• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1340504
審判番号 不服2016-12683  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-23 
確定日 2018-05-16 
事件の表示 特願2013-504826「ツリー構造符号化単位に基づいたデブロッキング・フィルタリングを行うビデオ符号化方法及びその装置、並びに復号化方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日国際公開、WO2011/129619、平成25年 6月17日国内公表、特表2013-524715〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件出願は、2011年4月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年4月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 平成27年 2月10日(起案日)
手続補正 平成27年 6月16日
拒絶理由通知(最後) 平成27年 9月 4日(起案日)
手続補正 平成28年 1月15日
補正の却下の決定 平成28年 4月19日(起案日)
拒絶査定 平成28年 4月19日(起案日)
審判請求 平成28年 8月23日
手続補正 平成28年 8月23日

第2 平成28年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年8月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容

上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成27年6月16日付け手続補正書(平成28年1月15日付けの手続補正はすでに却下されている。)の特許請求の範囲の請求項1?5を補正するものであるところ、そのうちの請求項1に記載された、

「ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、
前記ビデオ復号化装置が、
最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報についてのデータを含むビットストリームを受信する段階と、
前記最大符号化単位のサイズについての情報を用いてピクチャを複数の最大符号化単位で分割する段階と、
前記最大符号化単位のうち一つの最大符号化単位を前記分割情報に基づいて少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割する段階と、
対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つを示すパーティションタイプ情報を用いて前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する段階と、
変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位のサイズ情報を利用して前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階と、
前記変換単位を用いて逆変換を行い、前記予測単位を用いて予測を行って前記符号化単位を復元する段階と、
前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階と、
前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値のうち少なくとも一つに基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階と、
前記デブロッキング・フィルタリング方式によって前記隣接したピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い、前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階と、
を含み、
前記分割情報が分割されることを示す時、現在深度の符号化単位は周辺符号化単位と独立して下位深度の符号化単位で分割され、
前記分割情報が分割されないことを示す時、前記少なくとも一つの予測単位は前記現在深度の前記符号化単位から獲得される、
ことを特徴とするビデオ復号化方法。」

という発明を、平成28年8月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、
ビットストリームから最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報を獲得する段階と、
前記最大符号化単位のサイズについての情報を用いてピクチャを複数の最大符号化単位で分割する段階と、
前記最大符号化単位のうち一つの最大符号化単位を前記分割情報に基づいて少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割する段階と、
対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つを示すパーティションタイプ情報を用いて前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する段階と、
変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位のサイズ情報を利用して前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階と、
前記変換単位を用いて逆変換を行い、前記予測単位を用いて予測を行って前記符号化単位を復元する段階と、
前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階と、
前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階と、
前記デブロッキング・フィルタリング方式によって前記デブロッキング・フィルタリングされるピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い、前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階と、
を含み、
前記分割情報が分割されることを示す時、現在深度の符号化単位は周辺符号化単位と独立して下位深度の符号化単位で分割され、
前記分割情報が分割されないことを示す時、前記少なくとも一つの予測単位は前記現在深度の前記符号化単位から獲得され、
前記境界は、所定サイズ以上の前記予測単位の境界及び前記所定サイズ以上の前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである、
ことを特徴とするビデオ復号化方法。」

という発明に補正することを含むものである。
なお、下線は、補正された箇所に対して当審で付したものである。

2.新規事項の有無、単一性、補正の目的について

本件補正は、平成27年6月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

(1)「ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、前記ビデオ復号化装置が、」を、「ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、」とする補正、
(2)「最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報についてのデータを含むビットストリームを受信する」を、「ビットストリームから最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報を獲得する」とする補正、
(3)「前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値のうち少なくとも一つに基づいて」を、「前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値に基づいて」とする補正、
(4)「前記隣接したピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い」を、「前記デブロッキング・フィルタリングされるピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い」とする補正、
(5)「境界」に関して、「前記境界は、所定サイズ以上の前記予測単位の境界及び前記所定サイズ以上の前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである」ことを追加する補正

であり、いずれも、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明とは発明の単一性の要件を満たすものである。

上記(1)について、補正前の発明も補正後の発明も、ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法についての発明であり、各段階は、ビデオ復号化装置が遂行するものであるから、「前記ビデオ復号化装置が」を削除しても、補正前と補正後で、実質的な構成が変わるものではない。

上記(2)は、「最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報」「を含むビットストリームを受信する」構成であったのを、「ビットストリームから最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報を獲得する」構成とすることにより、受信するだけでなく、ビットストリームに含まれた情報を獲得することに限定する補正であり、補正前の発明の発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲を減縮することを目的とした補正である。

上記(3)は、「境界強度」と「境界に隣接したピクセルのサンプル値」のうち「少なくとも一つに基づいて」すなわち『いずれかもしくは両方に基づいて』決定する構成であったのを、「境界強度」及び「境界に隣接したピクセルのサンプル値」に「基づいて」すなわち『両方に基づいて』決定する構成に限定する補正であり、補正前の発明の発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲を減縮することを目的とした補正である。

上記(4)について、デブロッキング・フィルタリングを行うのは、隣接したピクセルに対して行うことが技術常識であり、補正前と補正後で、実質的な構成が変わるものではない。

上記(5)は、「境界」に関して限定する補正であり、補正前の発明の発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲を減縮することを目的とした補正である。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項、第5項第2号の規定に適合するものである。

3.独立特許要件について

本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、上記補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後発明

補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正後発明」という。)は、上記の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
なお、A?Kについては、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成A」等という。)

「A ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、
B ビットストリームから最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報を獲得する段階と、
C 前記最大符号化単位のサイズについての情報を用いてピクチャを複数の最大符号化単位で分割する段階と、
D 前記最大符号化単位のうち一つの最大符号化単位を前記分割情報に基づいて少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割する段階と、
E 対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つを示すパーティションタイプ情報を用いて前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する段階と、
F 変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位のサイズ情報を利用して前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階と、
G 前記変換単位を用いて逆変換を行い、前記予測単位を用いて予測を行って前記符号化単位を復元する段階と、
H1 前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階と、
H2 前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階と、
H3 前記デブロッキング・フィルタリング方式によって前記デブロッキング・フィルタリングされるピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い、前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階と、
を含み、
I 前記分割情報が分割されることを示す時、現在深度の符号化単位は周辺符号化単位と独立して下位深度の符号化単位で分割され、
J 前記分割情報が分割されないことを示す時、前記少なくとも一つの予測単位は前記現在深度の前記符号化単位から獲得され、
K 前記境界は、所定サイズ以上の前記予測単位の境界及び前記所定サイズ以上の前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである、
ことを特徴とする
A ビデオ復号化方法。」

(2)優先権主張について

前記第1のとおり、本願は、優先権主張を伴うものである。そこで、上記構成Kを有する補正後発明に対して、優先権主張の効果が及ぶものであるかについて検討する。

優先権主張の基礎となる米国仮出願61/323449には、デブロッキング・フィルタリングと予測単位及び変換単位のサイズとの関係について、図面とともに、以下の記載がある。
なお、仮訳については、当審で付したものである。

「Unlike H.264/AVC, it is not guaranteed that the transform unit is always included in the prediction unit, thus the boundary for the deblocking process is chosen from the boundary of the smaller unit.」(23頁18?20行)

(仮訳:H.264/AVCと異なり、変換単位が常に予測単位に含まれることは保証されないので、デブロッキング処理に対する境界は、より小さい単位の境界から選択される。)

「Although we use the same process defined in the H.264/AVC, the use of large block sizes can effectively reduce the complexity of the deblocking filter.」(37頁6?7行)

(仮訳:我々は、H.264/AVCに定義されているのと同じプロセスを使用するが、大きなブロックサイズの使用が、デブロッキングフィルタの複雑さを効果的に低減できます。)

しかし、当該記載は、デブロッキング処理に対する境界は、より小さい単位の境界から選択されること、大きなブロックサイズの使用が、デブロッキングフィルタの複雑さを効果的に低減できることを述べているのみであり、当該記載を含む米国仮出願61/323449には、補正後発明の「前記境界は、所定サイズ以上の前記予測単位の境界及び前記所定サイズ以上の前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである、」という構成要件は記載されていない。
したがって、補正後発明に対しては、優先権主張の効果は及ばないものである。

以上のとおりであるから、以下で、補正後発明を検討するにあたっては、本願の国際出願日である2011年4月13日を判断の基準日とする。

(3)各引用文献の記載事項及び引用発明について

(3-1)引用文献1の記載事項及び引用発明

原審の拒絶査定に、引用文献1として引用された、国際公開第2010/002214号には、「IMAGE ENCODING METHOD AND DEVICE, AND DECODING METHOD AND DEVICE THEREFOR」として図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、括弧内で示した仮訳については、引用文献1の国際出願の公表公報である特表2011-526770号公報の記載を参考に当審で付したものである。前記公報の対応箇所も参考までに付した。
また、下線は、当審が付したものである。

ア「



(本発明は、予測された映像データの後処理を介して、映像の圧縮効率を向上させる映像の符号化方法及び装置、並びにその復号化方法及び装置に関する。)(段落0001)

イ「



(最大符号化単位分割部110は、最大サイズの符号化単位である最大符号化単位に基いて、現在ピクチャまたは現在スライスを分割する。現在ピクチャまたは現在スライスは、少なくとも1つの最大符号化単位で分割される。分割された映像データは、少なくとも1つの最大符号化単位別に、符号化深さ決定部120に出力されうる。
(中略)
最大符号化単位から最上位符号化単位まで、現在符号化単位の高さ及び幅を階層的に縮小した総回数を制限する最大深さ及び符号化単位の最大サイズが既定でありうる。かような最大符号化単位及び最大深さは、ピクチャまたはスライス単位で設定されうる。すなわち、ピクチャまたはスライスごとに、異なる最大符号化単位及び最大深さを有し、最大深さによって、最大映像符号化単位に含まれた最小符号化単位サイズを可変的に設定できる。このように、ピクチャまたはスライスごとに、最大符号化単位及び最大深さを可変的に設定できるようにすることによって、平坦な領域の映像は、さらに大きい最大符号化単位を利用して符号化することによって圧縮率を向上させ、複雑度が大きい映像は、さらに小サイズの符号化単位を利用し、映像の圧縮効率を向上させることができる。)(段落0014?0017)

ウ「



(最大符号化単位サイズは、深さが増大することによって、符号化単位が階層的に分割されて縮小され、符号化単位の個数は増加する。また、1つの最大符号化単位に含まれる同じ深さの符号化単位であるといっても、それぞれのデータに係わる符号化誤差を測定し、上位深さへの縮小いかんが決定される。従って、1つの最大符号化単位に含まれるデータであるといっても、位置によって、深さ別符号化誤差が異なるので、位置によって、符号化深さが異なって決定されうる。言い換えれば、最大符号化単位は、異なる深さによって、異なるサイズのサブ符号化単位で分割されうる。1つの最大符号化単位について、符号化深さが一つ以上設定され、最大符号化単位のデータは、一つ以上の符号化深さの符号化単位によって分割されうる。)(段落0020)

エ「



(例えば、映像符号化装置100は、符号化単位を予測するために、符号化単位と異なる処理単位を選択できる。一例として、符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、予測のための処理単位は、2Nx2N、2NxN、Nx2N、NxNでありうる。言い換えれば、符号化単位の高さまたは幅のうち少なくとも一つを半分にする形態の処理単位に基いて、動き予測が行われもする。以下、予測の基になるデータ単位は、「予測単位」とする。
予測モードは、イントラ・モード、インター・モード及びスキップ・モードのうち少なくとも一つであり、特定予測モードは、特定サイズまたは形態の予測単位についてのみ遂行されうる。例えば、イントラ・モードは、正方形である2Nx2N,NxNサイズの予測単位についてのみ遂行されうる。また、スキップ・モードは、2Nx2Nサイズの予測単位についてのみ遂行されうる。符号化単位内部に複数の予測単位があるならば、それぞれの予測単位について予測を行い、符号化誤差が最も小さい予測モードが選択されうる。
また、映像符号化装置100は、符号化単位と異なるサイズの処理単位に基いて、映像データを周波数変換できる。符号化単位の周波数変換のために、符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズのデータ単位を基に、周波数変換が行われうる。以下、周波数変換の基になる処理単位を「変換単位」とする。)(段落0022?0024)

オ「



(符号化情報符号化部140は、符号化深さ決定部120で決定された少なくとも1つの符号化深さに基づいて、最大符号化単位ごとに、深さ別符号化モードについての情報を符号化し、ビット・ストリームを出力する。深さ別符号化モードについての情報は、符号化深さ情報、符号化深さの符号化単位の予測単位の分割タイプ情報、予測単位別予測モード情報、変換単位サイズ情報などを含むことができる。
符号化深さ情報は、現在深さに符号化せずに、上位深さの符号化単位で符号化するか否かを示す深さ別縮小情報を利用して定義されうる。現在符号化単位の現在深さが符号化深さであるならば、現在符号化単位は、現在深さの符号化単位で符号化されるので、現在深さの縮小情報は、それ以上上位深さに縮小されないように定義されうる。反対に、現在符号化単位の現在深さが符号化深さではないならば、上位深さの符号化単位を利用した符号化を試みなければならないなので、現在深さの縮小情報は、上位深さの符号化単位に縮小されるように定義されうる。
現在深さが符号化深さではないならば、上位深さの符号化単位に縮小された符号化単位について符号化が行われる。現在深さの符号化単位内に、上位深さの符号化単位が一つ以上存在するので、それぞれの上位深さの符号化単位ごとに、反復的して符号化が行われ、同じ深さの符号化単位ごとに、再帰的(recursive)符号化が行われうる。)(段落0027?0029)

カ「



(映像関連データ獲得部210は、映像復号化装置200が受信したビット・ストリームをパージングし、最大符号化単位別に映像データを獲得し、映像データ復号化部230に出力する。映像関連データ獲得部210は、現在ピクチャまたはスライスに係わるヘッダから、現在ピクチャまたはスライスの最大符号化単位に係わる情報を抽出できる。本発明の一実施形態による映像復号化装置200は、最大符号化単位別に映像データを復号化する。
符号化情報抽出部220は、映像復号化装置200が受信したビット・ストリームをパージングし、現在ピクチャに係わるヘッダから、最大符号化単位別符号化深さ及び符号化モードについての情報を抽出する。抽出された符号化深さ及び符号化モードについての情報は、映像データ復号化部230に出力される。
最大符号化単位別符号化深さ及び符号化モードについての情報は、一つ以上の符号化深さ情報について設定され、符号化深さ別符号化モードについての情報は、符号化単位別予測単位の分割タイプ情報、予測モード情報及び変換単位サイズ情報などを含むことができる。また、符号化深さ情報として、深さ別縮小情報が抽出されもする。
最大符号化単位の分割形態についての情報は、最大符号化単位に含まれた深さによって異なるサイズのサブ符号化単位に係わる情報を含むことができ、符号化モードについての情報は、サブ符号化単位別予測単位に係わる情報、予測モードについての情報及び変換単位に係わる情報などを含むことができる。)(段落0037?0040)

キ「



(映像データ復号化部230は、最大符号化単位別符号化深さ及び符号化モードについての情報に基づいて、それぞれの最大符号化単位の映像データを復号化し、現在ピクチャを復元する。最大符号化単位別符号化深さ情報に基づいて、映像データ復号化部230は、少なくとも1つの符号化深さの符号化単位ごとに、映像データを復号化できる。復号化過程は、イントラ予測及び動き補償を含む予測過程及び逆変換過程を含むことができる。
映像データ復号化部230は、符号化単位別予測のために、符号化深さ別符号化単位の予測単位の分割タイプ情報及び予測モード情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの予測単位及び予測モードで、イントラ予測または動き補償を行うことができる。また、映像データ復号化部230は、最大符号化単位別逆変換のために、符号化深さ別符号化単位の変換単位サイズ情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの変換単位で逆変換を行うことができる。
映像データ復号化部230は、深さ別縮小情報を利用する現在最大符号化単位の符号化深さを決定できる。もし縮小情報が、現在深さで復号化することを示しているならば、現在深さが符号化深さである。従って、映像データ復号化部230は、現在最大符号化単位の映像データに対して、現在深さの符号化単位を、予測単位の分割タイプ、予測モード及び変換単位サイズ情報を利用して復号化できる。すなわち、最小符号化単位について設定されている符号化情報を観察し、同じ縮小情報を含む符号化情報を保有している最小符号化単位を集め、1つのデータ単位で復号化できる。)(段落0042?0044)

ク「



(図5は、本発明の一実施形態による符号化単位に基づいた映像復号化部のブロック図を示した図である。図5を参照するに、ビット・ストリーム505が、パージング部510を経て、復号化対象である符号化された映像データ及び復号化のために必要な符号化情報がパージングされる。符号化された映像データは、エントロピ復号化部520及び逆量子化部530を経て、逆量子化されたデータとして出力され、周波数逆変換部540を経て、残差値に復元される。残差値は、イントラ予測部550のイントラ予測の結果、または動き補償部560の動き補償結果と加算され、符号化単位別に復元される。復元された符号化単位は、デブロッキング部570及びループ・フィルタリング部580を経て、次の符号化単位、または次のピクチャの予測に利用される。
本発明の一実施形態による映像復号化方法によって、復号化するために、映像復号化部400の構成要素であるパージング部510、エントロピ復号化部520、逆量子化部530、周波数逆変換部540、イントラ予測部550、動き補償部560、デブロッキング部570及びループ・フィルタリング部580がいずれも最大符号化単位、深さによるサブ符号化単位、予測単位及び変換単位に基いて、映像復号化過程を処理する。特に、イントラ予測部550、動き補償部560は、符号化単位の最大サイズ及び深さを考慮し、符号化単位内の予測単位及び予測モードを決定し、周波数逆変換部540は、符号化単位の最大サイズ及び深さを考慮し、変換単位サイズを考慮せねばならない。)(段落0055、0056)

ケ「



(本発明の一実施形態による映像符号化装置100及び映像復号化装置200は、最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割し、符号化したり復号化する。符号化過程中で、周波数変換のための変換単位サイズは、それぞれの符号化単位よりは大きくないデータ単位を基に選択されうる。例えば、現在符号化単位710が64x64サイズであるとき、32x32サイズの変換単位720を利用して、周波数変換が行われうる。また、64x64サイズの符号化単位710のデータを、64x64サイズ以下の32x32,16x16,8x8,4x4サイズの変換単位に、それぞれ周波数変換を行って符号化した後、原本との誤差が最も少ない変換単位が選択されうる。)(段落0070)

コ「



(本発明の一実施形態による映像符号化装置100の符号化情報符号化部は、符号化モードについての情報であり、それぞれの符号化深さの符号化単位ごとに、分割タイプについての情報800、予測モードについての情報810、変換単位サイズについての情報820を符号化して伝送できる。
分割タイプについての情報800は、現在符号化単位の動き予測のために、予測単位として、現在符号化単位が分割されたタイプについての情報を示す。例えば、深さ0及びサイズ2Nx2Nの現在符号化単位CU_0は、サイズ2Nx2Nの予測単位802、サイズ2NxNの予測単位804、サイズNx2Nの予測単位806、サイズNxNの予測単位808のうちいずれか1つのタイプに分割され、予測単位として利用されうる。この場合、現在符号化単位の分割タイプについての情報800は、サイズ2Nx2Nの予測単位802、サイズ2NxNの予測単位804、サイズNx2Nの予測単位806、及びサイズNxNの予測単位808のうちいずれか一つを示すように設定される。
予測モードについての情報810は、それぞれの予測単位の動き予測モードを示す。例えば、予測モードについての情報810を介して、分割タイプについての情報800が指す予測単位が、イントラ・モード812、インター・モード814及びスキップ・モード816のうちいずれか一つで動き予測が行われるか否かが設定されうる。
また、変換単位サイズについての情報820は、現在符号化単位をいかなる変換単位を基に、周波数変換を行うかを示す。例えば、変換単位は、第1イントラ変換単位サイズ822、第2イントラ変換単位サイズ824、第1インター変換単位サイズ826、第2イントラ変換単位サイズ828のうちいずれか一つでありうる。)(段落0072?0075)

サ「



(深さの増大いかんを示すために、縮小情報が利用されうる。縮小情報は、現在深さの符号化単位が、上位深さの符号化単位に縮小されるか否かを示す。)(段落0078)

シ「



(本発明の一実施形態による映像符号化装置100は、符号化単位912をための符号化深さを決定するために、深さ別符号化誤差を比較し、最も小さい符号化誤差が発生する深さを選択する。例えば、深さ0の符号化単位に係わる符号化誤差は、分割タイプ912,914,916,918ごとに動き予測を行って符号化した後、最も小さい符号化誤差が発生する予測単位が決定される。同様に、深さ0,1,…,d-1ごとに、符号化誤差が最も小さい予測単位が検索されうる。深さdでは、サイズ2N_dx2N_dの符号化単位であり、かつ予測単位960を基にした動き予測を介して符号化誤差が決定されうる。このように、深さ0,1,…,d-1,dのあらゆる深さ別最小符号化誤差を比較し、誤差が最も小さい深さが選択され、符号化深さとして決定されうる。符号化深さ及び当該深さの予測単位は、符号化モードについての情報であり、符号化されて伝送されうる。また、深さ0から符号化深さに至るまで符号化単位が縮小されねばならないので、符号化深さの縮小情報だけ「0」に設定され、符号化深さを除外した深さ別縮小情報は、「1」に設定されねばならない。
本発明の一実施形態による映像復号化装置200の符号化情報抽出部220は、符号化単位912に係わる符号化深さ、及び予測単位についての情報を抽出し、符号化単位912を復号化するのに利用されうる。一実施形態による映像復号化装置200は、深さ別縮小情報を利用し、縮小情報が「0」である深さを符号化深さとして把握し、当該深さに係わる符号化モードについての情報を利用して復号化に利用できる。)(段落0086、0087)

ス「



(本発明の一実施形態による映像符号化装置100の符号化情報符号化部140は、符号化単位別符号化情報を符号化し、本発明の一実施形態による映像復号化装置200の符号化情報抽出部220は、符号化単位別符号化情報を抽出できる。
符号化情報は、符号化単位に係わる縮小情報、分割タイプ情報、予測モード情報、変換単位サイズ情報を含むことができる。図11に図示されている符号化情報は、本発明の一実施形態による映像符号化装置100及び映像復号化装置200で設定できる一例に過ぎず、図示されているところに限定されるものではない。
縮小情報は、当該符号化単位の符号化深さを示すことができる。すなわち、縮小情報によって、それ以上縮小されない深さが符号化深さであるから、符号化深さに対して、分割タイプ情報、予測モード、変換単位サイズ情報が定義されうる。縮小情報によって、1段階さらに縮小されねばならない場合には、縮小された4個の上位深さの符号化単位ごとに、独立して符号化が行わればならない。)(段落0094?0096)

セ「



(仮訳

)

ソ「



(仮訳

)

上記ア?ソの記載、並びにこの分野における技術常識を考慮し、以下で検討する。

(ア)上記アの記載から、引用文献1には、映像の復号化方法及び復号化装置についての発明が記載されている。ここで、映像の復号化は、映像の復号化装置が行うものである。
すなわち、引用文献1には、「映像の復号化装置が行う映像の復号化方法」についての発明が開示されている。

(イ)上記イの記載から、引用文献1の符号化側では、「ピクチャ単位で」、「符号化単位の最大サイズが既定」であり、「最大サイズの符号化単位である最大符号化単位に基いて、現在ピクチャを分割」しており、上記カの記載から、引用文献1の復号化方法は、「受信したビット・ストリームをパージングし、現在ピクチャに係わるヘッダから、現在ピクチャの最大符号化単位に係わる情報、深さ別縮小情報を含む符号化深さ情報が設定された最大符号化単位別符号化深さ及び符号化モードについての情報を抽出する」ものである。
すなわち、引用文献1の復号化方法は、「受信したビット・ストリームをパージングし、現在ピクチャに係わるヘッダから、符号化側で既定された最大サイズの符号化単位である最大符号化単位に係わる情報と深さ別縮小情報を抽出する」ものである。

(ウ)上記イの記載から、引用文献1の復号化方法は、「最大符号化単位に基づいて、現在ピクチャを最大符号化単位で分割する」ものである。

(エ)上記サの記載から、引用文献1の復号化方法において抽出される「深さ別縮小情報」は、「現在深さの符号化単位が、上位深さの符号化単位に縮小されるか否かを示す」情報であり、上記ケの記載から、引用文献1の復号化方法は、「最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割し、」「復号化する」ものである。
また、上記ウの記載から、「符号化単位が階層的に分割されて縮小され」るものである。
したがって、引用文献1の復号化方法は、「現在深さの符号化単位が上位深さの符号化単位に縮小されるか否かを示す深さ別縮小情報を用いて、最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割し、符号化単位が階層的に分割されて上位深さの符号化単位に縮小される」ものといえる。

(オ)上記エ、コの記載から、引用文献1の符号化側では、「符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、予測のための処理単位は、2Nx2N、2NxN、Nx2N、NxN」とし、「分割タイプについての情報」に「予測単位」「のうちいずれか一つを示すように設定」し、「伝送」している。
上記キの記載から、引用文献1の復号化方法は、「符号化深さ別符号化単位の予測単位の分割タイプ情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの予測単位で、イントラ予測または動き補償を行うことができる」ものである。ここで、復号化方法における「分割タイプ情報」は、符号化側で設定し、伝送された「分割タイプについての情報」である。
そして、分割タイプ情報に基づいて、それぞれの予測単位で、イントラ予測または動き補償を行うことは、分割タイプ情報に基づいて、予測単位を決定するものであり、当該予測単位で予測を行うものといえる。
すなわち、引用文献1の復号化方法は、「符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、符号化単位ごとの予測単位の分割タイプを2Nx2N,2NxN,Nx2N及びNxNのうちいずれか一つで示す分割タイプ情報に基づいて、予測単位を決定する」ものであり、「当該予測単位で予測を行う」ものといえる。

(カ)上記エの記載から、引用文献1の復号化方法は、「符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズのデータ単位である変換単位を基に、周波数変換が行われ」るものである。
上記キの記載から、引用文献1の復号化方法は、「符号化深さ別符号化単位の変換単位サイズ情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの変換単位で逆変換を行うことができる」ものである。ここで、変換単位サイズは、上記ケの記載のように、32x32,16x16のような、変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを用いて表すものである。
そして、変換単位サイズ情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの変換単位で逆変換を行うのであるから、引用文献1の復号化方法は、「変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位サイズ情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの変換単位を決定する」ものであり、「当該変換単位で逆変換を行う」ものといえる。

(キ)上記キの記載から、引用文献1の復号化方法は、「符号化単位ごとに、映像データを復号化でき」、「復号化過程は、イントラ予測及び動き補償を含む予測過程及び逆変換過程を含む」ものである。
すなわち、上記(オ)、(カ)における「当該予測単位で予測を行う」ことと、「当該変換単位で逆変換を行う」ことにより、「符号化単位ごとに復号化する」ものであるといえる。

(ク)上記クの記載から、引用文献1の復号化方法は、「デブロッキング部が、予測単位及び変換単位に基いて、映像復号化過程を処理する」ものである。

(ケ)上記オの記載から、引用文献1の深さ別縮小情報は、「現在符号化単位の現在深さが符号化深さであるならば、現在符号化単位は、現在深さの符号化単位で符号化されるので、現在深さの縮小情報は、それ以上上位深さに縮小されないように定義されうる。反対に、現在符号化単位の現在深さが符号化深さではないならば、上位深さの符号化単位を利用した符号化を試みなければならないなので、現在深さの縮小情報は、上位深さの符号化単位に縮小されるように定義されうる」ものである。
また、上記シ、スの記載から、引用文献1の符号化側では、「符号化深さの縮小情報だけ「0」に設定され、符号化深さを除外した深さ別縮小情報は、「1」に設定され」、「縮小情報によって、1段階さらに縮小されねばならない場合には、縮小された4個の上位深さの符号化単位ごとに、独立して符号化が行われ」るものである。
そして、引用文献1の復号化方法は、上記(エ)で検討したように、「現在深さの符号化単位が上位深さの符号化単位に縮小されるか否かを示す深さ別縮小情報を用いて、最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割し、符号化単位が階層的に分割されて上位深さの符号化単位に縮小される」ものであるから、引用文献1の復号化方法の深さ別縮小情報は、「上位深さの符号化単位に縮小されるように定義される深さ別縮小情報であり、1段階さらに縮小されねばならない場合には、縮小された4個の上位深さの符号化単位ごとに、独立して符号化が行われる」ものといえる。

(コ)上記スの記載から、引用文献1において、「縮小情報によって、それ以上縮小されない深さが符号化深さ」であり、「符号化深さに対して、分割タイプ情報、予測モード」が定義されるものである。
また、上記セから、それぞれの符号化深さ別符号化単位について、予測単位が決定されていることが見て取れ、上記ソから、「縮小○」の時は、上位深さに縮小されるのに対し、「縮小×」の時、すなわち、それ以上縮小されない時は、現在深さで符号化し、分割タイプと予測モードが定義されている。
そして、上記キの記載から、引用文献1の復号化方法は、「符号化深さ別符号化単位の予測単位の分割タイプ情報及び予測モード情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの予測単位及び予測モードで、イントラ予測または動き補償を行う」ものである。
したがって、引用文献1の復号化方法は、「深さ別縮小情報によって、それ以上縮小されない深さである符号化深さの場合に、定義されている分割タイプ情報、予測モードに基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの予測単位を決定し、予測を行うもの」といえる。

(サ)引用文献1の復号化方法は、方法の発明であるから、上記(イ)?(ク)の動作を行う段階を有しているといえる。

したがって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

なお、a?jについては、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成a」、・・・、「構成j」という。)

「a 映像の復号化装置が行う映像の復号化方法において、
b 受信したビット・ストリームをパージングし、現在ピクチャに係わるヘッダから、符号化側で既定された最大サイズの符号化単位である最大符号化単位に係わる情報と深さ別縮小情報を抽出する段階と、
c 最大符号化単位に基づいて、現在ピクチャを最大符号化単位で分割する段階と、
d 現在深さの符号化単位が、上位深さの符号化単位に縮小されるか否かを示す深さ別縮小情報を用いて、最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割し、符号化単位が階層的に分割されて上位深さの符号化単位に縮小される段階と、
e 符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、符号化単位ごとの予測単位の分割タイプを2Nx2N,2NxN,Nx2N及びNxNのうちいずれか一つで示す分割タイプ情報に基づいて、予測単位を決定する段階と、
f 変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位サイズ情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの変換単位を決定する段階と、
g 当該予測単位で予測を行い、当該変換単位で逆変換を行うことにより、符号化単位ごとに復号化する段階と、
h デブロッキング部が、予測単位及び変換単位に基いて、映像復号化過程を処理する段階と、
を含み、
i 上位深さの符号化単位に縮小されるように定義される深さ別縮小情報であり、1段階さらに縮小されねばならない場合には、縮小された4個の上位深さの符号化単位ごとに、独立して符号化が行われ、
j 深さ別縮小情報によって、それ以上縮小されない深さである符号化深さの場合に、定義されている分割タイプ情報、予測モードに基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの予測単位を決定し、予測を行う、
a 映像の復号化装置が行う映像の復号化方法。」

(3-2)引用文献13の記載事項
原審の拒絶査定に、引用文献13として引用された、木全英明(外2名),「H.26Lにおける非対称マクロブロック分割の効果の検証と実装方法の一検討」,情報処理学会研究報告,Vol.2002, No.106,社団法人情報処理学会,2002年11月15日には、以下の事項が記載されている。

ア「1.はじめに
映像符号化方式H.26L(MPEG-4 part10/H.264)では、縦横16画素のマクロブロックを2分割または4分割に等分割する分割パターンを定義している。(中略)H.263と比較し、2分割パターンは、縦横16画素のマクロブロック単位よりも動き補償の予測効率を上げ、4分割パターンよりも動きベクトル等のオーバーヘッドを低減する効果がある。(中略)
更に2分割における予測効率を向上する目的で、縦16横4画素や縦16横12画素といった非対称の2分割パターンを定義する方法が提案されている。」(191頁左欄)

イ「3.非対称分割パターン
分割数を増やすことにより、予測効率を上げることができる。(中略)
そこで2分割パターンを等分割ではなく、それぞれ非対称のブロックに分割する方法が提案されている。(中略)

3.1 非対称分割パターンの例
関口らが提案している非分割パターンは図2のようなものである。」(192頁左欄?右欄)

ウ「

」(192頁)

上記ア?ウの記載から、引用文献13には、以下の技術が開示されている。
「映像符号化方式において、2分割に等分割する分割パターンだけでなく、非対称に2分割されたパターンを用いて、予測を行う技術。」

(3-3)引用文献7の記載事項
原審の拒絶査定に、引用文献7として引用された、亀山渉(外1名)監修,「インプレス標準教科書シリーズ IPTV時代のデジタル放送教科書」,初版,2010年4月1日,株式会社インプレスR&Dには、以下の事項が記載されている。

「DCTを用いるビデオ圧縮符号化方式は、ブロック単位にDCT変換を行うため、符号化ビット・レートが低い場合には、ブロックの境界が目立ってしまうノイズが出現することがあります。これは、ブロック・ノイズ(ブロック歪)と呼ばれます。(中略)これに対して、H.264/AVCでは、特に低ビット・レートでみられるブロック・ノイズを除去するために、予測画像を作る段階で、ノイズ除去フィルタが用いられます。このH.264/AVCのノイズ除去フィルタは、デブロッキング・フィルタと呼ばれます。予測に用いるマクロブロックには、16個の4画素×4ラインのブロックが含まれますが、これは、このブロック境界をぼかすことが目的です。」(161頁6行?162頁4行)

(3-4)引用文献9の記載事項
原審の拒絶査定に、引用文献9として引用された、井口和久,「ワンセグの映像符号化」,放送技術,Vol.61, No.6,2008年6月1日,兼六館出版株式会社には、以下の事項が記載されている。

「符号化の処理はブロック単位に行うため、ブロックの境界が目立つ場合がある。デブロッキングフィルタはこのようなブロックの境界をぼやかして境界を目立たなくする1次元ローパスフィルタである。しかし、ローパスフィルタをすべてのブロック境界に適用すると、必要以上にぼやけが発生する原因となる。そこでH.264/MPEG-4 AVC方式では、ブロック境界が目立つ可能性のあるブロック(例えば画面内予測ブロックや、隣のブロックと異なる動きベクトルを持つ動き補償予測ブロックなど)に対してのみローパスフィルタを適用する。またローパスフィルタの強度は、量子化の粗さにより制御され、必要以上に画像がぼけることを防いでいる。なお、フィルタ適用の有無や強度は、予測の種類や動きベクトル等に基づきブロックごとに自動的に判定されるため、デブロッキングフィルタを使用してもビットレートは増加しない。」(72頁右欄7行?73頁左欄10行)

(3-5)引用文献10の記載事項
原審の拒絶査定に、引用文献10として引用された、大久保榮監修,「インプレス標準教科書シリーズ 改訂三版H.264/AVC教科書」,第1版,2009年1月1日,株式会社インプレスR&Dには、以下の事項が記載されている。

ア「図6-2に示すように、ブロックPとブロックQの最上段に位置するデブロッキング・フィルタ処理前の画素値をp_(0)?p_(3)、q_(0)?q_(3)と定義し、処理後の画素値をp’_(0)?p’_(3)、q’_(0)?q’_(3)と定義して、デブロッキング・フィルタの動作を説明します。フィルタ処理は、水平方向、垂直方向独立に行います。
2 Bs(ブロック強度)の決定
まず、デブロッキング・フィルタ処理に先立ち、図6-2に示すp_(0)?p_(3)により構成されるブロックに対して、表6-1のようにBs値(Boundary Strength、画像のブロック境界の強度)が決定されます。
すなわち、同一ピクチャ(画像)に属するブロック境界に、一様に同じ強さのフィルタ処理を行うのではなく、これから処理を行うべきブロック境界が、マクロブロック境界であるかどうかとか、そのどちらかが画面内符号化されたものであるかといった条件に応じて、個々に対しどの程度の強さのフィルタをかけるべきかを決定します。」(145頁6?16行)

イ「

」(145頁)

ウ「

」(146頁)

エ「

」(147?148頁)

(3-6)引用文献11の記載事項
原審の拒絶査定に、引用文献11として引用された、小野定康(外2名)、「ユビキタス技術 動画像の高能率符号化-MPEG-4とH.264-」には、以下の事項が記載されている。

ア「〔5〕デブロッキングフィルタ
(中略)
このデブロッキングフィルタの処理は、さまざまな場合分けによってフィルタの強度が変えられるようになっている.(中略)
デブロッキングフィルタの強度を決める各パラメータを表5・2にまとめる.」(119頁14行?120頁14行)

イ「

」(120頁)

(3-7)引用文献5の記載事項
原審の平成27年2月10日付け拒絶理由に、引用文献5として引用された、Wiegand, T., et.al.、“WD3: Working Draft 3 of High-Efficiency Video Coding”Document: JCTVC-E603(version 2)の8.6.1には、以下の事項が記載されている。
なお、当該引用文献5は、現実の出願日より前に公開された文献である。
また、仮訳については、当審で付したものである。
「8.6.1 Debelocking filter process
(中略)
The deblocking filter process shall be applied to all prediction unit edges and transform unit edges of a picture, except edges at the boundary of the picture and any edges for which the deblocking filter process is disabled by disable_deblocking_filter_idc. For the transform units and prediction units with edges smaller than 8 samples in either vertical or horizontal direction, only the edges lying on the 8x8 sample grid are filtered.」
(8.6.1 Debelocking filter process の4段落め)

(仮訳:8.6.1 デブロッキングフィルタ処理
(中略)
デブロッキングフィルタ処理は、ピクチャ境界のエッジ及びdisable_deblocking_filter_idcによりデブロッキングフィルタ処理が行われないエッジを除いて、全ての予測単位のエッジと変換単位のエッジに適用される。縦方向もしくは横方向のいずれかにおいて8サンプルよりも小さいエッジを有する変換単位及び予測単位に対しては、8×8サンプルグリッドにあるエッジだけが、フィルタされる。)

(4)対比
補正後発明と引用発明を対比する。
(4-1)補正後発明の構成Aと引用発明の構成aの対比
引用発明の構成aにおける「映像の復号化装置が行う映像の復号化方法」の「映像」は、補正後発明の構成Aの「ビデオ」に相当する。
したがって、構成aにおける「映像の復号化装置が行う映像の復号化方法」は、構成Aの「ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法」に相当する。

(4-2)補正後発明の構成Bと引用発明の構成bの対比
引用発明の構成bにおける「受信したビット・ストリーム」は、補正後発明の構成Bの「ビットストリーム」に相当する。
構成bにおける「符号化側で既定された最大サイズの符号化単位である最大符号化単位に係わる情報」は、最大符号化単位のサイズの情報であるから、構成Bの「最大符号化単位のサイズについての情報」に相当する。
構成bにおける「深さ別縮小情報」は、構成dのように、「最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割」する際に用いられる情報であり、構成Bの「分割情報」は、構成Dのように、「少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割」する際に用いられる情報であり、共に、分割する際に用いられる情報であるから、構成bの「深さ別縮小情報」は、構成Bの「分割情報」に相当する。
構成bは、ビット・ストリームをパージングして、ヘッダから、情報を抽出するものであり、ヘッダは、ビット・ストリーム内に含まれているものであるから、構成Bのように、ビット・ストリームから情報を獲得するものといえる。

したがって、構成bは構成Bに相当する。

(4-3)補正後発明の構成Cと引用発明の構成cの対比
引用発明の構成cの「最大符号化単位」は、構成bにおいて抽出された「最大符号化単位に係わる情報」から得られるものであるから、構成cの「最大符号化単位に基づいて、現在ピクチャを最大符号化単位で分割する」ことは、『最大符号化単位に係わる情報を用いて、現在ピクチャを最大符号化単位で分割する』ことであるといえる。
そして、上記(4-2)の検討より、構成cの「最大符号化単位に係わる情報」は、構成Cの「最大符号化単位のサイズについての情報」に相当する。

したがって、構成cは構成Cに相当する。

(4-4)補正後発明の構成Dと引用発明の構成dの対比
引用発明の構成dの「深さ別縮小情報」は、「現在深さの符号化単位が、上位深さの符号化単位に縮小されるか否かを示す」情報であり、「最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割し、符号化単位が階層的に分割されて上位深さの符号化単位に縮小される」情報である。
すなわち、「深さ別縮小情報」は、最大符号化単位を階層的に分割し、より小さな符号化単位に縮小する情報であるといえる。
ここで、最大符号化単位を階層的に分割する際の最大符号化単位は、上記(4-3)で検討したピクチャを複数の最大符号化単位で分割したうちの一つの最大符号化単位であるから、引用発明の構成dは、『最大符号化単位のうち一つの最大符号化単位を深さ別縮小情報に基づいて符号化単位で階層的に分割する』といえる。
そして、上記(4-2)で検討したように、構成dの「深さ別縮小情報」は、構成Dの「分割情報」に相当する。

したがって、構成dは構成Dに相当する。

(4-5)補正後発明の構成Eと引用発明の構成eの対比
引用発明の構成eの「分割タイプ情報」は、補正後発明の構成Eの「パーティションタイプ情報」に相当する。
そして、構成eは、「符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、符号化単位ごとの予測単位の分割タイプを2Nx2N,2NxN,Nx2N及びNxNのうちいずれか一つ」であり、2Nx2N,2NxN,Nx2N及びNxNは、いずれも対称的分割タイプを示すものであるといえ、構成Eの「対称的パーティションタイプ」に相当する。

そうすると、構成eと構成Eは、「対称的パーティションタイプを示すパーティションタイプ情報を用いて前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する」点で共通する。

しかし、予測単位を決定する際のパーティションタイプ情報に関して、構成eは、対称的な分割タイプのみであるのに対し、構成Eは、「対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つ」である点で、相違する。

(4-6)補正後発明の構成Fと引用発明の構成fの対比
引用発明の構成fの「変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位サイズ情報に基づいて、符号化単位ごとに、それぞれの変換単位を決定する段階」は、補正後発明の構成Fの「変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位のサイズ情報を利用して前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階」に相当する。

(4-7)補正後発明の構成Gと引用発明の構成gの対比
引用発明の構成gの「符号化単位ごとに復号化する」ことは、補正後発明の構成Gの「前記符号化単位を復元する」ことに相当するので、構成gは、構成Gに相当する。

(4-8)補正後発明の構成H1?H3と引用発明の構成hの対比
引用発明の構成hの「デブロッキング部が、予測単位及び変換単位に基いて、映像復号化過程を処理する」ことは、デブロッキングフィルタリングを行うことであり、デブロッキングフィルタリングはブロック境界近傍の各ピクセルに対して行うものであるといえるから、補正後発明の構成H1?H3とは、「デブロッキング・フィルタリング方式によって前記デブロッキング・フィルタリングされるピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行」うという点で共通する。

しかし、構成hは、構成H1?H3の
「前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階」、
「前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階」、
「前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階」
を含むことに限定されていない点で相違する。

(4-9)補正後発明の構成Iと引用発明の構成iの対比
上記(4-2)で検討したように、引用発明の構成iの「深さ別縮小情報」は、補正後発明の構成Iの「分割情報」に相当する。
構成iの「上位深さの符号化単位に縮小されるように定義」「1段階さらに縮小されねばならない場合」とは、符号化単位を更に縮小することであるから、構成Iの「分割されることを示す時」に相当する。
構成iの「縮小された4個の上位深さの符号化単位ごとに、独立して符号化が行われ」とは、例えば、2N×2Nの符号化単位を4個のN×Nの符号化単位に縮小した場合のそれぞれのN×Nの符号化単位について、更にN/2×N/2の符号化単位に縮小するか否かは、各N×Nの符号化単位に対して、周りのN×Nの符号化単位を縮小するか否かということとは独立してより縮小した符号化が行われることであるから、構成Iの「現在深度の符号化単位は周辺符号化単位と独立して下位深度の符号化単位で分割され」に相当する。

したがって、構成iは、構成Iに相当する。

(4-10)補正後発明の構成Jと引用発明の構成jの対比
上記(4-2)で検討したように、引用発明の構成jの「深さ別縮小情報」は、補正後発明の構成Jの「分割情報」に相当する。
構成jの「それ以上縮小されない深さ」は、それ以上分割されないことといえるので、構成Jの「分割されないことを示す時」に相当する。
構成jの「符号化単位ごとに、それぞれの予測単位を決定し、予測を行う」ことは、予測単位は、それ以上縮小されない深さとなっている符号化単位ごとに、得られているといえ、構成Jの「前記少なくとも一つの予測単位は前記現在深度の前記符号化単位から獲得され」に相当する。

したがって、構成jは、構成Jに相当する。

(4-11)補正後発明の構成Kについて
上記(4-8)で検討したように、引用発明は、境界についての限定がなく、補正後発明の構成Kのように、「前記境界は、所定サイズ以上の前記予測単位の境界及び前記所定サイズ以上の前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである」ことについて限定されていない。

(5)一致点、相違点
以上をまとめると、補正後発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]

「ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、
ビットストリームから最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報を獲得する段階と、
前記最大符号化単位のサイズについての情報を用いてピクチャを複数の最大符号化単位で分割する段階と、
前記最大符号化単位のうち一つの最大符号化単位を前記分割情報に基づいて少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割する段階と、
対称的パーティションタイプを示すパーティションタイプ情報を用いて前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する段階と、
変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位のサイズ情報を利用して前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階と、
前記変換単位を用いて逆変換を行い、前記予測単位を用いて予測を行って前記符号化単位を復元する段階と、
デブロッキング・フィルタリング方式によってデブロッキング・フィルタリングされるピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行う段階と、
を含み、
前記分割情報が分割されることを示す時、現在深度の符号化単位は周辺符号化単位と独立して下位深度の符号化単位で分割され、
前記分割情報が分割されないことを示す時、前記少なくとも一つの予測単位は前記現在深度の前記符号化単位から獲得される、
ことを特徴とする
ビデオ復号化方法。」

[相違点]
相違点1
予測単位を決定する際のパーティションタイプ情報に関して、補正後発明は、「対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つを示す」のに対し、引用発明は、「符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、」「2Nx2N,2NxN,Nx2N及びNxNのうちいずれか一つ」であり、「対称的パーティションタイプ」のみである点。

相違点2
デブロッキング・フィルタリングを行う段階に関して、補正後発明は、
「前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階」、
「前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階」、及び、
「前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階」
を含む構成であるのに対し、引用発明は、そのような構成に限定されるものではない点。

相違点3
引用発明が「境界」についての限定がないことに起因して、さらに、補正後発明は、「前記境界は、所定サイズ以上の前記予測単位の境界及び前記所定サイズ以上の前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである」のに対し、引用発明は、そのような構成に限定されるものではない点。

(6)相違点についての検討
(6-1)相違点1について
上記「(3-2)引用文献13の記載事項」における検討より、引用文献13記載の技術は、予測に際してのパーティションタイプ情報に関して、対称的パーティションタイプだけでなく、非対称的パーティションタイプも含むことを可能とするものといえる。

そうすると、予測に際してのパーティションタイプ情報に関して、引用発明のように「符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、」「2Nx2N,2NxN,Nx2N及びNxNのうちいずれか一つ」、すなわち、「対称的パーティションタイプ」のみであるような構成を、引用文献13記載の技術のように、「非対称的パーティションタイプ」も含むようにし、補正後発明のように、「対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つを示す」ようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

よって、相違点1については、格別のものではない。

(6-2)相違点2について
ア 上記「(3-3)引用文献7の記載事項」の記載のように、DCT変換を行った場合に、ブロック境界にノイズが出現するため、そのようなブロックノイズを除去するために、デブロッキングフィルタを用いること、上記「(3-4)引用文献9の記載事項」の記載のように、符号化の処理は、ブロック単位に行い、画面内予測ブロックや動き補償予測ブロックに対して、ブロック境界を目立たなくするためにデブロッキングフィルタを用いることは、いずれも復号化方法における周知技術である。
そして、これらのブロック境界は、変換単位の境界、予測単位の境界であり、変換単位や予測単位は、符号化単位と等しいか更に分割した単位であるから、変換単位の境界、予測単位の境界は、符号化単位に含まれた境界であるといえる。

すなわち、符号化単位に含まれた境界である予測単位の境界や変換単位の境界にデブロッキングフィルタを施すことは、周知技術であるといえる。

イ 上記「(3-5)引用文献10の記載事項」のウの記載のように、デブロッキングフィルタの境界強度は、イントラ・マクロブロックに属するかの情報、動きベクトル値についての情報、参照ピクチャに関する情報を考慮して決定されることは、復号化方法における周知技術である。
上記「(3-6)引用文献11の記載事項」のア、イの記載のように、デブロッキングフィルタの境界強度は、非ゼロの変換係数を含むかどうかの情報、イントラマクロブロックであるかの情報、動きベクトルの値についての情報を考慮して決定されることは、復号化方法における周知技術である。

すなわち、非ゼロの変換係数を含むかどうかの情報、イントラマクロブロックであるかどうかの情報、動きベクトルの値についての情報及び参照ピクチャに関する情報のうち少なくとも一つに基づいて境界の境界強度を決定することは、周知技術であるといえる。

ウ 上記「(3-5)引用文献10の記載事項」のエの記載のように、デブロッキングフィルタにおいて、
境界強度Bsが4未満の場合
入力をp_(1)、p_(0)、q_(0)、q_(1)として4タップのFIRフィルタにより、p’_(0)とq’_(0)が生成され、
p_(2)、p_(0)と閾値βの関係により、入力をp_(2)、p_(1)、p_(0)、q_(1)として4タップのFIRフィルタにより、p’_(1)が生成され、
q_(2)、q_(0)と閾値βの関係により、入力をq_(2)、q_(1)、q_(0)、p_(1)として4タップのFIRフィルタにより、q’_(1)が生成され、
境界強度Bsが4の場合
p_(2)、p_(0)と閾値βの関係、p_(0)、q_(0)と閾値αの関係により、
入力画素値がp_(2)、p_(1)、p_(0)、q_(0)、q_(1)である5タップのFIRフィルタにより、p’_(0)が生成、
入力画素値がp_(2)、p_(1)、p_(0)、q_(1)である4タップのFIRフィルタにより、p’_(1)が生成、もしくは、
入力画素値がp_(1)、p_(0)、q_(1)である3タップのFIRフィルタにより、p’_(0)が生成され、
q_(2)、q_(0)と閾値βの関係、p_(0)、q_(0)と閾値αの関係により、
入力画素値がq_(2)、q_(1)、q_(0)、p_(0)、p_(1)である5タップのFIRフィルタにより、q’_(0)が生成、
入力画素値がq_(2)、q_(1)、q_(0)、p_(1)である4タップのFIRフィルタにより、q’_(1)が生成、もしくは、
入力画素値がq_(1)、q_(0)、p_(1)である3タップのFIRフィルタにより、q’_(0)が生成される
ことは、周知技術である。

ここで、p_(0)、q_(0)等の入力画素値は、上記「(3-5)引用文献10の記載事項」のイの記載から、境界に隣接した画素の画素値といえる。
また、5タップ、4タップ、3タップのFIRフィルタにおける5、4、3は、フィルタタップの個数である。
さらに、p’_(1)、p’_(0)、q’_(1)、q’_(0)は、上記「(3-5)引用文献10の記載事項」のイの記載から、境界から数えて2つめもしくは1つめの画素位置の画素のことであるから、境界強度Bsと入力画素値により、p’_(1)、p’_(0)、q’_(1)、q’_(0)のいずれかが生成されることは、生成に際して、境界強度Bsと入力画素値により、デブロッキングフィルタ処理される画素の位置が決定されるものといえる。

そうすると、境界強度(Bs)と境界に隣接した画素値(p_(0)、q_(0)等)に基づいて、FIRフィルタのフィルタタップの個数(5タップ、4タップ、3タップ)及びデブロッキングフィルタ処理される画素の位置が決定されるといえ、これらを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定するものといえる。

また、デブロッキングフィルタ処理されたことにより、各画素は、p’_(1)、p’_(0)、q’_(1)、q’_(0)となり、これらは、デブロッキングフィルタ処理された画素であり、符号化単位は、これらのデブロッキングフィルタ処理された画素を含む符号化単位となるものであるといえる。

すなわち、境界強度及び境界に隣接した画素値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキングフィルタ処理される画素の位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定すること、デブロッキングフィルタ処理された画素を含む符号化単位を生成することは、周知技術であるといえる。

エ そうすると、上記ア?ウより、『符号化単位に含まれる境界である予測単位の境界や変換単位の境界にデブロッキングフィルタを施す際に、非ゼロの変換係数を含むかどうかの情報、イントラマクロブロックであるかの情報、動きベクトルの値についての情報及び参照ピクチャに関する情報のうち少なくとも一つに基づいて境界の境界強度を決定すること、境界強度及び境界に隣接した画素値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキングフィルタ処理される画素の位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定すること、デブロッキングフィルタ処理された画素を含む符号化単位を生成すること』は、周知技術であるといえる。
したがって、引用発明におけるデブロッキング部において、『符号化単位に含まれる境界である予測単位の境界や変換単位の境界にデブロッキングフィルタを施すこと、非ゼロの変換係数を含むか、イントラマクロブロックであるかの情報、動きベクトルの値及び参照ピクチャに関する情報のうち少なくとも一つに基づいて境界の境界強度を決定すること、境界強度及び境界に隣接した画素値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキングフィルタ処理される画素の位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定すること、デブロッキングフィルタ処理された画素を含む符号化単位を生成すること』を行い、補正後発明の構成H1?H3のように構成することは、容易に想到し得るものである。

よって、相違点2については、格別のものではない。

(6-3)相違点3について
上記「(3-7)引用文献5の記載事項」の記載は、デブロッキングフィルタ処理は、原則として全ての変換単位や予測単位のエッジに適用されるが、例外として、
・ピクチャ境界のエッジ
・「disable_deblocking_filter_idc」により行わないとされたエッジ
・8サンプルより小さいエッジ
には適用されないことが示されているといえる。

すなわち、8サンプルより小さいエッジを除いた全ての変換単位や予測単位のエッジに適用されるので、8サンプル以上のエッジに適用されるといえる。

上記「(6-2)相違点2について」のアで検討したように、境界にデブロッキングフィルタを施すことは、周知技術であるから、引用発明のデブロッキング部においても、境界にデブロッキングフィルタを施すようにすることは当然に行う構成である。

したがって、引用発明のデブロッキング部において、境界にデブロッキングフィルタを施す際に、8サンプル以上の変換単位や予測単位の境界のみが、デブロッキングフィルタ処理の対象となる境界とするようにし、補正後発明の構成Kのように構成することは、容易に想到し得るものである。

よって、相違点3については、格別のものではない。

(6-4)相違点についてのまとめ
以上のように、各相違点については、格別のものではなく、また、補正後発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

(7)まとめ
したがって、補正後発明は、引用発明及び引用文献5、7、9?11、13に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.まとめ
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年8月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成27年6月16日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、A?Kについては、説明のために当審にて付したものである。ここで、補正後発明と同一の構成については、同じアルファベットを付し、類似した構成については、「’」を付した。
(以下、「構成A」等という。)

「A ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、
L 前記ビデオ復号化装置が、
B’ 最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報についてのデータを含むビットストリームを受信する段階と、
C 前記最大符号化単位のサイズについての情報を用いてピクチャを複数の最大符号化単位で分割する段階と、
D 前記最大符号化単位のうち一つの最大符号化単位を前記分割情報に基づいて少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割する段階と、
E 対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つを示すパーティションタイプ情報を用いて前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する段階と、
F 変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位のサイズ情報を利用して前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階と、
G 前記変換単位を用いて逆変換を行い、前記予測単位を用いて予測を行って前記符号化単位を復元する段階と、
H1 前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階と、
H2’前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値のうち少なくとも一つに基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階と、
H3 前記デブロッキング・フィルタリング方式によって前記隣接したピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い、前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階と、
を含み、
I 前記分割情報が分割されることを示す時、現在深度の符号化単位は周辺符号化単位と独立して下位深度の符号化単位で分割され、
J 前記分割情報が分割されないことを示す時、前記少なくとも一つの予測単位は前記現在深度の前記符号化単位から獲得される、
ことを特徴とする
A ビデオ復号化方法。」

2.優先権主張について

前記第1のとおり、本願は、優先権主張を伴うものである。
本願発明は、上記第2 3.「(2)優先権主張について」で検討した補正後発明の構成要件であって、米国仮出願61/323449に記載されていない「前記境界は、所定サイズ以上の前記予測単位の境界及び前記所定サイズ以上の前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである、」という構成要件を含むものでなく、本願発明の構成要件は全て米国仮出願61/323449に記載されているものである。
したがって、本願発明に対しては、優先権主張の効果が及ぶものである。

以上のとおりであるから、以下で、本願発明を検討するにあたっては、優先日である2010年4月13日を判断の基準日とする。

3.引用文献1、13、7、9?11の記載事項及び引用発明について

上記第2 3.(3)「(3-1)引用文献1の記載事項及び引用発明」、「(3-2)引用文献13の記載事項」、「(3-3)引用文献7の記載事項」、「(3-4)引用文献9の記載事項」、「(3-5)引用文献10の記載事項」、「(3-6)引用文献11の記載事項」の記載を援用する。

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の構成A、C?G、I、Jについて
上記第2 3.(4)「(4-1)補正後発明の構成Aと引用発明の構成aの対比」、「(4-3)補正後発明の構成Cと引用発明の構成cの対比、「(4-4)補正後発明の構成Dと引用発明の構成dの対比」、「(4-5)補正後発明の構成Eと引用発明の構成eの対比」、「(4-6)補正後発明の構成Fと引用発明の構成fの対比」、「(4-7)補正後発明の構成Gと引用発明の構成gの対比」、「(4-9)補正後発明の構成Iと引用発明の構成iの対比」、「(4-10)補正後発明の構成Jと引用発明の構成jの対比」の記載を援用する。

(2)本願発明の構成B’と引用発明の構成bの対比
引用発明の構成bにおける「受信したビット・ストリーム」は、補正後発明の構成B’の「ビットストリーム」に相当する。
構成bにおける「符号化側で既定された最大サイズの符号化単位である最大符号化単位に係わる情報」は、最大符号化単位のサイズの情報であるから、構成B’の「最大符号化単位のサイズについての情報」に相当する。
構成bにおける「深さ別縮小情報」は、構成dのように、「最大符号化単位ごとに、最大符号化単位より小さいか、あるいはそれと同じサイズの符号化単位に映像を分割」する際に、用いられる情報であり、構成B’の「分割情報」は、構成Dのように、「少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割」する際に、用いられる情報であり、共に、分割する際に用いられる情報であるから、構成bの「深さ別縮小情報」は、構成B’の「分割情報」に相当する。
構成bは、受信したビット・ストリームをパージングして、ヘッダから、情報を抽出するものであり、各情報は、ビット・ストリーム内に含まれているものであるから、構成B’のように、各情報についてのデータを含むビット・ストリームを受信するものといえる。

したがって、構成bは構成B’に相当する。

(3)本願発明の構成H1、H2’、H3と引用発明の構成hの対比
引用発明の構成hの「デブロッキング部が、予測単位及び変換単位に基いて、映像復号化過程を処理する」ことは、デブロッキングフィルタリングを行うことであり、デブロッキングフィルタリングは各ピクセルに対して行うものであるといえるから、補正後発明の構成H1、H2’、H3とは、「デブロッキング・フィルタリング方式によってデブロッキング・フィルタリングを行」うという点で共通する。

しかし、構成hは、構成H1、H2’、H3の「前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階」、
「前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値のうち少なくとも一つに基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階」、
「前記デブロッキング・フィルタリング方式によって前記隣接したピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い、前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階」
を含むことに限定されていない点で相違する。

(4)本願発明の構成Lについて
本願発明は、「前記ビデオ復号化装置が、・・・ビットストリームを受信する段階と、・・・ピクチャを複数の最大符号化単位で分割する段階と、・・・少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割する段階と、・・・前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する段階と、・・・前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階と、・・・前記符号化単位を復元する段階と、・・・前記境界の境界強度を決定する段階と、・・・デブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階と、・・・フィルタリングされた符号化単位を生成する段階と、を含」む構成であり、ビデオ復号化装置が受信、分割、決定、復元、生成する段階を含むものである。
引用発明は、構成aのように、「映像の復号化方法」は、復号化装置が行うものであり、構成b以降の段階は、復号化装置が行うものであるといえるから、引用発明は、本願発明の構成Lに相当する構成を含むものである。

5.一致点、相違点
以上をまとめると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]

「ビデオ復号化装置が遂行するビデオ復号化方法において、
前記ビデオ復号化装置が、
最大符号化単位のサイズについての情報及び分割情報についてのデータを含むビットストリームを受信する段階と、
前記最大符号化単位のサイズについての情報を用いてピクチャを複数の最大符号化単位で分割する段階と、
前記最大符号化単位のうち一つの最大符号化単位を前記分割情報に基づいて少なくとも一つの符号化単位で階層的に分割する段階と、
対称的パーティションタイプを示すパーティションタイプ情報を用いて前記符号化単位で少なくとも一つの予測単位を決定する段階と、
変換単位の垂直サイズ及び水平サイズを示す変換単位のサイズ情報を利用して前記符号化単位で少なくとも一つの変換単位を決定する段階と、
前記変換単位を用いて逆変換を行い、前記予測単位を用いて予測を行って前記符号化単位を復元する段階と、
デブロッキング・フィルタリング方式によってデブロッキング・フィルタリングを行う段階と、
を含み、
前記分割情報が分割されることを示す時、現在深度の符号化単位は周辺符号化単位と独立して下位深度の符号化単位で分割され、
前記分割情報が分割されないことを示す時、前記少なくとも一つの予測単位は前記現在深度の前記符号化単位から獲得される、
ことを特徴とする
ビデオ復号化方法。」

[相違点]
相違点1
予測単位を決定する際のパーティションタイプ情報に関して、本願発明は、「対称的パーティションタイプ及び非対称的パーティションタイプのうち一つを示す」のに対し、引用発明は、「符号化単位のサイズが2Nx2N(ただし、Nは正の整数)である場合、」「2Nx2N,2NxN,Nx2N及びNxNのうちいずれか一つ」であり、「対称的パーティションタイプ」のみである点。

相違点2
本願発明は、「前記復元された符号化単位に含まれた境界が前記予測単位の境界及び前記変換単位の境界のうち少なくとも一つである時、0でない変換係数、予測モード、動きベクトル及び参照インデックスのうち少なくとも一つに基づいて前記境界の境界強度を決定する段階と、
前記境界強度及び境界に隣接したピクセルのサンプル値のうち少なくとも一つに基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキング・フィルタリングされるピクセルの位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定する段階と、
前記デブロッキング・フィルタリング方式によって前記隣接したピクセルに対してデブロッキング・フィルタリングを行い、前記デブロッキング・フィルタリングされたピクセルを含むフィルタリングされた符号化単位を生成する段階」を含む構成であるのに対し、引用発明は、そのような構成に限定されるものではない点。

6.相違点についての検討
(1)相違点1について
上記第2 3.(6)「(6-1)相違点1について」の記載を援用する。

(2)相違点2について
上記第2 3.(6)「(6-2)相違点2について」のア、イ、ウの記載を援用する。

さらに、引用文献10においては、デブロッキングフィルタ処理されたことにより、各画素は、p_(1)、p_(0)、q_(1)、q_(0)からp’_(1)、p’_(0)、q’_(1)、q’_(0)になり、これは、境界に隣接したピクセルに対してデブロッキングフィルタ処理を行うものといえる。

そうすると、『符号化単位に含まれる境界である予測単位の境界や変換単位の境界にデブロッキングフィルタを施す際に、非ゼロの変換係数を含むか、イントラマクロブロックであるかの情報、動きベクトルの値及び参照ピクチャに関する情報のうち少なくとも一つに基づいて境界の境界強度を決定すること、境界強度及び境界に隣接した画素値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキングフィルタ処理される画素の位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定すること、隣接した画素に対してデブロッキングフィルタ処理を行い、デブロッキングフィルタ処理された画素を含む符号化単位を生成すること』は、周知技術であるといえる。
したがって、引用発明におけるデブロッキング部において、『符号化単位に含まれる境界である予測単位の境界や変換単位の境界にデブロッキングフィルタを施すこと、非ゼロの変換係数を含むか、イントラマクロブロックであるかの情報、動きベクトルの値及び参照ピクチャに関する情報のうち少なくとも一つに基づいて境界の境界強度を決定すること、境界強度及び境界に隣接した画素値に基づいて、フィルタタップの個数及びデブロッキングフィルタ処理される画素の位置のうち少なくとも一つを含むデブロッキング・フィルタリング方式を決定すること、隣接した画素に対してデブロッキングフィルタ処理を行い、デブロッキングフィルタ処理された画素を含む符号化単位を生成すること』を行い、本願発明の構成H1、H2’、H3のように構成することは、容易に想到し得るものである。

よって、相違点2については、格別のものではない。

(3)相違点についてのまとめ
以上のように、各相違点については、格別のものではなく、また、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

7.まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献7、9?11、13に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2?5に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-01 
結審通知日 2017-12-05 
審決日 2017-12-18 
出願番号 特願2013-504826(P2013-504826)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 篠原 功一
渡辺 努
発明の名称 ツリー構造符号化単位に基づいたデブロッキング・フィルタリングを行うビデオ符号化方法及びその装置、並びに復号化方法及びその装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ