• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1340090
異議申立番号 異議2017-700383  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-18 
確定日 2018-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6011750号発明「電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6011750号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?21〕について訂正することを認める。 特許第6011750号の請求項2?7、10?21に係る特許を維持する。 特許第6011750号の請求項1、8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6011750号(以下「本件特許」という。)の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成28年3月1日(優先権主張 2015年3月10日 日本国、2015年4月1日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月30日にその特許権の設定登録がされた。その後、特許異議の申立て期間内である平成29年4月18日に特許異議申立人成田隆臣(以下「申立人」という。)により請求項1?17に係る特許について特許異議の申立てがされ、平成29年6月9日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年8月14日に意見書が提出され、平成29年9月11日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成29年11月13日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年12月21日に申立人より意見書が提出されたものである。
たものである。

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
平成29年11月13日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6011750号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?21について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、」に訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。」とあるのを、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。」に訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から6のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から6のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1から9のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から7のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1から10のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から7および10のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1から11のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から7および10から11のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1から12のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から7および10から12のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に
「請求項1から13のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から7および10から13のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項15に
「請求項1から14のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から7および10から14のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項16に
「請求項1から15のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」とあるのを、
「請求項2から7および10から15のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」に訂正する。

(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項17に
「前記カバーテープは、請求項1から16のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープである、電子部品用包装体。」とあるのを、
「前記カバーテープは、請求項2から7および10から16のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープである、電子部品用包装体。」に訂正する。

(17) 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含む、電子部品包装用カバーテープ。」
と記載し、新たに請求項18とする。

(18) 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項3を引用するものについて独立形式に改め、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電すろ負の化合物とを含む、電子部品包装用カバーテープ。」
と記載し、新たに請求項19とする。

(19) 訂正事項19
特許請求の範囲の請求項9のうち、請求項1を引用する請求項8を引用するものについて独立形式に改め、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含み、
前記負の化合物の固形分の含有量が、前記正の化合物の固形分と前記負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上である、電子部品包装用カバーテープ。」
と記載し、新たに請求項20とする。

(20) 訂正事項20
特許請求の範囲の請求項9のうち、請求項3を引用する請求項8を引用するものについて独立形式に改め、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含み、
前記負の化合物の固形分の含有量が、前記正の化合物の固形分と前記負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上である、電子部品包装用カバーテープ。」
と記載し、新たに請求項21とする。

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1、7及び8について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものである。訂正事項7は、訂正前の請求項8を削除するものである。また、訂正事項8は、訂正前の請求項9を削除するものである。
したがって、訂正事項1、7及び8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1、7及び8は、訂正前の請求項1、8及び9の記載を削除するのみであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1、7及び8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項1、7及び8は、訂正前の請求項1、8及び9の記載を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項2の「シーラント層」について「前記一方の面側のみに設けられて」いるものであることに限定し、かつ、訂正前の請求項2の「帯電防止層」について「一方の面とは反対側の面のみに設けられて」いるものであることに限定するものであり、また、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5?7、10?17についても同様に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めた上で、訂正前の請求項2の「シーラント層」及び「帯電防止層」について限定するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。また、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5?7、10?17に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2のうち、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めることについては、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。
また、訂正事項2のうち、「前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、」との記載による限定は、本件特許明細書の【0039】、【0044】及び【図1】の記載に基づくものである。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の「シーラント層」について「前記一方の面側のみに設けられて」いるものであることに限定し、かつ、訂正前の請求項3の「帯電防止層」について「一方の面とは反対側の面のみに設けられて」いるものであることに限定するものであり、また、訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4?7、10?17についても同様に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、訂正前の請求項3の「シーラント層」及び「帯電防止層」について限定するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。また、訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4?7、10?17に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3の「前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、」との記載による限定は、本件特許明細書の【0039】、【0044】及び【図1】の記載に基づくものである。
よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(4) 訂正事項4?6について
ア 訂正の目的について
訂正事項4?6は、訂正前の請求項5?7が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、訂正事項1により請求項1が削除されたことに伴い、訂正前の請求項5?7の引用請求項の数を減少させるものである。
よって、訂正事項4?6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4?6は、訂正前の請求項5?7の引用請求項の数を減少させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項4?6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項4?6は、訂正前の請求項5?7の引用請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(5) 訂正事項9?16について
ア 訂正の目的について
訂正事項9?16は、訂正前の請求項10?17が訂正前の請求項1、8及び9を引用する記載であったものを、訂正事項1、7及び8により請求項1、8及び9が削除されたことに伴い、訂正前の請求項10?17の引用請求項の数を減少させるものである。
よって、訂正事項9?16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項9?16は、訂正前の請求項10?17の引用請求項の数を減少させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項9?16は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項9?16は、訂正前の請求項10?17の引用請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(6) 訂正事項17について
ア 訂正の目的について
訂正事項17は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1?7のいずれか1項の記載を引用する記載であったところ、訂正前の請求項8のうち、訂正前の請求項1を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項17は、訂正前の請求項8のうち、訂正前の請求項1を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項17は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項17は、訂正前の請求項8のうち、訂正前の請求項1を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
よって、訂正事項17は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(7) 訂正事項18について
ア 訂正の目的について
訂正事項18は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1?7のいずれか1項の記載を引用する記載であったところ、訂正前の請求項8のうち、訂正前の請求項3を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項18は、訂正前の請求項8のうち、訂正前の請求項3を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項18は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項18は、訂正前の請求項8のうち、訂正前の請求項3を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。

(8) 訂正事項19について
ア 訂正の目的について
訂正事項19は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1?7のいずれか1項の記載を引用する訂正前の請求項8を引用するものであったところ、訂正前の請求項9のうち、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項8を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項19は、訂正前の請求項9のうち、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項8を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項19は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項19は、訂正前の請求項9のうち、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項8を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
よって、訂正事項19は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(9) 訂正事項20について
ア 訂正の目的について
訂正事項20は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1?7のいずれか1項の記載を引用する訂正前の請求項8を引用するものであったところ、訂正前の請求項9のうち、訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項8を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項20は、訂正前の請求項9のうち、訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項8を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項20は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項20は、訂正前の請求項9のうち、訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項8を引用するもののみについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式へと改めたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
よって、訂正事項20は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(10) 一群の請求項について
訂正前の請求項1、2、5?17について、請求項2、5?17はそれぞれ請求項1を直接または間接に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項1、2、5?17は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項3?17について、請求項4?17はそれぞれ請求項3を直接または間接に引用するものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項3?17は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、これら2つの一群の請求項は、請求項5?17において共通する。
よって、これら2つの一群の請求項は組み合わされてひとつの一群の請求項とみなされるから、訂正前の請求項1?17は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とし、同法同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1?21〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?21に係る発明(以下「本件発明1?21」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】(削除)
【請求項2】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(12)としたとき、R_(50)/R_(12)の値が、0.1以上10以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
請求項3に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(12)としたとき、S_(50)/S_(12)の値が、0.2以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの全光線透過率が、80%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの前記帯電防止層の表面に対して、ポリスチレンからなる材料により形成されたシートを重ね合わせ、前記表面に対して前記シートを速度100mm/sで50mmの間隔で2回摩擦させてから5秒後に、23℃、50%RHで測定した摩擦帯電圧が、-1800V以上1800V以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、エステル化合物を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
請求項2から7のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、導電ポリマーを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項11】
請求項2から7および10のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、界面活性剤を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項12】
請求項2から7および10から11のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の膜厚が、1μm以上20μm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項13】
請求項2から7および10から12のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層の表面抵抗値が、23℃、50RH%の条件で10^(5)Ω以上10^(11)Ω以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項14】
請求項2から7および10から13のいずれか1項に記載の電子部品包装用力バーテープであって、
前記シーラント層の膜厚が、1μm以上15μm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項15】
請求項2から7および10から14のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記基材層の全光線透過率が、80%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項16】
請求項2から7および10から15のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの幅が2mm以上100mm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項17】
電子部品を収納する部品収納部が所定の間隔で並んで形成されているキャリアテープと前記キャリアテープに形成された前記部品収納部を覆うように設けられたカバーテープとからなる部品収納テープで構成されており、
前記部品収納テープは、リール状に巻き取り可能であり、
前記カバーテープは、請求項2から7および10から16のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープである、電子部品用包装体。
【請求項18】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項19】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項20】
基材層と、
前記基材眉の一方の両側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含み、
前記負の化合物の固形分の含有量が、前記正の化合物の固形分と前記負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項21】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の側に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含み、
前記負の化合物の固形分の含有量が、前記正の化合物の固形分と前記負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上である、電子部品包装用カバーテープ。

第4 当審の判断
1 取消理由の概要
平成29年6月9日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
なお、当該取消理由は、特許異議申立てされたすべての申立理由を含むものである。

[理由1] 本件特許の請求項1?7、10?17に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[理由2] 本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

(1) 理由1について
[刊行物]
1.特許第4453789号公報
2.村田雄司,帯電防止材料の応用と評価技術,株式会社シーエムシー出版,2008年8月25日,p.55、62?66
3.中道敏彦,特殊機能コーティングの新展開,株式会社シーエムシー出版,2007年9月28日,p.18?20
4.中村彰宏,透明導電膜・フィルムの高透明・低抵抗化と耐久性向上,株式会社技術情報協会,2010年9月30日,p.188?191
5.特開2006-176681号公報
6.特開2008-56716号公報
7.特開2007-131735号公報
8.特開2013-237481号公報
9.寺田千春,電気特性の測定、評価とデータ解釈,株式会社技術情報協会,2015年9月30日,p.124、128?129
(なお、上記刊行物1?9は、申立人が提出した甲第1?9号証に該当し、刊行物9は周知技術(2002年に策定されたIEC規格)を説明するものである。)

(請求項1?4に係る発明について)
湿度変化に対応するという課題に対して、帯電防止層に湿度非依存性を要求することは、従来から周知である(刊行物2?7)。電子部品用包装体の技術分野でも30%RHから50%RH又はIEC規格でも想定される12%RHから50%RH程度の湿度変化は普通に起こり得る周知の事項であって、そうした湿度変化に対応することは、電子部品用包装体に関する刊行物1記載の発明にも内在する課題といえる。また、一般に導電性ポリマーの抵抗値は湿度に非依存であることは周知であり、そのような導電性ポリマーを帯電防止層とした刊行物1記載の発明において、湿度非依存性に着目することは当業者にとって自然なことである。したがって、刊行物1記載の発明において、帯電防止層に湿度非依存性を要求するという周知技術に基いて、導電性ポリマー層の湿度依存性に関する任意のパラメータを制限し、起こり得る湿度変化に対応することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(請求項5?7、10?17に係る発明について)
請求項5?7、10?17に係る発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2?8記載事項及び周知技術(IEC規格)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 理由2について
ア 請求項1記載の「R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下である」、請求項2記載の「R_(50)/R_(12)の値が、0.1以上10以下である」、請求項3記載の「S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下である」、請求項4記載の「S_(50)/S_(12)の値が、0.2以上1以下である」について、各数値範囲における上下限値の技術上の意義が不明である。また、各上下限値を含むすべての範囲において、摩擦帯電防止性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供するという課題を解決し得るとも解しがたい。

イ 請求項1?17に係る発明は、表面抵抗値の絶対値が直接的あるいは間接的に特定されていないから、摩擦帯電防止性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供するという課題を解決し得るとは解せない。

ウ 請求項3記載の「5kV」の摩擦帯電圧を発生させる方法が不明である。本件特許明細書の【0028】記載の方法は、同じ条件の各実施例で1kV未満しか発生していない点からみて、5kVも発生できない蓋然性が高い。正確に5kVを発生させる方法も不明である。

エ 請求項8記載の「正に帯電する正の化合物」及び「負に帯電する負の化合物」の定義が明確でない。

2 取消理由についての判断
(1) 理由1について
(1-1) 刊行物の記載
ア 刊行物1
刊行物1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
電子部品を収納するための収納部を有するキャリアテープを被覆するためのカバーテープであって、上記カバーテープは基材層、中間層、接着層からなり、基材層は合成樹脂製フィルムからなり、その上面にはπ電子共役系導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層が設けられ、中間層は上記基材層と接着層との間に設けられて上記二層を結合させており、接着層はキャリアテープに熱シールするための樹脂からなり、その下面にもπ電子共役系導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層が設けられており、基材層上面の導電性ポリマー層の表面抵抗率が10^(2)?10^(7)Ω/□、接着層下面の導電性ポリマー層の表面抵抗率が10^(7)?10^(15)Ω/□であり、かつ、上記基材層上面の導電性ポリマー層の厚さが、0.05?0.1μm、接着層下面の導電性ポリマー層の厚さが0.001?0.05μmであって、全光線透過率が71.5%以上、曇価が30%以下であることを特徴とする導電性カバーテープ。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャリアテープの収納部に小型電子製品などを収納するための導電性カバーテープに関するものであり、剥離時の帯電防止効果が高く、汎用シール性があり、透明性に優れるカバーテープに関するものである。」
「【0004】
また、カバーテープの接着時や剥離時に、発生する静電気を防止するためには、接着層の下面および剥離面(層)にも導電層を設ける必要がある。しかし、上記▲1▼や▲2▼において、接着層の下面に、金属などの導電性フィラーおよび/または界面活性剤を分散させたり塗布する場合、カバーテープの接着性の不安定化を招く。また、金属粉は、非常に抵抗値が低いので、金属粉が絶縁物質中に離隔した状態で存在する場合、剥離時に静電気放電が発生し、被包装物である小型電子機器、特にICなどを破壊する危険性がある。
このように、剥離時の帯電防止効果が高く、かつキャリアテープの材質、表面状態を問わず、汎用シール性があるカバーテープはなかったのが現状である。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来の技術的課題を背景になされたものであり、剥離時の帯電防止効果が高いため、静電気障害を引き起こさず、キャリアテープの材質や表面状態を問わず、汎用シール性があり、かつ、全光線透過率が高く、曇価も小さいため、近年の高速実装下における小型電子部品の印字チェックやピンチェックなどの検査工程においても支障をきたさないカバーテープを提供することを目的とする。」
「【0009】
本発明においては、基材層の上面あるいは両面、および下記接着層の下面に、π電子共役系導電性ポリマー層が設けられる。π電子共役系導電性ポリマーは、分子構造中に共役二重結合を有し、酸化によって、重合を起こすモノマーを重合してなる、繰り返し単位20?200程度と推定されるポリマーである。上記モノマーとして、代表的なものとしては、アニリンおよびアニリン誘導体、複素5員環式化合物が挙げられる。複素5員環式化合物としては、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、およびこれらの誘導体、例えば、N-メチルピロール、3-メチルピロール、3-メチルチオフェン、3-メチルフラン、3-メチルインドールなどが挙げられる。上記モノマーを、目的とする導電性に応じて選択し、無機酸、有機スルホン酸などのドーパントの存在下に酸化重合剤と接触させることで、π電子共役系導電性ポリマー層を形成することができる。ドーパントとしては、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン類、五フッ化リンなどのルイス酸、塩化水素、硫酸などのプロトン酸、塩化第二鉄などの遷移金属塩化物、過塩素酸銀、フッ化ホウ素銀などの遷移金属化合物などが挙げられる。本発明ではこれらπ電子共役系導電性ポリマーのなかでもポリピロールが好ましい。」
「【0012】
このπ電子共役系導電性ポリマー層の形成は、基材層、中間層、および接着層をラミネートし、ラミネートフィルムの両面に行う。・・・本発明では、基材層、中間層、および接着層をラミネートし、ラミネートフィルムの両面に、π電子共役系導電性ポリマー層の形成を行う。
ここで、上記基材層上面および接着層下面の2つの導電性ポリマー層は、基材層上面の表面抵抗率を10^(2)?10^(7)Ω/□、接着層下面の表面抵抗率を10^(7)?10^(15)Ω/□となるように形成することが好ましい。2つの導電性ポリマー層の厚さは、カバーテープの全光線透過率、曇価、およびキャリアテープとの接着性に大きく影響する。基材層や接着層の厚さは、全光線透過率によって適宜決定される。例えば、基材層上面の導電性ポリマー層の厚さは、好ましくは0.05?0.1μmである。0.05μm未満であると充分な帯電防止性が得られず、一方、0.1μmを超えると、透明性に劣る。また、接着層下面の導電性ポリマー層の厚さは、好ましくは0.001?0.05μmである。0.001μm未満であると充分な帯電防止性が得られず、一方、0.05μmを超えると、シール性が著しく低下する。
【0013】
このπ電子共役系導電性ポリマー層の表面抵抗率としては、JIS K-6911に準拠して測定した場合、基材層上面のものは、好ましくは10^(2)?10^(7)Ω/□である。表面抵抗率が10^(2)Ω/□未満であると、カバーテープの全光線透過率が著しく低下してしまい、一方、10^(7)Ω/□を超えると、本発明のカバーテープの目的とする充分な帯電防止性が得られない。
また、接着層下面のものは、好ましくは10^(7)?10^(15)Ω/□である。表面抵抗率が10^(7)Ω/□未満であるとシール性が著しく低下する。一方、10^(15)Ω/□を超えると充分な帯電防止性能が得られない。
上記基材層上面および接着層下面の2つの導電性ポリマー層の表面抵抗率の調整は、上記厚さの調整を行うことによりできる。」
「【0016】
接着層(シーラント)として用いられる材料は、透明性を有する、キャリアテープと熱シール可能なシーラントであればどのようなものでもよい。・・・
接着層の厚さは、熱シール可能であれば、どのような厚さでもよいが、好ましくは50μm以下である。50μmを超えると、全光線透過率および曇価が低下する。」
「【0021】
本発明のカバーテープの全光線透過率(JIS K-7105の試験方法で測定)は、71.5%以上である。全光線透過率がこれ未満ではカバーテープの上から内部の収納電子部品を容易に確認することが難しくなり、好ましくない。」
「【0023】
本発明では、基材層の少なくとも上面に導電性の高い導電性ポリマー層、接着層の下面に薄膜の導電性ポリマー層を形成させることにより、静電気帯電を抑制し、静電気による障害を起こさないカバーテープを得ることができる。」
「【0025】
表面抵抗率
JIS K-6911に準じて測定した。測定条件は、23℃、50%RHで、印圧10V、単位はΩ/□である。」
「【0026】
キャリアテープへの熱シール
カバーテープを5.5mm幅にスリット加工後、8mm幅の4種類のキャリアテープとの熱シールを行った。」

これらの記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「電子部品を収納するための収納部を有するキャリアテープ12を被覆するためのカバーテープ11であって、 上記カバーテープ11は5.5mm幅であって、基材層2、中間層3、接着層4からなり、
基材層2は合成樹脂製フィルムからなり、その上面にはπ電子共役系導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層1が設けられ、
中間層3は上記基材層2と接着層4との間に設けられて上記二層を結合させており、
接着層4はキャリアテープに熱シールするための樹脂からなり、その下面にもπ電子共役系導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層1が設けられており、
基材層上面の導電性ポリマー層1の表面抵抗率が10^(2)?10^(7)Ω/□、接着層下面の導電性ポリマー層1の表面抵抗率が10^(7)?10^(15)Ω/□であり、かつ、
上記基材層上面の導電性ポリマー層1の厚さが、0.05?0.1μmであり、
接着層下面の導電性ポリマー層1の厚さが0.001?0.05μmであり、
全光線透過率が71.5%以上、曇価が30%以下である、
上記導電性カバーテープ11。」

イ 刊行物2
刊行物2には、次の事項が記載されている。
「(2)電子部品搬送用キャリヤーテープの構成
ここで紹介するテープ状の小型電子部品の搬送体(写真2の右側のリール)は、「キャリヤーテープ」と称する長さ方向に一定ピッチで部品を収容するポケット(凹部)が形成されたテープと、凹部に電子部品を格納後に蓋をするための「カバーテープ」(写真2の左側のリール)とで構成されている。
実装装置に搬入する際には、部品を各ポケットに1個ずつ収納した状態で二つのテープを貼り合わせてリール状に巻き取る。」(第55頁第17?26行)
「(3)静電気トラブルの内容
実装装置にリールをセットして繰り出す時に「キャリヤーテープ」から「カバーテープ」を剥がす段階で、帯電(静電気)が生じる。
・・・また雰囲気の湿度の影響もあり、湿度が高くなると帯電量は減少する。」(第56頁第1?10行)
「ポリチオフェン、ポリピロール、およびポリアニリンなどのπ共役系導電性ポリマーは、優れた導電性と、高分子の特性である柔らかさ、軽さなどを兼ね備えている。これらも、電子伝導機構により湿度依存性のない安定した導電性を示す。」(第62頁第16?18行)
「2.6.3 湿度依存性のない導電性
先にも述べたが、界面活性剤系帯電防止材料では、導電性が湿度に依存する。たとえば、図3に示したように、カチオン系界面活性剤をPETフィルムに塗布した塗膜は、相対湿度が低くなるに従い、表面抵抗率は上昇する。
一方、<デナトロン>P-502SをPETフィルムに塗布した塗膜は、湿度依存性がなく安定した表面抵抗率を示している。
さらに、導電材であるPEDT/PSS〔3〕が高分子量であるため、ブリードアウトすることがほとんどなく、永久帯電防止剤としての性能も持ち合わせている。」(第65頁第5?12行)

ウ 刊行物3
刊行物3には、次の事項が記載されている。
「2.2 各帯電防止成分と特徴
帯電防止成分としては様々な材料が挙げられるが、界面活性剤や、ポリチオフェン、ポリアニリンそしてポリピロールなどの導電性ポリマー、またカーボン系材料や金属、金属酸化物などがあり、単純にはそれら成分を熱硬化や紫外線硬化の樹脂やワニスに添加することで、帯電防止塗料となる。・・・界面活性剤の帯電防止性(導電性)の機構はイオン伝導型と呼ばれているように、大気中の水分を吸着することでプラスチック表面の電導度を増加させ、プラスチック表面に溜まった静電気を逃がすため、極端に湿度の低い状況下では帯電防止性能の低下が見られてしまう。・・・導電性ポリマーは高分子そのものが導電性なため湿度依存性はなく、表面抵抗率10^(3)?10^(9)Ω/sq.程度の範囲で設計可能なため、広範囲の帯電防止要求に対応可能である(表4)。」(第18頁第14行?第20頁5行)

エ 刊行物4
刊行物4には、次の事項が記載されている。
「図6に示した方法で、PASと種種の高分子バインダー(水分散性ポリエステル類(PEs)、ポリビニルアルコール類(PVA)、ポリアクリル酸類(PAA))の水・イソプロパノール混合液をPETフィルム上にコート、乾燥し、得られた積層体の導電性、透明性、耐水性、耐熱性、耐摩耗性、耐延伸性を評価し、表2の結果を得た。」(第188頁第5?8行)
「2.3.2 導電特性
図9に示した如く、PAS/PEs複合材積層PETフィルムは、湿度15?60%の広範囲でほぼ一定の低表面抵抗値(10^(7)Ω/□)を示す。さらに、図のごとく、PAS/PEs-PETの低湿度(15%)下での帯電減衰時間は0.04秒と非常に小さい。このような優れた帯電防止性は導電性高分子PASの電子伝導性に起因する。
他方、カチオン性帯電防止材を用いた場合、高湿度下では表面抵抗が小さいが、低湿度下では表面抵抗が著しく増大し、イオン伝導性の特徴が観察される。


」(第191頁第1?7行)

オ 刊行物5
刊行物5には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は電離放射線硬化性導電性膜形成用の導電性コーティング材料に関し、特に、電子デバイスや光学デバイス等の導電性材料或いは帯電防止材料として使用できる導電性コーティング組成物及び該組成物を用いて成形した成形物に関する。」
「【0039】
電子伝導性ポリマー
本発明の導電性コーティング組成物に含まれる(a)成分としての電子伝導性のポリマーには、公知の電子伝導性のポリマーを使用することができる。電子伝導性ポリマーは、導電機構が電子伝導性であるため、イオン性ポリマーと比較して湿度依存性がなく、乾燥した環境下でも安定した導電性を得ることができる。このような電子伝導性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフルオレン等やそれらの共重合体が挙げられる。これらのポリマーは、単独でも使用することができるが、適切なドーパントをドーピングすることで、高い導電性が得られる。」
「【0064】
添加剤
本発明の導電性コーティング組成物には、更に添加剤として増感剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等を必要に応じて添加してもよい。」

カ 刊行物6
刊行物6には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、透明架橋フィルムに関し、更に詳しくは本発明のフィルムは自己支持性を有し、光学用フィルムとして好適な透明性、光学的等方性があり、、かつ帯電防止性、表面硬度にも優れた透明架橋フィルムに関するものである。」
「【0027】
本発明において上記のπ共役系ポリマーを添加したフィルムの25℃、70%RH条件での表面比抵抗R_(70)が1.0×10^(10)Ω/□以下、より好ましくは1.0×10^(5)Ω/□以上1.0×10^(10)Ω/□以下であり、25℃、20%RH条件での表面比抵抗R_(20)が1.0×10^(10)Ω/□以下、より好ましくは1.0×10^(10)Ω/□以下であって、R_(20)/R_(70)が0.1?10とすることができ、湿度依存性のない優れた帯電防止フィルムが得られる。」
「【0070】




キ 刊行物7
刊行物7には、次の事項が記載されている。
「【0004】
・・・そこで、より湿度依存の少ない、優れた非帯電性能を有するアイオノマーや重合体の開発が望まれていた。」
「【0042】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例及び比較例において使用した原料及び物性評価方法は次の通りである。
本発明の組成物は例えばフィルム、テープ、シート、チューブ、管、袋体、容器(例えばブロー成形による容器)、ロッド、各種射出成形品、各種ブロー成形品などの形で使用することができる。とくに包装体としての使用が好適である。
本発明の組成物をフィルムにするには、例えばインフレーション成形、Tダイ成形、Tダイシート成形などの方法を用いることができ、そのフィルム厚みは10?5000μmが好ましい。また共押出し、フロー成形等により本発明のフィルムと他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂)フィルムとを積層することもできる。
また本発明のフィルム、積層フィルムの他に、タイシングテープ基材やバックグラインドフィルムなどの半導体用粘着テープ又はフィルム、マーキングフィルム、ICキャリアテープ、電子部品テーピングテープのような電気・電子材料、食品包装材料、衛生材料、プロテクトフィルム(例えばガラス、プラスチック又は金属性のボード、レンガ用ガードフィルム又はテープ)、銅線被覆材料、クリーンルームカーテン、壁紙、マット、床材、フレコン内袋、コンテナー、靴、バッテリーセパレーター、透湿フィルム、防汚フィルム、防塵フィルム、PVC代替フィルム、各種化粧品、洗剤、シャンプー、リンス等のチューブやボトルなどの用途に用いることができる。」
「【0046】
・・・
3.評価方法
(1)表面固有抵抗 [Ω/□]
三菱化学製 Hiresta-UP
フ゜ローフ゛タイフ゜=URS、印加電圧=500V
測定雰囲気:23℃×50%RH、および23℃×30%RH
試料を測定雰囲気下で24時間以上保管してからフィルム内面について測定を行った。
(2)帯電減衰時間[s]
Electro-Tech Systems, Inc.製 Model 406D Static Decay Meter
印加電圧=-5000V
測定雰囲気:23℃×50%RH、および23℃×30%RH
試料を測定雰囲気下で24時間以上保管してからフィルム内面について測定を行った。
・・・
結果を表1に示す。
【0047】


表1に示したとおり、実施例1?実施例5は加工性、低湿度下での非帯電性能共に良好であった。それに対し、比較例1は非帯電性能を全く発現せず、比較例2は室温23℃、相対湿度50%下においては充分な性能を発現したが、乾燥条件の相対湿度30%下では非帯電性能が不足していた。」

ク 刊行物8
刊行物8には、次の事項が記載されている。
「【0015】
帯電防止層として導電性高分子を含む層を用いる場合は、基材2及びトップコート層との密着性を向上させるためにバインダー樹脂を使用するのが好ましい。
・・・
上記のバインダー樹脂としては、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びアルキド樹脂等が挙げられる。」

(1-2) 本件発明2について
ア 上記第2のとおり本件訂正が認められるから、上記取消理由の理由1の対象は、本件発明2?7、10?17である。
そこで、本件発明2と引用発明とを対比する。
引用発明の「電子部品を収納するための収納部を有するキャリアテープ12を被覆するためのカバーテープ11」は、本件発明2の「電子部品包装用カバーテープ」に相当する。
また、引用発明の「基材層2」、「接着層4」は、本件発明2の「基材層」、「シーラント層」に、それぞれ相当し、引用発明の「導電性ポリマー層1」は、その機能(刊行物1の【0012】?【0013】の記載等参照)からみて、本件発明2の「帯電防止層」に相当する。
そして、引用発明の「基材層2・・・の上面には・・・導電性ポリマー層1が設けられ」、「中間層3は上記基材層2と接着層4との間に設けられ」、「接着層4・・・の下面にも・・・導電性ポリマー層1が設けられており」という構成から、引用発明のカバーテープ11の層構成が、基材層2の上面に導電性ポリマー層1が設けられ、基材層2の下面に中間層3を介して接着層4が設けられ、当該接着層4の下面にも導電性ポリマー層1が設けられたものであることを踏まえると、引用発明の「カバーテープ11」の「基材層2・・・の上面には・・・導電性ポリマー層1が設けられ」、「中間層3は上記基材層2と接着層4との間に設けられ」た層構成は、本件発明2の「カバーテープ」は「前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層」と「前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層」を有し、「前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられて」いることに相当する。
また、引用発明の「基材層上面の導電性ポリマー層1の表面抵抗率が10^(2)?10^(7)Ω/□」であることと、本件発明2の「23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり」、「23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(12)としたとき、R_(50)/R_(12)の値が、0.1以上10以下である」こととは、基材層の一方の面とは反対側の面(シーラント層が設けられていない側の面)に設けられる帯電防止層を特定の表面抵抗特性とするという限りにおいて一致する。
したがって、本件発明2と引用発明は、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層を特定の表面抵抗特性とする、
電子部品包装用カバーテープ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
カバーテープの層構成について、本件発明2は、シーラント層は基材層の一方の面側のみに設けられており、かつ、帯電防止層は基材層の一方の面とは反対側の面のみに設けられているのに対して、引用発明は、基材層2の上面に導電性ポリマー層1が設けられ、基材層2の下面に設けられた接着層4の下面にも導電性ポリマー層1が設けられたものである点。
(相違点2)
基材層の一方の面とは反対側の面(シーラント層が設けられていない側の面)に設けられる帯電防止層の特定の表面抵抗特性について、本件発明2は、「23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり」、「23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(12)としたとき、R_(50)/R_(12)の値が、0.1以上10以下である」のに対して、引用発明は、「基材層上面の導電性ポリマー層1の表面抵抗率が10^(2)?10^(7)Ω/□」である点。

イ 上記相違点1について検討する。
引用発明は、その刊行物1の記載を参照すると、「剥離時の帯電防止効果が高いため、静電気障害を引き起こさず、キャリアテープの材質や表面状態を問わず、汎用シール性があり、かつ、全光線透過率が高く、曇価も小さいため、近年の高速実装下における小型電子部品の印字チェックやピンチェックなどの検査工程においても支障をきたさないカバーテープを提供することを目的とする。」(【0005】)ことを課題とし、「本発明においては、基材層の上面あるいは両面、および下記接着層の下面に、π電子共役系導電性ポリマー層が設けられる。」(【0009】)という構成を採用し、カバーテープの全光線透過率、曇価、キャリアテープとの接着性及び帯電防止性の観点から、「基材層上面の導電性ポリマー層1の表面抵抗率が10^(2)?10^(7)Ω/□、接着層下面の導電性ポリマー層1の表面抵抗率が10^(7)?10^(15)Ω/□であり」、かつ、「上記基材層上面の導電性ポリマー層1の厚さが、0.05?0.1μmであり」、「接着層下面の導電性ポリマー層1の厚さが0.001?0.05μmであ」るようにしたものであって(【0012】?【0013】)、それにより、「本発明では、基材層の少なくとも上面に導電性の高い導電性ポリマー層、接着層の下面に薄膜の導電性ポリマー層を形成させることにより、静電気帯電を抑制し、静電気による障害を起こさないカバーテープを得ることができる。」(【0023】)という効果を奏するものである。
よって、引用発明においては、導電性ポリマー層をカバーテープの上面と接着層の下面の両方に設けることは、課題解決に不可欠な構成である。そうすると、引用発明について、カバーテープの接着層の下面に設けられた導電性ポリマー層を設けない構成を得ようとすることは、引用発明の課題解決に反することであるから、刊行物1に接した当業者は引用発明についてそのようにする動機は生じない。また、引用発明について、カバーテープの接着層の下面に設けられた導電性ポリマー層を設けない構成とすることにより、静電気帯電を抑制し、静電気による障害を起こさないカバーテープを得るという効果が期待できなくなるから、そのような構成とすることには阻害要因があるといえる。
したがって、引用発明について、上記相違点1に係る本件発明2の構成となすことは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
そして、本件発明2は、「本発明では、基材層の少なくとも上面に導電性の高い導電性ポリマー層、接着層の下面に薄膜の導電性ポリマー層を形成させることにより、静電気帯電を抑制し、静電気による障害を起こさないカバーテープを得ることができる。」(【0023】)という効果を奏するものである。
よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 上記相違点1に関して、申立人は、平成29年12月21日付け意見書において、以下を主張する。
(ア) 刊行物1の【0002】?【0004】の従来の技術についての記載を摘示して、
「刊行物1には、収納、保管、輸送の際に発生する静電気の問題に対処するために帯電防止層が基材層の上面に設けられることが記載されている。
刊行物1にはさらに、カバーテープの接着時や剥離時の静電気の発生に特別な対策を施したい場合、基材層の下面『にも』、すなわち付加的に基材層の下面にも帯電防止層を設けること、ただし下面に帯電防止層を設けた場合は帯電防止性が増す代償としてカバーテープの接着性の不安定化を招く恐れがあることが記載されている。
そして、基材層の下面に帯電防止層を設けた場合のデメリットについては、特許権者の平成29年11月13日付け意見書においても、『このような構成であると、接着層4の機能である「接着性」(シール性)が、導電性ポリマー層1により損なわれる可能性がある。』と指摘されている」(3頁第10?20行)
との主張。
(イ) 甲第10?12号証を追加提出して、
「さらに、以下に示す甲第10?12号証に記載されるように、帯電防止層を基材層の上面のみに設ける構成は、当該分野において周知であった。」(3頁21?22行)
との主張。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)に基づいて、
「したがって、(i)収納、保管、輸送の際に発生する静電気の問題に対処するために帯電防止層を基材層の上面に設けること、および(ii)基材層の下面に帯電防止層を設けた場合は接着性が不安定化するという問題が生じ得ることを開示する刊行物1の記載、ならびに帯電防止層を基材層の上面のみに設けたカバーテープの構成は周知である点を考慮して、刊行物1記載の発明において、キャリアテープとの接着性をより重視し、帯電防止層を基材層の上面のみに設ける構成にする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。」(6頁4?10行)
との主張。

しかしながら、引用発明は、刊行物1の上記【0002】?【0004】に記載された従来の技術を認識した上で、基材層の上面及び接着層の下面のカバーテープの両面に導電性ポリマー層をあえて設けたものであって、その際、接着層下面の導電性ポリマー層については、帯電防止性とキャリアテープとの接着性を確保するために、当該導電性ポリマー層の厚さを0.001?0.05μmとしたと解するのが相当であるから、たとえ甲第10?12号証にみられるような接着層が基材層の一方の面側のみに設けられており、かつ、帯電防止層が基材層の一方の面とは反対側の面のみに設けられている構成のカバーテープが周知であったとしても、引用発明について、カバーテープの接着層の下面に設けられた導電性ポリマー層を設けない構成を得ようとする動機は生じないし、そのような構成とすることには阻害要因があることは、上記に示したとおりである。
よって、申立人の上記主張は当を得たものではなく、採用することができない。

(1-3) 本件発明3について
ア 本件発明3と引用発明とを対比する。
上記(1-2)アに示した本件発明2と引用発明との対比を参考にすると、本件発明3と引用発明は、
「基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層を特定の表面特性とする、
電子部品包装用カバーテープ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1’)
カバーテープの層構成について、本件発明3は、シーラント層は基材層の一方の面側のみに設けられており、かつ、帯電防止層は基材層の一方の面とは反対側の面のみに設けられているのに対して、引用発明は、基材層2の上面に導電性ポリマー層1が設けられ、基材層2の下面に設けられた接着層4の下面にも導電性ポリマー層1が設けられたものである点。
(相違点2’)
基材層の一方の面とは反対側の面(シーラント層が設けられていない側の面)に設けられる帯電防止層の特定の表面特性について、本件発明3は、「前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下である」のに対して、引用発明は、「基材層上面の導電性ポリマー層1の表面抵抗率が10^(2)?10^(7)Ω/□」である点。

イ 上記相違点1’について検討する。
上記相違点1’は、本件発明2と引用発明との相違点である上記相違点1と実質上同じであるところ、上記相違点1についての判断は、上記(1-2)イに示したとおりであるから、上記相違点1’についても、上記(1-2)イに示したのと同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
よって、上記相違点2’について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(1-4) 本件発明4?7、10?17について
本件発明4?7、10?17は、本件発明2又は3の少なくとも何れかを直接又は間接に引用する発明であるから、上記(1-2)又は(1-3)に示したのと同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(1-5) 小括
以上のとおり、本件発明2?7、10?17は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

(2) 理由2について
(2-1) 理由2アについて
本件特許明細書の発明の詳細な説明【0019】?【0020】の記載から、本件発明が解決しようとする課題は、電子部品用包装体をリールに巻いた状態で搬送する際に、カバーテープにおけるシーラント層とは反対側の面で摩擦により静電気が発生すること、及び、静電気の対策としてシーラント層とは反対側の面の表面抵抗値を下げたとしても、作業環境(湿度)によっては摩擦帯電が生じてしまうこと(すなわち表面抵抗値に湿度依存性があること)と認められる。
また、発明の詳細な説明【0021】?【0029】の記載から、上記課題の解決手段は、基材層の一方の面(シーラント層を設ける面)とは反対側の面に帯電防止層を設けること、及び、表面抵抗値に湿度依存性がないよう、表面抵抗値の比R_(50)/R_(30)の値を0.35以上2.8以下、R_(50)/R_(12)の値を0.1以上10以下とする、又は、帯電圧減衰時間の比S_(50)/S_(30)の値を0.7以上1以下、S_(50)/S_(12)の値が、0.2以上1以下とすることと認められる。
そうすると、本件発明2?7、10?21は、上記課題の解決手段を備えているから、発明の詳細な説明において上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものということはできない。
さらに、上述のとおり、発明の詳細な説明の記載から、発明が解決しようとする課題及びその解決手段を理解できるから、発明の詳細な説明の記載が、委任省令要件に違反しているということはできない。また、R_(50)/R_(30)、S_(50)/S_(30)などの各上下限値は、表面抵抗値の湿度依存性が小さいとする範囲を特定しているのであって、その意味において各上下限値の技術上の意義は明らかである。申立人は各上下限値に臨界的意義がないと指摘するが、臨界的意義がないからといって直ちに実施可能要件や委任省令要件、サポート要件に違反するとはいえない。

(2-2) 理由2イについて
本件発明2?7、10?21は電子部品包装用カバーテープ又は電子部品用包装体に関するものであり、帯電防止層を備える。この帯電防止層は、その語が表すとおり、帯電防止性を発揮する層であるから、その表面抵抗値は、電子部品包装用カバーテープ等として要求される帯電防止性を奏する程度には小さいことが当業者にとって自明である。
したがって、本件発明2?7、10?21において、帯電防止層の表面抵抗値が数値で規定されていなくても、電子部品包装用カバーテープ等として要求される帯電防止性を発揮できないような表面抵抗値の大きなものを包含しないことは明らかである。
したがって、本件発明2?7、10?21は、発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものということはできない。

(2-3) 理由2ウについて
本件特許明細書の発明の詳細な説明【0028】には、「ここで、帯電圧減衰時間Sを測定するために実施する帯電防止層の表面における摩擦帯電圧は、たとえば、次の方法で測定することができる。まず、カバーテープにおける帯電防止層の表面と、たとえば、キャリアテープ等の上記カバーテープにおける帯電防止層の表面と接触させる対象物表面とを除電する。次いで、対象物表面に対してカバーテープにおける帯電防止層の表面を、たとえば、速度:約100mm/s、距離:約50mmの条件で一方向に2回接触させ、公知の表面電位計を用いて上記摩擦帯電圧を測定する。なお、本実施形態に係る摩擦帯電圧は、公知の表面電位計により、帯電防止層の表面における摩擦帯電圧を直接測定して得られた結果を採用してもよいし、対象物表面における摩擦帯電圧を測定して得られた結果から算出した結果を採用してもよい。」(下線は、当審にて付与した。)と記載されている。
「たとえば」との記載から明らかなように、速度:約100mm/s、距離:約50mmの条件で一方向に2回接触させ、公知の表面電位計を用いて上記摩擦帯電圧を測定するという方法は例示にすぎない。したがって、上記【0028】の記載は、他の周知の方法の採用を否定するものではない。そして、乙第5?8号証に示されるように、電子部品用包装体の静電気特性に関して、帯電圧が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間を測定項目として含む規格「MIL-B-81705C」が本件特許の優先日前から当業者に周知であり、また、当該規格では5kVの帯電圧を直流電圧の印加により発生させるものと認められる。さらに、摩擦でも直流電圧の印加でも、電荷が測定対象に帯電するという物理現象自体は同じだから、帯電圧減衰時間の測定にあたり、いずれの方法で帯電させても差し支えないことは明らかである。そうすると、上記【0028】の例示にとらわれることなく、技術常識に従って、他の周知の方法で5kVの摩擦帯電圧を発生し帯電圧減衰時間を評価して本件発明3について実施をすることはできるものと認められる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件発明3について、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいうことはできない。

(2-4) 理由2エについて
訂正後の請求項18?21に記載された「正に帯電する正の化合物」、「負に帯電する負の化合物」に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明【0046】?【0048】、【0051】には、以下の記載がある。
「【0046】
帯電防止層を形成する材料は、たとえば、キャリアテープの底面を形成する材料等の電子部品を収容して搬送する際に帯電防止層の表面と接触する対象物を形成する材料と比べて帯電列において正側に位置する「正の化合物」と、上記対象物を形成する材料と比べて帯電列において負側に位置する「負の化合物」とを含むものであることが好ましい。・・・
【0047】
ここで、本発明者が検討したところ、帯電防止層の表面と接触する対象物として特定の材料を使用し、これを基準とすることにより、正の化合物と負の化合物とを併用した時に帯電防止層の摩擦帯電防止性を安定的に得られることを見出した。さらに検討した結果、綿布(コットン100%)を基準に採用することにより、摩擦する材質によって帯電の正負が変化する影響を回避できるため、本実施形態の正の化合物と負の化合物との併用により得られる帯電防止層の摩擦帯電防止性を安定的に得られる事が判明した。・・・
【0048】
本実施形態の正の化合物としては、綿布に対して正に帯電する化合物であればよく、・・・」
「【0051】
本実施形態の負の化合物としては、綿布に対して負に帯電する化合物であればよく、・・・」

上記【0046】?【0048】、【0051】の記載を参酌すれば、「正に帯電する正の化合物」、「負に帯電する負の化合物」とは、綿布(コットン100%)と比べて、帯電列において正側に位置する化合物、負側に位置する化合物のことと解するのが相当であるから、それらの定義は明確でないとすることはできない。

(2-5) 小括
以上のとおり、上記理由2ア?エによっては、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
したがって、本件特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

第5 本件発明1、8及び9に係る特許についての特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、請求項1、8及び9は削除され、本件発明1、8及び9に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件発明1、8及び9に係る特許についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した上記取消理由によっては、本件発明2?7、10?21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明2?7、10?21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(12)としたとき、R_(50)/R_(12)の値が、0.1以上10以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は前記一方の面側のみに設けられており、かつ、前記帯電防止層は前記一方の面とは反対側の面のみに設けられており、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
請求項3に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(12)としたとき、S_(50)/S_(12)の値が、0.2以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの全光線透過率が、80%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの前記帯電防止層の表面に対して、ポリスチレンからなる材料により形成されたシートを重ね合わせ、前記表面に対して前記シートを速度100mm/sで50mmの間隔で2回摩擦させてから5秒後に、23℃、50%RHで測定した摩擦帯電圧が、-1800V以上1800V以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、エステル化合物を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
請求項2から7のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、導電ポリマーを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項11】
請求項2から7および10のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、界面活性剤を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項12】
請求項2から7および10から11のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の膜厚が、1μm以上20μm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項13】
請求項2から7および10から12のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層の表面抵抗値が、23℃、50RH%の条件で10^(5)Ω以上10^(11)Ω以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項14】
請求項2から7および10から13のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層の膜厚が、1μm以上15μm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項15】
請求項2から7および10から14のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記基材層の全光線透過率が、80%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項16】
請求項2から7および10から15のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの幅が2mm以上100mm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項17】
電子部品を収納する部品収納部が所定の間隔で並んで形成されているキャリアテープと前記キャリアテープに形成された前記部品収納部を覆うように設けられたカバーテープとからなる部品収納テープで構成されており、
前記部品収納テープは、リール状に巻き取り可能であり、
前記カバーテープは、請求項2から7および10から16のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープである、電子部品用包装体。
【請求項18】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項19】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項20】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR_(30)としたとき、R_(50)/R_(30)の値が、0.35以上2.8以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含み、
前記負の化合物の固形分の含有量が、前記正の化合物の固形分と前記負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項21】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(50)とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS_(30)としたとき、S_(50)/S_(30)の値が0.7以上1以下であり、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含み、
前記負の化合物の固形分の含有量が、前記正の化合物の固形分と前記負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-20 
出願番号 特願2016-543252(P2016-543252)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
P 1 651・ 536- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐野 健治  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 小野田 達志
千壽 哲郎
登録日 2016-09-30 
登録番号 特許第6011750号(P6011750)
権利者 住友ベークライト株式会社
発明の名称 電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体  
代理人 速水 進治  
代理人 速水 進治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ