論起電圧は、約1.10Vである。OCVが理論起電圧より大きく低下しているものは、シール部分が十分に機能していないため燃料ガスがリークしている。よって、OCVが小さいものほど、シール性が悪いと判断できる。
【0070】
5.アノード支持基板、アノード層、電解質層の厚さ
製造例で得たアノード支持型ハーフセルを厚さ方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、各層の厚さを測定した。
【0071】
製造例1
1-1.アノード支持基板グリーンシートの作製
導電成分としての酸化ニッケル(正同化学社製、平均粒子径0.7μm、90体積%径1.2μm)60質量部、骨格成分としての3モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(第一希元素社製、商品名「HSY-3.0」、平均粒子径0.7μm、90体積%径1.9μm)40質量部、空孔形成剤としてのカーボンブラック(SECカーボン社製、SGP-3、平均粒子径3.3μm、10体積%径1.5μm)10質量部、溶媒としてのトルエン60質量部とエタノール40質量部の混合溶剤、バインダーとしてのブチラール樹脂(積水化学社製、品名「BM-S」)10質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業社製)3質量部、分散剤としてのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤2質量部を、ボールミルにより混合し、スラリーを調製した。
得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、70℃で5時間乾燥させて、厚さ300μmのアノード支持基板グリーンシートを作製した。
【0072】
1-2.アノード層グリーンシートの作製
導電成分としての酸化ニッケル(キシダ化学社製、平均粒子径0.75μm、90体積%径1.4μm)60質量部、骨格成分としての3モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(第一希元素社製、商品名「HSY-3.0」、平均粒子径0.7μm、90体積%径1.9μm)40質量部、空孔形成剤としてのカーボンブラック(SECカーボン社製、SGP-3、平均粒子径3.3μm、10体積%径1.5μm)6質量部、溶媒としてのトルエン60質量部とエタノール40質量部の混合溶剤、バインダーとしてのブチラール樹脂(積水化学社製、品名「BM-S」)10質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業社製)3質量部、分散剤としてのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤2質量部を、ボールミルにより混合し、スラリーを調製した。
得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、100℃で1時間乾燥させて、厚さ20μmのアノード層グリーンシートを作製した。
【0073】
1-3.アノード層グリーンシートとアノード支持基板グリーンシートの積層体の作製
上記で得たアノード支持基板グリーンシートの上部に上記で得たアノード層グリーンシートを積層した。アノード支持基板グリーンシートとアノード層グリーンシートを積層したものを、ホットプレス機を用いて、60℃、0.5MPa、30秒間熱プレスし、積層体を作製した。
【0074】
1-4.電解質膜の形成
セラミックス粉末として、スカンジア安定化ジルコニア未焼結粉末(第一希元素社製、商品名「10Sc1CeSZ」、平均粒子径0.60μm)60質量部、バインダーとしてエチルセルロース(和光純薬工業社製)を5質量部、溶媒としてα-テルピネオール(和光純薬工業社製)を40質量部、可塑剤としてジブチルフタレート(和光純薬工業社製)を6質量部、分散剤としてソルビタン酸エステル系界面活性剤(三洋化成社製、商品名「イオネットS-80」)5質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M-80S」、ロール材質;アルミナ)を用いて解砕した。
【0075】
解砕後の電解質ペーストをスクリーン印刷により、上記で得た積層体のアノード層グリーンシート上に、厚さ15μmとなるように印刷し、100℃で30分間乾燥させた。乾燥後、一辺が100mmの正方形状に打抜き、アノード支持基板グリーンシート、アノード層前駆体及び電解質層前駆体の積層体を作製した。該積層体を1300℃、2時間焼成して、多層焼成体を作製した。焼成後の多層焼成体は、一辺が85mmの正方形状であった。また、アノード支持基板の厚さは250μm、アノード層の厚さは15μm、電解質層の厚さは10μmであった。アノード支持基板の厚さ(T1)と電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)は、0.04であった。また、アノード支持基板の空隙率は32%、電解質層の空隙率は5%であった。作製した多層焼成体の内2枚(それぞれ多層焼成体A、多層焼成体Bとする。)について、周縁部の反りを測定した。結果を図1、3に示した。
【0076】
レーザー切断装置(住友重機械メカトロニクス社製YAGレーザ装置、型式「JK702H」)を用いて、焼成後の多層焼成体の周縁部を切断除去してアノード支持型ハーフセルを得た。具体的には、焼成後のアノード支持型ハーフセルの周縁端から10mmの部分を、全て除去した。上記多層焼成体Aの周縁部を除去したアノード支持型ハーフセルA、上記多層焼成体Bの周縁部を除去したアノード支持型ハーフセルBについて、周縁端部の反りを測定した。結果を図2、4に示した。
【0077】
製造例2
製造例1と同様にして、アノード支持基板グリーンシート、アノード層前駆体及び電解質層前駆体の積層体を作製した。ただし、打ち抜く大きさを、一辺が77mmの正方形状にした。その後、製造例1と同様に、該積層体を1300℃、2時間焼成して、多層焼成体を作製した。焼成後の多層焼成体は、一辺が65mmの正方形状であった。また、アノード支持基板の厚さは、250μm、アノード層の厚さは15μm、電解質層の厚さは10μmであった。
【0078】
前記製造例1に記載した方法でアノード支持型ハーフセルを複数枚作製し、製造例2に記載した方法で多層焼成体を複数枚作製した。得られたアノード支持型ハーフセル、多層焼成体について、周縁部の反り等を評価し、結果を表1?3に示した。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示したように、Δhが89μm以下である製造例1で得られたアノード支持型ハーフセルは、いずれも圧縮荷重2.0kNでも割れなかった。これに対してΔhが89μmを超える製造例2の多層焼成体では、1.5kN、1.7kNで割れてしまった。これらの結果から、Δhを89μm以下とすることにより、セルスタックとして多層積層されて大きな積層荷重を受けた際にも、割れや破損等を生じることを抑制できることがわかる。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示したように、Δhが89μm以下である製造例1で得られたアノード支持型ハーフセルは、カソード層厚さの標準偏差が3μm以下であり、厚さの均一性に優れていることがわかる。これに対して、Δhが89μmを超える製造例2の多層焼成体では、カソード層厚さの標準偏差が5μmを超えており、その厚さが非常にバラついていることがわかる。これらの結果から、Δhを89μm以下とすることにより、スクリーン印刷によりカソード層を安定して形成できることがわかる。
【0083】
【表3】

【0084】
表3に示したように、Δhが89μm以下である製造例1で得られたアノード支持型ハーフセルは、いずれもOCVが1V以上であり、シール性に優れていることがわかる。これに対して、Δhが89μmを超える製造例2の多層焼成体では、いずれもOCVが0.8未満と小さく、シール性が悪いことがわかる。これらの結果から、Δhを89μm以下とすることにより、周縁部のシール性に優れたアノード支持型セルが得られることがわかる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有するアノード支持型ハーフセルであって、
前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、
前記電解質層の空隙率は10%以下であり、
前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.04?0.35であり、
前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、
前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、
前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、
前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であり、
前記電解質層は、セラミックス質を主成分として含み、
前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであり、
前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であることを特徴とするアノード支持型ハーフセル。(ただし、前記アノード支持基板が炭化ケイ素及び酸化ケイ素から選択されるケイ素化合物を約0.5重量%?10重量%含むハーフセルを除く。)
【請求項2】
前記アノード支持基板の厚さは100μm以上、3mm以下、
前記アノード層の厚さは5μm以上、100μm以下、
前記電解質層の厚さは5μm以上、50μm以下、
である請求項1に記載のアノード支持型ハーフセル。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1または2に記載のアノード支持型ハーフセルにカソード層を形成したことを特徴とするアノード支持型セル。
【請求項5】
前記カソード層の厚さの標準偏差は3μm以下である請求項4に記載のアノード支持型セル。
【請求項6】
請求項4または5に記載のアノード支持型セルを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
アノード支持基板と、アノード層と、電解質層とをこの順番で有するアノード支持型ハーフセルであって、
前記アノード支持基板の空隙率は20%以上、
前記電解質層の空隙率は10%以下であり、
前記アノード支持基板と前記アノード層は導電成分と骨格成分とを含み、
前記導電成分は、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄、及びこれらの酸化物よりなる群から選択される1種以上、
前記骨格成分は、2.5?12モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、または3?15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニアであり、
前記導電成分と前記骨格成分の比率は、前記導電成分と前記骨格成分の合計を100質量%としたとき、前記導電成分と前記骨格成分との比(導電成分/骨格成分)が30質量%/70質量%以上、80質量%/20質量%以下であり、
前記電解質層は、セラミックス質を主成分として含み、
前記セラミックス質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、及び酸化イッテルビウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種で安定化されたジルコニアであり、
前記アノード支持型ハーフセルの前記電解質層が上面となるように載置し、レーザー光学式三次元形状測定装置を使用し、電解質層表面にレーザー光を照射してその反射光を三次元解析することにより求められる電解質層周縁端部の高さ(h1)と、その周縁端部からハーフセルの中心方向に3mmの位置における電解質層の高さ(h2)との差(Δh)が89μm以下であるアノード支持型ハーフセルの製造方法であって、
前記アノード支持基板と前記電解質層とを含む多層焼成体を作製する工程と、
前記多層焼成体の周縁部を切断除去する工程と、
を有することを特徴とするアノード支持型ハーフセルの製造方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記アノード支持基板の厚さは100μm以上、3mm以下、
前記アノード層の厚さは5μm以上、100μm以下、
前記電解質層の厚さは5μm以上、50μm以下、
である請求項7に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
【請求項11】
前記アノード支持基板の厚さ(T1)と前記電解質層の厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.003?0.35である請求項7または10に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
【請求項12】
前記周縁部を切断除去する工程は、レーザー切断装置を用いて切断除去するものである請求項7、10、11のいずれか1項に記載のアノード支持型ハーフセルの製造方法。
【請求項13】
請求項7、10、11、12のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたアノード支持型ハーフセルにスクリーン印刷でカソード層を形成するものであるアノード支持型セルの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-07 
出願番号 特願2011-67868(P2011-67868)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 113- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 敬士  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 小川 進
土屋 知久
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5932232号(P5932232)
権利者 株式会社日本触媒
発明の名称 アノード支持型ハーフセル及びこれを用いたアノード支持型セル、並びにアノード支持型ハーフセルの製造方法  
代理人 伊藤 浩彰  
代理人 菅河 忠志  
代理人 植木 久一  
代理人 植木 久彦  
代理人 植木 久一  
代理人 植木 久彦  
代理人 菅河 忠志  
代理人 伊藤 浩彰  

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