• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1340720
審判番号 不服2016-16591  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-07 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 特願2013- 84505「太陽電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日出願公開、特開2014-207344〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月15日に特許出願された特願2013-84505号であって、平成28年1月27日付けで拒絶理由が通知され、同年3月30日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年7月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において、平成29年11月16日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年1月17日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年1月17日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項において、誤記を修正して特定される次のとおりのものと認める。
「(A)基板の第一の主面に、太陽電池積層膜を形成する工程と、
(B)前記太陽電池積層膜と電気的に接続され、当該太陽電池積層膜で発電した電気を集電する集電電極を、前記第一の主面側に形成する工程と、
(C)前記集電電極で集電した電気を引き出す引出線を、前記太陽電池積層膜と直接接続させることなく、当該集電電極から引き回し、前記基板の端辺部に沿って、前記基板の第二の主面上に直接配置させる工程と、
(D)前記引出線に対して超音波接合処理を施すことにより、前記基板の前記第二の主面に前記引出線を固着させる工程とを、備えている、
ことを特徴とする太陽電池の製造方法。」
(当審注;下線は請求項1の記載において誤記を修正した箇所である。)
なお、請求項1には「発電した光を集電する」と記載されているが、技術常識から「発電」するもの及び「集電」するものは「光」ではなく「電気」であること、及び、請求項1の(C)においては「前記集電電極で集電した電気」と特定していることから、「発電した光を集電する」は「発電した電気を集電する」の誤記と認める。また、請求項1には「前記太陽電池薄膜層」と記載されているが、「前記」に「太陽電池薄膜層」の記載は見当たらず、「前記太陽電池薄膜層」は「前記太陽電池積層膜」の誤記と認める。よって、本願発明を上記のように認定した。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-4280号公報
引用文献2:特開2011-9261号公報
引用文献3:特開2012-134210号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献1(特開2012-4280号公報)には次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合法を用いた部材接合方法に関するものであり、特に、太陽電池で用いられる導電性部材の接合処理の際に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽電池として、薄膜太陽電池が利用されている。当該太陽電池は、一般的に複数の太陽電池セルが直列に接続されて構成されている。
【0003】
また、当該構成において、各太陽電池セルで発電した電気は、基板の端辺部に形成された集電電極(バスバー)にて集電され、当該集電された電気は、引出線から取り出される。
【0004】
当該集電電極と当該引出線との接合のように、導電体同士の接合には従来、半田など他の導電性部材を介してなされることが一般的であった。たとえば、太陽電池の分野において、裏面電極層とバスバー(集電電極)とを、他の導電性部材を介して接合する先行文献が存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-314104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような半田付けによる導電体同士の接合を採用した場合には、接合強度が低い、接合部における電気抵抗の上昇などの問題が発生する。また、加熱方式による半田付け工程では、半田ごてをほぼ常時加熱状態にしておく必要があり、省エネルギーに反する。さらに、半田ごてによる半田付け処理では比較的長い処理時間を要するので、接合処理の効率化が図れないという問題も存在する。
【0007】
そこで、本発明は、高い接合力および接合部の低抵抗を図ることができ、さらには、省エネルギーおよび高効率処理である、部材接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る部材接合方法は、太陽電池における部材接合方法であって、(A)表面電極層、発電層、裏面電極層および保護膜が当該順に積層されている基板を用意する工程と、(B)前記積層状態にある前記保護膜の所定の位置に、集電電極を配置する工程と、(C)前記工程(B)の後、超音波接合により、前記集電電極を、前記発電層の上面から前記表面電極層の下面までの何れかの位置に到達させる工程とを、備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る部材接合方法は、(A)表面電極層、発電層、裏面電極層および保護膜が当該順に積層されている基板を用意する工程と、(B)前記積層状態にある前記保護膜の所定の位置に、集電電極を配置する工程と、(C)前記工程(B)の後、超音波接合により、前記集電電極を、前記発電層の上面から前記表面電極層の下面までの何れかの位置に到達させる工程とを、備えている。
【0010】
したがって、当該超音波接合処理では、集電電極と発電層(または表面電極層)とは、原子レベルの拡散領域を有する金属間での接合となる。したがって、半田付け接合の場合よりも、接合力が増すことができ、集電電極の剥離を抑制することができる。つまり、集電電極の接合の信頼性を向上させることができる。
【0011】
また、超音波接合処理では、半田のような介在部材が存在しない。したがって、接合部における低抵抗を実現することができる。
【0012】
さらに、集電電極を発電層(または表面電極層)に接合するに際して、事前に、保護膜および裏面電極層の該当箇所をはつる必要も無いので、集電電極の接合処理が簡略化できる。
【0013】
また、超音波接合処理では、非常に短い期間だけ超音波振動を印加するだけで済む。したがって、半田ごてを常時加熱しておくようなエネルギーの無駄を、本発明では防止できる。」
イ「【0017】
<実施の形態1>
本実施の形態では、薄膜シリコン太陽電池に配設される集電電極に対して、超音波振動接合を施す場合に言及する。
【0018】
まず、透明性を有する基板1(以下では、ガラス基板1とする)を用意する。そして、当該ガラス基板1上に、表面電極層2、発電層3および裏面電極層4を各々、所定のパターン形状にて形成する。そして、ガラス基板1上に形成された各部材2,3,4を覆うように、保護膜5を成膜する。当該工程までにより、薄膜シリコン太陽電池の基本構成が作成される。
【0019】
図1は、上記工程により作成された薄膜シリコン太陽電池の基本構成を示す平面図である。また、図2は、図1のA-A断面を示す断面図である。なお、図2の断面図では、図面簡略化のため、保護膜5の図示を省略している。
【0020】
図1,2から分かるように、表面電極層2、発電層3および裏面電極層4は各々、ストライプ状に形成されている。また、図2に示すように、表面電極層2、発電層3および裏面電極層4が当該順に積層している積層構造により、単位太陽電池セルP1が構成されている。各単位太陽電池セルP1において、表面電極層2および裏面電極層4はそれぞれ、発電層3と電気的に接続されている。
【0021】
また、図2に示すように、一方の単位太陽電池セルP1を構成する発電層3および裏面電極層4は各々、他方の単位太陽電池セルP1を構成する表面電極層2と電気的に接続している。ここで、他方の単位太陽電池セルP1とは、一方の単位太陽電池セルP1に隣接する単位太陽電池セルである。
【0022】
当該構成から分かるように、図2に示すように、複数の単位太陽電池セルP1が、図2の左右方向に、直接に電気接続されている。なお、図2に示すように、保護膜5は、当該直列に接続された複数の単位太陽電池セルP1を、完全に覆っている。
【0023】
ここで、ガラス基板1の厚さは、4mm程度以下の薄膜基板である。また、表面電極層2は、透明性を有する導電膜から成り、たとえばZnO、ITOあるいはSnO_(2)が採用できる。当該表面電極層2の厚さは、たとえば数十nm程度である。
【0024】
また、発電層3では、ガラス基板1および表面電極層2を介して入射された光を、電気に変換することができる光電変換層である。当該発電層3は、膜厚が数μm程度(たとえば、3μm以下)の薄膜層である。また、当該発電層3は、シリコンから構成されている。
【0025】
また、発電層3は、アモルファスシリコン層の単一層のみで構成されている。或いは、当該発電層3は、アモルファスシリコン層と微結晶シリコン層とが、複数層に積層されている積層体であっても良い。
【0026】
また、裏面電極層4は、たとえば銀を含む導電膜を採用できる。当該裏面電極層4の厚さは、たとえば、数十nm程度である。また、保護膜5は、たとえばTiを含む膜を採用できる。当該保護膜5は、ガラス基板1上に形成されている構成部材2,3,4を完全に覆うことができる程度の厚さである。なお、裏面電極層4上における保護膜5の膜厚は、数十nm程度でも良い。また、保護膜5は、ガラス基板1から入射した光の反射防止膜としても機能させても良い。
【0027】
さて、上記積層構造の複数の単位太陽電池セルP1を形成した後、次に、当該積層状態にある保護膜5の所定の位置に、集電電極6を配置する。
【0028】
図1,2に示すように、図面左右端辺部には各々、ガラス基板1上に、表面電極層2、発電層3、裏面電極層4および保護膜5の積層構造が存在する。当該積層構造の保護膜5の上面に、所定の幅を有する線状の集電電極6を配置する。当該集電電極6を配置した様子を、図3,4に示す。図3は、平面図であり、図4は、図3のB-B断面を示す断面図である。
【0029】
当該集電電極6として、アルミニウムを含む線材を採用できる。また、当該集電電極6の線幅(図3,4の左右方向の寸法)は、たとえば4mm程度であり、当該集電電極6の厚さは、たとえば0.1mm程度である。さらに、図3,4から分かるように、集電電極6の延設方向は、裏面電極層4、発電層3および表面電極層2の延設方向と、平行である。
【0030】
図3,4に示すように集電電極6を保護膜5の所定位置に配置させた後に、当該集電電極6の上面に対して、スポット的に、超音波接合法を施す。超音波振動接合は、所定の形状のチップを有する接合ツールを用いて、実施される。
【0031】
具体的に、前記チップを集電電極6の上面に当接し、当該当接方向に所定の圧力を印加する。そして、当該圧力印加状態で、水平方向(圧力印加方向に垂直な方向)に、当該チップを超音波振動させる。これにより、集電電極6を、発電層3の上面から表面電極層2の下面までの何れかの位置に到達(つまり、集電電極6は、保護膜5および裏面電極層4を貫通し、ガラス基板1の上面には接触していない)させることができ、集電電極6は、電極層3または表面電極層2と接合する。」
ウ「【0047】
<実施の形態2>
実施の形態1で説明した集電電極6は、バスバー電極として機能する。当該集電電極6で集電された電気は、外部に存するジャンクションボックス(ターミナルボックス)などに供給する必要がある。したがって、集電電極6とジャンクションボックスなどに配設された外部端子とを電気的に接続する、引出線の配設が必要となる。当該引出線は、集電電極6から電力を引き出し、外部端子へと当該引き出した電気を供給する。
【0048】
本実施の形態では、当該引出線の配設方法、具体的に集電電極6と引出線との接合について説明する。なお、引出線としては、アルミニウム、銅または半田ディップ銅線などが採用できる。また、以下の説明では、引出線は、銅を含む線材を採用する場合について説明する。
【0049】
まず、図1,2で示した構造を有するガラス基板1を用意する。そして、図10に示すように、後述する引出線12が配設されることとなる保護膜5上の位置に、絶縁テープ11を接着する。当該絶縁テープ11は、保護膜5と引出線12との電気的絶縁の目的で使用される。図10に示すように、絶縁テープ11は、保護膜5上のX軸の略中央部において、図示したY方向に沿って、2箇所に配設される。
【0050】
次に、図11に示すように、絶縁テープ11上に各々、引出線12を配置させ、絶縁テープ11に引出線12を接着させる。ここで、引出線12の線幅は、絶縁テープ11の線幅より小さく、図示したX方向において引出線12は、絶縁テープ11内に納まっている。また、図11に示すように、引出線12は、絶縁テープ11と同様、図示したY方向に配設されるが、ガラス基板1の両端辺部E1,E2側において、引出線12の一方端部の集電電極6と接合する部分が、(若干)、絶縁テープ11からはみ出している。
【0051】
また、図11に示すように、引出線12の他方端部12Pは、絶縁テープ11内に納まっている。さらに、当該他方端部12Pは、図12に示すように、保護膜5の主面に対して垂直方向に、立ち上げられる。当該立ち上がっている部分の他方端部12Pが、外部端子と接続される。
【0052】
なお、引出線12の線幅は、たとえば2?4mm程度であり、当該引出線12の厚みは、たとえば0.1?0.2mm程度である。
【0053】
次に、図13に示すように、引出線12のはみ出している一方端部を覆うように、上記端辺部E1,E2において、実施の形態1で説明した線状の集電電極6を配置させる。図13に示すように、集電電極6は、図示したX方向に沿って延設される。ここで、当該集電電極6の配置位置は、実施の形態1と同様に、ガラス基板1の両端辺部に形成されている積層構造2,3,4,5上であり、表面電極層2、発電層3および裏面電極層4の延設方向と平行である。」
エ「【0062】
以上のように、本実施の形態では、超音波接合により、集電電極6と引出線12とを接合する工程も、備えている。これにより、集電電極6と引出線12との接合強度が増すと共に、当該接合における電気抵抗も小さくできる。
【0063】
なお、引出線12としてアルミニウムを含む線材など、超音波接合に優れている部材を採用する場合には、引出線12を集電電極6の下に潜り込ませる必要はない。つまり、集電電極6上に引出線12の一方端を配置させ、引出線12上から超音波振動を印加すれば良い。
【0064】
また、上記説明では、引出線12(絶縁テープ11も同様)が、ガラス基板1の略中央部において、Y軸方向に沿って配設する場合に言及した。これに対して、図15に示すような引出線12(絶縁テープ11も同様)の配置を、採用しても良い。図15の例では、集電電極6の端部付近において、図示したY軸方向に延設された引出線12の一方端部が、当該集電電極6と接合される。」
オ「【図1】


カ「【図2】


キ「【図3】


ク「【図4】


ケ「【図10】


コ「【図11】


サ「【図13】


シ「【図15】



(2)引用文献1に記載された発明
上記「(1)」の「ケ」(【図10】)、「コ」(【図11】)、「サ」(【図13】)及び「シ」(【図15】)から、「ウ」の【0050】における「X方向」及び「Y方向」が、それぞれ、「基板の長辺方向」及び「基板の短辺方向」であることがわかる。
よって、上記「(1)」の「ア」?「シ」に摘記した記載事項を総合すると、引用文献1には、
「太陽電池で用いられる導電性部材の超音波接合法を用いた部材接合方法に関するものであって、
透明性を有するガラス基板1を用意し、当該ガラス基板1上に、表面電極層2、発電層3および裏面電極層4を各々、所定のパターン形状にて形成し、ガラス基板1上に形成された各部材2,3,4を覆うように、保護膜5を成膜し、
集電電極6を保護膜5の所定位置に配置させた後に、当該集電電極6の上面に対して、スポット的に、超音波接合法を施し、
これにより、集電電極6を、発電層3の上面から表面電極層2の下面までの何れかの位置に到達(つまり、集電電極6は、保護膜5および裏面電極層4を貫通し、ガラス基板1の上面には接触していない)させることができ、集電電極6は、電極層3または表面電極層2と接合し、
後述する引出線12が配設されることとなる保護膜5上の位置に、絶縁テープ11を接着し、当該絶縁テープ11は、保護膜5と引出線12との電気的絶縁の目的で使用され、絶縁テープ11上に各々、引出線12を配置させ、絶縁テープ11に引出線12を接着させ、ここで、引出線12の線幅は、絶縁テープ11の線幅より小さく、基板の長辺方向において引出線12は、絶縁テープ11内に納まっており、また、引出線12は、絶縁テープ11と同様、基板の短辺方向に配設されるが、ガラス基板1の両端辺部E1,E2側において、引出線12の一方端部の集電電極6と接合する部分が、(若干)、絶縁テープ11からはみ出しており、
上記の引出線12は、集電電極6の端部付近において、基板の短辺方向に延設された引出線12の一方端部が、当該集電電極6と接合され、
上記の接合は、超音波接合により、集電電極6と引出線12とを接合するものである、
太陽電池で用いられる導電性部材の超音波接合法を用いた部材接合方法。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2及び3の記載事項及び周知技術
(1)引用文献2の記載事項
当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献2(特開2011-9261号公報)には次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
ア「【技術分野】
【0001】
この発明は、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置に関する発明であり、たとえば、薄厚の基体上に導電性を有するリード線を超音波振動接合する場合に適用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、たとえばワイヤーハーネスにおける中間ジョイント接合の方法として、加圧式超音波振動接合が採用されている。当該加圧式超音波振動接合では、所定の部材にワークを配置し、当該ワークに対して押圧しながらの超音波振動を印加する。当該押圧と超音波振動とのエネルギーにより、ワークは所定の部材と強力に接合される。
【0003】
また、半導体の分野においても、電子部品を実装する際に加圧式超音波振動接合技術が採用されることもある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-6570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、たとえば2mm以下の薄厚のガラスのような基体に対して、そのガラス基体にクラックなどの損傷を与えずに、薄膜の導電性を有するリード線を接合する要請が高まってきている。当該接合の方法として、半田やペーストを利用した方法も考えられるが、簡易な接合方法、コスト低減、省エネルギーや常温での接合の観点から、加圧式超音波振動接合が採用されることが期待される。
【0006】
しかしながら、たとえば、基体に対してリード線を配置し、当該リード線に圧力を加えながら超音波振動を印加すると、接合力バラツキが生じたり、接合力の低下が生じたり、接合までの時間に長時間を要するなどの弊害が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、薄厚の基体に対してリード線を接合する際に加圧式超音波振動接合を利用したとしても、接合力バラツキを抑制し、接合力の低下を防止し、さらに結合までの時間を短時間とすることができる、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の加圧式超音波振動接合方法は、(A)薄厚の基体を所定のテーブルに設置する工程と、(B)前記基体上に、導電性のリード線を配置させる工程と、(C)前記所定テーブル側に圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加することにより、前記基体に前記リード線を接合する工程とを、備えており、前記工程(C)は、前記リード線に対する前記圧力を少なくとも2段階で増加させる工程である。」
イ「【0021】
なお、基体11は、セラミック、シリコン、ガラスやエポキシなどの薄厚(2mm以下)の部材である。または、基体11は、これらの部材上(所定のテーブル10への非載置側上)に所定の薄膜が形成された部材である。また、基体11に加圧式超音波接合されるリード線12は、たとえばアルミニウムや銅などの薄膜(100μm程度)の部材であり、所定の線幅(図1のx方向の幅)を有する線状の形状を有する。」

(2)引用文献3の記載事項
当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献3(特開2012-134210号公報)には次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
ア「【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法に関するものであり、より具体的には、結晶シリコン系太陽電池の製造方法に関するものである。」
イ「【0046】
また、タブ配線5および集電電極8がアルミニウムから構成される場合には、これらの部材5,8とガラス基板8との接合には、超音波振動接合処理が実行される。
【0047】
当該超音波振動接合処理では、はんだ付け接合程の高温が、ガラス基板6、タブ配線5および集電電極8には印加しない。したがって、熱的ダメージを回避して、太陽電池モジュールを完成させることができる。」

(3)引用文献2,3に記載の事項から認められる周知技術
引用文献2,3の上記記載事項から、「ガラス基板に導電性の配線部材を超音波接合すること」は、周知の技術であるといえる。

第5 本願発明と引用発明の対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「透明性を有するガラス基板1を用意し、当該ガラス基板1上に、表面電極層2、発電層3および裏面電極層4を各々、所定のパターン形状にて形成し、ガラス基板1上に形成された各部材2,3,4を覆うように、保護膜5を成膜」する工程が、本願発明の「基板の第一の主面に、太陽電池積層膜を形成する工程」に相当する。

(2)引用発明の「集電電極6を保護膜5の所定位置に配置させた後に、当該集電電極6の上面に対して、スポット的に、超音波接合法を施し、これにより、集電電極6を、発電層3の上面から表面電極層2の下面までの何れかの位置に到達(つまり、集電電極6は、保護膜5および裏面電極層4を貫通し、ガラス基板1の上面には接触していない)させることができ、集電電極6は、電極層3または表面電極層2と接合」する工程が、本願発明の「前記太陽電池積層膜と電気的に接続され、当該太陽電池積層膜で発電した電気を集電する集電電極を、前記第一の主面側に形成する工程」に相当する。

(3)引用発明の「後述する引出線12が配設されることとなる保護膜5上の位置に、絶縁テープ11を接着し、当該絶縁テープ11は、保護膜5と引出線12との電気的絶縁の目的で使用され、絶縁テープ11上に各々、引出線12を配置させ」、「ここで、引出線12の線幅は、絶縁テープ11の線幅より小さく、基板の長辺方向において引出線12は、絶縁テープ11内に納まっており、また、引出線12は、絶縁テープ11と同様、基板の短辺方向に配設されるが、ガラス基板1の両端辺部E1,E2側において、引出線12の一方端部の集電電極6と接合する部分が、(若干)、絶縁テープ11からはみ出しており」、「上記の引出線12は、集電電極6の端部付近において、基板の短辺方向に延設された引出線12の一方端部が、当該集電電極6と接合される」工程と、
本願発明の「前記集電電極で集電した電気を引き出す引出線を、前記太陽電池積層膜と直接接続させることなく、当該集電電極から引き回し、前記基板の端辺部に沿って、前記基板の第二の主面上に直接配置させる工程」とは、「前記集電電極で集電した電気を引き出す引出線を、前記太陽電池積層膜と直接接続させることなく、当該集電電極から引き出し、前記基板の端辺部に沿って配置させる工程」である点で一致する。

(4)引用発明の「絶縁テープ11に引出線12を接着させ」る工程及び「超音波接合により、集電電極6と引出線12とを接合する」工程と、本願発明の「前記引出線に対して超音波接合処理を施すことにより、前記基板の前記第二の主面に前記引出線を固着させる工程」とは、「引き出し線を基板の固定位置に配置させる」工程である点で一致する。

(5)引用発明の「太陽電池で用いられる導電性部材の超音波接合法を用いた部材接合方法」が、本願発明の「太陽電池の製造方法」に相当する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明は、
「基板の第一の主面に、太陽電池積層膜を形成する工程と、
前記太陽電池積層膜と電気的に接続され、当該太陽電池積層膜で発電した電気を集電する集電電極を、前記第一の主面側に形成する工程と、
前記集電電極で集電した電気を引き出す引出線を、前記太陽電池積層膜と直接接続させることなく、当該集電電極から引き出し、前記基板の端辺部に沿って配置させる工程と、
引き出し線を基板の固定位置に配置させる工程と、を備えている太陽電池の製造方法。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

3 相違点
(1)相違点1
引出線を引き出す態様、及び、配置させる場所が、本願発明では「引き回して、基板の第二の主面上に直接接続」するものであるのに対し、引用発明ではその点の特定がない点。

(2)相違点2
引き出し線を基板の固定位置に配置させる場所及び態様が、本願発明においては「基板の第二の主面に超音波接合処理を施すことにより固着」して固定位置に配置させるものであるのに対し、引用発明においては、「保護膜上に配置された絶縁テープに接着すること」及び「集電電極6に超音波接合により接合すること」によりの固定位置に配置させるするものである点。

第6 当審の判断
1 相違点についての検討
上記の各相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願明細書の発明の詳細な説明における

「【0017】
ここで、ガラス基板1の第一の主面上に形成された、表面電極層2、発電層3および裏面電極層4が当該順に積層して成る積層構造(なお、保護膜も形成されている場合には、当該保護膜も含む)の全体を、太陽電池積層膜と称することとする。
【0018】
また、ガラス基板1は、第一の主面と、当該第一の主面と対向する第二の主面を有するが、ここでは、ガラス基板1の第二の主面側から光が入射するタイプの太陽電池について説明を行う。」

の記載から、本願発明は、ガラス基板1の太陽電池積層膜が形成された第一の主面と対向する第二の主面側から光が入射するタイプのものを含むものである。
上記の第二の主面から光が入射するタイプにおいて、引出線や端子ボックスを、第二の主面(受光面)側の端部や空きスペース(非発光領域)に設けることも、第一の主面(受光面と反対の面)側に設けることも周知である(例えば、特開2001-332756号公報、特開2011-176139号公報参照)。
よって、引出線や端子ボックスをどちらに設けるかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項にすぎないから、第二の主面側に設けて、上記相違点1における本願発明の如くに構成することに格別の困難性は認められない。

(2)相違点2について
相違点2の「超音波接合」については、
a 超音波接合は、はんだや接着剤等の他の部材を付加する必要がないものであって、コスト低減、省エネ、常温で処理可能などの特徴を有していることは周知の技術事項である。
b ガラス基板に金属等の導電性の配線部材を超音波接合することができることは、引用文献2,3にも記載されているように周知技術である。
また、太陽電池の発光層(半導体層)に関して、
c 太陽電池の基板の端部には半導体層を配設しないことは一般に慣行されている当業者の技術常識であるといえる(この点については本願明細書の【0065】の記載も参照)。
以下においては、上記のa?cの周知技術を踏まえて判断する。
まず、上記相違点1の検討において、引出線や端子ボックスを、基板の第二の主面上に直接接続する構成を採用した際に、ガラス基板である基板の第二の主面に引出線をどのように固着するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項であり、引出線を基板の第二の主面に引き回して基板の第二の主面上に直接接続することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引出線を基板の第二の主面に引き回して、基板の第二の主面上に直接接続する構成を採用した際に、
(ア)基板の第二の主面上においては、「保護膜5と引出線12との電気的絶縁の目的で使用され」ていた「絶縁テープ11」は不要となること、
(イ)引用発明は、引用文献1の【0006】及び【0010】?【0013】段落(上記「第4」「1」「(1)」「ア」参照)の記載から、高効率化、高信頼化等のため、はんだ接合を超音波接合に替えようととするもであること、
(ウ)引用発明において、端子ボックスや引出線を受光面である第二の主面に設ける際に、引出線を上記cで述べた半導体層が配設されていない太陽電池の基板の端部に配置することによって、引き回した引出線が光の受光面積を減ずるという阻害要因の発生をなくすることができ、そして、そのような引出線の配置は、当業者が当然に考慮することであること、
を勘案して、当業者の必要に応じた適宜の選択により、上記a,bで特徴付けられた周知の超音波接合の技術を採用し、超音波接合処理を施すことにより固着するとして、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることに格別の困難性は認められない。

2 本願発明が奏する作用効果
本願発明が奏し得る作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。

3 小活
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 結び
以上より、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-20 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-11 
出願番号 特願2013-84505(P2013-84505)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦清水 靖記河村 麻梨子  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 森林 克郎
野村 伸雄
発明の名称 太陽電池の製造方法  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ