ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C04B |
---|---|
管理番号 | 1340129 |
異議申立番号 | 異議2017-700747 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-07-31 |
確定日 | 2018-04-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6071483号発明「速硬剤および速硬性混和材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6071483号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6071483号の請求項1?3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第6071483号は、平成24年11月29日に出願された特願2012-261721号の特許請求の範囲に記載された請求項1?3に係る発明について、平成29年1月13日に設定登録、同年2月1日に登録公報の発行がされたものであり、その後、その全請求項に係る特許について、同年7月31日付けの特許異議の申立てが佐藤勝彦(以下、「申立人」という。)によりされ、同年10月25日付けの取消理由を通知したところ、同年12月14日付けの訂正請求がされ、これに対し、平成30年2月2日付けの意見書が申立人より提出されたものである。 第2.訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正は、次の訂正事項よりなる(下線部が訂正箇所)。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「SiO_(2)とTiO_(2)の含有モル比(SiO_(2)/TiO_(2))が0.7?4」とあるのを、「SiO_(2)とTiO_(2)の含有モル比(SiO_(2)/TiO_(2))が0.7?2.2」と訂正する。 2.訂正要件の判断 訂正事項1は、請求項1に記載された「速硬剤」の発明において、成分モル比の数値範囲をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正後の数値範囲は、訂正前の数値範囲内にあって新たな技術的事項を追加するものではないから、この訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項1に係る訂正前の請求項1を請求項2、3が直接引用しているから、本件訂正は、一群の請求項1?3について請求したものと認められる。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 第3.本件発明について 訂正が認められることにより、本件特許の請求項1?3に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。 【請求項1】 化学成分としてAl_(2)O_(3)とCaOとSiO_(2)とTiO_(2)を合計で95質量%以上含有するアルミン酸カルシウムシリケートであって、化学成分としてのAl_(2)O_(3)とCaOの含有モル比(CaO/Al_(2)O_(3))が1.4?1.8であり、化学成分としてのSiO_(2)とTiO_(2)の合計含有量が4?9.5質量%且つSiO_(2)とTiO_(2)の含有モル比(SiO_(2)/TiO_(2))が0.7?2.2であるアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とする速硬剤。 【請求項2】 アルミン酸カルシウムシリケートのガラス化率が50%以上である請求項1記載の速硬剤。 【請求項3】 請求項1又は2記載の速硬剤と、石膏類と、凝結促進剤及び/又は凝結遅延剤とを含有する速硬性混和材。 第4.取消理由について 1.概要 当審が通知した取消理由は、申立人が提出した、 甲第1号証:特開昭49-99124号公報(以下、「甲1」という。) 甲第4号証:特開平4-97932号公報 (以下、「甲4」という。) を引用し、 「本件訂正前の請求項1,2に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1?3に係る発明は、甲1,4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」 というものである。 2.判断 (1)甲1には、急硬性を有するセメント組成物の実施例において、次の化学分析値(重量%)を有するカルシウムアルミネートの無定形物を、無水石膏と共にポルトランドセメントに加えることが記載されている。 SiO_(2):3.8% Fe_(2)O_(3):2.7% Al_(2)O_(3):45.8% CaO:43.9% MgO:0.3% TiO_(2):1.6% ここで、上記各酸化物の式量であるSiO_(2):60 Al_(2)O_(3):102 CaO:56 TiO_(2):80を用いると、各酸化物相互の含有モル比も計算できるから、甲1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「化学成分としてAl_(2)O_(3)とCaOとSiO_(2)とTiO_(2)を合計で95.1質量%以上含有するカルシウムアルミネートの無定形物であって、化学成分としてのAl_(2)O_(3)とCaOの含有モル比(CaO/Al_(2)O_(3))が約1.75であり、化学成分としてのSiO_(2)とTiO_(2)の合計含有量が5.4質量%且つSiO_(2)とTiO_(2)の含有モル比(SiO_(2)/TiO_(2))が約3.17であるカルシウムアルミネートの無定形物からなる急硬性添加剤。」 (2)本件訂正後の請求項1に係る発明と引用発明とを対比すると、SiO_(2)とTiO_(2)の含有モル比(SiO_(2)/TiO_(2))が、本件訂正後の請求項1に係る発明では0.7?2.2であるのに対し、引用発明では約3.17である点で実質的に相違する。 したがって、本件訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明ではない。 (3)次に、上記相違点について検討するに、引用発明においては、SiO_(2)もTiO_(2)も不純物にすぎず、甲1には、そのモル比を変更することについて記載も示唆もない。 一方、甲4には、アルミノケイ酸カルシウムガラスを含む急硬性セメント混和材に関し、ガラス成分となるSiO_(2)は、5重量%以上とすることが好ましく、原料由来の不純物となるTiO_(2)は、MgOやFe_(2)O_(3)などの他の不純物との合計で10重量%未満であれば好ましいことが記載されている。 してみると、この甲4の記載から、引用発明において、3.8重量%のSiO_(2)を増やすことが示唆されるとしても、不純物であるTiO_(2)をSiO_(2)以上に増やして両者の含有モル比(SiO_(2)/TiO_(2))を0.7?2.2にすることが示唆されるとはいえない。 すなわち、引用発明において上記相違点を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、本件訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2,3に係る発明は、甲1,4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)ここで、申立人は、提出した、 甲第2号証:地質調査所編「地質ニュース123号」株式会社実業公報社、 昭和39年11月、17?25頁 甲第3号証:地質調査所編「地質ニュース124号」株式会社実業公報社、 昭和39年12月、18?28頁 を引用し、引用発明のAl_(2)O_(3)源であるボーキサイトには、産地によりTiO_(2)含有量の多いものがあるから、引用発明において、SiO_(2)/TiO_(2)が0.7?2.2となることは容易に起こり得ると主張している。 しかしながら、甲4の記載を参酌しても、引用発明におけるTiO_(2)は不純物と解されるから、仮に、そのAl_(2)O_(3)源としてTiO_(2)含有量の多いボーキサイトが用いられるとしても、TiO_(2)の除去をせずに使用されるとは考えられない。 したがって、上記主張は採用できない。 第5.むすび 以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 化学成分としてAl_(2)O_(3)とCaOとSiO_(2)とTiO_(2)を合計で95質量%以上含有するアルミン酸カルシウムシリケートであって、化学成分としてのAl_(2)O_(3)とCaOの含有モル比(CaO/Al_(2)O_(3))が1.4?1.8であり、化学成分としてのSiO_(2)とTiO_(2)の合計含有量が4?9.5質量%且つSiO_(2)とTiO_(2)の含有モル比(SiO_(2)/TiO_(2))が0.7?2.2であるアルミン酸カルシウムシリケートを有効成分とする速硬剤。 【請求項2】 アルミン酸カルシウムシリケートのガラス化率が50%以上である請求項1記載の速硬剤。 【請求項3】 請求項1又は2記載の速硬剤と、石膏類と、凝結促進剤及び/又は凝結遅延剤とを含有する速硬性混和材。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-03-26 |
出願番号 | 特願2012-261721(P2012-261721) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(C04B)
P 1 651・ 121- YAA (C04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡田 隆介 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 山本 雄一 |
登録日 | 2017-01-13 |
登録番号 | 特許第6071483号(P6071483) |
権利者 | 太平洋マテリアル株式会社 |
発明の名称 | 速硬剤および速硬性混和材 |
代理人 | 近藤 惠嗣 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |