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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B |
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管理番号 | 1340143 |
異議申立番号 | 異議2017-701236 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-12-26 |
確定日 | 2018-04-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6158640号発明「積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた塗布型磁気記録テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6158640号の請求項1?5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6158640号(以下「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年8月21日の出願であって、平成29年6月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年12月26日に、その特許に対し、特許異議申立人東レ株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 塗布型磁気記録テープに用いるベースフィルムであって、少なくとも磁性層を形成する側の表面を形成するA層と磁性層を形成しない側の表面を形成するB層の2層からなる積層ポリエステルフィルムであって、 A層は、平均粒子径0.06-0.29μmで、粒子径の相対標準偏差が20%以下の粒子を0.001-0.19質量%含有し、該A層の表面における地肌指数が80?99.99%の範囲であり、 他方磁性層を形成しない側のB層は、A層と平均粒子径が同じで、粒子径の相対標準偏差が20%以下の粒子を0.03-0.9質量%含有し、かつその粒子含有量がA層の1.5倍以上であり、そして A層の粒子5個以上の凝集突起が3個/9cm^(2)以下であり、B層の粒子5個以上の凝集突起が10個/9cm^(2)以下である積層ポリエステルフィルム。 【請求項2】 ポリエステルがエチレンテレフタレートまたはエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とする請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。 【請求項3】 A層の極限粘度が0.50以上0.54以下、B層の極限粘度が0.50以上0.54以下であり、A層の極限粘度がB層のそれよりも大きい請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。 【請求項4】 含有粒子が球状シリカ粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、シリカーアクリル複合粒子のいずれかである請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムと、その磁性層を形成する側の表面に塗布形成された磁性層とからなる塗布型磁気記録テープ。」 3.申立理由の概要 申立人は、甲第1号証?甲第5号証(以下「甲1」?「甲5」という。)を提出し、下記の理由を申立てている。 [理由1]本件発明1?5は、甲1に記載された発明及び甲2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、本件発明1?5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 [理由2]本件発明1、2、4、5は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、本件発明1?5は、甲2に記載された発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、本件発明1?5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 甲1:特開2011-165266号公報 甲2:特開2005-199724号公報 甲3:特開2011-204334号公報 甲4:特開2007-196512号公報 甲5:特開2003-291288号公報 4.当審の判断 (1)申立ての理由1について ア.本件発明1の積層ポリエステルフィルムの、磁性層を形成する側の表面を形成するA層と磁性層を形成しない側の表面を形成するB層は、同じ平均粒子径の粒子を含有するものである。 この同じ平均粒子径の粒子をいずれの層にも用いることにより、「フィルム生産時に製品にならなかった部分を回収して、いずれの層にも回収できるという優れた生産性を有しながらも、実用上必要な搬送性などの加工性を具備し、しかも塗布型磁気記録テープ、特にデータストレージのベースフィルムに用いたときに、エラーとなる微小な表面欠点までも低減されていることから、電磁変換特性に優れ、エラーレートやドロップアウト、サーマルアスピリティの少ないデータストレージを提供することができる。」(本件特許明細書の【0009】)という効果を奏するものとされる。 イ.そこで、甲1についてみると、磁性層を形成する側の表面を形成するポリエステルは、「不活性粒子を含有しないか、含有するとしても、平均粒径0.05?0.15μm、さらに0.07?0.14μmの不活性粒子」を含有し(甲1の【0023】)、磁性層を形成しない側の表面を形成するポリエステルは、「平均粒径が0.2?0.5μm、さらに0.2?0.4μmの不活性粒子」と「平均粒径が0.05?0.15μm、さらに0.06?0.14μmの不活性粒子」を含有する(甲1の【0027】)と記載されており、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側のいずれにも、同じ平均粒子径の粒子を含有するとは記載されていない。 また、甲1の例えば実施例2では、磁性層を形成する側(A層)に含有される粒子は「平均粒径0.1μmの真球状シリカ」であるのに対し、磁性層を形成しない側(B層)に含有される粒子は「平均粒径0.1μmの真球状シリカ」と「平均粒径0.3μmの真球状シリカ」であり、磁性層を形成しない側(B層)には、磁性層を形成する側(A層)に含有されない「平均粒径0.3μmの真球状シリカ」が含有されるから、磁性層を形成する側(A層)と磁性層を形成しない側(B層)とで、含有する粒子の平均粒子径が同じにはならず、他の実施例の記載においても、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側に、同じ平均粒子径の粒子を含有する実施例は示されていない。 そして、甲1は、「優れた電磁変換特性を発現できるポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体用支持体を提供すること」(【0006】)を課題とし、磁性層を形成する側の表面の「微小な表面欠点」を減らすことで、その課題を解決しようとするもの(【0007】)であり、本件発明1のように、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側とで、同じ平均粒子径の粒子を含有させようとする動機付けもあるとはいえない。 ウ.また、甲2についてみても、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側のいずれにも、同じ平均粒子径の粒子を含有するとは記載も示唆もされていない。 甲2の実施例1において、磁性層を形成する側(第2ポリエステル層)に含有される粒子は「平均粒径0.05μmの架橋アクリル」であるのに対し、磁性層を形成しない側(第1ポリエステル層)に含有される粒子は「平均粒径0.4μmの架橋シリコーン」と「平均粒径0.2μmの架橋シリコーン」と「平均粒径0.05μmの架橋アクリル」であり、磁性層を形成する側(第2ポリエステル層)と磁性層を形成しない側(第1ポリエステル層)とで、含有する粒子の平均粒子径が同じにはならないし、他の参考例の記載においても同様である。 エ.さらに、甲3?甲5にも、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側とで、含有する粒子の平均粒子径を同じにすることが記載されていないし、そのことを動機付ける記載もない。 オ.そうすると、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記のように、本件発明1は甲1に記載された発明及び甲2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2?5についても、甲1に記載された発明及び甲2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ.よって、本件発明1?5は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、その特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。 (2)申立ての理由2について ア.上記(1)ウ.で述べたように、甲2には、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側のいずれにも、同じ平均粒子径の粒子を含有することが、記載も示唆もされていない。 また、甲2は、「平坦面を平坦化しつつ、巻き取り性や加工性に優れ、磁気記録媒体、特にメタル塗布型の高記録密度磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性を発現しうる二軸配向積層ポリエステルフィルムを提供すること」(【0009】)を課題とし、この課題を、磁性層を形成しない側の層(第1ポリエステル層)に、「平均粒径が0.4μm以上0.7μm以下」の第1不活性粒子と「平均粒径が0.2μm以上0.4μm未満」の第2不活性粒子および「平均粒径が0.01μm以上0.2μm未満」の第3不活性粒子に加え、「炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物」を含有させること(【0013】、【0014】)により解決したものであり、本件発明1のように、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側とで、同じ平均粒子径の粒子を含有させようとする動機付けがあるとはいえない。 イ.さらに、甲3?甲5にも、磁性層を形成する側と磁性層を形成しない側とで、含有する粒子の平均粒子径を同じにすることが記載されていないし、そのことを動機付ける記載もない。 ウ.そうすると、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記のように、本件発明1は甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2、4、5も、甲2に記載された発明ではなく、また、本件発明2?5は、甲2に記載された発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ.よって、本件発明1、2、4、5は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、あるいは、本件発明1?5は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1?5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。 (3)むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-04-17 |
出願番号 | 特願2013-171007(P2013-171007) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中川 裕文 |
特許庁審判長 |
千壽 哲郎 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 武井 健浩 |
登録日 | 2017-06-16 |
登録番号 | 特許第6158640号(P6158640) |
権利者 | 帝人フィルムソリューション株式会社 |
発明の名称 | 積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた塗布型磁気記録テープ |
代理人 | 為山 太郎 |