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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C07K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C07K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C07K |
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管理番号 | 1340107 |
異議申立番号 | 異議2017-700571 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-06-07 |
確定日 | 2018-03-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6039828号発明「モノクローナル抗体の精製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6039828号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-32〕について訂正することを認める。 特許第6039828号の請求項1ないし32に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6039828号の請求項1?32に係る特許についての出願は、平成26年6月25日に特許出願され、平成28年11月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年6月7日に特許異議申立人 野村 恒により特許異議の申立てがなされ、平成29年9月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年12月21日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人 野村 恒から平成30年2月15日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?エのとおりである。 ア.特許請求の範囲の請求項1に「カラム洗浄が: (i)適切なpH及び/又は伝導度での平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpH及び/又は第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpH及び/又は伝導度での第3洗浄 (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpH及び/又は高い伝導度での抗体の溶出 を含む」と記載されているのを、 「カラム洗浄が: (i)適切なpHの平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpHでの第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpHでの第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpHでの抗体の溶出、あるいは (i)適切な伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低い伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)適切なpH及び伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpH及び第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpH及び伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpH及び高い伝導度での抗体の溶出 を含む」に訂正する。 イ.特許請求の範囲の請求項4に「カラム洗浄が: (i)pH7.4及び/又は1mS/cmから30mS/cmの範囲の伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)pH7.4及び/又は30mS/cmを超える伝導度の第2洗浄 (iii)pH5からpH6.5の範囲のpH及び/又は1mS/cmから5mS/cmの範囲の伝導度での第3洗浄 (iv)pH3.5及び/又は5mS/cmより高い伝導度での抗体の溶出 を含む」と記載されているのを、 「カラム洗浄が: (i)pH7.4の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)pH7.4での第2洗浄 (iii)pH5からpH6.5の範囲のpHでの第3洗浄、ならびに (iv)pH3.5での抗体の溶出、あるいは (i)1mS/cmから30mS/cmの範囲の伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)30mS/cmを超える伝導度での第2洗浄 (iii)1mS/cmから5mS/cmの範囲の伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)5mS/cmより高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)pH7.4及び1mS/cmから30mS/cmの範囲の伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)pH7.4及び30mS/cmを超える伝導度での第2洗浄 (iii)pH5からpH6.5の範囲のpH及び1mS/cmから5mS/cmの範囲の伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)pH3.5及び5mS/cmより高い伝導度での抗体の溶出 を含む」に訂正する。 ウ.特許請求の範囲の請求項22に「工程(a)が請求項2から7のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される」と記載されているのを、 「工程(b)が請求項2から7のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される」に訂正する。 エ.特許請求の範囲の請求項23に「工程(b)が請求項8から10のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される」と記載されているのを、 「工程(e)が請求項8から10のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア、イの訂正は、訂正前の請求項1、4のカラム洗浄工程(i)?(iv)のそれぞれにおいて、pHと伝導度の条件の一方もしくは両方を任意に組み合わせるものであったのを、pHのみ、伝導度のみ、またはpHと伝導度の両方の3つのパターンのいずれかにおいて工程(i)?(iv)に記載の条件を満たす場合に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、上記ウ、エの訂正は、誤記または誤訳の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、請求項2?32は、上記アの訂正に係る請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1?32は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?32〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?32に係る発明(以下「本件発明1?32」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?32に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 以下の逐次的な工程 (a)アフィニティークロマトグラフィー (b)疎水性相互作用クロマトグラフィー、場合によって次いで他の適切な精製工程 を含む、細胞培養液からモノクローナル抗体を精製するための方法であって、 工程(a)が、結合のための適切なpH及び/又は伝導性での、所望の抗体を含む未精製混合物のカラムへの添加、次いで単一ピークの形態での所望の抗体の溶出に先立つ、カラム洗浄を含み、 カラム洗浄が: (i)適切なpHの平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpHでの第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpHでの第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpHでの抗体の溶出、あるいは (i)適切な伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低い伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)適切なpH及び伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpH及び第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpH及び伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpH及び高い伝導度での抗体の溶出 を含む、方法。 【請求項2】 アフィニティークロマトグラフィーマトリックスがプロテインA、プロテインG及びプロテインLから選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 アフィニティークロマトグラフィーマトリックスがプロテインAである、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 カラム洗浄が: (i)pH7.4の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)pH7.4での第2洗浄 (iii)pH5からpH6.5の範囲のpHでの第3洗浄、ならびに (iv)pH3.5での抗体の溶出、あるいは (i)1mS/cmから30mS/cmの範囲の伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)30mS/cmを超える伝導度での第2洗浄 (iii)1mS/cmから5mS/cmの範囲の伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)5mS/cmより高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)pH7.4及び1mS/cmから30mS/cmの範囲の伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)pH7.4及び30mS/cmを超える伝導度での第2洗浄 (iii)pH5からpH6.5の範囲のpH及び1mS/cmから5mS/cmの範囲の伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)pH3.5及び5mS/cmより高い伝導度での抗体の溶出 を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 バッファー成分がTris、酢酸及びクエン酸バッファーから選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 抗体の溶出がpH3.5からpH4の範囲のpHで行われる、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 溶出を、バッファー内における塩化ナトリウム、アルギニン、グリシン等の添加物で行う、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 工程(a)の後の抗体調製物における凝集体の量が、5%以下である、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 工程(b)がpH5からpH7の範囲のpH及び/又は100mS/cmを超える伝導度で行われる、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 工程(b)において、抗体が下方勾配塩濃度でカラムから溶出される、請求項1に記載の方法。 【請求項11】 塩が、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム及び硫酸ナトリウムから選択される、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 疎水性カラムマトリックスが、フェニルセファロース、ブチルセファロース、オクチルセファロースから選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項13】 (a)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー (b)疎水性相互作用クロマトグラフィー (c)イオン交換クロマトグラフィー の工程を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項14】 工程(a)が、請求項2から8のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 工程(b)が、請求項9から11のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 イオン交換クロマトグラフィーが、陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーから選択される、請求項13に記載の方法。 【請求項17】 イオン交換クロマトグラフィーが、陰イオン交換クロマトグラフィーである、請求項16に記載の方法。 【請求項18】 陰イオン交換クロマトグラフィーのためのカラムマトリックスがDEAEセファロース、Mono Q及びQセファロースXLから選択される、請求項13に記載の方法。 【請求項19】 カラムマトリックスがQセファロースである、請求項18に記載の方法。 【請求項20】 工程(c)での抗体の溶出が、フロースルー及び洗浄モード又は結合-溶出モードで行われる、請求項13に記載の方法。 【請求項21】 a)細胞分離 b)プロテインAクロマトグラフィー c)低pHインキュベーション d)中性化及びリコンディショニング e)疎水性相互作用クロマトグラフィー f)限外ろ過-ダイアフィルトレーション g)陰イオン交換クロマトグラフィー h)ナノろ過 i)限外ろ過-ダイアフィルトレーション j)マイクロフィルター法 からなる、請求項1に記載の方法。 【請求項22】 工程(b)が請求項2から7のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。 【請求項23】 工程(e)が請求項8から10のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。 【請求項24】 ダイアフィルトレーション媒体がリン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸及びその組み合わせから選択される、請求項21に記載の方法。 【請求項25】 抗体が、クエン酸、酢酸、リン酸から選択されるバッファー成分でカラムから回収される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。 【請求項26】 抗体が、塩化ナトリウム、アルギニン、グリシンから選択される添加物でカラムから回収される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。 【請求項27】 抗体の溶出が、pH5からpH7の範囲のpHで行われる、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。 【請求項28】 抗体の全体の回収率が、最初の量の50%以上の範囲である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。 【請求項29】 精製した抗体調製物が1%以下の凝集体を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。 【請求項30】 抗体が、抗HER抗体、抗TNF抗体、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗CD52抗体、抗RANKL、抗IgE抗体から選択される、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。 【請求項31】 抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、ベクツモマブ(bectumomab)、エプラツズマブから選択される、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。 【請求項32】 抗体が、アダリムマブ、トラスツズマブ及びリツキシマブである、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。 2.取消理由の概要 請求項1?32に係る特許に対して、平成29年9月20日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 <取消理由1、2>-1 請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 また、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 請求項2?32に係る発明についても同様に、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 <取消理由1、2>-2 請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 また、請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 請求項2?32に係る発明についても同様に、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 <取消理由1、2>-3 請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 また、請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 請求項2?32に係る発明についても同様に、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 <取消理由2> 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 請求項2?32に係る発明についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 <取消理由3> 請求項22、23、およびそれらを引用する請求項25?32に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 3.判断 (1)<取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、2(特許法第29条第2項)>-1について ア.甲第2号証の記載事項 本件優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証(国際公開第2011/038894号)には、免疫グロブリンを精製する方法であって、 a)プロテインAクロマトグラフィー b)陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーから選択される、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー を含み、 プロテインAクロマトグラフィーが、0.7M?1.3MのTRISを含む溶液を用い、pH値5.0?8.0で、プロテインクロマトグラフィー材料を洗浄することを含む、方法が記載されている(2頁11?19行)。 そして、プロテインAクロマトグラフィー材料の洗浄は、第1、第2、第3の洗浄ステップを含み、 第1洗浄ステップは、20mM?30mMのTRIS、20mM?30mMの塩化ナトリウムを含む溶液を用い、pHは7.0であり、 第2洗浄ステップは、1MのTRISと、0.7Mの塩化ナトリウムを含む溶液を用い、pHは7.0であり、 第3洗浄ステップは、20mM?30mMのTRIS、20mM?30mMの塩化ナトリウムを含む溶液を用い、pHは7.0であること、 回収は、50mMの酢酸ナトリウムを含む溶液を用い、pHは3.2であることが記載されている(10頁12?23行)。 そして、CHO細胞を宿主として組換えにより免疫グロブリンを作成し、その後、宿主細胞由来のタンパク質や核酸等も含む粗溶液から、目的とする免疫グロブリンを精製することが記載されている(4頁33行?5頁3行)。 イ.判断 甲第2号証に記載された発明において、組換えにより作成された免疫グロブリンは、単一の抗体、すなわち、モノクローナル抗体であると認められるから、上記アの記載事項によれば、甲第2号証には、「宿主細胞由来のタンパク質や核酸等も含む粗溶液から免疫グロブリンを精製する方法であって、 a)プロテインAクロマトグラフィー b)陰イオン交換クロマトグラフィー を含み、プロテインAクロマトグラフィーが、0.7M?1.3MのTRISを含む溶液を用い、pH値5.0?8.0で、プロテインAクロマトグラフィー材料を洗浄することを含み、 そして、プロテインAクロマトグラフィー材料の洗浄は、第1、第2、第3の洗浄ステップを含み、 第1洗浄ステップは、20mM?30mMのTRIS、20mM?30mMの塩化ナトリウムを含む溶液を用い、pHは7.0であり、 第2洗浄ステップは、1MのTRISと、0.7Mの塩化ナトリウムを含む溶液を用い、pHは7.0であり、 第3洗浄ステップは、20mM?30mMのTRIS、20mM?30mMの塩化ナトリウムを含む溶液を用い、pHは7.0であり、 回収は、50mMの酢酸ナトリウムを含む溶液を用い、pHは3.2である、方法。」の発明が記載されているものと認められる。 しかしながら、甲第2号証には、「カラム洗浄が: (i)適切なpHの平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpHでの第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpHでの第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpHでの抗体の溶出、あるいは (i)適切な伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低い伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)適切なpH及び伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpH及び第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpH及び伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpH及び高い伝導度での抗体の溶出 を含む」ことについては、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 また、請求項1を引用する、本件特許の請求項2?32に係る発明についても同様に、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)<取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、2(特許法第29条第2項)>-2について ア.甲第3号証の記載事項 本件優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特表2013-539787号公報)には、タンパク質サンプル(Mab A)を、回収、捕捉および精製工程により細胞培養上清から精製したことが記載されており、捕捉工程はプロテインAクロマトグラフィーを含むこと、精密精製工程は疎水性相互作用クロマトグラフィー、ナノ濾過および限外濾過/ダイアフィルトレーションを含むことが記載されている(実施例1)。そして、プロテインAクロマトグラフィーについて、 平衡化バッファー(25mM Tris、100mM 塩化ナトリウム(pH7.2))で洗浄したこと、 20mM クエン酸ナトリウム/クエン酸、0.5M 塩化ナトリウム(pH6.0)の第2の洗浄を行ったこと、 平衡化バッファー(25mM Tris、100mM 塩化ナトリウム(pH7.2))の第3の洗浄を行ったこと、 カラムから0.1M 酢酸(pH3.5)で溶出したこと、が記載されている(【0057】、【0058】)。 イ.判断 上記アの記載事項によれば、甲第3号証には、「細胞培養上清からモノクローナル抗体を精製する方法であって、 a)プロテインAクロマトグラフィー b)疎水性相互作用クロマトグラフィー、ナノ濾過および限外濾過/ダイアフィルトレーション を含み、プロテインAクロマトグラフィーの洗浄は、 平衡化バッファー(25mM Tris、100mM 塩化ナトリウム(pH7.2))での第1の洗浄、 20mM クエン酸ナトリウム/クエン酸、0.5M 塩化ナトリウム(pH6.0)での第2の洗浄、 平衡化バッファー(25mM Tris、100mM 塩化ナトリウム(pH7.2))での第3の洗浄、 0.1M 酢酸(pH3.5)でのカラムからの溶出 を含む、方法。」の発明が記載されているものと認められる。 しかしながら、甲第3号証には、「カラム洗浄が: (i)適切なpHの平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpHでの第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpHでの第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpHでの抗体の溶出、あるいは (i)適切な伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低い伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)適切なpH及び伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpH及び第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpH及び伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpH及び高い伝導度での抗体の溶出 を含む」ことについては、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 また、請求項1を引用する、本件特許の請求項2?32に係る発明についても同様に、甲第3号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)<取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、2(特許法第29条第2項)>-3について ア.甲第4号証の記載事項 本件優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証(特表2012-506383号公報)には、宿主細胞タンパク質が減少した抗体調製物を生成するための方法であって、アフィニティークロマトグラフィーおよび疎水性クロマトグラフィーを含む方法が記載されている。また、他の精製方法を用いることができることも記載されている(請求項1、【0066】?【0112】)。 そして、「抗体」は、モノクローナル抗体であることが記載されている(【0045】)。 また、実施例1には、抗IL-12抗体の単離および精製が記載されており、アフィニティークロマトグラフィーとしてプロテインAクロマトグラフィーを行ったこと、その際、pH7.0に滴定した細胞培養収集物をカラムに負荷した後、 カラムを平衡バッファー(pH7.2、25mMトリス、100mM NaCl)で洗浄し、 続いて、pH6の20mMクエン酸/クエン酸Na、0.5M NaClバッファーで洗浄し、 続いて、平衡バッファー(pH7.2、25mMトリス、100mM NaCl)で洗浄し、 pH3.5の0.1M酢酸、100mM NaClで溶出したことが記載されている(【0181】)。 イ.判断 上記アの記載事項によれば、甲第4号証には、「細胞培養収集物からモノクローナル抗体を精製する方法であって、 a)アフィニティークロマトグラフィー b)疎水性クロマトグラフィー、および、他の精製方法 を含み、pH7.0に滴定した細胞培養収集物をカラムに負荷した後、 カラムを平衡バッファー(pH7.2、25mMトリス、100mM NaCl)で洗浄し、 続いて、pH6の20mMクエン酸/クエン酸Na、0.5M NaClバッファーで洗浄し、 続いて、平衡バッファー(pH7.2、25mMトリス、100mM NaCl)で洗浄し、 pH3.5の0.1M酢酸、100mM NaClで溶出する、方法。」の発明が記載されているものと認められる。 しかしながら、甲第4号証には、「カラム洗浄が: (i)適切なpHの平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpHでの第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpHでの第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpHでの抗体の溶出、あるいは (i)適切な伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低い伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)適切なpH及び伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpH及び第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpH及び伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpH及び高い伝導度での抗体の溶出 を含む」ことについては、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 また、請求項1を引用する、本件特許の請求項2?32に係る発明についても同様に、甲第4号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)<取消理由2(特許法第29条第2項)>について ア.甲第1号証の記載事項 本件優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特表2010-502737号公報)には、産生物を単離する方法であって、前記方法は、 (a)産生物および一つまたはそれ以上の不純物を含む添加流体を提供すること、 (b)前記添加流体を媒体と接触させることであって、前記媒体は前記産生物と結合するのに適した条件下において前記産生物と結合することが可能であり、それにより結合された媒体を提供すること、 (c)一つまたはそれ以上の洗浄溶液を前記結合された媒体に通して、前記結合された媒体と接触させることであって、少なくとも一つの洗浄溶液はアルギニンを備え、前記アルギニンの濃度は1Mではなく、それにより洗浄された媒体を提供すること、 (d)前記産生物を溶離するのに適した条件下において、前記洗浄された媒体を溶離液と接触させること、および (e)前記産生物を含む溶出液を収集すること を含む方法、が記載されている(請求項1)。 また、産生物として、単クローン性抗体が記載されている(請求項6、【0035】)。 そして、媒体として、アフィニティークロマトグラフィーカラム、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーカラム等を用いることが記載されている(【0060】)。 また、他の精製方法を組み合わせても良いことが記載されている(【0074】)。 そして、実施例1には、Protein Aカラムに、CHO細胞培養プロセスからの馴化培地を添加してGDF‐8 mAb-1の精製を行ったことが記載されており、カラム操作条件が表1、表2に記載されている。 イ.判断 上記アの記載事項によれば、甲第1号証には、「細胞培養プロセスからの馴化培地から単クローン性抗体を精製する方法であって、 a)アフィニティークロマトグラフィー、および他の精製方法 を含み、馴化培地をカラムに添加後、 10mM Tris、100mM NaClを含むpH=7.5の溶液での負荷後フラッシュ、 1M NaCl、20mM Trisを含むpH=7.5の溶液での洗浄1、 10mM Tris、100mM NaClを含むpH=7.5の溶液での溶離前フラッシュ、 50mM NaCl、100mM L-アルギニン HClを含むpH=3.0の溶液での溶離、 を含む方法。」の発明が記載されているものと認められる。 ここで、上記アに記載したとおり、甲第1号証には、媒体として、アフィニティークロマトグラフィーカラム、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーカラム等を用いること(【0060】)が記載されているものの、媒体として、アフィニティークロマトグラフィーカラムおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムを選択すること、および、アフィニティークロマトグラフィーカラムと疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムとをこの順序で用いることについては、記載も示唆もされていない。そして、本願特許の優先日前、これらのことが周知技術であったとも認められない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1を引用する、本件特許の請求項2?32に係る発明についても同様に、甲第1号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)<取消理由3(特許法第36条第6項第2号)>について ア.取消理由通知での指摘事項 請求項22の「工程(a)が請求項2から7のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。」という記載について、「請求項2から7のいずれか一項における工程(a)」は、「請求項2から7」が引用する請求項1を参酌すると、「(a)アフィニティークロマトグラフィー」であると認められるから、該記載は、「工程b)が請求項2から7のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。」の誤記であると認められる。 同様に、請求項23の「工程(b)が請求項8から10のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。」という記載は、「工程e)が請求項8から10のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。」の誤記であると認められる。 イ.判断 平成29年12月21日付けの訂正の請求により、請求項22が「工程(b)が請求項2から7のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。」に訂正され、請求項23が「工程(e)が請求項8から10のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。」に訂正されたため、いずれの請求項の記載も引用する請求項の記載と矛盾せず、明確であると認められる。 (6)特許異議申立人の意見について 異議申立人は、平成30年2月15日付け意見書において、「適切な伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄、第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄、第2洗浄バッファーよりも低い伝導度での第3洗浄、および第3戦場バッファーよりも高い伝導度での抗体の溶出を行うことを開示した甲第1号証に記載のアフィニティークロマトグラフィー(特許権者の意見書の表5「伝導度」をご参照下さい)において、他の精製技術と組み合わせてもよいとの甲第1号証の教示(段落0074)に基づき、疎水性クロマトグラフィーを、甲第2号証?甲第4号証に記載されているようなアフィニティークロマトグラフィーと疎水性相互作用クロマトグラフィーの逐次的な工程として組み合わせることに、格別の困難性は認められません。」と主張している。 しかしながら、甲第2号証?甲第4号証には、アフィニティークロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む複数のクロマトグラフィーや濾過などの工程を含む精製方法が記載されており、これら複数の工程の中から、アフィニティークロマトグラフィーと、疎水性相互作用クロマトグラフィーとを選択して用いることについては記載されていないし、そのような周知技術が存在したものとも認められない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4.むすび 以上のとおり、請求項1?32に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に請求項1?32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 以下の逐次的な工程 (a)アフィニティークロマトグラフィー (b)疎水性相互作用クロマトグラフィー、場合によって次いで他の適切な精製工程 を含む、細胞培養液からモノクローナル抗体を精製するための方法であって、 工程(a)が、結合のための適切なpH及び/又は伝導性での、所望の抗体を含む未精製混合物のカラムへの添加、次いで単一ピークの形態での所望の抗体の溶出に先立つ、カラム洗浄を含み、 カラム洗浄が: (i)適切なpHの平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpHでの第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpHでの第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpHでの抗体の溶出、あるいは (i)適切な伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低い伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)適切なpH及び伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)第1洗浄バッファーと同じpH及び第1洗浄バッファーよりも高い伝導度での第2洗浄 (iii)第2洗浄バッファーよりも低いpH及び伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)第3洗浄バッファーよりも低いpH及び高い伝導度での抗体の溶出 を含む、方法。 【請求項2】 アフィニティークロマトグラフィーマトリックスがプロテインA、プロテインG及びプロテインLから選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 アフィニティークロマトグラフィーマトリックスがプロテインAである、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 カラム洗浄が: (i)pH7.4の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)pH7.4での第2洗浄 (iii)pH5からpH6.5の範囲のpHでの第3洗浄、ならびに (iv)pH3.5での抗体の溶出、あるいは (i)1mS/cmから30mS/cmの範囲の伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)30mS/cmを超える伝導度での第2洗浄 (iii)1mS/cmから5mS/cmの範囲の伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)5mS/cmより高い伝導度での抗体の溶出、あるいは (i)pH7.4及び1mS/cmから30mS/cmの範囲の伝導度の平衡化バッファーでの第1洗浄 (ii)pH7.4及び30mS/cmを超える伝導度での第2洗浄 (iii)pH5からpH6.5の範囲のpH及び1mS/cmから5mS/cmの範囲の伝導度での第3洗浄、ならびに (iv)pH3.5及び5mS/cmより高い伝導度での抗体の溶出 を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 バッファー成分がTris、酢酸及びクエン酸バッファーから選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 抗体の溶出がpH3.5からpH4の範囲のpHで行われる、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 溶出を、バッファー内における塩化ナトリウム、アルギニン、グリシン等の添加物で行う、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 工程(a)の後の抗体調製物における凝集体の量が、5%以下である、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 工程(b)がpH5からpH7の範囲のpH及び/又は100mS/cmを超える伝導度で行われる、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 工程(b)において、抗体が下方勾配塩濃度でカラムから溶出される、請求項1に記載の方法。 【請求項11】 塩が、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム及び硫酸ナトリウムから選択される、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 疎水性カラムマトリックスが、フェニルセファロース、ブチルセファロース、オクチルセファロースから選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項13】 (a)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー (b)疎水性相互作用クロマトグラフィー (c)イオン交換クロマトグラフィー の工程を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項14】 工程(a)が、請求項2から8のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 工程(b)が、請求項9から11のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 イオン交換クロマトグラフィーが、陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーから選択される、請求項13に記載の方法。 【請求項17】 イオン交換クロマトグラフィーが、陰イオン交換クロマトグラフィーである、請求項16に記載の方法。 【請求項18】 陰イオン交換クロマトグラフィーのためのカラムマトリックスがDEAEセファロース、MonoQ及びQセファロースXLから選択される、請求項13に記載の方法。 【請求項19】 カラムマトリックスがQセファロースである、請求項18に記載の方法。 【請求項20】 工程(c)での抗体の溶出が、フロースルー及び洗浄モード又は結合‐溶出モードで行われる、請求項13に記載の方法。 【請求項21】 a)細胞分離 b)プロテインAクロマトグラフィー c)低pHインキュベーション d)中性化及びリコンディショニング e)疎水性相互作用クロマトグラフィー f)限外ろ過‐ダイアフィルトレーション g)陰イオン交換クロマトグラフィー h)ナノろ過 i)限外ろ過‐ダイアフィルトレーション j)マイクロフィルター法 からなる、請求項1に記載の方法。 【請求項22】 工程(b)が請求項2から7のいずれか一項における工程(a)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。 【請求項23】 工程(e)が請求項8から10のいずれか一項における工程(b)に基づいて実行される、請求項21に記載の方法。 【請求項24】 ダイアフィルトレーション媒体がリン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸及びその組み合わせから選択される、請求項21に記載の方法。 【請求項25】 抗体が、クエン酸、酢酸、リン酸から選択されるバッファー成分でカラムから回収される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。 【請求項26】 抗体が、塩化ナトリウム、アルギニン、グリシンから選択される添加物でカラムから回収される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。 【請求項27】 抗体の溶出が、pH5からpH7の範囲のpHで行われる、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。 【請求項28】 抗体の全体の回収率が、最初の量の50%以上の範囲である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。 【請求項29】 精製した抗体調製物が1%以下の凝集体を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。 【請求項30】 抗体が、抗HER抗体、抗TNF抗体、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗CD52抗体、抗RANKL、抗IgE抗体から選択される、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。 【請求項31】 抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、ベクツモマブ(bectumomab)、エプラツズマブから選択される、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。 【請求項32】 抗体が、アダリムマブ、トラスツズマブ及びリツキシマブである、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-03-15 |
出願番号 | 特願2015-563045(P2015-563045) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C07K)
P 1 651・ 121- YAA (C07K) P 1 651・ 113- YAA (C07K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 長部 喜幸 |
特許庁審判長 |
田村 明照 |
特許庁審判官 |
長井 啓子 松田 芳子 |
登録日 | 2016-11-11 |
登録番号 | 特許第6039828号(P6039828) |
権利者 | カディラ・ヘルスケア・リミテッド |
発明の名称 | モノクローナル抗体の精製方法 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |