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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 A63B |
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管理番号 | 1340668 |
審判番号 | 不服2017-11882 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-08 |
確定日 | 2018-06-14 |
事件の表示 | 特願2015-509944「顔表情採点装置、ダンス採点装置、カラオケ装置、およびゲーム装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 9日国際公開、WO2014/162788、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、2014年2月18日(優先権主張 平成25年4月2日(以下「優先日」という。)、日本)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月16日付けで拒絶理由が通知され、同年11月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年5月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月10日)、これに対し、同年8月8日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成30年3月7日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成30年4月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 採点対象者の顔画像を撮像する顔画像撮像手段と、 前記撮像された顔画像から顔の表情を推定する顔表情推定手段と、 前記採点対象者の顔画像の表情の度合を、前記推定された顔画像の表情に対応する採点基準によって、複数の段階に分けて評価して採点する顔表情採点手段と、 採点された結果を表示する採点結果表示手段と、 を含むことを特徴とする顔表情採点装置。 【請求項2】 さらに、採点対象者に採点基準を表示する採点基準表示手段を含むことを特徴とする請求項1記載の顔表情採点装置。 【請求項3】 さらに、画像表示手段を含み、前記画像表示手段において、前記採点結果及び採点基準が表示されることを特徴とする請求項2記載の顔表情採点装置。 【請求項4】 さらに、前記顔画像から採点対象者の属性を判定する採点対象者属性判定手段を含み、前記顔表情採点手段は、前記判定された属性に応じ、採点基準を調整することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の顔表情採点装置。 【請求項5】 さらに、広告選択手段を含み、前記広告選択手段は、前記採点対象者の属性に応じて広告を選択し、前記採点結果表示手段は、前記選択された広告と共に、前記採点結果を表示することを特徴とする請求項4記載の顔表情採点装置。 【請求項6】 前記顔画像を採点することで表現力を定量評価することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の顔表情採点装置。 【請求項7】 請求項1から6のいずれか一項に記載の顔表情採点装置を含むことを特徴とするダンス採点装置。 【請求項8】 請求項1から6のいずれか一項に記載の顏表情採点装置を含むことを特徴とするカラオケ装置。 【請求項9】 請求項1から6のいずれか一項に記載の顔表情採点装置を含むことを特徴とするゲーム装置。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 原査定は、平成28年9月16日付けの拒絶理由によるものであって、その概要は以下のとおりである。 「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1-3、6、9 ・引用文献等 1、2 ・請求項 1-3、6-8 ・引用文献等 1、3、4 ・請求項 4 ・引用文献等 1、3-6 ・請求項 5 ・引用文献等 1、3-7 ・引用文献等 1.特開2008-264367号公報 2.特開2011-206471号公報 3.特開2000-29483号公報 4.特開2012-78526号公報 5.特開2012-118286号公報 6.国際公開第2012/039467号 7.特開2009-186630号公報」 2.原査定の理由の判断 (1)刊行物 ア.刊行物1 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-264367号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (ア)「【請求項32】 表情筋のトレーニングを支援するためのトレーニング装置であって、 予め用意された複数の課題表情の中から今回の課題となる課題表情を選択する選択手段、 撮像装置よりユーザの顔画像を取得する顔画像取得手段、 前記顔画像取得手段によって取得された顔画像から、少なくとも前記選択手段によって選択された課題表情に関連する顔特徴点の位置を検出する顔特徴点検出手段、 前記複数の課題表情毎に予め設定された評価基準のうち、前記選択手段によって選択された課題表情に対応する評価基準に従って、前記顔特徴点検出手段によって検出された顔特徴点の位置に基づいて前記顔画像取得手段によって取得された顔画像におけるユーザの表情を評価する評価手段、および、 前記評価手段の評価結果を画像又は音声によりユーザに提示する評価結果提示手段を備える、トレーニング装置。」 (イ)「【0222】 また、本実施形態では、ユーザの表情の評価結果を数字で提示しているが、本発明はこれに限らない。例えば、評価結果に応じて、画面に表示されるキャラクターの表情や動きが変化してもよい。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「表情筋のトレーニングを支援するためのトレーニング装置であって、 予め用意された複数の課題表情の中から今回の課題となる課題表情を選択する選択手段、 撮像装置よりユーザの顔画像を取得する顔画像取得手段、 前記顔画像取得手段によって取得された顔画像から、少なくとも前記選択手段によって選択された課題表情に関連する顔特徴点の位置を検出する顔特徴点検出手段、 前記複数の課題表情毎に予め設定された評価基準のうち、前記選択手段によって選択された課題表情に対応する評価基準に従って、前記顔特徴点検出手段によって検出された顔特徴点の位置に基づいて前記顔画像取得手段によって取得された顔画像におけるユーザの表情を評価する評価手段、および、 前記評価手段の評価結果を画像又は音声によりユーザに提示する評価結果提示手段を備え、 ユーザの表情の評価結果を数字で提示する トレーニング装置。」 イ.刊行物2 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2011-206471号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0194】 [4.実施形態4] 以下、実施形態4について説明する。実施形態3のゲーム装置20は、ユーザ100の音声が入力された時間を考慮してゲームの難易度を下げたり、応援エフェクト処理を実行したりする。 【0195】 これに対して実施形態4は、撮影画像から取得されるユーザ100の表情を考慮して、上記のゲーム処理を実行する点に特徴がある。」 (イ)「【0198】 [4-1.実施形態4において実現される機能] 図25は、実施形態4のゲーム装置20において実現される機能ブロック図である。図25に示すように、実施形態4のゲーム装置20では、実施形態1の機能に加えて表情取得部78が実現される。 【0199】 [4-1-1.表情取得部] 表情取得部78は、制御部21を主として実現される。表情取得部78は、ユーザ100を撮影する撮影手段(撮影部12)から得られる撮影画像に対して表情認識処理を行うことによって、当該ユーザ100の表情に関する表情情報を取得する。つまり、実施形態4のゲーム装置20は、撮影画像(図2)を位置検出装置1より取得する。この撮影画像 は、例えば、ゲームデータ記憶部60に一時的に記憶される。 【0200】 撮影画像から被写体(ユーザ100)の表情を取得する方法として、本実施形態では、参照画像を用いる場合を説明する。例えば、この参照画像は、ユーザ100が無表情になった場合の撮影画像である。即ち、ユーザ100が無表情の撮影画像(参照画像)と、ゲームをプレイしている最中のユーザ100の撮影画像と、が比較されて、ユーザ100の表情が取得される。」 (ウ)「【0203】 ゲームが開始されると、撮影画像の特徴点の間の距離と、上記の参照画像の特徴点間の距離と、が比較される。例えば、この差分値に基づいてユーザ100の表情が認識される。即ち、左右の口角の間の距離が基準値以上となっている場合には、ユーザ100が「笑っている」と判定される。他にも例えば、両眉の距離が基準値以下となっている場合には、ユーザ100が「顔をしかめている」と判定される。この基準値は、予めゲーム装置20に記憶されている。」 (エ)上記(ア)によれば、「実施形態3のゲーム装置20は、ユーザ100の音声が入力された時間を考慮してゲームの難易度を下げたり、応援エフェクト処理を実行したりする」ものであり、「これに対して実施形態4は、撮影画像から取得されるユーザ100の表情を考慮して、上記のゲーム処理を実行する点に特徴がある」のだから、実施形態4においては「撮影画像から取得されるユーザ100の表情を考慮して、ゲームの難易度を下げたり、応援エフェクト処理を実行したりする」といえる。 上記の記載事項を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「表情取得部が実現されるゲーム装置であって、 表情取得部は、ユーザを撮影する撮影手段(撮影部)から得られる撮影画像に対して表情認識処理を行うことによって、当該ユーザの表情に関する表情情報を取得し、 ユーザが無表情の撮影画像(参照画像)と、ゲームをプレイしている最中のユーザの撮影画像と、が比較されて、ユーザの表情が取得され、 ゲームが開始されると、撮影画像の特徴点の間の距離と、参照画像の特徴点間の距離と、が比較され、この差分値に基づいてユーザの表情が認識され、左右の口角の間の距離が基準値以上となっている場合には、ユーザが「笑っている」と判定され、両眉の距離が基準値以下となっている場合には、ユーザが「顔をしかめている」と判定され、 撮影画像から取得されるユーザの表情を考慮して、ゲームの難易度を下げたり、応援エフェクト処理を実行したりする ゲーム装置。」 ウ.刊行物3 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-29483号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】演奏のタイミングを設定するタイミングデータ毎に、少なくとも楽曲データ、映像データ及び歌詞データの設定されたカラオケの曲データ中の前記楽曲データに基づいて演奏音を出力するとともに、当該演奏音に合わせてマイクから入力された音声を前記演奏音にミキシングし、前記映像データに基づいて背景映像を表示するとともに、前記歌詞データに基づいて前記背景映像に当該歌詞を合成して表示するカラオケ装置において、前記曲データは、前記タイミングデータに対応付けて、使用者の姿の採点を指示する採点データが設定されており、前記使用者の姿を撮影する撮影手段と、前記撮影手段の撮影する撮影映像を静止画像として取り込む画像取込手段と、前記画像取込手段の取り込んだ静止画像に基づいて前記使用者の姿を採点する採点手段と、前記採点データに基づいて前記画像取込手段に前記静止画像を取り込ませ、当該取り込んだ静止画像に基づいて前記採点手段に前記使用者の姿を採点させる制御手段と、を備えることを特徴とするカラオケ装置。」 (イ)「【0026】CPU(制御手段)2は、カラオケ装置1の電源がオンされると、ROM3に格納されているブート用プログラムで立ち上げ処理を行って、HDD6から制御プログラムをRAM4にロードし、RAM4をワークメモリとして利用しつつ、カラオケ装置1の各部を制御して、カラオケ装置1としての処理を行うとともに、後述する採点処理を行う。」 (ウ)「【0060】CPU2は、当該採点結果を採点した時点でモニタ9の一部にメータ表示等の方法により表示し、また、演奏が終了あるいは曲データのデータエンドとなった時点で、各採点時点の採点結果を加点あるいは減点して集計して、集計結果をモニタ9に点数表示する(ステップP15)。」 (エ)上記(イ)の「CPU(制御手段)2」との記載によれば、上記(ア)の「CPU」は上記(ウ)の「制御手段」に対応する。 上記の記載事項を総合すると、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「曲データは、タイミングデータに対応付けて、使用者の姿の採点を指示する採点データが設定されており、前記使用者の姿を撮影する撮影手段と、前記撮影手段の撮影する撮影映像を静止画像として取り込む画像取込手段と、前記画像取込手段の取り込んだ静止画像に基づいて前記使用者の姿を採点する採点手段と、前記採点データに基づいて前記画像取込手段に前記静止画像を取り込ませ、当該取り込んだ静止画像に基づいて前記採点手段に前記使用者の姿を採点させる制御手段と、を備え 制御手段は、採点結果を採点した時点でモニタの一部にメータ表示等の方法により表示する カラオケ装置。」 エ.刊行物4 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2012-78526号公報(以下「刊行物4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0048】 さらに、カラオケシステム100は、主に歌唱者を撮像する撮像カメラ装置118と、アバターやキャラクタの顔部分の画像、すなわち、キャラクタ画像がデータとしてキャラクタ毎に記憶されるとともに、撮像された歌唱者の画像が記憶されるデータベース(以下、「システム用データベース」という。)120と、撮像カメラ装置118から出力されたフレーム毎の画像から歌唱者の顔部分の画像領域(すなわち、顔領域)を認識し、アバターやキャラクタの顔部分の画像を歌唱者の顔部分に重畳表示させる画像処理部130と、を備えている。」 (イ)「【0062】 画像処理部130は、カラオケ画像生成処理を実行する際に、カラオケ画像を生成するための各種の処理を行うようになっている。具体的には、画像処理部130は、撮像カメラ装置118から出力されたフレーム毎の画像(以下、「フレーム画像」という。)に対して、当該フレーム画像内における歌唱者の顔部分の顔領域を認識しつつ、歌唱者の表情及びその顔の向きを判別し、判別された顔の表情または顔の向きに基づいて重畳するキャラクタ画像を変化させるようになっている。具体的には、画像処理部130は、顔領域を認識する認識処理部131と、認識された顔領域から歌唱者の表情及び向きを判別する表情/向き判別部132と、判別された歌唱者の表情及び向きに基づいて、予め設定されたキャラクタからシステム用データベース120に記憶された一のキャラクタ画像を選択し、顔領域に重畳する画像変換処理部133と、から構成されている。」 (ウ)「【0065】 表情/向き判別部132は、肌色領域及び髪領域の割合を算出しつつ、目、鼻、口などの顔の各部位に対して主成分分析を行って特徴量を抽出するLFA(Local Feature Analysis)法、または、画像を複数のフィルタリング処理を実行し、それぞれの画像を細分化して局所的に特徴量を算出するパターン分布特徴を用いて顔特徴を抽出するGabor Wavelet変換法などの各方法に基づく表情/向き判別処理を行って、顔の向き及びその表情を判別するようになっている。 【0066】 例えば、表情/向き判別部132は、表情としては、笑顔の他に、苦しそうに大きな声を叫んでいる表情を示す絶叫顔、目を閉じて眉をひそめて歌によって酔っている表情を示す陶酔顔など各種のカラオケ中の特徴的な表情を判別するようになっている。また、表情/向き判別部132は、右側面、右斜め、正面、左斜め、左側面及び後ろ向きの各顔の向きを判別するようになっている。なお、本実施形態においては、表情/向き判別部132は、顔の表情のみ、または、顔の向きのみ判別してもよいし、その双方を判別するようにしてもよい。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。 「歌唱者を撮像する撮像カメラ装置と、 アバターやキャラクタの顔部分の画像を歌唱者の顔部分に重畳表示させる画像処理部と、を備え 画像処理部は、撮像カメラ装置から出力されたフレーム画像に対して、当該フレーム画像内における歌唱者の顔部分の顔領域を認識しつつ、歌唱者の表情及びその顔の向きを判別し、判別された顔の表情または顔の向きに基づいて重畳するキャラクタ画像を変化させ、顔領域を認識する認識処理部と、認識された顔領域から歌唱者の表情及び向きを判別する表情/向き判別部と、判別された歌唱者の表情及び向きに基づいて、予め設定されたキャラクタからシステム用データベースに記憶された一のキャラクタ画像を選択し、顔領域に重畳する画像変換処理部と、から構成され、 表情/向き判別部は、表情/向き判別処理を行って、顔の向き及びその表情を判別し、 表情としては、笑顔の他に、苦しそうに大きな声を叫んでいる表情を示す絶叫顔、目を閉じて眉をひそめて歌によって酔っている表情を示す陶酔顔など各種のカラオケ中の特徴的な表情を判別する カラオケシステム。」 オ.刊行物5 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2012-118286号公報(以下「刊行物5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0018】 本発明の利用者属性対応カラオケシステムでは、選曲予約を行った利用者の顔画像データを取得して、その年齢や性別等の属性を判定すると共に、予約楽曲の楽曲IDと属性データとを紐付けして管理する。そして、任意の楽曲が演奏される際に、当該楽曲を選曲予約した歌唱者の属性データに好適に対応させて、背景映像や歌詞テロップを表示させるようになっている。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物5には、次の事項(以下「刊行物5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「利用者属性対応カラオケシステムにおいて、選曲予約を行った利用者の顔画像データを取得して、その年齢や性別等の属性を判定すること。」 カ.刊行物6 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2012/039467号(以下「刊行物6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「[0134] (実施形態3) 本実施形態の運動支援システム1Bは、可動域訓練システムとしての側面を有する。可動域訓練システムは、四肢等の身体の特定部位の可動域を正常範囲に戻したり正常範囲に維持したりするための可動域訓練に用いられる。」 (イ)「[0168] 記憶部51には、たとえば年齢や性別や身長ごとに標準情報が記憶されていてもよく、この場合、評価部155は評価対象と対比する標準情報を、利用者2の年齢や性別、身長に応じて選択する。すなわち、利用者2の年齢や性別、身長によって図像131に対する点数の割り当てが変化する。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物6には、次の事項(以下「刊行物6記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「運動支援システムにおいて、利用者の年齢や性別、身長によって図像に対する点数の割り当てが変化すること。」 キ.刊行物7 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-186630号公報(以下「刊行物7」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0009】 ネットワークを介して接続されたユーザの情報処理端末に広告データを配信する広告配信装置であって、 予め設定されたユーザ属性情報と、顔画像情報から抽出される顔特徴情報と、を関連付けた顔特徴対応テーブルと、 ユーザ属性情報と広告データとを関連付けた広告対応テーブルと、を備えると共に、 ユーザの顔画像情報を取得する顔画像取得部と、 顔画像取得部にて取得した顔画像情報から当該顔画像情報の特徴を表す顔特徴情報を抽出し、この抽出した顔特徴情報に対応するユーザ属性情報を、顔特徴対応テーブルに基づいて特定するユーザ認証部と、 ユーザ認識部にて特定したユーザ属性情報に対応する広告データを、広告対応テーブルから抽出してユーザの情報処理端末に配信する広告配信部と、 を備えた、という構成を採っている。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物7には、次の事項(以下「刊行物7記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「広告配信装置において、顔画像取得部にて取得した顔画像情報からユーザ属性情報を特定し、特定したユーザ属性情報に対応する広告データをユーザの情報処理端末に配信すること。」 (2)本願発明1について ア.対比 (ア)引用発明1を主引例とする場合 a.対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 後者においては「ユーザの表情を評価」するから、ユーザが評価の対象者であることは明らかであるので、後者の「撮像装置よりユーザの顔画像を取得する顔画像取得手段」は、前者の「採点対象者の顔画像を撮像する顔画像撮像手段」に相当する。 後者は「ユーザの表情の評価結果を数字で提示する」ものであって、後者の「評価」は「数字」で示されるから、「ユーザの表情」は複数の段階に分けて評価し採点されているといえる。そうすると、後者の「前記複数の課題表情毎に予め設定された評価基準のうち、前記選択手段によって選択された課題表情に対応する評価基準に従って、前記顔特徴点検出手段によって検出された顔特徴点の位置に基づいて前記顔画像取得手段によって取得された顔画像におけるユーザの表情を評価する評価手段」と前者の「採点対象者の顔画像の表情の度合を、前記推定された顔画像の表情に対応する採点基準によって、複数の段階に分けて評価して採点する顔表情採点手段」とは、「採点対象者の顔画像の表情の度合を、採点基準によって、複数の段階に分けて評価して採点する顔表情採点手段」との概念で共通する。 後者の「前記評価手段の評価結果を画像又は音声によりユーザに提示する評価結果提示手段」は、前者の「採点された結果を表示する採点結果表示手段」に相当する。 したがって、両者は、 「採点対象者の顔画像を撮像する顔画像撮像手段と、 前記採点対象者の顔画像の表情の度合を、採点基準によって、複数の段階に分けて評価して採点する顔表情採点手段と、 採点された結果を表示する採点結果表示手段と、 を含む顔表情採点装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 前者が「撮像された顔画像から顔の表情を推定する顔表情推定手段」を有するのに対して、後者はそのようなものでない点。 [相違点2] 採点基準が、前者においては「推定された顔画像の表情に対応する」のに対して、後者においてはそのようなものでない点。 b.判断 上記相違点1について検討する。 引用発明2は上記「(1)イ.」のとおりであるところ、引用発明2では「撮影画像に対して表情認識処理を行うことによって、当該ユーザ100の表情に関する表情情報を取得」するのだから、「撮影画像」に表情が表れる顔が含まれることは明らかであって、引用発明2の「撮影画像」は本願発明1の「撮像された顔画像」に相当する。 引用発明2の「ユーザが「笑っている」と判定」することや「ユーザが「顔をしかめている」と判定」することは、本願発明1の「顔の表情を推定する」ことに相当するから、引用発明2の「撮影画像の特徴点の間の距離と、参照画像の特徴点間の距離と、が比較され、この差分値に基づいてユーザの表情が認識され、左右の口角の間の距離が基準値以上となっている場合には、ユーザが「笑っている」と判定され、両眉の距離が基準値以下となっている場合には、ユーザが「顔をしかめている」と判定され」ることは、本願発明1の「撮像された顔画像から顔の表情を推定する」ことに相当し、引用発明2においてこのような判定を行う「表情取得部」は、本願発明1の「顔表情推定手段」に相当する。 そうすると、引用発明2は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えるといえる。 しかしながら、引用発明1が「トレーニング装置」に係る発明であるのに対して、引用発明2は「ゲーム装置」に係る発明であるから、引用発明1及び2はその属する技術分野が共通するとはいえない。 また、引用発明1が「ユーザが表情筋のトレーニングを効果的に行うことのできるトレーニングプログラムおよびトレーニング装置を提供すること」(段落【0005】)を課題とする一方、引用発明2は「ユーザが意図するようなゲームプレイの補助をすることが可能なゲーム装置、ゲーム装置の制御方法、及びプログラムを提供すること」(段落【0006】)を課題とするものであって、引用発明1及び2の課題が直接的に共通するともいえない。 よって、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けを見出すことはできない。 そうすると、引用発明1に引用発明2を適用して相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 また、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本願発明1は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「顔表情を採点することで表現力の定量評価を向上させることが可能になる。」(段落【0011】)という効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (イ)引用発明3を主引例とする場合 a.対比 本願発明1と引用発明3とを対比する。 後者においては「前記採点手段に前記使用者の姿を採点させる」から、後者の「使用者」は前者の「採点対象者」に相当する。そうすると、後者の「前記使用者の姿を撮影する撮影手段」と前者の「採点対象者の顔画像を撮像する顔画像撮像手段」とは、「採点対象者の画像を撮像する画像撮像手段」との概念で共通する。 「採点」が複数の段階に分かれた評価であることは明らかであるから、後者の「前記画像取込手段の取り込んだ静止画像に基づいて前記使用者の姿を採点する採点手段」と前者の「前記採点対象者の顔画像の表情の度合を、前記推定された顔画像の表情に対応する採点基準によって、複数の段階に分けて評価して採点する顔表情採点手段」とは、「採点対象者の画像を、採点基準によって、複数の段階に分けて評価して採点する採点手段」との概念で共通する。 後者の「制御手段」は「採点結果を採点した時点でモニタの一部にメータ表示等の方法により表示する」から、前者の「採点された結果を表示する採点結果表示手段」に相当する。 したがって、両者は、 「採点対象者の画像を撮像する画像撮像手段と、 前記採点対象者の画像を、採点基準によって、複数の段階に分けて評価して採点する顔表情採点手段と、 採点された結果を表示する採点結果表示手段と、 を含む採点装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点3] 前者が「採点対象者の顔画像を撮像する顔画像撮像手段」を有するのに対して、後者は採点対象者の画像を撮像する画像撮像手段を有するものの、当該画像撮像手段は顔画像を撮像するものではない点。 [相違点4] 前者が「前記撮像された顔画像から顔の表情を推定する顔表情推定手段」を有するのに対して、後者はそのようなものでない点。 [相違点5] 顔表情採点手段が、前者においては「採点対象者の顔画像の表情の度合」を採点するのに対して、後者はそのようなものでない点。 [相違点6] 採点基準が、前者においては「推定された顔画像の表情に対応する」のに対して、後者においてはそのようなものでない点。 b.判断 上記相違点4について検討する。 まず引用発明1について検討する。 上記相違点4は、上記「(ア)a.」における相違点1と同様の点である。そうすると、「(ア)a.」における対比のとおり、引用発明1は上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を有するものではない。 次に引用発明4について検討する。 引用発明4は上記「(1)エ.」のとおりであって、引用発明4の「画像処理部」は「撮像カメラ装置から出力されたフレーム画像に対して、当該フレーム画像内における歌唱者の顔部分の顔領域を認識しつつ、歌唱者の表情及びその顔の向きを判別」するから、本願発明1の「撮像された顔画像から顔の表情を推定する顔表情推定手段」に相当する。 そうすると、引用発明4は、相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を備えるといえる。 また、引用発明3は「カラオケ装置」に係る発明であり、引用発明4は「カラオケシステム」に係る発明であるから、引用発明3及び4は技術分野が共通するといえる。 しかしながら、引用発明3が「曲の所定タイミングで歌唱に合わせた使用者の姿(ポーズ)を採点し、利用性の良好なカラオケ装置を提供すること」(段落【0007】)を課題とする一方、引用発明4は「カラオケに合わせて歌唱者に対して画像処理を行うことによってカラオケの新たな娯楽性を提供することができるカラオケシステムを提供すること」(段落【0007】)を課題とするから、引用発明3及び4は課題が共通するとはいえない また、引用発明3は「使用者の姿を採点する」ものであって「顔の表情」に係るものではない一方、引用発明4は「判別された顔の表情または顔の向きに基づいて重畳するキャラクタ画像を変化させ」るものであって「採点」を行うものではないから、引用発明3と引用発明4とに作用、機能の共通性があるともいえない。 そうすると、引用発明3に引用発明4を適用する動機付けを見出すことはできない。 よって、引用発明3に引用発明1及び4を適用して相違点4に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 また、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本願発明1は、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「顔表情を採点することで表現力の定量評価を向上させることが可能になる。」(段落【0011】)という効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、引用発明1、3及び4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1及び2に基づいて、又は、引用発明1、3及び4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 なお、刊行物5記載事項ないし刊行物7記載事項にも、上記相違点1(相違点4)に係る本願発明1の発明特定事項は記載されていない。 (3)本願発明2ないし9について 本願発明2ないし9は、本願発明1をさらに限定したものである。 そうすると、本願発明2ないし9は、本願発明1と同様に、引用発明1ないし4及び刊行物5記載事項ないし刊行物7記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 当審において通知した拒絶理由の概要は以下の通りである。 「1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(実施可能要件)について ・請求項 1ないし9 本願の請求項1ないし9に係る発明は、「前記撮像された顔画像から顔の表情を推定する顔表情推定手段」を有するものである。 しかしながら、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌しても「顔表情推定手段」がどのようにして「撮像された顔画像から顔の表情を推定する」のかが明らかでない。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 ●理由2(明確性)について ・請求項 1ないし9 本願の請求項1ないし9に係る発明(以下「本願発明」と総称する。)は、「前記推定された顔画像の表情を、予め定めた基準によって採点する顔表情採点手段」を有するものである。 これに対して、本願明細書には、度合い等を基準として複数段階の点数評価等による採点を行うものと、度合いや段階を用いることなく「顔表情を笑顔にする」か否かや「真顔にする」か否かによって採点を行うものとが記載されていると認められるところ、「前記推定された顔画像の表情を、予め定めた基準によって採点する」という記載では、本願発明の「顔表情採点手段」が後者のような採点を行う態様をも包含するのか否かが明確でない。 また、本願発明が後者のような採点を行うものを包含する場合には、「顔表情推定手段」において、表情が笑顔や真顔であることが推定され、その笑顔や真顔について「顔表情採点手段」が「前記推定された顔画像の表情を、予め定めた基準によって採点する」ことになるが、この場合の「推定された顔画像の表情を、予め定めた基準によって採点する」という記載が何を行うことを指すのかが明確でない。 よって、請求項1ないし9の記載は明確でない。」 2.当審拒絶理由の判断 平成30年4月13日付け意見書における請求人の主張を参酌することにより、本願の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。 また、平成30年4月13日付け手続補正書による補正により、本件補正前の請求項1ないし9は上記「第2」において摘示した請求項1ないし9のとおりにそれぞれ補正され、「顔表情採点手段」が「前記採点対象者の顔画像の表情の度合を、……複数の段階に分けて評価」することが特定されたため、請求項1ないし9に係る発明は明確となった。 よって、当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-06-01 |
出願番号 | 特願2015-509944(P2015-509944) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(A63B)
P 1 8・ 121- WY (A63B) P 1 8・ 536- WY (A63B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼川 康史 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 森次 顕 |
発明の名称 | 顔表情採点装置、ダンス採点装置、カラオケ装置、およびゲーム装置 |
代理人 | 中山 ゆみ |
代理人 | 辻丸 光一郎 |
代理人 | 伊佐治 創 |