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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1340110
異議申立番号 異議2017-700323  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-31 
確定日 2018-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6045164号発明「長命草ポリフェノール並びにビタミンE及び/又はビタミンCを含む組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6045164号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正することを認める。 特許第6045164号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6045164号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成24年3月27日に特許出願され、平成28年11月25日にその特許権の設定登録がされ、同年12月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成29年3月31日に特許異議申立人高橋美穂(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年8月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月27日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、その訂正の請求に対して異議申立人から平成30年1月11日付けで意見書が提出されたものである。


第2 訂正請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
ア 特許請求の範囲の請求項1に「長命草及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物であって」という記載を追加する(訂正事項1-1)。

イ 特許請求の範囲の請求項1に「ここで「長命草ポリフェノール」の量は、前記長命草の粉末を80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノールの量を意味する」という記載を追加する(訂正事項1-2)。

ウ 特許請求の範囲の請求項1に係る「長命草ポリフェノール1重量部に対し、ビタミンEを0.001?5重量部の割合で含む組成物」の記載を「上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物」と訂正する(訂正事項1-3)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に係る「ビタミンCを含み」の記載を「ビタミンCが配合されており」と訂正する。

(3)訂正事項3
ア 特許請求の範囲の請求項3に係る「長命草又は長命草抽出物を含有する請求項1または2に記載の組成物」の記載を「長命草含水エタノール抽出物及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物であって、上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物」と訂正する(訂正事項3-1?3-3)。

イ 特許請求の範囲の請求項3に「ここで「長命草ポリフェノール」の量は、前記長命草含水エタノール抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノールの量を意味する」という記載を追加する(訂正事項3-4)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に係る「経口又は外用組成物である請求項1?3のいずれかに記載の組成物」の記載を「さらにビタミンCが配合されており、ビタミンCとビタミンEの総量が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.002?10重量部である請求項3に記載する組成物」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項1?4に関し、願書に添付した明細書には、以下の記載がある(下線は、合議体による。)。

ア 「本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、長命草ポリフェノールに対して特定の範囲の割合でビタミンE及び/又はビタミンCを配合した組成物は、組成物の構成成分である長命草ポリフェノール、ビタミンE、及びビタミンCが有する抗酸化作用を打ち消すことなく、また、優れた抗酸化作用を発揮し、その抗酸化作用は長命草ポリフェノール、ビタミンE、及びビタミンCのそれぞれが有する抗酸化作用を、単なる相加的な増加に止まらず、相乗的に向上させることを見出した。」(【0008】)

イ 「下記に示す本発明の第1?第3の態様の組成物は、長命草ポリフェノールとそれに対して特定の配合量でビタミンE及び/又はビタミンCが配合されており、組成物の構成成分である長命草ポリフェノール、ビタミンE、及びビタミンCが有する抗酸化作用を打ち消すことなく、顕著に優れた抗酸化作用を発揮する。」(【0016】)

ウ 第1の態様の組成物に構成成分として含まれる長命草ポリフェノールは、長命草抽出物又は長命草として含まれていてもよい。すなわち、第1の態様の組成物には、長命草若しくは長命草抽出物及びビタミンEを含む組成物も包含される。」(【0018】)

エ 「長命草ポリフェノールとは、長命草に由来するポリフェノールであり、特に限定はされないが、例えばカテキン、イソフラボンといったフラボノイド類、リグニン、タンニン等といったフェニルプロパノイド類、クロロゲン酸類等が挙げられる。
長命草ポリフェノールはこれらのうち単独のものであっても、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
長命草ポリフェノールは長命草を原料に、例えば、非特許文献1に記載されるような公知の方法を用いることによって得ることができる。具体的には、長命草に含水エタノールを加えた後、加温して抽出し、抽出物を遠心分離工程に供して固液分離して得られる液相画分を、長命草ポリフェノールとすればよい。長命草ポリフェノールを得る方法は、このような方法に限定されるものではなく、適宜他の方法を選択してもよい。
なお、加温は通常は80℃程度とすればよく、抽出にかかる時間は通常30分程度とすればよい。また、含水エタノールに含まれるエタノールは通常は80%程度とすればよい。更に、遠心分離工程に供した後の固相画分に、更に含水エタノールを加えて抽出工程にリサイクルしてもよい。」(【0019】?【0021】)

オ 「長命草に含まれるポリフェノールの総量を測定する方法は、特に限定されないが、例えば非特許文献1に記載されるような公知の方法を採用すればよい。具体的にはFolin-Ciocalteu法であり、フェノール試薬と10%炭酸ナトリウム試薬を測定試料に混合して660nmの吸光度の測定によって求める。なお、標準物質には没食子酸を用いればよく、没食子酸相当量として算出すればよい。」(【0023】)

カ 「このような長命草とは、その乾燥物であってもよく、粉砕物であってもよい。乾燥物とは、上記長命草に対して公知の乾燥工程に供して得られるものであり、その具体的な工程は特に限定されるものではない。また粉砕物とは、上記長命草又はその乾燥物を公知の粉砕工程に供して得られるものであり、その具体的な工程は特に限定されるものではない。
第1の態様の組成物の構成成分である長命草とは、上述の長命草そのものとすればよい。
第1の態様の組成物の構成成分である長命草抽出物とは、上述の長命草ポリフェノールの抽出方法にて得られるものであってもよいが、他の公知の植物抽出方法を採用して得られるものであってもよい。通常は、長命草の植物体(全草又は一部)を、超臨界抽出法といった公知の抽出方法に供することによって、長命草抽出物を得ることが可能である。また、得られた抽出物は適宜、固液分離工程に供して固相画分を除去してもよいし、適宜乾燥工程に供して得られたものを長命草抽出物としてもよい。」(【0026】?【0028】)

キ 「第3の態様の組成物に構成成分として含まれる長命草ポリフェノールは、長命草抽出物又は長命草として含まれていてもよい。すなわち、第3の態様の組成物には、長命草若しくは長命草抽出物、ビタミンE、及びビタミンCを含む組成物も包含される。」(【0046】)

ク 「上述する様に、長命草ポリフェノール及び、長命草ポリフェノールに対して特定の範囲の割合でビタミンE及び/又はビタミンCを配合した本発明の組成物は、構成成分が有する抗酸化作用を打ち消し合うことなく、また、優れた抗酸化作用を発揮する。」(【0053】)

ケ 「<長命草ポリフェノール>
本実施例にて用いる長命草ポリフェノールを、公知の方法を参照して製造した。具体的には、以下に示す方法である。
0.1gの長命草粉末(日本ランチェスター工業社製)に、4mLの80%エタノールを加え、80℃で30分間静置した。その後、遠心分離工程に供して固液分離し、固相残渣を取り除いた。これらの操作を5回繰り返して、液相画分を抽出物とした。得られた抽出物を主成分として含まれるポリフェノール含有量が約0.1重量%となるように濃縮した。得られた抽出物を、長命草ポリフェノールとして以下の実験に用いた。また抽出された長命草ポリフェノールの総量は、原料の長命草粉末1重量部に対して約0.01重量部であった。長命草ポリフェノールの総量は、上述した方法を採用して測定した。
<抗酸化作用の測定1>
上述の方法によって得られた長命草ポリフェノールとビタミンE(DSM ニュートリション ジャパン株式会社 乾燥ビタミンE50%)を以下の表1に示す割合にて混合し、抗酸化測定用の試験液とした。
得られた試験液を、抗酸化測定キット(日研ザイル株式会社日本老化制御研究所)を用いて抗酸化作用の測定を行った。各試験液の測定値を、実測値として表1に示す。


表1にて示す評価値から、長命草ポリフェノール1重量部に対して、ビタミンEを100重量部配合した場合(比較例1)、抗酸化作用が理論値と比較して顕著に減少してしまうことが明らかとなった。このようなビタミンEの配合量は、通常、組成物に配合する際に用いられる量であるにも関わらず、通常、期待される抗酸化作用すら得られないことが明らかとなった。すなわち、長命草ポリフェノールも、ビタミンE、それ自身は抗酸化作用を発揮するにもかかわらず、特定の範囲の割合で配合すると、それぞれが有する抗酸化作用を打ち消してしまうことが明らかとなった。
一方、長命草ポリフェノールに対して0.001?10重量部のビタミンEを配合した場合、比較例1のような抗酸化作用の現象は見られなかった。特に、ビタミンEの配合量を0.001?5重量部とした際には、相乗的な抗酸化作用が発揮されることも明らかとなった。」(【0086】?【0092】)

コ 「<抗酸化作用の測定2>
上述の方法によって得られた長命草ポリフェノールとビタミンC(DSM ニュートリション ジャパン株式会社 アスコルビン酸ナトリウム)を表2に示す割合にて混合し、抗酸化測定用の試験液とした。
得られた試験液を、抗酸化測定キット(日研ザイル株式会社日本老化制御研究所)を用いて抗酸化作用の測定を行った。各試験液の測定値を、実測値として表2に示す。


表2にて示す評価値から、長命草ポリフェノール1重量部に対して、ビタミンCを100重量部配合した場合(比較例2)、抗酸化作用が理論値と比較して顕著に減少してしまうことが明らかとなった。このようなビタミンCの配合量は、通常、組成物に配合する際に用いられる量であるにも関わらず、通常、期待される抗酸化作用すら得られないことが明らかとなった。すなわち、長命草ポリフェノールも、ビタミンC、それ自身は抗酸化作用を発揮するにもかかわらず、特定の範囲の割合で配合すると、それぞれが有する抗酸化作用を打ち消してしまうことが明らかとなった。
一方、長命草ポリフェノールに対して0.001?10重量部のビタミンCを配合した場合、比較例1のような抗酸化作用の減少は見られなかった。」(【0093】?【0097】)

サ 「<処方例1?20>
表3及び4に示す処方に従って錠剤を定法通りに調製した。いずれも実施例と同様に、抗酸化効果に優れていた。


<処方例21?40>
表5及び6に示す処方に従ってカプセル剤を定法通りに調製した。いずれも実施例と同様に、抗酸化効果に優れていた。


<処方例41?60>
表7及び8に示す処方に従って外用組成物を定法通りに調製した。いずれも実施例と同様に、抗酸化作用に優れていた。


」(【0098】?【0106】)

(2)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、組成物に含まれる「長命草ポリフェノール」が「長命草」として配合されたものであることを特定し、組成物の用途を「経口又は外用」と特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、上記摘記事項ウ、キ、及び訂正前の請求項3、4のとおり、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
これについて、異議申立人は、平成30年1月11日付け意見書において、「本件特許に係る請求項1は、訂正前は「長命草ポリフェノール及びビタミンEを含む組成物」を規定するものであったのに対し、訂正後は、「長命草及びビタミンEを含む組成物」となっており、「長命草ポリフェノール」が「長命草」に拡張されている。従って、本訂正は、特許法第120条の5第2項第1号の特許請求の範囲の減縮に該当しない」と主張する。
しかしながら、この訂正事項は、組成物の成分を単に「長命草ポリフェノール」から「長命草」に置き換えたものでではなく、上記のとおり、組成物に含まれる「長命草ポリフェノール」が「長命草」として配合されたものであると成分を限定したものであるから、当該異議申立人の主張は採用できない。

(3)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、上記摘記事項オ、ケに基づいて、「長命草ポリフェノール」量の意味を明確にしたものである。それゆえ、この訂正事項は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。また、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであるし、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項1-3について
訂正前の請求項1における「長命草ポリフェノール1重量部に対し、ビタミンEを0.001?5重量部の割合で含む組成物」なる記載については、本件特許発明の課題を解決するための手段が、長命草ポリフェノールに対して特定量の「ビタミンE及び/又はビタミンCを配合」することによって達成されるものであり(摘記事項ア)、また、本件特許明細書に挙げられているすべての実施例、処方例がビタミンEを外添、すなわち配合されるものであることから(摘記事項ケ、サ)、上記訂正前の請求項1の記載は、「外添、すなわち配合されるビタミンEの量のみを考慮して当該長命草ポリフェノールとビタミンEの量比を特定した組成物」と解すべきものであったが(解釈A)、この組成物に配合される長命草ポリフェノールが長命草によって供給される態様も含んでおり、かつ、たまたま長命草自体にもビタミンEが含有されていたため、「長命草中に含まれるビタミンEの量も含めて当該長命草ポリフェノールとビタミンEの量比を特定した組成物」である(解釈B)、とも解し得る余地があったことが認められる。
すなわち、訂正前の請求項1の記載は、本件特許明細書の記載から解釈Aと解釈されなければならないものであったが、解釈Bとも解し得る余地のある規定ぶりとなっていたため、訂正事項1-3における「上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物」との訂正を行い、明確化したものであるから、この訂正事項は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。また、不明瞭な記載を明確化したものであるから、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであるし、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
これについて、異議申立人は、平成30年1月11日付け意見書において、「本件特許に係る出願当初明細書には「長命草ポリフェノール1重量部に対して、ビタミンEを0.001?5重量部」というビタミンEの量が、組成物中のビタミンEの含有量とも配合量とも記載されていることから、組成物中のビタミンEの含有量と配合量とが異なるものとして区別されていない。そうすると、「0.001?5重量部」を「配合量」と規定する今般の訂正事項は、特許権者がその訂正によって「0.001?5重量部」を組成物中のビタミンEの含有量とは異なるものとして主張する以上、本件特許に係る出願当初明細書に記載された事項ではなく、新たな技術的事項を導入するものである」と述べ、訂正事項1-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に違反すると主張する。
また、「訂正後の本件請求項1のビタミンEの量を長命草に対する外添量とした場合、本件請求項1の長命草及びビタミンEからなる組成物中のビタミンEの含有量としては、長命草にそもそも含まれたビタミンEの量(長命草ポリフェノール1重量部に対して0.02?0.1重量部)と長命草に対するビタミンEの外添量(長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部)の合計となる。・・・つまり、訂正の前後で、本件請求項1における組成物中における長命草ポリフェノール1重量部に対するビタミンEの含有量が変更されている」と述べ、訂正事項1-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に違反すると主張する。
しかしながら、上記のとおり、この訂正事項は、請求項の記載が、たまたま長命草中にビタミンEが含まれていたため、本件特許明細書の記載に基づかない、上記解釈Bとも解し得る余地のあった規定ぶりを明確化しただけの訂正であるから、新たな技術的事項を導入するもの、及び特許請求の範囲を変更するもののいずれにも当たらず、当該異議申立人の主張を採用することはできない。

(5)訂正事項2について
上記(4)と同様の理由で、訂正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであるし、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項3-1?3-4、訂正事項4について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1及び2の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正である(訂正事項3-1)。当該訂正事項3-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正後の請求項3は、「長命草含水エタノール抽出物及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物であって」という記載を追加する訂正である(訂正事項3-2)。当該訂正事項3-2は、上記(2)と同様の理由で、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正後の請求項3は、当初請求項1に記載していた「長命草ポリフェノール1重量部に対し、ビタミンEを0.001?5重量部の割合で含む組成物」の記載を、「上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物」と訂正するものである(訂正事項3-3)。当該訂正事項3-3は、上記(4)と同様の理由で、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
さらに、訂正事項3-4は、上記(3)と同様の理由で、訂正事項4は、上記(4)と同様の理由で、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項3-1?3-4、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであるし、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)一群の請求項について
訂正後の請求項1及び2、並びに訂正後の請求項3及び4は、それぞれ別の訂正単位とする求めがされており、訂正事項1及び2は、請求項1及び2の一群の請求項に対して請求されたものであり、訂正事項3及び4は、請求項3及び4の一群の請求項に対して請求されたものである。

3.小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正を認める。


第3 本件特許発明
本件訂正後の請求項1?4に係る発明(以下、「本件特許発明1?4」という。また、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)は、平成29年10月27日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
長命草及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物であって、
上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物:
ここで「長命草ポリフェノール」の量は、前記長命草の粉末を80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノールの量を意味する。
【請求項2】
さらにビタミンCが配合されており、ビタミンCとビタミンEの総量が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.002?10重量部である請求項1に記載する組成物。
【請求項3】
長命草含水エタノール抽出物及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物であって、
上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物:
ここで「長命草ポリフェノール」の量は、前記長命草含水エタノール抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノールの量を意味する。
【請求項4】
さらにビタミンCが配合されており、ビタミンCとビタミンEの総量が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.002?10重量部である請求項3に記載する組成物。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1?4に係る特許に対して平成29年8月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(理由1)請求項1?4に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?4に係る特許は、取り消されるべきものである。

(理由2)請求項1?4に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許は、取り消されるべきものである。

(理由3)請求項1?4に係る特許は、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(理由4)請求項1?4に係る特許は、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(理由5)請求項1?4に係る特許は、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

2.引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1(特開2007-151460号公報)には、長命草の乾燥物を微粉砕して得られる微粉砕長命草末と、機能性素材であるミネラル又はトレハロースとを混合し、機能性食品である粉末青汁を製造することが記載されている(【0051】及び【0053】を参照。)。
以上の記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「長命草の乾燥物を微粉砕して得られる微粉砕長命草末と、機能性素材であるミネラル又はトレハロースを含む、粉末青汁。」

3.合議体の判断
(1)特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1は、「長命草及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物」に係るものであり、上記「ビタミンEが配合されてなる」とは、上記第2 2(4)で述べたとおり、外添されたビタミンEが当該組成物に含まれることを意味し、当該外添されたビタミンEの配合割合が「長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である」ものと認められる。
しかしながら、本件特許発明1と引用発明は、前者が上記所定割合の外添されたビタミンEを含むのに対し、後者はそうでない点において相違する。
したがって、本件特許発明1が引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
また、引用文献1には、長命草を含む組成物に特にビタミンEを外部から上記所定量を添加することについて記載も示唆もない。そして、本件特許発明1は、外添されたビタミンEを所定の割合含むことにより、抗酸化作用を相乗的に向上させるという効果を奏するものであり、かかる効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明1が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件特許発明1は、取消理由1又は2によって取り消すべきものではない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、さらにビタミンCが配合される点において本件特許発明1を限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、取消理由1又2によって取り消すべきものではない。

ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、「長命草含水エタノール抽出物」が配合されてなるものであるところ、この 「長命草含水エタノール抽出物」と引用発明における「長命草の乾燥物を微粉砕して得られる微粉砕長命草末」とは明らかに異なるものである。さらに、本件特許発明3と引用発明は、前者が上記所定割合の外添されたビタミンEを含むのに対し、後者はそうでない点において相違する。
したがって、本件特許発明3が引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
また、引用文献1には、「長命草の乾燥物を微粉砕して得られる微粉砕長命草末」に代えて「長命草含水エタノール抽出物」を配合することについて記載も示唆もないし、「長命草含水エタノール抽出物」を含む組成物に特にビタミンEを外部から上記所定量を添加することについての記載も示唆もない。そして、本件特許発明3は、「長命草含水エタノール抽出物」に外添されたビタミンEを所定の割合含むことにより、抗酸化作用を相乗的に向上させるという効果を奏するものであり、かかる効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明3が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件特許発明3は、取消理由1又は2によって取り消すべきものではない。

エ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、さらにビタミンCが配合される点において本件特許発明3を限定した発明であるから、本件特許発明3と同様に、取消理由1又2によって取り消すべきものではない。

(2)特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号について
ア 取消理由3、4の具体的な理由は、以下のとおりである。

訂正前の本件特許発明1は、長命草ポリフェノールとビタミンEを所定の配合比率で使用することにより、それぞれが有する抗酸化作用を打ち消すことなく、相乗的に向上させて優れた抗酸化作用を発揮することを技術的特徴とするものである(本件特許明細書の段落【0010】、実施例)。
上記「長命草ポリフェノール」なる成分は、本件特許明細書の段落【0019】に「長命草に由来するポリフェノールであり、特に限定はされないが、例えばカテキン、イソフラボンといったフラボノイド類、リグニン、タンニン等といったフェニルプロパノイド類、クロロゲン酸類等が挙げられる。長命草ポリフェノールはこれらのうち単独のものであっても、2種以上を組み合わせたものであってもよい。」と記載されており、極めて広範な化学構造を有する化合物及びそれらの組合せが含まれるものとなっているところ、本件特許明細書において所望の効果を有することが確認されているのは、80%エタノール抽出物に含まれるポリフェノールについてのみである。
そして、抽出溶媒が異なれば抽出されるポリフェノールの種類が異なるのが技術常識であること、さらにポリフェノールの種類(化学構造)が異なればポリフェノールの発揮する効果が異なるのも技術常識であることからすれば、長命草に含まれる全てのポリフェノールが単独で、あるいはそれらの無数の組合せの全てにおいて、80%エタノール抽出物に含まれるポリフェノールと同様の効果を発揮し得るとは認識できないから、発明の詳細な説明に開示された内容を、訂正前の本件特許発明1?4の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
同様に、本件の発明の詳細な説明は、長命草に含まれる全てのポリフェノールが単独で、あるいはそれらの無数の組合せの全てにおいて、所望の効果を発揮することを裏付けるものではないといえるから、訂正前の本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

イ 本件特許発明1及び2について
本件訂正(訂正事項1-2)により、本件特許発明1及び2の組成物に含まれる「長命草ポリフェノール」は、「長命草の粉末を80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノール」であること、すなわち、長命草の粉末を80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物とした際に、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法のフェノール試薬と10%炭酸ナトリウム試薬を測定試料に混合して660nmの吸光度で測定される化合物群(上記第2 2(1)オ、カを参照。)であることが特定された。
そして、本件特許明細書においては、処方例として、そのようにして測定される「長命草ポリフェノール」が長命草(「長命草粉末(ポリフェノール1wt%含有)」)として配合され、当該「長命草ポリフェノール」に対してビタミンEを特定量配合したものが、実施例と同様に抗酸化作用に優れることが示されている(上記第2 2(1)ケ、サ)から、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1及び2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるし、本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
したがって、本件特許発明1及び2は、取消理由3又は4によって取り消すべきものではない。

ウ 本件特許発明3及び4について
本件訂正(訂正事項3-4)により、本件特許発明3及び4の組成物に含まれる「長命草ポリフェノール」は、「長命草含水エタノール抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノール」であること、すなわち、長命草含水エタノール抽出物に、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法のフェノール試薬と10%炭酸ナトリウム試薬を混合して660nmの吸光度で測定される化合物群(上記第2 2(1)オを参照。)であることが特定された。
そして、本件特許明細書の実施例においては、そのようにして測定される「長命草ポリフェノール」に対してビタミンEを特定量配合したものが抗酸化作用に優れることが示されている(上記第2 2(1)ケ)から、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明3及び4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるし、本件特許発明3及び4は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
したがって、本件特許発明3及び4は、取消理由3又は4によって取り消すべきものではない。

(3)特許法第36条第6項第2号について
ア 取消理由5の具体的な理由は、以下のとおりである。

本件特許明細書の記載及び出願時の技術常識を参酌しても、80%エタノール抽出物に含まれるものの他、どのような方法で得られた長命草ポリフェノールが訂正前の本件特許発明1、2における「長命草ポリフェノール」に含まれるのかが明らかでない。
よって、訂正前の本件特許発明1?4は明確といえない。

イ 上記(2)イ及びウで説示したとおり、本件訂正(訂正事項1-2及び訂正事項3-4)により、本件特許発明1?4における「長命草ポリフェノール」に含まれるポリフェノールの範囲は明確になった。
したがって、本件特許発明1?4は、取消理由5によって取り消すべきものではない。

(4)異議申立人の意見について
ア 異議申立人は、平成30年1月11日付け意見書において、本件特許発明1について、「ひとたび長命草粉末にビタミンEを混合した場合に、添加されたビタミンEと長命草中に含まれるビタミンEとを、第三者は区別しえない。特に、長命草が乾燥粉末である場合には、外添されたビタミンEと長命草乾燥粉末とが混在してしまい分離不能となるため、長命草乾燥粉末と粉末中のビタミンEとを区別して判別することなど出願時の技術常識からして当業者には不可能である」と述べ、本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に対して新規性及び進歩性を有しないと主張する。
しかしながら、長命草に内在するビタミンEと、外添して配合されたビタミンEとの組成物中における形態は異なることは明らかであるから、ビタミンEを内在している長命草と、当該長命草にビタミンEが外添して配合された組成物とは、別のものといえる。
それゆえ、上記主張は採用できない。

イ 異議申立人は、平成30年1月11日付け意見書において、「ビタミンEは脂溶性であり、植物体の細胞膜や脂質に豊富に存在する・・・ことから、ビタミンEの含量は、長命草の形態(長命草の搾汁か、長命草に乾燥及び粉砕を施してなる乾燥粉末か、抽出物であれば水抽出物か、極性溶媒抽出物か、非極性溶媒抽出物か)などによって変わる蓋然性が極めて高い。・・・本件実施例以外の形態の長命草については、ビタミンE含量が実施例における80%エタノール水溶液抽出物と異なる蓋然性が高いので、組成物中におけるビタミンEの含量が異なる場合にまで実施例と同様の効果を得られるとは当業者は到底理解できず(ない)」と述べ、本件特許発明1及び2は、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号の規定を満たさないと主張する。
また、「長命草の処理方法が異なれば、長命草に由来するビタミンEの含有量も異なるため、長命草に由来するビタミンEと外添したビタミンEの総量も異なる。したがって、長命草粉末の80%エタノール水溶液抽出物以外の長命草処理物についてまで、本件明細書の実施例と同等の効果を得られるとは、当業者は到底理解できない」、「本件明細書の各実施例1?5における長命草粉末の80%エタノール水溶液抽出物は、長命草に含まれる繊維からポリフェノールが引き離され、遊離した状態となっており、その状態でビタミンEと直接接触していると考えられる。これに対し、本件特許発明1の組成物において、抽出物以外の形態の長命草、例えば粉砕及び乾燥処理を施して得られる乾燥粉末にビタミンEを外添した場合、当該粉末の繊維中にポリフェノールが存在するので、ポリフェノールが外添したビタミンEとは直接接触できない状態となていると推察される。 そうすると、当業者は、長命草粉末の80%エタノール水溶液の抽出物にビタミンEを外添した組成物により示された効果が、長命草に粉砕及び乾燥処理を施して得られる粉末にビタミンEを外添した組成物によっても同様に示されるとは到底理解できない」と述べ、本件特許発明1及び2について、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号の規定を満たさないと主張する。
しかしながら、上記(2)イで述べたように、本件特許明細書においては、実施例の長命草抽出物のみならず、処方例として、「長命草ポリフェノール」が長命草(「長命草粉末(ポリフェノール1wt%含有)」)として配合され、「長命草ポリフェノール」に対してビタミンEを本件特許発明において規定する特定量配合したものが、実施例と同様に抗酸化作用に優れることが示されている(上記第2 2(1)サを参照。)。そうしてみれば、本件特許明細書には、本件特許発明1の「長命草及びビタミンEが配合されてなる・・・組成物であって、上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物」についても、長命草の80%エタノール水溶液抽出物と同様の効果を奏することが示されているといえる。それゆえ、上記主張は採用できない。

ウ 異議申立人は、平成30年1月11日付け意見書において、「本件請求項1は、「長命草に対し、ビタミンEを配合する」という物の製造方法により物を特定するものと認められる。・・・しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、特許権者から主張・立証がされていない」と述べ、本件特許発明1は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないと主張する。
しかしながら、本件特許発明1の「長命草及びビタミンEが配合されてなる・・・組成物」は、長命草とビタミンEが配合されているという組成物の状態を示していることは明らかである。それゆえ、上記主張は採用できない。

エ 異議申立人は、平成30年1月11日付け意見書において、本件請求項1の「「長命草ポリフェノール」の量は、前記長命草の粉末を80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノールの量を意味する」について、「「長命草の粉末」の定義は、本件明細書のどこにも記載されていないことから、単に粉末状の長命草を意味すると解される。従って、搾汁を乾燥処理した粉末、抽出物を乾燥処理した粉末、粉砕物を乾燥処理した粉末のいずれもが、「長命草の粉末」に含まれる。また、ポリフェノールは、その抽出溶媒の違い等によって収量が異なる・・・。このため「長命草の粉末」として、植物体の搾汁から得られた粉末と、水抽出物から得られた粉末と、有機溶媒抽出物から得られた粉末と、粉砕物の乾燥粉末とのいずれを用いるかによって、その粉末を「80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物」中のポリフェノールの量が全く異なってくることは明らかである。 そうすると、同じ植物体から本件請求項1に記載された方法によって得られるポリフェノール量には極端に大きな幅が存在することとなる」、「長命草は部位によってポリフェノール量が異なり・・・、また個々の長命草体においても、収穫場所や収穫時期、日射量などの個々の生育条件によって、個々のポリフェノール量は異なっている。・・・このため、本件請求項1の「前記長命草」が、ビタミンEと配合させる「長命草」に対して、どのような関係性を有するものを対象にしているのかが不明である」、「例えば長命草粉末は、収穫場所や収穫時期、日射量などの個々の生育条件によって、個々のポリフェノール量は異なっていることに起因して、仮に同じ商品名などを付して同様に出荷された粉末であっても、また同じ製造ライン上で製造した粉末であっても、ポリフェノール量は異なりうる」と述べ、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないと主張する。
しかしながら、本件特許発明1の「長命草」について、本件特許明細書には、「長命草とは、その乾燥物であってもよく、粉砕物であってもよい。乾燥物とは、上記長命草に対して公知の乾燥工程に供して得られるものであり、その具体的な工程は特に限定されるものではない。また粉砕物とは、上記長命草又はその乾燥物を公知の粉砕工程に供して得られるものであり、その具体的な工程は特に限定されるものではない」と記載されている(上記第2 2(1)カを参照。)。そして、「長命草の粉末」は、粉砕によって得られるものであることは明らかであるから、本件特許発明1の「前記長命草の粉末」とは、長命草の粉砕物であるといえる。そして、上記3(2)イで述べたように、本件特許発明1の「長命草ポリフェノール」は、どのような部位、生育条件の長命草であっても、その粉砕物を、80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物とした際に、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法のフェノール試薬と10%炭酸ナトリウム試薬を測定試料に混合して660nmの吸光度で測定される化合物群であるところ、本件特許発明1は、当該方法により一義的に定まる当該化合物群の測定された量に応じて、特定量割合のビタミンEを配合するものであるから、本件特許発明1の組成物が不明確であることにはならない。それゆえ、上記主張は採用できない。

オ 異議申立人は、平成30年1月11日付け意見書において、「請求項1の「前記長命草」が「同一個体の長命草」という意味である場合、当業者は、使用する各個体の長命草のポリフェノール量を測定する必要があり、当業者に過度な負担を強いられるので、本件請求項1の発明を実施することができない。また、仮に長命草の多数本をまとめて粉末化してポリフェノール量を測定しようとすると、組成物中の長命草との個体としての同一性を担保し難いので、この場合も、当業者は、本件請求項1の発明を実施することができない」と述べ、本件特許発明1について、特許法第36条第4項第1号の規定を満たさないと主張する。
しかしながら、上記エで述べたように、本件特許発明1の「長命草ポリフェノール」は、長命草の粉砕物を、80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物とした際に、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法のフェノール試薬と10%炭酸ナトリウム試薬を測定試料に混合して660nmの吸光度で測定される化合物群であり、本件特許発明1は、当該化合物群の量に応じて、特定量のビタミンEを配合するものであるから、長命草の多数本をまとめて粉末化する場合も、その粉末に対してポリフェノール量を測定して当該量に応じてビタミンEを配合すればよいのであるから、本件特許発明1は当業者が過度の負担なく実施することができるものである。それゆえ、上記主張は採用できない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.申立理由の概要
異議申立人は、以下の申立理由1?5を根拠として、特許異議を申し立てたところ、申立理由3?5は、取消理由通知に記載した取消理由3?5と同主旨であるから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由1及び2(特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項)について、以下2以降に述べる。

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))
本件訂正前の請求項1?4に係る特許に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4?6号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
本件訂正前の請求項1?4に係る特許に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4?6号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(3)申立理由3(特許法第36条第6項第2号)(同法第113条第4号)
本件訂正前の請求項1に記載の「長命草ポリフェノール」の意味するところが不明確であり、本件訂正前の請求項1に係る特許に係る発明、並びに請求項1を引用する請求項2?4に係る特許に係る発明は明確でない。それゆえ、本件訂正前の請求項1?4に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。

(4)申立理由4(特許法第36条第6項第1号)(同法第113条第4号)
本件訂正前の請求項1?4に係る特許に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。それゆえ、本件訂正前の請求項1?4に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。

(5)申立理由5(特許法第36条第4項第1号)(同法第113条第4号)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正前の請求項1?4に係る特許に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。それゆえ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。

2.証拠方法
(1)甲第1号証:特開2007-151460号公報

(2)甲第2号証の1:特開2005-304323号公報

(3)甲第2号証の2:特開2005-112957号公報

(4)甲第2号証の3:特開2008-247848号公報

(5)甲第2号証の4:特開2007-330250号公報

(6)甲第2号証の5:「DSM Japan 製品案内」、2014年5月

(7)甲第2号証の6:理研ビタミン株式会社、機能性食品用原料、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

(8)甲第2号証の7:香川芳子監修、「五訂増補食品成分表2006」、初版第2刷、女子栄養大学出版部、2006年2月、p.80-81及び96-97

(9)甲第2号証の8:特開2006-212025号公報

(10)甲第2号証の9:山本漢方製薬株式会社オンラインショップ、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

(11)甲第2号証の10:「日本人の食事摂取基準(2010年版)、医歯薬出版株式会社、平成21年5月29日、p.7-8

(12)甲第3号証:特開2002-142673号公報

(13)甲第4号証:特開2005-179193号公報

(14)甲第5号証:特開2005-304414号公報

(15)甲第6号証:特開2008-303174号公報

(16)甲第7号証の1:沖縄元気野菜、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

(17)甲第7号証の2:SHIMADZU 分析計測機器、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット、

(18)甲第8号証:DHC 公式オンラインショップレスベラトロール+長命草 30日分、 [online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

(19)甲第9号証:AMAZON レスベラトロール+長命草 30日分、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

(20)甲第10号証:Marine Bio ボタンボウフウ 沖縄本島産100% 、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット及び

(21)甲第11号証:こだわりの健康補助食品(サプリメント)オンラインショップ ハービックス 与那国の三燦青汁(長命草の青汁)、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

(22)甲第12号証の1:延ばせ健康寿命!プロが教えるマル秘健康情報+奈良観光情報、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

(23)甲12号証の2:JAS法に基づく食品品質表示の早わかり <平成23年12月版>、[online]、[平成29年3月22日検索]、インターネット

3.甲号証の記載事項
甲第1号証?甲第12号証の2には、それぞれ以下の記載がある(下線は、合議体による。)。
(1)甲第1号証
ア 「長命草を主原料とし、この長命草を乾燥して得られた乾燥物から抽出したエキスを、シクロデキストリンで包接してなる包接体エキス、又は当該包接体エキスを乾燥して得られた包接体エキス末からなることを特徴とする長命草を用いた機能性食品。」(【請求項1】)

イ 「(ビタミン)
本発明に使用するビタミンは、特に限定はないが、例えばビタミンC,E,B群等を用いることができる。」(【0025】)

ウ 「また、この微粉砕長命草末に、機能性素材としてニガウリを20?50%添加して混合し、機能性食品として粉末青汁を完成させた。・・・
また、この微粉砕長命草末に、機能性素材としてケールを20?50%添加して混合し、機能性食品として粉末青汁を完成させた。」(【0052】)

エ 「また、この微粉砕長命草末に、機能性素材として大麦若菜を20?50%添加して混合し、機能性食品として粉末青汁を完成させた。・・・
また、この微粉砕長命草末に、機能性素材としてビタミン類を5?10%添加して混合し、機能性食品として粉末青汁を完成させた。」(【0053】)

オ 「また、実施例1,実施例2,実施例3,比較例3としてそれぞれ得られた機能性食品である粉末青汁について、機能性の評価を行った。
その結果、各種機能性素材を添加した実施例1?3における粉末青汁については、機能性素材を添加していない比較例3における粉末青汁と比較すると、各種栄養素を一層豊富に含有するとともに、ミネラルの吸収性に優れ、高い抗酸化作用を有するなど、より高い機能性を備えていることがわかった。」(【0057】)

(2)甲第2号証の1
ア 「〔処方例1〕
飲料用ビタミンミックスの組成(製品0.5g当たりの含有量):
ビタミンA 1667IU
ビタミンB1 0.5mg
ビタミンB2 0.57mg
ビタミンB6 0.67mg
ビタミンB12 2μg
ナイアシン 6.67mg
葉酸 0.14mg
ビタミンC 20mg
ビタミンD 3 133IU
ビタミンE 6.71mg 」(【0024】)

(3)甲第2号証の2
ア 「(実施例2)
本発明の実施例2の可溶性フィルムは、フィルム層の2面がコート層で覆われたものであり、フィルム層には各種ビタミンの混合剤であるビタミンエースミックスDR-200N(理研ビタミン株式会社製)が含まれている。このビタミンエースミックスDR-200Nは、全体を100%としてビタミンAを0.09%(1g中3000IU)含み、ビタミンEを1.5%含むものである。」(【0045】)

(4)甲第2号証の3
ア 「

」(【0025】)

(5)甲第2号証の4
ア 「[血中ホモシステインレベルの上昇抑制効果]
血中ホモシステインレベルの上昇抑制効果を確認するに当たって、内容量350mgの澱粉を充填したダミーのカプセルを試料(1)として準備した。アスコルビン酸、ビタミンB群及びビタミンDのビタミン類30mg(「ビタミンプレミックスRD-2005」DSMニュートリションジャパン製)と、50mgのパン酵母由来β1,3/1,6Dグルカン(当社製「ベータキング」)と、N-アセチルグルコサミン(「マリンスイート」焼津水産社製)と、135mgのデオキシリボ核酸(DNA)(「DNA-A」ニチロ社製)とを配合した350mgのカプセルを試料(2)として準備した。」(【0029】)

(6)甲第2号証の5
ア 「

」(第11頁)

(7) 甲第2号証の6
ア 機能性食品用原料のビタミンプレミックスである「ビタミンエースプレミックスMB-11」は、「11種類のビタミンを「栄養素等表示基準値/日本人の食事摂取基準(2015年版)」をベースに配合した食品添加物製剤」であること。(「ビタミンプレミックス」の表)

イ 機能性食品用原料のビタミンプレミックスである「ビタミンエースプレミックスMA-11」は、「11種類のビタミンを「栄養素等表示基準値/日本人の食事摂取基準(2005年版)」をベースに配合した食品添加物製剤」であること。(「ビタミンプレミックス」の表)

ウ 機能性食品用原料のビタミンプレミックスである「ビタミンエースプレミックスDR-15」は、「11種類のビタミンを「栄養素等表示基準値/日本人の食事摂取基準(2015年版)」をベースに配合した食品添加物製剤」であること。(「ビタミンプレミックス」の表)

エ 機能性食品用原料のビタミンプレミックスである「ビタミンエースプレミックスDR-11」は、「11種類のビタミンを「栄養素等表示基準値/日本人の食事摂取基準(2005年版)」をベースに配合した食品添加物製剤」であること。(「ビタミンプレミックス」の表)

オ 機能性食品用原料のビタミンプレミックスである「ビタミンエースプレミックスDR-300」は、「10種類のビタミンを「RDI値」をベースに配合した食品添加物製剤」であること。(「ビタミンプレミックス」の表)

(8)甲第2号証の7
ア ケール(葉、生)には、ビタミンEであるトコフェロールαが2.4mg、γが0.2mg含まれ、ビタミンCが81mg含まれること(第80?81頁)

イ にがうり(果実、生)には、ビタミンEであるトコフェロールαが0.8mg、βが0.1mg、γが0.1mg含まれ、ビタミンCが76mg含まれること(第96?97頁)

(9)甲第2号証の8
ア 「これらの乾燥方法は、それぞれ単独に行うだけではなく、組み合わせて行うことで、単独の場合とは異なった効果を上げることもできる。例えば、熱風乾燥と遠赤外線乾燥を組み合わせると、比較的短時間で残留水分量10%程度の乾燥を廉価な運転費用で実現することができ、また、乾燥対象物によっては単純な乾燥とは異なった食味を引き出すことができる。また、熱風乾燥と凍結乾燥または遠赤外線乾燥と凍結乾燥とを組み合わせると、比較的短時間かつ低運転費用で残留水分を5重量%以下にすることができ、乾燥対象物によっては単純な乾燥とは異なった食味を引き出すことができる。勿論、熱風乾燥と遠赤外線乾燥と凍結乾燥とを組み合わせた乾燥方法を採ることもできる。」(【0035】)

(10)甲第2号証の9
ア 大麦若葉粉末100g中に、ビタミンC70.0mg、ビタミンE11.9mgが含まれること。(「大麦若葉栄養成分表示」)

(11)甲第2号証の10
ア 日本人の食事摂取基準(2010年版)


」(第7頁)

イ 日本人の食事摂取基準(2010年版)


」(第8頁)

(12)甲第3号証
ア 「没食子酸、水溶性抗酸化剤および油溶性抗酸化剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤。」(請求項1)

イ 「油脂類、油溶性抗酸化剤および親油性乳化剤からなる油層部に、没食子酸、水溶性抗酸化剤および水性溶媒からなる水層部を添加して油中水型に乳化することを特徴とする親油性酸化防止剤の製造方法。」(請求項4)

ウ 「本発明は、油脂調理食品の親油性酸化防止剤およびその製造方法に関し、更に詳しくは、没食子酸、水溶性抗酸化剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる油脂調理食品の親油性酸化防止剤およびその製造方法に関する。」(【0001】)

エ 「実施例1?8
表1に示した配合割合にて、油層部を混合した後、その油層部にあらかじめ混合した水層部を徐々に添加しながらTKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を使用して油中水型に乳化し、本発明の親油性酸化防止剤を得た(本発明品1?8)。」(【0019】)

オ 「なお、表1および表2中の各成分を以下に説明する。
・・・
(5)生コーヒー豆抽出物
コーヒー生豆粉砕物600gに70%メタノール水溶液2400gを加え、65℃で3時間攪拌抽出した。冷却後、固液分離を行い、抽出液を減圧濃縮してメタノールを除去した。得られた濃縮物に食塩100g及び水を加えて総量1000gに調整した。この溶液を合成吸着剤(SP-207:三菱化学社製商品名)400mlを充填したカラムにSV=1.0で通液して抽出物を吸着させた。引き続きカラムに水を流して洗浄後、60%エタノール水溶液800gをSV=1.0で流しクロロゲン酸類を溶離させた。得られた溶出液を減圧濃縮して生コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸含有率:33重量%)93gを得た。」(【0024】)

カ 「

」(表1(【0025】))

(13)甲第4号証
ア 「琉球ヨモギ、ウコンイソマツ及びボタンボウフウからなる群から選択される少なくとも1種以上の植物体の乾燥粉末又はその抽出物を含む健康食品。」(請求項4)

(14)甲第5号証
ア 「セリ科シシウド属又はカワラボウフウ属に属する植物の種子、及び葉又は茎の加工物を有効成分とすることを特徴とする健康食品。」(請求項1)

イ 「セリ科シシウド属又はカワラボウフウ属に属する植物の種子を乾燥し焙焼して殺菌した後、粉砕したものに、セリ科シシウド属又はカワラボウフウ属に属する植物の葉又は茎を乾燥した後、裁断し殺菌して製粉したものを配合することを特徴とする健康食品の製造方法。」(請求項3)

ウ 「図1に本発明の健康食品の製造フローを示した。製造フローは山人参の種子と葉のフローであるが、葉の代りに茎でも良いし、葉と茎を混ぜたものでも良い。採取した山人参類の種子はまず天日乾燥をする。次に50?60℃で10分?15分焙煎することで香気を醸成させるとともに一次殺菌をする。50?60℃としたのは原料に含まれる栄養分や薬効成分が破壊されないようにするためである。」(【0009】)

エ 「焙煎した原料を次に紫外線照射により二次殺菌処理をし、製粉加工を行う。」(【0010】)

(15)甲第6号証
ア 「 セリ科シシウド属又はカワラボウフウ属に属する植物、トウキ、イヌトウキ又はヒュウガトウキ等のトウキ類のほか、いわゆる山人参と呼ばれている植物いずれかの生及び天日乾燥した葉又は茎又は種子を凍結乾燥し、粉末にすることで、成分損失及び変質を極力抑えることを特徴とする原材料の製造方法。」(請求項1)

(16)甲第7号証の1
ア 沖縄の野菜であるサクナが、水分84.6g、ビタミンC(総アスコルビン酸)47mg、ビタミンE(α-トコフェロール当量)1.7mgを含むこと。

(17)甲第7号証の2
ア 水分率測定法のそれぞれの測定法による茶葉の測定結果
「●公定試験法を用いた茶葉の水分率測定
【結果】水分率:5.3?6.1%(茶葉10種類)
●近赤外線分析計を用いた茶葉の水分率測定の結果
【結果】※茶葉サンプル 水分率:6.0?6.7%(茶葉10種類)
※粉末状サンプル 水分率:6.1?6.5%(茶葉10種類)
●水分計を用いた茶葉の水分率測定(1)
TIMEモード(乾燥後の茶葉に最適)
【結果】水分率:5.9?6.4%(茶葉10種類)
●水分計を用いた茶葉の水分率測定(2)
AUTOモード(中揉、精揉に最適)
【結果】水分率:6.3?7.0%(茶葉10種類) 」

イ 「Fig.5 茶葉の測定方法の違いによる比較表
測定方法 水分率
公定試験法 5.3?6.1%
近赤外線法 6.0?6.7%
水分計MOC63u TIME5.9?6.4%
AUTO6.3?7.0% 」

(18)甲第8号証
ア 「DHCの健康食品 レスベラトロール+長命草 30日分」の成分・原材料
「レスベラトロール+長命草 1日2粒総重量674mg(内容量520mg)あたり リンゴンベリーエキス末300mg(トランスレスベラトロール30mg)、ボタンボウフウ葉(長命草)エキス末70mg、ヒュウガトウキ(日本山人参)葉末60mg、ビタミンC10mg、ビタミンE(d-α-トコフェロール)20mg」(「■成分・原材料」)

(19)甲第9号証
ア 「DHCの健康食品 レスベラトロール+長命草 30日分」
「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2011/10/19」(「登録情報」)

(20)甲第10号証
ア 「「ボタンボウフウ」は・・・長命草とも呼ばれ・・・ビタミン、ミネラル、ポリフェノール、食物繊維などマルチな栄養に富んでおり・・・」(「栄養豊富な琉球の素材として」の項)

イ ホタンボウフウは、栄養成分(100g当たり)として、ビタミンC47mg、ビタミンE(α-トコフェロール当量)1.7mg、αトコフェロール1.7mgを含むこと。(「栄養豊富な琉球の素材として」の項の表)

ウ 「・・・「ボタンボウフウ」は、特段にポリフェノール含量が高いことが確認されています。またポリフェノールの中でも「クロロゲン酸」が豊富に含まれており、高いLDL抗酸化能があることも確認されています。」(「沖縄伝統野菜に見られる高い抗酸化活性」の項)

エ ボタンボウフウ100g中に、ポリフェノールが400mg程度含まれること。(「沖縄伝統野菜に見られる高い抗酸化活性」の項の図)

(21)甲第11号証
ア 「長命草・明日葉・大麦若葉 3種の国産原料を配合 【与那国の三燦青汁】」の原材料が、「ボタンボウフウ葉(長命草)、大麦若葉、明日葉、デキストリン、乳糖、コーンスターチ、抹茶、イソマルトオリゴ糖、多穀麹、乳酸菌、ビタミンB6」であること。

イ 「長命草・明日葉・大麦若葉 3種の国産原料を配合 【与那国の三燦青汁】」の1包(2.5g)あたり、ビタミンEを0.117mg含むこと。(「5、栄養成分たっぷりの「与那国の三燦青汁(さんさんあおじる)」」)

(22)甲第12号証の1
ア 「2009年08月05日
沖縄県与那国島産の『長命草(ちょうめいそう)』の青汁のお買い得セットのご紹介」

(23)甲12号証の2
ア 「◆原材料名
・食品添加物以外の原材料名・・・
原材料に占める重量の割合の多いものから順に記載してください。」
(第9頁)

4.合議体の判断
(1)甲第1号証について
ア 異議申立人は、甲第1号証には、微粉砕長命草末に、機能性素材としてビタミン類を5?10%添加して混合し、機能性食品として粉末青汁を完成させたことが記載されており、甲第2号証の1?6を提示するとともに、「市販されるビタミン類の混合物は、通常、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」等に記載される摂取奨励量に基づき各ビタミンの配合量を決定しているので、市販されるビタミン類の混合物中に含まれるビタミンEの量に大差はなく、大凡1?3%程度である」と述べ、本件特許明細書の長命草における長命草フェノールの含有量の記載(「長命草には長命草ポリフェノールが長命草の乾燥重量に換算した100重量%当たり、ポリフェノールの総量として通常は0.1?5重量%程度含んでいる。」(【0022】)を参照し、ビタミン混合物に含まれるビタミンEの割合を1?3%として、甲第1号証に記載の粉末青汁に含まれるビタミンEは、長命草ポリフェノール1重量部に対して0.05?0.3重量部であると主張する。
しかしながら、甲第1号証には、ビタミン類について、「例えばビタミンC,E,B群等を用いることができる」との記載はあるものの、上記の粉末青汁において添加されたビタミン類に、特にビタミンEが含まれることやその配合量についての記載はないし、該添加、混合されたビタミン類が、市販のビタミン類の混合物であるかどうかも不明であるから、上記主張は採用できない。

イ 異議申立人は、甲第1号証には、微粉砕長命草末に、機能性素材としてニガウリ、ケール又は大麦若葉を20?50%添加して混合し、機能性食品として粉末青汁を完成させたことが記載されており、ニガウリ、ケール及び大麦若葉に含まれるビタミンEの量(甲第2号証の7、9)、植物乾燥物の残留水分量が通常は10%以下であること(甲第2号証の8)、並びに本件特許明細書の長命草における長命草フェノールの含有量の記載(【0022】)に基づいて、甲第1号証に記載の粉末青汁に含まれるビタミンEは、長命草ポリフェノール1重量部に対して0.002?0.494重量部、0.003?0.422重量部、0.003?0.011重量部(順に、ニガウリ、ケール、大麦若葉を混合した際のビタミンEの割合)であると主張する。
しかしながら、本件特許発明1は、長命草及びビタミンEを配合した組成物であって、長命草にニガウリ、ケール又は大麦若葉を配合したものではないから、甲第2号証の7?9の記載からニガウリ、ケール又は大麦若葉中にビタミンEが含まれていることが認められるとしても、本件特許発明1の長命草にビタミンEを配合した組成物が、甲第1号証に記載の微粉砕長命草末にニガウリ等を配合した粉末青汁が同じ発明であるとはいえないし、該粉末青汁の記載から当業者が容易に発明できたものとはいえない。
そして、この点は本件特許発明2?4についても同様である。

以上のとおり、異議申立人の甲第1号証に基づく申立理由1及び2には理由がない。

(2)甲第3号証について
甲第3号証には、酸化防止剤として、クロロゲン酸を含有する生コーヒー豆抽出物と抽出トコフェロール(ビタミンE)を配合してなるものが記載されており(実施例)、ここで、クロロゲン酸は、本件特許発明1における「長命草ポリフェノール」の一つであると認められる。
しかしながら、甲第3号証には、クロロゲン酸を含有する生コーヒー豆抽出物に代えて「長命草」又は「長命草含水エタノール抽出物」を配合することについては記載も示唆もないから、本件特許発明1?4が、甲第3号証に記載された発明である、あるいは、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、甲第3号証に基づく申立理由1及び2には理由がない。

(3)甲第4?6号証について
甲第4?6号証には、長命草の乾燥粉末が記載されるものの、これに所定割合のビタミンEを配合する(外添する)ことについては記載されていないから、本件特許発明1?4が、甲第4?6号証に記載された発明である、あるいは、甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、甲第4?6号証に基づく申立理由1及び2には理由がない。

(4)甲第8号証について
ア 甲第8号証の健康食品について、甲第9号証には、「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2011/10/19」との記載があるが、甲第9号証自体がいつインターネットに掲載されたものであるか不明であるから、甲第8号証が本件特許発明の出願前に公知であったか否かは明らかでない。
それゆえ、甲第8号証の記載に基づいて、本件特許発明1?4の新規性及び進歩性を否定することはできない。

イ また、仮に、甲第8号証が本件特許発明の出願前に公知になったものであるとしても、以下のとおり、本件特許発明1?4は新規性及び進歩性を有するといえる。

甲第8号証には、ボタンボウフウ(長命草)エキス末70mg及びビタミンE20mgを含有する組成物が記載されているものの、該エキス末が本件特許発明1及び2における「長命草」と異なるものであることは明らかであるし、該エキス末が本件特許発明3及び4における「長命草含水エタノール抽出物」に相当するものであるかどうかは定かでない。さらに、甲第8号証には、長命草ポリフェノールとビタミンEの配合割合も明らかにされていない。
したがって、本件特許発明1?4が、甲第8号証に記載された発明である、あるいは、甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、甲第8号証に基づく申立理由1及び2には理由がない。

(5)第10号証及び甲第11号証について
甲第10号証には、ホタンボウフウは、栄養成分(100g当たり)として、ビタミンC47mg、ビタミンE(α-トコフェロール当量)1.7mg、αトコフェロール1.7mgを含むこと、並びに、ボタンボウフウ100g中に、ポリフェノールが400mg程度含まれることが記載されている。
また、甲第11号証には、「長命草・明日葉・大麦若葉 3腫の国産原料を配合」した「与那国の三燦青汁」が、「ボタンボウフウ葉(長命草)、大麦若葉、明日葉、デキストリン、乳糖、コーンスターチ、抹茶、イソマルトオリゴ糖、多穀麹、乳酸菌、ビタミンB6」を原材料とし、1包(2.5g)あたり、ビタミンEを0.117mg含むことが記載されている。
しかしながら、甲第10号証及び甲第11号証には、ボタンボウフウ(長命草)とビタミンEを配合すること、すなわち、ビタミンEを外添することは記載されていないから、この点において、本件特許発明1及び2が、甲第10号証又は甲第11号証に記載された発明である、あるいは、甲第10号証又は甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲第10号証及び甲第11号証には、長命草含水エタノール抽出物について記載されていないから、この点において、本件特許発明3及び4が、甲第10号証又は甲第11号証に記載された発明である、あるいは、甲第10号証又は甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、甲第10号証又は甲第11号証に基づく申立理由1及び2には理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項〔1、2〕、〔3、4〕に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項〔1、2〕、〔3、4〕に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長命草及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物であって、
上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物:
ここで「長命草ポリフェノール」の量は、前記長命草の粉末を80%エタノール水溶液で80℃で30分間抽出して得られる長命草抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノールの量を意味する。
【請求項2】
さらにビタミンCが配合されており、ビタミンCとビタミンEの総量が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.002?10重量部である請求項1に記載する組成物。
【請求項3】
長命草含水エタノール抽出物及びビタミンEが配合されてなる経口又は外用組成物であって、
上記ビタミンEの配合割合が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.001?5重量部である組成物:
ここで「長命草ポリフェノール」の量は、前記長命草含水エタノール抽出物を測定試料として、没食子酸を標準物質としたFolin-Ciocalteu法により算出されるポリフェノールの量を意味する。
【請求項4】
さらにビタミンCが配合されており、ビタミンCとビタミンEの総量が長命草ポリフェノール1重量部に対して0.002?10重量部である請求項3に記する組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-14 
出願番号 特願2012-71648(P2012-71648)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中尾 忍  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 關 政立
阪野 誠司
登録日 2016-11-25 
登録番号 特許第6045164号(P6045164)
権利者 小林製薬株式会社
発明の名称 長命草ポリフェノール並びにビタミンE及び/又はビタミンCを含む組成物  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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