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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C12P 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C12P 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C12P |
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管理番号 | 1340572 |
審判番号 | 不服2016-16867 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-10 |
確定日 | 2018-06-05 |
事件の表示 | 特願2015-214835「ボツリヌス神経毒素を得るためのプロセスおよびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年3月3日出願公開、特開2016-28601、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、2010(平成22年)年7月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年7月13日、米国)を国際出願日とする特願2012-520707号の一部を平成27年10月30日に新たな特許出願としたものであって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。 平成28年 2月 5日付け 拒絶理由通知書 平成28年 5月13日 意見書 平成28年 7月 6日付け 拒絶査定 平成28年11月10日 審判請求書・手続補正書 平成29年 1月26日付け 前置報告書 平成29年 4月28日 上申書(前置報告書に対する反論) 平成29年12月18日付け 当審の拒絶理由通知書 平成30年 4月13日 意見書・手続補正書 第2 本願発明 本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成30年4月13付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ボツリヌス神経毒素を得るための動物性成分を含まない(APF)プロセスであって、以下のステップ: (a)APF発酵培地を提供するステップ; (b)前記発酵培地中でクロストリジウム・ボツリナム菌を発酵させるステップであって、クロストリジウム・ボツリナム菌はボツリヌス神経毒素を産生する、ステップ; (c)ボツリヌス神経毒素を含有する前記発酵培地を陰イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる第1の接触工程を行うステップ; (d)前記陰イオン交換媒体から、捕捉されたボツリヌス神経毒素を溶出して第1の溶離液を得るステップ; (e)前記第1の溶離液を陽イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる第2の接触工程を行い、前記陽イオン交換クロマトグラフィー媒体から、捕捉されたボツリヌス神経毒素を溶出して第2の溶離液を得るステップ; (f)前記第2の溶離液を疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;および (g)前記疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体から、捕捉されたボツリヌス神経毒素を溶出して第3の溶離液を得るステップ を含み、それによってボツリヌス神経毒素を得、ボツリヌス神経毒素がA型神経毒素である、プロセス。」 なお、本願発明2?4は、本願発明1を減縮した発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2008-531046号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のため当審で付した。 (引1-1)「【請求項1】 (a)ボツリヌス毒素の発酵培養物のサンプルを得て; (b)第一のカラムによって、ボツリヌス毒素の捕捉を可能にするために第一のクロマトカラムの樹脂を該培養物サンプルと接触させて; (c)第一のカラムからボツリヌス毒素を溶離して; (d)第二のカラムクロマトのカラム樹脂に第一のクロマトカラムからの溶離液を負荷し、それにより精製したボツリヌス毒素を得る 工程を含む、クロストリジウム毒素を精製するための方法。 【請求項2】 第一のクロマトカラムおよび第二のクロマトカラムが異なったカラムであって、2個の異なったカラムは、異なった精製機構によって、ボツリヌス毒素を精製するように作用する、請求項1の方法。 【請求項3】 第一のクロマトカラムが疎水性相互作用カラムである、請求項1の方法。 【請求項4】 第二のクロマトカラムがイオン交換カラムである、請求項1の方法。 ・・・ 【請求項8】 該方法が実質的に動物性蛋白質不含(「APF」)法である、請求項1の方法。 ・・・ 【請求項17】 ボツリヌス毒素を精製するためのAPF方法であって、 (a)実質的にAPF方法から生じるボツリヌス毒素の発酵培養物のサンプルを得て; (b)第一のカラムによってボツリヌス毒素の捕捉を可能にするために疎水性相互作用クロマトカラムの樹脂を該培養サンプルと接触させて; (c)疎水性相互作用クロマトカラムから不純物を洗い流し; (d)疎水性相互作用カラムからボツリヌス毒素を溶離し; (e)イオン交換カラムクロマトのカラム樹脂に疎水性相互作用クロマトカラムからの溶離液を負荷し; (f)イオン交換クロマトカラムから不純物を洗い流し; (g)ボツリヌス毒素をイオン交換カラムから溶離し、それによって実質的にAPF精製プロセスであるボツリヌス毒素を精製するための方法を介して、精製したボツリヌス毒素を得る 工程を含むAPF方法。」(特許請求の範囲) (引1-2)「【0064】 (説明) 本発明は、クロストリジウム毒素が動物由来産物不含(APF)システムおよび方法の使用によって精製することができるという発見に基づいている。本発明は、クロストリジウム・ボツリヌス神経毒を精製するための動物由来産物不含システムおよび方法を含む。 該クロストリジウム・ボツリヌス神経毒は、300kD、500kDまたは900kD(およその分子量)のようなボツリヌス毒素A型複合体またはその混合物であり得る。」 (引1-3)「【0160】 実施例8および9の結果に基づき、表5に示されるとおり下記の4つのカラムクロマトグラフィー精製方法を開発した: 1.精製した培養物の初期精製のためのQセファロースFFカラムの使用。この工程において、不純物はカラムに結合し、毒素はカラムを貫流し; 2.次いで、QセファロースFFカラム工程1からの溶離液は、ブチルセファロースFFカラムを通過した。毒素はカラムに結合し、適当な緩衝液で溶出し; 3.次いで、ブチルセファロースFFからの溶離液は、ヒドロキシアパタイトI型カラムを通過した。不純物はカラムに結合し、毒素はカラムを貫流し; 4.次いで、ヒドロキシアパタイトI型からの溶離液は、SPセファロースカラムを通過した。毒素はカラムに結合し、適当な緩衝液で溶出した。 【0161】 この4つの毒素のカラム精製方法は、 APF精製培養物→Q(フロースルー)→ブチル(結合)→HA(フロースルー)→SP(結合)→精製毒素複合体 のようにまとめられる。」 (引1-4)「【0164】 実施例11 ボツリヌス毒素複合体を精製するための更なる多段階カラムAPFクロマトグラフ方法 実施例9および10で説明された同一の手順を用いて、さらにカラムの組合せを評価した。下記の4つのさらなるカラムの組合せのそれぞれは、SDS-PAGEによって決定されるとおり、高度に精製したボツリヌス毒素複合体を得るためのAPF方法を提供することがわかった。 1.Q(フロースルー)→ブチル→SP 2.ブチル→QまたはHA(フロースルー)→SP 3.ブチル→SP→QまたはHA(フロースルー) 4.ブチル→SP」 2 引用文献1に記載された発明 (引1-1)の請求項8及び17並びに(引1-2)の記載から、引用文献1における精製の目的物は、動物性成分を含まない(APF)ボツリヌス神経毒素A型であることがわかる。 また、引用文献1の(引1-3)および(引1-4)に記載された「QセファロースFFカラム(Q)」、「ブチルセファロースFFカラム(ブチル)」、「ヒドロキシアパタイトI型カラム(HA)」、「SPセファロースカラム(SP)」は、それぞれ一般に、「陰イオン交換クロマトグラフィ-」、「疎水性相互作用クロマトグラフィ-」、「吸着クロマトグラフィ-」、「陽イオン交換クロマトグラフィ-」に分類される。 したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「陰イオン交換クロマトグラフィ-、疎水性相互作用クロマトグラフィ-、吸着クロマトグラフィ-、陽イオン交換クロマトグラフィ-のいくつかを組み合わせて、動物性成分を含まない(APF)ボツリヌス神経毒素A型を精製する方法。」 3 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(Methods Enzymol., Vol.165, pp.76-85 (1988))には、次の事項が記載されている。なお、訳文は当審で作成した。 (引2-1)「Tse等は、A型毒素の精製のための方法を公表している。その方法は、pH3.5に調整して増殖培地から毒素を沈殿させ、その後遠心分離することから始める。沈殿物は、0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0で抽出し、抽出物は、リボヌクレアーゼ、100μg/ml、34℃、3時間で不活化される。次に、硫酸アンモニウムを60%飽和まで加え、沈殿物を遠心分離で収集する。0.05Mクエン酸ナトリウム、pH5.5に再溶解し、DEAE-セファデックスにバッチで吸収する。遠心分離で樹脂を取り除いた後に、上清をDEAE-セファセルのカラムに装填して、クエン酸バッファーで平衡にする。毒素は、通過画分に生ずる。それは、硫酸アンモニウムで沈殿させて、0.05Mリン酸ナトリウム、pH6.8に再溶解される。」(80頁12?23行) (引2-2)「Pharmacia Fine Chemicals (Piscataway, NJ)から得られるハイパフォーマンス・イオン交換システムと一連のカラムにより、純粋な神経毒素は5つの工程の後に得られる。:(1)細菌からの神経毒素の抽出;(2)プロタミン硫酸処理;(3)pH5.7での陽イオン交換クロマトグラフィ-;(4)pH7.6での陰イオン交換クロマトグラフィ-;(5)pH5.7での陽イオン交換クロマトグラフィ-。これらの工程は、以下に詳細に記載される。 ・・・ 陽イオン交換クロマトグラフィ-. 先の工程の上清はHPLCシステムのコハク酸で平衡化されたMono-Sカラムに適用される。神経毒素は樹脂に結合し、NaCl濃度増加の線形グラジエント(10mM/ml)で溶出される。 ・・・ 陰イオン交換クロマトグラフィ-. Mono-Sカラムから神経毒素画分がTrisバッファーで平衡化されたMono-Q(QAE)カラムに適用された。神経毒素は、カラムに結合し、溶出される。 ・・・ 2回目の陽イオン交換クロマトグラフィ-. 神経毒素の精製は、再びコハク酸バッファーで平衡化されたMono-Sカラムへの二度目の適用により完成される。」(81頁21行?82頁25行) ここで、「DEAE-セファデックス」と「Mono-Q(QAE)」カラムは、いずれも「陰イオン交換クロマトグラフィ-」に分類され、「Mono-Sカラム」は、「陽イオン交換クロマトグラフィ-」に分類される。 したがって、引用文献2には、 (1)(引2-1)に記載された、陰イオン交換クロマトグラフィ-の通過区分を用いて、A型神経毒素を精製する方法 および (2)(引2-2)に記載された、陽イオン交換クロマトグラフィ-、陰イオン交換クロマトグラフィ-、陽イオン交換クロマトグラフィ-の順番で捕捉して、A型神経毒素を精製する方法、 という2つの技術的事項が記載されている。 4 引用文献3?6 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平11-335395号公報)、引用文献4(特表2002-542761号公報)、引用文献5(特表2008-525381号公報)、引用文献6(特表2005-508892号公報)は、それぞれ、アクチビン、アルブミン、凝固因子、グロブリンの精製に係る発明であって、ボツリヌス神経毒素に関するものではない。 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点および相違点があるといえる。 (一致点) 「陰イオン交換クロマトグラフィ-、陽イオン交換クロマトグラフィ-、疎水性相互作用クロマトグラフィ-を組み合わせて、動物性成分を含まない(APF)ボツリヌス神経毒素A型を精製する方法。」 (相違点) 本願発明1は、陰イオン交換クロマトグラフィ-、陽イオン交換クロマトグラフィ-、疎水性相互作用クロマトグラフィ-の順番に捕捉と溶出を行うのに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 引用文献1には、「陰イオン交換クロマトグラフィ-」として「QセファロースFFカラム(Q)」が用いられているが、いずれも「Q(フロースルー)」と記載されているように、「陰イオン交換クロマトグラフィ-」に捕捉することなく、溶出画分を用いている点で異なる。 また、引用文献1には、本願発明1のように、陰イオン交換クロマトグラフィ-、陽イオン交換クロマトグラフィ-、疎水性相互作用クロマトグラフィ-の順番に用いることも記載されていない。 引用文献2には、2つの精製方法の1つとして、「陰イオン交換クロマトグラフィ-」にA型神経毒素を捕捉(結合)し溶出することが記載されているものの、疎水性相互作用クロマトグラフィ-には言及がなく、かつ陽イオン交換クロマトグラフィ-、陰イオン交換クロマトグラフィ-、陽イオン交換クロマトグラフィ-の順番に用いることしか記載されておらず、本願発明1にように、陰イオン交換クロマトグラフィ-、陽イオン交換クロマトグラフィ-、疎水性相互作用クロマトグラフィ-の順番に用いることは記載されていない。 したがって、引用文献1において「フロースルー」に用いていた「陰イオン交換クロマトグラフィ-」を引用文献2にように「捕捉」に用いることは、当業者が通常想到し得ないことであり、かつ引用文献2には本願発明1の順番にクロマトグラフィーを用いることも記載がない。 よって、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を組み合わせても、本願発明1を当業者が容易に想到し得るものではない。 また、引用文献3?6には、そもそもボツリヌス神経毒素に関する技術的事項は記載されていないので、引用発明に組み合わせる動機付けもない。 そして、本願発明1は、実施例2に記載されるように、動物性成分を含まない(APF)A型神経毒素の精製方法の「処理時間の短縮」という有利な効果を奏するものである。 2 本願発明2?4について 本願発明2?4は、請求項1を引用するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定および前置審査の概要及び前置審査の判断について 平成29年4月28日に請求人が提出した上申書に記載されるように、 「ボツリヌス神経毒素がA型神経毒素である場合については、本願発明はその効果が引用文献1?6から当業者が予測し得ない格別顕著なものと判断されて進歩性を有することが認められ、このことは、拒絶査定の記載、特に、ボツリヌス神経毒素をA型神経毒素に限定した請求項2が当該拒絶理由による拒絶の対象とされていないことから、明らかである」ことから、審判請求時の「手続補正書によりすべての請求項においてボツリヌス神経毒素をA型神経毒素に限定する補正がなされた」にもかかわらず、担当審査官の変更により、「前置報告書において当該補正後の請求項に係る発明に対し、引用文献1?6に対し進歩性を有さないとの、先の拒絶理由に相当する判断が再び示されている。特に、拒絶査定において格別顕著であると認められたことが明らかな、ボツリヌス神経毒素がA型神経毒素である場合の本願発明の効果について、格別顕著なものではないとの判断が示されている。」 しかしながら、上記「第4」に述べたように、前置報告書に記載された拒絶理由を維持することはできない。 第6 当審の拒絶理由について 1 理由A(特許法第36条第4項第1号および第6項第1号) (1)当審の拒絶理由の概要 引用文献1?3に記載された技術常識に照らせば、請求項1?4に記載された「陰イオン交換クロマトグラフィー媒体」の多くは、「ボツリヌス神経毒素」を「捕捉」することはできず、「ボツリヌス神経毒素」の精製の使用に適さないと判断される。してみれば、「陰イオン交換クロマトグラフィー媒体」の全てを対象とし、緩衝液の成分やpH等の溶媒条件の特定のない請求項1?4に係る発明は、発明の詳細な説明に開示された内容から課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。したがって、請求項1?4に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 そして、同様にして、請求項1?4に記載された「陰イオン交換クロマトグラフィー媒体」に属する多岐にわたるカラム媒体の種類とその溶媒条件の組合せの中から高純度の「ボツリヌス神経毒素」を高効率に精製できる組合せを決定するためには、このような引用文献1?3に記載された技術常識に照らせば、当業者に期待しうる程度を超えた試行錯誤や複雑高度な実験を要するものと判断される。したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1?4に係る発明の全体について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 1.特表2008-531046号公報(原査定の引用文献1) 2.Methods Enzymol.,Vol.165,pp.76-85 (1988)(原査定の引用文献2) 3.米国特許第7452697号明細書(B2)(新たな引用文献) (2)当審の判断 平成30年4月13日意見書において、請求人が主張するように、 「本願明細書には、本願発明の実施例において、ボツリヌス神経毒素を陰イオン交換樹脂であるPOROS50HQに捕捉させたことが記載されている(段落0107-0109)。すなわち、『ボツリヌス神経毒素』が『陰イオン交換クロマトグラフィー媒体』に『捕捉され』ることが記載されている。また、引用文献2には、ボツリヌス神経毒素がMono-Q(QAE)カラムに結合することが記載されている(第82頁第15-17行)。Mono-Q(QAE)は陰イオン交換樹脂であるから、『ボツリヌス神経毒素』が『陰イオン交換クロマトグラフィー媒体』に『捕捉され』ることが理解できる。」(上記「第3」3(2)参照)ことから、 「陰イオン交換クロマトグラフィー媒体」の多くは、「ボツリヌス神経毒素」を「捕捉」することができ、「ボツリヌス神経毒素」の精製に適するので、請求項1?4に係る発明は、発明の詳細な説明に開示された内容から課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとは言えない。 また、発明の詳細な説明および技術常識に基づいて、請求項1?4に係る発明を実施するために「陰イオン交換クロマトグラフィー媒体」の種類を選択し適切な条件で使用することは、当業者には、期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を要するとも言えない。 2 理由B(特許法第36条第6項第2号) (1)当審の拒絶理由の概要 「第2の溶離液」および「第3の溶離液」が「クロマトグラフィー媒体」に捕捉された画分であるのか、通過した画分であるのかが明確でないので、請求項1?4に係る発明は明確でない。 (2)当審の判断 平成30年4月13日付け手続補正書において、「(e)前記第1の溶離液を陽イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる第2の接触工程を行い、前記陽イオン交換クロマトグラフィー媒体から、捕捉されたボツリヌス神経毒素を溶出して第2の溶離液を得るステップ」および「(g)前記疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体から、捕捉されたボツリヌス神経毒素を溶出して第3の溶離液を得るステップ」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?4は、当業者が引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定および当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-05-21 |
出願番号 | 特願2015-214835(P2015-214835) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(C12P)
P 1 8・ 121- WY (C12P) P 1 8・ 537- WY (C12P) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松波 由美子、竹内 祐樹 |
特許庁審判長 |
長井 啓子 |
特許庁審判官 |
田村 明照 小暮 道明 |
発明の名称 | ボツリヌス神経毒素を得るためのプロセスおよびシステム |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 櫻井 陽子 |
代理人 | 松谷 道子 |