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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1340472
審判番号 不服2016-17947  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-01 
確定日 2018-05-18 
事件の表示 特願2015-524190「光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂組成物と、ドライフィルムソルダーレジスト」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日国際公開、WO2014/021590、平成27年10月 8日国内公表、特表2015-529844〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月1日、韓国 2013年7月26日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成27年12月10日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月2日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年7月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年12月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、平成28年3月2日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲
「 【請求項1】
カルボキシル基(-COOH)と、光硬化可能な不飽和官能基を有する酸変性オリゴマー;
10,000乃至100,000の重量平均分子量を有するポリアミック酸;
2つ以上の光硬化可能な不飽和官能基を有する光重合性モノマー;
熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダー;及び
光開始剤を含む光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸変性オリゴマーの光硬化可能な不飽和官能基は、アクリレート基である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸変性オリゴマーはカルボキシル基を有する重合可能なモノマーと、アクリレート系化合物を含むモノマーの共重合体を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸変性オリゴマーの含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に15乃至75重量%である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸変性オリゴマーの酸価は、40乃至120mgKOH/gである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミック酸の含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に1乃至30重量%である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記光重合性モノマーは分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記光重合性モノマーは、ヒドロキシル基含有多官能アクリレート系化合物;水溶性多官能アクリレート系化合物;多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート系化合物;多官能アルコールまたはポリフェノールのエチレンオキシド付加物のアクリレート系化合物;多官能アルコールまたはポリフェノールのプロピレンオキシド付加物のアクリレート系化合物;多官能または単官能のポリウレタンアクリレート系化合物;エポキシアクリレート系化合物;カプロラクトン変性のアクリレート系化合物及び感光性(メタ)アクリレート系化合物からなる群より選択された1つ以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記光重合性モノマーの含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に5乃至30重量%である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記光開始剤は、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、オキシムエステル化合物、ビイミダゾール系化合物及びトリアジン系化合物からなる群より選択された1つ以上を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記光開始剤の含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に0.5乃至20重量%である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱硬化可能な官能基は、エポキシ基、オキセタニル基、環状エーテル基及び環状チオエーテル基からなる群より選択された1つ以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
溶剤;ならびに熱硬化性バインダー触媒、フィラー、顔料及び添加剤からなる群より選択された1つ以上の成分をさらに含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
カルボキシル基(-COOH)と、光硬化可能な不飽和官能基を有する酸変性オリゴマー;
2つ以上の光硬化可能な不飽和官能基を有する光重合性モノマー;及び
熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダーの硬化物を含み、
表面に2乃至20μmの平均粗さ(Rz)を有する微細凹凸が形成されているドライフィルムソルダーレジスト。
【請求項15】
前記硬化物は、前記酸変性オリゴマーのカルボキシル基と、前記熱硬化可能な官能基が架橋結合された架橋構造;及び
前記酸変性オリゴマー及び光重合性モノマーの不飽和官能基が互いに架橋結合された架橋構造を含む請求項14に記載のドライフィルムソルダーレジスト。
【請求項16】
前記硬化物内に分散している光開始剤をさらに含む請求項14に記載のドライフィルムソルダーレジスト。
【請求項17】
前記微細凹凸は50nm乃至5μmの平均粗さ(Ra)を有する請求項14に記載のドライフィルムソルダーレジスト。
【請求項18】
半導体素子のパッケージ基板の製造に使用される請求項14に記載のドライフィルムソルダーレジスト。」(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を
「 【請求項1】
カルボキシル基を有する重合可能なモノマーと、アクリレート系化合物を含むモノマーの共重合体を含む酸変性オリゴマー;
10,000乃至33,000の重量平均分子量を有するポリアミック酸;
分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物;
熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダー;及び
光開始剤を含む光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂組成物であって、
前記酸変性オリゴマーの含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に25乃至45重量%であり、
前記ポリアミック酸の含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に1乃至11.5重量%であり、
前記多官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に7乃至15重量%である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸変性オリゴマーの酸価は、40乃至120mgKOH/gである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリレート系化合物は、ヒドロキシル基含有多官能アクリレート系化合物;水溶性多官能アクリレート系化合物;多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート系化合物;多官能アルコールまたはポリフェノールのエチレンオキシド付加物のアクリレート系化合物;多官能アルコールまたはポリフェノールのプロピレンオキシド付加物のアクリレート系化合物;多官能または単官能のポリウレタンアクリレート系化合物;エポキシアクリレート系化合物;カプロラクトン変性のアクリレート系化合物及び感光性(メタ)アクリレート系化合物からなる群より選択された1つ以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物を含む請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記光開始剤は、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、オキシムエステル化合物、ビイミダゾール系化合物及びトリアジン系化合物からなる群より選択された1つ以上を含む請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記光開始剤の含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に0.5乃至20重量%である請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化可能な官能基は、エポキシ基、オキセタニル基、環状エーテル基及び環状チオエーテル基からなる群より選択された1つ以上である請求項1?5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
溶剤;ならびに熱硬化性バインダー触媒、フィラー、顔料及び添加剤からなる群より選択された1つ以上の成分をさらに含む請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものである。

2 補正事項
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項3に係る発明を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に補正するものであって、以下の補正事項を含んでいる。

(1)補正前の特許請求の範囲の請求項3を、請求項1の記載を引用する形式から独立形式へと書き下す補正事項

(2)補正前の特許請求の範囲の請求項3に係る発明の「酸変性オリゴマー」について、含有量を「樹脂組成物の全重量を基準に25乃至45重量%」とした補正事項

(3)補正前の特許請求の範囲の請求項3に係る発明の「ポリアミック酸」について、重量平均分子量の上限値を「100,000」から「33,000」とすると共に、含有量を「樹脂組成物の全重量を基準に1乃至11.5重量%」とした補正事項

(4)補正前の特許請求の範囲の請求項3に係る発明の「2つ以上の光硬化可能な不飽和官能基を有する光重合性モノマー」を「分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物」とすると共に、含有量を「樹脂組成物の全重量を基準に7乃至15重量%」とした補正事項

3 新規事項の追加の有無
(1)補正事項(1)
補正事項(1)は、請求項1の記載を引用する形式で記載されたものを、独立形式の記載に改めたものであって、補正の前後で、その内容に差異はないから、願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(2)補正事項(2)
願書に最初に添付した明細書の段落【0026】に「一方、前述の酸変性オリゴマーは一実施形態の樹脂組成物の全体重量に対して約15乃至75重量%、或いは約20乃至50重量%、或いは約25乃至45重量%の含量で含まれ得る。」と記載されている。当該記載事項に基づけば、補正事項(2)は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

(3)補正事項(3)
願書に最初に添付した明細書の段落【0033】?【0036】にポリイミド系樹脂についての記載があり、段落【0035】に「このようなポリイミド系樹脂としては、酸変性オリゴマーなどとの非反応性及び非混和性と、現像液に対する溶解度などを示す任意のポリイミド樹脂、ポリアミック酸などの形態を有するその前駆体や誘導体などを使用することができる。」(下線は合議体が付与した。以下同様。)、「また、前述のポリイミド系樹脂の特性を考慮して、このようなポリイミド系樹脂は約10000乃至100000の重量平均分子量、或いは約20000乃至100000の重量平均分子量を有し得る。」と記載されており、段落【0036】に「また、前記ポリイミド系樹脂の含量は樹脂組成物全体重量に対して約1乃至30重量%、或いは約5乃至27重量%、或いは約10乃至25重量%になれる。」と記載されている。また、願書に最初に添付した明細書の段落【0084】?【0092】に実施例として実施例1,2が記載されており、実施例1におけるポリイミド系樹脂が「重量平均分子量が31500であるPAA(Poly amic acid)」であり、「PAA(ポリアミック酸)形態のポリイミド系樹脂を11.5重量%」配合して樹脂組成物を製造したこと、実施例2におけるポリイミド系樹脂が「重量平均分子量が33000であるPAA(Poly amic acid)」であり実施例1と同様な方法で樹脂組成物を製造したことが記載されている。当該記載に基づけば、開示されたポリアミック酸の重量平均分子量の最高値が33000であったこと、含量の最高値が11.5重量%であったことが記載されていたといえる。したがって、補正事項(3)は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

(4)補正事項(4)
願書に最初に添付した明細書の段落【0028】?【0032】に光重合性モノマーについての記載があり、段落【0030】に「前記光重合性モノマーとしては、分子内に2つ以上、或いは3つ以上、或いは3乃至6つの光硬化可能な不飽和官能基を有する(メタ)アクリレート系化合物を使用することができ」ると記載されており、段落【0032】に「光重合性モノマーの含量は樹脂組成物全体重量に対して約5乃至30重量%、或いは約7乃至20重量%、或いは約7乃至15重量%であり得る。」と記載されている。当該記載に基づけば、補正事項(4)は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

以上のとおり、補正事項(1)?(4)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

4 補正の目的
補正事項(2)は、「酸変性オリゴマー」について含有量を限定するものである。また、補正事項(3)は、「ポリアミック酸」について、重量平均分子量の範囲を限定し、さらに、含有量を限定するものである。また、補正事項(4)は、「光硬化可能な不飽和官能基」を「(メタ)アクリロイル基」に限定することで「光重合性モノマー」を「多官能(メタ)アクリレート系化合物」に限定し、さらに、含有量を限定するものである。そして、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明と、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものといえる。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含んでいる。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

5 引用文献の記載及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前(の平成24年6月7日)に頒布された刊行物である特開2012-108235号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線部は、発明の認定に用いた箇所を示す。)

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が、10,000?150,000であるポリイミド前駆体と、
(B)ポリウレタン樹脂と、
(C)リン含有化合物と、
(D)分子内に少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(E)光重合開始剤と、
を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)ポリイミド前駆体が、ジアミン化合物と、2つの酸無水物を有する化合物との反応生成物であって、下記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体、
【化1】

[一般式(1)中、R^(1)はジアミンの残基、R^(2)は酸無水物の残基を示し、mは1以上の整数を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。]
前記(B)ポリウレタン樹脂が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記一般式(2)で表されるポリウレタン樹脂を含有する感光性樹脂組成物。
【化2】

[一般式(2)中、R^(3)はエポキシアクリレートの残基、R^(4)はジイソシアネートの残基、R^(5)は炭素数1?5のアルキル基、R^(6)は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。また、式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(C)リン含有化合物が、下記一般式(3)で表されるホスフィン酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】

[一般式(3)中、A及びBは各々独立に、直鎖状又は分岐状の炭素数1?6のアルキル基、又は、アリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属を示し、mは1?4の整数を示す。]
【請求項3】
更に(F)熱硬化剤を含有する、請求項1または請求項2に記載の感光性樹脂組成物。」

イ 「【0032】
以下、本発明の感光性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0033】
<(A)成分:ポリイミド前駆体>
(A)ポリイミド前駆体は、ジアミン化合物と、2つの酸無水物を有する化合物との反応生成物であって、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0034】
【化6】

[一般式(1)中、R^(1)はジアミンの残基、R^(2)は酸無水物の残基を示し、mは1以上の整数を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。]

(中略)

【0037】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、10,000?150,000であり、15,000?130,000であることが好ましく、20,000?100,000であることがより好ましい。重量平均分子量が10,000未満では、感光性樹脂組成物層のタック性が悪化し取り扱いが困難になる傾向があり、150,000を超えると、希アルカリ水溶液による現像が困難になる傾向がある。」

ウ 「【0039】
<(B)成分:ポリウレタン樹脂>
【0040】
(B)成分であるポリウレタン樹脂は、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物とを、反応させて得られるものであり、下記一般式(2)で表される構造を含む。
【0041】
【化7】

ここで、一般式(2)中、R^(3)はエポキシアクリレートの残基、R^(4)はジイソシアネートの残基、R^(5)は炭素数1?5のアルキル基、R^(6)は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。また、式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

エ 「【0061】
<(D)成分:分子内に少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有する化合物>
(D)少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を有する化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、及び分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーなどが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシアルキル-β’-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-o-フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びEO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどが例示可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。」

オ 「【0075】
<(E)成分:光重合開始剤>
(E)成分である光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、フェナントレンキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-エチルチオキサントン等のチオキサントン類、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン系化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。」

カ 「【0077】
<(F)成分:熱硬化剤>
本実施形態における感光性樹脂組成物は、更に(F)熱硬化剤(以下、場合により「(F)成分」という)を含有することが好ましい。(F)成分である熱硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド化合物等の熱硬化性の化合物などが挙げられる。」

キ 「【0081】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物が良好な特性を有するためには、感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として5?45質量%であることが好ましく、7?40質量%であることがより好ましく、10?35質量%であることが更に好ましい。(A)成分の含有量が5質量%未満であると、硬化膜の難燃性が低下及び、感光性樹脂組成物層のタック性が悪化する傾向があり、45質量%を超えると、硬化膜の電気絶縁性や耐金めっき性が悪化する傾向がある。」

ク 「【0082】
また、(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として10?40質量%であることが好ましく、15?35質量%であることがより好ましく、20?30質量%であることが更に好ましい。(B)成分の含有量が10質量%未満であると、硬化膜の難燃性及び可撓性が悪化する傾向があり、40質量%を超えると、感光性樹脂組成物層のタック性が悪化する傾向がある。」

ケ 「【0084】
(D)成分の含有量は、光感度・解像性及び難燃性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として10?35質量%であることが好ましく、13?30質量%であることがより好ましく、15?25質量%であることが更に好ましい。(D)成分の含有量が10質量%未満であると、光感度及び解像性が劣る傾向があり、35質量%を超えると、感光性樹脂組成物層のタック性の悪化及び、硬化膜の難燃性が低下する傾向がある。」

コ 「【0088】
更に、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30?70質量%程度の溶液として塗布することができる。」

サ 「【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
(実施例1?3、比較例1?3)
(感光性樹脂組成物の作製)
表1に示した各成分をそこに示す固形分の配合比(質量基準)(ただし、DMAC(N,N-ジメチルアセトアミド)は液体としての質量基準)で混合することにより感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0110】
なお表1中、(A-1)ポリイミド前駆体は、以下の方法により調製した。
まず、攪拌機、還流冷却機、温度計及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、N,N-ジメチルアセトアミド320gとオキシジフタル酸無水物248gの懸濁液中に、N,N-ジメチルアセトアミド640gで溶解した2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパン328gを少量ずつ添加した。これを攪拌しながら、反応温度を40?50℃に保ち、添加後5時間窒素雰囲気下で攪拌を継続した。得られたポリアミド前駆体(A-1)の重量平均分子量は90,000であり、固形分は37.5質量%であった。
(A-2)ポリイミド前駆体は、2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパンの配合量を295gに変更した以外は、(A-1)と同様な合成方法で行った。得られたポリアミド前駆体(A-2)の重量平均分子量は7,000であり、固形分は36.0質量%であった。
【0111】
(B-1)成分は、ポリウレタン樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「UXE-3024」、重量平均分子量=10,000)である。
(B-2)成分は、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「ZAR-2001H」、酸価=103mgKOH/g、Mw=13,000)である。
【0112】
(C-1)成分は、ホスフィン酸塩(クラリアント社製、商品名「EXOLIT OP 935」、リン含有量=23質量%)である。
【0113】
(D-1)成分は、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「BPE-10」)である。
【0114】
(E-1)成分は、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェル)-ブタノン-1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I-369」)である。
【0115】
(F-1)成分は、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体の75質量%メチルエチルケトン溶液(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「BL3175」)である。
【0116】
【表1】

注)表1中の値は、各成分の固形分の配合比である(DMACは除く)。また、表中記号「-」は、該当する成分を含有していないことを示す。」

(2)記載事項サの実施例2に関する記載に基づけば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「N,N-ジメチルアセトアミド320gとオキシジフタル酸無水物248gの懸濁液中に、N,N-ジメチルアセトアミド640gで溶解した2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパン328gを少量ずつ添加し、これを攪拌しながら、反応温度を40?50℃に保ち、添加後5時間窒素雰囲気下で攪拌を継続して得られた、重量平均分子量が90,000のポリアミド前駆体(A-1)、ポリウレタン樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「UXE-3024」、重量平均分子量=10,000)(B-1)、ホスフィン酸塩(クラリアント社製、商品名「EXOLIT OP 935」、リン含有量=23質量%)(C-1)、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「BPE-10」)(D-1)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェル)-ブタノン-1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I-369」)(E-1)、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体の75質量%メチルエチルケトン溶液(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「BL3175」)(F-1)を、固形分の配合比(質量基準)で、(A-1)成分20、(B-1)成分45、(C-1)成分20、(D-1)成分20、(E-1)成分3、(F-1)成分15で混合し、さらにDMAC(N,N-ジメチルアセトアミド)を液体としての質量基準で20混合することにより得た感光性樹脂組成物。」(以下、「引用発明」という。)

6 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ポリウレタン樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「UXE-3024」、重量平均分子量=10,000)(B-1)」は、引用文献1の記載事項ウによれば、「エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物とを、反応させて得られるもの」であり、一般式(2)に示されるように主鎖にカルボキシル基とアクリレート基が導入されたものである。そして、「カルボキシル基を有するジオール化合物」は本件補正発明における「カルボキシル基を有する重合可能なモノマー」に相当し、「エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物」は本件補正発明における「アクリレート系化合物を含むモノマー」に相当する。また、引用発明のUXE-3024は、重量平均分子量=10,000であるところ、本件明細書の段落【0025】に本件補正発明の酸変性オリゴマーとして例示される日本化薬社のZAR-2000も、日本化薬社が平成28年12月に発行したパンフレット「Radiation Curable Products」第3版第15?16頁によれば、平均分子量が13,000であるから、引用発明のUXE-3024も本件補正発明でいうところの「オリゴマー」に含まれるといえる。そうすると、引用発明の「ポリウレタン樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「UXE-3024」、重量平均分子量=10,000)(B-1)」は、本件補正発明の「カルボキシル基を有する重合可能なモノマーと、アクリレート系化合物を含むモノマーの共重合体を含む酸変性オリゴマー」に相当する。

(2)引用発明の「N,N-ジメチルアセトアミド320gとオキシジフタル酸無水物248gの懸濁液中に、N,N-ジメチルアセトアミド640gで溶解した2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパン328gを少量ずつ添加し、これを攪拌しながら、反応温度を40?50℃に保ち、添加後5時間窒素雰囲気下で攪拌を継続して得られた、重量平均分子量は90,000のポリアミド前駆体(A-1)」は、一般式(1)で表される構造を有し、アミド結合を有するポリマーであって、カルボン酸基を有することから、ポリアミド酸(polyamic acid)に該当する化合物である。したがって、引用発明の「N,N-ジメチルアセトアミド320gとオキシジフタル酸無水物248gの懸濁液中に、N,N-ジメチルアセトアミド640gで溶解した2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパン328gを少量ずつ添加し、これを攪拌しながら、反応温度を40?50℃に保ち、添加後5時間窒素雰囲気下で攪拌を継続して得られた、重量平均分子量は90,000のポリアミド前駆体(A-1)」と、本件補正発明の「10,000乃至33,000の重量平均分子量を有するポリアミック酸」とは、「ポリアミック酸」である点で共通する。

(3)引用発明の「ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「BPE-10」)(D-1)」は、分子内に2つのアクリロイル基を有する化合物である。したがって、引用発明の「ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「BPE-10」)(D-1)」は、本件補正発明の「分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物」に相当する。

(4)引用発明の「ヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体」(F-1)は、ポリマーであって、記載事項カによれば、「熱硬化剤」としての機能を有するものである。したがって、引用発明の「ヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体」(F-1)は、本件補正発明の「熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダー」に相当する。

(5)引用発明の「2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェル)-ブタノン-1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I-369」)(E-1)」は、記載事項オによれば、「光重合開始剤」としての機能を有するものである。したがって、引用発明の「2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェル)-ブタノン-1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I-369」)(E-1)」は、本件補正発明の「光開始剤」に相当する。

(6)引用発明の「感光性樹脂組成物」は、光重合開始剤として機能する(E)成分及び熱硬化剤として機能する(F)成分を有するものであるから、本件補正発明と同様に「光硬化性及び熱硬化性を有する」といえる。

よって、本件補正発明と引用発明とは、
「カルボキシル基を有する重合可能なモノマーと、アクリレート系化合物を含むモノマーの共重合体を含む酸変性オリゴマー;
ポリアミック酸;
分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物;
熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダー;及び
光開始剤を含む光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂組成物。」である点で共通し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件補正発明のポリアミック酸の重量平均分子量が、10,000乃至33,000であるのに対し、引用発明のポリアミド前駆体(ポリアミック酸)の重量平均分子量が、90,000である点。
[相違点2]本件補正発明の酸変性オリゴマー、ポリアミック酸、多官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量が、樹脂組成物の全重量を基準に、それぞれ、25乃至45重量%、1乃至11.5重量%、7乃至15重量%であるのに対し、引用発明のポリウレタン樹脂(B-1)(酸変性オリゴマー)、ポリアミド前駆体(A-1)(ポリアミック酸)、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(D-1)(多官能(メタ)アクリレート系化合物)の含有量が、固形分の配合比(質量基準)で、それぞれ、45、20、20とされており、樹脂組成物の全重量を基準としたときの含有量が不明である点。

7 判断
(1)[相違点1]について
引用文献1の記載事項イには、ポリアミド前駆体(A)の重量平均分子量について、「(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、10,000?150,000であり、15,000?130,000であることが好ましく、20,000?100,000であることがより好ましい。重量平均分子量が10,000未満では、感光性樹脂組成物層のタック性が悪化し取り扱いが困難になる傾向があり、150,000を超えると、希アルカリ水溶液による現像が困難になる傾向がある。」と記載されている。
当該記載に基づけば、ポリアミド前駆体(A)の重量平均分子量は、必要とするタック性が得られる範囲で且つ希アルカリ水溶液による現像が可能な範囲において、当業者が適宜調整しうるものであり、引用文献1において示唆された範囲には、本件補正発明における10,000乃至33,000の範囲も包含されている。
そうすると、引用発明におけるポリアミド前駆体(A)の重量平均分子量を、引用文献1の示唆に基づいて、10,000乃至33,000の範囲に含まれるものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(2)[相違点2]について
ア 引用発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも液体であるN,N-ジメチルアセトアミドや、(A-1)の溶媒、(F-1)の溶媒を含むものであるから、樹脂組成物の全重量は、固形分の重量にこれら溶媒を加えた重量となる。そして、引用文献1の記載事項コによると、「固形分30?70質量%程度の溶液として塗布することができる。」とされている。当該記載に基づくと、引用発明の感光性樹脂組成物は、固形分123重量部(=(A-1)30部+(B-1)35部+(C-1)20部+(D-1)20部+(E-1)3部+(F-1)15部)に対し、溶媒が287部(固形分30質量%)?53部(固形分70質量%)含まれるものといえる。
そうすると、引用発明のポリウレタン樹脂(B-1)(酸変性オリゴマー)、ポリアミド前駆体(A-1)(ポリアミック酸)、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(D-1)(多官能(メタ)アクリレート系化合物)の樹脂組成物の全重量を基準としたときの含有量は、以下の範囲にあるといえる。
(B-1) 11.0?25.6重量%
(A-1) 4.9?11.4重量%
(D-1) 4.9?11.4重量%
当該計算に基づくと、引用発明のポリイミド前駆体(A-1)(ポリアミック酸)の樹脂組成物の全重量を基準としたときの含有量は、本件補正発明における「ポリアミック酸の含有量は、前記樹脂組成物の全重量を基準に1乃至11.5重量%」とする要件を満たしているといえる。

イ 引用発明のポリウレタン樹脂(B-1)(酸変性オリゴマー)及びビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(D-1)(多官能(メタ)アクリレート系化合物)の樹脂組成物の全重量を基準としたときのそれぞれの含有量は、固形分30%とした場合は、本件補正発明において特定される範囲から外れるものの、固形分70%とした場合は、いずれも本件補正発明において特定された範囲に含まれている。引用発明において明らかにされていない樹脂組成物の溶媒量について、引用文献1の記載事項コに記載される数値範囲になるように、感光性樹脂組成物が固形分70質量%程度の溶液になる溶媒量とすることにより、引用発明のポリウレタン樹脂(B-1)(酸変性オリゴマー)及びビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(D-1)(多官能(メタ)アクリレート系化合物)の樹脂組成物の全重量を基準としたときのそれぞれの含有量を本件補正発明において特定される範囲内の含有量とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

ウ また、次の理由からも、引用発明において、[相違点2]における本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることといえる。

(ア)引用文献1の記載事項クによると、感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量について「感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として10?40質量%であることが好ましく」、「B)成分の含有量が10質量%未満であると、硬化膜の難燃性及び可撓性が悪化する傾向があり、40質量%を超えると、感光性樹脂組成物層のタック性が悪化する傾向がある」とされている。これを、固形分が30?70質量%となるように溶媒を含めた場合の樹脂組成物の全重量を基準としたときの含有量に換算すると、3?28質量%となる。
引用文献1の記載に基づけば、ポリウレタン樹脂(B-1)の含有量は、必要とする可撓性やタック性等が得られる範囲において当業者が適宜調整しうるものであるから、引用発明のポリウレタン樹脂(B-1)の含有量を、引用文献1の記載事項クにおける示唆に基づき、本件補正発明の範囲とすることも、当業者が適宜なし得ることである。

(イ)引用文献1の記載事項ケによると、感光性樹脂組成物中の(D)成分の含有量について「光感度・解像性及び難燃性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として10?35質量%であることが好ましく」、「(D)成分の含有量が10質量%未満であると、光感度及び解像性が劣る傾向があり、35質量%を超えると、感光性樹脂組成物層のタック性の悪化及び、硬化膜の難燃性が低下する傾向がある」とされている。これを、固形分が30?70質量%となるように溶媒を含めた場合の樹脂組成物の全重量を基準としたときの含有量に換算すると、3?24.5質量%となる。
引用文献1の記載に基づけば、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(D-1)の含有量も、必要とする光感度やタック性等が得られる範囲において当業者が適宜調整しうるものであるから、引用発明のビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(D-1)の含有量を、引用文献1の記載事項ケにおける示唆に基づき、本件補正発明の範囲とすることも、当業者が適宜なし得ることである。

(3)本件補正発明の効果について
ア ポリアミック酸の重量平均分子量について
本件明細書の段落【0035】には、「このようなポリイミド系樹脂としては、酸変性オリゴマーなどとの非反応性及び非混和性と、現像液に対する溶解度などを示す任意のポリイミド樹脂、ポリアミック酸などの形態を有するその前駆体や誘導体などを使用することができる。・・・また、前述のポリイミド系樹脂の特性を考慮して、このようなポリイミド系樹脂は約10000乃至100000の重量平均分子量、或いは約20000乃至100000の重量平均分子量を有し得る。」との記載がある。上記記載に基づけば、引用発明における重量平均分子量が90,000のポリアミド前駆体も同様の作用効果を奏するものと推認できる。
そして、本件明細書には、ポリアミック酸の重量平均分子量の範囲を上記範囲又は本件補正発明において特定する「10,000乃至33,000」としたことにより、どのような効果を奏するかについて何ら記載していない。さらに、上記範囲外の重量平均分子量を有するポリアミック酸を用いた場合の比較実験もなされていない。したがって、ポリアミック酸の重量平均分子量を「10,000乃至33,000」としたことにより効果の差異が生じるとはいえない。

イ 樹脂組成物中の各成分の含有量について
前記(2)において検討したとおり、引用発明は、樹脂組成物の固形分濃度をどの程度とするかによって、各成分の樹脂組成物の全重量を基準としたときの含有量が、本件補正発明において特定する範囲内となる場合と範囲外となる場合がある。本件明細書の段落【0026】及び段落【0032】には、それぞれ、酸変性オリゴマー及び光重合性モノマーを特定する範囲内としたことによる効果についての記載がある。しかし、ここで挙げられた現像性や得られたドライフィルムソルダーレジストの強度、光硬化の程度、得られたドライフィルムソルダーレジストの乾燥性などの効果は、いずれも、樹脂組成物を塗布乾燥させた後の、溶媒が除去された膜において生じる現象に基づくものである。上記効果は、樹脂組成物における固形分の配合比の影響を受ける可能性はあるとしても、樹脂組成物における溶媒量の多少に影響を受けるものとは考え難い。
そうすると、引用発明の樹脂組成物中の各成分の含有量が、樹脂組成物における溶媒量の多少に起因して本件補正発明において特定する範囲内となる場合があったとしても、溶媒量の違いにより、上記効果に格別な差異が生じるとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、樹脂組成物としての効果において、本件補正発明と引用発明との数値範囲の相違によって格別な差異が生じるとはいえない。

(4)むすび
よって、本件補正発明は、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年3月2日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される、第2の1に「補正前の特許請求の範囲」と記載したとおりのものである(以下、請求項3に係る発明を「本件発明」という。)。

2 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。

(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 1?11、13
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2012-108235号公報

3 引用刊行物の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明は、前記第2の3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本件発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ポリウレタン樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「UXE-3024」、重量平均分子量=10,000)(B-1)」は、前記第2の6(1)において検討したとおり、本件補正発明の「カルボキシル基を有する重合可能なモノマーと、アクリレート系化合物を含むモノマーの共重合体を含む酸変性オリゴマー」に相当するものである。

(2)引用発明の「N,N-ジメチルアセトアミド320gとオキシジフタル酸無水物248gの懸濁液中に、N,N-ジメチルアセトアミド640gで溶解した2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパン328gを少量ずつ添加し、これを攪拌しながら、反応温度を40?50℃に保ち、添加後5時間窒素雰囲気下で攪拌を継続して得られた、重量平均分子量は90,000のポリアミド前駆体(A-1)」は、前記第2の6(2)において検討したとおり、ポリアミド酸(polyamic acid)に該当する化合物である。したがって、引用発明の「N,N-ジメチルアセトアミド320gとオキシジフタル酸無水物248gの懸濁液中に、N,N-ジメチルアセトアミド640gで溶解した2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパン328gを少量ずつ添加し、これを攪拌しながら、反応温度を40?50℃に保ち、添加後5時間窒素雰囲気下で攪拌を継続して得られた、重量平均分子量は90,000のポリアミド前駆体(A-1)」は、本件発明の「10,000乃至100,000の重量平均分子量を有するポリアミック酸」に相当する。

(3)引用発明の「ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「BPE-10」)(D-1)」は、前記第2の6(3)において検討したとおり、本件発明の「分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物」に相当する。

(4)引用発明の「ヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体の75質量%メチルエチルケトン溶液(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「BL3175」)(F-1)」は、前記第2の6(4)において検討したとおり、本件発明の「熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダー」に相当する。

(5)引用発明の「2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェル)-ブタノン-1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I-369」)(E-1)」は、前記第2の6(5)において検討したとおり、本件発明の「光開始剤」に相当する。

(6)引用発明の「感光性樹脂組成物」は、前記第6の(6)において検討したとおり、本件発明と同様に「光硬化性及び熱硬化性を有する」といえる。

よって、本件発明と引用発明とは、
「カルボキシル基を有する重合可能なモノマーと、アクリレート系化合物を含むモノマーの共重合体を含む酸変性オリゴマー;
10,000乃至100,000の重量平均分子量を有するポリアミック酸;
2つ以上の光硬化可能な不飽和官能基を有する光重合性モノマー;
熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダー;及び
光開始剤を含む光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂組成物。」である点で一致する。

したがって、本件発明と引用発明との間に、差異は見いだせない。

5 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-14 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-05 
出願番号 特願2015-524190(P2015-524190)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 575- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 純平倉持 俊輔  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 宮澤 浩
清水 康司
発明の名称 光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂組成物と、ドライフィルムソルダーレジスト  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
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