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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R |
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管理番号 | 1340445 |
審判番号 | 不服2017-5336 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-14 |
確定日 | 2018-06-11 |
事件の表示 | 特願2016-504543「外部磁界に対して鈍感なホールセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日国際公開、WO2014/154446、平成28年 5月23日国内公表、特表2016-514833、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年3月3日(パリ条約による優先権主張 2013年3月26日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成27年9月28日付けで手続補正がなされ、平成28年8月29日付けで拒絶理由が通知されたが、平成28年12月2日付けで手続補正がなされ、平成29年1月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年4月14日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成30年1月23日付けで拒絶理由が通知され、平成30年4月23日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成30年4月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ホールセンサ(1)であって、 第1の測定信号(21)を形成するように構成された第1のホール素子対(5)と、 第2の測定信号(23)を形成するように構成された第2のホール素子対(7)とを備え、 前記ホールセンサ(1)は、さらに、第3の測定信号(25)を形成するように構成された第3のホール素子対(9)を備え、 前記第3のホール素子対(9)の各ホール素子(3)は、前記第1のホール素子対(5)のホール素子(3)と前記第2のホール素子対(7)のホール素子(3)との間に配置されており、 前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)に基づいて、外部磁界(19)に起因する誤差を補償した1つの包括測定信号が形成されるように、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)は駆動可能であり、 前記ホールセンサ(1)は、少なくとも前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)を求め、これらを結合して、外部磁界(19)に起因する誤差が最小化される包括測定信号を形成するように構成された測定装置(17)を有し、 前記測定装置(17)は、前記測定信号を同時に求めるように構成されており、 前記包括測定信号の形成時に、前記測定装置(17)が、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)の位置に依存した計算アルゴリズムを適用することにより、前記外部磁界(19)が前記包括測定信号に与える影響を除去する、 ことを特徴とするホールセンサ(1)。」 本願発明2-6、8は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明7は、本願発明1-6のいずれかに係るホールセンサの製造方法の発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-71381号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、請求項1の前提部で指定したタイプの磁場の方向を検出するセンサに関するものである。」 「【0008】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施形態を図面を用いてさらに詳細に説明する。 【0009】図1は、例えば、3個のコイルを有するブラシレス電気モータの制御用の角度センサとして適した発明に対応するセンサの平面図を示している。センサは2.1から2.6の6個の水平ホール効果素子を有する半導体チップ1と1個の磁場センサ集線装置(コンセントレータ)3とを備えている。この最初の例を用いると、磁場コンセントレータ3がディスク上に形成され、かつ、6個のホール効果素子2は磁場コンセントレータ3の端部4に沿って等距離で分散して配置している。」 「【0013】図2は、図1の線I-Iに沿ったセンサの断面図であって、例えば、3個のコイルを有するブラシレス電気モータ12の回転軸11上に載置された磁場を生成する永久磁石10を示している。その環境内では、磁場コンセントレータ3は、磁力線13のコースを変え、特に、磁場コンセントレータ3がない場合に半導体チップ1の表面8にほとんど垂直に走る磁力線が、表面8に対してほとんど垂直にホール効果素子2.1を貫くという効果を有する。磁場コンセントレータ3の材料の相対透磁率は1000より大きく、一方、空気及び半導体基板7の相対透磁率は約1である。従って、磁力線は実際はいつも磁場コンセントレータ3の表面に対して垂直に並んでいる。ホール効果素子2.1から2.6は、磁場の垂直成分が最大なので、磁場コンセントレータ3の面方向端部4領域に配置している。 【0014】回転中心に対して径方向に反対に位置するホール効果素子は、出力信号の各生成に対して一対形成し、それによって一つのホール効果素子のホール電圧が他のホール効果素子のホール電圧から引かれる。磁力線が垂直方向に反対の一対のホール効果素子の両方を貫くので、磁場の“再方向付け”によって生成した電圧が蓄積し、一方、例えば、垂直にホール効果素子を貫く外側干渉磁場のために、生成したホール電圧が互いにキャンセルする。さらに、技術依存オフセット電圧は少なくとも部分的に補償される。従って、ホール効果素子2.1と2.4とは信号S1を生成し、ホール効果素子2.2と2.5とは信号S2を生成し、ホール効果素子2.3と2.6とは信号S3を生成する。出力信号S1、S2及びS3の強さは面9における磁場の方向に依存する。 【0015】永久磁石10が回転軸11の回りを回転すると、磁場はそれと共に回転し、120°だけ位相シフトした正弦波出力信号S1、S2及びS3を生成する。永久磁石10の磁場の方向が2つのホール効果素子2.1及び2.4を結合する軸に対して平行であるときには、出力信号S1は常に最大であり、また、永久磁石10の磁場の方向が2つのホール効果素子2.3及び2.5を結合する軸に対して平行であるときには、出力信号S2が常に最大であり、…。欧州特許出願EP954085に記載されているように、出力信号S1、S2及びS3を電気モータ12の3個のコイルを制御するのに用いることができる。 【0016】しかしながら、出力信号S1、S2及びS3は電気モータ12が静止しているときに回転軸11の回転角φを決定するためにも用いることができる。ここで、可能な限り、永久磁石10の磁場に起因しない出力信号S1、S2及びS3上に信号が重ならないことが重要である。ペアとして結合した各ホール効果素子を使った提案例はこれに対して特に適している。というのは、外部干渉場の影響が主に除去されかつ技術依存オフセット電圧がほとんど補償されるからである。個々のホール効果素子2.1から2.6の代わりに、2個又は3個以上のホール効果素子を備えたホール効果素子のグループを用いるとき、これによって電流方向が1グループの様々なホール効果素子で異なるので、技術依存オフセット電圧はさらに低減することができる。」 ここで、段落【0016】の「出力信号S1、S2及びS3は電気モータ12が静止しているときに回転軸11の回転角φを決定するためにも用いることができる」との記載は、「出力信号S1、S2及びS3は電気モータ12が回転しているときに回転軸11の回転角φを決定するために用いることができる」ことを前提とした記載であるから、この点を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「3個のコイルを有するブラシレス電気モータの制御用の角度センサは2.1から2.6の6個の水平ホール効果素子を有する半導体チップ1と1個の磁場センサ集線装置(コンセントレータ)3と(段落【0009】より。以下同様)、ブラシレス電気モータ12の回転軸11上に載置された磁場を生成する永久磁石10を備え(【0013】)、磁場コンセントレータ3がディスク上に形成され、かつ、6個のホール効果素子2は磁場コンセントレータ3の端部4に沿って等距離で分散して配置しており(【0009】)、 磁場コンセントレータ3は、磁力線が、表面8に対してほとんど垂直にホール効果素子を貫くという効果を有し(【0013】)、回転中心に対して径方向に反対に位置するホール効果素子は、出力信号の各生成に対して一対形成し、それによって一つのホール効果素子のホール電圧が他のホール効果素子のホール電圧から引かれ、磁力線が垂直方向に反対の一対のホール効果素子の両方を貫くので、磁場の“再方向付け”によって生成した電圧が蓄積し、一方、垂直にホール効果素子を貫く外側干渉磁場のために、生成したホール電圧が互いにキャンセルし、ホール効果素子2.1と2.4とは信号S1を生成し、ホール効果素子2.2と2.5とは信号S2を生成し、ホール効果素子2.3と2.6とは信号S3を生成し(【0014】)、 出力信号S1、S2及びS3は電気モータ12が回転しているときに回転軸11の回転角φを決定するために用いることができるが、可能な限り、永久磁石10の磁場に起因しない出力信号S1、S2及びS3上に信号が重ならないことが重要であり、ペアとして結合した各ホール効果素子を使った提案例はこれに対して特に適しており、外部干渉場の影響が主に除去される(【0016】)、 角度センサ(【0009】)。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献2(特開2011-169813号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、磁気式エンコーダに関する。 「【0006】 本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、磁気検出素子の出力にバラツキがある場合でも、検出精度を向上できる磁気式エンコーダを提供することにある。」 「【0033】 なお、本実施形態において、「順に」とは、「時系列的に」、または、「複数の中から1つずつ選択的に」という意味である。」 「【0010】 [第1の実施形態] 以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の第1の実施形態による回転角度検出装置である磁気式エンコーダ100の構成を示す概略ブロック図である。 【0011】 図1に示すように、磁気式エンコーダ100は、磁石5を有する回転子6と、この回転子6の近傍に配置された複数の磁気検出素子1(MS1),2(MS2),3(MS3),4(MS3)と、その磁気検出素子1,2,3,4やその他の制御部品を搭載した基板組9とで構成されている。ここでいう回転子6の近傍とは、たとえば、この回転子6の周囲、または、回転子6の円周上のことである。 【0012】 磁石5は、たとえば、永久磁石である。磁気検出素子1,2,3,4は、たとえば、それぞれホール素子である。以降、磁気検出素子1,2,3,4を、ホール素子1,2,3,4と称して説明する。 【0013】 この図1において、回転子6が紙面に対して垂直となる回転軸を中心として回転すると、回転子6の回転に伴い磁石5が回転し、ホール素子1,2,3,4で検出される磁石5からの磁界が変化する。磁気式エンコーダ100は、この磁界の変化を、ホール素子1,2,3,4の4個のホール素子によりそれぞれ検出し、この検出した磁界の変化量から回転子6の回転位置を検出する。」 「【0059】 なお、(式1)、(式3)または(式5)により算出される第1の合成出力と、(式2)、(式4)または(式6)により算出される第2の合成出力とは、エンコーダの2相信号にそれぞれ対応する。ここでは、第1の合成出力をA相信号出力とし、第2の合成出力をB相信号出力とする。また、ホール素子の配置関係から、このA,B相信号出力は、互いに90°の位相差がある。この場合のエンコーダの回転位置は、(式7)により算出される。 【0060】 エンコーダ出力(角度):tan-1(A相信号出力/B相信号出力) …(式7)」 「【0116】 [第3の実施形態] 次に、第3の実施形態による磁気式エンコーダ100について説明する。ここでは、第1の実施形態または第2の実施形態による磁気式エンコーダ100との相違点のみについて説明する。 【0117】 第3の実施形態の構成を図12に示す。この第3の実施形態は第1の実施形態とほぼ同じ構成であるが、ホール素子の数が8個になっている。この場合も、8個のホール素子は、同一円周上に等間隔で並んでいる。ここでは、図12に示されているように、ホール素子MS1、MS2、MS3、MS4、MS5、MS6、MS7、MS8の順に、円周上に等間隔で並んでいるものとして説明する。また、ホール素子MS1、MS2、MS3、MS4、MS5、MS6、MS7、MS8のそれぞれを、ホール素子と称して説明する。」 「【0122】 次に、図14を用いて、第3の実施形態による磁気式エンコーダ100の動作の一例について説明する。 合成制御部300の制御部320からからアドレスセレクト信号(S0、S1、S3)が出力され、仮にその出力が3bitUPカウンタの出力と同じであるとする。この場合、アナログSW15、25、35、および45により構成される切り替え部262は、ホール素子1,2,3,4,5,6,7,8の順に、1つのホール素子を選択する。このため、電源部210は、常に1つのホール素子を、順に駆動する。また、差動増幅部220は、1つのホール素子から出力された検出信号を、順に差動増幅して出力する。 【0123】 この場合、合成部310は、第1の実施形態の場合と同様に、前記のように一部の信号を使って第1、第2の合成出力を構成してもよいし、全てを使って第1、第2の合成出力を構成してもよい。ただし、(式3)と(式4)にかわり、次の(式11)と(式12)になる。また、(式5)と(式6)にかわり、次の(式13)と(式14)になる。 【0124】 第1の合成出力:[Vms1+Vms3-Vms5-Vms7] …(式11) 第2の合成出力:[Vms1-Vms3-Vms5+Vms7] …(式12) 【0125】 第1の合成出力:[Vms1+Vms2+Vms3+Vms4-Vms5-Vms6-Vms7-Vms8] …(式13) 第2の合成出力:[Vms1+Vms2-Vms3-Vms4-Vms5-Vms6+Vms7+Vms8] …(式14) 【0126】 第3の実施形態によれば、第1の実施形態の場合よりホール素子の個数が多いため、第1の実施形態の場合より検出信号が増大し、より高精度に回転子6の回転位置を検出することができる。」 したがって、引用文献2には、「第3の実施形態」として、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 「磁気式エンコーダ100は、磁石5を有する回転子6と、この回転子6の近傍に配置された複数の磁気検出素子と、その磁気検出素子(以降、ホール素子と称する(段落【0012】より。以下同様。))やその他の制御部品を搭載した基板組9とで構成され(【0011】)、 ホール素子の数が8個で、8個のホール素子は、ホール素子MS1、MS2、MS3、MS4、MS5、MS6、MS7、MS8の順に、円周上に等間隔で並んでおり(【0117】)、 アナログSW15、25、35、および45により構成される切り替え部262は、ホール素子1,2,3,4,5,6,7,8の順に、1つのホール素子を選択し、電源部210は、常に1つのホール素子を、順に駆動し、また、差動増幅部220は、1つのホール素子から出力された検出信号を、順に差動増幅して出力し(【0122】)、合成部310は、信号全てを使って第1、第2の合成出力を、次の(式13)と(式14)により構成し(【0059】、【0123】)、 第1の合成出力:[Vms1+Vms2+Vms3+Vms4-Vms5-Vms6-Vms7-Vms8] …(式13) 第2の合成出力:[Vms1+Vms2-Vms3-Vms4-Vms5-Vms6+Vms7+Vms8] …(式14)(【0125】) 第1の合成出力と、第2の合成出力とは、エンコーダの2相信号にそれぞれ対応し、ここでは、第1の合成出力をA相信号出力とし、第2の合成出力をB相信号出力とすると、エンコーダの回転位置は、(式7)により算出される(【0059】)、 エンコーダ出力(角度):tan-1(A相信号出力/B相信号出力) …(式7)(【0060】)、 磁気式エンコーダ100(【0011】)。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献3(特開2005-315696号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、例えば自動車のステアリング等の回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置に関する。」 「【0024】 以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る回転体の回転角度検出装置の平面図、図2は、マグネット5とホールアレイIC6との位置関係を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は平面視した図である。ここでは回転体の一例としてステアリングを例示して説明する。 【0025】 図1に示すように、回転角度検出装置1には、回転体であるステアリング(図示せず)と一体に回転するステアリングシャフト2と、このステアリングシャフト2に固定されて一体に回転する第1歯車3と、この第1歯車3に噛み合う第2歯車4とが備えられており、第1の歯車3の歯数が第2の歯車4の歯数の4倍と成っている。よって、ステアリングシャフト2が1回転すると、第2の歯車4は4回転することになる。 【0026】 そして、第2歯車4の下面には、磁界発生手段であるマグネット5が固定され、第2歯車と共に回転する。マグネット5の近接下方には、図2に示すように、磁気検出手段であるホールアレイIC6が配置され、このホールアレイIC6には磁気検出素子であるホール素子H1?H8が8箇所に固定されている。 【0027】 そして、各ホール素子H1?H8の検出出力は、ホールアレイIC6に内蔵された演算処理装置(演算処理手段)7(後述する図5参照)において角度演算し、更にステアリング角に演算処理される。なお、本実施形態では、演算処理装置7がホールアレイIC6に内蔵される場合を例に挙げているが、演算処理装置7がホールアレイIC6の外部に設けられる構成とすることも可能である。」 よって、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 「自動車のステアリング等の回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置(段落【0001】より。以下同様。)であって、 回転体であるステアリングと一体に回転するステアリングシャフト2と、このステアリングシャフト2に固定されて一体に回転する第1歯車3と、この第1歯車3に噛み合う第2歯車4とが備えられており、第1の歯車3の歯数が第2の歯車4の歯数の4倍と成っており、よって、ステアリングシャフト2が1回転すると、第2の歯車4は4回転することになり(【0025】)、 第2歯車4の下面には、磁界発生手段であるマグネット5が固定され、第2歯車と共に回転し、マグネット5の近接下方には、磁気検出手段であるホールアレイIC6が配置され、このホールアレイIC6には磁気検出素子であるホール素子H1?H8が8箇所に固定され(【0026】)、 各ホール素子H1?H8の検出出力は、ホールアレイIC6に内蔵された演算処理装置(演算処理手段)7において角度演算し、更にステアリング角に演算処理される(【0027】)、 回転角度検出装置(【0001】)。」 4.引用文献4について 原査定の備考欄において、周知技術を示す文献として引用された引用文献4(国際公開第2012/019958号)には、「In einer bevorzugten Ausgestaltung der Erfindung besitzt die Sensoranordnung einen Addierer, der die Ausgangssignale des ersten und zweiten Magnetfeldsensors addiert, um das gemeinsame Sensorsignal zu bestimmen.」([0021])(当審訳: 本発明の好適な一改良において、センサ組立体は、共通センサ信号を提供するために第1および第2の磁場センサの出力信号を加算する加算器を備える。(【0022】))こと、及び 「Da die Magnetfeldlinien des gemeinsamen Magnetfeldes an den beiden entfernten Sensoren gegenl#ufig sind, bildet der Addierer ein Sensorsignal, das bei ungest[o]rtem, ideal symmetrischen Magnetfeld an den beiden Sensoren Null ist. 」([0022])(当審訳:共通磁場の磁力線は、遠隔の2つのセンサにおいて反対であることから、加算器は、2つのセンサにおける歪のない理想的な対称性磁場に対してゼロであるセンサ信号を形成する。(【0023】))ことが記載されている(ウムラウト付きの「o」を、[o]と表記した。また、当審訳中の段落番号は、パテントファミリーである、特表2013-533496号公報による。) 5.引用文献5について 原査定の備考欄において、周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2007-271443号公報)には、「回転部材1には、N極領域N及びS極領域Sが回転中心Cの周りに所定ピッチで交互に配置してあり、回転部材1の外周側には、第1センサ素子21及び第2センサ素子22が、前記第1センサ素子21の位置における前記磁場の向きと、第2センサ素子22の位置における前記磁場の向きとが180°異なるように配置してあり(【0023】)、外部磁場Gの影響を受けた場合であっても、外部磁場Gの影響による磁場の変動量が、第1センサ素子21と第2センサ素子22とで反対になる。このため、例えば第1センサ素子21及び第2センサ素子22の検出結果の平均や和に基づいて、前記外部磁場Gの影響を低減することができる(【0025】)、角度検出装置(【0001】)。」が記載されている。 6.引用文献6について 原査定の備考欄において、周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開平3-176682号公報)には、「各各逆向きの磁場を発生する一対の較正用コイルを設け、二つの磁電変換素子(ホール素子・磁気抵抗素子など)出力の和と差をとることにより、較正用磁場と外部磁場を分離し、大きさの既知である較正用磁場から磁電変換素子(ホール素子・磁気抵抗素子など)の感度を較正する」(第2頁左上欄第18-19行、同頁右上欄第6-11行)ことが記載されている。 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「角度センサ」は、「ホール効果素子」を用いたセンサであるから、本願発明1における「ホールセンサ(1)」に相当する。 イ 引用発明における「ホール効果素子2.1と2.4」が「生成」した「出力信号S1」が、本願発明1における「第1の測定信号(21)」に相当する。 ウ 引用発明における「信号S1を生成」する「ホール効果素子2.1と2.4と」は、「ペアとして結合し」ているから、本願発明1における「第1の測定信号(21)を形成するように構成された第1のホール素子対(5)」に相当する。 エ 引用発明における「ホール効果素子2.3と2.6」が「生成」した「出力信号S3」が、本願発明1における「第2の測定信号(23)」に相当する。 オ 引用発明における「信号S3を生成」する「ホール効果素子2.3と2.6」は、「ペアとして結合し」ているから、本願発明1における「第2の測定信号(23)を形成するように構成された第2のホール素子対(7)」に相当する。 カ 引用発明における「ホール効果素子2.2と2.5」が「生成」した「出力信号S2」が、本願発明1における「第3の測定信号(25)」に相当する。 キ 引用発明における「信号S2を生成」する「ホール効果素子2.2と2.5」は、「ペアとして結合し」ているから、本願発明1における「第3の測定信号(25)を形成するように構成された第3のホール素子対(9)」に相当する。 ク 引用発明における「6個のホール効果素子2」は「磁場コンセントレータ3の端部4に沿って等距離で分散して配置して」いるから、引用発明における「ホール効果素子2.2と2.5」が、「ホール効果素子2.1と2.4」と「ホール効果素子2.3と2.6」との間に配置されていることは明らかである。 よって、引用発明における「ホール効果素子2.2と2.5」が、「ホール効果素子2.1と2.4」と「ホール効果素子2.3と2.6」との間に配置されていることが、本願発明1における「記第3のホール素子対(9)の各ホール素子(3)は、前記第1のホール素子対(5)のホール素子(3)と前記第2のホール素子対(7)のホール素子(3)との間に配置されて」いることに相当する。 ケ 引用発明における「回転中心に対して径方向に反対に位置するホール効果素子は、出力信号の各生成に対して一対形成し、それによって一つのホール効果素子のホール電圧が他のホール効果素子のホール電圧から引かれ」、「垂直にホール効果素子を貫く外側干渉磁場のために、生成したホール電圧が互いにキャンセル」し、「永久磁石10の磁場に起因しない出力信号S1、S2及びS3上に信号が重ならないことが重要であり、ペアとして結合した各ホール効果素子を使った提案例はこれに対して特に適しており、外部干渉場の影響が主に除去される」ことと、本願発明1における「前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)に基づいて、外部磁界(19)に起因する誤差を補償した1つの包括測定信号が形成されるように、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)は駆動可能であ」ることとは、「外部磁界(19)に起因する誤差を補償するように、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)は駆動可能であ」る点で共通する。 コ 引用発明における「出力信号S1、S2及びS3」は「電気モータ12が回転しているときに回転軸11の回転角φを決定するために用いることができる」ものであるから、「出力信号S1、S2及びS3」が同時に求められる信号であることは明らかである。 よって、引用発明における「ホール効果素子2.1と2.4とは信号S1を生成し、ホール効果素子2.2と2.5とは信号S2を生成し、ホール効果素子2.3と2.6とは信号S3を生成し」することが、本願発明1における「前記測定装置(17)は、前記測定信号を同時に求めるように構成されて」いることに相当するといえる。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「ホールセンサ(1)であって、 第1の測定信号(21)を形成するように構成された第1のホール素子対(5)と、 第2の測定信号(23)を形成するように構成された第2のホール素子対(7)とを備え、 前記ホールセンサ(1)は、さらに、第3の測定信号(25)を形成するように構成された第3のホール素子対(9)を備え、 前記第3のホール素子対(9)の各ホール素子(3)は、前記第1のホール素子対(5)のホール素子(3)と前記第2のホール素子対(7)のホール素子(3)との間に配置されており、 外部磁界(19)に起因する誤差を補償するように、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)は駆動可能であり、 前記測定装置(17)は、前記測定信号を同時に求めるように構成されていることを特徴とするホールセンサ(1)。 (相違点1) 本願発明1では、「前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)に基づいて、外部磁界(19)に起因する誤差を補償した1つの包括測定信号が形成されるように、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)は駆動可能であ」るのに対し、引用発明1では、「回転中心に対して径方向に反対に位置するホール効果素子は、出力信号の各生成に対して一対形成し、それによって一つのホール効果素子のホール電圧が他のホール効果素子のホール電圧から引かれ」、「垂直にホール効果素子を貫く外側干渉磁場のために、生成したホール電圧が互いにキャンセル」し、「永久磁石10の磁場に起因しない出力信号S1、S2及びS3上に信号が重ならないことが重要であり、ペアとして結合した各ホール効果素子を使った提案例はこれに対して特に適しており、外部干渉場の影響が主に除去される」ものの、出力信号S1、S2及びS3に基づいて、外部干渉場の影響が主に除去された包括測定信号を形成することは示されていない点。 (相違点2) 本願発明1では、「前記ホールセンサ(1)は、少なくとも前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)を求め、これらを結合して、外部磁界(19)に起因する誤差が最小化される包括測定信号を形成するように構成された測定装置(17)を有し」、「前記包括測定信号の形成時に、前記測定装置(17)が、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)の位置に依存した計算アルゴリズムを適用することにより、前記外部磁界(19)が前記包括測定信号に与える影響を除去する」のに対し、引用発明では、「出力信号S1、S2及びS3」を結合して「外部干渉場の影響」に起因する誤差が最小化される包括測定信号を形成する装置は、示されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点2について先ず検討すると、上記相違点2に係る本願発明1の「前記ホールセンサ(1)は、少なくとも前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)を求め、これらを結合して、外部磁界(19)に起因する誤差が最小化される包括測定信号を形成するように構成された測定装置(17)を有し」、「前記包括測定信号の形成時に、前記測定装置(17)が、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)の位置に依存した計算アルゴリズムを適用することにより、前記外部磁界(19)が前記包括測定信号に与える影響を除去する」構成は、上記引用文献2-6の何れにも記載されていない。 したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2-6、8について 本願発明2-6、8も、本願発明1の「前記ホールセンサ(1)は、少なくとも前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)を求め、これらを結合して、外部磁界(19)に起因する誤差が最小化される包括測定信号を形成するように構成された測定装置(17)を有し」、「前記包括測定信号の形成時に、前記測定装置(17)が、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)の位置に依存した計算アルゴリズムを適用することにより、前記外部磁界(19)が前記包括測定信号に与える影響を除去する」構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3.本願発明7について 本願発明7は、本願発明1-6のいずれかに係るホールセンサの製造方法の発明であるから、本願発明1-6と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1-8について、上記引用文献1-6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成30年4月23日付けでなされた手続補正により、補正された請求項1-6、8は、「前記ホールセンサ(1)は、少なくとも前記第1の測定信号(21)及び前記第2の測定信号(23)及び前記第3の測定信号(25)を求め、これらを結合して、外部磁界(19)に起因する誤差が最小化される包括測定信号を形成するように構成された測定装置(17)を有し」、「前記包括測定信号の形成時に、前記測定装置(17)が、前記第1、第2及び第3のホール素子対(5,7,9)の位置に依存した計算アルゴリズムを適用することにより、前記外部磁界(19)が前記包括測定信号に与える影響を除去する」という事項を有するものとなっており、また、請求項7は、当該事項を有する請求項1-6のいずれかに係るホールセンサの製造方法であるから、当該事項に対応する構成を有するものとなっている。 よって、上記「第4」「1.」の「(2)」及び「2.」、「3.」で述べたとおり、本願発明1-8は、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1.特許法第36条第6項第2号について 当審では、請求項1の記載では、「包括測定信号」が、「外部磁界(19)に起因する誤差を補償する」(ための)信号であるのか、「外部磁界(19)に起因する誤差が最小化され」、「前記外部磁界(19)が」「与える影響を除去」した信号であるのか、明確でないため、請求項1及び請求項1を引用する請求項2-8に係る発明は明確でないとの拒絶理由を通知している。 しかし、平成30年4月23日付けでなされた手続補正により、「包括測定信号」について、「外部磁界(19)に起因する誤差を補償した1つの包括測定信号が形成される」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-8は、当業者が引用発明及び引用文献1-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-05-28 |
出願番号 | 特願2016-504543(P2016-504543) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01R)
P 1 8・ 537- WY (G01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 越川 康弘 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 清水 稔 |
発明の名称 | 外部磁界に対して鈍感なホールセンサ |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 前川 純一 |
代理人 | 上島 類 |