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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1340863
審判番号 不服2017-11627  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-04 
確定日 2018-06-19 
事件の表示 特願2015-240816「シールドゲートを有する炭化珪素装置を形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日出願公開、特開2016-115936、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年(2015年)12月10日(パリ条約に基づく優先権主張 2014年12月11日,米国,以下左の日を「本願優先日」という。)の外国語書面出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 2月 2日 外国語書面の翻訳文提出
平成28年11月14日 拒絶理由通知
平成29年 2月10日 意見書・手続補正
平成29年 3月30日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 8月 4日 審判請求・手続補正

第2 原査定の概要
理由1(明確性)この出願は,特許請求の範囲の請求項5及び6の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1?13,15?18
・引用文献等 1?8
先の拒絶理由で引用した引用文献1の,特に段落0036?0052,図4,5を参照。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開2014-107571号公報
引用文献2 特開2006-196523号公報
引用文献3 特開2001-358338号公報
引用文献4 特開2009-088187号公報
引用文献5 国際公開第2013/076890号
引用文献6 特開2014-139956号公報
引用文献7 特開2013-012590号公報
引用文献8 国際公開第2014/103257号

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって,請求項1に「前記ゲートトレンチを形成する工程と前記高温工程を適用する工程とは,前記第1のドープ領域の形成のあとになされ,」という事項を,請求項16に「前記ゲートトレンチを形成する工程と前記高温工程を適用する工程とは,第2の導電型埋め込み領域(104)を形成する工程の後になされ,」という事項を,それぞれ追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また前記事項は,外国語書面の翻訳文の段落0018に記載されているから,翻訳文新規事項を追加するものではないといえる。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比及び判断」までに示すように,補正後の請求項1ないし18に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
同じく,請求項5に「ゲート誘電体が前記ゲートトレンチの前記中央部内の前記下部および側壁に直接隣接するとともに前記犠牲酸化物層が前記外側端における前記ゲートトレンチの前記下部および側壁と前記ゲート誘電体との間に挿入されるように」という事項を追加する補正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,また前記事項は,外国語書面の翻訳文の請求項3に記載されているから,翻訳文新規事項を追加するものではないといえる。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし18に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明18」という。)は,審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
半導体装置を形成する方法であって,前記方法は,
炭化珪素半導体基板を形成する工程であって,前記基板の主面の下に互いに横方向に離間された複数の第1のドープ領域と,前記主面から前記第1のドープ領域の上に存在する第3のドープ領域へ延びる第2のドープ領域と,前記主面から前記第1のドープ領域へ延びる前記基板内の複数の第4のドープ領域とを有し,前記第2のドープ領域は第1の導電型を有し,前記第1のドープ領域,第3のドープ領域および第4のドープ領域は第2の導電型を有する,工程と,
前記第2,第3および第4のドープ領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板をアニールする工程と
前記第2および第3のドープ領域を貫通して広がるゲートトレンチであって,前記第1のドープ領域のうちの1つの領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチを形成する工程と,
前記ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させるとともに前記ゲートトレンチの前記下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で高温工程を適用する工程と,
前記高温工程中に前記ゲートトレンチの前記側壁に沿って形成された表面層を前記基板から除去する工程とを含み,
前記ゲートトレンチを形成する工程と前記高温工程を適用する工程とは,前記第1のドープ領域の形成のあとになされ,
前記第4のドープ領域は,前記第1,第2,および第3のドープ領域に比べて高い濃度にドープされる,方法。
【請求項2】
前記表面層を除去する工程は,前記ゲートトレンチ内に犠牲酸化物層を形成するために前記表面層を酸化する工程と前記ゲートトレンチの少なくとも一部から前記犠牲酸化物層を除去する工程とを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面層を酸化する工程は前記ゲートトレンチ全体に前記犠牲酸化物層を敷き詰める工程を含み,
前記犠牲酸化物層を除去する工程は,前記ゲートトレンチの外側端が前記犠牲酸化物層を除去する工程後に前記犠牲酸化物層で敷き詰められるように前記ゲートトレンチの中央部からだけ前記犠牲酸化物層を除去する工程を含む,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中央部からだけ前記犠牲酸化物層を除去する工程は,前記ゲートトレンチの外側端を覆い前記中央部を露出するマスクを前記基板上に形成する工程と前記犠牲酸化物をエッチングして前記中央部から離す工程とを含む,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ゲート誘電体が前記ゲートトレンチの前記中央部内の前記下部および側壁に直接隣接するとともに前記犠牲酸化物層が前記外側端における前記ゲートトレンチの前記下部および側壁と前記ゲート誘電体との間に挿入されるように,前記犠牲酸化物層を除去した後に前記ゲートトレンチの全体にわたって前記ゲート誘電体を蒸着する工程と,
前記ゲート誘電体と前記炭化珪素半導体基板との界面を不動態化するように前記基板をガス雰囲気内でアニールする工程とをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲート誘電体を蒸着する工程は,前記ゲートトレンチの前記下部に沿ってだけ第1の誘電体層を形成する工程と前記ゲートトレンチ内の誘電材料全体の厚さが前記側壁に沿った厚さよりも前記ゲートトレンチの前記下部においてより厚くなるように,前記第1の誘電体層の上および前記側壁に沿って第2の誘電体層を形成する工程とを含む,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面層を酸化する工程は前記ゲートトレンチ全体に前記犠牲酸化物層を敷き詰める工程を含み,前記犠牲酸化物層を除去する工程は前記ゲートトレンチから前記犠牲酸化物層を完全に除去する工程を含む,請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のドープ領域は前記基板中にドーパント原子を注入することにより形成され,前記ゲートトレンチは前記ドーパント原子の注入後に形成される,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のドープ領域を形成する工程は前記基板上に第1のマスクを形成する工程を含み,
前記ゲートトレンチを形成する工程は,前記第1のマスクを除去した後に前記基板上に第2のマスクを形成する工程と,前記第2および第3のドープ領域を含む前記基板の一部をエッチング除去する工程とを含む,請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基板は,前記エッチング工程の処理公差内で前記ゲートトレンチの第1の側壁が前記基板の結晶面と整合するようにエッチングされ,
前記高温工程の時間,温度および雰囲気は前記第1の側壁が前記結晶面と整合されるように制御される,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板は,前記第1の側壁が前記基板の(11-20)結晶面と整合するように前記主面に対して86度の角度となるようにエッチングされ,
前記高温工程は,前記(11-20)結晶面に前記第1の側壁を整合させるために前記基板を5?7分間摂氏1400?1600度の温度の水素またはアルゴンの雰囲気内に置く工程を含む,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ゲートトレンチは,前記第1の側壁が前記第1のドープ領域のうちの隣接領域同士間に存在する第1の下側角まで延びるようにおよび第2の側壁が前記第1のドープ領域のうちの1つの領域内に配置された第2の下側角まで延びるように形成される,請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板は,前記ゲートトレンチの第1の側壁が前記基板の(1-100)結晶面と整合し前記第2の側壁が前記基板の(-1100)結晶面と整合するようにエッチングされ,
前記高温工程の前記時間,温度および雰囲気は,前記第1の側壁および第2の側壁が前記(1-100)および(-1100)結晶面それぞれと整合されるように制御される,請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第2および第3のドープ領域を貫通して広がるゲートトレンチであって,前記第1のドープ領域のうちの1つの領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチを形成する工程に代えて,
前記ゲートトレンチ全体は,前記第1および第2の側壁の両方が前記第1のドープ領域から離間されるように前記第1のドープ領域のうちの隣接領域同士間に存在する前記基板の側部内に形成される,請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ゲートトレンチは前記第2,第3および第4のドープ領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板のアニール工程後に形成される,請求項1に記載の方法。
【請求項16】
主面を有する第1の導電型炭化珪素半導体基板から半導体装置を形成する方法であって,前記方法は,
前記主面の下に互いに横方向に離間された複数の第2の導電型埋め込み領域(104)を形成する工程と,
前記基板内に第1の導電型ソース領域(106)と第2の導電型ボディ領域(108)を形成する工程であって,前記ソース領域は前記主面から前記ボディ領域へ延び,前記ボディ領域は前記埋め込み領域の上に配置される,工程と,
前記基板内に前記主面から前記第2の導電型埋め込み領域へ延びる第2の導電型コンタクト領域(122)を形成する工程と,
前記ソース,ボディおよびコンタクト領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板をアニールする工程と,
前記ソースおよびボディ領域を貫通して広がるゲートトレンチであって,前記埋め込み領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチを形成する工程と,
前記ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させるとともに前記ゲートトレンチの前記下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で高温工程を適用する工程と,
前記高温工程中に前記ゲートトレンチの前記側壁に沿って形成された表面層を前記基板から除去する工程とを含み,
前記ゲートトレンチを形成する工程と前記高温工程を適用する工程とは,第2の導電型埋め込み領域(104)を形成する工程の後になされ,
前記コンタクト領域は,前記ソース,ボディおよび埋め込み領域に比べて高い濃度にドープされる,方法。
【請求項17】
前記表面層を除去する工程は前記ゲートトレンチ内に犠牲酸化物層を形成するために前記表面層を酸化する工程と前記ゲートトレンチの少なくとも一部から前記犠牲酸化物層を除去する工程とを含む,請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ゲートトレンチは,前記ソース,ボディおよびコンタクト領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板のアニール工程後に形成される,請求項16に記載の方法。」

第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は半導体素子に関し,特に,垂直トランジスタ素子と垂直トランジスタ素子と並列に接続されたダイオードとを含む半導体素子に関する。」
イ 「【0019】
図1の半導体素子は一体化されたダイオードを有するMOSトランジスタ素子である。トランジスタ素子はn型素子またはp型素子として実現することができる。n型素子では,ソース領域とドリフト領域11はnドープされ,ボディ領域13がpドープされる。p型素子では,ソース領域12とドリフト領域11はpドープされ,ボディ領域13がnドープされる。トランジスタ素子はエンハンスメント(ノーマリオフ型)素子またはデプレッション(ノーマリオン)素子として実現することができる。エンハンスメント素子では,個々の素子セル101,102のボディ領域13はゲート誘電体22に隣接する。デプレッション素子では,ゲート誘電体22に沿ってソース領域12と同じ不純物添加タイプのチャネル領域15(図1では破線で示される)とドリフト領域11とが存在している。各素子セル101,102のチャンネル領域15は,ゲート誘電体22に沿って,対応するソース領域12からドリフト領域11まで延在し,トランジスタ素子がスイッチオフされると電荷キャリアが枯渇される。或いは,ゲート誘電体22は,ゲート駆動電圧(ゲート・ソース電圧)が零のときゲート誘電体22に沿ったボディ領域13内の導電チャネルの生成を引き起こす固定電荷を含む。
【0020】
更に,トランジスタ素子はMOSFETまたはIGBTとして実現することができる。MOSFETでは,ドレイン領域14はソース領域12とドリフト領域11と同じ不純物添加タイプを有し,IGBTでは,ドレイン領域14はソース領域12とドリフト領域11の不純物添加タイプと相補的な不純物添加タイプを有する。IGBTでは,ドレイン領域14はコレクタ領域とも呼ばれる。
【0021】
ダイオード領域30は,ドリフト領域11の不純物添加タイプと相補的な不純物添加タイプであるボディ領域13と同じ不純物添加タイプを有する。図1の素子セル101などの1つの素子セルのダイオード領域30は図1の素子セル102などの隣接素子セルのボディ領域13に隣接するので,各素子セルのボディ領域13は隣接素子セルのダイオード領域30を介しソース電極41に電気的に接続される。任意選択的に,各ダイオード領域30は,2つの異なるドープの半導体領域,即ちドリフト領域11に隣接しドリフト領域11とpn接合を形成する第1の領域31と,第1の領域31をソース電極41に電気的に接続する第2のダイオード領域32とを含む。以下ではコンタクト領域とも呼ばれる第2のダイオード領域32は第1の領域31より高い不純物濃度を有する。図1の実施形態では,図1の素子セル101などの1つの素子セルのコンタクト領域32は,対応するトレンチの第2の側壁1102に隣接し,図1の素子セル102などの隣接素子セルのボディ領域13をソース電極41へ電気的に接続する。」
ウ 「【0029】
ドリフト領域11の不純物濃度は例えば1E14cm^(-3)?1E17cm^(-3)である。ボディ領域13の不純物濃度は例えば5E16cm^(-3)?5E17cm^(-3)である。ソースとドレイン領域12,14の不純物濃度は例えば1E19cm^(-3)より高い。ダイオード領域30の不純物濃度は例えば1E18cm^(-3)?1E19cm^(-3)である。」
エ 「【0036】
これまで本明細書で説明した半導体素子を作製する方法の一実施形態について以下の図4A?4Jを参照して説明する。これらの図のぞれぞれは,本方法の個々の方法段階中の半導体ボディ100の垂直方向断面図を示す。
【0037】
図4Aを参照すると,本方法は,ドリフト領域層111,ドリフト領域層111に隣接するボディ領域層113,及びボディ領域層113に隣接するソース領域層112を有する半導体ボディ100を設ける工程を含む。ソース領域層112は半導体ボディ100の第1の表面101を形成する。半導体ボディ100は更に,ボディ領域層113に対向するドリフト領域層111に隣接するドレイン領域層114を含む。任意選択的に,ドリフト領域層111と同じ不純物添加タイプであるがドリフト領域層111より高いドープの電界停止領域層(図示せず)がドレイン層領域114とドリフト領域層111間に配置される。ドリフト領域層111はドリフト領域11を形成し,ボディ領域層113はボディ領域13を形成し,ソース領域層112はソース領域12を形成し,ドレイン層114は完成半導体素子のドレイン領域14を形成する。個々の半導体層111?114の不純物添加タイプと不純物濃度は,個々の半導体層により形成されるデバイス領域の不純物添加タイプと不純物濃度に対応する。個々の素子領域のこれらの不純物添加タイプと不純物濃度は本明細書において前に説明された。
【0038】
図4Aの半導体ボディ100は,いくつかの異なるドープの半導体層を有する半導体ボディ100を作製する従来技術を使用して作製することができる。一実施形態によると,半導体ボディ100を作製する工程は,ドレイン領域層114を形成する半導体基板を設ける工程と,ドレイン領域層114上に第1のエピタキシャル層としてドリフト領域層111を成長する工程と,ドリフト領域層111上に第2のエピタキシャル層としてボディ領域層113を成長する工程と,ボディ領域層113上に第3のエピタキシャル層としてソース領域層112を成長する工程とを含む。個々のエピタキシャル層は,個々のエピタキシャル工程中にその場でドープすることができる。
【0039】
第2の実施形態によると,ドリフト領域層111の不純物濃度に対応する不純物濃度を有する半導体基板が設けられる。注入工程により,ドープ原子は,ボディ領域層113とソース領域層112を形成するように,第1の表面101を介しこの基板中に注入される。加えて,ドープ原子は,ドレイン領域層114を形成するために,第1の表面101に対向する第2の表面102を介し基板中に注入される。
【0040】
第3の実施形態によると,ドレイン領域層114を形成する半導体基板が設けられる。ドリフト領域層111の不純物濃度に対応する不純物濃度を有するエピタキシャル層がドレイン領域層114上に成長される。このエピタキシャル層は半導体ボディ100の第1の表面101を形成する。最後に,ドープ原子は,ボディ領域層113とソース領域層112を形成するように,第1の表面101を介しエピタキシャル層中に注入される。
【0041】
図4Bを参照すると,半導体ボディ100の第2の横方向yに離間されたダイオード領域30が形成される。ダイオード領域30を形成する工程は,ドリフト領域層111内に第1のダイオード領域31を形成する工程と,第2のダイオード領域(コンタクト領域)32を形成する工程とを含み得る。ここで,コンタクト領域32は,第1の表面101からソース領域層112とボディ領域層113を通り第1のダイオード領域31内に延在する。第1と第2のダイオード領域31,32を形成する工程は従来の注入工程を含み得る。ダイオード領域30を作製する方法の実施形態については図5Aと図5Bを参照して本明細書の更に後で説明する。
【0042】
図4Cを参照すると,本方法は更に半導体ボディ100の第1の表面101内にトレンチを作製する工程を含む。各トレンチは第1の側壁1101,第1の側壁1101に対向する第2の側壁1102,及び底部1103を含む。トレンチはボディ領域層113とソース領域層112をいくつかの部分に細分化する。ボディ領域層113の不純物濃度を有する領域はダイオード領域30を形成する前にボディ領域13を形成し,ソース領域層112の不純物濃度を有する領域はダイオード領域30を形成する前に半導体素子のソース領域12を形成する。図4Cを参照すると,トレンチ110は,各トレンチ110の第1の側壁1101が1つのソース領域12と1つのボディ領域13に隣接するように,そして各トレンチ110の第2の側壁1102が1つのダイオード領域30(具体的にはダイオード領域30のコンタクト領域32)に隣接するように,形成される。この場合,ダイオード領域30とドリフト領域11間に形成されるpn接合は各トレンチ110の底部1103に隣接する。トレンチ110を形成する工程はエッチマスク210を使用する従来のエッチング工程を含み得る。
【0043】
任意選択的に,側壁1101,1102と個々のトレンチの底部1103との角が丸み付けされるトレンチ110の後処理が存在する。このような丸み付け処理の結果を図4Dに示す。丸み付け処理は水素含有雰囲気中の熱処理を含み得る。一実施形態によると,側壁1101,1102と底部1103との角は,次の処理工程において形成されるゲート誘電体22の厚さの少なくとも2倍または少なくとも4倍である半径で形成される。一実施形態によると,角の半径は少なくとも300ナノメートル(nm)である。
【0044】
一実施形態によると,トレンチ110はテーパ側壁により形成される。一実施形態によると,半導体ボディ100はSiCを含み,トレンチ110は第1の側壁1101がSiC半導体結晶のc軸と整合するようにテーパ側壁により形成される。
(中略)
【0051】
図5Aと図5Bに、ダイオード領域30を作製する方法の一実施形態を示す。図5Aと図5Bの方法では、ダイオード領域30は第1のダイオード領域31と第2のダイオード領域32により形成される。図5Aを参照すると、第1のダイオード領域31を形成する工程はイオン注入マスク210を使用する注入工程を含み得る。注入工程の注入エネルギーはドープ原子がドリフト領域層111中に注入されるように調整される。
【0052】
図5Bを参照すると,第2のダイオード領域(コンタクト領域)32を形成する工程は更に,別のイオン注入マスクを使用する注入工程を含む。別のイオン注入マスクは,第1のイオン注入マスク210の開口の側壁に沿ってスペーサー220を形成することにより得ることができる。コンタクト領域32を形成する工程は,異なる注入エネルギーを有するいくつかの後続注入工程を含み得る。更に,各注入工程また図4A?4Jを参照して前に説明された注入工程は,注入されたドープ原子を活性化するための熱処理を含む。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体素子を作製する方法であって,
本方法は,nドープされたドリフト領域に隣接するpドープされたボディ領域,及びpドープされたボディ領域に隣接するnドープされたソース領域を有するSiCを含む半導体ボディを設ける工程を含み,ソース領域は半導体ボディの第1の表面を形成し,半導体基板が設けられ,注入工程により,ドープ原子は,ボディ領域とソース領域を形成する,
半導体ボディの横方向に離間されたダイオード領域を形成する工程であって,ダイオード領域は第1のダイオード領域とコンタクト領域により形成され,ダイオード領域はボディ領域と同じp型タイプであり,ドープ原子がドリフト領域中に注入されるように調整されドリフト領域とpn接合を形成する第1のダイオード領域と,コンタクト領域は第1のダイオード領域より高い不純物濃度を有し,コンタクト領域は第1の表面から第1のダイオード領域内に延在し,第1のダイオード領域とコンタクト領域を形成する工程は注入工程である,
半導体ボディの第1の表面内にトレンチを作製する工程であって,トレンチの側壁がソース領域とボディ領域に隣接するように,ダイオード領域とドリフト領域間に形成されるpn接合はトレンチの底部に隣接する,
側壁とトレンチの底部との角が丸み付けされるトレンチの後処理であって,丸み付け処理は水素含有雰囲気中の熱処理である,
各注入工程は,注入されたドープ原子を活性化するための熱処理を含むこと。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明はトレンチゲート型の絶縁ゲート,トレンチキャパシタ,トレンチ素子分離などトレンチを利用する半導体装置の製造方法に関し,特にはトレンチの形成方法が改良されたトレンチ型絶縁ゲート構造を有するMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor),IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor),絶縁ゲート型サイリスタ(Insulated Gate Thyristor)等の半導体装置の製造方法に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前述の問題点をまとめると,前記「水素雰囲気における熱処理」,「減圧下での水素雰囲気による熱処理」またはその他の前記処理技術だけでは,トレンチの幅が1?2μm以下に微細化されると,トレンチ内部から除去できない残渣があり,トレンチ内部の洗浄については必ずしも充分満足できる方法とはいえないことが分かってきた。たとえば,前述したSiOx系の酸化物残渣以外の,アモルファス状シリコンやその他剥がれた酸化膜などのパーティクルに対しては,除去作用が非常に小さいか,または全くないのである。前記残渣の除去が難しいことも影響してトレンチの角部の丸めについても困難になる。従って,これらの除去しにくい残渣等を如何にきれいに除くかがさらなるトレンチの微細化に伴って,大きな問題となってきたのである。
本発明は,以上述べた点に鑑みてなされたものであり,その目的は,幅が1?2μm以下に微細化されたトレンチを形成する際にも,トレンチ内部のエッチング残渣を充分に除去でき,しかも同時にトレンチの角部の丸めも適正に形成できる半導体装置の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば,半導体基板の主面に垂直方向に深さを有するトレンチを形成する工程を含む半導体装置の製造方法において,トレンチを形成する工程が,半導体基板の主面に所望のパターンに形成された絶縁膜をマスクとしてトレンチエッチングする工程と,この工程の後に,少なくとも,ハロゲン系ガスによるエッチング工程と非酸化性かつ非窒化性雰囲気にて熱処理する工程とをこの順に行う半導体装置の製造方法とすることにより,達成される。
特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば,トレンチを形成する工程が,半導体基板の主面に所望のパターンに形成された絶縁膜をマスクとしてトレンチエッチングする工程の後に,第一の非酸化性かつ非窒化性雰囲気にて熱処理する工程とハロゲン系ガスによるエッチング工程と第二の非酸化性かつ非窒化性雰囲気にて熱処理する工程とをこの順に行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法とすることが好ましい。
(中略)
【0010】
特許請求の範囲の請求項10記載の発明によれば,非酸化性かつ非窒化性雰囲気にて熱処理する工程の後,トレンチ内部に犠牲酸化膜の形成および除去をする工程を介して,ゲート酸化膜を形成する工程を行う特許請求の範囲の請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法とすることが望ましい。」
ウ 「【実施例1】
【0014】
本発明にかかる半導体装置の製造方法について,トレンチゲート型MOSFETの製造工程を例に,図1-1?図1-8を用いて順を追って説明する。まず,図1-1に示すように低抵抗のシリコン基板部分1(b)と高抵抗のシリコン基板表面部分1(a)とを具備するn型のシリコン基板1の前記高抵抗表面側に,p型領域1(c)を形成し,このp型領域1(c)の表面領域にマスク用酸化膜2を熱酸化あるいはCVDなどによって形成する。マスク用酸化膜2の材質は,シリコン酸化膜の他にシリコン窒化膜などの絶縁膜を使ってもよい。次に,フォトリソグラフィーにより図1-2に示すようにマスク酸化膜2にトレンチを形成するための窓あけを行う。窓あけの平面パターン形状はストライプ状でもよいし,格子状などでもよい。
次に,図1-3に示すように,マスク酸化膜2をマスクとしてシリコン基板1にトレンチ3を形成する。トレンチエッチングの方法としては,異方性をもつプラズマエッチングや,RIE(Reactive Ion Etching),異方性ウェットエッチングなどを使うことができる。MOSFETの場合,トレンチサイズは図1-3の時点で,たとえば幅w1は0.35μm?0.5μm程度,深さ1.5?3μm程度が目安となる。IGBTの場合は深さがやや深く,5μm程度の深さが望ましい。トレンチの深さは半導体装置の種類により変わるが,本発明による効果が見られるようになる深さは0.5μm以上の深さであり,従来のトレンチと比べて1.5μm以上となると,著しい効果を発揮する。
(中略)
【0018】
そこで本発明では,図2に示す状態のトレンチ3が多数本形成されたシリコン基板1を,気相反応炉に導入する。気相反応炉はたとえば石英などの汚染の少ない物質でできており,加熱用のヒーターと,ガス導入および排出口を持つものとする。気相反応炉は通常,800℃?900℃の常圧水素雰囲気(水素雰囲気は水素30%,Ar70%)である。この常圧水素雰囲気において,温度を900℃?1100℃の範囲に上げ,アニールを数10秒?数分間行う。この水素雰囲気によるアニールは,結晶ダメージ7やアモルファス状シリコン6を再度結晶シリコンに戻す効果と,表面ラフネス8を緩和する効果と,酸化物系残渣5を還元して除去する効果がある。酸化膜を除去するには水素分圧は高いほど好ましい。減圧雰囲気にすると,Si原子の表面拡散によるトレンチ形状が変化し易くなるので,この段階では常圧が好ましい。水素分圧は20%以上が好ましい。その結果,図2に示したトレンチエッチング後のエッチング残渣を有するトレンチ断面は,初期状態の図3-1の断面から残渣の減少した図3-2に示す断面状態になる。しかし,上記水素アニールによる化学的に還元性雰囲気で行われる効果は比較的マイルドな反応であるので,図2の状態のトレンチに対して導入されても,必ずしもトレンチの内壁を充分満足できるほどに洗浄する効果は得られない。前記水素アニールについては,必ずしも前記水素を含む混合ガスのように還元性でなくとも,Ar,Heガスのような希ガスのみでも,非酸化性,非窒化性の雰囲気となるガスならば,同様な効果を得られる。
【0019】
そこで,次に前述と同様の温度に維持された気相反応炉内に,水素ベースにHClや塩素ガスなどのハロゲン系ガスを混入した混合ガスを常圧で,好ましくは10%以上導入し,HClの強力なエッチング作用によって表面を洗浄する。一般にClやBrなどのハロゲン元素は強い酸化作用を持つ。ここで言う酸化作用とは,酸素原子を付着させる意味ではなく,化学反応論で言うところの,対象物から電子を奪うという意味での酸化作用である(ネルンストによる定義)。一般に酸化反応は還元反応より激しく,結晶シリコンやアモルファス状シリコン6に対しても強いエッチング作用を発揮すると同時に,酸化物系残渣5に対しても弱いがエッチング作用を持つ。また,パーティクル9や酸化物系残渣5はサイドエッチによっても除去されていく。このとき,トレンチ断面は図3-2から図3-3の状態を経て図3-4の状態となる。
【0020】
以上の工程により,トレンチ内壁のシリコン表面は,表面科学で言うところの清浄表面となり,汚染や不純物が極めて少ないシリコン結晶面が露出する。しかし,図3-4にも示している通り,パーティクル9や残渣5が存在していた箇所は,表面ラフネスが残ってしまう。この凸凹の高低差は,数10nm?100nm程度に達する。このような表面ラフネスを残したまま,電子デバイスを形成してしまうことは,プロセス的に安定せず,電気特性に突発的な悪影響を与える可能性があり,望ましくない。
そこで,再び常圧の水素ガスのみによるアニールにより,表面に生じた表面ラフネスを回復させる。このときの水素アニールの条件は,たとえば,圧力は常圧,シリコン基板温度は950℃?1050℃とする。ここで,シリコン基板温度を1050℃とした場合,アニール時間は1分未満が限界である。なぜならば,これ以上の長時間にわたって水素アニールを行うと,図4に示すようにシリコン結晶の形状が大きく変化してしまい,ボーイング形状という逆テーパーのついたトレンチ形状が現われ,後工程のポリシリコン電極の埋め込み工程で気泡が混入し易くなるなど扱い難くなる。シリコン基板温度を950℃と低くとった場合は,前述のようなシリコン結晶の形状変化が遅いので図4に示すボーイング形状まで至る時間は長くなり,数分のアニール処理を行ってよい。これらの処理により,トレンチ内壁の表面ラフネスを構成する凸凹の高低差は,当初の約10分の1の,数nm以下に抑えられる。この数字は,結晶格子1?3格子程度の極めて小さい数字であり,水素アニールの平滑化効果は,ここまでの実力を持っている。図5に水素アニールによって原子数層レベルで平滑化されたシリコン表面のAFM(Atomic Force Microscope)像の例を示す。図5(a)は,トレンチエッチング直後で,前述の気相反応炉における処理を行う前の,トレンチ内表面のAFM像であり,図5(b)は本発明にかかる前述の気相反応炉における処理を行った後のトレンチ内のAFM像である。
図7はトレンチ部分の拡大断面SEM写真図であり,両矢印により示す長さが2μmである。このSEM写真では,本発明による前述の処理をされたトレンチの幅が0.5μmであることを示している。
【0021】
以上の工程により,図3-5または図7のようなU字形の滑らかな断面を有するトレンチ形状が得られる。図3-5または図7においては,トレンチ開口部も水素アニール効果により丸みをおび,電子デバイスとしては電界集中が起きにくくなり,耐圧が上がる効果を生じる点も重要である。水素アニールによる表面ラフネスの回復効果およびシリコン結晶の変形効果自体は,たとえば前記非特許文献に記載されている。
以上の工程により,表面ラフネスが回復したトレンチ内壁4は,表面科学で言うところの清浄表面となっている。本工程の後,シリコン基板は一度気相反応炉から取り出され,空気に触れることになるが,通常のクリーンルームにおける十分にきれいな空気であれば,トレンチ内壁4の表面には良質の自然酸化膜が数nm形成され,他の汚染からは保護される。以上の説明では,図3-1?図3-5を用いてトレンチのミクロな観点によりトレンチ内の洗浄と角部の丸めについて説明したが,前記図3-1に対応し,マクロ的観点から見た図としては図1-4となる。同様に前記図3-5に対応するマクロ図は図1-6である。
【0022】
マクロな視点で見ると,まず,第1回目の水素アニールにより図1-4から図1-5のようにトレンチ形状がわずかに丸みを帯びる。続いて,ハロゲン系ガスによるエッチング作用と,第2回目の水素アニールによって,図1-6のように,さらに丸みを帯び,かつトレンチの側壁が上に開き気味のテーパーを有するトレンチが得られる。トレンチの側壁のテーパー形状が上に開き気味になることは,後述するように,ポリシリコンを主成分とするゲート電極をトレンチの中に埋め込む際に,空洞ができる危険が減るので有利である。テーパー角αは87度以上90度以下が好ましい。87度より小さいと,トレンチ幅が大きくなって好ましくない。90度を超えると,後工程のゲート電極の埋め込みの際に空隙が生じる惧れが高いので避けなければならない。トレンチサイズは図1-3の時点で,たとえば幅w1は0.35μm?0.5μm程度であったが,前記第2回目の水素アニール後では幅w2は0.5μmから0.7μmとなる。
【0023】
トレンチ内壁4の表面に数nm?0.1μm程度の厚さの犠牲酸化膜を形成し,これを除去する。犠牲酸化膜除去の際,フッ酸などの薬液が使われ,純水による水洗も行われる。従って,先に述べた汚染要因が再び入ってくることになる。しかし,気相反応炉において,1度は清浄表面が得られているから,汚染要因は本工程のみであり,それ以前の工程における累積的な汚染を引きずることは避けられる。また,犠牲酸化膜形成とその除去工程における汚染が顕著に見られる場合は,本工程を抜いてもよい。」
(2)引用技術的事項2
前記(1)より,引用文献2には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項2」という。)」が記載されていると認められる。
「シリコン基板にトレンチを形成する工程が,トレンチエッチングする工程と,この工程の後に,ハロゲン系ガスによるエッチング工程と非酸化性かつ非窒化性雰囲気にて熱処理し,この工程の後に,それ以前の工程における累積的な汚染を引きずらないように,トレンチ内部に犠牲酸化膜の形成及び除去をする工程を介して,ゲート酸化膜を形成する工程を行うこと。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【要約】
【課題】トレンチ内にMOS構造のゲートが設けられたトレンチゲート型半導体装置において,ストライプ状トレンチの終端部のゲート酸化膜に起因するゲート耐圧低下の問題を解決し,ゲート酸化膜の信頼性を向上させる。
【解決手段】トレンチ5の終端部のゲート酸化膜3aの厚さを,他のゲート酸化膜部分より厚くする。
トレンチ5の終端部をトレンチ5より深さの深いp終端領域26で囲む。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
半導体層と,前記半導体層に形成されたトレンチの内に形成され,前記トレンチの外の前記半導体層上に延びたゲート絶縁膜と,前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と,前記半導体層の表面近傍に形成され,前記トレンチの側壁上の前記ゲート絶縁膜に接したボディ層と,を備え,
前記ゲート絶縁膜は,前記ボディ層に接する部分で第1の膜厚を有する第1のゲート絶縁膜と,前記トレンチ内から前記トレンチの外の前記半導体層上に延びる部分で前記第1の膜厚より厚い第2の膜厚を有する第2のゲート絶縁膜と,を備えることを特徴とするトレンチゲート型トランジスタ。」
5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【要約】
半導体装置の製造方法は,トレンチの側面,トレンチの底部及びトレンチの周囲にゲート絶縁膜を形成する工程を備えている。ゲート絶縁膜を形成する工程は,トレンチの側面に第1の絶縁膜を形成する工程と,トレンチの底部及びトレンチの周囲に高密度プラズマ化学気相成長法を用いて第2の絶縁膜を形成する工程とを含む。ゲート絶縁膜におけるトレンチの底部及びトレンチの周囲に形成された部分の膜厚を,ゲート絶縁膜におけるトレンチの側面に形成された部分よりも厚くする。」
6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【要約】
【課題】 トレンチ型MOSFETでは,トレンチ角の電界集中によりゲート絶縁膜の耐圧が低くなる。これを抑制するためにゲート絶縁膜を厚くすると,オン抵抗が高くなり,ゲート絶縁膜の厚さがトレンチ内で一定では,低いオン抵抗と高い耐圧の両立が困難であった。
【解決手段】 低いオン抵抗と高い耐圧を両立するトレンチ型SiC-MOSFETを提供するために,トレンチ内のゲート絶縁膜の一部にボトムアップフィルの光CVD膜6bを用いる。これにより,側面のゲート絶縁膜よりも底面のゲート絶縁膜を厚くする。具体的には,SiC基板に対しトレンチを形成する工程と,トレンチの底に絶縁膜6bを光CVDで形成する工程と,絶縁膜の上方にゲート電極7を形成する工程によりトレンチ型SiC-MOSFETを製造する。」
7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【要約】
【課題】チャネルが形成されるトレンチの側面がチャネル移動度を高くできる(11-20)面や(1-100)面に近づけられ,高チャネル移動度が得られるようにする。
【解決手段】トレンチ7の両側面のうちの一方の側面,つまり(0001)面に対して成す角度が90°もしくはそれに近い角度になる方の側面に接するようにn^(+)型ソース領域5を形成し,トレンチ7の両側面のうちの一方にのみチャネルが形成されるようにする。このようにすることで,トレンチ7の両側面のうち,高いチャネル移動度が形成される方の側面にのみチャネルが形成されるようにすることができ,高いチャネル移動度を得ることが可能となる。」
8 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8には,図面とともに次の事項が記載されている。
「特許請求の範囲
[請求項1]オフ角を有する炭化珪素半導体基板の第1の主面上に形成された炭化珪素で構成される第1導電型のドリフト領域と,
前記ドリフト領域の表面上に形成された炭化珪素で構成される第2導電型のウェル領域と, 前記ウェル領域の表層部に選択的に形成された炭化珪素で構成される第1導電型のソース領域と,
前記ソース領域の表面から前記ウェル領域を貫通して前記ドリフト領域に達するトレンチと,
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と,
前記ウェル領域と前記ソース領域とに接続されたソース電極と,
前記炭化珪素半導体基板の第1の主面の反対側の面である第2の主面に炭化珪素半導体基板に接して形成されたドレイン電極と,
前記ウェル領域内に形成された,前記ウェル領域より不純物濃度が大きい第2導電型の高濃度ウェル領域と
を備え,
前記トレンチの第1側壁面側の前記ウェル領域には低チャネルドープ領域が形成され,前記トレンチの第2側壁面側の前記ウェル領域には前記低チャネルドープ領域より実効的アクセプタ濃度が低い高チャネルドープ領域が形成されたことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
(中略)
[請求項3]前記第1の主面が,(0001)面から[11-20]軸方向へ傾斜するオフ角を有し, 前記第1側壁面が,(11-20)面に近い面であり,
前記第2側壁面が,(-1-120)面に近い面である
ことを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。」
9 引用文献9について
(1)引用文献9の記載
本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2009-302510号公報(以下,「引用文献9」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,トレンチゲート構造を有する半導体装置およびその製造方法,特には,炭化珪素半導体(以降SiCと略記)あるいはAlGaN半導体などのIII族窒化物半導体を用いたトレンチゲート型半導体装置およびその製造方法に関する。」
イ 「【0099】
次に,第2マスク110cと第1マスク106aを用いてSiCを異方性エッチングして,ソースコンタクトイオン注入領域6a-1とソース拡張イオン注入領域6b-1とボディー層5aを貫いて,耐圧層3に達する第二トレンチ10cを形成する。第二トレンチの幅は0.6μmである。第二トレンチの幅は第2マスク110cの厚さにより制御できる。第2マスクの厚さを第一トレンチ幅の2分の一以上にすると第二トレンチ幅が無くなるので,第2マスクの厚さは第一トレンチ幅の2分の一未満にする必要がある。第二トレンチ10cに挟まれたボディー層5aの残部は,ボディー領域5となる。この段階のウエハの要部断面図を図23に示す。ここで,前記第一トレンチ10aの底部に幅狭の第二トレンチ10cをフォトリソグラフィー工程を経ずに形成できることが前記自己整合の意味である。自己整合によれば,第二トレンチ10cをマスク合わせ無しに形成できるので,マスクあわせの際に付随するマスクあわせ誤差が無くなり,その分セルピッチを小さくできるのである。
【0100】
次に,第2マスク110cと第1マスク106aを除去する。たとえば,ウエハはフッ酸に浸せばよい。その後,たとえば不活性ガス雰囲気中(少量のSiH_(4)等を加えてもよい)で,たとえば1700℃にて活性化アニールを行って,ソースコンタクトイオン注入領域6a-1とソース拡張イオン注入領域6b-1を,それぞれソースコンタクト領域6aとソース拡張領域6bとする。その後,必要に応じて,荒れたトレンチ内壁面の平坦化処理を行う。また,必要に応じて,犠牲酸化処理を行ってもよい。」
(2)引用技術的事項9
前記(1)より,引用文献9には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項9」という。)」が記載されていると認められる。
「炭化珪素半導体を用いたトレンチゲート型半導体装置の製造方法であって,トレンチを形成後,不活性ガス雰囲気中で活性化アニールを行い,その後,必要に応じて,荒れたトレンチ内壁面の平坦化処理を行い,必要に応じて,犠牲酸化処理を行うこと。」
10 引用文献10について
(1)引用文献10の記載
本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2010-021175号公報(以下,「引用文献10」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,トレンチゲート型の縦型半導体素子を備える炭化珪素(以下,SiCという)半導体装置およびその製造方法に関するものである。」
イ 「【0044】
〔図3(a)に示す工程〕 n^(-)型ドリフト層2やp型ベース領域3およびn型ソース領域4の上に,図示しないエッチングマスクを成膜したのち,トレンチ5の形成予定領域においてエッチングマスクを開口させる。そして,エッチングマスクを用いた異方性エッチングを行うことで,トレンチ5を形成する。この後,エッチングマスクを除去したのち,トレンチ5のコーナー部を丸めるための丸め処理を行う。丸め処理は,例えば水素エッチングなどにより行われ,必要に応じて犠牲酸化等を行っても良い。」
(2)引用技術的事項10
前記(1)より,引用文献10には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項10」という。)」が記載されていると認められる。
「トレンチゲート型の縦型半導体素子を備える炭化珪素半導体装置の製造方法であって,トレンチのコーナー部を丸めるための丸め処理は,水素エッチングや必要に応じて犠牲酸化を行うこと。」
第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「半導体素子を作製する方法」は,下記相違点1ないし3を除いて,本願発明1の「半導体装置を形成する方法」に相当する。
イ 引用発明の「SiCを含む半導体ボディを設ける工程」は,「半導体基板が設けられ」るものであるから,「半導体ボディの横方向に離間されたダイオード領域を形成する工程」と合わせて,本願発明1の「炭化珪素半導体基板を形成する工程」に相当する。
ウ 引用発明の「第1のダイオード領域」は,「半導体ボディの横方向に離間されたダイオード領域」として形成され,引用発明の「半導体ボディの第1の表面」は本願発明1の「前記基板の主面」に相当することに鑑みると,本願発明1の「前記基板の主面の下に互いに横方向に離間された複数の第1のドープ領域」に相当する。
エ 引用発明の「ソース領域」は,「半導体ボディの第1の表面を形成し」「ボディ領域に隣接する」から,下記オのとおり引用発明の「ボディ領域」が本願発明1の「第3のドープ領域」に相当することに鑑みると,本願発明の「前記主面から前記第1のドープ領域の上に存在する第3のドープ領域へ延びる第2のドープ領域」に相当する。
オ 引用発明の「ボディ領域」は,「ドリフト領域に隣接」し,「第1のダイオード領域」は「ドープ原子がドリフト領域中に注入されるように調整され」ることから,前記ウを鑑みると,本願発明1の「前記第1のドープ領域の上に存在する第3のドープ領域」に相当する。
カ 引用発明の「コンタクト領域」は,「第1の表面から第1のダイオード領域内に延在」するから,前記ウを鑑みると,本願発明1の「前記主面から前記第1のドープ領域へ延びる前記基板内の複数の第4のドープ領域」に相当する。
キ 引用発明の「nドープされたソース領域」は本願発明1の「前記第2のドープ領域は第1の導電型を有し」を満たし,引用発明の「ダイオード領域はボディ領域と同じp型タイプであり」は,本願発明1の「前記第1のドープ領域,第3のドープ領域および第4のドープ領域は第2の導電型を有する」を満たす。
ク 引用発明の「各注入工程は,注入されたドープ原子を活性化するための熱処理を含む」は,本願発明1の「前記第2,第3および第4のドープ領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板をアニールする工程」に相当する。
ケ 引用発明の「半導体ボディの第1の表面内にトレンチを作製する工程」は,「トレンチの側壁がソース領域とボディ領域に隣接するように,ダイオード領域とドリフト領域間に形成されるpn接合はトレンチの底部に隣接する」ものであるから,本願発明1の「前記第2および第3のドープ領域を貫通して広がるゲートトレンチであって,前記第1のドープ領域のうちの1つの領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチを形成する工程」に相当する。
コ 引用発明の「側壁とトレンチの底部との角が丸み付けされるトレンチの後処理であって,丸み付け処理は水素含有雰囲気中の熱処理である」は,下記相違点1を除いて,本願発明1の「前記ゲートトレンチの前記下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で高温工程を適用する工程」に相当する。
サ 引用発明では「ダイオード領域とドリフト領域間に形成されるpn接合はトレンチの底部に隣接する」ように「トレンチを作製する工程」と「トレンチの後処理」である「熱処理」を有するから,本願発明1の「前記ゲートトレンチを形成する工程と前記高温工程を適用する工程とは,前記第1のドープ領域の形成のあとになされ」を満たす。
シ 引用発明では「コンタクト領域は第1のダイオード領域より高い不純物濃度を有」するから,下記相違点3を除いて,本願発明1の「前記第4のドープ領域は,前記第1のドープ領域に比べて高い濃度にドープされる」を満たす。
ス すると,本願発明1と引用発明とは,下記セの点で一致し,下記ソの点で相違する。
セ 一致点
「半導体装置を形成する方法であって,前記方法は,
炭化珪素半導体基板を形成する工程であって,前記基板の主面の下に互いに横方向に離間された複数の第1のドープ領域と,前記主面から前記第1のドープ領域の上に存在する第3のドープ領域へ延びる第2のドープ領域と,前記主面から前記第1のドープ領域へ延びる前記基板内の複数の第4のドープ領域とを有し,前記第2のドープ領域は第1の導電型を有し,前記第1のドープ領域,第3のドープ領域および第4のドープ領域は第2の導電型を有する,工程と,
前記第2,第3および第4のドープ領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板をアニールする工程と
前記第2および第3のドープ領域を貫通して広がるゲートトレンチであって,前記第1のドープ領域のうちの1つの領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチを形成する工程と,
前記ゲートトレンチの前記下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で高温工程を適用する工程と,
前記ゲートトレンチを形成する工程と前記高温工程を適用する工程とは,前記第1のドープ領域の形成のあとになされ,
前記第4のドープ領域は,前記第1のドープ領域に比べて高い濃度にドープされる,方法。」
ソ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1の「高温工程を適用する工程」は「前記ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させる」ものであるのに対し,引用発明の「熱処理」はこの旨が不明である点。
(イ)相違点2
本願発明1では「前記高温工程中に前記ゲートトレンチの前記側壁に沿って形成された表面層を前記基板から除去する工程」を含むのに対し,引用発明ではこの工程を含まない点。
(ウ)相違点3
本願発明1では「前記第4のドープ領域は,前記第2,および第3のドープ領域に比べて高い濃度にドープされる」のに対して,引用発明ではこの旨が不明である点。
(2)相違点についての判断
相違点1及び2について,まとめて検討する。
ア 相違点1及び2に係る構成である「前記ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させる高温工程を適用する工程及び前記高温工程中に前記ゲートトレンチの前記側壁に沿って形成された表面層を前記基板から除去する工程」について,いずれの引用文献にも記載も示唆もない。
イ そもそも引用発明において「側壁とトレンチの底部との角が丸み付けされるトレンチの後処理であって,丸み付け処理は水素含有雰囲気中の熱処理である」工程は「角を丸み付け」するための「任意選択的な」ものとしか記載されておらず(前記第5の1(1)エ【0043】)トレンチの側壁自体には何ら着目していないから,当業者が「高温工程は第1の側壁124の近傍のSiC材料を変化させる。炭化珪素原子の再配置はゲートトレンチの表面層内のドーパント原子の再配置を招く。表面層は例えば20?40nmの厚さであるSiC材料の層であり、第1の側壁124を含むゲートトレンチ110の表面まで延びる。高温工程は、この表面層を完全に非ドープ状態にする、またはこの表面層が少なくとも非一様かつ予測不能ドーピング濃度を有するようにさせる。表面層は装置100のチャンネル領域を包含するので、漏れ電流増加と不正確な閾値電圧制御などの望ましくない装置特徴が、高温工程に伴うドーパント原子の再配置から生じ得る。」(本願明細書段落【0015】)ことを認識することはなく,したがってこのような「望ましくない」表面層を除去する工程を採用する動機付けがない。
ウ なお,引用技術的事項2では「シリコン基板にトレンチを形成する工程」において「トレンチ内部に犠牲酸化膜の形成及び除去をする工程」を介することが開示されているが,この「犠牲酸化膜の形成及び除去をする工程」は「それ以前の工程」を前提としており,この「それ以前の工程」は引用発明の工程とは異なる(基板材料や「ハロゲン系ガスによるエッチング工程」の有無)から,前提を異にするものであり,引用技術的事項2のうち「犠牲酸化膜の形成及び除去をする工程」のみを引用発明に採用することには阻害要因があるというべきである。
エ 引用技術的事項9では「必要に応じて,犠牲酸化処理を行うこと」が開示されているが,引用発明において表面層除去の必要性が示されていないことは,前述イのとおりであるから,引用技術的事項9を採用する動機付けがない。
オ 引用技術的事項10では,「丸め処理」として表面層を除去する「水素エッチング」や「必要に応じて犠牲酸化」が開示されているのであり,一方引用発明における「丸み付け処理」は表面層を除去する処理ではないから,「犠牲酸化」を追加する必要性がない。仮に引用発明における「丸み付け処理」に代えて引用技術的事項10の「水素エッチング」と「必要に応じて犠牲酸化」を採用しても,高温工程を前提とする相違点1に係る構成は得られない。
カ そして,本願発明1は,相違点1及び2に係る構成を備えることによって,「SiC技術においてチャンネル領域およびシールドゲート構造内に最少欠陥を有する電力用トランジスタを最少費用で提供する」(本願明細書段落【0006】)という格別の効果を奏すると認められる。
(3)まとめ
したがって,本願発明1は,引用文献1ないし10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2ないし15について
本願発明2ないし15は,本願発明1を引用するものであるから,前記1と同様の理由により,引用文献1ないし10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本願発明16について
(1)本願発明16と引用発明との対比
引用発明の「第1のダイオード領域」,「ソース領域」,「ボディ領域」及び「コンタクト領域」は,それぞれ本願発明16の「埋め込み領域」,「ソース領域」,「ボディ領域」及び「コンタクト領域」に相当し,その余の点は前記1(1)アないしシと同様であるから,本願発明16と引用発明とは,相違点1及び2並びに下記相違点3’の点で相違するが,その余の点で一致する。
(相違点3’) 本願発明16では「前記コンタクト領域は,前記ソース,ボディ領域に比べて高い濃度にドープされる」のに対して,引用発明ではこの旨が不明である点。
(2)相違点についての判断
相違点1及び2について検討すると,前記1(2)と同様である。
(3)まとめ
したがって,本願発明16は,引用文献1ないし10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本願発明17及び18について
本願発明17及び18は,本願発明16を引用するものであるから,前記3と同様の理由により,引用文献1ないし10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 原査定について
1 理由1について
審判請求時の補正により,請求項5及び6が補正されたことにより,理由1は解消した。
2 理由2について
前記「第6 対比及び判断」のとおりであるから,本願発明1ないし18は,引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
したがって,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。

第8 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-04 
出願番号 特願2015-240816(P2015-240816)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 綿引 隆  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 加藤 浩一
深沢 正志
発明の名称 シールドゲートを有する炭化珪素装置を形成する方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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