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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  E01C
管理番号 1340120
異議申立番号 異議2017-700555  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-02 
確定日 2018-03-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6038846号発明「路面切削用の自走式道路切削機、特に大型切削機、および路面切削の方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6038846号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕,14に訂正することを認める。 特許第6038846号の請求項1-14に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6038846号の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、平成25年3月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年3月8日、ドイツ)の出願である特願2013-46747号の一部を平成26年8月1日に新たな出願としたものであって、平成28年11月11日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年6月2日に特許異議申立人範多機械株式会社(以下「申立人」という。)より請求項1ないし14に対して特許異議の申立てがされ、平成29年7月31日付けで取消理由(発送日同年8月4日)が通知され、その指定期間内である同年10月30日(差出日)に意見書及び訂正請求書が提出され、これに対して申立人より同年12月26日に意見書の提出がされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成29年10月30日付け訂正請求書による訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に係る発明の記載「進行方向に見て前方向に前記切削ローラ(12)により削り取られた切削物を除去するための、前記切削ローラハウジング(10)と協働するコンベヤベルト手段(18)」を「進行方向に見て前方向に前記切削ローラ(12)により削り取られた切削物を除去するためのコンベヤベルト手段(18)であって、大型切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラ(12)の位置間で、前記切削ローラ(12)と、前記コンベヤベルト手段(18)の下端を含めた前記切削ローラハウジング(10)とを変位させるように前記切削ローラハウジング(10)と協働する、前記コンベヤベルト手段(18)」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に係る発明の記載「前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、」を「前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に係る発明の記載「切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削ローラハウジングと共に変位させることができ、」を「作業を中断させることなく切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記ゼロ側を、前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができ、」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項14に係る発明の記載「自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって」を「請求項1に記載の自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって」に訂正する。

2 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「前記切削ローラハウジング(10)」と「コンベヤベルト手段(18)」とが協働することについて、協働する態様が具体的に限定されたものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
「前記切削ローラハウジング(10)と協働するコンベヤベルト手段(18)」において、協働する態様が具体的に限定されたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件明細書の段落【0063】に「一端が機械フレーム8に固定され、他端が切削ローラハウジング10に固定されたピストンシリンダユニット45は、道路切削機1の外側面に対して左寄せまたは右寄せする切削ローラ12の位置間で、切削ローラ12と、コンベヤベルトユニット18の下端44を含めた図2および図3に示す切削ローラハウジング10のその他の要素とを含む切削ローラハウジング10のユニット全体を変位させるように適合されている。」と記載されている。
上記の記載には、
「左寄せまたは右寄せする切削ローラ12の位置間で、切削ローラ12と、コンベヤベルトユニット18の下端44を含めた」「切削ローラハウジング10とを含む切削ローラハウジング10」のユニット全体を変位させる点が示唆されている。
したがって、訂正後の上記訂正事項1は、明細書又は図面に記載されているといえる。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、請求項1の記載「前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、」における変位の態様を、「前記切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように」との記載により具体的に特定し、更に限定するものであるといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
訂正事項2は、請求項1の記載「前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、」における変位の態様をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件明細書の段落【0017】に「正確な切削深さ調節を維持するために、2つのリニアガイドにより、切削ローラハウジングを機械フレームで強固に支持し、それによって切削ローラを上下方向に強固に支持することができる。更に、切削ローラハウジングは、切削ローラが進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように進行方向に強固に支持される。」と記載されている。
したがって、上記訂正された点は、明細書又は図面に記載されているといえる。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、請求項1の記載「切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削ローラハウジングと共に変位させることができ、」における変位の内容を、「作業を中断させることなく切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記ゼロ側を、前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができ、」との記載により具体的に特定し、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
訂正事項3は、請求項1の記載「切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削ローラハウジングと共に変位させることができ、」において、変位の内容を具体的に特定し、さらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件明細書の段落【0012】に「本発明による解決策には、切削ローラを車体の車軸間に配置することにより、実質的に機械の全重量が切削ローラに作用し、これにより、高い前進速度で大きな切削深さを達成できるという利点がある。切削ローラが変位可能であるので、進行方向を維持しながら、障害物に沿って右寄せまたは左寄せして選択的に工事を行うことができるように、ゼロ側を一方の外側面またはその反対側の外側面に選択的に画定することができる。・・・」と記載され、また、段落【0064】に「、図2および図3に示す全ての構成要素を含む切削ローラハウジング10を、進行方向31に対して横断方向に、この移動距離だけ変位させることができることを意味する。例えば、切削ローラ12の先端が、進行方向31に見て、機械の左側でかつ外側面26,28の反対側または近傍の位置にある場合、機械のゼロ側は左側に設けられる。」と記載されている。
したがって、上記訂正された点は、明細書又は図面に記載されているといえる。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、請求項14の記載「自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって」を「請求項1に記載の自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって」との記載により、自走式大型切削機(1)を請求項1に記載のものに限定するとともに、請求項1との引用関係を形成し、従属形式請求項へ改める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
訂正事項4は、請求項14の記載「自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって」を「請求項1に記載の自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって」との記載により、請求項1との引用関係を形成し、従属形式請求項へ改める訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1ないし3により訂正された請求項1に記載の自走式大型切削機は、上記(1)ないし(3)で説示したとおり、明細書又は図面に記載されている。また、明細書には、その自走式大型切削機を用いた路面の切削方法が開示されている。
したがって、上記訂正された点は、明細書又は図面に記載されているといえる。

訂正事項1ないし3に係る訂正前の請求項1ないし13について、請求項2ないし13は請求項1の記載を直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1ないし3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし13に対応する訂正後の請求項1ないし13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(5)まとめ
したがって、上記訂正請求による訂正事項1ないし4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし14について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記訂正請求により訂正された請求項1ないし14に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、以下のとおりのものである(下線は訂正箇所を示す)。

(1)本件発明1
【請求項1】
高さ調節可能な車体(4)と、
進行方向に見て、前記車体の前車軸および後車軸と、
前記車体(4)により支持された機械フレーム(8)と、
前記機械フレーム(8)に配置された切削ローラハウジング(10)と、
前記切削ローラハウジング(10)に回転自在に支持された単一の切削ローラ(12)と、
前記切削ローラ(12)に一体化された切削ローラ駆動ユニット(14)と、
進行方向に見て前方向に前記切削ローラ(12)により削り取られた切削物を除去するためのコンベヤベルト手段(18)であって、大型切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラ(12)の位置間で、前記切削ローラ(12)と、前記コンベヤベルト手段(18)の下端を含めた前記切削ローラハウジング(10)とを変位させるように前記切削ローラハウジング(10)と協働する、前記コンベヤベルト手段(18)とを具備する路面(2)切削用の自走式大型切削機(1)であって、
前記切削ローラ(12)は、前記切削ローラハウジング(10)と共に、垂直および進行方向に前記機械フレーム(8)で強固に支持され、前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、
前記切削ローラハウジング(10)の横方向前端が、縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために、前記機械フレーム(8)の横外側面(26,28)の一つ、いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である、自走式大型切削機(1)において、
前記切削ローラハウジング(10)は、前記前車軸および後車軸の間に配置され、
作業を中断させることなく切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削口ーラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記ゼロ側を、前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができ、前記切削ローラ(12)は、
切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備することを特徴とする、自走式大型切削機。

(2)本件発明2
【請求項2】
前記切削ローラハウジング(10)を、前記機械フレーム(8)の進行方向に互いに間隔を置いて配置された2つのリニアガイド(34,36)に沿って直線的に変位させることを特徴とする、請求項1に記載の自走式大型切削機。

(3)本件発明3
【請求項3】
前記リニアガイドの第1のガイド(34)が位置決め軸受を画定する筒状ガイドであり、前記リニアガイドの第2のガイド(36)が平面間に配置されるとともに、非位置決め軸受を画定するガイドであることを特徴とする、請求項2に記載の自走式大型切削機。

(4)本件発明4
【請求項4】
前記切削ローラ(12)の最大横走行距離が、500?1000mmの範囲であることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。

(5)本件発明5
【請求項5】
前記コンベヤベルト手段(18)の下端(44)を受けるためのベルトシュー(40)が、前記切削ローラハウジング(10)に高さ調節可能に固定されることを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。

(6)本件発明6
【請求項6】
前記コンベヤベルト手段(18)が、前記ベルトシュー(40)に関節連結されることを特徴とする、請求項5に記載の自走式大型切削機。

(7)本件発明7
【請求項7】
前記ベルトシュー(40)が、前記コンベヤベルト手段(18)の前記下端(44)を関節連結により受けるための凹状の受けソケット(48)を具備し、前記受けソケット(48)が前記コンベヤベルト手段(18)の前記下端(44)の、前記受けソケット(48)の形状に適合された下側と協働することを特徴とする、
請求項5または6に記載の自走式大型切削機。

(8)本件発明8
【請求項8】
前記コンベヤベルト手段(18)の前側上端(46)が、前記コンベヤベルト手段(18)の長手方向軸線に沿って直線的に変位可能であるように、カルダン継手により前記機械フレーム(8)に支持されることを特徴とする、請求項5?7のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。

(9)本件発明9
【請求項9】
可撓性の支持を確保するために、少なくとも前記コンベヤベルト手段(18)の前記前側上端(46)において、前記コンベヤベルト手段(18)が、前記コンベヤベルトの方向に延びかつ凸状の軸受面を有するコンベヤベルト側支持要素(52)を下側に具備し、前記支持要素(52)が、横方向に案内されるとともに、凸状の支持面を有しかつ前記機械フレーム(8)に進行方向に対して横断方向に固定されたフレーム側支持要素(56)に載置されることを特徴とする、請求項8に記載の自走式大型切削機。

(10)本件発明10
【請求項10】
前記コンベヤベルト側支持要素(52)および/または前記フレーム側支持要素(56)が、丸みを帯びた断面の形状または中空形状により画定されることを特徴とする、請求項9に記載の自走式大型切削機。

(11)本件発明11
【請求項11】
前記ベルトシュー(40)が、同期ガイド(60)を介して高さ調節可能であることを特徴とする、請求項5?10のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。

(12)本件発明12
【請求項12】
進行方向に見て、前記切削ローラハウジング(10)の後端が、前記切削ローラ(12)の切削軌道(68)に横方向に載置されるとともに、前記路面(2)に直交して延びる前記切削軌道(68)の切削縁(70)に対して弾性的に当接される高さ調節可能なストリッパシールド(64)と面一であることを特徴とする、請求項1?11のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。

(13)本件発明13
【請求項13】
前記進行方向に見て、前記切削ローラハウジング(10)の後端は、下縁(78)が高さ調節可能なストリッパシールド(64)と実質的に面一であり、前記ストリッパシールド(64)は、それぞれの可動シールド要素(74)を両側端に具備し、前記可動シールド要素(74)は、その下縁(78)が実質的に前記ストリッパシールド(64)と面一であり、前記ストリッパシールド(64)と共に高さ調整可能であり、高さ調節可能な前記ストリッパシールド(64)と共に、切削作業中にストリッパシールド幅を前記切削ローラ(12)の切削軌道(68)に動的に適合させるばね付勢に抗して調節可能であることを特徴とする、請求項1?12のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。

(14)本件発明14
【請求項14】
請求項1に記載の自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって、
前記自走式大型切削機(1)が、
横外側面(26,28)を含む機械フレーム(8)と、
切削ローラハウジング(10)に回転自在に支持された単一の切削ローラ(12)と、
前記切削ローラ(12)用の切削ローラ駆動ユニット(14)とを具備し、
前記切削ローラハウジング(10)の横方向前端が、縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために、前記機械フレーム(8)の前記横外側面(26,28)の一つ、いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である、路面(2)の切削の方法において、
前記切削ローラ駆動ユニット(14)を前記切削ローラ(12)にー体化させ、かつ前記切削ローラ駆動ユニット(14)と共に、前記切削ローラ(12)を進行方向に対して横断方向に変位可能に支持することにより、前記ゼロ側が前記機械フレーム(8)の一方の外側面(26,28)またはその反対側の外側面(26,28)に選択的に画定されるように適合され、
切削作業中に前記切削ローラを前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備することを特徴とする、路面の切削の方法。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?14に係る特許に対して特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)明確性要件違反
請求項1?14に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
(2)サポート要件違反
請求項1?14に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
(3)実施可能要件違反
請求項1?14に係る発明は、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
(4)進歩性欠如
ア 請求項1?6、11?14に係る発明は、甲1発明、及び甲2?9発明または事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号により取り消されるべきものである。
イ 請求項1?6、11?14に係る発明は、甲2発明、甲1、3?9発明または事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号により取り消されるべきものである。

3 甲号証の記載
甲第1号証:特開平9-21107号公報
甲第2号証:特開2009-13777号公報
甲第3号証:特開平9-324404号公報
甲第4号証:特開2009-46971号公報
甲第5号証:野田正治、「中型路面切削機CRP-160L型」、建設機械、日本工業出版、平成2年5月1日、第26巻第5号(通巻302号)、72頁?74頁
甲第6号証:畠中徹、「小型路面切削機CRP-120FL」、建設機械、日本工業出版、平成2年4月1日、第26巻第4号(通巻301号)、51頁?53頁
甲第7号証の1:米国特許出願公開第2011/241408号明細書
甲第7号証の2:米国特許出願公開第2011/241408号明細書の翻訳文
甲第8号証の1:欧州特許出願公開第771911号明細書
甲第8号証の2:欧州特許出願公開第771911号明細書の抄訳文
甲第9号証:特表2002-510000号公報

(1)甲第1号証について
甲第1号証には、申立人の主張をふまえると、段落【0008】,【0009】,【0013】,【0014】,【0015】及び図1ないし図3の記載からみて、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)及び事項(以下、「甲第1号証に記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「ガイド脚9によって高さ調節可能な走行車体1と、
進行方向に見て、走行車体1の前車輪6および後車輪6と、
走行車体1により支持された昇降機体10と、
昇降機体10に配置されたハウジング3dと、
ハウジング3dに回転自在に支持された単一の回転カッター3cと、
ハウジング3dに取り付けられた油圧モータ及び減速機3eと、
進行方向に見て前方向に回転カッター3cにより削り取られた切削物を除去するための搬出コンベア14とを具備する路面切削用の切削作業車であって、
回転カッター3cは、ハウジング3dと共に、垂直および進行方向に昇降機体10で支持され、油圧モータ及び減速機3eは、昇降機体10での支持によって、進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、
ハウジング3dの横方向前端が、縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために、昇降機体10の横外側面の一つ、いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である、切削作業車において、ハウジング3dは、後車軸の後ろに配置され、
切削作業中に回転カッター3cをハウジング3dと共に変位させることができ、複数条のらせん状の掘削爪3bを具備する、自走式大型切削機。」

(甲第1号証に記載の事項)
回転掘削放出手段3のハウジング3dは、スライドレール11,11に沿ってスライド移動自在に載置されている点、及びシリンダー3iによって高さ調整可能な後板3gを有する点

(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載について
甲第2号証には以下の事項が、記載されている。
(ア) 「【請求項1】
地面または路面(8)を切削するための自動路面切削装置、特に大型の自動路面切削装置(1)であって、
履帯ユニット(30)または車輪で構成されるフロントアクスル(2)およびリアアクスル(3)を備えている車台と、
前記車台によって支持され、横外壁(5a、5b)および長手方向中心線(52)を有している装置フレーム(4)と、
前記フロントアクスル(2)の前記履帯ユニット(30)または車輪と、前記リアアクスル(3)の前記履帯ユニット(30)または車輪との間で前記装置フレーム(4)に支持されており、一方の端面がきわまでの切削の目的のためにゼロ側(12)と呼ばれる前記装置フレーム(4)の外側まで達している切削ドラム(6)と、
運転者のためのプラットフォーム(15)を有する運転者ステーション(10)と、
を備えている地面または路面(8)を切削するための自動路面切削装置(1)において、
前記装置フレーム(4)にて、走行方向について見たときの装置運転者のための前記プラットフォーム(15)の前方かつ前記ゼロ側(12)に位置する一部分が、垂直方向に延びかつ前記外側、下側、および上側に向かって開いている凹所(16)が前記装置フレーム(4)に形成される様相で、内側へと引っ込められており、前記凹所(16)が、下方かつ走行方向について見たときの前方に向かって広がっていることを特徴とする、自動路面切削装置。」
(イ) 「【0033】
図1が、路面切削装置1を示しており、とくには装置フレーム4と、操舵可能なフロントアクスル2およびやはり操舵可能なリアアクスル3を備える車台とを有する大型の切削装置を示している。車台は、装置フレーム4の地面または路面8からの距離の調節を可能にする昇降支柱32を介して、装置フレーム4へと接続されている。
【0034】
この道路工事装置の前端には、高さおよび横方向の両方に旋回できる搬送コンベア48が、切削後の材料を運び去るために配置されている。
【0035】
車台のフロントアクスル2およびリアアクスル3を、それぞれ2つの履帯ユニット30および/または2つの車輪で構成することができる。
【0036】
装置フレーム4は、基本的に垂直かつ路面切削装置1の長手方向中心線に平行に延びる横外壁5a、5bを備えている。外壁は、厳密に垂直である必要はなく、路面切削装置1の長手方向中心線に絶対的に平行である必要はなく、わずかなずれが可能であることを理解すべきである。外壁は、好ましくは外壁の部位5a、5bを1つの同じ平面に位置させつつ、好ましくはただ1つの部品から製造される。
【0037】
地面または路面8を切削するための切削ドラム6が、切削ドラム軸7を装置フレーム4に支持させて、履帯ユニット30の間に配置されている。切削ドラム6の一方の端面が、ゼロ側12と呼ばれる装置フレーム4の外側まで達する一方で、切削ドラム6のための駆動装置は、装置フレーム4の反対側の外壁に配置されている。
【0038】
端部の保護として機能する高さ調節可能な横板40が、ゼロ側12に面している切削ドラム6の端面に、ドラム・ハウジング41に隣接して配置されている。
【0039】
好ましくは、切削ドラム6は、フロントアクスル2およびリアアクスル3の間の真ん中に配置されている。」

イ 甲第2号証に記載の発明
上記アによると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「地面または路面8を切削するための自動路面切削装置、特に大型の自動路面切削装置1であって、
履帯ユニット30または車輪で構成されるフロントアクスル2およびリアアクスル3を備えている車台と、
前記車台によって支持され、横外壁5a、5bおよび長手方向中心線52を有している装置フレーム4と、
前記フロントアクスル2の前記履帯ユニット30または車輪と、前記リアアクスル3の前記履帯ユニット30または車輪との間で前記装置フレーム4に支持されており、一方の端面がきわまでの切削の目的のためにゼロ側12と呼ばれる前記装置フレーム4の外側まで達している切削ドラム6と、
を備えている地面または路面8を切削するための自動路面切削装置1において、
車台は、装置フレーム4の地面または路面8からの距離の調節を可能にする昇降支柱32を介して、装置フレーム4へと接続されており、
高さおよび横方向の両方に旋回できる搬送コンベア48が、切削後の材料を運び去るために配置されており、
地面または路面8を切削するための切削ドラム6が、切削ドラム軸7を装置フレーム4に支持させて、履帯ユニット30の間に配置されており、切削ドラム6の一方の端面が、ゼロ側12と呼ばれる装置フレーム4の外側まで達する一方で、切削ドラム6のための駆動装置は、装置フレーム4の反対側の外壁に配置されており、
端部の保護として機能する高さ調節可能な横板40が、ゼロ側12に面している切削ドラム6の端面に、ドラム・ハウジング41に隣接して配置されており、
切削ドラム6は、フロントアクスル2およびリアアクスル3の間の真ん中に配置されている自動路面切削装置1。」

(3)甲第3号証について
甲第3号証には、申立人が主張するように、段落【0018】の記載からみて、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲3発明)
「切削用の主ドラム17に内蔵された油圧モータM及び減速機を備えた駆動部22によって、主ドラム17を駆動回転させるようにした掘削作業車。」

(4)甲第4号証について
甲第4号証には、申立人が主張するように、段落【0042】、【0043】の記載からみて、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲4発明)
「切削ドラム6を有するドラムケーシング7を前車軸と後車軸の間に配置した自動道路切削機械1。」

(5)甲第5号証について
甲第5号証には、申立人が主張するように、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)及び事項(以下、「甲第5号証に記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲5発明)
「ヘリカル状に配列された117本のビットを有する切削ドラムが切削作業中に左右に計400mmシフト可能であり、前車輪と後車輪との間に、ドラムユニットが配置されており、縁石へのフラッシュカットや切削面の障害物の回避を容易にした中型路面切削機。」

(甲第5号証に記載の事項)
「切削ドラムは、右サイドの減速機付き油圧モータで駆動する円筒状ガイドを有する油圧シリンダと左サイドの重荷重用ローラベアリングに支持されたシフトテーブルとによって、左右に計400mmシフト可能に取り付けられている。」

(6)甲第6号証について
ア 甲第6号証の記載について
甲第6号証には、小型路面切削機に関して、第1図(52頁)、第1表(51頁)とともに、以下の記載がある。
(ア)「4.切削ドラム
左右それぞれ125mm合計250mmスライドさせることにより、路肩一杯(左側)の作業時(フラッシュカット)削り残しがなく、きれいに仕上げられる。」(52頁左欄1-4行)
(イ)「7.第1コンベヤ
ドラム追従式で、ドラムから排出された廃材を取り落とすことなく第2コンベヤに送る。・・・」(52頁左欄18-20行)
イ 甲第6号証に記載の事項
上記アの記載から、甲第6号証には、以下の事項(以下、「甲第6号証に記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲第6号証に記載の事項)
左右それぞれ125mm合計250mmスライドする切削ドラムと、ドラム追従式で、ドラムから排出された廃材を取り落とすことなく第2コンベヤに送る第1コンベヤを有する小型路面切削機。

(7)甲第7号証の1について
甲第7号証の1には、申立人が主張するように、以下の事項(以下、「甲第7号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲第7号証に記載された事項)
「ドラム2の前縁に突出するように設けられた追加の研磨工具4並びに5a及び5bを備えた切削ドラム2であって、研磨工具4によって、エッジを綺麗に研磨可能であり、研磨工具5a及び5bによって、ドラム2の作業面21の保護が可能である」点

(8)甲第8号証の1について
甲第8号証の1には、申立人が主張するように、以下の事項(以下、「甲第8号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲第8号証に記載された事項)
「ドラムの前縁に突出するように設けられた追加の活性要素250,270を備えた切削ドラム300であって、追加の活性要素250及び270は、右のエッジ251及び左のエッジ271の切削の仕上げを可能とする。」点

(9)甲第9号証について
甲第9号証には、申立人が主張するように、以下の事項(以下、「甲第9号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲第9号証に記載された事項)
「コンベア・ベルト12の下端を受けるためのベルト・シュー16が、機械フレーム6に、ピストン・シリンダ・ユニット17によって、高さ調整可能に固定されている。」点、及び「コンベア・ベルト12は、コネクティング・ストラット20によって、ベルト・シュー16に関節連結されている」点。

4 判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
ア 請求項1に係る発明について
(ア)請求項1の記載
請求項1には、以下の記載がある。
「回転自在に支持された単一の切削ローラ(12)」、
「進行方向に対して横断方向のみ可動であるように、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、」
「切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する・・・自走式大型切削機」

(イ)「その前縁」についての検討
請求項1の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」における「前縁」が指す箇所が明確であるかについて検討する。
請求項1の「その前縁」の「その」は、文理上、「切削ローラ」のことを意味していることは明らかである。そして、「その前縁」は、「追加のチゼルツール」が具備される部位となっている。
また、「その前縁」の記載箇所の前に「前記切削ローラ(12)を変位させる為に、」との文言があることから、「その前縁」とは、「前記切削ローラ(12)」の「変位」の方向が考慮されて記載されたものであるといえる。そして、「切削ローラ」は、請求項1に記載されているとおり、「自走式大型切削機」の「進行方向」に対して、「横断方向のみ」であることが規定されている。

そこで、「その前縁」について、上記の点及び技術常識をふまえると、「その前縁」の「その前」とは、単一の切削ローラの変位する方向に向かう「前」の方であり、また、「縁」は、へり、はし等の語義を有していることから、ここでいう「切削ローラ」の「縁」、すなわち切削ローラの「端の部位」であると解される。
また、切削ローラは横断方向において、進行方向に対して片側一方向だけに変位するのではなく、他方向にも変位することから、請求項1における「その前縁」とは、切削ローラの横断方向(自走式大型切削機の進行方向に対する横断方向)のうち一方向に変位する場合の「端の部位」だけでなく、他方向に変位する場合の「端の部位」をも意味すると理解できる。
したがって、「その前縁」とは、「切削ローラ」の横断方向における両方の「端の部位」すなわち、「切削ローラの左右方向の両端部」であると理解できる。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、「『前縁』とは、いかなる箇所を指すのか、不明確である。たとえば円柱状の切削ローラに対して、「前縁」とは、円柱の底面の円周のことを指すのか、それとも、底面そのもののことを指すのか、不明確である。」と主張する。(申立書21頁末行-22頁5行)
「円柱の底面の円周」もしくは「底面」が指す部位は、底面の周囲であるか、底面の内部であるかの差異はあるものの、いずれであっても、円柱の切削ローラの左右方向においては両端部であるといえる。そうすると、当業者であれば、「その前縁」については、上記(イ)で説示した「切削ローラの左右方向の両端部」であると理解できるものといえる。

(エ)まとめ
請求項1に記載の「その前縁」は、上記(イ)で説示したとおり、当業者が技術常識を踏まえれば、その意味内容を理解することができるので、明確であるといえる。よって、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

イ 請求項2-14に係る発明について
請求項2-13に係る発明は、上記アで説示したとおり明確な発明である請求項1に係る発明を減縮した発明であり、また、本件発明14も上記アで説示した明確な発明である請求項1に係る発明を用いた路面の切削方法であるから、請求項1に係る発明と同様に、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
なお、請求項14には、「・・前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する・・」との記載があり、上記ア(ア)で指摘した請求項1の記載と一部表記が異なるが、実質的に同じであることから、上記のとおり判断する。

(2)特許法第36条第6項第1号について
ア 請求項1及び請求項14に係る発明について
(ア)請求項1及び請求項14の記載
請求項1には、「作業を中断させることなく切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削口ーラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記ゼロ側を、前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができ、前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備すること」と記載されている。
また、請求項14には、「切削作業中に前記切削ローラを前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備すること」と記載されている。

(イ)発明の詳細な説明の記載
a 「別の利点は、作業を中断することなく作業中に切削ローラを変位させることができることである。」(【0012】)、
b 「正確な切削深さ調節を維持するために、2つのリニアガイドにより、切削ローラハウジングを機械フレームで強固に支持し、それによって切削ローラを上下方向に強固に支持することができる。更に、切削ローラハウジングは、切削ローラが進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように進行方向に強固に支持される。」(【0017】)
c 「横外側面を含む機械フレームと、回転自在に支持された単一の切削ローラと、切削ローラ用の切削ローラ駆動ユニットとを具備し、切削ローラの先端が、縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために、・・・」(【0039】)
d 「ピストンシリンダユニット45は、切削作業中であっても、切削ローラ12を含む切削ローラハウジング10を変位させるのに十分に大きな力を発揮することができる。このために、切削ローラのそれぞれの先端に追加のツール13を設けてもよい。」(【0065】)
との記載がある。

(ウ)「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」点の発明の詳細な説明における開示について
請求項1及び14に係る発明の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」点が、発明の詳細な説明に記載されたものであるかについて検討する。

a 上記(イ)dには、「切削ローラのそれぞれの先端」に設けられた「追加のツール13」が記載されている。ここで、「切削ローラのそれぞれの先端」及び「追加のツール13」の意義が必ずしも判然としないので、以下、その意義を検討する。
まず、「切削ローラのそれぞれの先端」の語句の意味について検討する。 このうち「それぞれ」には、通常、二つ以上のことがらの一つ一つを指すことの意味があり、「先端」には、物の一番さきの部分という語義がある。 また、発明の詳細な説明には、「切削ローラ」が進行方向に対して「横断方向」に変位するものである点((イ)のa,b参照)、「切削ローラの先端」が、「縁部または障害物のできるだけ近くで切削」される部位であることを意味する点((イ)のc参照)が示されている。そして、技術常識をふまえれば、前記「物の一番さきの部分」が、「端部」と言い換えられ、前記「横断方向」は、進行方向に対して、左右に変位する方向と言い換えることができる。そうすると、「切削ローラのそれぞれの先端」が、切削ローラの左右方向の両端部のことを意味していると理解することができる。
次に、「追加のツール13」の語句の意味について検討する。
路面切削機の分野において、路面を切削するための部品を「チゼル」ということは、申立人が申立書の16頁26行?17頁1行でも述べているように、技術常識である。一方、発明の詳細な説明の段落【0065】(前記(イ)d)の記載から、「ツール13」は、切削作業中に切削ローラを変位させることに資する部品であると解される。そうすると、路面を切削するための機能を有する部品である上記「ツール13」という道具は、「チゼル」ということもできる。そして、チゼルともいえる「ツール13」を、路面切削機の分野において、「チゼルツール」ということは、差し支えないものと解される。
そうすると、「追加のツール13」は、本件特許の発明の詳細な説明においては、「追加のチゼルツール」と同義であると解される。
以上のことから、発明の詳細な説明には、「切削ローラのそれぞれの先端」に設けられた「追加のツール13」、すなわち、「切削ローラの左右方向の両端部」に設けられた「追加のチゼルツール」の技術が記載されているといえる。

b 一方、請求項1及び14に係る発明の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」の「その前縁」は、上記(1)で説示したように、「切削ローラの左右方向の両端部」であると解される。
そうすると、請求項1に係る発明の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」、別な言い方をすれば、「その前縁」に具備される「追加のチゼルツール」は、「切削ローラの左右方向の両端部」に具備される「追加のチゼルツール」であるといえる。

c 上記aのとおり、発明の詳細な説明には、「切削ローラの左右方向の両端部」に設けられた「追加のチゼルツール」の技術が記載されているのであるから、請求項1に係る発明の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」(上記bにおける「切削ローラの左右方向の両端部」に具備される「追加のチゼルツール」)と同様の事項が、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
以上のことから、請求項1及び請求項14に係る発明(「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」点を含む発明」)が、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

イ 請求項2ないし請求項13に係る発明について
請求項2ないし請求項13に係る発明は、請求項1の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」という構成を含む発明である。前記構成は、上記アで説示したとおり、発明の詳細な説明に記載されている。
したがって、請求項2ないし請求項13に係る発明も、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

ウ 申立人の主張について
申立人は、「請求項1に係る発明の追加のチゼルツールが解決しようとする課題は、『切削作業中に、切削ローラを変位させる』という点にあると言える。しかし、【0012】及び【0065】に記載された技術的事項のみでは、上記課題をどのようにして解決するのか、その具体的解決手段を理解することはできない。
一方、請求項1では、『切削作業中に前記切削ローラを前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する』と発明が特定されており、追加のチゼルツールが、切削作業中に前記切削ローラを前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができる構成を有しているとされており、『切削作業中に、切削ローラを変位させる』との課題を解決させることができる手段として、追加のチゼルツールが特定されている。
このように、発明の詳細な説明には、『切削作業中に、切削ローラを変位させる』との課題を解決するための具体的手段が開示されていない一方で、請求項1に係る発明では、『切削作業中に、切削ローラを変位させる』との課題を解決させることができる手段として、追加のチゼルツールが特定されている。
したがって、発明の詳細な説明に記載されていない発明が、請求項1に係る発明として特定されていることとなるため、請求項1に係る発明には、特許法第36条第6項第1号違反が存在することとなる。」と主張している。(申立書20頁21行-21頁13行)

発明の詳細な説明をみると、段落【0065】には、「切削作業中であっても、切削ローラ12を含む切削ローラハウジング10を変位させるのに十分に大きな力を発揮することができる。このために、切削ローラのそれぞれの先端に追加のツール13を設けてもよい。」と記載されている。すなわち、「切削作業中」に「切削ローラ12を含む切削ローラハウジング10を変位させる・・・このために、切削ローラの・・先端に追加のツールを設け・・」ることとしているのであるから、ここでいう、「切削ローラのそれぞれの先端に追加のツールを設け」ることが、「切削作業中に、切削ローラを変位させる」との課題を解決するための具体的手段を構成するものであるといえる。
そして、上記アで検討したように、発明の詳細な説明に記載の「切削ローラのそれぞれの先端に追加のツールを設け」ることは、請求項1に記載の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」ことと同じ技術的意味内容であること、そして、申立人がいうように「追加のチゼルツール」が課題解決の具体的手段であるとすれば、この具体的手段は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
したがって、申立人の主張を採用することができない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、請求項1?請求項14に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
よって、本件特許の請求項1?14に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(3)特許法第36条第4項第1号について
ア 請求項1及び14に係る発明について
(ア)請求項1に係る発明及び請求項14に係る発明
請求項1に係る発明は、自走式大型切削機における、「切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する」ものである。
また、請求項14に係る発明は、路面の切削方法において、請求項1に記載の自走式大型切削機を用い、自走式大型切削機が「切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する」ものである。
(イ)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の段落【0065】には、「切削作業中であっても、切削ローラ12を含む切削ローラハウジング10を変位させるのに十分に大きな力を発揮することができる。このために、切削ローラのそれぞれの先端に追加のツール13を設けてもよい。」と記載されている。

イ 検討
既に上記(1)及び(2)で述べているように、発明の詳細な説明の「切削ローラのそれぞれの先端に追加のツールを設け」ることと、特許請求の範囲の請求項1に記載の「その前縁に追加のチゼルツールを具備する」ことは同様の技術的意味内容であるといえる。
また、発明の詳細な説明の記載に加えて、一般的な技術事項に基づけば、「切削ローラの左右方向の両端部」に「追加のチゼルツール」を設けること、すなわち、請求項1に係る発明の自走式大型切削機における、「切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する」ことを当業者であれば容易に想定できる。
したがって、請求項1及び14に係る発明について、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

また、請求項2?13に係る発明は、請求項1に係る発明と同様に「切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する」という構成を有するものであるが、請求項2?13に係る発明についても、上記説示したことと同様に、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえることは明らかである。

ウ 申立人の主張について
「明細書及び図面には、切削ローラの横断方向に突出しているチゼルツールについては、一切開示も示唆もされていない。よって、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載だけでは、切削ローラ12の前縁に設けられた追加のチゼルツールについて、その発明の属する分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができるということは、できない。」と主張している。(申立書第19頁19-24行)
しかしながら、上記のとおり、発明の詳細な説明の段落【0065】には、「切削作業中であっても、切削ローラ12を含む切削ローラハウジング10を変位させるのに十分に大きな力を発揮することができる。このために、切削ローラのそれぞれの先端に追加のツール13を設けてもよい。」と記載されており、当該記載と共に一般的な技術事項に基づけば、上記のとおり、請求項1に係る発明の自走式大型切削機における、「切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する」ものを当業者が実施することができるといえる。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、請求項1?14に係る発明につき、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

(4)特許法第29条第2項について
ア 本件発明1について
(ア)甲1発明を主引用例とした場合の対比・判断
a 対比
甲1発明の「ガイド脚9によって高さ調節可能な走行車体1」は、本件発明1の「高さ調節可能な車体(4)」に相当する。
以下同様に、
「昇降機体10」は、「機械フレーム(8)」に、
「ハウジング3d」は、「切削ローラハウジング(10)」に、
「回転カッター3c」は、「切削ローラ(12)」に、
「油圧モータ及び減速機3e」は、「切削ローラ駆動ユニット(14)」に、
「搬出コンベア14」は、「コンベヤベルト手段(18)」に、
「回転カッター3cは、ハウジング3dと共に昇降機体10に支持され」ることは、「切削ローラ(12)は、切削ローラハウジング(10)と共に機械フレーム(8)で支持され」ることに、
「油圧モータ及び減速機3eは、昇降機体10での支持によって進行方向に対して横方向に変位可能に支持され」ることは、「切削ローラ駆動ユニット(14)は、機械フレーム(8)での支持によって、進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され」ることに、
「切削作業中に回転カッター3cをハウジング3dと共に変位させる」ことは、「切削作業中に切削ローラ(12)を切削ローラハウジング(10)と共に変位させる」ことに、
「路面切削用の切削作業車」ないしは「自走式大型切削機」は、「路面(2)切削用の自走式大型切削機」ないしは「自走式大型切削機」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の車輪が車軸を有していることが明らかなので、本件発明1の「車体の前車軸および後車軸」と甲1発明の「走行車体1の前車輪6および後車輪6」は、「車体の前車軸および後車軸」の点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致するとともに、少なくとも以下の点で相違する。
<一致点>
高さ調節可能な車体(4)と、
進行方向に見て、前記車体の前車軸および後車軸と、
前記車体(4)により支持された機械フレーム(8)と、
前記機械フレーム(8)に配置された切削ローラハウジング(10)と、
前記切削ローラハウジング(10)に回転自在に支持された単一の切削ローラ(12)と、
前記切削ローラ(12)に一体化された切削ローラ駆動ユニット(14)と、
進行方向に見て前方向に前記切削ローラ(12)により削り取られた切削物を除去するためのコンベヤベルト手段(18)とを具備する路面(2)切削用の自走式切削機であって、
前記切削ローラ(12)は、前記切削ローラハウジング(10)と共に、前記機械フレーム(8)で支持され、前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、
前記切削ローラハウジング(10)の横方向前端が、縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために、前記機械フレーム(8)の横外側面(26,28)の一つ、いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である、自走式切削機において、
切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削口ーラハウジング(10)と共に変位させることができる、自走式大型切削機。
<相違点>
1 コンベヤベルト手段(18)が、本件発明1では、切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラ(12)の位置間で、前記切削ローラ(12)と、前記コンベヤベルト手段(18)の下端を含めた前記切削ローラハウジング(10)とを変位させるように前記切削ローラハウジング(10)と協働するものであるのに対して、甲1発明では、本件発明1のように切削ローラハウジング(10)と協働するものであるかどうか不明である点。
2 本件発明1では、切削ローラ(12)が切削ローラハウジング(10)と共に機械フレーム(8)に強固に支持され、また、切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるようになされているのに対して、甲1発明では、切削ローラ(12)が切削ローラハウジング(10)と共に機械フレーム(8)に対して強固に支持されているか不明であり、また、切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるようになされているか不明である点。
3 切削ローラハウジング(10)が、本件発明1では、前車軸および後車軸の間に配置されているのに対して、甲1発明では、後者軸の後に配置されている点。
4 本件発明1では、作業を中断させることなく前記切削ローラ(12)を前記切削口ーラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記ゼロ側を、前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができるのに対して、甲1発明では、作業を中断させることなく前記切削ローラ(12)を前記切削口ーラハウジング(10)と共に変位させるとともに、前記ゼロ側を、前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができるか不明である点
5 切削ローラが、本件発明1では、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備するのに対して、甲1発明では、追加のチゼルツールを具備していない点

b 判断
相違点について検討する。
<相違点1>について
甲第6号証に記載の事項の「切削ドラム」及び「第1コンベヤ」は、本件発明1の「切削ローラ(12)」及び「コンベヤベルト手段(18)」に相当し、甲6発明の「切削ドラム」が「左右にスライド可能」であることは、本件発明1の「切削ローラ(12)」が「左寄せまたは右寄せする」ことに相当する。そして、甲第6号証に記載された事項の「第1コンベヤ」はドラム追従式であるものと認められる。
しかしながら、甲第6号証の「7.第1コンベヤ」の項目の記載をみても、追従式であることにより「ドラムから排出された廃材を取り落とすこと」がない、との作用が奏される点まではうかがえるものの、甲第6号証に開示される内容は、これにどまるものであり、第1コンベヤの端部を含めた切削ローラハウジングとの協働を示す記載ないしは示唆はない。
また、甲第6号証の第1図及び第1表を見ると、第1図には、第2コンベヤにかかる「2,575」、「30°」の記載があるとともに、第1表には「スイング幅:左右各2,500mm」との記載があって、第2コンベヤが可動ないしは変位することを示唆しているが、第1コンベヤが可動ないしは変位することは、第1図及び第1表のいずれにも記載も示唆もされていない。
したがって、甲第6号証には、「ドラム追従式」の第1コンベヤが開示されているとしても、第1コンベヤが、切削ローラが左右にスライドする位置間で、切削ローラと、第1コンベヤの(切削ローラ側の)端部を含めた点とを変位させるように協働しているとの構成、すなわち、本件発明1の「大型切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラ(12)の位置間で、前記切削ローラ(12)と、前記コンベヤベルト手段(18)の下端を含めた前記切削ローラハウジング(10)とを変位させるように前記切削ローラハウジング(10)と協働する、前記コンベヤベルト手段(18)」が記載も示唆もされていないというべきである。
また、甲第2号証?甲第5号証、甲第7号証?甲第9号証をみても、コンベヤが切削ローラハウジングと協働しているとの構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に、甲第2?9号証に記載された発明または事項を適用して、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことではない。

c 申立人の主張について
申立人は、「甲6発明では、切削ドラムを左寄せ又は右寄せ可能とした状態で、第1コンベヤがドラム追従式となっているのであるから、左寄せ及び右寄せした状態でも、第1コンベヤが切削ドラムに追従できるようになっている。よって、甲第6号証には、『左寄せまたは右寄せする切削ドラムの位置間で、切削ドラムのドラム・ハウジングと協働する第1コンベヤ』が記載されている。そして、甲6発明の切削ドラムのドラム・ハウジングに第1コンベヤを追従させる際には、当然、第1コンベアの下端を含めた部分が追従しているわけであるから、甲1発明に甲6発明を適用することで、相違点2については、容易に想到することが可能である。 」 (意見書8-9頁)、「甲6発明において、切削コーラの左右のスライド合計は、250mmであり、切削口-ラが250mmの幅をスライドする際に、第1コンベヤが追従可能である」(意見書9頁)と主張している。
確かに、第1コンベヤは、「ドラム追従式」ではあるものの、上記bで説示したように、第1コンベヤが、切削ローラが左右にスライドする位置間で、切削ローラと、第1コンベヤの(切削ローラ側の)端部を含めた切削ローラハウジングとを変位させるように切削ローラハウジングと協働しているとの構成が記載も示唆もされていないのであるから、甲1発明に甲6発明を適用したとしても、相違点に係る本件発明1の構成とすることはできない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

d まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明、甲第2号証?甲第9号証に記載の発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲2発明を主引用例とした場合について
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「車台」は本件発明1の「車体」に、以下同様に、「フロントアクスル2」は「前車軸」に、「リアアクスル3」は「後車軸」に、「装置フレーム4」は「機械フレーム」に、「ドラム・ハウジング41」は「切削ローラハウジング」に、「切削ドラム6」は「切削ローラ」に、「駆動装置」は「切削ローラ駆動ユニット」に、「搬送コンベア48」は「コンベヤベルト手段」に、「大型の自動路面切削装置」は「自走式大型切削機」に、相当する。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点>
7 本件発明1では、「切削ローラ駆動ユニット」が「前記切削ローラ(12)に一体化され」ているのに対し、甲2発明ではそのことが特定されていない点
8 コンベヤベルト手段(18)が、本件発明1では、切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラ(12)の位置間で、前記切削ローラ(12)と、前記コンベヤベルト手段(18)の下端を含めた前記切削ローラハウジング(10)とを変位させるように前記切削ローラハウジング(10)と協働するものであるのに対して、甲2発明では、本件発明1のように切削ローラハウジング(10)と協働するものではない点。
9 本件発明1では、「前記切削ローラ(12)は、前記切削ローラハウジング(10)と共に、垂直および進行方向に前記機械フレーム(8)で強固に支持され、前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され」ているのに対し、甲2発明ではそのことが特定されていない点
10 本件発明1では、「切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削ローラハウジングと共に変位させることができ」るのに対し、甲2発明ではそのことが特定されていない点
11 本件発明1では、「前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備する」のに対し、甲2発明ではそのことが特定されていない点

b 判断
事案に鑑み相違点8から検討する。
<相違点8>について
上記相違点8は、上記相違点1と実質的に同じであるから、相違点1で検討したとおり、甲2発明において相違点8に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことではない。

c まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲2発明、甲第1、3?9号証に記載の発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるので、本件発明1は、甲1発明、甲第2?9号証に記載の発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明、甲第1、3?9号証に記載の発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?6、11?14について
本件発明2?6、11?14は、本件発明1の構成を全て含み更に減縮したもの、あるいは、本件発明1を用いた発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲1?9発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明7?10について
実質的に減縮の訂正がなされた本件発明7?10について言及すると、本件発明7?10は、本件発明1の構成を全て含み更に減縮したものであるから、本件発明1と同様の理由で、甲1?9発明または事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ調節可能な車体(4)と、
進行方向に見て、前記車体の前車軸および後車軸と、
前記車体(4)により支持された機械フレーム(8)と、
前記機械フレーム(8)に配置された切削ローラハウジング(10)と、
前記切削ローラハウジング(10)に回転自在に支持された単一の切削ローラ(12)と、
前記切削ローラ(12)に一体化された切削ローラ駆動ユニット(14)と、
進行方向に見て前方向に前記切削ローラ(12)により削り取られた切削物を除去するためのコンベヤベルト手段(18)であって、大型切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラ(12)の位置間で、前記切削ローラ(12)と、前記コンベヤベルト手段(18)の下端を含めた前記切削ローラハウジング(10)とを変位させるように前記切削ローラハウジング(10)と協働する、前記コンベヤベルト手段(18)とを具備する路面(2)切削用の自走式大型切削機(1)であって、
前記切削ローラ(12)は、前記切削ローラハウジング(10)と共に、垂直および進行方向に前記機械フレーム(8)で強固に支持され、前記切削ローラ駆動ユニット(14)は、前記機械フレーム(8)での支持によって、前記切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように、前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され、
前記切削ローラハウジング(10)の横方向前端が、縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために、前記機械フレーム(8)の横外側面(26,28)の一つ、いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である、自走式大型切削機(1)において、
前記切削ローラハウジング(10)は、前記前車軸および後車軸の間に配置され、
作業を中断させることなく切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記ゼロ側を、前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができ、前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備することを特徴とする、自走式大型切削機。
【請求項2】
前記切削ローラハウジング(10)を、前記機械フレーム(8)の進行方向に互いに間隔を置いて配置された2つのリニアガイド(34,36)に沿って直線的に変位させることを特徴とする、請求項1に記載の自走式大型切削機。
【請求項3】
前記リニアガイドの第1のガイド(34)が位置決め軸受を画定する筒状ガイドであり、前記リニアガイドの第2のガイド(36)が平面間に配置されるとともに、非位置決め軸受を画定するガイドであることを特徴とする、請求項2に記載の自走式大型切削機。
【請求項4】
前記切削ローラ(12)の最大横走行距離が、500?1000mmの範囲であることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項5】
前記コンベヤベルト手段(18)の下端(44)を受けるためのベルトシュー(40)が、前記切削ローラハウジング(10)に高さ調節可能に固定されることを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項6】
前記コンベヤベルト手段(18)が、前記ベルトシュー(40)に関節連結されることを特徴とする、請求項5に記載の自走式大型切削機。
【請求項7】
前記ベルトシュー(40)が、前記コンベヤベルト手段(18)の前記下端(44)を関節連結により受けるための凹状の受けソケット(48)を具備し、前記受けソケット(48)が前記コンベヤベルト手段(18)の前記下端(44)の、前記受けソケット(48)の形状に適合された下側と協働することを特徴とする、請求項5または6に記載の自走式大型切削機。
【請求項8】
前記コンベヤベルト手段(18)の前側上端(46)が、前記コンベヤベルト手段(18)の長手方向軸線に沿って直線的に変位可能であるように、カルダン継手により前記機械フレーム(8)に支持されることを特徴とする、請求項5?7のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項9】
可撓性の支持を確保するために、少なくとも前記コンベヤベルト手段(18)の前記前側上端(46)において、前記コンベヤベルト手段(18)が、前記コンベヤベルトの方向に延びかつ凸状の軸受面を有するコンベヤベルト側支持要素(52)を下側に具備し、前記支持要素(52)が、横方向に案内されるとともに、凸状の支持面を有しかつ前記機械フレーム(8)に進行方向に対して横断方向に固定されたフレーム側支持要素(56)に載置されることを特徴とする、請求項8に記載の自走式大型切削機。
【請求項10】
前記コンベヤベルト側支持要素(52)および/または前記フレーム側支持要素(56)が、丸みを帯びた断面の形状または中空形状により画定されることを特徴とする、請求項9に記載の自走式大型切削機。
【請求項11】
前記ベルトシュー(40)が、同期ガイド(60)を介して高さ調節可能であることを特徴とする、請求項5?10のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項12】
進行方向に見て、前記切削ローラハウジング(10)の後端が、前記切削ローラ(12)の切削軌道(68)に横方向に載置されるとともに、前記路面(2)に直交して延びる前記切削軌道(68)の切削縁(70)に対して弾性的に当接される高さ調節可能なストリッパシールド(64)と面一であることを特徴とする、請求項1?11のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項13】
前記進行方向に見て、前記切削ローラハウジング(10)の後端は、下縁(78)が高さ調節可能なストリッパシールド(64)と実質的に面一であり、前記ストリッパシールド(64)は、それぞれの可動シールド要素(74)を両側端に具備し、前記可動シールド要素(74)は、その下縁(78)が実質的に前記ストリッパシールド(64)と面一であり、前記ストリッパシールド(64)と共に高さ調整可能であり、高さ調節可能な前記ストリッパシールド(64)と共に、切削作業中にストリッパシールド幅を前記切削ローラ(12)の切削軌道(68)に動的に適合させるばね付勢に抗して調節可能であることを特徴とする、請求項1?12のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項14】
請求項1に記載の自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法であって、
前記自走式大型切削機(1)が、
横外側面(26,28)を含む機械フレーム(8)と、
切削ローラハウジング(10)に回転自在に支持された単一の切削ローラ(12)と、
前記切削ローラ(12)用の切削ローラ駆動ユニット(14)と
を具備し、
前記切削ローラハウジング(10)の横方向前端が、縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために、前記機械フレーム(8)の前記横外側面(26,28)の一つ、いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である、路面(2)の切削の方法において、
前記切削ローラ駆動ユニット(14)を前記切削ローラ(12)に一体化させ、かつ前記切削ローラ駆動ユニット(14)と共に、前記切削ローラ(12)を進行方向に対して横断方向に変位可能に支持することにより、前記ゼロ側が前記機械フレーム(8)の一方の外側面(26,28)またはその反対側の外側面(26,28)に選択的に画定されるように適合され、
切削作業中に前記切削ローラを前記切削ローラハウジング(10)と共に変位させることができ、前記切削ローラ(12)は、切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に、その前縁に追加のチゼルツールを具備することを特徴とする、路面の切削の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-16 
出願番号 特願2014-157748(P2014-157748)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (E01C)
P 1 651・ 121- YAA (E01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 須永 聡  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 西田 秀彦
井上 博之
登録日 2016-11-11 
登録番号 特許第6038846号(P6038846)
権利者 ヴィルトゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
発明の名称 路面切削用の自走式道路切削機、特に大型切削機、および路面切削の方法  
代理人 ▲高▼山 嘉成  
代理人 阿部 寛  
代理人 山田 行一  
代理人 山田 行一  
代理人 阿部 寛  
代理人 池田 成人  
代理人 池田 成人  
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