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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B01J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01J
管理番号 1341016
審判番号 不服2017-19458  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-27 
確定日 2018-06-26 
事件の表示 特願2015-516670「反応器内における固体粒子の分散」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月19日国際公開、WO2013/186497、平成27年 9月10日国内公表、特表2015-526273、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)6月13日(パリ条約による優先権主張 2012年6月13日、(FR)フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、平成29年2月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月14日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がされ、同年8月30日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、その後、平成30年2月2日付けの審査官の作成した前置報告書に対する上申書が同年3月28日付けで提出されたものである。

2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1、6、7、10に係る発明は、以下の引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願請求項1?7、10に係る発明は、以下の引用例1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例等一覧
1.特開平7-60104号公報
2.米国特許第3298748号明細書

3.本願発明
本願請求項1?10に係る発明(以下、項番号に応じて、「本願発明1」などという。)は、平成29年12月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】
固体粒子をチャンバに充填して分散するための分散システムにおいて、
前記チャンバ内に固体粒子用の充填装置を確実に保持するように構成された保持装置と、
前記チャンバの充填に関する情報を得るように構成されたセンサを支持するセンサ支持装置と、
前記充填装置に固定して連結されて環状リングを有している支持要素と
を備えており、
前記保持装置及び前記センサ支持装置が前記充填装置に対して移動可能に前記充填装置に前記支持要素を介して取り付けられ得るように構成されており、
前記支持要素は、前記保持装置及び/又は前記センサ支持装置が前記環状リングに沿って摺動可能であるように前記保持装置及び/又は前記センサ支持装置を支持すべく構成されていることを特徴とする分散システム。
【請求項2】
前記保持装置及び/又は前記センサ支持装置に固定して連結され、前記環状リング上を摺動するように取り付けられた固定プレートを更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の分散システム。
【請求項3】
前記保持装置及び/又は前記センサ支持装置を前記支持要素に固定するための手段を更に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散システム。
【請求項4】
前記充填装置に対する前記保持装置の高さを調整するための手段を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の分散システム。
【請求項5】
前記センサ支持装置は、前記センサを前記充填装置に対して横方向に偏移させるためのスペーサ要素を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の分散システム。
【請求項6】
前記スペーサ要素は駆動チェーンを有しており、
前記センサ支持装置は、前記駆動チェーンを導くための案内要素を有しており、
前記案内要素の出口にある前記駆動チェーンの一部が、前記案内要素の入口にある前記駆動チェーンの一部の方向とは異なる方向に延びているように、前記案内要素は、前記駆動チェーンを導くべく構成されていることを特徴とする請求項5に記載の分散システム。
【請求項7】
前記案内要素は、前記駆動チェーンを受けるための通路を画定しており、該通路は略90度の角度を有することを特徴とする請求項6に記載の分散システム。
【請求項8】
充填装置をチャンバ内に確実に保持するように構成された保持装置と、前記チャンバの充填に関する情報を得るように構成されたセンサを支持するセンサ支持装置と、前記充填装置に固定して連結されて環状リングを有している支持要素とを備えた固体粒子分散システムを前記チャンバに設置する方法において、
前記支持要素は、前記保持装置及び/又は前記センサ支持装置が前記環状リングに沿って摺動可能であるように前記保持装置及び/又は前記センサ支持装置を支持すべく構成されており、
前記センサ支持装置及び前記保持装置を前記充填装置に前記支持要素を介して組み立てる工程と、
前記チャンバ内の環境及び/又はモニタリングが望まれている固体粒子の層の直径に適合すべく、前記センサ支持装置及び前記保持装置が前記充填装置に対して移動している間に調整する工程と
を有することを特徴とする方法。」

4.引用例の記載(下線は当審が付与した。)
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、「触媒表面形状検査方法および装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、触媒表面形状検査方法およびその装置に関し、石油化学プラント等で使用される反応塔の内部に顆粒状の触媒を充填する際に利用される。」
「【0013】触媒充填装置20は、反応塔10内に吊り下げ導入されて触媒の回転散布を行う触媒放出器30と、この触媒放出器30を吊り下げるチェン41を巻き上げて触媒放出器30を昇降させるチェン巻き上げ機構40と、散布すべき触媒を供給するホッパ機構50と、このホッパ機構50からの触媒を触媒放出器30に供給するホース61を巻き上げるホース巻き上げ機構60とを備えている。また、触媒充填装置20は、反応塔10内に充填された触媒11の表面高さを検出するワイヤ状のレベル計71を含む各種センサからの出力および各種設定に基づいて全体の動作制御を行う制御手段70を備えている。
【0014】触媒放出器30は、図2および図3に示すように、下部に回転しながら触媒を放出する放出板31を有し、内部に放出板31を回転駆動するモータ32およびシャフト33を備えている。また、触媒放出器30は内部にホース61から供給された触媒を放出板31まで送る触媒通路34を有し、外周に触媒放出器30を反応塔10の中心に保持するための保持手段として径方向に伸びる三本の保持アーム35を備えている。」
「【0016】保持アーム35は、各々複数の平行リンクを連続させたパンタグラフ式の伸縮機構であり、触媒放出器30の外周の三箇所に等間隔で配置されている。そして、収縮時には触媒通路34の三本の中間部の間に形成された格納部36に格納され、かつ互いに同量づつ伸長されて先端部が反応塔10の内面に当接することで、触媒放出器30を反応塔10の中心位置に保持するようになっている。」
「【0018】保持アーム35基端側の一方の端部80A は触媒放出器30の下部に回動連結されている。一方、触媒放出器30の中心には内部にシャフト33が挿通される筒状のスライドシャフト81が設けられ、その周囲には当該スライドシャフト81に沿って触媒放出器30の上部から中間部まで移動自在なスライド部材82が設けられ、他方の端部80B はこのスライド部材82に回動連結されている。」
「【0020】保持アーム35の先端側には、水平に延びる保持アーム35に対して上下方向に伸びる棒状の先端部材84が装着されている。先端部材84の下端には保持アーム35先端側の下側の端部80C が回動連結され、上側の端部80D は先端部材84の上部から下方へ変位自在かつ回動自在に係合されており、保持アーム35が伸縮した際には先端部材84は一定の水平高さを維持しながら触媒放出器30から径方向に移動される。先端部材84は保持アーム35の収縮時には、保持アーム35とともに格納部36内に収容される。」
「【0022】先端部材84の上端にはリミットスイッチを用いた当接センサ87が配置され、下端には光学式や超音波式等の遠隔測定可能な距離センサ88が配置されている。当接センサ87は、ローラ85が反応塔10の内面に当接した際の揺動アーム86の揺動を検出するものであり、その検出出力は制御手段70に接続されている。距離センサ88は、下方に向けて光または超音波のビームを発射し、反応塔10内に充填された触媒11の表面からの反射を検出することで、当該表面から触媒放出器30までの距離つまり高さを検出するものであり、その検出出力は制御手段70に接続されている。」
「【0031】前述した触媒散布および触媒放出器30の上昇を繰り返し、触媒放出器30が反応塔10内の所定の高さに達したら、反応塔10内に充分な量の触媒11が充填されたことになるので、制御手段70は、触媒放出器30による触媒散布を停止させ、保持アーム35を収縮させて格納する。制御手段70は、保持アーム35を収縮させる間に、その先端下部の距離センサ88で触媒11の表面までの距離を測定し、触媒11の表面に対して径方向の走査を行うことで当該表面の平坦度を検査する。この検査の結果、表面に凹凸等がある場合、再び保持アーム35を伸長させて触媒放出器30による触媒散布を行う。この際、凹部分の径方向位置に多量の触媒が落下するように触媒放出器30の散布状態を適宜調整する。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】



(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された引用例2には、次の記載がある。
「The present invention refers to an apparatus for feeding and distributing material to storage containers, such as silos, having an inlet for the material in the top of the container.」(1欄11?14行)
(当審仮訳:本発明は、容器の頂部に材料の入口を有するサイロのような貯蔵容器に材料を供給し分配する装置に関する。
「In FIG. 1, reference numeral 1 designates the top of a silo, and reference numeral 2 designates a pneumatic conveyor of the previously mentioned type, in which the conveying air is separated from the feed material in the bend of the feed channel and the material leaves the channel with a low velocity. As shown in FIG. la, the feed channel is open at its underside in the upper bend-like part. The material is collected in a flute 3 and falls from this into a pipe 4. The apparatus comprises supporting means including a frame 5 having three legs constituting guides 6, which are slidable in holders 7 mounted on the container or silo top. If there is a lack of space, the apparatus can thus be lowered in the container. Furthermore, the apparatus can be displaced upward and used in a position above the container, which position facilitates the distribution of the material when the container is practically completely filled. Two horizontal beams 9 carry the frame holders 7 and a floor 8.」(2欄61行?3欄6行)
(当審仮訳:図1において、参照番号1はサイロの頂部を示し、参照番号2は既に述べた形式の空気搬送装置を示し、この空気搬送装置においては、搬送用の空気は供給路の湾曲部において供給材料から分離されて、材料は低速となって供給路から離れる。図1aで示されるように、供給路は、上向きの湾曲部の下端で開口している。材料はフルート形状の部材3に集められ、この部材からパイプ4に落下する。この装置は、ガイド6を構成する3つの脚部を有するフレーム5を含む支持手段を有し、ガイド6は、容器、すなわち、サイロの頂上に取り付けられたホルダ7に対して、摺動可能となっている。スペースが不足する場合には、装置を容器内で下降させることができる。さらに、装置は、容器の上方の位置で上方に変位させることができ、容器の上方の位置に使用することができ、容器が実質的に完全に充填されたときの材料の分配を容易にする。2つの水平ビーム9は、フレームホルダ7と床8とを支持する。)








5.引用発明の認定
上記「4.(1)」から、引用例1には、触媒表面形状検査装置について、
該触媒表面形状検査装置は、反応塔の内部に顆粒状の触媒を充填する際に利用されるものであり(【0001】)、
該触媒充填装置20は、反応塔10内に吊り下げ導入されて触媒の回転散布を行う触媒放出器30を備え(【0013】)、
該触媒放出器30は、外周に触媒放出器30を反応塔10の中心に保持するための保持手段として径方向に伸びる三本の保持アーム35を備え(【0014】)、
該保持アーム35基端側の一方の端部80A は触媒放出器30の下部に回動連結され(【0018】)、
該保持アーム35の先端側には、水平に延びる保持アーム35に対して上下方向に伸びる棒状の先端部材84が装着され(【0020】)、
該先端部材84の下端には光学式や超音波式等の遠隔測定可能な距離センサ88が配置され、該距離センサ88は、下方に向けて光または超音波のビームを発射し、反応塔10内に充填された触媒11の表面からの反射を検出することで、当該表面から触媒放出器30までの距離つまり高さを検出するものであって(【0022】)、
該距離センサ88は、保持アーム35を収縮させる間に、触媒11の表面までの距離を測定し、触媒11の表面に対して径方向の走査を行うことで当該表面の平坦度を検査する(【0031】)ことが記載されている。

そうすると、引用例1には、
「反応塔の内部に顆粒状の触媒を充填する触媒充填装置20を備え、
該触媒充填装置20は、反応塔10内に吊り下げ導入されて触媒の回転散布を行う触媒放出器30を備え、
該触媒放出器30は、外周に触媒放出器30を反応塔10の中心に保持するための保持手段として径方向に伸びる三本の保持アーム35を備えており、
該保持アーム35の先端側には、水平に延びる保持アーム35に対して上下方向に伸びる棒状の先端部材84が装着されており、
該先端部材84の下端には、光学式や超音波式等の遠隔測定可能な下方に向けて光または超音波のビームを発射し、反応塔10内に充填された触媒11の表面からの反射を検出して、触媒の表面の高さを検出する距離センサ88が配置され、
該距離センサ88は、保持アーム35を収縮させる間に、触媒11の表面までの距離を測定し、触媒11の表面に対して径方向の走査を行うことで触媒11の表面の平坦度を検査するものである、触媒表面形状検査装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

6.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「顆粒状の触媒」、「反応塔10」、「触媒放出器30」、「回転散布」、「触媒11の表面の平坦度」及び「触媒放出器30を反応塔10の中心に保持するための保持手段として径方向に伸びる三本の保持アーム35」は、本願発明1の「固体粒子」、「チャンバ」、「固体粒子用の充填装置」、「充填して分散」、「チャンバの充填に関する情報」及び「チャンバ内に固体粒子用の充填装置を確実に保持するように構成された保持装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「距離センサ88」は、「触媒11の表面の平坦度を検査するもの」であるから、本願発明1の「チャンバの充填に関する情報を得るように構成されたセンサ」に相当し、引用発明の「距離センサ88が配置され」た「先端部材84」は、本願発明1の「センサを支持するセンサ支持装置」に相当する。
また、引用発明の「顆粒状の触媒を充填する触媒充填装置20」は、本願発明1の「固体粒子をチャンバに充填して分散するための分散システム」に相当する。
そして、引用発明では、保持アーム35の収縮に伴って、触媒11の表面に対して径方向の走査を行うものであって、保持アーム35及び距離センサ88は、触媒放出器30に対して、径方向に移動するものであるから、本願発明1の「保持装置及びセンサ支持装置が充填装置に対して移動可能に充填装置に支持要素を介して取り付けられ得るように構成されて」いる構成と、引用発明の「距離センサ88は、保持アーム35を収縮させる間に、触媒11の表面までの距離を測定し、触媒11の表面に対して径方向の走査を行うことで触媒11の表面の平坦度を検査する」構成とは、「保持装置及びセンサ支持装置が充填装置に対して移動可能に充填装置に取り付けられ得るように構成されて」いる点で共通する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「固体粒子をチャンバに充填して分散するための分散システムにおいて、
前記チャンバ内に固体粒子用の充填装置を確実に保持するように構成された保持装置と、
前記チャンバの充填に関する情報を得るように構成されたセンサを支持するセンサ支持装置と、
を備えており、
前記保持装置及び前記センサ支持装置が前記充填装置に対して移動可能に前記充填装置に取り付けられ得るように構成されている、
分散システム。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。

(相違点)
本願発明1は、「充填装置に固定して連結されて環状リングを有している支持要素」を有し、保持装置及びセンサ支持装置の取り付けが、該支持要素を介しており、該支持要素は、保持装置及び/又はセンサ支持装置が環状リングに沿って摺動可能であるように保持装置及び/又はセンサ支持装置を支持すべく構成されているのに対し、引用発明は、そのような支持要素を備えているかどうか不明な点。

ここで、相違点について検討する。
引用発明において、「触媒放出器30」は、「反応塔10内に吊り下げ導入されて触媒の回転散布を行う」ものであるから、何らかの支持部材(以下、「支持部材A」という。)に固定されているとしても、そのような支持部材Aがどのような形状のものかは不明である。
そして、引用発明の「先端部材84の下端に」「配置され」た「距離センサ88」について、「先端部材84」は「保持アーム35」の先端側にあって、「保持アーム35」が、何らかの支持部材(以下、「支持部材B」という。)に固定されており、「先端部材84」の取り付けが、その支持部材Bを介してなされているといえるとしても、その支持部材Bの形状は不明であって、「保持アーム35」の支持部材Bと、「触媒放出器30」の支持部材Aとの関係は、不明というほかない。

さらに、上記支持部材A、Bが存在したとしても、それらの形状が不明であるから、「触媒放出器30」及び/又は「距離センサ88」が、支持部材A、Bに沿って摺動可能であるかどうかは不明というほかない。

そして、引用発明において、「触媒放出器30」の支持部材Aと、「距離センサ88」の支持部材Bとを、共通の環状リングとし、しかも、「触媒放出器30」及び/又は「距離センサ88」を該環状リングに沿って摺動可能とすること、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を備えることが、当業者にとって自明のものとは認められない。

また、原査定の拒絶の理由に引用された引用例2に記載された「貯蔵容器に材料を供給し分配する装置」は、センサを備えるものではなく、引用例2は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を開示するものではない。

そうすると、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。

なお、引用例1の「また、距離センサ88の走査にあたっては、前述のような距離センサ88自体の移動によるものに限らず、距離センサ88を触媒放出器30の下部外周面に回動自在に支持し、その回動により検査ビームを触媒11の表面の径方向部位に照射するようにしてもよい。さらに、距離センサ88の走査方向は、前記実施例のような径方向に限らず、他の方向であってもよく、反応塔10内の触媒11の表面を面状にカバーできるような走査を行ってもよい。」(【0046】)という記載は、「距離センサ88自体の移動によるものに限らず」という記載からみて、「距離センサ88」自体は径方向に移動しないようにし、「回動自在に支持」することで、検査ビームの照射方向を変えることによって走査することを意味するといえ、当該記載に基いて、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得るものではない。

また、前置報告書で引用された引用例3(英国特許出願公開第2078195号明細書)にも、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項については、開示されていない。

そして、本願発明1は、「センサ支持装置及び保持装置の位置決めのこのような自由さにより、反応器内の環境に関連した制限、特には熱電対などに関する反応器の内部配置の空間的要件に関連した制限からの少なくとも部分的な自由さが可能になり得る」(【0014】)という、引用発明からは予測し得ない作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明と同一であるとはいえないし、当業者であっても、引用発明及び引用例2の記載に基づいて容易に発明できたものともいえない。

(2)本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明と同一であるとはいえないし、当業者であっても、引用発明及び引用例2の記載に基づいて容易に発明できたものともいえない。

(3)本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1と同様な構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と同一であるとはいえないし、当業者であっても、引用発明及び引用例2の記載に基づいて容易に発明できたものともいえない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明1?8は、引用発明と同一であるとはいえないし、当業者であっても、引用発明及び引用例2の記載に基づいて容易に発明できたものともいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-13 
出願番号 特願2015-516670(P2015-516670)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (B01J)
P 1 8・ 121- WY (B01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 泰三  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 川端 修
井上 能宏
発明の名称 反応器内における固体粒子の分散  
代理人 河野 英仁  
代理人 河野 登夫  

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