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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1340099
異議申立番号 異議2017-700154  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-20 
確定日 2018-04-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5976369号発明「酢酸含有調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5976369号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。 特許第5976369号の請求項1、2、8、10に係る特許を維持する。 特許第5976369号の請求項3?7、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5976369号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成24年4月6日(優先権主張平成23年4月8日、平成23年10月14日)に出願され、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年2月20日に特許異議申立人石川郁子(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年4月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年6月9日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年7月13日に申立人から意見書が提出されたものである。
そして、平成29年9月28日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成29年12月1日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成30年1月6日に申立人から意見書が提出された。
なお、平成29年12月1日付けで訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、平成29年6月9日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正について
1 訂正の内容
平成29年12月1日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正することを求めるものであり、具体的な訂正事項は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「かつイソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が少なくとも80ppmである」を、「イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が少なくとも80ppmであり、かつ酢酸を40,000ppm?50,000ppmの含有量で含んでなる」に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項1の「酢酸含有調味料。」を、「酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)。」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項2の「酢酸エチル以外の酢酸エステルから選択される1種以上の酢酸エステルをそれぞれ」を、「酢酸イソアミルを」に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
請求項4を削除する。

(6)訂正事項6
請求項5を削除する。

(7)訂正事項7
請求項6を削除する。

(8)訂正事項8
請求項7を削除する。

(9)訂正事項9
訂正前の請求項8の「請求項1?3のいずれか一項に記載の酢酸含有調味料」を、「請求項1または2に記載の酢酸含有調味料」に訂正する。

(10)訂正事項10
請求項9を削除する。

(11)訂正事項11
訂正前の請求項10の「請求項1?3のいずれか一項に記載の酢酸含有調味料」を、「請求項1または2に記載の酢酸含有調味料」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1は、請求項1の酢酸含有調味料について、酢酸の含有量が特定されていなかったところを、「酢酸を40,000ppm?50,000ppmの含有量で含んでなる」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項1を直接又は間接に引用する請求項2、8、10についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件特許明細書に、「本発明の酢酸含有調味料における酢酸の含有量は、例えば、10,000ppm(1重量/体積%)?150,000ppm(15重量/体積%)とすることができ、・・・(中略)・・・、特に好ましくは40,000ppm(4重量/体積%)?50,000ppm(5重量/体積%)である。」(【0013】)と記載されているから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2は、請求項1の酢酸含有調味料から、バルサミコ酢および合わせ酢を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項1を直接又は間接に引用する請求項2、8、10についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3は、請求項2の「酢酸エチル以外の酢酸エステルから選択される1種以上の酢酸エステル」を「酢酸イソアミル」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項2を引用する請求項8、10についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件特許明細書に、「本発明の酢酸含有調味料は、酢酸エチル以外の1種以上の酢酸エステルを含んでいてもよい。酢酸エチル以外の酢酸エステルの例としては、下記に限定されないが、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸2-フェニルエチル等が挙げられ」(【0018】)と記載されているから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4?8、10は、それぞれ、請求項3?7、9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項9、11は、請求項3を削除したことに伴い、引用する請求項から請求項3を除くものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?10〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件特許の請求項1、2、8、10に係る発明(以下、各発明を「本件発明1」?「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、上記訂正された特許請求の範囲の請求項1、2、8、10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
イソアミルアルコールを10?300ppmの含有量で含んでなり、酢酸エチルを10?150ppmの含有量で含んでなり、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が少なくとも80ppmであり、かつ酢酸を40,000ppm?50,000ppmの含有量で含んでなる、酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)。
【請求項2】
酢酸イソアミルを5?75ppmの含有量でさらに含んでなる、請求項1に記載の酢酸含有調味料。
【請求項8】
請求項1または2に記載の酢酸含有調味料を添加することによる、米飯の食感の改善方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の酢酸含有調味料を米飯に添加して炊飯することを含んでなる、食感が改善された米飯の製造方法。

第4 取消理由の概要
平成29年4月10日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお、当該取消理由は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由を全て含んでいる。
(理由1) 本件発明1は、引用例1又は引用例2に記載された発明であるか、当該発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2、3は、引用例1に記載された発明であるか、当該発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1?3は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(理由2) 本件発明4?10は、引用例1に記載された発明及び引用例7に記載された技術事項又は周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明4?10は、引用例2に記載された発明及び引用例7に記載された技術事項又は周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明4?10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(理由3) 本件発明1?10は、引用例3に記載された発明及び、引用例1、引用例7に記載された技術事項又は周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1?10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(理由4) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
(a)酢酸含有量に関し、実施例では酢酸4.5%又は4.2%において実証されているにすぎないのに、請求項1は酢酸含有量を規定していない。請求項1を引用する請求項2?10についても同様である。
(b)請求項2、3の酢酸エステルについて、酢酸イソアミル以外の実施例はない。請求項3を引用する請求項4?10についても同様である。
(c)請求項4?10の飲食品について、酢酸含有飲食品について効果が実証されているのは酢酸含有調味料を10%添加した実施例のみである。また、イソアミルアルコール、酢酸エチルをもともと含有している飲食品に、酢酸含有調味料を添加する場合に、添加量に関わらず効果を奏するとは考えられない。
(d)特許請求の範囲に記載された「飲食品」と「酢酸含有調味料」の区別がつかない。

(引用例)
引用例1:A. Del Signore, "Chemometric analysis and volatile compounds of traditional balsamic vinegars from Modena", Journal of Food Engineering, 50 (2001) p.77-90
引用例2:「シリーズ<食品の科学> 酢の科学」、株式会社朝倉書店、1990年10月5日、p.185
引用例3:「キューピー Italiante バルサミコ酢ソース」のウェブページ、(http://web.archive.org/web/20130316085342/http://www.kewpie.co.jp/products/product.php?j_cd=4901577016165)
引用例4:「広辞苑第六版」、株式会社岩波書店、2008年1月11日、p.1837
引用例5:「シリーズ<食品の科学> 酢の科学」、株式会社朝倉書店、1990年10月5日、p.67
引用例6:「七訂 食品成分表 2016」、女子栄養大学出版部、2016年4月1日、p.214-215
引用例7:「至宝の調味料2 酢」、株式会社アスペクト、1999年11月15日、p.46,60-63
引用例8:「七訂 食品成分表 2016」、女子栄養大学出版部、2016年4月1日、p.86-87

第5 取消理由についての判断
1 引用例の記載事項
ア.引用例1には、以下の記載がある。(訳は当審による。「・・・」は記載の省略を意味する。以下同じ。)

「Chemometric analysis and volatile compounds of traditional balsamic vinegars from Modena」(77ページ表題)
(訳:伝統的モデナ産バルサミコ酢の計量化学的分析及び揮発性物質)

(79?80ページ)
(訳:表2 モデナ産バルサミコ酢に存在する揮発性物質(mg/l)のデータマトリクス及び基礎統計値
サンプル … 酢酸エチル … 酢酸イソアミル … イソアミルアルコール …
・・・ … ・・・ … ・・・ … ・・・ …
5 … 132.21 … 20.80 … 98.49 …
・・・ … ・・・ … ・・・ … ・・・ …)

上記記載によれば、引用例1には、サンプル5のバルサミコ酢として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「イソアミルアルコールを98.49mg/l、酢酸エチルを132.21mg/l、酢酸イソアミルを20.80mg/l含むバルサミコ酢。」

イ.引用例2には、以下の記載がある。

(185ページ)
上記記載によれば、引用例2には、米酢について、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「イソアミルアルコールを25ppm、酢酸エチルを22?280ppm含む米酢。」

ウ.引用例3には、「Italiante バルサミコ酢ソース」の「原材料名」として、「醸造酢(バルサミコ酢51%)・・・」との記載がある。

エ.引用例6には、食品の可食部100g当たりの成分含有量が記載されており、米酢について、備考欄に「酢酸:4.4g」との記載があり、バルサミコ酢について、備考欄に「酢酸:5.6g」との記載がある。

オ.引用例7には、以下の記載がある。
「酢の働きで代表的なものは、防腐・静菌効果で、食べ物をいたみにくくする働きです。・・・たとえば夏場のお弁当に酢を少量加えて炊いたご飯を入れたり・・・」(46ページ下欄2?6行)
「寿司めしは米飯を主体にし、だし、砂糖や味醂など、塩などを配合した合わせ酢で味付けしたものです。・・・一般的には米酢が多く使われています。」(60ページ上欄末行?下欄8行)
「しめさばなど、魚をしめるときは、まろやかな酸味をもつ米酢を使いましょう。・・・魚を酢でしめる前に塩でしめると、酢の味がよくしみこむだけでなく、生ぐさみを消し、保存性を高めるからです。」(61ページ上欄9行?下欄1行)
「バルサミコ酢は・・・まろやかな甘味があり、料理に使うと風味が出て味が最高によくなります。・・・味が濃厚なので、肉料理などのソースとしてコクをつけるのに使うといいでしょう。また、ドレッシングやマリネなどに少量加えるだけで、味が引き立ち、格段とおいしくなります。」(63ページ上欄3?16行)

2 理由1、2について(引用例1、2に基づく新規性進歩性)
(1)引用例1に基づく新規性進歩性
引用発明1の「イソアミルアルコールを98.49mg/l」含むことは、本件発明1の「イソアミルアルコールを10?300ppmの含有量で含」むことに相当し、同様に、「酢酸エチルを132.21mg/l」含むことは、「酢酸エチルを10?150ppmの含有量で含んでなり」に相当する。
引用発明1のイソアミルアルコールと酢酸エチルの合計含有量が98.49+132.21=230.70(mg/l)であることは、本件発明1の「イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が少なくとも80ppm」であることに相当する。
引用発明1の「バルサミコ酢」と、本件発明1の「酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)」とは、「酢酸含有調味料」との限りで共通する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
イソアミルアルコールを10?300ppmの含有量で含んでなり、酢酸エチルを10?150ppmの含有量で含んでなり、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が少なくとも80ppmである、酢酸含有調味料
[相違点1]
本件発明1は「酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)」であるのに対し、引用発明1は「バルサミコ酢」である点。
[相違点2]
本件発明1は「酢酸を40,000ppm?50,000ppmの含有量で含んでなる」ことが特定されているのに対し、引用発明1は酢酸含有量が不明である点。

相違点1について検討する。
引用発明1はバルサミコ酢であり、これをバルサミコ酢でもなく、合わせ酢でもないものとすることはできない。
よって、引用発明1の「バルサミコ酢」を「酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)」とすることはできず、相違点1に係る本件発明1の技術事項は、引用発明1に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。
以上のとおり、相違点が存在するから、本件発明1は、引用発明1であるとはいえず、また、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明2、8、10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に他の発明特定事項を付加したものであるから、引用例7に記載された技術事項や周知・慣用技術を考慮しても、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、引用発明1であるとはいえず、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)引用例2に基づく新規性進歩性
ア.本件発明1について
引用発明2の「イソアミルアルコールを25ppm」含むことは、本件発明1の「イソアミルアルコールを10?300ppmの含有量で含」むことに相当する。
引用発明2の「米酢」は、本件発明1の「酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)」に相当する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
イソアミルアルコールを10?300ppmの含有量で含んでなり、酢酸エチルを含んでなる、酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)

[相違点3]
本件発明1は、酢酸エチルの含有量が「10?150ppm」であり、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が「少なくとも80ppm」であるのに対し、引用発明2は、酢酸エチルの含有量が「22?280ppm」であり、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が「47?305ppm」(=25+22?25+280ppm)である点。
[相違点4]
本件発明1は「酢酸を40,000ppm?50,000ppmの含有量で含んでなる」ことが特定されているのに対し、引用発明2は酢酸含有量が不明である点。

相違点3について検討する。
酢酸エチルの含有量について、引用発明2の「22?280ppm」は、本件発明1の「10?150ppm」と、部分的に重複しているものの、引用例2からは、米酢のイソアミルアルコール含量が25ppmであることと、酢酸エチル含量が22?280ppmの範囲であることが、それぞれ把握できるだけであり、イソアミルアルコール含量が25ppmの米酢の酢酸エチル含量が、本件発明1の「10?150ppm」と重複する範囲のものであることまでは把握することができない。
よって、相違点3は実質的な相違点である。
そして、引用例2には、酢酸エチルの含有量を調整するとの技術思想は示されていないから、相違点3に係る本件発明1の技術事項は、引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、引用発明2であるとはいえず、また、本件発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明8、10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に他の発明特定事項を付加したものであるから、引用例7に記載された技術事項や周知・慣用技術を考慮しても、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、引用発明2であるとはいえず、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3 理由3について(引用例3に基づく新規性進歩性)
引用例3に記載されているのは、バルサミコ酢ソースであり、これは、バルサミコ酢に各種調味料や材料を混ぜ合わせた合わせ酢に相当する。
そして、引用例1、引用例7に記載された技術事項や周知・慣用技術を踏まえても、バルサミコ酢ソースを、合わせ酢ではない調味料とすることは、想定できない。
よって、本件発明1、2、8、10は、引用例3に記載された発明及び、引用例1、引用例7に記載された技術事項又は周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 理由4について(サポート要件、明確性要件)
(1)酢酸含有量について((理由4)(a))
酢酸含有量は、本件訂正により40,000ppm?50,000ppmとなった。そして、実施例では酢酸含有量が45,000ppmの実施例1、4?7、酢酸含有量が42,000ppmの実施例2、3において、効果が確認されており、酢酸含有量40,000ppm?50,000ppmの範囲であれば、同様の効果が得られることが推認できるといえる。
よって、酢酸含有量の点で、本件発明が、課題を解決できると認識できる範囲内のものでないとすることはできない。

(2)酢酸エステルについて((理由4)(b))
上記第2のとおり、本件訂正が認められ、本件発明2は酢酸イソアミルを含むものに限定された。
よって、本件発明2が酢酸イソアミル以外の酢酸エステルを含むことを理由とする取消理由は解消した。

(3)飲食品について((理由4)(c))
上記第2のとおり、本件訂正が認められ、酢酸含有飲食品を含む「飲食品」を発明特定事項とする、請求項4?7、9が削除されたから、酢酸含有飲食品について効果の実証が不足していることを理由とする取消理由は解消した。
また、本件発明8、9の米飯については、実施例7により効果が確認されているし、米がイソアミルアルコール、酢酸エチルをもともと含有しているとも認められないから、本件発明8、9が、課題を解決できると認識できる範囲内のものでないとすることはできない。
なお、本件明細書には、「食感が改善された米飯は、炊飯時に調味料や食材などを添加して、炊き込みご飯などの調味米飯などとして製造してもよい。」(【0037】)と記載されているが、イソアミルアルコール、酢酸エチルを含有している調味料や食材などを添加することが記載されているわけではなく、実施例7においても、そのような調味料や食材などを添加しているわけではないから、上記判断は左右されない。

(4)「飲食品」と「酢酸含有調味料」の区別について((理由4)(d))
本件明細書において「飲食品」とされている合わせ酢は、通常の意味で調味料であるから「酢酸含有調味料」にも該当し得たため、「飲食品」と「酢酸含有調味料」の区別が不明確であったが、上記第2のとおり、本件訂正が認められ、本件発明の「酢酸含有調味料」から合わせ酢が除かれたので、上記不明確さは解消した。
なお、合わせ酢とは「酢に各種の調味料や材料を混ぜ合わせたものの総称」(乙第14号証:「丸善食品総合辞典<普及版>」、丸善株式会社、平成17年3月31日発行)であるところ、本件明細書の実施例に記載された、酢酸水溶液にイソアミルアルコール、酢酸エチルを添加したものや、醸造酢にイソアミルアルコールを添加したものは、合わせ酢ではないから、酢酸含有調味料から合わせ酢を除くことで、発明が不明確になることはない。

(5)小括
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2、8、10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、8、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項3?7、9に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項3?7、9に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソアミルアルコールを10?300ppmの含有量で含んでなり、酢酸エチルを10?150ppmの含有量で含んでなり、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの合計含有量が少なくとも80ppmであり、かつ酢酸を40,000ppm?50,000ppmの含有量で含んでなる、酢酸含有調味料(但し、バルサミコ酢および合わせ酢を除く)。
【請求項2】
酢酸イソアミルを5?75ppmの含有量でさらに含んでなる、請求項1に記載の酢酸含有調味料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】
請求項1または2に記載の酢酸含有調味料を添加することによる、米飯の食感の改善方法。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
請求項1または2に記載の酢酸含有調味料を米飯に添加して炊飯することを含んでなる、食感が改善された米飯の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-23 
出願番号 特願2012-87791(P2012-87791)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 雄三  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 紀本 孝
窪田 治彦
登録日 2016-07-29 
登録番号 特許第5976369号(P5976369)
権利者 MCフードスペシャリティーズ株式会社
発明の名称 酢酸含有調味料  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 藤井 宏行  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  
代理人 伊藤 武泰  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 藤井 宏行  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 反町 洋  
代理人 永井 浩之  
代理人 反町 洋  
代理人 柏 延之  
代理人 永井 浩之  
代理人 伊藤 武泰  
代理人 柏 延之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 横田 修孝  
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