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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1340075
異議申立番号 異議2017-700423  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-27 
確定日 2018-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6023128号発明「両底貼り袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6023128号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6023128号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6023128号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成26年8月4日(優先権主張 平成26年3月25日、日本国)に特許出願され、平成28年10月14日にその特許権の設定登録がされ、平成28年11月9日に特許掲載公報が発行された。
その後、平成29年4月27日に、請求項1に係る特許について、特許異議申立人山本陽一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年8月30日付けで取消理由が通知され、平成29年10月30日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、平成29年11月10日付けで申立人に対し本件訂正請求があった旨の通知がなされたが、申立人から意見書は提出されなかった。

2.本件訂正請求についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記一方の底面(2)の展開面(2A)に貼着された内補強紙(16)であって、
前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、
前記袋本体(1)の内側に連通する孔(17a)であって、当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)が形成された内補強紙(16)を備え、
前記内補強紙(16)は、
前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
前記孔(17a)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が内方に折り込まれた状態となっており、
前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吹込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分が、貼り合わされた状態となっており、
さらに前記一方の底面(2)に、外補強紙(5)が貼着された状態となっている
両底貼り袋であって、
前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、
切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を折り返すことで前記袋本体(1)の内側に連通する孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)であって、当該切り込み(17b)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い切り込み(17b)が入れられた内補強紙(16)が用意され、
前記内補強紙(16)は、
前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
前記切り込み(17b)および前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が内方に折り込まれた状態となっている」との記載を、
「前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を、前記袋本体(1)の内側とは反対の表側に折り返すことで前記袋本体(1)の前記内側に連通する孔(17a)であって、当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)であって、当該切り込み(17b)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い切り込み(17b)が入れられた内補強紙(16)が備えられ、
前記内補強紙(16)は、
前記一方の底面(2)の展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着され、前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
前記孔(17a)のうち前記袋本体折筋(9、10)よりも外側の部分が、当該袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
前記切り込み(17b)および前記袋本体(1)の前記内側とは反対の前記表側に折り返された前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が、前記袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吸込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分であって、前記折り返し箇所(17c)を含む部分が、前記内方に折り込まれた前記内補強紙(16)によって貼り合わされた状態となっており、
さらに前記一方の底面(2)に、外補強紙(5)が貼着された状態となっている」に訂正する。

(2)訂正の適否
訂正の適否を判断するに当たり、本件訂正に係る上記記載を以下に示す事項に分説して検討する。
《訂正前の記載》
a: 前記一方の底面(2)の展開面(2A)に貼着された内補強紙(16)であって、
b: 前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、
c: 前記袋本体(1)の内側に連通する孔(17a)であって、
d: 当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)が形成された
e:内補強紙(16)を備え、
f: 前記内補強紙(16)は、
前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
g: 前記孔(17a)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が内方に折り込まれた状態となっており、
h: 前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吹込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分が、貼り合わされた状態となっており、
i: さらに前記一方の底面(2)に、外補強紙(5)が貼着された状態となっている
両底貼り袋であって、
j: 前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、
k: 切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を折り返すことで前記袋本体(1)の内側に連通する孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)であって、
l: 当該切り込み(17b)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い切り込み(17b)が入れられた
m:内補強紙(16)が用意され、
n: 前記内補強紙(16)は、
前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
o: 前記切り込み(17b)および前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が内方に折り込まれた状態となっている

《訂正後の記載》
A: 前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、
B:切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を、前記袋本体(1)の内側とは反対の表側に折り返すことで
C:前記袋本体(1)の前記内側に連通する孔(17a)であって、
D:当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)であって、
E:当該切り込み(17b)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い切り込み(17b)が入れられた
F:内補強紙(16)が備えられ、
G: 前記内補強紙(16)は、
前記一方の底面(2)の展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着され、
H:前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
I: 前記孔(17a)のうち前記袋本体折筋(9、10)よりも外側の部分が、当該袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
J: 前記切り込み(17b)および前記袋本体(1)の前記内側とは反対の前記表側に折り返された前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が、前記袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
K: 前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吸込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分であって、前記折り返し箇所(17c)を含む部分が、前記内方に折り込まれた前記内補強紙(16)によって貼り合わされた状態となっており、
L: さらに前記一方の底面(2)に、外補強紙(5)が貼着された状態となっている

本件訂正は、以下のア.及びイ.に示すように、訂正前の記載では、例えば、事項eとmや、fとnにみられるように、冗長に記載されていた「内補強紙(16)」の構造を特定する事項及び「両底貼り袋」と「内補強紙(16)」との関係を特定する事項を、訂正前の請求項1の記載に基いて整理することで簡潔かつ明瞭な記載にするとともに、当該事項の一部を本件特許明細書の記載に基いてさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び同ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ア.「内補強紙(16)」の構造を特定する事項について
事項AないしE及び事項Hは、「内補強紙(16)」の構造を特定する事項である。
ここで、事項A、C、Eは、各々、事項b、c、lとして、事項Hは、事項f及びnとして、訂正前の請求項1に記載されていた事項である。
また、事項Bは、事項kとして訂正前の請求項1に記載されていた「切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を折り返す」方向が、「前記袋本体(1)の内側とは反対の表側に」であることを、本件特許明細書の段落【0029】の「図2(c)に示すように、内補強紙16において、切り込み17bが入れられた折り返し箇所17cを矢印に示すように表側へ折り返すことで袋本体1の内側に連通する孔17aを形成することができる。」との記載及び【図2】(b)、(c)、【図3】(a)ないし(c)の記載に基いて限定するものである。
そして、事項Dは、訂正前の請求項1において、事項dに「当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)」として記載され、事項kに「・・・前記袋本体(1)の内側に連通する孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)」として記載されていた事項を整理したものといえる。

イ.「両底貼り袋」と「内補強紙(16)」との関係を特定する事項について
事項F、G及びIないしLは、「両底貼り袋」と「内補強紙(16)」との関係を特定する事項である。
ここで、事項Fは、訂正前の請求項1における、事項eの「内補強紙(16)を備え」との記載及び事項mの「内補強紙(16)が用意され」との冗長な記載を整理し、「内補強紙(16)」が、「両底貼り袋」に「備えられ」るものであることを明瞭化したものといえる。
また、事項Gは、事項aとして訂正前の請求項1に記載されていた「内補強紙(16)」が「貼着された」部分が、「前記一方の底面(2)の展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに」であることを、【図3】(a)及び(b)の記載に基いて限定するものである。
また、事項Iは、事項gとして訂正前の請求項1に記載されていた「前記孔(17a)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分」が「折り込まれた」「内方」が、「当該袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である」であることを、【図3】(b)及び(c)の記載に基いて限定するものである。
また、事項Jは、事項oとして訂正前の請求項1に記載されていた「前記切り込み(17b)および前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が内方に折り込まれた状態となっている」との記載における「前記折り返し箇所(17c)」が、「前記袋本体(1)の前記内側とは反対の前記表側に折り返された」ものであり、かつ、「内方」が、「前記袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である」ことを、本件特許明細書の段落【0029】の「図2(c)に示すように、内補強紙16において、切り込み17bが入れられた折り返し箇所17cを矢印に示すように表側へ折り返すことで袋本体1の内側に連通する孔17aを形成することができる。」との記載及び【図2】(b)、(c)、【図3】(a)ないし(c)の記載に基いて限定するものである。
また、事項Kは、事項hとして訂正前の請求項1に記載されていた「前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吹込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分が、貼り合わされた状態となっており」との記載における「除く部分」が、「前記折り返し箇所(17c)を含む部分」であり、かつ、当該「除く部分」が、「前記内方に折り込まれた前記内補強紙(16)によって」、「貼り合わされた状態となって」いることを、【図3】(b)及び(c)の記載に基いて限定するものである。
そして、事項Lは、事項iとして、訂正前の請求項1に記載されていた事項である。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記2.のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
筒状の袋本体(1)の開口端部が折り曲げられた状態の両底面を有する両底貼り袋において、
前記両底面は、袋本体(1)の開口端部の左右両側が内方に折り曲げられた左右の三角形状の折込部(7、8)を有する展開面(2A)と、前記展開面(2A)の上下に左右方向に延びる袋本体折筋(9、10)それぞれが折曲線として内方に折り曲げられて重ね合わせられた2つの折込部(11、12)とを有しており、
前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を、前記袋本体(1)の内側とは反対の表側に折り返すことで前記袋本体(1)の前記内側に連通する孔(17a)であって、当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)であって、当該切り込み(17b)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い切り込み(17b)が入れられた内補強紙(16)が備えられ、
前記内補強紙(16)は、
前記一方の底面(2)の展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着され、前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
前記孔(17a)のうち前記袋本体折筋(9、10)よりも外側の部分が、当該袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
前記切り込み(17b)および前記袋本体(1)の前記内側とは反対の前記表側に折り返された前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が、前記袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吸込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分であって、前記折り返し箇所(17c)を含む部分が、前記内方に折り込まれた前記内補強紙(16)によって貼り合わされた状態となっており、
さらに前記一方の底面(2)に、外補強紙(5)が貼着された状態となっていることを特徴とする両底貼り袋。

(2)取消理由の概要
当審において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
なお、上記取消理由通知において申立人の特許異議申立理由は全て通知された。

《理由1》
本件発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である、甲1?甲4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
《理由2》
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号及び第3号に規定する要件を満たしていない。


《刊行物》
甲1.特開2002-326640号公報
甲2.米国特許第3143936号明細書
甲3.特開昭62-4059号公報
甲4.特開2001-328643号公報

甲1ないし甲4は、本件特許異議の申立ての甲第1号証ないし甲第4号証である。

《理由1について》
本件発明は、甲1に記載された発明、甲2ないし甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明は、甲2に記載された発明、甲1、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

《理由2について》
本件発明の「内補強紙(16)が用意され」は、物の発明である本件発明において如何なる構造等を特定しようとしているのかが明確でないから、本件発明は明確でない。
また、本件発明は、重複的な記載を含む発明特定事項があるから、その記載が簡潔とはいえない。

(3)判断
事案に鑑み、理由2から判断する。
ア.理由2について
上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、訂正前の「内補強紙(16)が用意され」なる記載は、「内補強紙(16)が備えられ」と訂正され、本件発明における「内補強紙(16)」は「両底貼り袋」に「備えられ」たものであることが明確となり、また、重複的な記載を含む発明特定事項がなくなったため、理由2については、理由のないものとなった。

イ.理由1について
(ア)甲1に記載された発明
甲1の【請求項1】、段落【0007】ないし【0010】、【0012】及び【図1】の記載からみて、甲1には以下の甲1発明が記載されている。
《甲1発明》
紙筒の開口端部が折り曲げられた状態の両底面を有する両底ばり袋において、
前記開口端部の片面は、紙筒の開口端部の左右両側が内方に折り曲げられた左右の三角形状の折り込み部を有する面と、開口端部の両面を端線と平行な一対の第2折線に沿って順に山折りし、その折り返した一対の台形状の部分を有しており、
補強バルブが備えられ、
前記補強バルブは、上記紙筒の底端部と重なる領域から反対側の三角形状の折り込み部の端線にかけて貼り付けられており、
上記開口端部の片面に、化粧紙が、前記補強バルブ及び前記化粧紙の順に貼り付けられた、両底ばり袋。

(イ)甲2に記載された発明
甲2の第3欄第24ないし31行、第4欄第42ないし59行、第5欄第7ないし28行、第6欄第15ないし45行及びFIG.2ないしFIG.7の記載からみて、甲2には以下の甲2発明が記載されている。
《甲2発明》
バッグチューブB(bag tube B)の端部(one end)がクロージャー(closure)を有する袋(bag)であって、
前記クロージャーは、端部フラップ3、5(end flap 3,5)と、線L1(line L1)、L2(line L2)に沿って折り畳まれた第一側フラップ(the first side flap 7)、第2側フラップ(the second side flap 9)を有し、
前記端部フラップ3の展開面に貼着され、カフC(cuff C)と、折り目33(crease 33)を折り返すことで前記袋の内側に連通する前記カフCを形成することができ、前記線L1とL2の間の幅よりも長い幅の切り込み25(cut 25)とが形成されたスリーブないしチューブS(sleeve or tube S)を備えた、袋。

(ウ)本件発明と甲1発明との対比、判断
甲1発明の「紙筒」、「第2折線」、「一対の台形状の部分」、「補強バルブ」、「化粧紙」は、各々、本件発明の「筒状の袋本体(1)」、「袋本体折筋(9、10)」、「2つの折込部(11、12)」、「内補強紙(16)」、「外補強紙(5)」に相当する。
そして、本件発明と甲1発明とは、少なくとも次の相違点1で相違する。
《相違点1》
本件発明の「内補強紙(16)」は、「前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を、前記袋本体(1)の内側とは反対の表側に折り返すことで前記袋本体(1)の前記内側に連通する孔(17a)であって、当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)であって、当該切り込み(17b)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い切り込み(17b)が入れられ」、「前記一方の底面(2)の展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着され」、「前記孔(17a)のうち前記袋本体折筋(9、10)よりも外側の部分が、当該袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、前記切り込み(17b)および前記袋本体(1)の前記内側とは反対の前記表側に折り返された前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が、前記袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており」、「前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吸込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分であって、前記折り返し箇所(17c)を含む部分が、前記内方に折り込まれた前記内補強紙(16)によって貼り合わされた状態」となるものであるのに対し、甲1発明の「補強バルブ」は、そのようなものではなく、切り込みや孔を有していない点。
上記相違点1について検討する。
上記相違点1に示した本件発明の「内補強紙(16)」に係る事項は、甲2ないし甲4に記載されておらず、示唆する記載もない。
そして、本件発明は、上記相違点1に示した「内補強紙(16)」に係る事項を発明特定事項とすることにより、本件特許明細書の段落【0013】に記載された「両底貼り袋の製造にあたり、材料を多く必要とせず、精密な調整や調整運転時間を不要として、内容物(粉)の漏れを確実に抑制できる両底貼り袋を市場に提供する」という課題を解決し、段落【0018】、【0046】及び【0047】等に記載された「両底貼り袋の製造にあたり、材料を多く必要とせず、精密な調整や調整運転時間が不要となる。」、「孔17aは開口しているが、内容物の内圧によって漏れを抑えることができる。」、「孔17aに内容物を通して充填する時において切り込み17bの周囲で破れが生じることを防止することができる。」といった格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲1発明及び甲2ないし甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)本件発明と甲2発明との対比、判断
甲2発明の「バッグチューブB(bag tube B)」、「線L1(line L1)、L2(line L2)」、「第一側フラップ(the first side flap 7)、第2側フラップ(the second side flap 9)」、「スリーブないしチューブS(sleeve or tube S)」は、各々、本件発明の「筒状の袋本体(1)」、「袋本体折筋(9、10)」、「2つの折込部(11、12)」、「内補強紙(16)」に相当する。
そして、本件発明と甲2発明とは、少なくとも次の相違点2で相違する。
《相違点2》
本件発明の「内補強紙(16)」は、「前記一方の底面(2)の展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着され」、「前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吸込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分であって、前記折り返し箇所(17c)を含む部分が、前記内方に折り込まれた前記内補強紙(16)によって貼り合わされた状態」となるものであるのに対し、甲2発明の「スリーブないしチューブS(sleeve or tube S)」は、「前記端部フラップ3の展開面に貼着され」るものであって、端部フラップ5には貼着されるものではない点。
上記相違点2について検討する。
上記相違点2に示した本件発明の「内補強紙(16)」に係る事項は、甲1、甲3及び甲4に記載されておらず、示唆する記載もない。
そして、本件発明は、上記相違点2に示した「内補強紙(16)」に係る事項を発明特定事項とすることにより、本件特許明細書の段落【0013】に記載された「両底貼り袋の製造にあたり、材料を多く必要とせず、精密な調整や調整運転時間を不要として、内容物(粉)の漏れを確実に抑制できる両底貼り袋を市場に提供する」という課題を解決し、段落【0018】、【0046】及び【0047】等に記載された「両底貼り袋の製造にあたり、材料を多く必要とせず、精密な調整や調整運転時間が不要となる。」、「孔17aは開口しているが、内容物の内圧によって漏れを抑えることができる。」、「孔17aに内容物を通して充填する時において切り込み17bの周囲で破れが生じることを防止することができる。」といった格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲2発明、甲1、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。
また、本件特許の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第2号及び第3号に規定する要件を満たしてないとはいえないから、同法第113条第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の袋本体(1)の開口端部が折り曲げられた状態の両底面を有する両底貼り袋において、
前記両底面は、袋本体(1)の開口端部の左右両側が内方に折り曲げられた左右の三角形状の折込部(7、8)を有する展開面(2A)と、前記展開面(2A)の上下に左右方向に延びる袋本体折筋(9、10)それぞれが折曲線として内方に折り曲げられて重ね合わせられた2つの折込部(11、12)とを有しており、
前記底面の上下幅(D)よりも広い幅(W)を有し、前記展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着できる程度の左右方向の長さ(L)を有し、切り込み(17b)が入れられた折り返し箇所(17c)を、前記袋本体(1)の内側とは反対の表側に折り返すことで前記袋本体(1)の前記内側に連通する孔(17a)であって、当該孔(17a)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い孔(17a)を形成することができる当該切り込み(17b)であって、当該切り込み(17b)の幅(R)が、前記底面の上下幅(D)よりも長い切り込み(17b)が入れられた内補強紙(16)が備えられ、
前記内補強線(16)は、
前記一方の底面(2)の展開面(2A)における左右の三角形状の折込部(7、8)それぞれに貼着され、前記2つの折込部(11、12)の内側にあって、前記袋本体折筋(9、10)に対応する折曲線としての内補強紙側折筋(16d、16e)を有し、
前記孔(17a)のうち前記袋本体折節(9、10)より外側の部分が、当該袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
前記切り込み(17b)および前記袋本体(1)の前記内側とは反対の前記表側に折り返された前記折り返し箇所(17c)のうち前記袋本体折筋(9、10)より外側の部分が、前記袋本体折筋(9、10)が折り曲げられる方向と同じ方向である前記内方に折り込まれた状態となっており、
前記内補強紙(16)の左右端部のうち一方のノズル吹込み口(16a)側の端部から前記孔(17a)に連通する通路(16c)および前記孔(17a)を除く部分であって、前記折り返し箇所(17c)を含む部分が、前記内方に折り込まれた前記内補強紙(16)によって貼り合わされた状態となっており、
さらに前記一方の底面(2)に、外補強紙(5)が貼着された状態となっていることを特徴とする両底貼り袋。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-14 
出願番号 特願2014-158942(P2014-158942)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 蓮井 雅之
渡邊 豊英
登録日 2016-10-14 
登録番号 特許第6023128号(P6023128)
権利者 山陰製袋工業株式会社 昭和パックス株式会社
発明の名称 両底貼り袋  
代理人 木村 高久  
代理人 木村 高久  
代理人 木村 高久  
代理人 笹野 拓馬  

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