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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1340734
審判番号 不服2017-19557  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-28 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 特願2016-130583「再帰性反射性テープ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日出願公開、特開2018- 4899〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成28年6月30日の出願であって、同年8月25日に手続補正がなされ、同年11月30日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年2月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年4月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年7月7日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「被着体に貼付又は縫い合わせて使用される再帰性反射性テープであって、
基材層上に再帰性反射性領域が部分的に設けられており、
前記再帰性反射性領域が、
固着樹脂層と、
前記固着樹脂層に埋設された透明性微小球と、
前記透明性微小球と前記固着樹脂層の間に設けられた金属膜からなる反射層と、を有する領域であり、
前記透明性微小球の屈折率が1.6?2.5であり、且つ
前記透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で前記固着樹脂層に埋設されており、
前記基材層が、固着樹脂層の透明性微小球が埋設されていない面側に設けられた支持基材であり、
前記透明性微小球の入射光側が表面に露出している、再帰性反射性テープ。」

3 拒絶査定の拒絶の理由の概要
(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし8
・引用文献1ないし3
引用文献1に記載された発明において、引用文献2及び3に記載の「基材上に再帰反射性領域が部分的に設けられる」周知技術を採用することは、当業者にとって容易である。

<引用文献等一覧>
1.特開2015-191144号公報
2.特表2005-534979号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2004-252116号公報(周知技術を示す文献)

4 引用例の記載事項
(1)拒絶査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-191144号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同じ。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
固着樹脂層と、
前記固着樹脂層に埋設された透明性微小球と、
前記透明性微小球と前記固着樹脂層の間に設けられた反射層と、を備え、
前記透明性微小球の屈折率が1.6?2.5であり、且つ
前記透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で空気中に露出していることを特徴とする、再帰性反射性材料。
【請求項2】
前記透明性微小球の平均粒径が30?200μmである、請求項1に記載の再帰性反射性材料。
【請求項3】
前記透明性微小球の平均粒径が40?120μmである、請求項1又は2に記載の再帰性反射性材料。
【請求項4】
前記透明性微小球が前記反射層に接面した状態で埋没されている、請求項1?3のいずれか1項に記載の再帰性反射性材料。
【請求項5】
前記透明性微小球と前記反射層の間に透明樹脂層が設けられている、請求項1?3のいずれか1項に記載の再帰性反射性材料。
【請求項6】
JISZ9117(2010)に記載の方法に準じ、観測角0.2°の条件で測定される、入射角が60°の入射光に対する再帰反射性能が100cd/lx/m^(2)以上である、請求項1?5のいずれか1項に記載の再帰反射材料。
【請求項7】
前記固着樹脂層が支持体に保持されている、請求項1?5のいずれか1項に記載の再帰性反射性材料。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を再帰反射させる再帰性反射性材料に関する。より具体的には、本発明は、入射角が大きい入射光に対しても高い反射輝度を示し、広角な入射角の入射光に対しても優れた再帰反射性能を備える再帰性反射性材料に関する。」

ウ 「【背景技術】
【0002】
従来、交通標識等の表示用や海難器具の識別用として、特に夜間の視認性を高めるため、入射光を再帰反射させる再帰性反射性材料が広く用いられている。また、夜間に作業する人々の安全確保の観点から、警察、消防、土建工事関係者等の安全衣料として、安全服、保安ベスト、たすき、腕章、救命胴衣等にも、再帰性反射性材料が広く利用されている。更に、近年では、生活安全意識の高まりや装飾性の多様化に伴って、夜間の交通事故防止対策として、ウィンドブレーカー、トレーニングウェアー、Tシャツ、スポーツシューズ、水着等のアパレルに使用されたり、装飾用途でバッグやスーツケース等にも使用されている。
【0003】
一般的な再帰性反射材料は、反射層上に透明性微小球を付設した構造を備えており、透明性微小球を介して入射した光が反射層で反射し、透明性微小球を介して光を出射することによって光を再帰反射させている。このような構造の再帰性反射材料において、反射輝度や反射する光の色調を調整するために、前記反射層と透明性微小球の間に透明樹脂層が設けられることもある。また、従来の再帰性反射材料は、透明性微小球の埋設態様に応じて、オープンタイプ、クローズタイプ、及びカプセルタイプの3つに大別される。オープンタイプでは、透明性微小球の一部が空気中に露出した形で存在している(例えば、特許文献1参照)。また、クローズタイプでは、透明性微小球の表面(反射層とは反対側に位置する表面)が樹脂層で覆われ状態で存在している(例えば、特許文献2参照)。更に、カプセルタイプでは、透明性微小球の表面(反射層とは反対側に位置する表面)に空間があり、その空間の上に樹脂層が存在している(例えば、特許文献3参照)。これらのタイプの中でも、オープンタイプの再帰性反射材料は、反射輝度が高く、柔軟性もあるという特性を備えており、衣類分野で広く使用されている。
【0004】
一方、従来のオープンタイプの再帰性反射材料では、正面から入射される光(即ち、入射角が小さい入射光)に対しては十分な反射性能を示すものの、斜め方向から入射される光(即ち、入射角が大きい入射光)に対しては反射性能が低く、反射輝度が弱くなって視認性が不十分になるという欠点がある。
【0005】
近年、安全性や装飾性の向上に対する要望は枚挙に暇がなく、これらの要望に追従するために、オープンタイプの再帰性反射材料において、広角な入射角の入射光に対する再帰反射性能を向上させる技術の開発が切望されている。」

エ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、入射角が大きい入射光に対しても高い反射輝度を示し、広角な入射角の入射光に対しても優れた再帰反射性能を備える再帰性反射性材料を提供するである。」

オ 「【発明の効果】
【0010】
本発明の再帰性反射性材料は、入射角が60°程度の入射光に対しても高い反射輝度を示すことができ、広角な入射角に対して優れた再帰反射性能を備えており、視認性や装飾性が格段に向上しているので、安全衣料、アパレル、バッグ、スーツケース、シューズ等の様々な分野において、安全性や装飾性を付与する目的で使用することができる。」

カ 「【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の再帰性反射性材料は、前記固着樹脂層に埋設された透明性微小球と、前記透明性微小球と前記固着樹脂層の間に設けられた反射層と、を備え、前記透明性微小球の屈折率が1.6?2.5であり、且つ前記透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で空気中に露出していることを特徴とする。以下、本発明の再帰性反射性材料について詳述する。
・・・略・・・
【0018】
反射層
反射層は、透明性微小球と前記固着樹脂層の間に設けられ、透明性微小球から入射する光を回帰反射させる機能を果たす。
【0019】
反射層は、透明性微小球から入射する光を回帰反射可能であることを限度として、その構成素材については特に制限されないが、金属膜であることが好ましい。金属膜を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、チタン、亜鉛、シリカ、錫、ニッケル、銀等が挙げられる。これらの金属の中でも、より一層優れた再帰反射性能を備えさせるという観点から、好ましくはアルミニウムが挙げられる。
【0020】
反射層の厚みについては、特に制限されないが、例えば100?2000Å、好ましくは600?1000Åが挙げられる。
【0021】
透明樹脂層
透明樹脂層は、透明性微小球と前記反射層の間に、必要に応じて設けられる層である。即ち、本発明の再帰性反射材において、透明樹脂層は設けてなくても、また設けていてもよい。本発明の再帰性反射材料の断面構造の例として、透明樹脂層が設けられていない場合を図1に、透明樹脂層が設けられている場合を図2に示す。透明性樹脂層を設けることによって、反射輝度を調整したり、出射される光の色調を変化させたりすることが可能になる。また、反射層が金属膜の場合には、透明樹脂層によって該反射層がより腐食しにくくなる。
・・・略・・・
【0024】
また、透明樹脂層において、透明微小球と接しない面(即ち、空気中に露出している面)は、必要に応じて、絵柄、文字柄等の装飾が施されていてもよい。
・・・略・・・
【0026】
透明性微小球
透明性微小球は、前記反射層を介して前記固着樹脂層に埋設され、入射光と、前記反射層で回帰反射された出射光を透過させる機能を果たす。前記透明性樹脂層を設けない場合は、透明性微小球は、前記反射層に接面した状態で埋設して存在する(図1参照)。また、前記透明性樹脂層を設ける場合は、透明性微小球は、前記透明性樹脂層に接面した状態で埋設して存在する(図2参照)。
【0027】
本発明において、透明性微小球は、屈折率が1.6?2.5のものを使用する。このような屈折率を有する透明性微小球を使用することによって、反射層に焦点を合わせて優れた再帰反射性能を備えさせることができる。より一層優れた再帰反射性能を備えさせるという観点から、透明性微小球の屈折率として、好ましくは1.8?2.2、更に好ましくは1.9?2.1が挙げられる。
【0028】
透明性微小球は、露出率が53?70%となるように空気中に露出するように配置される。このような露出率を満たす範囲で透明性微小球を空気中に露出させることによって、入射角が60°程度の入射光に対しても高い反射輝度を示すことができ、広角な入射角に対して優れた再帰反射性能を備えることが可能になる。入射角が大きい入射光に対する反射輝度をより一層向上させるという観点から、透明性微小球の露出率として、好ましくは56?66%、更に好ましくは57?64%が挙げられる。なお、本明細書において、透明性微小球の露出率とは、透明性微小球の直径に対する、透明性微小球の露出している領域の高さの割合(%)であり、下記式に従って算出される値である。
透明性微小球の露出率(%)=(X/R)×100
R:透明性微小球の直径
X:反射層の表面の最上部又は透明樹脂層が設けられている場合は透明樹脂層の反射層の表面の最上部から、空気中に露出している透明性微小球表面の最上部までの高さ
・・・略・・・
【0035】
性能・用途
本発明の再帰性反射性材料は、入射角が60°程度の入射光に対しても高い反射輝度を示し、広角な入射角に対して優れた再帰反射性能を備えている。本発明の再帰性反射性材料が備える再帰反射性能としては、具体的には、入射角が60°の入射光に対する再帰反射性能が100cd/lx/m^(2)以上、好ましくは(150)cd/lx/m^(2)以上、更に好ましくは(180?300)cd/lx/m^(2)、特に好ましくは200?300cd/lx/m^(2)が挙げられる。本明細書において、入射角が60°の入射光に対する再帰反射性能(cd/lx/m^(2))とは、JISZ9117(2010)に記載の方法に準じ、入射角が60°、観測角0.2°の条件で測定される値である。再帰性反射性材料は、例えば、衣服に貼り付けたときに着用者の体のラインによって湾曲する。そのため、従来技術の再帰性反射性材料では、衣服に貼り付けた際、湾曲部分で再帰性反射できず、十分に再帰性反射する部分が少なくなるという問題があった。これに対し、本発明の再帰性反射性材料によれば、広角な入射角に対して優れた再帰反射性能を備えているため、湾曲部分における再帰反射性が向上しており、とりわけ60°の入射光に対する再帰反射性能が100cd/lx/m^(2)以上を満たす場合には、湾曲部分における再帰反射性が極めて良好になり、衣服に貼り付けたときに十分に再帰性反射する部分がより多くなるため、好ましい。
【0036】
本発明の再帰性反射性材料は、アパレル用途、道路標示用途等に限らず、様々な用途に適用することができる。例えば、回帰反射型の光電センサー用途、タッチパネル用途等が挙げられる。具体的には、本発明の再帰性反射性材料を回帰反射型の光電センサーに用いれば、動作角(指向角)を広げることができるため、例えば、ライン製造において再帰性反射性材料を用いた反射板の設置数を少なくすることができる等、従来の再起反射材料では得られなかった効果を奏することができる。また、本発明の再帰性反射性材料をタッチパネル用途、特に赤外線再帰反射検出方式のタッチパネルに用いれば、近年の高アスペクト比の画面にも一層対応することができる。
【0037】
製造方法
本発明の再帰性反射性材料を製造する方法は、前述する構成を備える再帰性反射性材料を製造できることを限度として、特に制限されないが、一例として、下記工程1?6を含む方法が挙げられる。
工程1:基材フィルム上に熱可塑性フィルムを積層させた離型用支持体を、当該熱可塑性フィルムの軟化点以上の温度で加熱して当該熱可塑性フィルムを軟化させる工程、
工程2:前記工程1の前、同時又は後に、離型用支持体の熱可塑性フィルムに透明性微小球を散布し、透明性微小球を軟化した熱可塑性フィルムに直径の53?70%を埋没させた時点で冷却して前記熱可塑性フィルムを硬化させ、透明性微小球を埋設した離型用支持体を得る工程、
工程3:透明性微小球を埋設した離型用支持体の透明性微小球側に、必要に応じて、透明樹脂層を形成する樹脂を塗布し、透明樹脂層を形成する工程、
工程4:透明性微小球を埋設した離型用支持体の透明性微小球側に、又は透明樹脂層上に、反射層を積層させる工程、
工程5:反射層上、固着樹脂層を形成する樹脂を塗布し、固着樹脂層を積層させる工程、及び
工程6:離型用支持体を剥離した後に固着樹脂層と支持体を接着させる、又は固着樹脂層
と支持体を接着させた後に離型用支持体を剥離する工程。」

キ 「【実施例】
【0047】
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0048】
・・・略・・・
試験例1
1.再帰性反射性材料の製造
実施例1
離型用支持体として、厚さ75μmのポリエステルフィルムにラミネートされた厚さ40μmのポリエチレンフィルムを使用し、これを200℃で2分間加熱して、ポリエチレンフィルムを溶融させた。この状態で、透明微小球として、平均粒径79μm、屈折率1.93の透明ガラス球を150?180個/mm^(2)となるように略一面に散布し、放冷してポリエチレンフィルムを硬化させた。次いで、離型用支持体上の透明ガラス球側に蒸着法によってアルミニウムを蒸着させて、厚さ700Åの反射層を形成した。更に、反射層上に、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある。)を塗布し、固着樹脂層を形成した。その後、支持体として使用するポリエステル-綿タフタ織物と固着樹脂層を130℃の熱プレスにて接着させた後に、離型用支持体を剥離した。
【0049】
斯して、ポリエステル-綿タフタ織物(支持体)/PET(固着樹脂層)/アルミニウム膜(反射層)/透明ガラス球が順に積層した再帰性反射性材料を得た。得られた再帰性反射性材料において、透明ガラス球の露出率を測定したところ、54%であった。」

ク 「【図1】

【図2】



ケ 上記アないしクからみて、引用例1には、請求項1の記載を引用する請求項7に係る発明における、反射膜が金属膜からなる好ましい態様として、次の発明が記載されている。
「固着樹脂層と、
前記固着樹脂層に埋設された透明性微小球と、
前記透明性微小球と前記固着樹脂層の間に設けられた金属膜である反射層と、を備え、
前記透明性微小球の屈折率が1.6?2.5であり、且つ
前記透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で空気中に露出し、
前記固着樹脂層が支持体に保持されている、
再帰性反射性材料。」(以下「引用発明」という。)

(2)拒絶査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2005-534979号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を基材に転写するのに用いる転写フィルムに関する。特に、本発明は、透明ビーズまたはその他微粒子の層を布帛のような基材に転写するのに用いる転写フィルム、転写フィルムの製造および使用方法に関する。本発明は、透明ビーズの層がパターン化される再帰反射性転写フィルムに特に有用である。」
イ 「【背景技術】
【0002】
再帰反射性シートは、交通標識、舗装標識、車両および衣類といった様々な対象物の夜間の顕著性を増大させるのに一般的に用いられている。多くの再帰反射性シートは、シートにおける再帰反射要素としてガラスビースを用いている。ビーズは、ビーズを熱活性接着剤により接着する熱プレスを用いて最終対象物に転写される。接着剤とビーズは、ビーズと、接着層と、接着剤をカバーする任意の剥離ライナと、基材に配置する前にビーズを保持する一時ビーズキャリアとを含む多層フィルムに分配することができる。他のある具体例においては、ビーズ同士を結合およびビーズを接着剤に結合するよう構成されたビーズボンド層、そして反射性を改善するためにビーズの下部にアルミニウム反射層のようなその他の層を用いてもよい。
【0003】
特許文献1(ベルグ(Berg))には、かかるシートを製造する一つの方法が開示されている。その方法は、非反射ガラスビーズを一時的ビーズキャリアに取り付けることから始まる。一時ビーズキャリアは、紙か、熱により軟化可能な熱可塑性ポリマー、たいていはポリエチレンのコーティングを有するポリマーシートのいずれかとすることができる。ガラスビーズは、軟化したポリマーに、加熱の際に部分的に沈む。続いて、キャリアが冷やされ、基材に取り付けられるまでビーズを保持する。後の処理工程後、一時ビーズキャリアをラミネートから剥がしてビーズを露わにする。
【0004】
シートおよび最終対象物にあるビーズは、レタリングやロゴといった画像やインディシアのパターンで適用してよい。ビーズを衣類に適用するときはパターンは非常に一般的なものである。かかるパターンを形成する一つの方法は、ビーズの均一な層を有する再帰反射シートを一時ビーズキャリアに沿って広げることから始めて、接着層でカバーするものである。ナイフを有するプロッタを用いて、シート片からパターンをキスカットする。レーザーカットまたはダイカットを用いてもよい。接着層およびビーズを貫いてカットされるが、一時ビーズキャリアまではカットされないようにキスカットを行う。「ウィード」と呼ばれることの多い廃棄材料を除去すると、一時キャリアにビーズの所望のパターンと接着剤だけが残る。除去したウィードには、ビーズと接着剤、さらに接着剤剥離ライナのような他の層が含まれている。一時ビーズキャリアは、通常、元のサイズと形状を保持しており、プロッタによりカットされなかったため、ビーズのパターンを保持する。
【0005】
形成されたパターンの衣類や布帛といった基材への取り付けは、以下の工程により行うことができる。第1に、パターンを基材の所望の位置に配置して、熱活性接着剤を基材に対向させ、一時ビーズキャリア面を外側に向ける。第2に、熱プレスを用いて接着剤を活性化させて、層を併せてプレスする。冷却後、一時ビーズキャリアを除去すると、基材に取り付けられた再帰反射性インディシアが残る。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの従来のシートのカットおよびラミネーションプロセス中には2つの問題が起こり得る。第1は、プロッタによる層のカット動作によって、転写フィルムが一時ビーズキャリアから早期に分離してしまい、後の適用工程での取扱いが非常に難しくなってしまうことである。第2に、一時ビーズキャリアに用いる熱可塑性コーティング材料が、部分的に溶融して、ラミネーション工程中に基材に転写されて、一時ビーズキャリアを完全に除去することが困難または不可能となり、所望の再帰反射性パターンを囲む領域が残ってしまうことである。従って、これらの問題を解消する改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、微粒子を基材に転写するべく構成された転写フィルムを開示している。ある具体例において、微粒子はビーズを含む。かかる具体例において、転写フィルムは、少なくとも以下の材料または層、すなわち、ビーズと、ビーズを保持する一時ビーズキャリアとを含む。一時ビーズキャリア層は、一般的に、基材への適用中、ビーズを一時的に保持する耐熱キャリアコーティング材料を含んでいる。最初に軟化してビーズを一時的に保持してから、硬化または熱硬化(架橋による等)して、ビーズの基材への転写中にキャリアコーティングが溶融するのを防ぐようにキャリアコーティングは形成されている。このキャリアコーティングは、紙やプラスチックフィルムのようなキャリアバッキングへ接着される。
【0008】
たいていの具体例において、転写フィルムはまた、ビーズに適用された反射コーティングと、ビーズを基材に固定する接着剤と、ビーズを互いに、そして接着剤に固定するビーズボンド層とを含んでいる。好適な反射コーティングとしては、アルミニウムのような金属コーティングが挙げられる。好適なビーズボンド層としては、例えば、フェノール樹脂およびニトリルブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。
【0009】
ある実施形態においては、一時キャリア層のキャリアコーティングは、照射すると熱硬化性となる熱可塑性材料から形成される。例えば、熱硬化性キャリアコーティングは、熱可塑性材料を電子ビーム源に露光することにより形成することができる。上述した通り、キャリアコーティングは製造中熱可塑性で、ビーズが一時的にそこに固定されるが、ビーズを基材に適用する間露出したキャリアコーティングが基材に結合しないよう後には熱硬化性に変化するのが有利である。」
ウ 「【0024】
A.全体的な構成
微粒子転写フィルムを図1に部分断面で示す。微粒子転写フィルム20には、キャリアバッキング24とキャリアコーティング26とを有する一時ビーズキャリア22が含まれる。微粒子転写フィルム20にはまた、ビーズ28のような微粒子層と、ビーズ28上に反射コーティング30と、ビーズボンド層32とが含まれる。ビーズボンド層32はビーズを併せてボンドして、接着層34を接合する表面も提供する。通常、一時剥離ライナ36は、接着層34を覆うように配置される。
【0025】
図1の微粒子転写フィルム20は、一般的に顧客に提供されるようなフィルムである。顧客は、ビーズ28、その反射コーティング30、ビーズボンド層32、接着層34および剥離ライナ36の一部を除去することによりビーズパターンを形成することができる。かかる層の一部が除去されたフィルム20を図2に示す。一部38、40のみが完全に無傷のままで残っている。除去した材料は、一般的にウィードと呼ばれ、部分空隙領域46が残る。図2に示すように、「ウィード」として知られた材料は除去されて領域46が作成される。一般的にキャリアコーティング26およびキャリアバッキング24の大半または全ては除去されないことに注意されたい。ただし、特定の具体例においては除去することができる。一部ビーズキャリア22のキャリアコーティング26およびキャリアバッキング24を適所に残す利点は、フィルム20の残りの部分38、40の適所で適正な互いの配向を保つということである。ライナ、ビーズおよびビーズボンド層の切断中に、キャリアコーティング26およびキャリアバッキング24が完全に除去されなければならない場合だと、フィルムは完全性を失い、適正に配置することが困難となる。
【0026】
例証のために、「ウィード」領域46と非ウィード領域38、40間の端部42、44を示してある。キャリアコーティング26とビーズ層28の間のボンドは、切断およびウィーディング中ビーズ層28の移動および変形を防ぐほど端部が十分に強度を有するようなものとすると有利である。
【0027】
図2に、一時キャリアコーティング26の露出部分50も示す。この露出部分50は、適用中に基材と接触して、キャリアコーティング26のこの部分が熱硬化性となって、意図しない基材への接着および/または転写を防いで有利である。
【0028】
図3、4および5に、図1および2に示したものを180度回転させたフィルムを示す。この配向は、ウィード領域および剥離ライナ36の除去後の処理工程を示すように図示されている。図3に、任意の剥離ライナ36を除去した後の転写フィルム20を示す。図3にまた、キャリアバッキング24と共に露出した接着剤34およびキャリアコーティング26も示す。
【0029】
図4および5に、基材52に転写フィルム20を重ねてキャリアバッキング24を上げることにより、ビーズの基材52への転写のやり方を示す。熱をキャリアバッキング24に適用して、接着剤34を活性化させ、ビーズ層の残りのビーズ28を基材52に接合する。キャリアコーティング26は熱硬化性であり、このプロセス中、露出した領域50において基材52に実質的に軟化したり接合しない。キャリアコーティング26のこの熱硬化性によって、基材52に残ったキャリアコーティング26からの残渣の形成が減少したり、排除される。
【0030】
ビーズ層28はキャリアコーティング26によく接合するが、ビーズ28はキャリアコーティング26よりもビーズボンド層32により容易にボンドするため、接着剤34を基材52にボンドしたらキャリアコーティング26は容易に分離することができる。図5に、転写フィルムおよび基材を部分的に冷却した後に一時ビーズキャリア22を引張り剥がすことにより、一時ビーズキャリア22を除去した後に基材52に積層された転写フィルム20に残るものを示す。」
エ 「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】



(3)拒絶査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-252116号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は衣料、バッグ、シューズなどのアパレルのワンポイントなどの装飾や、標識用の旗、垂れ幕、安全服、保安用ベストなどの保安衣料および、ウィンドブレーカー、トレーニングウェアー、Tシャツなどのスポーツ衣料に用いることができる熱転写用再帰反射媒体とその熱転写方法に関するものである。」
イ 「【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の熱転写用再帰反射媒体の一例を示す。図1において、支持シート1に仮埋設層としての熱軟化性樹脂層2が積層されている。その熱軟化性樹脂層2の中に無数の透明微小球3が一部埋没した形で設けられている。前記熱軟化性樹脂層2に対する埋設側とは反対側の透明微小球3表面に後述する熱転写性接着層を構成する樹脂の溶融温度よりも高い軟化温度を有するかあるいは明確な熱軟化性を示さない架橋樹脂からなる2層のトータル厚みが40μm以下の透明樹脂層4および5を設ける。そして、外側の透明樹脂層5の表面に金属反射層6を形成し、さらにその上から熱転写性接着層7を設けることにより、熱転写に供することができる再帰反射媒体が構成される。前記外側の透明樹脂層5を着色することも可能である。
【0015】
図2、図3には、この熱転写再帰反射媒体の熱転写用接着層1の上からカッタープロッターで所定の図柄をカットする状態を示し、図4には、しかる後、カス取りをする状態を示している。その後、熱転写性接着層7をくっつけたいと所望する衣服、シャツ、旗、基板などに重ね、この重ねたものを熱ロールなどで熱圧着する。それを冷却し、所定の図柄を図5、図6に示すように熱転写することができる。
【0016】
ここで支持シート1は透明微小球3を埋設する際に、熱軟化性樹脂層2が軟化する温度以上の温度においても充分な安定性を保つシートが要求されている。このようなものとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、紙などが好ましく用いられる。その厚みは30μm以上好ましくは50μm以上である。厚さが薄いと熱軟化性樹脂層2が軟化したとき積層体の保持性が無くなり、好ましくない。
【0017】
透明微小球3を埋没し、保持する熱軟化性樹脂層2としては前記支持シート1より軟化温度の低い樹脂が要求され、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニール共重合体、ポリビニールアルコール、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが好ましく用いられる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。その厚みは15?70μm、好ましくは20?40μmである。熱軟化性樹脂層2の厚みが15μm未満では透明微小球3の埋設が不充分であり、蒸着工程などでの透明微小球3の脱落が発生したりする。熱軟化性樹脂層2の厚みが70μmを超えると、支持シート1の厚みが厚すぎて加工工程でロールから浮いたりして事実上加工が困難である。
【0018】
また、支持シート1と熱軟化性樹脂層2とは接着層を介して、あるいは介さずに強固に接着されていることが好ましい。両者の接着が弱いと熱軟化性樹脂層2を軟化させ、透明微小球3を埋没させる際に剥離が生じ、透明微小球3が不完全な埋設となる。
【0019】
本発明に使用する透明微小球3は屈折率1.6?2.5、好ましくは1.9?2.3である。屈折率が1.6未満では金属反射層6に焦点が合わなくなり、再帰反射性能が低下するし、屈折率が2.5を超えても同様の現象が起こり、再帰反射性能が低下する。また、透明微小球3の平均粒径は500μm以下、好ましくは20?200μmである。平均粒径が500μmを超えると転写後の装飾体の柔軟性が無く、アパレル関連用途として汎用性に欠けるものとなる。また、透明微小球3の材質は屈折率が前記範囲に入るものなら特に制約しないが、ガラス製の透明微小球3が透明性、耐薬品性、耐洗濯性、耐候性に優れるので好ましい。
【0020】
また、透明微小球3の熱軟化性樹脂層2への埋没率は透明微小球3の直径の20?60%が好ましい。特に、埋没率35?50%前後が透明微小球3の保持性や転写性の点から好ましい。埋没率が20%未満では熱軟化性樹脂層2による透明微小球3の固着が悪くなり、蒸着工程など、金属反射層形成工程で透明微小球3の脱落が生じる。また、埋没率が60%を超えると熱転写の際、熱軟化性樹脂層2側に透明微小球3が残存し転写性が悪くなる。」
ウ 「【0027】
実施例1?3、比較例1、2
厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに仮埋設層として厚み10μm(比較例1)、15μm(実施例1)、40μm(実施例2)、70μm(実施例3)、80μm(比較例2)のポリエチレンフィルムをラミネートし、これを120℃で3分加熱して、ポリエチレンフィルムを溶融させ、平均粒径50μm、屈折率1.92のガラス製の透明微小球を、ほぼ一面に単層散布し透明微小球を表1に示す如く埋設させる。その後、埋設されていない透明微小球側に、エチレン-酢酸ビニール系樹脂1μm、さらにその上にエステル系ウレタン樹脂22μmをコートした後、800ÅのAl蒸着を行なった。次いでブロッキング温度45℃、融点110℃の飽和エステル系樹脂を60μmにコートした。その後、ミマキ製プロッターカッターでUのロゴをカットし、カス取り後、ポリエステル-綿タフタ織物(目付100g/m2)にアイロンを用いて120℃で熱転写した。表1において、初期の反射性能、40℃家庭洗濯で30洗後の反射性能値も併せて評価している。何れの試料も風合い良好であった。なお、比較例1の試料にあっては仮埋設層の厚みが薄すぎるがためにAl蒸着工程で透明微小球が落下するという問題があり、また比較例2の試料にあっては仮埋設層の厚みが厚すぎるがために加工工程でロールから仮埋設層が浮くという問題があった。」
エ 「【図4】



5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「支持体」、「固着樹脂層」、「金属膜である反射層」及び「透明性微小球」は、技術的にみて、それぞれ本願発明の「基材層」、「固着樹脂層」、「金属膜からなる反射層」及び「透明性微小球」に相当する。

(2)引用発明は、支持体、固着樹脂層、反射層及び透明性微小球が順に積層されたものであり、技術的にみて、反射層及び透明性微小球によりなる再帰性反射性層構造を有することは明らかである。また、透明性微小球は、53?70%の露出率を有しており、露出していない部分が固着樹脂層に埋設されている。そうすると、引用発明と、本願発明とは、「再帰性反射性層構造が、固着樹脂層と、前記固着樹脂層に埋設された透明性微小球と、前記透明性微小球と前記固着樹脂層の間に設けられた金属膜からなる反射層と、を有し」、「前記基材層が、固着樹脂層の透明性微小球が埋設されていない面側に設けられた支持基材であ」る点で一致する。
また、前述の積層順のとおりであるから、引用発明と、本願発明とは、「基材層上に再帰性反射性層構造が設けられており」との構成を備える点で一致する。

(3)引用発明において、透明性微小球は、屈折率が1.60?2.5、露出率が53?70%であるから、引用発明は、本願発明の「前記透明性微小球の屈折率が1.6?2.5であり、且つ 前記透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で前記固着樹脂層に埋設されており」との構成を備える。

(4)引用発明において、透明性微小球の露出している側が入射光側であることは技術的に明らかであるから、引用発明は、本願発明の「透明性微小球の入射光側が表面に露出している」との構成をそなえる。

(5)引用発明の「再帰性反射性材料」と、本願発明の「被着体に貼付又は縫い合わせて使用される再帰性反射性テープ」とは、「再帰性反射性材料」である点で一致する。

(6)上記(1)ないし(5)から、本願発明と引用発明とは、
「基材層上に再帰性反射性層構造が設けられており、
前記再帰性反射性層構造が、
固着樹脂層と、
前記固着樹脂層に埋設された透明性微小球と、
前記透明性微小球と前記固着樹脂層の間に設けられた金属膜からなる反射層と、を有し、
前記透明性微小球の屈折率が1.6?2.5であり、且つ
前記透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で前記固着樹脂層に埋設されており、
前記基材層が、固着樹脂層の透明性微小球が埋設されていない面側に設けられた支持基材であり、
前記透明性微小球の入射光側が表面に露出している、
再帰性反射性材料。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1:
再帰性反射性材料が、
本願発明では、「被着体に貼付又は縫い合わせて使用される再帰性反射性テープ」であるのに対し、
引用発明では、「被着体に貼付又は縫い合わせて使用される再帰性反射性テープ」であるかどうかが明らかでない点。

・相違点2:
本願発明では、「基材層上に再帰性反射性領域が部分的に設けられて」いるのに対し、
引用発明では、反射層及び透明性微小球よりなる再帰性反射性層構造が、支持体(基材層)上の部分的に設けられているとはいえない点。

6 判断
(1)相違点1について
ア 引用例1には、その【0035】(上記4(6))に、例示として、再帰性反射性材料を衣服に貼り付けることが記載されているから、引用発明の再帰性反射性材料が被着体に「貼付」又は「縫い合わせ」により使用されることは当業者にとって自明な事項である。
イ 再帰性反射性材料を被着体に使用する際に、該再帰性反射性材料の形状を如何にするかは、装飾性や被着体の貼付対象領域の形状等の事情に応じて当業者が適宜決定し得ることであるから、引用発明において、再帰性反射性材料の形状を帯状、すなわちテープ状となすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。
ウ また、本願発明の「テープ状」が、貼付対象領域の形状に対応した形状を意味するのではなく、ロールに巻かれて製造された態様を意味するとしても、シート状物をロールの態様で製造することは例を挙げるまでもなく周知であることに鑑みれば、引用発明において、再帰性反射性材料をテープ状となすことは当業者が適宜なし得たことである。
エ 以上のとおり、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
ア 引用例1の【0037】(上記4(6))や【0048】(上記4(7))に記載されているように、引用発明の再帰性反射性材料は、離型用支持体上に透明性微小球、反射層及び固着樹脂層を設けたもの(以下「転写用積層体」という。)を支持体に接着、すなわち転写して製造されたものといえる。また、引用例1の【0010】(上記4(5))や【0024】(上記4(6))に記載されているように、引用発明の再帰性反射性材料は、衣料等に装飾を付与するために使用されることが想定されている。
イ そうすると、引用発明において、透明性微小球や反射層等からなる再帰性反射層構造を引用例2及び3に記載されているように画像や図柄のパターンに形成すると、衣料等における装飾性が向上することは当業者に自明である。
ウ してみると、上記アのように、引用発明の再帰性反射性材料を製造する際に、引用発明において、装飾性を向上させるために、転写用積層体の微粒子、反射層及び樹脂層の一部の領域を除去し、その後、不要な領域が除去された転写用積層体を支持体に接着、すなわち転写して再帰性反射性材料を完成させるようになすことは、当業者が引用例2及び3の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。
エ 以上のとおり、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が引用例2及び3の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。

(3)効果について
ア 本願の明細書には、「【0014】・・・透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で前記固着樹脂層に埋設させることにより、非再帰性反射性領域を形成するために固着樹脂層側から部分的にカットする工程において、再帰性反射性領域とすべき部分において離型基材と透明性微小球の剥離が生じ難くなり、優れた柔軟性と再帰性反射性能を兼ね備え、再帰性反射領域と非再帰性反射領域との境界が明瞭になり、しかも洗濯耐久性にも優れる再帰性反射性テープが得られることを知得した。」、「【発明の効果】【0016】本発明の再帰性反射性テープは、固着樹脂層、透明性微小球、及び反射層を有する再帰性反射性領域を部分的に設けることにより、当該再帰性反射性領が設けられていない非再帰性反射性領域を形成しているので、優れた柔軟性を備えることができる。更に、本発明の再帰性反射性テープは、透明性微小球が、露出率が53?70%となる状態で前記固着樹脂層に埋設されていることにより、再帰性反射性領域が安定に保持された状態で形成されるので、優れた再帰性反射性能を備えることができる。また、本発明の再帰性反射性テープは、再帰性反射領域と非再帰性反射領域との境界を設計通りに明瞭に形成できるので、再帰性反射光によって視認される夜間色の図柄を鮮明に表示するこが可能になる。【0017】本発明の再帰性反射性テープによれば、例えば、警察、消防、土建工事関係者等の安全衣料、又は、夜間にランニングやウォーキングなどをする人のためのスポーツ衣料に貼り付ける場合も、張り付け易く、着用者に不快感を与え難くなり、しかも高い再帰性反射性能を得ることが可能となる。」と記載されている。
イ 上記アからみて、発明の詳細な説明に述べられている効果は、再帰性反射領域が部分的に設けられていることにより、優れた柔軟性、優れた再帰性反射性能、洗濯耐久性、及び、再帰性反射領域と非再帰性反射領域との境界が明瞭であるというものである。
ウ しかしながら、本願発明において、「部分的に設けられ」とされる「再帰性反射性領域」の形状、パターン又はデザイン等は一切不明である。また、仮に、本願発明が上記イで示した効果を奏するとしても、本願発明の再帰性反射性層構造と引用発明の再帰性反射性層構造とが、透明性微小球の露出率の数値範囲も含めて同じであるから、前記効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2及び3の記載事項の奏する効果から、当業者が予測できた程度のものである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「これに対して、引用文献1には、あくまで、入射角が大きい入射光に対しても高い反射輝度を示し、広角な入射角の入射光に対しても優れた再帰性反射性能を示す再帰性反射性材料が開示されているに止まり、再帰性反射性領域を部分的に形成することについては開示も示唆もありません。そのため、当業者にとっては、引用文献1に記載の再帰性反射性材料において、再帰性反射性領域と非再帰性反射性領域との境界を明瞭に形成するための特別な技術的手段が施されていることを把握できません。それ故、当業者であれば、引用文献1に記載の再帰性反射性材料に対して再帰性反射性領域を部分的に形成すると、再帰性反射性領域と非再帰性反射性領域との境界が不鮮明になって、見栄えが悪くなり、実用化し得ないものになると認識します。そのため、当業者は、引用文献1に記載の再帰性反射性材料に対しては、再帰性反射性領域を部分的に形成すべきではないと認識します。」と主張している。
しかしながら、仮に、引用例2や引用例3が、再帰性反射性領域の境界が不明瞭とならないように、審判請求人が主張する「特別な技術的手段」を採用したものであるのなら、引用発明において、上記(2)ウで述べた構成の変更を行う際に、当該「特別な技術的手段」をも採用すれば良いのであって、引用発明において、引用例2及び3の記載事項を適用することの阻害要因は見出せない。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2、3の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-26 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-11 
出願番号 特願2016-130583(P2016-130583)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 再帰性反射性テープ  
代理人 田中 順也  
代理人 迫田 恭子  
代理人 水谷 馨也  

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