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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1340965 |
審判番号 | 不服2017-8161 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-06 |
確定日 | 2018-06-26 |
事件の表示 | 特願2014-178883「プロセス環境における関連付けられたグラフィック表示」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日出願公開、特開2015- 38736、請求項の数(29)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成17年(2005年)5月4日(パリ条約による優先権主張2004年5月4日,米国)を国際出願日とする特願2007-511657号の一部を,平成24年3月8日に新たな出願とした特願2012-51315号の一部を,平成26年9月3日に新たな出願としたものであって,平成27年10月30日付けで拒絶理由通知がなされ,平成28年4月25日に意見書及び手続補正書が提出され,平成28年6月10日付けで拒絶理由通知がなされ,平成29年9月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成29年1月31日付けで拒絶査定(原査定)がなされ,これに対し,平成29年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,平成30年1月22日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がなされ,平成30年4月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1-29に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明29」という。)は,平成30年4月20日に提出された手続補正書による手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-29に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,14は,以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクトを生成する表示エディタプログラムであって,前記表示エディタプログラムは, ユーザが,操作手段を表示デバイスのスクリーンに対して操作して,前記スクリーンに表示された,前記プロセスプラント内の前記構成要素の複数の視覚的特徴のライブラリから,前記視覚的特徴を編集キャンバス上に配置し, ユーザが,前記操作手段を前記スクリーンに対して操作して,前記配置された前記視覚的特徴に対してプロパティを定義し, ユーザが,前記操作手段を前記スクリーンに対して操作して,前記プロパティと前記構成要素とを結び付けることを可能にすることにより, 生成した表示オブジェクトを,実行時環境でインスタンス化されて実行可能なクラスオブジェクトとして,データベースに記憶する,表示エディタプログラム。」 「【請求項14】 プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクトであって, 前記表示オブジェクトは,インスタンス化されて実行可能なクラスオブジェクトである前記表示オブジェクトと, 前記プロセスプラント内の前記構成要素の複数の視覚的特徴のライブラリから視覚的特徴を,ユーザが操作手段を表示デバイスのスクリーンに対して操作することにより,選択することを可能にするプログラムと, 前記ユーザにより選択された前記視覚的特徴に対してプロパティを,ユーザが,前記操作手段を前記スクリーンに対して操作することにより,定義することを可能にするプログラムと, 前記表示オブジェクトを,実行時環境でインスタンス化されて実行可能なクラスオブジェクトとして,記憶するデータベースと, を含み, 前記プロパティと前記構成要素とが,ユーザによって対応付けられている, 表示オブジェクトシステム。」 なお,本願発明2-13,15-29の概要は以下のとおりである。 本願発明2-13,29は,本願発明1を直接又は間接的に引用した発明である。 本願発明15-28は,本願発明14を直接又は間接的に引用した発明である。 第3 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平11-265280号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。 (1)段落【0018】-【0019】 「【0018】図9に示す如く表示/制御システムは,出願人の提案に係るプログラマブル表示装置(1)に制御対象(2a)を直接に接続し,或いはプログラマブル表示装置(1)にPLC(3)を介して制御対象(2b)を接続して構成される。プログラマブル表示装置(1)においては,CPU(11)に,バスラインを介して,システムプログラムメモリ(12),データ格納メモリ(13),ユーザデータメモリ(10),タッチパネルコントローラ(14),グラフィックコントローラ(16)及び通信コントローラ(19)が接続され,タッチパネルコントローラ(14)にはタッチパネル(15)が,グラフィックコントローラ(16)にはビデオRAM(17)及びディスプレイ(18)が接続されている。又,CPU(11)には,PLC(3)の入出力制御機能を実現すべきI/O制御インターフェース(20)及び入出力ユニット(21)が接続されている。 【0019】FEPROM(12)には,図10に示す如く表示制御システムの格納エリア,通信プロトコルの格納エリア,ユーザ画面の格納エリア,制御機能プログラムの格納エリア,及びユーザプログラムの格納エリアが形成されている。ここで,表示制御システムは,プログラマブル表示装置(1)の画像表示制御に関する基本機能であって,予めFEPROM(12)に格納されている。通信プロトコルはPLC(3)との通信処理に用いられる。ユーザ画面は,作画エディターによって作成されてダウンロードされるものであり,ディスプレイ(18)に表示すべきベース画面や各種の画像ブロックの図形データ,並びに各画像ブロックに付与された後述の処理指示語等を含み,表示用プログラムを構成している。ユーザプログラムは,本発明に係るグラフィックラダーエディターによって作成されてダウンロードされるものであり,制御対象(2a)(2b)の動作を制御すべき制御用プログラムを構成している。又,制御機能プログラムはユーザプログラムを実行するためのプログラムである。」 (2)段落【0026】-【0040】 「【0026】図10に示すFEPROM(12)に格納すべきユーザプログラムは,図1に示すパーソナルコンピュータ(4)を用いて作成され,その後,プログラマブル表示装置(1)へダウンロードされる。ここでパーソナルコンピュータ(4)は,情報記録媒体(5)に記録されているエディタープログラムを読み取ることによって,本発明のグラフィックエディターを構成し,ディスプレイ(41)にはエディター画面が表示される。 【0027】次に,本発明のグラフィックエディターの構成及び動作につき,図8に示すワーク搬送工程を制御対象システムとする例を用いて,具体的に説明する。図8のワーク搬送工程は,ワークWを図中に矢印で経路で搬送するものであって,ワークWを水平方向に搬送するための第1ベルトコンベアT1と,第1ベルトコンベアから搬送されてくるワークW′を受け取って垂直上方に持ち上げるための第2ベルトコンベアT2と,第2ベルトコンベア上のワークW″を水平方向に押し出すための押出し機構Fとから構成される。制御対象システムを構成する機器としては,第1ベルトコンベアT1を回転駆動する第1モータM1と,第2ベルトコンベアT2を回転駆動する第2モータM2と,第2ベルトコンベアT2を昇降駆動する第1シリンダーC1と,第2ベルトコンベアT2の上昇位置にて水平押出し機構Fを往復駆動する第2シリンダーC2と,第1ベルトコンベアT1上のワークWを検知するための第1光電センサーS1と,第2ベルトコンベアT2上に移動したワークW′を検知するための第2光電センサーS2とが配置されている。 【0028】図2は,本発明に係るエディタープログラムの基本的な流れを表わしている。尚,エディター画面上には,予め,周知のグラフィック手段を用いて,ワーク搬送工程を表わすベース画面が描画されているものとする。図8の例では,ベース画面として,図3に示す如く第1ベルトコンベアT1,第2ベルトコンベアT2,及び水平押出し機構Fが描かれている。 【0029】図2のステップS1では,図3に示す如くエディター画面上に部品リスト(43)を表示する。図示する例では,部品リスト(43)として,(a)モータ,(b)シリンダー,(c)センサー,(d)接点,(e)カウンター,(f)タイマー,(g)ランプ,(h)電磁弁,(i)データ処理,及び(j)データ収集のシンボル画像が表示されている。尚,部品リスト(43)には,制御対象システムの構成に応じて,必要な部品を追加することが可能である。 【0030】ユーザは,ベース画面(42)に表示されているワーク搬送工程に,部品リスト(43)から必要な部品を移動させ,所定位置に配置することによって,図8に示す制御対象システムの構成図を作成する。図2のステップS2では,部品配置が終了したかどうかを判断し,終了したことが判断されると,ベース画面に表示されている各部品について,図4(a)(b)(c)及び図5(a)(b)に示す部品設定ダイアログボックス(44)?(48)を表示する。 ・・・(中略)・・・ 【0034】そこで,ユーザは各部品設定ダイアログボックスに対して必要なデータを入力する。図8の例では,第1光電センサーS1について入力デバイス“X000”,第2光電センサーS2について入力デバイス“X001”,第1モータM1の正転について出力デバイス“Y000”,第2モータM2の正転について出力デバイス“Y001”,第1シリンダーC1の前進について入力デバイス“X002”及び出力デバイス“Y002”,第1シリンダーC1の後退について“入力デバイスX003”及び出力デバイス“Y003”,第2シリンダーC2の前進について入力デバイス“X004”及び出力デバイス“Y004”,第2シリンダーC2後退について入力デバイス“X005”及び出力デバイス“Y005”を入力する。 【0035】各部品設定ダイアログボックスに入力されたデータは,図2のステップS4にて,ベース画面上に配置されている部品の座標データと対応づけられて,メモリに記憶される。 【0036】その後,ユーザは,ベース画面(42)上に表示されている部品を,制御の順序で順次,クリックする。図8の例では,図3中に示す順序?で各部品をクリックする。即ち, 先ず第1光電センサーS1によってワークWを検知するので,第1光電センサーS1を表わす部品をクリックする。 , 次に,第1モータM1及び第2モータM2を回転させるので,これらのモータを表わす部品をクリックする。 次に,第2光電センサーS2によってワークW′を検知するので,第2光電センサーS2を表わす部品をクリックする。 次に,第1シリンダーC1を前進させるので,第1シリンダーC1を表わす部品をクリックする。 次に,第2シリンダーC2を前進させるので,第2シリンダーC2を表わす部品をクリックする。 次に,第2シリンダーC2を後退させるので,第2シリンダーC2を表わす部品をクリックする。 最後に,第1シリンダーC1を後退させるので,第1シリンダーC1を表わす部品をクリックする。 【0037】上述の部品選択操作の過程で,図2のステップS5の如く1つの部品がクリックされると,ステップS6では,クリックされた部品についての入力データを図6に示すステップテーブルに書き込んでいく。図8の例では,図6に示す様に上述のクリック順序?がステップ番号となり,クリックされた部品についての入力データがコマンドとなって,次の様に一連の制御ステップが自動的に記述される。 【0038】(ステップ1) 第1光電センサーS1を表わす部品をクリックすることによって,該部品について設定されている入力デバイス“X000”が書き込まれる。 (ステップ2,3) 第1モータM1及び第2モータM2を表わす部品をクリックすることによって,これらの部品について設定されている出力デバイス“Y000”及び“Y001”が書き込まれる。 (ステップ4) 第2光電センサーS2を表わす部品をクリックすることによって,該部品について設定されている入力デバイス“X001”が書き込まれる。 (ステップ5) 第1シリンダーC1を表わす部品をクリックすることによって,該部品について設定されている前進の出力デバイス“Y002”及び入力デバイス“X002”が書き込まれる。 (ステップ6) 第2シリンダーC2を表わす部品をクリックすることによって,該部品について設定されている前進の出力デバイス“Y005”及び入力デバイス“X005”が書き込まれる。 (ステップ7) 第2シリンダーC2を表わす部品をクリックすることによって,該部品について設定されている後退の出力デバイス“Y004”及び入力デバイス“X004”が書き込まれる。 (ステップ8) 第1シリンダーC1を表わす部品をクリックすることによって,該部品について設定されている後退の出力デバイス“Y003”及び入力デバイス“X003”が書き込まれる。 【0039】図2のステップS7にて,全ての部品のクリックが終了したかどうかを判断し,イエスと判断されたときは,図6のステップテーブルの最後に,ステップ9として,(ステップ1)へジャンプすべきコマンド“JUMP1”が自動的に書き込まれ,ステップテーブルが完成する。 【0040】次に,図2のステップS8にて,ステップテーブルをニーモニック展開して,従来と同様にニーモニック及びオペランドからなる制御プログラムを作成する。そして,最後にステップS9にて,作成された制御プログラムをプログラマブル表示装置(1)にダウンロードする。」 上記記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「プログラマブル表示装置においては,CPUに,バスラインを介して,システムプログラムメモリ,データ格納メモリ,ユーザデータメモリ,タッチパネルコントローラ,グラフィックコントローラ及び通信コントローラが接続され,タッチパネルコントローラにはタッチパネルが,グラフィックコントローラにはビデオRAM及びディスプレイが接続されており,又,CPUには,PLCの入出力制御機能を実現すべきI/O制御インターフェース及び入出力ユニットが接続されており, FEPROMには,表示制御システムの格納エリア,通信プロトコルの格納エリア,ユーザ画面の格納エリア,制御機能プログラムの格納エリア,及びユーザプログラムの格納エリアが形成されており, ユーザプログラムは,グラフィックラダーエディターによって作成されてダウンロードされるものであり,制御対象の動作を制御すべき制御プログラムを構成している, 当該プログラマブル表示装置にダウンロードされる制御プログラムを作成するためのエディタープログラムであって, パーソナルコンピュータは,情報記録媒体に記録されているエディタープログラムを読み取ることによって,グラフィックエディターを構成し,ディスプレイにはエディター画面が表示され, グラフィックエディターは,ワーク搬送工程を制御対象システムとし, エディタープログラムの基本的な流れは, エディター画面上には,予め,ワーク搬送工程を表わすベース画面が描画されており, エディター画面上に部品リストを表示し,部品リストとして,(a)モータ,(b)シリンダー,(c)センサー,(d)接点,(e)カウンター,(f)タイマー,(g)ランプ,(h)電磁弁,(i)データ処理,及び(j)データ収集のシンボル画像が表示され, ユーザがベース画面に表示されているワーク搬送工程に,部品リストから必要な部品を移動させ,所定位置に配置することによって,制御対象システムの構成図を作成し, 部品配置が終了したかどうかを判断し,終了したことが判断されると,ベース画面に表示されている各部品について,部品設定ダイアログボックスを表示し, ユーザが各部品設定ダイアログボックスに対して必要なデータを入力すると,各部品設定ダイアログボックスに入力されたデータは,ベース画面上に配置されている部品の座標データと対応づけられて,メモリに記憶され, ユーザがベース画面上に表示されている部品を,制御の順序で順次,クリックすると,クリックされた部品についての入力データをステップテーブルに書き込んでいき, 全ての部品のクリックが終了したかどうかを判断し,イエスと判断されたときは,ステップテーブルの最後に,(ステップ1)へジャンプすべきコマンド“JUMP1”が自動的に書き込まれ,ステップテーブルが完成し, ステップテーブルをニーモニック展開して,従来と同様にニーモニック及びオペランドからなる制御プログラムを作成し, 作成された制御プログラムをプログラマブル表示装置にダウンロードするものである, エディタープログラム。」 2 引用文献2-3について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特表平09-500996号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 第10ページ第9-22行 「本発明は,全般的には,プロセスのモニタリング及びコントロールシステムに関し,詳細には,プロセスコントロールの解の設計を生成し,これにより,エンジニア,オペレータ,及びコントローラなどの各画面に合う特有の表示が生成できるよう,ユーザーが選択可能な属性,方法,及びグラフィック表示を有するコントロールテンプレートを生成するシステムに関する。エンジニアの画面での属性及び方法の改良は,これらの属性及び方法を用いた他の画面に自動的に反映される。」 イ 第10ページ第20-22行 「プロセスコントロールシステムは,例えば,化学,石油,製造業などにおけるプロセスの自動化に広く適用されている。」 ウ 第20ページ第21-25行 「本発明の新規なテンプレートジェネレータ124は,ユーザに新たなコントロールテンプレート機能を生成し又は存在するコントロールテンプレート機能を改変することを許容するインターフェイスを提供し,これらの両方ともがコントロールテンプレートライブラリ123に格納され得る。」 エ 第39ページ第25行-第40ページ第13行 「図16を参照すれば,ここで使用している新たなコントロールテンプレートPID-ADPを生成するプロセスの実施例の間に提供される情報の概略が示されている。この概略は,属性の定義1200,方法の定義1202,及びフラフィックの定義1204を含んでいる。属性の定義1200は,図8?10のスクリーンプロンプトを用いてユーザによって選択された属性情報を含んでいる。この情報は,属性の使用,コントロールテンプレートPID-ADPに関係する属性のタイプ,属性の名称,属性の範囲(もし適切なら),属性のデフォルトの値(もし適切なら),属性のデフォルトの値(もし適切なら),及び各属性に関係する特定の会話を含んでいる。方法の定義1202は,図7及び8のスクリーンプロンプトでユーザによって選択された情報に関係している。グラフィクの定義1204は,図13?15のスクリーンプロンプトでユーザによって選択された情報に関係している。この情報は,コントロールテンプレートPID-ADPのエンジニアの画面に関係するグラフィカルアイコン1216と,コントロールテンプレートPID-ADPのオペレータの画面を表すグラフィカルアイコン1218と,コントロールテンプレートの機器の技術者を表すグラフィカルアイコン1219とを含んでいる。」 したがって,引用文献2には,「化学,石油,製造業などにおけるプロセスの自動化に広く適用されているプロセスコントロールシステムに関し,詳細には,プロセスコントロールの解の設計を生成し,これにより,エンジニア,オペレータ,及びコントローラなどの各画面に合う特有の表示が生成できるよう,ユーザーが選択可能な属性,方法,及びグラフィック表示を有するコントロールテンプレートを生成するテンプレートジェネレータであって, ユーザに新たなコントロールテンプレート機能を生成し又は存在するコントロールテンプレート機能を改変することを許容するインターフェイスを提供し,これらの両方ともがコントロールテンプレートライブラリに格納され, 新たなコントロールテンプレートPID-ADPを生成するプロセスの実施例の間に提供される情報の概略は,属性の定義,方法の定義,及びグラフィックの定義を含んでおり,グラフィックの定義は,コントロールテンプレートPID-ADPのエンジニアの画面に関係するグラフィカルアイコンと,コントロールテンプレートPID-ADPのオペレータの画面を表すグラフィカルアイコンと,コントロールテンプレートの機器の技術者を表すグラフィカルアイコンとを含んでいる,テンプレートジェネレータ」という技術的事項が記載されていると認められる。 (2)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2002-132321号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 段落【0038】-【0041】 「【0038】工作機オブジェクト定義プログラムは,上述したようにJAVA言語で作成されたオブジェクト指向プログラミングであって,複数のNC工作機械50毎にクラスオブジェクトを定義して,ネットワークサーバ40の第1データベース43に格納するためのものである。このクラスオブジェクトには,NC工作機械50の名称,センサ情報,各種センサが出力する値に関するしきい値,センサ情報がしきい値を超えた場合に関する通知方法,緊急アラーム情報の種別とこれが発生した場合に関する通知方法等が定義される。クラスオブジェクトは,ネットワークサーバ40において,固有のオブジェクトIDが付与され第1データベース43に格納される。第1データベース43は,図3に示されるように,オブジェクトIDとこのオブジェクトIDに対応するクラスオブジェクトとを対として格納可能に構成されている。 ・・・(中略)・・・ 【0041】第1データベース43に格納されているクラスオブジェクトは,ネットワークサーバ40においてインスタンス化され,ネットワークサーバ40上のメモリに実行可能な状態に展開される。また,ネットワークサーバ40では,インスタンス化されたクラスオブジェクトに対して固有のインスタンスIDが付与される。このインスタンスIDは,インスタンス化されたクラスオブジェクトに対応するデバイスIDと組み合わせて第2データベース45に格納される。第2データベース45は,図4に示されるように,インスタンスIDとデバイスIDとを対として格納可能に構成されている。」 したがって,引用文献3には,「複数のNC工作機械50毎にクラスオブジェクトを定義して,ネットワークサーバ40の第1データベース43に格納するための工作機オブジェクト定義プログラムにおいて,第1データベース43に格納されているクラスオブジェクトは,ネットワークサーバ40においてインスタンス化され,ネットワークサーバ40上のメモリに実行可能な状態に展開される」という技術的事項が記載されていると認められる。 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 下記(ア)-(キ)で示すとおり,引用発明と本願発明1とは,「ユーザが,操作手段を表示デバイスのスクリーンに対して操作して,前記スクリーンに表示された,制御対象システム内の前記構成要素の複数の視覚的特徴のライブラリから,前記視覚的特徴を編集キャンバス上に配置し」という点で共通するといえる。 (ア)引用発明の「ディスプレイ」は,本願発明1の「表示デバイス」に相当する。 (イ)引用発明の「(a)モータ,(b)シリンダー,(c)センサー,(d)接点,(e)カウンター,(f)タイマー,(g)ランプ,(h)電磁弁,(i)データ処理,及び(j)データ収集」,「シンボル画像」,「部品リスト」は,それぞれ本願発明1の「構成要素」,「視覚的特徴」,「ライブラリ」に相当し,引用発明の「ワーク搬送工程」と本願発明1の「プロセスプラント」は,「制御対象システム」である点で共通するといえる。 (ウ)引用発明の「部品リスト」が表示される「エディター画面」は,本願発明1の「ライブラリ」が表示される「スクリーン」に相当する。 (エ)引用発明において,「部品リストから必要な部品を移動させ,所定位置に配置」される「ベース画面」は,本願発明1の「編集キャンバス」に相当する。 (オ)引用発明では,「ユーザがベース画面に表示されているワーク搬送工程に,部品リストから必要な部品を移動させ,所定位置に配置」しており,この「配置」された「部品」の「シンボル画像」が「ベース画面」に表示されることは明らかである。 (カ)引用発明において,ユーザが何らかの「操作手段」を用いて「ベース画面に表示されているワーク搬送工程」が表示される「エディター画面」に対する「操作」を行っていることは明らかである。 (キ)そうすると,引用発明では,「ディスプレイにはエディター画面が表示され」,この「エディター画面上に」,「ワーク搬送工程を表わすベース画面が描画され」,且つ,「部品リストを表示し」ており,「ユーザがベース画面に表示されているワーク搬送工程に,部品リストから必要な部品を移動させ,所定位置に配置することによって,制御対象システムの構成図を作成」することは,本願発明1の「ユーザが,操作手段を表示デバイスのスクリーンに対して操作して,前記スクリーンに表示された,前記プロセスプラント内の前記構成要素の複数の視覚的特徴のライブラリから,前記視覚的特徴を編集キャンバス上に配置し」と「ユーザが,操作手段を表示デバイスのスクリーンに対して操作して,前記スクリーンに表示された,制御対象システム内の前記構成要素の複数の視覚的特徴のライブラリから,前記視覚的特徴を編集キャンバス上に配置し」という点で共通するといえる。 イ 引用発明では,「ユーザがベース画面に表示されているワーク搬送工程に,部品リストから必要な部品を移動させ,所定位置に配置することによって,制御対象システムの構成図を作成し,部品配置が終了したかどうかを判断し,終了したことが判断されると,ベース画面に表示されている各部品について,部品設定ダイアログボックスを表示し,ユーザが各部品設定ダイアログボックスに対して必要なデータを入力」しており,この「各部品設定ダイアログボックスに対して必要なデータを入力」することは,本願発明1の「前記配置された前記視覚的特徴に対してプロパティを定義」することに相当する。 また,上記ア(カ)で述べたとおり,ユーザが何らかの「操作手段」を用いて「エディター画面」に対する「操作」を行っていることは明らかである。 そうすると,引用発明と本願発明1とは,「ユーザが,前記操作手段を前記スクリーンに対して操作して,前記配置された前記視覚的特徴に対してプロパティを定義し」という点で一致するといえる。 ウ 引用発明では,「ユーザが各部品設定ダイアログボックスに対して必要なデータを入力すると,各部品設定ダイアログボックスに入力されたデータは,ベース画面上に配置されている部品の座標データと対応づけられて,メモリに記憶され」ており,この「各部品設定ダイアログボックスに入力されたデータは,ベース画面上に配置されている部品の座標データと対応づけられ」ることは,本願発明1の「前記プロパティと前記構成要素とを結び付けること」に相当する。 また,上記ア(カ)で述べたとおり,ユーザが何らかの「操作手段」を用いて「エディター画面」に対する「操作」を行っていることは明らかである。 そうすると,引用発明と本願発明1とは,「ユーザが,前記操作手段を前記スクリーンに対して操作して,前記プロパティと前記構成要素とを結び付ける」という点で一致するといえる。 エ 引用発明の「エディタープログラム」は,以下の相違点を除き,本願発明1の「表示エディタプログラム」に相当する。 よって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「ユーザが,操作手段を表示デバイスのスクリーンに対して操作して,前記スクリーンに表示された,制御対象システム内の前記構成要素の複数の視覚的特徴のライブラリから,前記視覚的特徴を編集キャンバス上に配置し, ユーザが,前記操作手段を前記スクリーンに対して操作して,前記配置された前記視覚的特徴に対してプロパティを定義し, ユーザが,前記操作手段を前記スクリーンに対して操作して,前記プロパティと前記構成要素とを結び付ける, 表示エディタプログラム。」 (相違点) (相違点1) 本願発明1と引用発明1とは,「制御対象システム内の前記構成要素の複数の視覚的特徴のライブラリから,前記視覚的特徴を編集キャンバス上に配置」する点で共通するものの,本願発明1の「制御対象システム」は「プロセスプラント」であるのに対して,引用発明の「制御対象システム」は「ワーク搬送工程」であり,且つ,本願発明1の「表示エディタプログラム」によって生成されるのは,「プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」であるのに対して,引用発明の「エディタープログラム」は,「ワーク搬送工程」の「制御対象の動作を制御すべき制御プログラム」を作成する点。 (相違点2) 本願発明1の「表示エディタプログラム」は,「生成した表示オブジェクトを,実行時環境でインスタンス化されて実行可能なクラスオブジェクトとして,データベースに記憶する」のに対して,引用発明の「エディタープログラム」は,「作成された制御プログラムをプログラマブル表示装置にダウンロードする」点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 引用文献1の段落【0002】に,【従来の技術】として,「例えば,化学工場のプラントや機械工場の生産ライン,更にはビル内の宅配便ボックス等,各種のオートメーション分野において,それらのシステムを構成する1或いは複数のデバイスを制御対象として,制御対象の状態を表示すると共に,オペレータの指令に応じて制御対象の動作を制御するために,1或いは複数の制御対象を,制御機能を主体とするプログラマブルロジックコントローラ(以下,PLCという)に接続すると共に,該PLCに対して,表示機能を主体とするプログラマブル表示装置(例えば特公平3-68395号,特開平5-303477号,特開平6-214535号,特開平6-162155号等参照)を接続してなる表示/制御システムが開発されている。」と記載されているように,プログラマブル表示装置の制御対象を,化学工場などの「プラントシステム」にすることは周知の事項であるから,引用発明における「制御対象システム」を「プラントシステム」とすること自体には,技術的困難性は認められない。 しかしながら,引用文献1-3のいずれにも,「プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」は記載されていない。 特に,引用文献2には,「エンジニア,オペレータ,及びコントローラなどの各画面に合う特有の表示が生成できるよう」,「グラフィック表示を有するコントロールテンプレートを生成するテンプレートジェネレータ124」が記載されており,生成される「新たなコントロールテンプレートPID-ADP」の「グラフィック定義」に「コントロールテンプレートPID-ADPのエンジニアの画面に関係するグラフィカルアイコンと,コントロールテンプレートPID-ADPのオペレータの画面を表すグラフィカルアイコンと,コントロールテンプレートの機器の技術者を表すグラフィカルアイコン」を含めることが記載されているものの,複数の機能(エンジニア,オペレータ,及びコントローラなどの各画面)に「共通の表示オブジェクト」を生成することまでは記載されていない。また,このことが,当該技術分野における周知技術を適用するなどして容易に想到し得たものとも認められない。 したがって,上記相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2-13,29について 本願発明2-13,29も,本願発明1の「プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明14について 本願発明14は,本願発明1に対応するシステムの発明であり,本願発明14も,本願発明1の「プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本願発明15-28について 本願発明15-28も,本願発明14の「プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は,請求項1-29について上記引用文献1-3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,平成30年4月20日付け手続補正により補正された請求項1-29は,それぞれ「プロセスプラント内の構成要素の動作を表し且つ各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」という事項を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1-29は,上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第1号について (1)当審では,請求項1の「複数のインタフェースで実行される複数の機能に共通のプログラムである表示オブジェクト」,「インスタンス化されて実行可能なプログラムであるクラスオブジェクトとして,表示オブジェクトを生成する」との記載に関して,「表示オブジェクト」及び「クラスオブジェクト」が「プログラム」そのものであることは,発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年4月20日付けの補正において,「複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」,「インスタンス化されて実行可能なクラスオブジェクトとして,データベースに記憶する」と補正された結果,この拒絶理由は解消した。 (2)当審では,請求項14の「複数のインタフェースで実行される複数の機能に共通のプログラムである表示オブジェクト」との記載に関して,「表示オブジェクト」が「プログラム」そのものであることは,発明の詳細な説明に記載されておらず,さらに,「選択することを可能にするプログラム」及び「定義することを可能にするプログラム」が「表示オブジェクト」に含まれることも記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年4月20日付けの補正において,「複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能に共通の表示オブジェクト」とされ,さらに,「選択することを可能にするプログラム」及び「定義することを可能にするプログラム」が「表示オブジェクトシステム」に含まれると補正された結果,この拒絶理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第2号について (1)当審では,請求項1,14の「各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行されるように開発された」との記載では,「他の機能及びインタフェース」が何の機能,インタフェースであるのか不明であり,且つ,「開発された」とは,どのような構成であるのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年4月20日付けの補正において,「各々他の機能及びインタフェースとは独立して実行され,複数のインタフェースで実行される複数の機能であって,各々の特定のアプリケーションでは,別々の表示オブジェクトが設定される前記複数の機能」と補正された結果,この拒絶理由は解消した。 (2)当審では,請求項1の記載では,「表示エディタプログラム」そのものが,「表示オブジェクトを生成」し,「表示オブジェクトを生成」し,「前記視覚的特徴を編集キャンバス上に配置」し,「プロパティを定義」し,「前記プロパティと前記構成要素とを結び付ける」かのようであるが,「プログラム」そのものが機能を実行することはあり得ず,請求項1に係る発明を明確に把握することができないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年4月20日付けの補正において,「前記表示エディタプログラムは,ユーザが・・・配置し,ユーザが・・定義し,ユーザが・・・結び付けることを可能にすることにより,生成した表示オブジェクトを,実行時環境でインスタンス化されて実行可能なクラスオブジェクトとして,データベースに記憶する」と補正された結果,コンピュータに機能を実行させるものであることが明らかとなり,この拒絶理由は解消された。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-06-11 |
出願番号 | 特願2014-178883(P2014-178883) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山崎 慎一、池田 聡史、酒井 優一 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
松田 岳士 稲葉 和生 |
発明の名称 | プロセス環境における関連付けられたグラフィック表示 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 加藤 和詳 |