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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1340477
審判番号 不服2017-3277  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-06 
確定日 2018-06-05 
事件の表示 特願2012-540979「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月 3日国際公開、WO2012/057330、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年10月28日(優先権主張2010年10月29日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成27年 8月28日付け :拒絶理由の通知(同年9月1日発送)
同年11月 2日 :意見書・手続補正書の提出
平成28年 4月25日付け :最後の拒絶理由の通知
(同年5月10日発送)
同年 9月 7日 :意見書・手続補正書の提出
同年11月30日付け :補正の却下の決定・拒絶査定
(同年12月6日送達)
平成29年 3月 6日 :審判請求書・手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(平成28年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002-141559号公報
2.特開2005-57239号公報
3.特開2007-300134号公報
4.特表2006-520836号公報


第3 審判請求時の補正について
1 補正事項について
平成29年3月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成27年11月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1-4を次のように補正することを含むものである。

(補正事項1)
補正前の請求項1の「前記蛍光体は、Y_(3-x-y)L_(x)M_(y)Al_(5-z)N_(z)O_(12-w)(Lは、Gd又はLu、Mは、Ce,Tb,Eu,Yb,Pr,Tm,Smからなる群から選択される1種類以上の元素、Nは、Ga又はIn、0≦x<3、0.003≦y≦0.2、0≦z≦5、-0.2≦w≦0.2)で表される組成を有する、」を「前記蛍光体は、Y_(3-x-y)L_(x)M_(y)Al_(5-z)NzO_(12-w)(Lは、Gd又はLu、Mは、Ce,Tb,Eu,Yb,Tm,Smからなる群から選択される1種以上の元素、Nは、Ga又はIn、0≦x<3、0.003≦y≦0.2、0≦z≦5、-0.2≦w≦0.2)で表される組成を有し、前記蛍光体の光入射面は、前記発光素子の出射光を伝搬する空気層に接する、」とする。
(補正事項2)
補正前の請求項2の「前記蛍光体は、Y_(3-x-y)Gd_(x)M_(y)L_(v)N_(5-v)O_(12-w)(LはSc,Luより選択される少なくとも1種類以上の元素、Mは、Ce,Tb,Eu,Yb,Pr,Tm,Sm、Nd,Dy,Ho,Erからなる群から選択される1種類以上の元素、Nは、Ga、In、Alより選択される少なくとも1種類以上の元素、0≦x<3、0.003≦y≦0.2、0≦v≦5、-0.2≦w≦0.2)で表される組成を有する、」を「前記蛍光体は、Y_(3-x-y)Gd_(x)M_(y)L_(v)N_(5-v)O_(12-w)(Lは、Sc,Luより選択される少なくとも1種以上の元素、Mは、Ce,Tb,Eu,Yb,Tm,Sm,Nd,Dy,Ho,Erからなる群から選択される1種以上の元素、Nは、Ga,In,Alより選択される少なくとも1種以上の元素、0≦x<3、0.003≦y≦0.2、0≦v≦5、-0.2≦w≦0.2)で表される組成を有し、前記蛍光体の光入射面は、前記発光素子の出射光を伝搬する空気層に接する、」とする。

2 補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項1の蛍光体におけるMの選択肢からPrを削除するとともに、蛍光体の光入射面が発光素子の出射光を伝搬する空気層に接するものであるとして蛍光体を減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そして、補正事項1は、図4(図4には蛍光体と発光素子の間の空間が形成されていると認められる。)の記載と、前記空間を空気層に限定することは新たな技術的事項を導入するものとはいえないことから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。

3 補正事項2について
補正事項2は、補正前の請求項2の蛍光体におけるMの選択肢からPrを削除するとともに、蛍光体の光入射面が発光素子の出射光を伝搬する空気層に接するものであるとして蛍光体を減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そして、補正事項2は、図4(図4には蛍光体と発光素子の間の空間が形成されていると認められる。)の記載と、前記空間を空気層に限定することは新たな技術的事項を導入するものとはいえないことから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。

4 独立特許要件について
以下の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

5 審判請求時の補正についてのまとめ
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。


第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年3月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。(下線は補正箇所である。)

「【請求項1】
素子基板及び前記素子基板上に形成された半導体化合物層を有し、青色系の光を発する発光素子と、
前記発光素子の光を励起光として、黄色系の光を発する単一の単結晶からなる平板状の蛍光体と、
を備え、
前記蛍光体は、Y_(3-x-y)L_(x)M_(y)Al_(5-z)N_(z)O_(12-w)(Lは、Gd又はLu、Mは、Ce,Tb,Eu,Yb,Tm,Smからなる群から選択される1種以上の元素、Nは、Ga又はIn、0≦x<3、0.003≦y≦0.2、0≦z≦5、-0.2≦w≦0.2)で表される組成を有し、前記蛍光体の光入射面は、前記発光素子の出射光を伝搬する空気層に接する、
発光装置。
【請求項2】
素子基板及び前記素子基板上に形成された半導体化合物層を有し、青色系の光を発する発光素子と、
前記発光素子の光を励起光として、黄色系の光を発する単一の単結晶からなる平板状の蛍光体と、
を備え、
前記蛍光体は、Y_(3-x-y)Gd_(x)M_(y)L_(v)N_(5-v)O_(12-w)(Lは、Sc,Luより選択される少なくとも1種以上の元素、Mは、Ce,Tb,Eu,Yb,Tm,Sm,Nd,Dy,Ho,Erからなる群から選択される1種以上の元素、Nは、Ga,In,Alより選択される少なくとも1種以上の元素、0≦x<3、0.003≦y≦0.2、0≦v≦5、-0.2≦w≦0.2)で表される組成を有し、前記蛍光体の光入射面は、前記発光素子の出射光を伝搬する空気層に接する、
発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体は、前記vが0.5≦v≦2である請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記蛍光体は、前記yが0.01≦y≦0.2である請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。」


第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-141559号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。以下同様。)。
(1)「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明による発光半導体チップ組立体及び発光半導体リードフレームの実施の形態を図1?図8について説明する。図1に第1の実施の形態を示すように、本発明による発光半導体チップ組立体は、電極(1a, 1b)が形成された上面を有する発光ダイオードチップ(1)と、透明な接着剤(3)により半導体発光チップ(1)の底面に固着された蛍光体チップ(2)とを備えている。即ち、本発明による発光半導体チップ組立体は、発光ダイオードチップ(1)と蛍光体チップ(2)を組み合わせた構造を有する。発光ダイオードチップ(1)は、窒化ガリウム系化合物半導体より成る発光波長ピーク約430nm?約480nmの青色光を発生する発光層を備えている。接着剤(3)は、例えば、光透過性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂が使用される。接着剤(3)により発光ダイオードチップ(1)に直接固着される蛍光体チップ(2)は、発光ダイオードチップ(1)の幅より大きい幅を有し、発光ダイオードチップ(1)の全底面が前記蛍光体チップ(2)の上面に接着され、蛍光体チップ(2)の周辺部(2a)は発光ダイオードチップ(1)の外周部(1a)から突出する。
【0018】蛍光体チップ(2)は、基体と、基体中に混入された蛍光体を含み、単結晶、多結晶若しくは蛍光体粉末の焼結体等の蛍光体インゴットから切り出した蛍光体チップ、樹脂又はメタロキサンゾル等のバインダに蛍光体粉末を混合し型に注入して乾燥・加熱硬化して形成した蛍光体チップ又は蛍光体粉末をバインダに混合して平板状に成形し、乾燥・加熱硬化した後、切り出して形成した蛍光体チップである。
【0019】この蛍光体は、賦活剤にセリウム(Ce)、共賦活剤にプラセオジム(Pr:Praseodymium)をドープしたガーネット構造を有するイットリウム・アルミン酸塩系の蛍光体、即ち、一般式:(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Cez,Pr_(w)、但し、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5により表される。発光ダイオードチップ(1)から放出される殆どの青色光は、蛍光体チップ(2)内に導かれ、その内一部の光は蛍光体チップ(2)の外部に放出されるが、一部の光は蛍光体チップ(2)内の蛍光体に照射される。このため、蛍光体が青色光により励起され、黄色光を発生するが、青色光と黄色光との混色により白色光が発生するため、赤色系発光となる波長成分の新たな発光ピーク及び十分な輝度が得られ、演色性が向上する。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「窒化ガリウム系化合物半導体より成る発光波長ピーク約430nm?約480nmの青色光を発生する発光層を備えた発光ダイオードチップ(1)と、
単結晶の蛍光体インゴットから切り出したものであり、透明な接着剤により半導体発光チップの底面に固着され、発光ダイオードチップから放出される青色光により励起されて黄色光を発生する蛍光体チップと、
を備え、
前記蛍光体チップの蛍光体は、一般式:(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Prw、但し、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5により表される、
発光半導体チップ組立体。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2005-57239号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0086】
(イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体)
本実施の形態に用いられるアルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体であり、LEDチップから発光された可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。例えば、YAlO_(3):Ce、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce、Y_(4)Al_(2)O_(9):Ce、(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce、Y_(3)(Al_(0.8)Ga_(0.2))_(5)O_(12):Ce、Tb_(2.95)Ce_(0.05)Al_(5)O_(12)、Y_(2.90)Ce_(0.05)Tb_(0.05)Al_(5)O_(12)、Y_(2.94)Ce_(0.05)Pr_(0.01)Al_(5)O_(12、Y2.90Ce0.05)Pr_(0.05)Al_(5)O_(12)等が挙げられる。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2007-300134号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0095】
本実施の形態に用いられるアルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体であり、LEDチップ101から発光された可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。例えば、上述したYAG系蛍光体の他、Tb_(2.95)Ce_(0.05)Al_(5)O_(12)、Y_(2.90)Ce_(0.05)Tb_(0.05)Al_(5)O_(12)、Y_(2.94)Ce_(0.05Pr0.01)Al_(5)O_(12)、Y_(2.90)Ce_(0.05)Pr_(0.05)Al_(5)O_(12)等が挙げられる。これらのうち、特に本実施の形態において、Yを含み、かつCeあるいはPrで付活され組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体が利用される。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特表2006-520836号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0011】
従って、本発明は、放射源と、前記放射源によって発せられる光の一部を吸収し、吸収された前記光の波長とは異なった波長の光を発することができる少なくとも1つの蛍光体を有する蛍光物質とを有する照明システムであって、前記少なくとも1つの蛍光体は、一般式(Lu_(1-x-y-a-b)Y_(x)Gd_(y))_(3)(Al_(1-z)Ga_(z))_(5)O_(12):Ce_(a)Pr_(b)(ここで0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2、0<b≦0.1)のガーネットである、照明システムを提供する。」
(2)「【0024】
ルテチウム濃度は、光源(特にLED)において用いられると、発せられる光の色軌跡に影響を与える。この蛍光体の色軌跡は、加えて、2つの濃度Lu:Ceの比を用いて微調整されることができ、これは、LED中のあらゆる他の(黄色又は赤色)蛍光体への適合を簡略化又は最適化する。」

5 その他の文献について
(1)補正の却下の決定において周知技術を示す文献として引用された特開2005-5544号公報(以下、「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0021】
本発明の第2の発明を図2(a),(b)の模式図に示す。図2の(a)はLED基板の発光部を上にする通常の搭載形態であり、(b)はLEDをフリップチップに搭載する形態である。図2(a)では、ステム21にLED基板22が接続され、その上にLED発光部23が位置する。LEDの周囲の一部若しくは全部を囲んで放熱体28,28′が設置され、そのステム又は電極と接する部分は電気的に絶縁29,29′されている。さらにその上方には放熱体28,28′に接して蛍光体24が位置する。LEDはLED発光部23側に電極が配置されているため、ワイヤ25,25´でステム21上に配置された電極26,26´に接続し、更に電極26,26′で外部電極に接続する。電極26,26´はステム21とは絶縁27、27´により絶縁されている。ステム21,放熱体28,28′、蛍光体24に囲まれる空間30は真空にしても良いが、通常透明樹脂を充填する。」

(2)補正の却下の決定において周知技術を示す文献として引用された特開2007-49019号公報(以下、「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0012】
[第1の実施の形態]
(発光装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を示す。この発光装置1は、上面に配線パターン11A,11Bが形成されている基板12と、配線パターン11A,11Bの端部に金バンプ13A,13Bを介して基板12上に搭載された発光素子としてのLEDチップ14と、LEDチップ14に対して空間が形成されるようにして基板12上に設けられた光透過性部材としての封止部材15と、封止部材15の内面に設けられた蛍光体層21とを備える。」
イ 「【0015】
封止部材15は、エポキシ、アクリル等の光透過性の樹脂材の成形等により、LEDチップ14の発光中心から等距離のドーム形を成し、ほぼ均一な厚みになるように形成されている。従って、封止部材15でLEDチップ14を封止したとき、封止部材15内には、空気層となる空間が形成される。この封止部材15は、その周縁をLEDチップ14を中心にして基板12上に接着等により固定される。なお、封止部材15は、他の材料、例えば、光透過性のガラス材を用いることもできる。」
ウ 「【0020】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(イ)封止部材15をドーム状にし、LEDチップ14と封止部材15の間に空間(空気層)を形成したので、LEDチップ14と封止部材15の接触がなくなるとともに両者間の距離が長くなり、LEDチップ14の発光強度が大きくなっても、封止部材15のダメージを軽減することができる。」

(3)補正の却下の決定において周知技術を示す文献として引用された特開2010-40861号公報(以下、「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0036】
(実施形態3)
本実施形態の発光装置Aの基本構成は実施形態2と略同じであり、図6に示すように、封止部3が、色変換部材4とは長径方向および短径方向が逆の半楕球状の形状に形成されており、凸レンズとしての機能を有し、封止部3と色変換部材4との間に空気層5が形成されている点が相違する。ここで、封止部3は、LEDチップ1と光軸が一致する形で形成されている。要するに、封止部3は、色変換部材4の長径方向に当該封止部3の短径方向が一致し、色変換部材4の短径方向に当該封止部3の長径方向が一致する形で形成されている。ここで、LEDチップ1から放射された光は、封止部3と空気層5との界面で屈折するが、当該封止部3の形状では界面への入射角が小さいので、屈折する角度が小さく、封止部3から出射される光の配光はLEDチップ1から出射される光の配光と大差なく、略同じとなる。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。」
イ 「【0038】
以上説明した本実施形態の発光装置Aでは、封止部3と色変換部材4との間に空気層5が形成されているので、LEDチップ1から放射され色変換部材4中の蛍光体により散乱された光のうち封止部3側へ散乱されて封止部3を通過する光の光量を低減できて発光装置A全体としての外部への光取り出し効率の向上を図れる。」


第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「窒化ガリウム系化合物半導体より成る発光波長ピーク約430nm?約480nmの青色光を発生する発光層を備えた発光ダイオードチップ」は、窒化ガリウム系化合物半導体より成る発光層は半導体化合物層であるから、本願発明1の「半導体化合物層を有し、青色系の光を発する発光素子」に相当する。
イ 引用発明の「単結晶の蛍光体インゴットから切り出したものであり、発光ダイオードチップから放出される青色光により励起されて黄色光を発生する蛍光体チップ」は、本願発明1の「前記発光素子の光を励起光として、黄色系の光を発する単結晶からなる蛍光体」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「半導体化合物層を有し、青色系の光を発する発光素子と、
前記発光素子の光を励起光として、黄色系の光を発する単結晶からなる平板状の蛍光体と、
を備える、
発光装置。」
(相違点1)
本願発明1は「素子基板」を備えるとともに、半導体化合物層が「前記素子基板上に形成された」ものであるのに対し、引用発明は「素子基板」を備えているかどうかが不明であり、半導体化合物層が「前記素子基板上に形成された」ものであるかどうかも不明である点。
(相違点2)
蛍光体が、本願発明1は「単一の単結晶」からなるのに対して、引用発明は単結晶からなるものであるが「単一の」単結晶であるかどうかが不明である点。
(相違点3)
蛍光体の形状が、本願発明1は「平板状」であるのに対して、引用発明は形状について不明である点。
(相違点4)
蛍光体の組成が、本願発明1は「Y_(3-x-y)L_(x)M_(y)Al_(5-z)N_(z)O_(12-w(Lは、)Gd又はLu、Mは、Ce,Tb,Eu,Yb,Tm,Smからなる群から選択される1種以上の元素、Nは、Ga又はIn、0≦x<3、0.003≦y≦0.2、0≦z≦5、-0.2≦w≦0.2)」であるのに対し、引用発明は「(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Pr_(w)、但し、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5」である点。
(相違点5)
蛍光体の光入射面が、本願発明1は「発光素子の出射光を伝搬する空気層に接する」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点5について検討する。
引用文献2-5には空気層が記載も示唆もされていないから、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて引用発明の発光ダイオードチップと蛍光体チップの間に空気層を形成することは容易に想到し得ない。
引用文献6には空気層が記載されているが、引用文献6に記載されているLEDチップと封止部材の間の空気層は、LEDチップと封止部材の接触をなくすとともに両者間の距離を長くすることでLEDチップの発光によって封止部材が受けるダメージを軽減するためのものであるから、引用発明及び引用文献6に記載された技術的事項に基づいて引用発明の発光ダイオードチップと蛍光体チップの間に空気層を形成することは容易に想到し得ない。
引用文献7には空気層が記載されているが、引用文献7に記載されている色変換部材と封止部の間の空気層は、色変換部材の屈折率と色変換部材の内側に接する層の屈折率差を、色変換部材と封止部が接するときの屈折率差よりも大きくすることにより、LEDチップから放射され色変換部材中の蛍光体により散乱された光のうち封止部側へ散乱されて封止部を通過する光の光量を低減して外部への光取り出し効率を向上するためのものである。引用発明は発光ダイオードチップと蛍光体チップの間に封止部を有しないから、引用発明及び引用文献7に記載された技術的事項に基づいて引用発明の発光ダイオードチップと蛍光体チップの間に空気層を形成することは容易に想到し得ない。
したがって、上記相違点1-4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4は何れも、本願発明1と同じく「前記蛍光体の光入射面は、前記発光素子の出射光を伝搬する空気層に接する」構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-4は「前記蛍光体の光入射面は、前記発光素子の出射光を伝搬する空気層に接する」という事項を有するものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1-4には空気層が記載も示唆もされていないから、当業者であっても引用文献1-4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-21 
出願番号 特願2012-540979(P2012-540979)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 百瀬 正之  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
村井 友和
発明の名称 発光装置  
代理人 特許業務法人平田国際特許事務所  
代理人 平田 忠雄  
代理人 特許業務法人平田国際特許事務所  
代理人 平田 忠雄  

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