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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1341041
異議申立番号 異議2017-700783  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-10 
確定日 2018-04-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6092857号発明「流路部材ならびにこれを用いた吸着装置および冷却装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6092857号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔2-8〕について訂正することを認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6092857号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は,2013年(平成25年)5月21日(優先権主張2012年(平成24年)5月30日,日本国)に国際出願され,平成29年2月17日にその特許権の設定登録がされ,同年8月10日に特許異議申立人早川雄一郎(以下「申立人」という。)より請求項2,3,7及び8に対して特許異議の申立てがされ,同年10月20日付けで取消理由が通知され,同年12月22日付けの意見書及び訂正請求書が,同年12月25日に提出された。その後,平成30年1月11日付けで手続補正指令が通知され,訂正請求書を補正する旨の同年1月31日付けの手続補正書が,同年2月1日に提出された。
当審は,平成30年2月7日付けで申立人に対して意見を求める旨の通知を行ったが,申立人は,当該通知で指定された期間までに意見書を提出しなかった。


第2 訂正の適否
1.訂正の趣旨及び内容
平成29年12月22日付けの訂正請求の趣旨は,特許第6092857号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項2?8について訂正することを求める,というものであり,その内容は,以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に,
「請求項1または請求項2に記載の流路部材において,・・・」と記載されているのを,
「請求項1に記載の流路部材において,・・・」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に,
「請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流路部材において,・・・」と記載されているのを,
「請求項1または請求項3に記載の流路部材において,・・・」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に,
「請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の流路部材において,・・・」と記載されているのを,
「請求項1または請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の流路部材において,・・・」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に,
「被処理物を吸着する,請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の流路部材と,・・・」と記載されているのを,
「被処理物を吸着する,請求項1または請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の流路部材と,・・・」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に,
「対象物を冷却する,請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の流路部材と,・・・」と記載されているのを,
「対象物を冷却する,請求項1または請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の流路部材と,・・・」と訂正する。

2.訂正の目的の適否,新規事項の有無,一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1の目的,新規事項,特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1は,訂正前の請求項2を削除するものであるから,その訂正の目的は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。
また,訂正事項1に係る訂正が,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項2ないし6の目的,新規事項,特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2ないし6は,訂正前の請求項3,4,6,7及び8が訂正前の請求項2を直接に引用するように記載されていたところ,訂正前の請求項2が削除されることにより,当該請求項2を引用する記載が不明瞭となることを避けるために,当該請求項2を引用する記載を削除するものであるから,その訂正の目的は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。
また,訂正事項2ないし6に係る訂正が,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし8は,請求項3,4,6,7及び8が,請求項2の記載を直接に引用する関係にあり,請求項5が,請求項4を介して請求項2の記載を間接に引用する関係にあるから,訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって,訂正の請求は,一群の請求項ごとにされたものである。

3.小括
したがって,上記訂正請求による訂正事項1ないし6は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項[2-8]について訂正を認める。


第3 当審の判断
1.本件特許発明
上記第2に示すように,請求項2ないし8についての訂正が認められたから,本件特許の請求項1ないし8に係る発明は,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
流体が流れる流路が内部に形成されたセラミック焼結体からなる本体を備え,
該本体は,前記流路の内壁に,前記セラミック焼結体の一部からなる凸部を有する流路部材であって,
前記凸部は,前記流路の長手方向に沿った細長形状であり,
前記流路は,平面視において細長形状であるとともに,少なくとも一部に曲がった曲部を有しており,
前記本体は,前記曲部において,前記流路の長手方向に沿って互いに離れた複数の前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の流路部材において,
前記本体は,前記流路の長手方向に垂直な断面において,前記流路の内壁に,互いに対向する一対の前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の流路部材において,
前記流路は,長手方向に垂直な断面において,矩形状であり,
前記本体は,前記流路の長手方向に垂直な断面において,前記流路の角部に前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項5】
請求項4に記載の流路部材において,
前記凸部の表面は,前記流路の長手方向に垂直な断面において,凸曲線状であることを特徴とする流路部材。
【請求項6】
請求項1または請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の流路部材において,
前記流路は,長手方向に垂直な断面において,円形状であり,
前記本体は,前記流路の長手方向に垂直な断面において,前記流路の内壁に,前記流路の中心を挟んで互いに対向する一対の前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項7】
被処理物を吸着する,1または請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の流路部材と,前記流路部材の流路に前記流体を供給する流体供給手段とを備えたことを特徴とする吸着装置。
【請求項8】
対象物を冷却する,1または請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の流路部材と,該流路部材の流路に冷却用流体である前記流体を供給する流体供給手段とを備えたことを特徴とする冷却装置。」

2.特許異議申立て理由の概要及び証拠
申立人が主張する特許異議申立ての理由の概要及び申立人が提出した証拠は,以下のとおりである。

(1)新規性(その1)
本件特許の請求項2並びに請求項2を引用する請求項3,7及び8に係る発明は,甲第1号証記載の発明であるから,請求項2,3,7及び8に係る特許は,特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり,その特許を取り消すべきである。

(2)新規性(その2)
本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る発明は,甲第2号証記載の発明であるから,請求項2及び3に係る特許は,特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり,その特許を取り消すべきである。

(3)進歩性(その1)
本件特許の請求項2並びに請求項2を引用する請求項3,7及び8に係る発明は,甲第1号証記載の発明及び甲第3ないし5号証記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,請求項2,3,7及び8に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,その特許を取り消すべきである。

(4)進歩性(その2)
本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る発明は,甲第2号証記載の発明及び甲第3ないし5号証記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,請求項2及び3に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,その特許を取り消すべきである。

(5)サポート要件
本件特許の請求項2並びに請求項2を引用する請求項3,7及び8の記載は,特許法第36条第6項第1号に適合しないから,請求項2,3,7及び8に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,その特許を取り消すべきである。

(6)証拠
甲第1号証:米国特許第6951587号明細書
甲第2号証:国際公開第2008/078508号
甲第3号証:特開平11-21187号公報
甲第4号証:特開平6-164234号公報
甲第5号証:特開平6-140832号公報

3.判断
請求項2に係る特許は,訂正により削除され,請求項3ないし8に係る特許は,請求項2を引用しないものとなったため,本件特許に対して申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在せず,不適法な特許異議申立てとなり,その補正をすることができないものである。
したがって,申立人がした特許異議の申立ては,特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。

第4 むすび
以上のとおり,本件特許に対して申立人がした特許異議の申立ては,対象となる請求項が存在せず,不適法な特許異議申立てであって,その補正をすることができないものである。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路が内部に形成されたセラミック焼結体からなる本体を備え、
該本体は、前記流路の内壁に、前記セラミック焼結体の一部からなる凸部を有する流路部材であって、
前記凸部は、前記流路の長手方向に沿った細長形状であり、
前記流路は、平面視において細長形状であるとともに、少なくとも一部に曲がった曲部を有しており、
前記本体は、前記曲部において、前記流路の長手方向に沿って互いに離れた複数の前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の流路部材において、
前記本体は、前記流路の長手方向に垂直な断面において、前記流路の内壁に、互いに対向する一対の前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の流路部材において、
前記流路は、長手方向に垂直な断面において、矩形状であり、
前記本体は、前記流路の長手方向に垂直な断面において、前記流路の角部に前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項5】
請求項4に記載の流路部材において、
前記凸部の表面は、前記流路の長手方向に垂直な断面において、凸曲線状であることを特徴とする流路部材。
【請求項6】
請求項1または請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の流路部材において、
前記流路は、長手方向に垂直な断面において、円形状であり、
前記本体は、前記流路の長手方向に垂直な断面において、前記流路の内壁に、前記流路の中心を挟んで互いに対向する一対の前記凸部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項7】
被処理物を吸着する、請求項1または請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の流路部材と、前記流路部材の流路に前記流体を供給する流体供給手段とを備えたことを特徴とする吸着装置。
【請求項8】
対象物を冷却する、請求項1または請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の流路部材と、該流路部材の流路に冷却用流体である前記流体を供給する流体供給手段とを備えたことを特徴とする冷却装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-04-04 
出願番号 特願2014-518391(P2014-518391)
審決分類 P 1 652・ 121- XA (H01L)
P 1 652・ 113- XA (H01L)
P 1 652・ 537- XA (H01L)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 宮久保 博幸平野 崇  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 刈間 宏信
栗田 雅弘
登録日 2017-02-17 
登録番号 特許第6092857号(P6092857)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 流路部材ならびにこれを用いた吸着装置および冷却装置  

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