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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F23G
管理番号 1340153
異議申立番号 異議2017-701068  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-10 
確定日 2018-05-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6168287号発明「廃棄物溶融処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6168287号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6168287号の請求項1及び2に係る特許(以下、「請求項1に係る特許」及び「請求項2に係る特許」という。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成25年6月4日に出願されたものであって、平成29年7月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年11月10日に特許異議申立人 今中崇之(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
請求項1及び2の特許に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
廃棄物溶融炉に廃棄物を投入して廃棄物を熱分解、燃焼し、熱分解燃焼後の灰分を炉下部で溶融する廃棄物溶融処理方法において、
高温火格子を形成するとともに灰分の溶融熱源となる石炭コークスの代替として、バイオマス原料を加圧成形したバイオマス成形物とバイオマス原料を成形し炭化したバイオマス炭化物とを用いることにより石炭コークスの使用量をゼロとし、
バイオマス炭化物は、燃料比(固定炭素/揮発分重量比)が10以上の高固定炭素比率で、ドラム強度DI_(15)^(30)が50%以上で、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上であり、見掛密度が0.9g/cm^(3)以上で、1個当りの重量が20g以上であり、バイオマス炭化物を炉内に投入し、崩壊させることなく下降させ炉下部に到達させ、バイオマス炭化物により高温火格子を形成し、
バイオマス成形物は、バイオマス原料を炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形して揮発分を含有させている成形物で、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が5%以下で、見掛密度が1.2g/cm^(3)以上で、1個当りの重量が100g以上であり、バイオマス成形物を炉内に投入し炉下部に下降到達させて、下降する過程でバイオマス成形物の揮発分の熱分解、燃焼を抑制し、バイオマス成形物を高温火格子上で崩壊させ燃焼して消失させ、
バイオマス炭化物の投入量を少なくとも高温火格子を形成するのに必要な最小限量とし、灰分の溶融熱源としてバイオマス炭化物の燃焼熱量で不足する熱量をバイオマス成形物の燃焼熱量で補うようにバイオマス成形物の投入量を定めることを特徴とする廃棄物の溶融処理方法。
【請求項2】
バイオマス炭化物の投入量を廃棄物投入量に対して1?3wt%とし、バイオマス成形物の投入量を廃棄物投入量に対して3?10wt%とすることとする請求項1に記載の廃棄物の溶融処理方法。」

第3 特許異議申立ての概要
申立人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(以下、「甲1」ないし「甲8」という。)を提出し、次の申立理由を主張している。

1.申立理由
本件発明1及び2は、甲1ないし甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2.各甲号証
甲1:特開2012-145272号公報
甲2:特開2005-249310号公報
甲3:特開2005-274122号公報
甲4:国際公開第2012/161203号
甲5:特開2007-17146号公報
甲6:特開2010-144082号公報
甲7:青森県、「平成22年度 ふるさと雇用再生特別基金事業 バイオコークス事業化可能性調査報告書」
(http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/shoko/chiikisangyo/files/h22_bic_houkokusyo_gaiyou.pdf)
甲8:不服2014-11958号審決

第4 甲1ないし甲7の記載等
1.甲1の記載等
(1)甲1の記載
甲1には、「廃棄物ガス化溶融処理方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)

1a)「【請求項1】
シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、石炭コークスとバイオマス成形物を投入し、該溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、石炭コークスとバイオマス成形物を燃焼して溶融熱源とすることを特徴とする廃棄物のガス化溶融処理方法。
【請求項2】
石炭コークスの炉内への投入量は、高温火格子を形成することに必要な量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマス成形物により補うこととする請求項1に記載の廃棄物のガス化溶融処理方法。
【請求項3】
石炭コークスの炉内への投入量は、処理される廃棄物1tあたり20kg以上30kg未満であることとする請求項1または請求項2に記載の廃棄物のガス化溶融処理方法。
【請求項4】
バイオマス成形物の炉内への投入量は、処理される廃棄物1tあたりバイオマス成形物の固定炭素量が5kg以上30kg未満に相当する量であることとする請求項1乃至3のいずれかに記載の廃棄物のガス化溶融処理方法。」

1b)「【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、廃棄物溶融炉における石炭コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減すると共に、廃棄物溶融炉の運転費を低減することができ、安定した操業ができる廃棄物の溶融処理方法を提供することを課題とする。」

1c)「【0014】
バイオマスはFAO(国際食料農業機関)によって分類されており、バイオマスとして、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材、稲わら、籾殻等の木質系バイオマス、さらに、製紙系バイオマス、農業残渣、家畜糞尿、食品廃棄物等の未利用バイオマス資源等を挙げることができる。本発明では、これらのバイオマスを原料とし、必要に応じバインダー添加、加圧及び加熱のうち少なくとも一つの処理を施し成形したものをバイオマス成形物と定義する。バイオマス成形物の原料の一部としてバイオマスの炭化物が含まれていることもある。
【0015】
このような構成における本発明によると高温火格子を形成する石炭コークスは元来有しているその塊状形状により、コークス同士間に生ずる空隙で通気確保と通液確保とが確実に行われる高温火格子とする機能と、溶融するための熱源としての機能とをもつ。一方、バイオマス成形物は、その高温強度、形状・寸法に係りなく使用可能であり、石炭コークスの溶融熱量を補足する溶融熱源としての機能をもつ。したがって、石炭コークスは高温火格子を形成するに必要な最小限の量で足り、溶融熱源として不足する分は上記バイオマス成形物で補うことができ、両者で十分な溶融熱源を確保しつつ、最小の石炭コークスで高温火格子層の形成を可能とする。
【0016】
仮に、バイオマス成形物だけで高温火格子を形成させようとすると、高い高温強度そして所定サイズ以上のバイオマス成形物が必要となるが、その価格は高い。また、高温火格子としての安定性も石炭コークスより劣る。一方、バイオマス成形物は、溶融熱の供給源、すなわち溶融熱源としての役目だけであれば、高い高温強度は必要とされないし、その大きさにも何ら制限はない。したがって、低価格のバイオマス成形物を使用することができ、廃棄物溶融炉の運転費を低減することができる。
【0017】
このようにして、石炭コークスで高温火格子を形成すると、この石炭コークスとバイオマス成形物が主羽口からの燃焼用空気により燃焼してその燃焼ガスが高温火格子を良好に上昇通気して廃棄物を加熱して熱分解、燃焼そして溶融し、溶融物が良好に上記高温火格子を降下通液する。」

1d)「【0033】
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスとバイオマス成形物を投入し、ガス化溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、石炭コークスとバイオマス成形物を燃焼して、廃棄物の熱分解残渣(灰分)、不燃物を溶融する溶融熱源とする。石炭コークスの炉内への投入量は、高温火格子を形成することに必要な量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマス成形物により補うこととし、それぞれ所定量を投入する。
【0034】
このような廃棄物のガス化溶融処理過程において、燃料としての石炭コークスとバイオマス成形物のうち、少なくとも石炭コークスは炉内への投入当初から塊状をなしており、下部シャフト部Iの高温燃焼帯で、石炭コークス同士間での隙間により、高温火格子を形成する。この高温火格子の層は、その上面が主羽口5よりも上方に位置しており、主羽口5からの酸素富化空気または空気が上記隙間を上昇通気し、石炭コークスとバイオマス成形物の燃焼が良好に行われその十分なる燃焼ガスが廃棄物層へ到達する。一方、高温燃焼帯で廃棄物の不燃物や灰分が、石炭コークスとバイオマス成形物の燃焼による熱量により十分に溶融して、溶融スラグと溶融金属が生ずる。溶融スラグと溶融金属は、上記高温火格子の隙間を良好に降下通流し、出滓口4に達する。
【0035】
このような廃棄物のガス化溶融処理方法によると、高温火格子を形成する石炭コークスは元来有しているその塊状形状により、コークス同士間に生ずる空隙で通気確保と通液確保とが確実に行われる高温火格子とする機能と、溶融するための熱源としての機能とをもつ。一方、バイオマス成形物は、その高温強度、形状・寸法に係りなく使用可能であり、石炭コークスの溶融熱量を補足する溶融熱源としての機能をもつ。したがって、石炭コークスは高温火格子を形成するに必要な最小限の量で足り、溶融熱源として不足する分は上記バイオマス成形物で補うことができ、両者で十分な溶融熱源を確保しつつ、最小の石炭コークスで高温火格子層の形成を可能とする。バイオマス成形物は、溶融熱の供給源、すなわち溶融熱源としての役目だけであれば、高い高温強度は必要とされないし、その大きさにも何ら制限はない。したがって、低価格のバイオマス成形物を使用することができ、廃棄物溶融炉の運転費を低減することができる。
【0036】
このようにして、石炭コークスで高温火格子を形成すると、この高温火格子の石炭コークスと高温火格子に堆積したバイオマス成形物が主羽口からの燃焼用空気により燃焼してその燃焼ガスが高温火格子を良好に上昇通気して廃棄物を加熱して熱分解、燃焼そして溶融し、溶融物が良好に上記高温火格子を降下通液する。」

1e)「【0039】
バイオマス成形物として、以下の性状のものが好ましい。
・形状は塊状が好ましい。粒状物を含む場合には大粒径のものを含むことが好ましい。小粒状物、粉状物を多く含むと高温火格子の空隙を塞ぎ、通気確保と通液確保とが損なわれ、また、溶融炉に投入時に飛散し炉下部にまで到達する割合が小さくなり、溶融熱源として十分機能できないため好ましくない。
・塊状の場合に寸法は長径が200mm以下が好ましい。長径が200mmより大きいと、廃棄物溶融炉で通常用いられる装入装置を利用することが難しく、既設の廃棄物溶融炉の装入装置を変更する必要が生じたり、廃棄物溶融炉を新設する際には装入装置の価格が高くなり、経済的でない。
・塊状の場合に短径に対する長径の比が5以下が好ましい。短径に対する長径の比が5以上の細長い形状になると、装入系統において詰まりが生じたり、廃棄物溶融炉内において装入物の正常な降下を妨げるなどのトラブルが生じるため好ましくない。
・粒状の場合に粒径分布は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下であることが好ましい。かつ、算術平均粒径が10mm以上が好ましい。この粒径分布、算術平均粒径を充足しない場合には、高温火格子の空隙を塞ぎ通気確保と通液確保とが損なわれ、また溶融炉に投入する時に飛散し炉下部にまで到達しないものが多くなり、好ましくない。
・固定炭素比率は10重量%以上が好ましい。固定炭素比率は日本工業規格JIS-M8812に準拠して測定される。固定炭素比率が10重量%より小さいと、廃棄物溶融炉の炉上部において揮発する割合が大きく、炉下部にまで到達する割合が小さくなり、溶融熱源として十分機能できないため好ましくない。
・見掛け密度は300kg/m^(3)以上が好ましい。
・発熱量は低位発熱量として10,000 kJ/kg以上であることが好ましい。固定炭素比率が高ければ、低位発熱量は一般ごみ並みでよい。
・強度は、バイオマス成形物には高温火格子の機能を必要としないため、冷間強度、熱間強度、高温反応後強度については定めない。輸送過程で粉々にならない程度の強度を有すればよい。」

1f)上記1d)段落【0033】の記載から、ガス化溶融炉の下部において、廃棄物の熱分解残渣(灰分)及び不燃物を溶融することが分かる。

1g)上記1e)の記載「・固定炭素比率は10重量%以上が好ましい。固定炭素比率は日本工業規格JIS-M8812に準拠して測定される。固定炭素比率が10重量%より小さいと、廃棄物溶融炉の炉上部において揮発する割合が大きく、炉下部にまで到達する割合が小さくなり、溶融熱源として十分機能できないため好ましくない。」から、バイオマス成形物は、バイオマス成形物の固定炭素比率を10重量%以上とすることにより、溶融炉の炉上部において揮発する割合を小さくし、炉下部にまで到達する割合が大きくなるようにして、溶融熱源として十分機能させるものであることが分かる。

(2)甲1発明
上記(1)及び図1の記載を総合すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を投入して廃棄物を熱分解、燃焼し、熱分解残渣を溶融炉の下部で溶融する廃棄物溶融処理方法において、
高温火格子を形成するとともに熱分解残渣の溶融熱源とするために石炭コークスとバイオマス成形物とを用い、
バイオマス成形物は、バイオマスを原料とし、必要に応じバインダー添加、加圧及び加熱のうち少なくとも一つの処理を施し成形したものであり、
バイオマス成形物の固定炭素比率を10重量%以上とすることにより、溶融炉の炉上部において揮発する割合を小さくし、炉下部にまで到達する割合が大きくなるようにして溶融熱源として機能させるものであって、
石炭コークスの投入量を高温火格子を形成するに必要な最小限の量とし、熱分解残渣の溶融熱源として不足する分は上記バイオマス成形物の燃焼熱量で補うような所定量を投入する廃棄物溶融処理方法。」

2.甲2の記載等
(1)甲2の記載
甲2には、「塊状バイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

2a)「【請求項1】
シャフト炉方式の廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融処理する廃棄物の溶融処理方法において、炉下部に形成する高温火格子の媒体として、代表的な高温反応後強度:CSRが20%以上70%未満である塊状バイオマスを利用することを特徴とする廃棄物溶融処理方法。」

2b)「【請求項3】
塊状バイオマスの冷間強度が、代表的なドラム強度の指標でDI_(15)で50%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塊状バイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。」

2c)「【請求項7】
投入するバイオマス固形物の量が固形炭素ベースで廃棄物処理量の3%以上10%以下とすることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の塊状バイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。」

2d)「【0014】
本発明は、シャフト炉方式の廃棄物の溶融処理に使用されている化石燃料に由来するコークスやLNG、灯油等の代替として、塊状のバイオマスを利用して、シャフト炉下部に高温の火格子を形成して、コークス使用量の削減をするとともに、環境に対するCO_(2)負荷を削減することができる塊状のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法を提供するものである。」

2e)「【0022】
CSRが20%未満の塊状バイオマスを使用した場合には、ほとんどの塊状バイオマスがCO_(2)熱ガスによって、内部からのガス化によって粉化してしまうことを意味しており、炉頂より装入された塊状バイオマスがシャフト炉内を下降する過程で粉化し、最終的に飛散してしまうか、炉底部に到達してもすぐに燃焼消失してしまうために、コークスのように高温火格子を形成できない。その結果、スラグ温度が低下し、最終的にはスラグ排出不能となり、操業継続不能となった。」

2f)「【0028】
図3に、ドラム強度DI_(15)とスラグ温度の関係について、発明者らが実験した結果を示す。図3によると、DI_(15)が50%以上であれば、スラグ温度が1500℃程度維持できていることがわかる。」

2g)「【0032】
また、これらの発明で記述した塊状バイオマスは、高炉用コークスと比較すれば熱間強度CSR、冷間強度DI_(15)とも低い範囲の塊状バイオマスも使用可能としている。経済性のみを考えれば、熱間強度CSR、冷間強度DI_(15)とも低いほど、塊状バイオマスの成型条件、材料の質、乾留条件に対する制限はいずれも緩和され、製造コストを低減できる。したがって、経済的な運転を行うためには、バイオマスの強度レベルを下げる必要があり、そうする場合、炉頂から投入されたバイオマスのうち、炉内で高温にさらされるうちに粉化し、最終的には炉内ガスに随伴して炉外に飛散するバイオマスも存在する。そのような場合に、シャフト炉出口にサイクロン等の除じん器を設け、その除じんした可燃性ダストを羽口から酸素若しくは酸素富化空気とともに吹き込むことによって、一旦は炉外に飛散したバイオマスが羽口前で燃焼し、溶融熱源として寄与するため、より効率的に塊状バイオマスの添加量を低減することが可能になる。さらに、除じん器より後流側の燃焼室には、ダストが除去されたガスが流入し、ガス燃焼主体となるため、燃焼性の向上やダイオキシンの再合成抑制、さらには飛灰量の低減が図られることとなる。
【0033】
また、投入されるバイオマス固形物の量は、コークスの添加量をゼロとするためには、固形炭素ベースで廃棄物処理量の3%以上となることが必要である。」

2h)「【0041】
木質系バイオマス固化物は、以下の4種類の圧縮成型したバイオマス由来の成型物を使用した。(1)建築廃材のおがくずを加熱圧縮成形した炭化物、(2)、(4)市販の木炭2銘柄、(3)鶏糞、(5)市販のオガライト。」

(2)甲2技術
上記(1)及び図1の記載を総合すると、甲2には次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。

「シャフト炉方式の廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融処理する廃棄物の溶融処理方法において、炉下部に形成する高温火格子の媒体として、代表的な高温反応後強度がCSRが20%以上70%未満、冷間強度が、代表的なドラム強度の指標でDI_(15)で50%以上である塊状バイオマスを利用することにより石炭コークスの使用量を削減する技術。」

3.甲3の記載等
(1)甲3の記載
甲3には、「バイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

3a)「【請求項1】
シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を装入し、炉底部送風口から酸素もしくは酸素富化空気を吹き込んで、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、
加圧成形されたバイオマス固形物を炉上部から廃棄物と共に投入し、炉底部送風羽口から送風する酸素もしくは酸素富化空気で廃棄物と共に還元燃焼することによって発生した無酸素の燃焼ガスで、バイオマス固形物をシャフト炉内で乾燥、乾留することによって炭化物化させ、シャフト炉下部で炭火物層を形成し、該炭火物層内で前記還元燃焼を行い、廃棄物中灰分の溶融用熱源とすることを特徴とするバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項2】
バイオマス固形物が、木質系バイオマス、家畜糞尿・下水汚泥・し尿汚泥等のバイオマス粉状物もしくはそれらの粉状炭化物、溶融炉炉頂部から飛散する可燃ダストのいずれか、もしくはそれらの混合物を添加して加圧成形したブリケットであることを特徴とする請求項1記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項3】
バイオマス固形物が、バイオマスを加圧成形したブリケット、あるいは、木質系バイオマス、家畜糞尿・下水汚泥・し尿汚泥等のバイオマス粉状物もしくはそれらの粉状炭化物、溶融炉炉頂部から飛散する可燃ダストのいずれか、もしくはそれらの混合物を添加して加圧成形したブリケットを乾留処理した固形炭化物であることを特徴とする請求項1記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。」

3b)「【0010】
本発明は、廃棄物の溶融処理に使用されている化石燃料に由来するコークスの代替としてバイオマスを利用して、コークス使用量の削減をするとともに、環境に対するCO2負荷を削減することができるバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法を提供するものである。」

3c)「【0016】
また、バイオマス固化物を予め乾留処理して固形炭化物とすることで、溶融炉内での乾燥・乾留帯での熱履歴に関わらず、安定して炉底部に下降し、溶融用熱源として利用可能となる。即ち、固形炭化物の種別に適した乾留の温度、昇温速度で乾留処理をすることで、熱間でも十分な強度を得ることが可能となる。」

3d)「【0028】
バイオマス固化物は、木材加工時に発生するおがくずを、固体温度が約200℃となるように加熱し、約1t/cm^(2)で加圧成形により約40mm径のブリケットとし、さらに、得られたブリケットを乾留炉に装入して、800℃、20時間で乾留した炭化物を使用した、操業条件及び結果を表1に示す。」

3e)「【0030】
試験の結果、廃棄物の処理量は、石炭コークス使用時と同等の、850kg/hを達成し、溶融物の排出温度も石炭コークスと同等であった。即ち、バイオマス固化物の乾留物は従来熱源として使用していた石炭コークスに比べ溶融能力としては何等変わりなく操業可能であることが確認できた。」

(2)甲3技術
上記(1)及び図1の記載を総合すると、甲3には次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。

「シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を装入し、炉底部送風口から酸素もしくは酸素富化空気を吹き込んで、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、加圧成形されたバイオマス固形物を炉上部から廃棄物と共に投入し、シャフト炉下部で炭火物層を形成し、該炭火物層内で還元燃焼を行い、廃棄物中灰分の溶融用熱源とすることによりコークス使用量の削減をする技術。」

4.甲4の記載
甲4には、「廃棄物溶融処理方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

4a)「[0011] 本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、廃棄物溶融炉における石炭コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減すると共に、廃棄物溶融炉の運転費が嵩むことを抑制することができ、また、バイオマス原料が有する揮発分の燃焼熱を有効に利用でき、さらに安定した操業ができる廃棄物の溶融処理方法を提供することを課題とする。」

4b)「[0012] 本発明に係る廃棄物の溶融処理方法では、シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼、溶融する。
[0013] かかる廃棄物の溶融処理方法において、本発明では、石炭コークスと、バイオマス原料を炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形したバイオマス成形物を投入し、該溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、石炭コークスとバイオマス成形物を燃焼して溶融熱源とすることを特徴としている。
[0014] バイオマスはFAO(国際食料農業機関)によって分類されており、バイオマスとして、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材等の木質系バイオマス、稲わら、籾殻、草本系バイオマス、さらに、製紙系バイオマス、農業残渣、家畜糞尿、食品廃棄物等の未利用バイオマス資源等を挙げることができる。本発明では、これらのバイオマスを原料とし(バイオマス原料という)、炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形したものをバイオマス成形物として用いる。本明細書では、炭化温度とは、バイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度をいい、乾留が始まる温度でもある。
[0015] バイオマス原料を炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形したバイオマス成形物は、揮発分を含有しているため、このバイオマス成形物を投入し、溶融炉の下部で燃焼して溶融熱源とすることにより、バイオマス原料が有する揮発分の燃焼熱を有効に利用することができる。」

4c)「[0031] 一方、バイオマス成形物は、粉砕したバイオマス原料を成形容器に充填し、115?230℃の温度に加熱しながら、加圧成形して、一辺の長さが50mm以上の角柱体又は直径50mm以上で長さ50mm以上の円柱体の成形物として成形される。このような加熱条件で加熱加圧成形することにより、バイオマス原料は炭化されることなく、揮発分を50重量%以上含有するバイオマス成形物とすることができる。加圧成形する圧力として8?25MPaとしてもよい。バイオマス成形物の製造方法として、再公表特許公報WO2006/078023に記載の製造方法を適用してもよい。
[0032] 上記のような加熱加圧条件で成形することにより、バイオマス成形物の表面は非常に緻密で細孔が存在しない性状とすることができる。一辺の長さが50mm以上の角柱体又は直径50mm以上で長さ50mm以上の円柱体の寸法形状とすることと、表面は非常に緻密で細孔が存在しない性状とすることにより、バイオマス成形物は、溶融炉内に投入された後、炉内で揮発分の熱分解、燃焼が抑制され、炉下部まで到達することができ、バイオマス原料が有する揮発分の燃焼熱を溶融熱源として有効に利用することができる。」

4d)「[0037] このような廃棄物のガス化溶融処理方法によると、高温火格子を形成する石炭コークスは元来有しているその塊状形状により、コークス同士間に生ずる空隙で通気確保と通液確保とが確実に行われる高温火格子とする機能と、溶融するための熱源としての機能とをもつ。一方、バイオマス成形物は、その高温強度、形状・寸法に係りなく使用可能であり、石炭コークスの溶融熱量を補足する溶融熱源としての機能をもつ。したがって、石炭コークスは高温火格子を形成するに必要な最小限の量で足り、溶融熱源として不足する分は上記バイオマス成形物で補うことができ、両者で十分な溶融熱源を確保しつつ、最小の石炭コークスで高温火格子層の形成を可能とする。バイオマス成形物は、溶融熱の供給源、すなわち溶融熱源としての役目だけであれば、高い高温強度は必要とされない。したがって、低価格のバイオマス成形物を使用することができ、廃棄物溶融炉の運転費を低減することができる。」

5.甲5の記載
甲5には、「廃棄物溶融処理方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

5a)「【請求項1】
廃棄物をシャフト炉型の廃棄物溶融炉で直接溶融処理する廃棄物溶融処理方法において、中空筒状の炭化物をシャフト炉炉内に装入して廃棄物の溶融熱源及び還元剤として使用することを特徴とする廃棄物溶融処理方法。
【請求項2】
断面形状が、外径30?60mmで内部に直径10?30mmの空胴を持ち、その比率が外径をD、内径をdとするとd/Dが0.1?0.5の範囲にある中空筒状の固形物を乾留した炭化物を使用することを特徴とする請求項1記載の廃棄物溶融処理方法。」

5b)「【0012】
そこで本発明では、廃棄物をシャフト炉型の廃棄物溶融炉で直接溶融処理する廃棄物溶融処理方法において、安定操業を実現し、かつ使用量増加を招かないバイオマスコークスを用いた廃棄物溶融処理方法を提供するものである。」

5c)「【0013】
本発明の廃棄物溶融処理方法は、シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を装入し、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融処理する廃棄物溶融処理方法において、中空筒状の炭化物をシャフト炉炉内に装入して廃棄物の溶融熱源及び還元剤として使用することを特徴とする。
【0014】
ここで、発明者らは、実験的に、さまざまな炭化物をシャフト炉に実際に投入することによって、シャフト炉で有効に高温火格子になる炭化物を確認した。表1に、操業結果の一例を示す。
【0015】
この実験では、中空筒状の炭化物では、大幅な使用量増加もなく排出されるスラグ温度が1500℃以上に安定した運転が可能であることがわかった。また、シャフト炉の炉底部で高温火格子を形成していることが、炉底部に設置した羽口からの観察状況によっても確認できた。」

5d)「【0019】
また、図2(e)に示すように、中空筒状炭化物9の軸方向の長さLは、30mm未満では粒径が小さすぎ、形成した火格子の中を均等にガスが流れにくくなる。発明者らの実験結果によれば、30mm未満の炭化物が30質量%を超えると、火格子部での通気抵抗が増加し、安定操業が得られにくくなることがわかった。また、300mmを超える長いものであれば、供給系での詰まり、棚つりなどによるトラブルを誘発しやすく、発明者らの実験結果では、300mmを超えるものが5質量%を超えると供給系のトラブルだけでなく、溶融炉内へ装入された中空筒状炭化物が炉内で積み重なり、大きな空隙を持つ火格子を形成することにより、安定したガス流れが確保できないことがわかった。そこで、炭化物の軸方向の長さLは30?300mmの範囲とし、範囲外のものについては、30mm未満が30質量%未満、また、300mmを超えるものについては5質量%未満とすることが望ましい。これらは、篩選別などで達成可能である。」

5e)「【0023】
図4に乾留温度(炭化物の最高温度)と炭化物中の固定炭素濃度と揮発分を示す。図4に示すように、中空筒状の炭化物は、その乾留温度が600℃以上で固定炭素が80%以上かつ揮発分が20質量%以下の炭化物となり、高炉コークスの性状と近くなり、炉底部の高温雰囲気でも高温火格子を形成可能で、安定した運転が可能であることがわかった。」

5f)「【0030】
本発明による操業は従来と比較して、化石燃料に由来するコークスを中空筒状炭化物9で代替する点で大きく異なるが、その他は実質的に変わるところはない。ここで使用する中空筒状の炭化物9は、原料として製材工場で排出した粒径1mm以下のオガクズをロータリーキルンで水分3質量%に乾燥し、電気ヒーターでダイスを200℃に加熱したスクリュー押し出し式の成型機にて中空筒状の成型物としたものを、乾留炉にて、800℃で20時間乾留したものを使用した。ここで、成型物の断面形状は、断面六角形で、外形D=58mm、中心の円の直径d=18mm、d/D=0.31とした。ここで、この例では、乾燥にロータリーキルンを用いるが、乾燥機には、流動床式、気流乾燥式など各種乾燥炉が使用可能であり、また、乾留炉については、廃棄物溶融処理施設で発生する蒸気、排ガスの顕熱及び溶融炉から発生する可燃性ガスを乾留熱源として使用した。」

6.甲6の記載
甲6には、「繊維成形炭及びその製造方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

6a)「【請求項1】
麻類の靭皮繊維を圧縮成形して得られる成形体を炭化処理して形成されたことを特徴とする繊維成形炭。
【請求項2】
麻類がケナフ及びジュートの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維成形炭。
【請求項3】
上記靭皮繊維が、靭皮繊維を用いて形成される繊維マットの製造工程において排出された繊維屑から得られるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維成形炭。
【請求項4】
麻類の靭皮繊維を圧縮成形した後、炭化処理することを特徴とする繊維成形炭の製造方法。」

6b)「【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、麻類の繊維の利用を図ると共に、木炭の代替品となり得る、安価で、発熱性及び着火性のよい繊維成形炭及びその製造方法を提供することを目的とする。」

6c)「【0014】
請求項1の発明によれば、麻類の靭皮繊維を用いることにより、繊維同士がよく絡み合うので強固で形状安定性が良好であると共に、発熱性及び着火性のよい木炭代替品を得ることができる。また、麻類を利用することにより、安価なコストで木炭代替品を得ることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、カリウム分を多く含むケナフ及びジュートの少なくとも一方の靭皮繊維を用いることにより、着火性がより良好な木炭代替品を得ることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、繊維マットの製造工程で排出される繊維屑を用いることにより、廃棄物を有効利用することができるので、環境に優しいと共に、さらに安価なコストで木炭代替品を得ることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、麻類の靭皮繊維を用いて圧縮成形することにより、繊維同士がよく絡み合うので強固で形状安定性が良好であると共に、発熱性及び着火性のよい木炭代替材料を製造することができる。また、麻類を利用することにより、安価なコストで木炭代替品を製造することができる。」

6d)「【0030】
繊維成形炭の密度は800?1100kg/m^(3)であることが好ましい。密度がこの範囲になることにより、良好な発熱性と着火性を得ることができる。繊維成形炭の密度がこの範囲よりも小さいと発熱性が悪くなるおそれがある。一方、繊維成形炭の密度がこの範囲よりも大きいと着火性が悪くなるおそれがある。」

6e)「【0035】
(比較例1)
市販の備長炭(ウバメガシ炭、直径50mm、長さ100mm)を入手した。
【0036】
(比較例2)
市販のオガタン(オガライトの炭化処理物、オリオンコール社製、直径50mm、長さ100mm)を入手した。」

7.甲7の記載
甲7の「バイオコークス事業化可能性調査報告書」には、概略以下のことが示されている。

(1)小型バイオコークスを成型する原料として、「りんご搾りかす」が利用できること。
(2)小型バイオコークスの成型温度を、原料の熱分解温度よりも十分低い温度とすること。
(3)「リンゴ搾りかす」から成型した小型バイオコークスの比重が、1.35?1.42であること。
(4)小型バイオコークスが、石炭コークス代替の可能性があること。
(5)ごみ溶融炉での実証試験で使用したバイオコークスの原料が、「リンゴ搾りかす」であって、その寸法が、直径100mm×長さ50mmであること。

第5 判断
1.本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「シャフト炉式廃棄物溶融炉」は、その機能、構成又は技術的意義から、本件発明1における「廃棄物溶融炉」に相当し、以下同様に、「熱分解残渣」は「熱分解燃焼後の灰分」に、「溶融炉の下部」は「炉下部」にそれぞれ相当する。

よって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「廃棄物溶融炉に廃棄物を投入して廃棄物を熱分解、燃焼し、熱分解燃焼後の灰分を炉下部で溶融する廃棄物溶融処理方法。」

[相違点]
本件発明1においては、「高温火格子を形成するとともに灰分の溶融熱源となる石炭コークスの代替として、バイオマス原料を加圧成形したバイオマス成形物とバイオマス原料を成形し炭化したバイオマス炭化物とを用いることにより石炭コークスの使用量をゼロとし、
バイオマス炭化物は、燃料比(固定炭素/揮発分重量比)が10以上の高固定炭素比率で、ドラム強度DI_(15)^(30)が50%以上で、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上であり、見掛密度が0.9g/cm^(3)以上で、1個当りの重量が20g以上であり、バイオマス炭化物を炉内に投入し、崩壊させることなく下降させ炉下部に到達させ、バイオマス炭化物により高温火格子を形成し、
バイオマス成形物は、バイオマス原料を炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形して揮発分を含有させている成形物で、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が5%以下で、見掛密度が1.2g/cm^(3)以上で、1個当りの重量が100g以上であり、バイオマス成形物を炉内に投入し炉下部に下降到達させて、下降する過程でバイオマス成形物の揮発分の熱分解、燃焼を抑制し、バイオマス成形物を高温火格子上で崩壊させ燃焼して消失させ、
バイオマス炭化物の投入量を少なくとも高温火格子を形成するのに必要な最小限量とし、灰分の溶融熱源としてバイオマス炭化物の燃焼熱量で不足する熱量をバイオマス成形物の燃焼熱量で補うようにバイオマス成形物の投入量を定める」のに対して、
甲1発明においては、「高温火格子を形成するとともに熱分解残渣の溶融熱源とするために石炭コークスとバイオマス成形物とを用い、
バイオマス成形物は、バイオマスを原料とし、必要に応じバインダー添加、加圧及び加熱のうち少なくとも一つの処理を施し成形したものであり、
バイオマス成形物の固定炭素比率を10重量%以上とすることにより、溶融炉の炉上部において揮発する割合を小さくし、炉下部にまで到達する割合が大きくなるようにして溶融熱源として機能させるものであって、
石炭コークスの投入量を高温火格子を形成するに必要な最小限の量とし、熱分解残渣の溶融熱源として不足する分は上記バイオマス成形物の燃焼熱量で補うような所定量を投入する」点。

以下、上記相違点について検討する。

[相違点について]
本件発明1は、本件特許明細書段落【0022】、【0037】ないし【0046】及び【0047】ないし【0049】等の記載も併せみると、高温火格子を形成するとともに灰分の溶融熱源となる石炭コークスの全量を、高温火格子を形成するためのバイオマス炭化物と、炉下部での溶融熱源の供給に寄与するためのバイオマス成形物で置き換えて石炭コークスの使用量をゼロとした場合に、バイオマス炭化物が高温火格子として有効に機能し、バイオマス成形物が炉下部での溶融熱源の供給に有効に寄与するために、バイオマス炭化物を燃料比(固定炭素/揮発分重量比)が10以上の高固定炭素比率、ドラム強度DI_(15)^(30)が50%以上、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上、及び見掛密度が0.9g/cm^(3)以上で、1個当りの重量が20g以上(以下、「本件バイオマス炭化物の特性」という。)とし、バイオマス成形物を、バイオマス原料を炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形して揮発分を含有させている成形物として、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が5%以下、見掛密度が1.2g/cm^(3)以上、及び1個当りの重量が100g以上(以下、「本件バイオマス成形物の特性」という。)としたものである。
一方、甲2技術は、「シャフト炉方式の廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融処理する廃棄物の溶融処理方法において、炉下部に形成する高温火格子の媒体として、代表的な高温反応後強度がCSRが20%以上70%未満、冷間強度が、代表的なドラム強度の指標でDI_(15)で50%以上である塊状バイオマスを利用することにより石炭コークスの使用量を削減する技術」であり、
甲3技術は、「シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を装入し、炉底部送風口から酸素もしくは酸素富化空気を吹き込んで、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、加圧成形されたバイオマス固形物を炉上部から廃棄物と共に投入し、シャフト炉下部で炭火物層を形成し、該炭火物層内で還元燃焼を行い、廃棄物中灰分の溶融用熱源とすることによりコークス使用量の削減をする技術」であって、甲2技術及び甲3技術はともに、廃棄物溶融炉に塊状バイオマスあるいはバイオマス固形物を投入することにより石炭コークス使用量の削減を行うことまでは開示している。
しかしながら、上記甲2技術及び甲3技術は、廃棄物溶融炉において、石炭コークスの使用量をゼロとしたうえで、石炭コークスの代替として上記本件バイオマス成形物の特性を有するバイオマス成形物と、上記本件バイオマス炭化物の特性を有するバイオマス炭化物を用いることについての開示や示唆を行うものではない。
また、甲4ないし甲7に記載の事項及び甲8においても、廃棄物溶融炉において、石炭コークスの代替として上記本件バイオマス成形物の特性を有するバイオマス成形物と、上記本件バイオマス炭化物の特性を有するバイオマス炭化物を用いることについての開示や示唆を行うものではない。
よって、甲2技術、甲3技術、甲4ないし甲7、及び甲8に記載の事項に基いて上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。

そうすると、本件発明1は、甲1発明、甲2技術、甲3技術、甲4ないし甲7に記載の事項、及び甲8に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

2.本件発明2について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2は、請求項1の記載を直接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、甲2技術、甲3技術、甲4ないし甲7、及び甲8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-19 
出願番号 特願2013-117871(P2013-117871)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉山 豊博  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 松下 聡
水野 治彦
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6168287号(P6168287)
権利者 JFEエンジニアリング株式会社
発明の名称 廃棄物溶融処理方法  
代理人 藤岡 徹  

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