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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1340674 |
審判番号 | 不服2017-8220 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-07 |
確定日 | 2018-06-12 |
事件の表示 | 特願2015- 83060「偏光板ならびに画像表示装置および液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月26日出願公開、特開2015-212815、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年4月15日(優先権主張 平成26年4月16日)の出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成28年 8月 1日付け:拒絶理由通知書 平成28年10月 6日付け:意見書、手続補正書 平成29年 3月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 平成29年 6月 7日付け:審判請求書、手続補正書 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1.本願の請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献3-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 3.特開2007-233215号公報 4.特開2006-301572号公報 5.特開2007-94396号公報 6.特許第4804589号公報 第3 本願発明 本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成29年6月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるとおりの、以下の発明である。 「【請求項1】 ポリマーフィルムと偏光子とを有する偏光板であって、 前記ポリマーフィルムと前記偏光子との間に応力緩和層を有し、 前記ポリマーフィルムおよび前記応力緩和層の弾性率が、下記式(1)の関係を満たし、 前記ポリマーフィルムの厚みが10μm以上であり、 前記偏光板の前記ポリマーフィルム側の表面から前記ポリマーフィルムと前記応力緩和層との界面までの距離Dsが15μm以上であり、 前記距離Dsと、前記ポリマーフィルムの厚みCとの差が15μm未満であり、 前記ポリマーフィルムおよび前記応力緩和層の合計の厚みが80μm以下であり、 前記偏光子の厚みが、25μm以下であり、 前記応力緩和層の弾性率が1?5GPaであり、 前記応力緩和層が、1分子内に2個以上の不飽和二重結合基を有する化合物を含有する組成物から形成されてなる層、または、環状ポリオレフィン系樹脂含有層である、偏光板。 0.01<B/A<0.9 ・・・(1) ただし、前記式(1)中、Aは前記ポリマーフィルムの弾性率を表し、Bは前記応力緩和層の弾性率を表す。 【請求項2】 前記ポリマーフィルムおよび前記応力緩和層の厚みが、下記式(2)の関係を満たす、請求項1に記載の偏光板。 0.02<D/C<0.25 ・・・(2) ただし、前記式(2)中、Cは前記ポリマーフィルムの厚みを表し、Dは前記応力緩和層の厚みを表す。 【請求項3】 前記ポリマーフィルムの厚みが、20μm?60μmである請求項1または2に記載の偏光板。 【請求項4】 前記応力緩和層の厚みが、1μm?15μmである請求項1?3のいずれか1項に記載の偏光板。 【請求項5】 前記ポリマーフィルムの前記応力緩和層を有する側とは反対側に、ハードコート層を有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の偏光板。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項に記載の偏光板と、表示素子とを有する画像表示装置。 【請求項7】 液晶セル、および、前記液晶セルを挟んで配置される一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、 前記一対の偏光板の少なくとも一方が、請求項1?5のいずれか1項に記載の偏光板である液晶表示装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献3について (1)引用文献3の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、偏光板に関し、特に、十分な表面強度を有し、高温・高湿度環境下においても寸法変化がなく高い光学性能を奏することができ、かつ液晶表示装置およびタッチパネルに好適に用いることができる偏光板に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、液晶表示装置には、外光を利用することにより低消費電力を達成できる点で、反射型の液晶表示装置や、半透過型の液晶表示装置が用いられている。例えば、反射型の液晶表示装置は、反射板と、液晶セルと、出射側偏光板とをこの順に備えて構成され、出射側偏光板の液晶セル側には、円偏光と直線偏光とを変換可能な1/4波長板(例えば、1/2波長板と1/4波長板とを張り合わせた広帯域1/4波長板)等の光学異方体が設けられている。 【0003】 ところで、前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に設けられる第1の保護フィルムと、偏光子の他方の面に設けられる第2の保護フィルムとを備えて構成されている。各保護フィルムには、透明性に優れる、低複屈折性などの点で、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)が広く用いられている。 【0004】 さらに、近年では、偏光板の液晶セル側に設けられる保護フィルムとしては、保護フィルムとしての機能に加えて前記光学異方体としての機能を併せ持ったフィルムを用いることにより、部材点数を減少させて装置の小型・軽量化を図ることが試みられている。例えば、特許文献1には、第1の保護フィルムに3層構成のTACフィルムを用い、第2の保護フィルムに光学異方体を用いた偏光板が提案されている。 【0005】 【特許文献1】特開2005-156615号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1に示すように、保護フィルムとしてTACフィルムを用いた場合には、その透湿度が高いことから、例えば高温・高湿度環境下では吸湿等によって寸法変化が生じ得る。このため、TACフィルムの寸法変化により生じる応力によって光学異方体に新たな位相差が発現して、十分な光学補償機能を発揮できず、いわゆる額縁故障が生じるという問題があった。特に、偏光板の寸法が大きくなるほど前記問題が顕著になるため、ディスプレイの大型化・高精細化への障害となっていた。従って、高温・高湿度環境下でも寸法変化が生じず高い光学性能を有し、かつ、反射型もしくは半透過型の液晶表示装置に好適な偏光板が求められている。なお、このような問題は、表示装置の表面に設けられるタッチパネルにおいても同様であった。 【0007】 本発明の目的は、十分な強度、打抜き性、可撓性を奏することができるとともに、高温・高湿度環境下においても寸法変化がなく高い光学性能を奏することができ、かつ反射型もしくは半透過型の液晶表示装置およびタッチパネルに好適に用いることができる偏光板を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、この偏光板を備え、光学性能の高い反射型もしくは半透過型の液晶表示装置またはタッチパネルを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 前記課題を解決するために、本発明は、偏光子と、この偏光子の一方の面に設けられる保護フィルムと、前記偏光子の他方の面に設けられる光学異方体とを備える偏光板であって、前記保護フィルムは、熱可塑性樹脂からなる複数の層を備えるとともに、その総厚みが200μm以下であり、かつその透湿度が10?200g/m^(2)・24hであり、前記光学異方体は、波長550nmで測定したレターデーション値Re(550)と波長450nmで測定したレターデーション値Re(450)との比Re(450)/Re(550)が1.007以下であることを特徴とする。」 イ 「【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、十分な強度、打抜き性、可撓性を奏することができ、高温・高湿度環境下においても寸法変化がなく高い光学性能を奏することができ、かつ反射型もしくは半透過型の液晶表示装置およびタッチパネルに好適に用いることができるという効果がある。このため、このような偏光板を用いることにより、視認性に優れた反射型もしくは半透過型の液晶表示装置およびタッチパネルを提供できるという効果がある。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 本発明の偏光板は、偏光子と、この偏光子の一方の面に設けられる保護フィルムと、前記偏光子の他方の面に設けられる光学異方体とを備えている。 【0015】 <偏光子> 本発明に用いる偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの、またはポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるものなどが挙げることができる。また、偏光子としては、グリッド偏光子、多層偏光子、およびコレステリック液晶偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子を挙げることもできる。この中でも、偏光子としては、ポリビニルアルコールを含んでなるものが好ましい。偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の厚み(平均厚み)は、好ましくは5μm?80μmである。 【0016】 <保護フィルム> 本発明において、保護フィルムは、熱可塑性樹脂からなる層を複数備え、その総厚みが200μm以下であり、かつその透湿度が10?200g/m^(2)・24hである。このような構成とすることにより、当該保護フィルムを用いた偏光板において、高温・高湿度環境下でも吸湿等による寸法変化がなく、十分な光学性能を発揮できる。 【0017】 このような保護フィルムとしては、例えば、透湿度の高い層と透湿度の低い層とを積層した積層体等とすることができる。このような積層体としては、例えば、複数の層のうちの少なくとも1層が親水性基を有する高分子化合物を含んでなる親水性樹脂層であり、親水性樹脂層以外の他の層が他の熱可塑性樹脂からなる層の構成とすることができる。このような積層体とすることにより、硬度や可撓性等の特性を十分に発揮できる。また、積層体とすることにより、偏光板を所定形状に打抜く際に、保護フィルムの端面に剥れ等が生じず、十分な打抜き性を奏することができる利点がある。 【0018】 (親水性樹脂層) 前記親水性樹脂層を構成する高分子化合物の親水性基としては、親水性や水分散性機能を有する官能基であればよく、例えば、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、エステル基、アミド基、アミノ基、水酸基、グリシジル基、およびアセチル基などを挙げることができる。この中でも、親水性基としては、水酸基が好ましい。 【0019】 親水性基を有する高分子化合物としては、例えば、親水性セルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシセルロース等)、ポリビニルアルコール誘導体(ポリビニルアルコール、酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルホマール、およびポリビニルベンザール等)、天然高分子化合物(ゼラチン、カゼイン、およびアラビアゴム等)、親水性ポリエステル誘導体(部分的にスルホン化されたポリエチレンテレフタレート等)、およびポリビニル誘導体(ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、およびポリビニルピラゾール等)を挙げることができる。これらの親水性高分子化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。この中でも、親水性高分子化合物としては、セルロース誘導体が好ましい。 【0020】 セルロース誘導体としては、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、およびセルロースエーテル類などを挙げることができる。セルロース誘導体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。 【0021】 セルロースエステル類としては、有機酸エステル類、無機酸エステル類、および有機酸と無機酸との混合酸エステル類を挙げることができる。有機酸エステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2-C6アルキルカルボン酸エステル、アセチルアルキルセルロースなどのアルキルセルロースエステル、ジクロロメチルセルロースエステル、トリクロロメチルセルロースエステル、トリフルオロメチルセルロースエステルなどのハロアルキルセルロースエステルなど)、および芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエート、セルロース-4-メチルベンゾエートなどのC7-C12芳香族カルボン酸エステルなど)を挙げることができる。無機酸エステル類としては、例えば、リン酸セルロースおよび硫酸セルロースなどを挙げることができる。」 ウ 「【0034】 (親水性樹脂層以外の他の層) 親水性樹脂層を含む複数の層からなる保護フィルムにおいて、親水性樹脂層以外の他の層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、および脂環式オレフィンポリマーなどを挙げることができる。この中でも、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂からなる層は、単層または複数層とすることができる。」 エ 「【0038】 保護フィルムの透湿度は、10?200g/m^(2)・24hである。保護フィルムの透湿度を前記範囲とすることにより、保護フィルムの寸法変化を抑えることができるとともに、保護フィルムを構成する各層間の密着性を向上できる。なお、透湿度は、40℃、92%RHの環境下で、24時間放置する試験条件で、JIS Z 0208に記載のカップ法により測定できる。 【0039】 保護フィルムの厚み(平均厚み)は200μm以下である。また、保護フィルムの厚みは、40μm?100μmであることが好ましい。保護フィルムの厚みが前記範囲であることにより、偏光板の薄型化を図ることができる。また、保護フィルムにおいて、最も外側の層(外部に露出する層)の厚みは、通常5μm?100μmであり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは10μm?50μmである。 【0040】 保護フィルムにおいて、一方の最表面側の層(一方の表面の外部に露出する層)の厚みと、他方の最表面側の層(他方の表面の外部に露出する層)の厚みとの差は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、0に近づけば近づくほどさらに好ましい。 【0041】 また、3層以上の層を含む構成の保護フィルムにおいて、その中間に位置する層(前記一方の最表面側の層および前記他方の最表面側の層以外の層であって、単層でも複数層でもよい)の厚みは、通常5μm?100μmであり、好ましくは10μm?50μmである。前記3層以上の層を含む保護フィルムにおいて、前記中間に位置する層の厚みは、前記一方の最表面側の層または前記他方の最表面側の層の厚みとの比が、中間に位置する層の厚み/最表面側の層の厚み=5/1?1/5であることが好ましい。 【0042】 ここで、前記一方の最表面側の層または前記他方の最表面側の層を構成する樹脂としては、硬いもの、具体的には、鉛筆硬度試験(試験荷重を500gに変更した他は、JIS K5600-5-4に基づく)で2Hを超えるものが好ましい。このような樹脂としては、前述したアクリル樹脂が好ましい。この際、保護フィルムでは、比較的軟らかい親水性樹脂層が、アクリル樹脂等からなる他の層に挟まれた構成となることが好ましい。このような構成とすることにより、当該保護フィルムの表面の硬度を十分に確保しつつ、当該保護フィルムの可撓性を向上でき、これにより偏光板等を製造する際の取扱性を向上できる。この際、親水性樹脂層を構成する樹脂としては、前記偏光子との貼合工程で乾燥時間を短縮できて密着性を向上できる点で、前記セルロースエステル類が好ましい。 【0043】 また、前記一方の最表面側の層を構成する樹脂と、前記他方の最表面側の層を構成する樹脂とは、同じ種類の樹脂であることが好ましい。このような構成とすることにより、偏光板とした際に、偏光板の反りや湾曲、丸まり等が生じるのを抑えることができる。」 オ 「【0050】 保護フィルムは、ある層の引張弾性率と、この層に隣接する層(接着層を除く)の引張弾性率との差の絶対値が0.5GPa以上であることが好ましい。このような構成とすることにより、干渉縞等による光学性能の低下を抑えつつ、偏光板の強度および可撓性を高めることができる。また、保護フィルムは、その少なくとも1層の引張弾性率が3.0GPa以上であることが好ましい。」 カ 「【実施例】 【0104】 本発明について、実施例および比較例により、より詳細に説明する。 実施例および比較例に示す偏光板、液晶表示装置、およびタッチパネルは、下記の方法により評価を行った。 ・・・(中略)・・・ 【0107】 <各樹脂層の引張弾性率> 熱可塑性樹脂を単層にて成形して、1cm×25cmの試験片を切り出し、ASTM882に基づき、引張試験機(東洋ボールドウィン社製、テンシロンUTM-10T-PL)を用いて引張速度25mm/minの条件で測定した。同様の測定を5回行い、その算術平均値を引張弾性率の代表値とした。」 キ 「【0121】 <製造例1:セルロースアセテートブチレートの製造> 親水性基を有する高分子化合物であるアセチルアシルセルロースとしてのセルロースアセテートブチレート(アセチル基の置換度:1.0、ブチリル基の置換度:1.7、重量平均分子量:15.5万;イーストマンケミカル社製CAB-381-20)91重量%と、可塑剤であるジグリセリンテトラカプリレート9重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートブチレートを得た。」 ク 「【0123】 <製造例3:保護フィルム1の作製> ポリメチルメタクリレート樹脂(表中PMMAと表記、吸水率0.3%)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置した第1のダブルフライト型一軸押出機に投入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂を、マルチマニホールドダイを構成する、ダイスリップの表面粗さRaが0.1μmである第1のマニホールドダイに供給した。 【0124】 また、製造例1で得られたセルロースアセテートブチレート(表中CABと表記、吸水率1.6%)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置した第2のダブルフライト型の一軸押出機に導入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂を、マルチマニホールドダイを構成する、ダイスリップの表面粗さRaが0.1μmである第2のマニホールドダイに供給した。そして、溶融状態のポリメチルメタクリレート樹脂、セルロースアセテートブチレート、接着剤としてエチレン-酢酸ビニル共重合体のそれぞれをマルチマニホールドダイから260℃で吐出させ、130℃に温度調整された冷却ロールにキャストし、その後、50℃に温度調整された冷却ロールに通して、ポリメチルメタクリレート樹脂層(20μm:樹脂層A)-接着層(4μm)-セルロースアセテートブチレート層(32μm:樹脂層B)-接着層(4μm)-ポリメチルメタクリレート樹脂層(20μm:樹脂層C)の3層構成からなる、幅600mm、厚さ80μmの保護フィルム1を共押出成形により得た。保護フィルム1は、その透湿度が84.0g/m2・24hであり、その残留溶剤含有量が0.01重量%以下であり、光弾性係数が2×10-13cm^(2)/dynであった。また、保護フィルム1の表面の、線状凹部の深さまたは凸部の高さは、20nm以下であり、かつ幅が800nm以上の範囲であった。」 ケ 「【0125】 <製造例4:保護フィルム2の作成> 製造例3で用いたマルチマニホールドダイを2層構成のフィルムを得るためのマルチマニホールドダイに置き換えて、実施例1と同様にしてポリメチルメタクリレート樹脂層(32μm:樹脂層A)-接着層(4μm)-セルロースアセテートブチレート層(44μm:樹脂層B)の2層構成(接着層を除く)からなる、幅600mm、厚さ80μmの保護フィルム2を得た。保護フィルム2は、その透湿度が92.0g/m^(2)・24hであり、その残留溶剤含有量が0.01重量%以下であり、光弾性係数が4.5×10^(-13)cm^(2)/dynであった。また、保護フィルム2の表面の、線状凹部の深さまたは凸部の高さは、20nm以下であり、かつ幅が800nm以上の範囲であった。」 コ 「【0127】 <製造例6:保護フィルム4の作成> 厚み32μmの脂環式オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製、ゼオノアフィルム、表中COPと表記)の両面に、ポリスチレン樹脂(表中、PSと表記)からなる厚み20μmの単層押出成形フィルムを圧着ラミネートより貼り合せ保護フィルム4を作製した。保護フィルム4は、その透湿度が3.2g/m^(2)・24hであり、その残留溶剤含有量が0.01重量%以下であり、光弾性係数が6.0×10^(-13)cm^(2)/dynであった。また、保護フィルム4の表面の、線状凹部の深さまたは凸部の高さは、20nm以下であり、かつ幅が800nm以上の範囲であった。」 サ 「【0128】 <製造例7:原反フィルム1の作製> ノルボルネン系重合体(商品名:ZEONOR 1420R、日本ゼオン社製、ガラス転移温度:136℃、飽和吸水率:0.01重量%未満)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて110℃で4時間乾燥した。そしてリーフディスク形状のポリマーフィルター(ろ過精度30μm)が設置され、ダイリップの先端部がクロムめっきされた平均表面粗さRa=0.04μmのリップ幅650mmのコートハンガータイプのTダイを有する短軸押出機を用いて、前記ペレットを260℃で溶融押出しして厚み100μm、幅600mmの原反フィルム1を得た。原反フィルム1の、波長550nmにおけるレターデーション値Re(550)は、3nmであった。」 シ 「【0130】 <製造例9:光学異方体C1、C2及びC3の作製> 製造例7で得られた原反フィルム1を、延伸機を使用して、オーブン温度(予熱温度、延伸温度、熱固定温度)140℃、延伸速度6m/分、縦延伸倍率1.5倍と1.3倍で延伸処理を行い、それぞれ光学異方体C1及びC2を得た。得られた光学異方体C1及びC2の波長550nmのレターデーション値Re(550)は、それぞれ、265nm、132.5nmであった。 【0131】 上記の光学異方体C1の片面に、上記の光学異方体C2をアクリル系接着剤(住友スリーエム社製、DP-8005クリア)を介して、それぞれの遅相軸の交差角が59°になるように貼り合わせ光学異方体C3を得た。この光学異方体C3のRe(550)と、波長450nmのレターデーション値Re(450)との比Re(450)/Re(550)は1.005であった。」 ス 「【0135】 <製造例13:偏光子Pの作製> 波長380nmにおける屈折率が1.545、波長780nmにおける屈折率が1.521で、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、2.5倍に一軸延伸し、ヨウ素0.2g/L及びヨウ化カリウム60g/Lを含む30℃の水溶液中に240秒間浸漬し、次いでホウ酸70g/L及びヨウ化カリウム30g/Lを含む水溶液に浸漬すると同時に6.0倍に一軸延伸して5分間保持した。最後に、室温で24時間乾燥し、平均厚さ30μmで、偏光度.99.95%の偏光子Pを得た。 【0136】 <製造例14:ハードコート材料Hの調製> 6官能ウレタンアクリレートオリゴマー30部、ブチルアクリレート40部、イソボロニルメタクリレート30部、および2,2-ジフェニルエタン-1-オン10部を、ホモジナイザーで混合し、五酸化アンチモン微粒子(平均粒子径20nm、水酸基がパイロクロア構造の表面に現れているアンチモン原子に1つの割合で結合している。)の40%メチルイソブチルケトン溶液を、五酸化アンチモン微粒子の重量がハードコート層形成用組成物全固形分の50重量%を占める割合で混合して、ハードコート材料Hを調製した。 【0137】 <製造例15:低屈折率形成用材料Lの調製> 含フッ素モノマーである、フッ化ビニデリン70重量部およびテトラフルオロエチレン30重量部をメチルイソブチルケトンに溶解した。次に、この溶解物に、中空シリカイソプロパノール分散ゾル(触媒化成工業社製、固形分20重量%、平均一次粒子径約35nm、外殻厚み約8nm)を、含フッ素モノマー固形分に対して中空シリカ固形分で30重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(信越化学社製)を前記固形分に対して3重量%、光ラジカル発生剤イルガキュア184(チバ・スペシャリティケミカルズ社製)を前記固形分に対して5重量%添加し、低屈折率形成用材料Lを調製した。」 セ 「【0138】 <実施例1> (反射防止層の形成) 製造例3で得られた保護フィルム1の両面に、高周波発信機(出力0.8KW)を用いてコロナ放電処理を行い、表面張力が0.055N/mの保護フィルム1Aを得た。次に、保護フィルム1Aの片面に、温度25℃、湿度60%RHの環境下で、ダイコーターを用いてハードコート材料Hを塗工し、80℃の乾燥炉の中で5分間乾燥させて被膜を得た。さらに、この皮膜に紫外線を照射(積算照射量300mJ/cm^(2))して、厚さ5μmのハードコート層を形成し、ハードコート層付き保護フィルム1Bを得た。ハードコート層の屈折率は1.62であり、ハードコート層側の鉛筆硬度が4Hを越えるものであった。ハードコート層付き保護フィルム1Bのハードコート層側に、温度25℃、湿度60%RHの環境下でワイヤーバーコーターを用いて低屈折率層形成用材料Lを塗工し、1時間放置して乾燥させ、得られた被膜を120℃で10分間、酸素雰囲気下で熱処理し、次いで出力160W/cm、照射距離60mmの条件で紫外線を照射して厚さ100nmの低屈折率層(屈折率1.37)を形成し、反射防止層付き保護フィルム1Cを得た。」 ソ 「【0140】 (バックライト側偏光板の作製) 偏光子Pの両面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、偏光子Pの一面に、製造例9で得られた光学異方体C3を、偏光子Pの透過軸と光学異方体C3に積層されている光学異方体C1の遅相軸の交差角が15°になり、かつ光学異方体C3のC1側と偏光子Pの偏光子側が接する様に重ね、偏光子Pのもう一方の面に基材フィルム1の一面を向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせバックライト側偏光板BP1を得た。」 (当合議体注:上記「基材フィルム1」は、「保護フィルム1」の誤記であることは、引用文献の記載内容や技術内容からみて明らかであり、「基材フィルム1」を「保護フィルム1」と認定した。) タ 「【0147】 <実施例5> 保護フィルム1に代えて製造例4で得られた保護フィルム2を用い、保護フィルム2のPMMA層の面に、温度25℃、湿度60%RHの環境下で、ダイコーターを用いてハードコート材料Hを塗工し、80℃の乾燥炉の中で5分間乾燥させて被膜を得た。さらに、この皮膜に紫外線を照射(積算照射量300mJ/cm^(2))して、厚さ5μmのハードコート層を形成し、ハードコート層付き保護フィルム2Bを得た。ハードコート層の屈折率は1.62であり、ハードコート層側の鉛筆硬度が4Hであった。ハードコート層付き保護フィルム2Bのハードコート層側に、温度25℃、湿度60%RHの環境下でワイヤーバーコーターを用いて低屈折率層形成用材料Lを塗工し、1時間放置して乾燥させ、得られた被膜を120℃で10分間、酸素雰囲気下で熱処理し、次いで出力160W/cm、照射距離60mmの条件で紫外線を照射して厚さ100nmの低屈折率層(屈折率1.37)を形成し、反射防止層付き保護フィルム2Cを得た。 【0148】 反射防止層付き保護フィルム2Cを用いる以外は、実施例1と同様にして観察者側偏光板FP5を得た。保護フィルム1に代えて製造例4で得られた保護フィルム2を用いる他は、実施例1と同様にしてバックライト側偏光板BP5を得た。そして、観察者側偏光板BP1に代えて観察者側偏光板BP5を用い、バックライト側偏光板BP1に代えてバックライト側偏光板BP5を用いて、液晶表示装置5を得た。」 チ 「【0150】 <比較例1> 保護フィルム1に代えて、製造例6で得られた保護フィルム4を用いる他は、実施例1と同様にして反射防止層付き保護フィルム4Cを得た。反射防止層付き保護フィルム4Cを用いる以外は、実施例1と同様にして観察者側偏光板FP7を得た。保護フィルム1に代えて、保護フィルム4を用いる以外は、実施例1と同様にしてバックライト側偏光板BP7を得た。そして、観察者側偏光板BP1に代えて、観察者側偏光板BP7を用い、バックライト側偏光板BP1に代えてバックライト側偏光板BP7を用いて液晶表示装置7を得た。」 ツ 「【0154】 【表1】 ![]() 」 テ 「【0155】 表1に示すように、実施例1?6の偏光板では、偏光度変化がほとんどなく、干渉縞がなく、密着性、表面硬度(鉛筆硬度)、カール性、打抜き性、および可撓性に優れていることがわかった。また、実施例1?6の液晶表示装置は、コントラストおよび色むらがなく、視認性に優れていることがわかった。従って、高い光学性能を有し、かつ強度に優れることがわかった。 【0156】 これに対して、比較例1の偏光板は、偏光度変化や干渉縞が生じ、密着性に劣り、かつ鉛筆硬度がやや低下していた。また、比較例2の偏光板を用いた液晶表示装置は、コントラストが不十分であり、色むらが生じていた。また、比較例3の偏光板は、打抜き性および可撓性が不十分であった。また、比較例4の偏光板は、偏光度変化や干渉縞が生じ、打抜き性および可撓性が不十分である点で劣っていた。また、この比較例4の偏光板を用いた液晶表示装置は、コントラストが不十分であり、色むらが生じていた。」 (2)引用発明 引用文献3の【0148】には、実施例5として、実施例1のバックライト側偏光板BP1(【0140】)における保護フィルム1に代えて保護フィルム2を用いて得たバックライト側偏光板BP5が記載されていると認められる。 そうしてみると、上記(1)からみて、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、「樹脂層A」及び「樹脂層B」のそれぞれの「引張弾性」の数値は、表1に記載された数値によるものである。また、引用文献3の【0042】及び【0154】の記載からみて、偏光子Pのもう一方の面に貼り合わせられる保護フィルム2の一面は、樹脂層B側と理解される。さらに、【0154】の【表1】には実施例5における樹脂層Aの膜厚が20μmと記載されているが、当該記載は誤記であって正しくは【0125】の記載のとおり、その膜厚は32μmであると認められる。 「 ポリメチルメタクリレート樹脂層(32μm:樹脂層A)-接着層(4μm)-セルロースアセテートブチレート層(44μm:樹脂層B)の2層構成(接着層を除く)からなる、保護フィルム2を得、平均厚さが30μmである偏光子Pの両面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、偏光子Pの一面に、光学異方体C3を偏光子Pの偏光子側が接する様に重ね、偏光子Pのもう一方の面に保護フィルム2の樹脂層B側を向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせた、 樹脂層Aの引張弾性が3.3GPaで、樹脂層Bの引張弾性が1.6GPaである、 バックライト側偏光板BP5。」 2.その他の文献 原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特開2006-301572号公報)の【0426】には、偏光子の厚さを20μmとするという技術的事項が記載されている。また、引用文献5(特開2007-94396号公報)の【0423】にも上記と同様の技術的事項が記載されている。さらに、引用文献6(特許第4804589号公報)の【0015】及び【0041】には、偏光膜の厚さを従来に比べて非常に薄い、3?10μmとするという技術的事項が記載されていると認められる。 そうしてみると、引用文献4-6は、本願発明1における「偏光子の厚みが、25μm以下」という要件を満たす構成とすることが周知技術であることを示す文献であると認められる。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 ア 偏光子を有する偏光板 引用発明の「偏光子P」及び「バックライト側偏光板BP5」は、技術的にみて、本願発明1の「偏光子」及び「偏光板」に相当することは明らかである。 イ ポリマーフィルムと応力緩和層 引用発明は、「偏光子Pのもう一方の面に保護フィルム2の樹脂層B側を向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせた」ものである。また、引用発明は、「樹脂層Aの引張弾性が3.3GPaで、樹脂層Bの引張弾性が1.6GPaである」。 そうしてみると、引用発明は、「偏光子P」、「樹脂層B」及び「樹脂層A」がこの順で形成されたものである。また、引用発明の「樹脂層B」及び「樹脂層A」は、その層順、及び引張弾性値から推測される応力緩和に関する機能からみて、それぞれ、本願発明1の「応力緩和層」及び「ポリマーフィルム」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明1の「前記ポリマーフィルムと前記偏光子との間に応力緩和層を有」するとの要件を満たすものである。また、引用発明は、本願発明1の「ポリマーフィルムと偏光子とを有する偏光板」との要件も満たすものである。 ウ 厚み 引用発明における「樹脂層A」の厚みは32μm、「接着層」は4μm、「樹脂層B」の厚みは44μmであるから、引用発明は、本願発明1の「前記ポリマーフィルムの厚みが10μm以上であり、前記偏光板の前記ポリマーフィルム側の表面から前記ポリマーフィルムと前記応力緩和層との界面までの距離Dsが15μm以上であり、前記距離Dsと、前記ポリマーフィルムの厚みCとの差が15μm未満であり、前記ポリマーフィルムおよび前記応力緩和層の合計の厚みが80μm以下であり、」との要件を満たすものである。 エ 弾性率 引用発明は、「樹脂層Aの引張弾性が3.3GPaで、樹脂層Bの引張弾性が1.6GPaである」。 したがって、引用発明は、本願発明1の「前記応力緩和層の弾性率が1?5GPa」という要件及び「0.01<B/A<0.9」という要件を満たすものである。 (当合議体注:上記「A」はポリマーフィルムの弾性率を表し、「B」は応力緩和層の弾性率を表す。) (2)一致点及び相違点 ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。 【一致点】 「 ポリマーフィルムと偏光子とを有する偏光板であって、 前記ポリマーフィルムと前記偏光子との間に応力緩和層を有し、 前記ポリマーフィルムおよび前記応力緩和層の弾性率が、下記式(1)の関係を満たし、 前記ポリマーフィルムの厚みが10μm以上であり、 前記偏光板の前記ポリマーフィルム側の表面から前記ポリマーフィルムと前記応力緩和層との界面までの距離Dsが15μm以上であり、 前記距離Dsと、前記ポリマーフィルムの厚みCとの差が15μm未満であり、 前記ポリマーフィルムおよび前記応力緩和層の合計の厚みが80μm以下であり、 前記応力緩和層の弾性率が1?5GPaである、偏光板。 0.01<B/A<0.9 ・・・(1) ただし、前記式(1)中、Aは前記ポリマーフィルムの弾性率を表し、Bは前記応力緩和層の弾性率を表す。」 イ 本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。 【相違点1】 本願発明1は「偏光子の厚みが、25μm以下であ」るのに対し、引用発明は「平均厚さ30μmの偏光子P」である点。 【相違点2】 本願発明1は「応力緩和層が、1分子内に2個以上の不飽和二重結合基を有する化合物を含有する組成物から形成されてなる層、または、環状ポリオレフィン系樹脂含有層である」のに対し、引用発明における「樹脂層B」は「 セルロースアセテートブチレート」である点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 引用文献3の【0007】には、その発明の目的は、十分な強度を有するとともに高温・高湿度環境下においても寸法変化のない偏光板を提供することにあることが記載されている。そして、引用文献3の【0016】には、この目的を達成するために保護フィルムの透湿度を10?200g/m^(2)・24hとすることが記載され、【0017】には、このような保護フィルムの例として、少なくとも1層が親水性樹脂層であって親水性樹脂層以外の他の層が熱可塑性樹脂からなる層の積層体とすることが記載されている。さらに、【0018】-【0021】には、親水性樹脂層を構成する高分子化合物としては、セルロースエステル類等のセルロースエステル誘導体が好ましく、セルロースエステル類の一例として、セルロースアセテートブチレートが挙げられている。また、【0034】には、親水性樹脂層以外の他の層に用いられる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂や脂環式オレフィンポリマーが挙げられている。 ここで、引用発明は、「樹脂層A」及び「樹脂層B」をそれぞれ「ポリメチルメタクリレート」及び「セルロースアセテートブチレート」で形成したものであるから、上記記載に基づけば、前者と後者のそれぞれを熱可塑性樹脂層と親水性樹脂層として形成した積層体を用いてなる、上記目的を達成する発明を具現化した実施例であると認められる。 そうしてみると、「樹脂層B」を構成する樹脂として、親水性樹脂であるセルロースアセテートブチレートに代えて、脂環式オレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂を用いることは当業者であっても容易に想到し得ないことである。仮に、セルロースアセテートブチレートに代えて、脂環式オレフィンポリマーを用いて「樹脂層B」を形成した場合には、保護フィルムは親水性樹脂層を有しないことから、引用文献3に記載の比較例1のように透湿度が低くなり、「保護フィルムの透湿度を10?200g/m^(2)・24hとする」という要件を満たさないものとなると認められ、引用発明において、セルロースアセテートブチレートに代えて、脂環式オレフィンポリマーを用いることには阻害要因がある。 したがって、本願発明1は、上記相違点1について判断するまでもなく、当業者であっても引用発明、原査定において引用された引用文献4-6に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-7について 本願発明2-7も、本願発明1の「偏光板」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、原査定において引用された引用文献4-6に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 1.理由2(特許法29条2項)について 審判請求時の補正により、本願発明1-7は「応力緩和層が、1分子内に2個以上の不飽和二重結合基を有する化合物を含有する組成物から形成されてなる層、または、環状ポリオレフィン系樹脂含有層である」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、原査定において引用された引用文献3-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-05-28 |
出願番号 | 特願2015-83060(P2015-83060) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 裕勝、後藤 亮治 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 川村 大輔 |
発明の名称 | 偏光板ならびに画像表示装置および液晶表示装置 |
代理人 | 伊東 秀明 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 渡辺 望稔 |
代理人 | 三橋 史生 |