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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H05B 審判 全部申し立て 2項進歩性 H05B |
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管理番号 | 1341074 |
異議申立番号 | 異議2017-700867 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-09-13 |
確定日 | 2018-04-26 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6114435号発明「誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6114435号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6114435号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6114435号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成28年4月28日に特許出願され、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年9月13日に特許異議申立人 トクデン株式会社(以下、単に「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年11月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月26日に特許権者 鈴木工業株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成30年1月31日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知がされ、申立人より平成30年3月5日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を、平成30年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、訂正後の請求項1ないし6について訂正することを求めるものであって、以下の(1)ないし(8)のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口」とあるのを、「前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口」に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口」とあるのを、「前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口」に訂正する(以下、「訂正事項2」という。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、 前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている、 請求項1に記載の誘導加熱コイルユニット。」とあるのを、 「加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、 前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている、 誘導加熱コイルユニット。」に訂正する(以下、「訂正事項3」という。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、 前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている、 請求項1に記載の誘導加熱コイルユニット。」とあるのを、 「加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、 前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている、 誘導加熱コイルユニット。」に訂正する(以下、「訂正事項4」という。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している、 請求項1から3のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニット。」とあるのを、 「加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している、 誘導加熱コイルユニット。」に訂正する(以下、「訂正事項5」という。)。 (6)訂正事項6 願書に添付した明細書の【0008】を以下のとおり訂正する(以下、「訂正事項6」という。)。 「 実施形態による誘導加熱コイルユニットは、加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルを収容するケースと、を備える。前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有している。」 (7)訂正事項7 願書に添付した明細書の【発明の名称】を以下のとおり訂正する(以下、「訂正事項7」という。)。 「【発明の名称】 誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システム」 (8)訂正事項8 願書に添付した図面の図1において、当初記載の符号「162」及び「161」を、それぞれ「161」及び「162」に訂正する(以下、「訂正事項8」という。)。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「供給口」について、「供給側のエア配管が接続される」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 特許明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載され、また、図1及び2にも同様の事項が記載されている。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「供給口」について、概念的により下位の「供給側のエア配管が接続される供給口」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「排出口」について、「排出側のエア配管が接続される」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 特許明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載され、また、図1及び2にも同様の事項が記載されている。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「排出口」について、概念的により下位の「排出側のエア配管が接続される排出口」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正である。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正である。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1ないし3のいずれか一項の記載を引用する記載であったものを、請求項2又は3の記載を引用しないものとした上で、請求項1の記載を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、実質的に多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少する訂正といえる。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」、及び同項ただし書第4号に掲げる、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、実質的に多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正事項1ないし5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために行う訂正である。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 特許明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載され、また、図1及び2にも同様の事項が記載されている。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、訂正前の明細書の段落【0008】に記載された「供給口」及び「排出口」について、それぞれ概念的により下位の「供給側のエア配管が接続される供給口」及び「排出側のエア配管が接続される排出口」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的について 訂正事項7は、特許明細書等の明細書における発明の名称を、特許請求の範囲における請求項1ないし6の記載と整合させるために行う訂正である。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 特許明細書等には、特許請求の範囲における請求項1ないし5において、「誘導加熱コイルユニット」が記載されているとともに、請求項6において、「誘導加熱システム」が記載されている。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、発明の名称を、特許請求の範囲における請求項1ないし6の記載と整合させるためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的について 訂正事項8は、図1における符号「161」、「162」の誤りを正しい記載に訂正するものである。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 当初明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載されており、また、図2において、符号「151」が付された箇所に符号「161」が付された部材が接続された構成が記載されていると共に、符号「152」が付された箇所に符号「162」が付された部材が接続された構成が記載されている。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、単に図面における符号の誤記を訂正するためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 一群の請求項について (1)訂正事項1ないし5の請求について 訂正事項1ないし5の請求は、請求項〔1-6〕という一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項6ないし8について 明細書についての訂正事項6及び7並びに図面についての訂正事項8の請求は、請求項〔1-6〕という一群の請求項に関係するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 4 小括 以上のとおり、訂正事項1ないし8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、また、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項及び第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するから、結論のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでいる、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項2】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、 前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項3】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、 前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項4】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項5】 前記供給口と前記排出口とをそれぞれ2つ以上ずつ備えている、 請求項1から4のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニット。 【請求項6】 請求項1から5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニットと、 前記加熱コイルの温度を検出可能な温度検出手段と、 前記冷却経路に冷却用気体を供給可能な冷却用気体供給手段と、 前記温度検出手段の検出結果が予め設定した閾値以上である場合に前記冷却用気体供給手段により前記冷却経路に冷却用気体を供給し、前記温度検出手段の検出結果が前記閾値未満である場合に前記冷却用気体供給手段による前記冷却用気体の供給を停止する冷却制御を行うことが可能な制御装置と、 を備える誘導加熱システム。」(なお、下線は訂正請求書に添付した訂正した特許請求の範囲において、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。)。 2 取消理由通知に記載した取消理由の概要 平成29年11月28日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は以下のとおりである。 (1)本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)本件特許の請求項1及び5に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)本件特許の請求項6に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証又は甲第2号証、並びに甲第4号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <刊行物一覧> 甲第1号証:特開2009-272295号公報 甲第2号証:特開2004-273224号公報 甲第3号証:特開2015-73390号公報 甲第4号証:特開2001-307862号公報 3 甲各号証について (1)甲第1号証について 甲第1号証には、特に、【請求項1】及び【請求項4】に記載された事項、明細書の段落【0010】及び【0023】ないし【0029】に記載された事項並びに図1ないし4に示された内容によれば、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「ロール本体3を誘導加熱により加熱する高周波コイル20と、 前記高周波コイル20を収容する、正面板13、背面板15、左右側板12,14、天板10、底板16からなる略直方体形状のケースと、 冷却エアー用パイプ30と、を備え、 前記高周波コイル20は、前記正面板13、前記背面板15、前記左右側板12,14、底板16とは接しないように、天板10に固定され、 前記冷却エアー用パイプ30は、前記天板10よりも下方で、かつ、高周波コイル20の長手方向に沿うように前記ケース内を挿通し、その一端が左側板12に固定され、その長手方向の下部に冷却エアーを放出するための穴30aを複数有し、 複数の前記穴30aから放出された冷却エアーは、前記高周波コイル20と前記正面板13との空間、前記高周波コイル20と前記底板16との空間、前記高周波コイル20と前記背面板15との空間を順に流れて、前記天板10側から前記ケース外に排出される、 誘導加熱装置。」 (2)甲第2号証について 甲第2号証には、特に、明細書の段落【0010】ないし【0012】、【0017】ないし【0019】、【0032】ないし【0041】、【0049】ないし【0052】、【0054】ないし【0060】、【0081】及び【0082】に記載された事項並びに図1ないし5に示された内容によれば、次の事項からなる発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 「鍋を誘導加熱により加熱する誘導加熱コイル2aと、 前記誘導加熱コイル2aを収容する、上面にトッププレート1が設けられた本体6と、を備え、 前記本体6は、 前記本体6の内部と外気である外部とを連通し前記本体6の外部から供給される冷却風を前記本体6内に供給するための吸気口9と、 前記本体6の内部と外部とを連通し前記吸気口9から前記本体6の内に供給された前記冷却風を前記本体6の外部へ排気するための排気口11と、 前記本体6と誘導加熱コイル2aとの間に形成され前記供給口9と前記排気口11とを繋ぐ冷却風路と、を有し 前記冷却風路は、前記誘導加熱コイル2aにおける前記鍋側の面と前記トッププレート1との間に形成された冷却隙間25を含んでいる、 誘導加熱調理器。」 (3)甲第3号証について 甲第3号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 「外側冷媒流入口32及び外側冷媒流出口34は、平面視において複数の固定子コイル13が保持されたコイル部14の中心部を頂点とし、前記頂点と前記外側冷媒流入口32とを結ぶ線と前記頂点と前記外側冷媒流出口34とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、 外側冷媒流路30中において前記鋭角側の領域に設けられ前記外側冷媒流入口32と前記外側冷媒流出口34との間を仕切るパーティション部23を備えている、 モーターの固定子11。」 (4)甲第4号証について 甲第4号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。 「誘導コイル3の温度を検出可能な温度検知素子22と、 通風路20に冷却空気を供給可能な冷却ファン21と、 前記温度検知素子22の検出結果が予め設定した第1規定温度以上である場合に前記冷却ファン21により前記通風路20に冷却空気を供給し、前記温度検知素子22の検出結果が前記第1規定温度未満に設定された第2規定温度以下である場合に前記冷却ファン21による前記冷却空気の供給を停止する冷却制御を行うことが可能な温調回路23とを備える 加熱装置。」 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比・判断 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点A1 本件発明1は、「ケース」が、「供給側のエア配管が接続される供給口」と、「排出側のエア配管が接続される排出口」とを有しているのに対して、甲1発明は、そのような構成を備えているか不明である点(以下、「相違点A1」という。)。 (イ)判断 上記相違点A1について検討する。 甲1発明において、ケースとは別に冷却エアー用パイプ30を備えており、また、冷却エアーは天板10側から高周波コイル20の長手方向に幅広く開口した部分からケース外に排出されることを考慮すると、ケースが、供給口及び排出口のそれぞれに冷却エアーの配管が接続できるように構成されていると認めることはできない。 そして、本件発明1は、上記相違点A1に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0057】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット1は、冷却用供給気体を供給するための専用の送風機等を必要としない。したがって、誘導加熱コイルユニット1単体及び誘導加熱コイルユニット1が組み込まれる装置を、小型化することができる。」という所期の効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点A1は実質的な相違点であり、本件発明は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 さらに、上記相違点A1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第2ないし4号証のいずれにも記載されていないから、本件発明1は、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 イ 本件発明1と甲2発明との対比・判断 本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点B1 本件発明1は、「ケース」が、「供給側のエア配管が接続される供給口」と、「排出側のエア配管が接続される排出口」とを有しているのに対して、甲2発明は、「本体6」が「吸気口9」と「排気口11」とを有するものの、「吸気口9」と「排気口11」のそれぞれにエア配管が接続されているか不明である点(以下、「相違点B1」という。)。 (イ)判断 上記相違点B1について検討する。 甲2発明の誘導加熱調理器は、甲第2号証の図1から理解できるように、家庭の厨房等に設置されるものを想定したものであり、吸気口9と排気口11にエア配管が接続できるものと認めることはできない。 そして、本件発明1は、上記相違点B1に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0057】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット1は、冷却用供給気体を供給するための専用の送風機等を必要としない。したがって、誘導加熱コイルユニット1単体及び誘導加熱コイルユニット1が組み込まれる装置を、小型化することができる。」という効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点B1は実質的な相違点であり、本件発明は、甲2発明と同一ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 さらに、上記相違点B1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第1、3及び4号証のいずれにも記載されていないから、本件発明1は、甲2発明並びに甲第1、3及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について 申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献1(特開平11-106295号公報)や先行文献2(特開平10-253260号公報)を例示して、「エア配管が接続されるように供給口及び排出口を構成することは、技術常識ないし周知慣用技術であり、そこに何ら技術的困難性や想到困難性は認められない。」旨の主張をする。 しかしながら、先行文献1には、チャンバー14に混合気体供給管12及び混合気体排出管13を設ける技術が記載されているものの、チャンバー14内に供給及び排出されるアルゴンと酸素との混合気体は、単結晶を製造すべく、チャンバー14内に酸素含有雰囲気を形成するために用いられるものであって、チャンバー14内の冷却等の他の用途に用いることは意図していないから、先行文献1に記載された技術からエアによる冷却について上記技術常識ないし周知慣用技術を認めることはできない。 また、先行技術2には、図1においてケースから短尺筒状のものを突出させる技術が記載されているとしても、ケース内の底コイル15を冷却するにあたり、冷却水をケース内に供給及び排出するためのものであって、エア配管に関するものではないから、先行文献2に記載された技術からエアによる冷却について技術常識ないし周知慣用技術を認めることはできない。 そうすると、申立人の上記主張は採用することができない。 エ まとめ したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものとすることはできず、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 (2)本件発明5について 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項5において、請求項1ないし4のいずれか一項を引用しているから、本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件発明5は、上記(1)の本件発明1の検討及び後記5(1)ないし(3)の本件発明2ないし4の検討を踏まえると、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 (3)本件発明6について 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項6において、請求項1ないし4のいずれか一項を引用しているから、本件発明6は、本件発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件発明6は、上記(1)の本件発明1の検討及び後記5(1)ないし(3)の本件発明2ないし4の検討を踏まえると、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)本件発明2について ア 本件発明2と甲1発明との対比・判断 本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点A2 本件発明2は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている」のに対して、甲1発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点A2」という。)。 (イ)判断 上記相違点A2について検討する。 本件発明2は、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0062】ないし【0064】に記載されているような、「供給口151から第2冷却経路342内に入った冷却用気体が鋭角α側の領域つまり最短経路を通って排出口152側へ至るいわゆるショートサーキットを抑制することができる。 ・・・ したがって、供給口151から排出口152へ至る経路の距離つまり冷気用気体の流れる距離を極力長く確保することができる。すなわち、これによれば、冷却用気体との接触面積を極力大きく確保するとともに冷却用気体との接触時間を極力長く確保することができる。したがって、ケース30内に供給された冷却用気体の多くを加熱コイル20の冷却に寄与させることができ、その結果、冷却用気体を無駄にすること無く効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項は、設計事項ということはできない。 また、甲3発明は、モータの固定子に関するものであり、誘導加熱装置に係る甲1発明とは、コイルの冷却においては共通するものの、技術分野が異なり、また、前提となる冷却用の流体が流れる経路の構成が異なるのであるから、甲1発明に甲3発明を適用し、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、本件発明2は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲第2及び4号証にも記載されていないから、本件発明2は、甲1発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲1発明、甲3発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2と甲2発明との対比・判断 本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点B2 本件発明2は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点B2」という。)。 (イ)判断 上記相違点B2について検討する。 本件発明2は、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0062】ないし【0064】に記載されているような、「供給口151から第2冷却経路342内に入った冷却用気体が鋭角α側の領域つまり最短経路を通って排出口152側へ至るいわゆるショートサーキットを抑制することができる。 ・・・ したがって、供給口151から排出口152へ至る経路の距離つまり冷気用気体の流れる距離を極力長く確保することができる。すなわち、これによれば、冷却用気体との接触面積を極力大きく確保するとともに冷却用気体との接触時間を極力長く確保することができる。したがって、ケース30内に供給された冷却用気体の多くを加熱コイル20の冷却に寄与させることができ、その結果、冷却用気体を無駄にすること無く効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項は、設計事項ということはできない。 また、甲3発明は、モータの固定子に関するものであり、誘導加熱調理器に係る甲2発明とは、コイルの冷却をする点においては共通するものの、技術分野が異なり、また、前提となる冷却用の流体が流れる経路の構成が異なるのであるから、甲2発明に甲3発明を適用し、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、本件発明2は、甲2発明に基いて、又は、甲2発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲第1及び4号証にも記載されていないから、本件発明2は、甲2発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲2発明、甲3発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について 申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献3(特開2007-187411号公報)を例示して、上記相違点A2又はB2に係る本件発明2の発明特定事項が技術常識ないし周知慣用技術である旨の主張をする。 しかしながら、本件発明2は、申立人による特許異議の申立てがされた時と、引用形式か独立形式かの相違はあるものの、実質的に同じ内容であり、申立人の上記主張は、新たに例示した先行文献3に基づくものであって、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められ、しかも、先行文献3のみからその記載内容を技術常識ないし周知慣用技術と認めることはできないから、申立人の上記主張を採用することはできない。 エ まとめ したがって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 (2)本件発明3について ア 本件発明3と甲1発明との対比・判断 本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点A3 本件発明3は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、 前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている」のに対して、甲1発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点A3」という。)。 (イ)判断 上記相違点A3について検討する。 本件発明3は、上記相違点A3に係る本件発明3の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0090】に記載されているような、「本実施形態の誘導加熱コイルユニット3は、略半円の円弧状に形成された2つの第2冷却経路342Bを備えている。したがって、第1実施形態のように第2冷却経路342を半円の円弧を超える長さの円弧状に形成した場合に比べて、1つの第2冷却経路342Bの距離すなわち供給口151から排出口152に至る経路の距離を短くすることができる。これにより、排出口152側付近おける冷却用気体の温度上昇を極力抑制し、その結果、加熱コイル20の冷却能力が低下を抑制して効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点A3に係る本件発明3の発明特定事項は、設計事項ということはできない。 したがって、本件発明3は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、上記相違点A3に係る本件発明3の発明特定事項は、甲第2ないし4号証にも記載されていないから、本件発明3は、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明3と甲2発明との対比・判断 本件発明3と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点B3 本件発明3は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、 前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点B3」という。)。 (イ)判断 上記相違点B3について検討する。 本件発明3は、上記相違点B3に係る本件発明3の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0090】に記載されているような、「本実施形態の誘導加熱コイルユニット3は、略半円の円弧状に形成された2つの第2冷却経路342Bを備えている。したがって、第1実施形態のように第2冷却経路342を半円の円弧を超える長さの円弧状に形成した場合に比べて、1つの第2冷却経路342Bの距離すなわち供給口151から排出口152に至る経路の距離を短くすることができる。これにより、排出口152側付近おける冷却用気体の温度上昇を極力抑制し、その結果、加熱コイル20の冷却能力が低下を抑制して効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点B3に係る本件発明3の発明特定事項は、設計事項ということはできない。 したがって、本件発明3は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、上記相違点B3に係る本件発明3の発明特定事項は、甲第1、3及び4号証にも記載されていないから、本件発明3は、甲2発明並びに甲第1、3及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について 申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献3(特開2007-187411号公報)及び先行文献4(特開2009-272312号公報)を例示して、上記相違点A3又はB3に係る本件発明3の発明特定事項について、「先行文献4の図1には、 ・・・ 「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられて」いる構成が明らかに記載されており、また、 ・・・ 「前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている」という構成は、前記先行文献3に記載されている(先行文献3の仕切り板18が整流部に相当する。)。」とし、技術常識ないし周知慣用技術である旨の主張をする。 しかしながら、本件発明3は、申立人による特許異議の申立てがされた時と、引用形式か独立形式かの相違はあるものの、実質的に同じ内容であり、申立人の上記主張は、新たに例示した先行文献3及び4に基づくものであって、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められるから、申立人の上記主張を採用することはできない。 エ まとめ したがって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 (3)本件発明4について ア 本件発明4と甲1発明との対比・判断 本件発明4と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点A4 本件発明4は、「ケース」について、「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している」のに対して、甲1発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点A4」という。)。 (イ)判断 上記相違点A4について検討する。 本件発明4は、上記相違点A4に係る本件発明4の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0080】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット2によって金型511、512を加熱しながら成型を行うことができる」ようにされた「金型装置50」に用いた場合において、同明細書の段落【0083】に記載されているような、「金型支持台521、522に作用する型締力を、ユニット収容部523の周囲部分525のみならず心棒524で受けることができる。これにより、ユニット収容部523の周囲部分525に型締力が集中してしまうことを防ぐことができる。その結果、周囲部分525が潰れてしまい、ひいては誘導加熱コイルユニット2が押し潰されてしまうこと抑制することができる。」という効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点A4に係る本件発明4の発明特定事項は、設計事項ということはできない。 したがって、本件発明4は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、上記相違点A4に係る本件発明4の発明特定事項は、甲第2及び4号証にも記載されていないから、本件発明4は、甲1発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲1発明、甲3発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明4と甲2発明との対比・判断 本件発明4と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (ア)相違点B4 本件発明4は、「ケース」について、「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点B4」という。)。 (イ)判断 上記相違点B4について検討する。 本件発明4は、上記相違点B4に係る本件発明4の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0080】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット2によって金型511、512を加熱しながら成型を行うことができる」ようにされた「金型装置50」に用いた場合において、同明細書の段落【0083】に記載されているような、「金型支持台521、522に作用する型締力を、ユニット収容部523の周囲部分525のみならず心棒524で受けることができる。これにより、ユニット収容部523の周囲部分525に型締力が集中してしまうことを防ぐことができる。その結果、周囲部分525が潰れてしまい、ひいては誘導加熱コイルユニット2が押し潰されてしまうこと抑制することができる。」という効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点B4に係る本件発明4の発明特定事項は、設計事項ということはできない。 したがって、本件発明4は、甲2発明に基いて、又は、甲2発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、上記相違点B4に係る本件発明4の発明特定事項は、甲第1及び4号証にも記載されていないから、本件発明4は、甲2発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲2発明、甲3発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について 申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献2(特開平10-253260号公報)及び先行文献5(特開2011-34815号公報)を例示して、上記相違点A4又はB4に係る本件発明4の発明特定事項について、「先行文献5の段落0020、0021、0023、図1等、先行文献2の図1等には、 ・・・ 「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している」点が記載されている。なお、先行文献2には2つのコイル12及び15が示されており、本件訂正発明4の加熱コイルに対応するコイル11については、加熱用のものである明示はないが、段落0009には、他方のコイル12が主に加熱のために用いられる旨が記載されているので、その逆解釈から、コイル15にも少なからず加熱機能があることは示唆されているといえる。」とし、技術常識ないし周知慣用技術である旨の主張をする。 しかしながら、本件発明4は、申立人による特許異議の申立てがされた時と、引用形式か独立形式かの相違はあるものの、実質的に同じ内容であり、申立人の上記主張は、新たに例示した先行文献2及び5に基づくものであって、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められるから、申立人の上記主張を採用することはできない。 なお、先行文献5の丸穴11は、図3及び4を見ると理解できるように、加熱コイル2を収容するケースに設けられたものでないから、上記相違点A4又はB4に係る本件発明4の発明特定事項が技術常識ないし周知慣用技術の例証とはならず、また、先行文献2の図1に対して申立人が示した穴部は、溶解ルツボの溶湯13を下方へ出湯するための出湯口であって、ロールを加熱するための誘導加熱装置である甲1発明や誘導加熱調理器である甲2発明に適用する動機付けは認められず、いずれにしても申立人の上記主張は採用することができない。 エ まとめ したがって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 6 小括 上記1ないし5によると、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、取り消すことはできない。 また、請求項2ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、取り消すことはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システム 【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システムに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、加熱対象物の加熱方式として、誘導加熱方式が普及しつつある。誘導加熱方式は、加熱対象物の近傍に配置した加熱コイルに高周波電流を流し、電磁誘導により加熱対象物に渦電流を発生させることで、加熱対象物を加熱する加熱方式である。誘導加熱方式は、物理的に非接触かつ電気的に非接続の状態にある加熱対象物を、高速でかつ高効率で加熱できること等の特徴を備えている。また、誘導加熱方式では、加熱コイルの形状を加熱対象物に合わせることで、複雑な形状の加熱対象物全体を均一に効率良く加熱することができる。 【0003】 このような誘導加熱方式では、加熱コイルに高出力の高周波電流を流すことで、加熱対象物を高速で高温に加熱することができる。しかしこの場合、加熱コイルの自己発熱や加熱対象物から受ける輻射熱の影響によって、加熱コイル自身の温度が上昇するという問題がある。そのため、誘導加熱方式では、加熱コイルの巻き線の耐熱温度を越えないように、加熱コイルを冷却する必要がある。 【0004】 そこで、従来構成では、例えば冷却ファンや水冷管を用いた冷却方式を採用している。例えば冷却ファンを用いた冷却方式では、冷却ファンからの冷却風を加熱コイル全体に当てることで加熱コイルを冷却する。しかしながら、この冷却方式では、冷却ファンからの冷却風が加熱対象物に当たり、加熱対象物をも冷却されてしまう。また、水冷管を用いたものでは、加熱コイルを銅管等の水冷管で構成し、その銅管内に冷却水を通して加熱コイルを冷却する。しかしながら、この冷却方式では、銅管をコイル状に加工しなければならないため、加熱コイルを加熱対象物に合わせた形状にすることが難しく、したがって、加熱対象物を均一に加熱することが難しい。また、この冷却方式では、水を用いて冷却するため漏電の危険性が高まる。このように、従来の冷却方式では、種々の問題があった。 【0005】 また、従来構成において、加熱コイルは、装置に一体的に組み込まれている。そのため、装置から加熱コイルを取り外して加熱コイルのメンテナンスをしたり、取り外した加熱コイルを他の装置に流用したりすること等が難しい。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】 特開2002-208468号公報 【特許文献2】 特開2012-214040号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の実施形態は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱対象物を冷却することなく加熱コイルを効率良く冷却することができ、更には取り扱いが容易な誘導加熱コイルユニット及び、その誘導加熱コイルユニットを用いた誘導加熱システムを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 実施形態による誘導加熱コイルユニットは、加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルを収容するケースと、を備える。前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有している。 【図面の簡単な説明】 【0009】 【図1】 第1実施形態による誘導加熱コイルユニットを示す平面図 【図2】 第1実施形態について、図1のX2-O-X2線に沿って示す断面展開図 【図3】 第1実施形態について、図1のX3-X3線に沿って示す断面図 【図4】 第1実施形態について、加熱コイルを示す平面図 【図5】 第1実施形態について、誘導加熱コイルユニットの中心部周辺を示す断面図 【図6】 第1実施形態について、誘導加熱システムの一例を概念的に示す図 【図7】 第1実施形態について、制御装置により行われる冷却制御を示すフローチャート 【図8】 第1実施形態の変形例について、矩形状に形成された誘導加熱コイルユニットを示す平面図 【図9】 第1実施形態の変形例について、矩形状の加熱コイルを示す平面図 【図10】 第2実施形態による誘導加熱コイルユニットを示す平面図 【図11】 第2実施形態について、図10のX11-O-X11線に沿って示す断面展開図 【図12】 第2実施形態について、図10のX12-X12線に沿って示す断面図 【図13】 第2実施形態による誘導加熱コイルユニットが組み込まれた金型装置を概念的に示す断面図 【図14】 第3実施形態による誘導加熱コイルユニットの一部を破断して示す平面図 【図15】 第4実施形態による誘導加熱コイルユニットの一部を破断して示す平面図 【図16】 第5実施形態による誘導加熱コイルユニットを示す断面図 【図17】 第5実施形態について、図16のX17-X17線に沿って示す平断面図 【図18】 第6実施形態による誘導加熱コイルユニットを示す断面図 【図19】 第6実施形態について、図18のX19-X19線に沿って示す平断面図 【図20】 第7実施形態による誘導加熱コイルユニットを示す断面図 【発明を実施するための形態】 【0010】 以下、本発明の複数の実施形態について説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。 【0011】 (第1実施形態) 以下、本発明の第1実施形態について図1?図7を参照しながら説明する。 [誘導加熱コイルユニットの構成] まず、第1実施形態による誘導加熱コイルユニット1の構成について説明する。誘導加熱コイルユニット1は、図1?図3に示すように、加熱コイル20とケース30とを備えている。誘導加熱コイルユニット1は、加熱コイル20をケース30内に収容してユニット化されている。誘導加熱コイルユニット1は、加熱対象物90を接触又は非接触状態で加熱することができる。この場合、加熱対象物90は、図示しない規制部材等によって、誘導加熱コイルユニット1に対して所定の距離Lを維持した状態で配置される。所定の距離Lは0mm以上である。 【0012】 なお、以下の説明において、誘導加熱コイルユニット1に対して加熱対象物90側を誘導加熱コイルユニット1又は加熱コイル20の表側とし、誘導加熱コイルユニット1に対して加熱対象物90とは反対側を誘導加熱コイルユニット1又は加熱コイル20の裏側とする。また、本実施形態において、「平面視」とは、誘導加熱コイルユニット1又は加熱コイル20を表面側から見た状態を言う。 【0013】 加熱コイル20は、外部から高周波電流の供給を受けて駆動されて、加熱対象物90を誘導加熱により加熱する。加熱コイル20は、単層巻き又は多層巻きのコイルであり、例えば銅線やアルミ線等の導線で構成された巻線を渦巻き状に複数回巻回して形成されている。この場合、単層巻きとは、加熱コイル20の厚み方向において、巻線の層が1層で構成されていることを意味する。また、多層巻きとは、加熱コイル20の厚み方向において、巻線の層が複数層で構成されていることを意味する。 【0014】 本実施形態の場合、加熱コイル20は、例えば直径0.05mm?0.5mm程度の導線を撚り線にして、その撚り線を複数本束ねたものを巻線として使用された多層巻きのコイルである。これによれば、加熱コイル20の巻線の表面積を増やすことができる。したがって、加熱コイル20に高周波電流が流れた際において、表皮効果による実行抵抗の増大を抑制することができ、その結果、加熱コイル20の出力効率を向上させることができる。 【0015】 なお、加熱コイル20を形成する巻線は、撚り線に限られず、1本の導線で構成されていてもよい。加熱コイル20を形成する巻線は、一般に絶縁導線が用いられ、絶縁被膜で覆われている。また、本実施形態において、加熱コイル20は、図1及び図4に示すように、円環状であって、その円環状の中心部に中空部201が形成されている。中空部201は、加熱コイル20の中心部をその厚み方向に円形に貫くように形成されている。 【0016】 加熱コイル20は、図4等に示すように、加熱コイル20の巻き始めとなる口出し線22と、巻き終わりとなる口出し線23とを有している。巻き始めの口出し線22は、加熱コイル20の内周側つまり中空部201側でかつ加熱コイル20の裏面側から引き出されている。巻き終わりの口出し線23は、加熱コイル20の外周側でかつ加熱コイル20の表面側から引き出されている。なお、本実施形態において、口出し線22、23を区別する場合には、巻き始めの口出し線22を始端側口出し線22と称し、巻き終わりの口出し線23を終端側口出し線23と称する。口出し線22、23の端部にはそれぞれ図示しない圧着端子等の接続端子が設けられている。そして、図示しない接続端子は、例えば図6に示すように電源装置41に接続される。 【0017】 加熱コイル20は、図2及び図3に示すように、ケース30内に収容されている。ケース30は、電気絶縁性及び耐熱性を有する材料、例えばセラミックや樹脂等の非金属材料で構成されている。ケース30の耐熱温度は、加熱コイル20の耐熱温度よりも高いことが好ましい。ケース30は、第1ケース31と第2ケース32とを組み合わせて構成されており、内部に加熱コイル20を収容可能な収容空間を有している。 【0018】 第1ケース31は、図2及び図3に示すように、加熱コイル20の表面及び外周面側を覆っている。第1ケース31は、全体として加熱コイル20の裏面側が開放された円形の容器状に形成されている。第1ケース31は、底部311と周壁部312とを有している。底部311は、第1ケース31の容器状の底部分つまり加熱対象物90側部分を形成している。底部311は、加熱コイル20の表面から離間した状態つまり加熱コイル20の表面に対して隙間S1を有した状態で、加熱コイル20の表面側を覆っている。また、底部311の加熱対象物90側の面は、平坦面に形成されている。この場合、図3に示すように、隙間S1の断面において、加熱コイル20の平面方向に対する寸法をW1とし、加熱コイル20の厚み方向に対する寸法をH1とする。 【0019】 周壁部312は、底部311の外周縁部分に沿って設けられており、底部311の外周縁部分に対して加熱コイル20の裏面側へ向けて立設するように設けられている。周壁部312は、加熱コイル20の外周面から離間した状態つまり加熱コイル20の外周面に対して隙間S2を有した状態で、加熱コイル20の外周面側を覆っている。この場合、図3に示すように、隙間S2の断面において、加熱コイル20の平面方向に対する寸法をW2とし、加熱コイル20の厚み方向に対する寸法をH2とする。 【0020】 また、第1ケース31は、図2及び図3に示すように、円柱部313及び段差部314を有している。円柱部313は、底部311の中心部分にあって、底部311の内面側から加熱コイル20の裏面側へ向けて突出するように設けられている。円柱部313は、円柱状に形成されており、その外径は、加熱コイル20の中空部201の内径よりもやや小さい。したがって、円柱部313は、加熱コイル20の中空部201に挿通可能となっている。 【0021】 段差部314は、図1及び図5に示すように、円柱部313の根元部分つまり円柱部313と底部311との接続部分にあって、加熱コイル20の裏面側へ向けて突出すると共に円柱部313の根元部分を囲むような円板状に形成されている。この場合、段差部314の突出量は、隙間S1において加熱コイル20の厚み方向の寸法H1に略等しい。そして、段差部314の突出量H1は、加熱コイル20の厚み寸法の半分以下となっている。また、段差部314の外径は、円柱部313の外径よりも大きく、かつ、加熱コイル20の外径の半分以下となっている。 【0022】 加熱コイル20は、中空部201に第1ケース31の円柱部313が通された状態で第1ケース31内に配置される。その際、加熱コイル20が底部311側へ押し込まれると、加熱コイル20の表面が段差部314に当たって、加熱コイル20の底部311側への移動が規制される。これにより、加熱コイル20の表面と底部311の内面との離間距離が、段差部314の突出量H1に維持される。すなわち、段差部314は、第1ケース31の底部311の内面に対して加熱コイル20の位置を規定することで、底部311の内面と加熱コイル20の表面との間に隙間S1を形成する規定部として機能する。 【0023】 第2ケース32は、加熱コイル20の裏面側を覆っている。第2ケース32は、全体として円板状に形成されている。第2ケース32の外径は、第1ケース31の内径すなわち周壁部312の内径よりも若干小さい。すなわち、第2ケース32の外径と第1ケース31の内径とがいわゆる隙間嵌めとなるように、第2ケース32と第1ケースとが形成されている。また、第2ケース32の中心部には、穴部321が形成されている。穴部321の内径は、第1ケース31の円柱部313の外径よりも若干大きい。すなわち、この場合、穴部321の内径と円柱部313の外径とがいわゆる隙間嵌めとなるように、穴部321と円柱部313とが形成されている。 【0024】 誘導加熱コイルユニット1は、図2等に示すように、防磁部材としてのフェライトコア11、及び取付板12を備えている。フェライトコア11は、磁性材料で構成されており、加熱コイル20と共にケース30内に収容されている。本実施形態の場合、フェライトコア11は、加熱コイル20の裏面に例えば接着剤等によって貼り付けられている。この場合、フェライトコア11は、例えば複数個の矩形状のブロックで構成されている。そして、各フェライトコア11は、中空部201を中心にして加熱コイル20の内周側から外周側へ向けて延びるような略放射状に配置されている。 【0025】 フェライトコア11は、加熱コイル20で発生した磁束を吸収する。これにより、加熱コイル20で発生した磁束が誘導加熱コイルユニット1の裏面側へ漏れ出ることを防ぎ、誘導加熱コイルユニット1の裏面側に配置された加熱対象物90以外の物体が加熱されることを防ぐ。なお、フェライトコア11は矩形ブロック状のものに限られず、例えば加熱コイル20の形状に合わせた円環板状であってもよい。 【0026】 取付板12は、誘導加熱コイルユニット1を、対象とする装置に取り付けるための部材である。取付板12は、例えばアルミ板や高剛性を有する樹脂板等によって全体として円板状に構成されている。取付板12は、ケース30の裏面側つまり第2ケース32の裏面側に設けられている。本実施形態の場合、図2及び図3に示すように、ネジ131が取付板12の中心部を貫いて第1ケース31の円柱部313にねじ込まれている。これにより、取付板12が、ケース30に固定されている。また、ケース30は、ケース30の内部と外部とを連通する取り出し部331、332を有している。取り出し部331、332は、第1ケース31及び第2ケース32に形成された切り欠きによって構成されている。加熱コイル20の口出し線22、23は、それぞれ取り出し部331、332に通されて、ケース30の外部に引き出されている。 【0027】 図1に示すように、取付板12は、複数個の場合4個の取付部121を有している。取付部121は、取付板12の外周部分から外側へ突出するように設けられている。取付部121には、取付部121を円形に貫く貫通穴122が形成されている。誘導加熱コイルユニット1は、貫通穴122に通されたネジ等の図示しない締結部材によって、対象とする装置に着脱可能に取り付けられる。なお、ケース30内の気密性を高めるために、取付板12とケース30にパッキン等のシール部材を設けても良い。 【0028】 誘導加熱コイルユニット1は、図1?図3に示すように、複数の冷却経路この場合第1冷却経路341及び第2冷却経路342と、供給口151及び排出口152とを備えている。冷却経路341、342は、ケース30の内面と加熱コイル20との間に形成された空間であって、加熱コイル20を冷却するための冷却用気体が通る経路である。本実施形態の場合、加熱コイル20における加熱対象物90側の面つまり表面と第1ケース31の底部311の内側面との間に形成された隙間S1によって、第1冷却経路341が形成されている。また、加熱コイル20の外周部と第1ケース31の周壁部312の内側面との間にあって加熱コイル20の外周部に沿って形成された隙間S2によって、第2冷却経路342が形成されている。この場合、図3に示すように、隙間S2の断面積つまりH2×L2で示される第2冷却経路342の断面積は、隙間S1の断面積つまりH1×L1で示される第1冷却経路341の断面積よりも大きい。 【0029】 供給口151及び排出口152は、ケース30の内部と外部とを連通するように形成されている。すなわち、供給口151及び排出口152は、第1冷却経路341及び第2冷却経路342に連通している。換言すれば、第1冷却経路341及び第2冷却経路342は、それぞれ供給口151と排出口152とを繋ぐ経路である。供給口151は、ケース30の外部から供給される加熱コイル20の冷却用気体を、ケース30内つまり第1冷却経路341及び第2冷却経路342に供給するためのものである。また、排出口152は、供給口151からケース30の内つまり第1冷却経路341及び第2冷却経路342に供給された冷却用気体を、ケース30の外部へ排出するためのものである。 【0030】 本実施形態の場合、供給口151及び排出口152は、周壁部312に設けられており、例えばエア配管用のいわゆるワンタッチ継手等で構成されている。この場合、第1ケース31は、周壁部312を貫いて形成された2つの雌ネジ部315、316を有している。そして、供給口151及び排出口152を構成するワンタッチ継手は、それぞれ雌ネジ部315、316にねじ込まれて、第1ケース31の周壁部312に取り付けられている。また、本実施形態の場合、図2等に示すように、排出口152の内径つまり断面積は、供給口151の内径つまり断面積よりも大きく設定されている。 【0031】 供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。なお、供給口151及び排出口152は、各エア配管161、162を接続することがきる構成であればよく、ワンタッチ継手に限られない。また、エア配管161、162は、例えば市販されている樹脂製のエアチューブ等であるが、これに限られず、樹脂等で構成されて柔軟性を有するもの、又は金属等で構成されて剛性を有するもののいずれでも良い。 【0032】 供給口151及び排出口152は、図1に示すように、加熱コイル20の円周方向において隣接して配置されている。すなわち、図1に示すように、平面視において加熱コイル20の中心部を頂点Oとした場合、供給口151及び排出口152は、この頂点Oと供給口151とを結ぶ直線L1と頂点Oと排出口152とを結ぶ直線L2との成す角度αが鋭角となる位置に設けられている。つまり、供給口151と排出口152とは、頂点Oを中心とした場合に、供給口151と頂点Oと排出口152との成す角度αが45°以下となるように配置されている。換言すれば、供給口151と排出口152とは、角度αが45°を超えて離間しないように配置されている。 【0033】 また、供給口151は、始端側口出し線22の取り出し部331又は終端側口出し線23の取り出し部332の一方と平面視において重なる位置に配置されている。そして、排出口152は、始端側口出し線22の取り出し部331又は終端側口出し線23の取り出し部332の他方と平面視において重なる位置に配置されている。本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、供給口151と終端側口出し線23の取り出し部332とが平面視において重なる位置に設けられている。また、排出口152と始端側口出し線22の取り出し部331とが平面視において重なる位置に設けられている。 【0034】 また、誘導加熱コイルユニット1は、図1及び図2に示すように、仕切り部141を備えている。図1に示すように、仕切り部141は、第2冷却経路342中において、鋭角α側の領域に設けられており、供給口151と排出口152との間を仕切っている。これにより、供給口151から第2冷却経路342内に入った冷却用気体が鋭角α側の領域つまり最短経路を通って排出口152側へ至るいわゆるショートサーキットを抑制することができる。 【0035】 なお、仕切り部141は、第2冷却経路342の鋭角α側の領域における供給口151と排出口152との間を完全な気密状態で仕切っている必要は無い。例えば供給口151から第2冷却経路342内に流入した冷却用気体の大部分が、図1の矢印Y1に示すように第2冷却経路342を大きく迂回して排出口152に至る程度に、仕切り部141は、供給口151と排出口152との間を仕切っていれば良い。 【0036】 また、この場合、第2冷却経路342は、平面視において半円を超える長さの円弧状に形成されている。これによれば、第2冷却経路342の長さを極力長く確保することができるため、加熱コイル20の外周部をより効果的に冷却することができる。 【0037】 本実施形態の場合、仕切り部141は、終端側口出し線23によって構成されている。更に、本実施形態の場合、仕切り部141は、シート部材17を含んで構成されている。シート部材17は、例えば電気絶縁性及び耐熱性を有する矩形長尺のシート状の部材である。図4に示すように、シート部材17は、終端側口出し線23を覆うようにして、加熱コイル20の外周部分に貼り付けられている。この場合、シート部材17は、例えば熱硬化性の接着剤等によって加熱コイル20の外周の一部分に貼り付けられている。 【0038】 そして、図1等に示すように、終端側口出し線23は、シート部材17を介して第1ケース31における周壁部312の内側面に接している。この場合、終端側口出し線23と周壁部312との間には、シート部材17が存在している。したがって、加熱コイル20と第1ケース31とは、終端側口出し線23の周辺部分においてはシート部材17によって電気的に絶縁されている。そして、このシート部材17は、平面視において、終端側口出し線23における中心部Oとは反対側部分、つまり第1ケース31の周壁部312の内側面に対して接触している部分から、終端側口出し線23の両側における加熱コイル20の外周部分に亘って滑らかな斜面に形成されている。 【0039】 なお、仕切り部141は、必ずしも終端側口出し線23とシート部材17とによって構成されている必要は無い。仕切り部141は、例えばシート部材17を有することなく終端側口出し線23のみによって構成されていてもよい。また、例えば、仕切り部141は、第1ケース31又は第2ケース32と一体に形成されたものでも良い。また、仕切り部141は、例えば棒状のスポンジやゴム部材等であっても良い。 【0040】 また、誘導加熱コイルユニット1は、図1及び図4に示すように、温度センサ18を備えている。温度センサ18は、例えば熱電対等で構成されており、加熱コイル20の裏面側に設けられている。温度センサ18は、加熱コイル20の温度を検出可能な温度検出手段として機能する。なお、温度検出手段は、駆動時の加熱コイル20の抵抗値を検出することで加熱コイル20の温度を計測するものであってもよいし、加熱コイル20から発生する赤外線を捉えて温度を計測するいわゆるサーモグラフィー等であっても良い。 【0041】 [誘導加熱システムの構成] 次に、誘導加熱コイルユニット1を用いた誘導加熱システム40について図6を参照して説明する。誘導加熱システム40は、図6に示すように、誘導加熱コイルユニット1、電源装置41、冷却用気体供給装置42、電磁弁43、及び制御装置44を備えている。電源装置41は、加熱コイル20の口出し線22、23に接続されており、加熱コイル20に対して駆動用の高周波電流を供給する。冷却用気体供給装置42は、供給側のエア配管161を介して誘導加熱コイルユニット1の供給口151に接続されている。冷却用気体供給装置42は、ケース30内に例えば圧縮空気や圧縮窒素等の冷却用の気体を供給するためのものである。冷却用気体供給装置42は、例えば空気を送風可能な送風機、圧縮空気や液体窒素を蓄えたボンベ、又は空気を大気圧以上の圧力に圧縮して供給可能な圧縮機等である。 【0042】 電磁弁43は、空気圧用のソレノイドバルブであり、制御装置44からの制御信号を受けて開閉駆動される。電磁弁43は、冷却用気体供給装置42と誘導加熱コイルユニット1との間に設けられている。電磁弁43が開状態になると、冷却用気体供給装置42と誘導加熱コイルユニット1の供給口151とを繋ぐ経路が開通する。これにより、冷却用気体供給装置42から吐出された冷却用気体が、誘導加熱コイルユニット1の供給口151を通ってケース30内に供給される。 【0043】 供給口151からケース30内に流入した冷却用気体は、図1及び図6の矢印Y1、Y2に示すように、第1冷却経路341及び第2冷却経路342を通って、排出口152に至る。その際、第1冷却経路341及び第2冷却経路342を通る冷却用気体によって、加熱コイル20の表面及び外周部が冷却される。その後、第1冷却経路341及び第2冷却経路342を通って加熱コイル20を冷却した冷却用気体は、排出口152からケース30外へ排出された後、大気中に放出される。 【0044】 また、電磁弁43が閉状態になると、冷却用気体供給装置42と誘導加熱コイルユニット1の供給口151とを繋ぐ経路が閉鎖される。これにより、冷却用気体供給装置42から吐出された冷却用気体が、誘導加熱コイルユニット1のケース30内に供給されなくなる。すなわち、電磁弁43が閉状態になると、冷却用気体供給装置42による冷却気体の供給が停止される。 【0045】 制御装置44は、主に電磁弁43の駆動を制御することで、誘導加熱コイルユニット1の冷却動作を制御する。制御装置44は、制御部441、操作部442、及び表示部443を有している。制御部441は、例えば図示しないCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部441は、電磁弁43及び温度センサ18と電気的に接続されている。制御部441は、電磁弁43に対して動作指令を出力することで、電磁弁43の開閉動作を制御する。また、温度センサ18の検出結果は、制御部441に入力される。 【0046】 操作部442は、タッチパネルやスイッチ、キーボードやマウス等の入力デバイスであり、ユーザからの入力操作を受け付ける。表示部443は、例えば液晶パネルディスプレイや7セグメントディスプレイ等で構成されており、操作部442に入力された入力内容や設定内容、電磁弁43の開閉状況、及び温度センサ18の検出結果に基づく加熱コイル20の温度状況等を表示する。 【0047】 [誘導加熱システムによる冷却制御] 次に、図7も参照して、制御装置44によって行われる冷却制御について説明する。制御部441は、加熱コイル20を冷却するための冷却制御プログラムを記憶している。制御部441は、CPUにおいて冷却制御プログラムを実行することにより、冷却制御を実行する。なお、冷却制御は、CPUにおいて冷却制御プログラムを実行することにより行われるものに限られず、制御部441と一体の集積回路等で構成されたハードウェアによって行われても良い。 【0048】 冷却制御は、温度センサ18の検出結果に基づく加熱コイル20の温度が閾値Ta以上である場合に、冷却用気体供給装置42からの冷却用気体を冷却経路341、342に供給し、温度センサ18の検出結果に基づく加熱コイル20の温度が閾値Ta未満である場合に、冷却経路341、342に対する冷却用気体供給装置42からの冷却用気体の供給を停止する制御である。 【0049】 具体的には、ユーザは、誘導加熱コイルユニット1を駆動させる以前に、操作部442を操作して予め閾値Taを設定する。操作部442の操作によって入力された閾値Taは、制御部441の記憶領域に記憶される。そして、電源装置41による高周波電流の供給が開始されて誘導加熱コイルユニット1が駆動されると、制御部441は、図7に示す冷却制御を実行する。 【0050】 図7に示す冷却制御が実行されると、制御部441は、まず、ステップS11に示すように、温度センサ18による加熱コイル20の検出温度Tbを取得する。次に、制御部441は、ステップS12で示すように、ステップS11で取得した検出温度Tbが、予め設定された閾値Ta以上であるか否かを判断する。検出温度Tbが閾値Ta以上である場合(ステップS12でYES)、制御部441はステップS13へ処理を移行し、電磁弁43を開状態にする。これにより、冷却用気体供給装置42からの冷却用気体が、誘導加熱コイルユニット1の冷却経路341、342に供給されて、加熱コイル20やケース30の内面が冷却される。その結果、加熱コイル20を含む誘導加熱コイルユニット1全体の過度な温度上昇が抑制される。 【0051】 一方、検出温度Tbが閾値Ta未満である場合(ステップS12でYES)、制御部441はステップS14へ処理を移行し、電磁弁43を閉状態にする。これにより、冷却用気体供給装置42から誘導加熱コイルユニット1の冷却経路341、342に対する冷却用気体の供給が停止される。その後、制御部441は、ステップS11へ処理を移行し、ステップS11以降を繰り返す。ステップS11?S14で示す冷却処理は、誘導加熱コイルユニット1が駆動されている間中行われている。 【0052】 以上説明した第1実施形態によれば、加熱コイル20は、ケース30内に収容されてユニット化されている。これによれば、対象とする装置に加熱コイル20を取り付ける際または加熱コイル20を取り外す際に、ユーザは、加熱コイル20とケース30とを誘導加熱コイルユニット1として一体的に扱うことができるため、取り扱いが便利になる。したがって、加熱コイル20のメンテナンスや他の装置への流用がし易くなる。 【0053】 また、加熱コイル20を収容するケース30は、絶縁性を有している。したがって、ユーザは、誘導加熱コイルユニット1を対象装置に取り付けたり取り外したりする際に、高温や高電圧の危険性が有る加熱コイル20を直接触ることなく、誘導加熱コイルユニット1を取り扱うことができる。したがって、安全性の向上が図られる。 【0054】 また、ケース30は、供給口151と、排出口152と、冷却経路341、342と、を有している。供給口151は、ケース30の内部と外部とを連通しており、ケース30の外部に設けられた冷却用気体供給装置42から供給される冷却用気体をケース30内に供給するためのものである。排出口152は、ケース30の内部と外部とを連通しており、供給口151からケース30の内に供給された冷却用気体をケース30の外部へ排出するためのものである。そして、冷却経路341、342は、ケース30と加熱コイル20との間に形成された隙間S1、S2によって構成されており、供給口151と排出口152とを繋いでいる。 【0055】 この構成において、冷却用気体供給装置42から冷却用気体が供給されると、その冷却用気体は、誘導加熱コイルユニット1の供給口151を通ってケース30内に供給される。そして、供給口151からケース30内に流入した冷却用気体は、図1の矢印Y1、Y2に示すように、冷却経路341、342を通って、排出口152に至る。これにより、冷却経路341、342を通る冷却用気体によって、主に加熱コイル20の表面及び外周部が冷却される。その際、冷却用気体は、ケース30内に形成された冷却経路341、342を通るため、加熱対象物に接触することがない。これによれば、冷却用気体は、加熱対象物90の温度を極力下げることなく加熱コイル20を効率良く冷却することができる。したがって、加熱コイル20の過度な温度上昇を抑制し、その温度上昇による抵抗の増加を抑制することができ、その結果、加熱コイル20の出力効率を向上させることができる。 【0056】 更に、本実施形態の場合、加熱コイル20は、電気絶縁性を有するケース30内に収容されている。そのため、取り扱いの安全性を確保するために、加熱コイル20の周囲を、電気絶縁性を有する樹脂等で覆う必要が無い。これによれば、冷却経路341、342を通る冷却用気体の一部が、加熱コイル20の巻線間を抜け易くなる。したがって、加熱コイル20を1巻き毎に冷却することができるため、取り扱いについての安全性を向上させつつ冷却性能を向上させることができる。 【0057】 また、誘導加熱コイルユニット1の供給口151は、エア配管161を介して外部の冷却用気体供給装置42に接続可能となっている。この場合、冷却用気体供給装置42は、空気や窒素等の気体を供給できるものであればよく、特定の構成に限定されない。ここで、誘導加熱コイルユニット1は、例えば工場や作業現場等での利用が想定される。そして、一般的な工場や作業現場等には、空圧駆動の機器を駆動させるための圧縮機等が設定されていることが多い。この場合、ユーザは、工場や作業現場等に設置されている一般的な圧縮機等を、冷却用気体供給装置42として利用することができる。このように、誘導加熱コイルユニット1は、冷却用供給気体を供給するための専用の送風機等を必要としない。したがって、誘導加熱コイルユニット1単体及び誘導加熱コイルユニット1が組み込まれる装置を、小型化することができる。 【0058】 ここで、加熱コイル20において加熱対象物90と対向する面つまり加熱コイル20の表面は、加熱対象物90からの輻射熱の影響を受けて温度上昇し易い。そこで、冷却経路341、342は、第1冷却経路341を含んで構成されている。第1冷却経路341は、加熱コイル20における加熱対象物90側の面つまり加熱コイル20の表面とケース30との間に形成された隙間S1で構成されている。これによれば、第1冷却経路341を通る冷却用気体が加熱コイル20の表面に接触することによって、加熱コイル20の表面が直接的に冷却される。したがって、加熱対象物90からの輻射熱の影響を受けて温度上昇し易い加熱コイル20の表面を効率良く冷却することができる。 【0059】 また、冷却経路341、342は、第2冷却経路342を含んで構成されている。第2冷却経路342は、加熱コイル20の外周部とケース30との間にあって、加熱コイル20の外周部に沿って形成された隙間S2で構成されている。第2冷却経路342を通る冷却用気体によって、加熱コイル20の外周部も効率良く冷却することができる。 【0060】 ここで、第1冷却経路341の断面積が小さいと、第1冷却経路341に十分な量の冷却用気体が流れなくなり、加熱コイル20の冷却効果を十分に発揮することができない。この場合、第1冷却経路341の断面積を大きく確保するためには、加熱コイル20の厚み方向に対する寸法H1を大きくする必要がある。しかしながら、加熱コイル20の厚み方向に対する寸法H1を大きくすると、加熱コイル20の表面から加熱対象物90までの距離も大きくなり、その結果、加熱効率が低下してしまう。 【0061】 そこで、本実施形態において、誘導加熱コイルユニット1は、加熱コイル20の周囲に設けられて第1冷却経路341に連通する第2冷却経路342を備えている。そして、第2冷却経路342の断面積は、第1冷却経路341の断面積よりも大きく設定されている。そのため、第2冷却経路342には、第1冷却経路341に比べて多くの冷却用気体が流れ易い。したがって、第1冷却経路341の寸法H1が小さい場合であっても、冷却用気体は、加熱コイル20の周囲に設けられた第2冷却経路342を通って、加熱コイル20の周囲から適宜、第1冷却経路341に流入し易くなる。これにより、冷却性能を低下させることなく第1冷却経路341の寸法H1を極力小さくすることができ、その結果、加熱コイル20の加熱性能と冷却性能との両立を図ることができる。 【0062】 また、供給口151及び排出口152は、平面視において加熱コイル20の中心部である頂点Oと供給口151と排出口152との成す角度αが鋭角となる位置に設けられている。そして、誘導加熱コイルユニット1は、仕切り部141を備えている。仕切り部141は、第2冷却経路342中における鋭角側の領域に設けられて、供給口151と排出口152との間を仕切っている。 【0063】 これにより、供給口151から第2冷却経路342内に入った冷却用気体が鋭角α側の領域つまり最短経路を通って排出口152側へ至るいわゆるショートサーキットを抑制することができる。すなわち、これによれば、供給口151から第2冷却経路342内に流入した冷却用気体が、図1の矢印Y1に示すように、加熱コイル20の外周部に沿って流れ易くなる。したがって、冷却用気体が、加熱コイル20の外周部の略全域に亘って接触し易くなる。また、冷却用気体が第2冷却経路342を流れることで、第2冷却経路342から流出した冷却用気体が第1冷却経路341にも流れ易くなる。 【0064】 したがって、供給口151から排出口152へ至る経路の距離つまり冷気用気体の流れる距離を極力長く確保することができる。すなわち、これによれば、冷却用気体との接触面積を極力大きく確保するとともに冷却用気体との接触時間を極力長く確保することができる。したがって、ケース30内に供給された冷却用気体の多くを加熱コイル20の冷却に寄与させることができ、その結果、冷却用気体を無駄にすること無く効率良く加熱コイル20を冷却することができる。 【0065】 この場合、仕切り部141は、終端側口出し線23によって構成されている。すなわち、本実施形態において、仕切り部141は、加熱コイル20が元来備える終端側口出し線23によって構成されている。これによれば、仕切り部141を設けるために、第1ケース31の形状を特殊なものとしたり、新たな部材を設けたりする必要がない。したがって、仕切り部141を設けることによる部品点数の増大を抑制でき、ひいては誘導加熱コイルユニット1の組立工数の抑制やコスト低減を図ることができる。 【0066】 また、仕切り部141は、シート部材17を含んで構成されている。シート部材17は、平面視において、つまり第1ケース31の周壁部312の内側面に対する接触部分から、終端側口出し線23の両側における加熱コイル20の外周部分に亘って滑らかな斜面に形成されている。これによれば、供給口151から流入した冷却用気体及び排出口152から流出する冷却用気体を、シート部材17に沿って滑らかに流すことができる。すなわち、供給口151及び排出口152近傍を流れる冷却用気体を整流することができる。したがって、供給口151から排出口152に至る冷却用気体の流れを滑らかにすることができ、その結果、冷却用気体による加熱コイル20等の冷却効率を向上させることができる。 【0067】 また、加熱コイル20の口出し線22、23は、それぞれ供給口151及び排出口152の一方と平面視において重なる位置に配置されている。すなわち、ケース30から引き出された口出し線22、23と、供給口151及び排出口152に接続されたエア配管161、162とは、それぞれ同一方向へ延びるように配置されている。これによれば、口出し線22、23及びエア配管161、162の引き出し方向を略一方向に集約させることができる。その結果、誘導加熱コイルユニット1は全体としてコンパクトになる。更には口出し線22、23及びエア配管161、162の引き回しがし易くなり、ひいては対象装置に対する誘導加熱コイルユニット1の取り付け作業が容易になる。 【0068】 また、誘導加熱システム40によれば、制御装置44は、温度センサ18の検出結果が閾値Ta以上である場合には、電磁弁43を開状態にして、冷却用気体供給装置42から冷却経路341、342に冷却用気体を供給する。一方、制御装置44は、温度センサ18の検出結果が閾値Ta未満である場合には、電磁弁43を閉状態にして、冷却用気体供給装置42から冷却経路341、342に対する冷却用気体の供給を停止する。これによれば、加熱コイル20の温度状態に応じて適宜冷却動作を行うことができるため、冷却用気体の使用量を低減でき、ひいては省エネ性能の向上が図られる。 【0069】 なお、誘導加熱コイルユニット1の形状すなわち加熱コイル20及びケース30の形状は、加熱対象物90の形状に合わせて適宜変更することができる。例えば、図8及び図9に示すように、加熱コイル20及びケース30を矩形状に形成しても良い。これによっても、上述したものと同等の作用効果が得られる。 【0070】 また、電磁弁43を排出口152側に設けても良い。更に、電磁弁43は、単に経路を開閉するだけではなく、電磁弁43を通過する冷却用気体の流量を電磁的に調整可能なものであってもよい。この場合、制御装置44は、加熱コイル20の温度状態に応じて閾値Taを複数段階に設定し、その複数段階の閾値Taに応じて電磁弁43を通過する冷却用気体の流量を調整するようにする。これによれば、加熱コイル20の温度状態に応じて冷却用気体の流量を調節できるため、加熱コイル20の温度状態に応じて更に細かい調整が可能となる。したがって、これによれば、冷却用気体の使用量を更に低減でき、ひいては省エネ性能の更なる向上が図られる。 【0071】 また、電磁弁43に換えて、手動操作により開閉可能な手動バルブを設けても良い。この場合、制御装置44による電磁弁43の制御は不要となる。これによれば、制御装置44による制御が不要となるため、より簡単な構成とすることができる。 【0072】 また、誘導加熱コイルユニット1は、冷却経路として少なくとも第1冷却経路341又は第2冷却経路342のいずれか一方、すなわち隙間S1又は隙間S2のいずれか一方を備える構成であればよい。これによっても、第1冷却経路341及び第2冷却経路342の両方を備えたものに比べて若干劣りはするものの、加熱コイル20の冷却効果を得ることができる。 【0073】 また、誘導加熱コイルユニット1は、第1冷却経路341中において鋭角となる領域、例えば仕切り部141と中心部Oとを結ぶ線上に、第1冷却経路341を供給口151側と排出口152側とに仕切る仕切り部を備えていても良い。これによれば、供給口151から第1冷却経路341内に入った冷却用気体が鋭角α側の領域つまり最短経路を通って排出口152側へ至るいわゆるショートサーキットを抑制することができる。すなわち、これによれば、第1冷却経路341中に流入した冷却用気体が、段差部314の周囲を迂回するように加熱コイル20の表面上を流れるため、加熱コイル20の表面との接触距離を長く確保することができ、その結果、加熱コイル20の表面を効率良く冷却することができる。 【0074】 (第2実施形態) 次に、第2実施形態について、図10?図13を参照して説明する。 第2実施形態の誘導加熱コイルユニット2は、第1実施形態の誘導加熱コイルユニット1を基礎として構成されているが、各構成について寸法の変更等が適宜行われている。以下の説明では、上述した誘導加熱コイルユニット1に対して実質的な変更が必要な構成については、その構成の符号の末尾に「A」を付している。 【0075】 第2実施形態の誘導加熱コイルユニット2は、加熱コイル20と、ケース30Aと、を備えている。ケース30Aは、第1実施形態のケース30Aの構成に加えて、ケース穴部37を有している。ケース穴部37は、ケース30Aつまり第1ケース31A及び第2ケース32Aの中心部を、加熱コイル20の厚み方向に円形に貫いて形成されている。また、この場合、図11に示すように、取付板12Aは、取付板穴部123を有している。取付板穴部123は、ケース穴部37と重なる位置にあって、取付板12Aを厚み方向へ円形に貫いて形成されている。ケース穴部37の内径寸法と取付板穴部123の内径寸法とは同等である。 【0076】 また、誘導加熱コイルユニット2は、内側防磁リング191及び外側防磁リング192を更に備えている。内側防磁リング191及び外側防磁リング192は、フェライトコア11と同様に磁性材料で構成されている。内側防磁リング191は、円環状に形成されており、第1ケース31Aの円柱部313の周囲を囲っている。外側防磁リング192は、円環状に形成されており、加熱コイル20の外周部から離間した状態で、加熱コイル20の外周部を囲っている。この場合、加熱コイル20の外周部と第1ケース31Aの周壁部312との間でかつ外側防磁リング192の内周部と加熱コイル20の外周部との間に、隙間S2Aが形成されている。そして、この隙間S2Aによって、第2冷却経路342Aが形成されている。 【0077】 なお、図12に示すように、第1ケース31Aは、ネジ132によって第2ケース32Aに固定されている。また、取付板12Aは、ネジ133によって第2ケース32Aに固定されている。 【0078】 誘導加熱コイルユニット2は、図13に示すように、金型装置50に組み込むことが可能である。なお、以下説明では、図13における紙面上下方向を金型装置50の上下方向とする。金型装置50は、上金型511及び下金型512と、上金型支持台521及び下金型支持台522と、上ベース盤531及び下ベース盤532と、を備えている。上下の金型511、512は、詳細は図示しないが、相互に対向する面に型が形成されている。そして、その型内に樹脂等が充填されて成形される。 【0079】 上下の金型511、512は、それぞれ上下の金型支持台521、522に取り付けられて支持されている。そして、上下の金型支持台521、522は、それぞれ上下のベース盤531、531に取り付けられて固定されている。上下の金型支持台521、522は、それぞれユニット収容部523と心棒524とを有している。ユニット収容部523は、誘導加熱コイルユニット2を収容可能に構成されている。心棒524は、ケース穴部37及び取付板穴部123に挿通可能な円柱棒状に形成されており、金型支持台521、522と一体に構成されている。 【0080】 誘導加熱コイルユニット2は、加熱コイル20の表面が金型511、512に向いた状態で、かつケース穴部37及び取付板穴部123に心棒524が通された状態で、ユニット収容部523に配置される。そして、誘導加熱コイルユニット2は、ネジ134等によって金型支持台521、522に取り付けられる。この場合、誘導加熱コイルユニット2の加熱対象物は、上下の金型511、512である。そして、この金型装置50によれば、誘導加熱コイルユニット2によって金型511、512を加熱しながら成型を行うことができる。 【0081】 この場合、誘導加熱コイルユニット2はユニット収容部523内に配置されているため、その周囲を金型支持台521、522に囲まれている。そのため、加熱コイル20自身による発熱及び金型511、512からの輻射熱がケース30A内に蓄積され易くなっている。すなわち、本実施形態の加熱コイル20は、第1実施形態のものと比べて高温になり易くなっている。しかし、誘導加熱コイルユニット2も、第1実施形態の誘導加熱コイルユニット1と同様に、冷却用気体が流れる第1冷却経路341及び第2冷却経路342Aを備えている。これによれば、誘導加熱コイルユニット2のケース30A内に熱がこもり易い場合であっても、加熱コイル20を効率良く冷却することができる。 【0082】 また、この構成において、金型装置50は、上ベース盤531と下ベース盤532とが相互に離接する方向へ移動可能に構成されている。ここで、金型511、512内に液状の樹脂等が注入される際には上ベース盤531と下ベース盤532とが相互に接近する方向へ加圧されており、その結果、金型511、512及び金型支持台521、522には数?数十トンもの型締め力が作用する。この場合、ユニット収容部523を、心棒524が設けられていない単純な空間にすると、ユニット収容部523の周囲部分525に型締力による応力が集中してしまう。すると、周囲部分525が潰れるおそれがあり、ひいては誘導加熱コイルユニット2が押し潰されてしまうおそれがある。 【0083】 これに対し、本実施形態によれば、金型支持台521、522は、心棒524を有している。そして、誘導加熱コイルユニット2は、加熱コイル20の表面が金型511、512に向いた状態で、かつケース穴部37及び取付板穴部123に心棒524が通された状態で、ユニット収容部523に配置される。これによれば、金型支持台521、522に作用する型締力を、ユニット収容部523の周囲部分525のみならず心棒524で受けることができる。これにより、ユニット収容部523の周囲部分525に型締力が集中してしまうことを防ぐことができる。その結果、周囲部分525が潰れてしまい、ひいては誘導加熱コイルユニット2が押し潰されてしまうこと抑制することができる。 【0084】 (第3実施形態) 次に、第3実施形態について、図14を参照して説明する。 第3実施形態の誘導加熱コイルユニット3は、第1実施形態の誘導加熱コイルユニット1を基礎として構成されているが、各構成について寸法の変更等が適宜行われている。以下の説明では、上述した誘導加熱コイルユニット1に対して実質的な変更が必要な構成については、その構成の符号の末尾に「B」を付している。 【0085】 第3実施形態の誘導加熱コイルユニット3は、加熱コイル20と、ケース30Bと、を備えている。本実施形態において、ケース30Bの雄ネジ部315、316は、平面視において加熱コイル20の中心部である頂点Oを挟んで直線上に配置されている。これにより、供給口151及び排出口152は、平面視において加熱コイル20の中心部である頂点Oを挟んで直線上に設けられている。すなわち、供給口151及び排出口152は、頂点Oを挟んで略180°で対向する位置に設けられている。 【0086】 また、誘導加熱コイルユニット3は、第2冷却経路342B内を2つに仕切る仕切り部として2つの整流部142、143を有している。2つの整流部142、143は、それぞれ第2冷却経路342B内において供給口151及び排出口152に対応する位置つまり供給口151及び排出口152に対向する位置に設けられている。すなわち、供給口151、排出口152、及び整流部142、143は、平面視において直線上に配置されている。 【0087】 整流部142、143は、第2冷却経路342を流れる冷却用気体を分岐又は合流させるためのものである。すなわち、第2冷却経路342Bは、整流部142、143を基準にして2つの経路に別れている。つまり、本実施形態において、誘導加熱コイルユニット3は、2つの第2冷却経路342B、342Bを備えている。この場合、供給口151側に設けられた整流部142は、供給口151から第2冷却経路342B内に流入した冷却用気体を2方向に分岐させるための分流部142として機能する。また、排出口152側に設けられた整流部143は、分岐されて流れてきた冷却用気体を合流させて排出口152に導くための合流部143として機能する。 【0088】 本実施形態の場合、分流部142及び合流部143は、それぞれ三角柱状に形成された部材であり、例えば電気絶縁性及び耐熱性を有する樹脂等によって構成されている。この場合、分流部142は、平面視において三角形の頂点を供給口151側へ向けた状態で、その底辺を加熱コイル20の外周部に接着して設けられている。また、合流部143は、平面視において三角形の頂点を排出口152側へ向けた状態で、その底辺を加熱コイル20の外周部に接着して設けられている。 【0089】 これによれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、供給口151から供給された冷却用気体は、図14の矢印Y3で示すように分流部142で二手に別れて第2冷却経路342Bを巡ると共に、矢印Y4で示すように第1冷却経路341Bを巡る。これにより、第1冷却経路341B及び第2冷却経路342Bを巡る冷却用気体により、加熱コイル20が冷却される。 【0090】 ここで、加熱コイル20の直径が比較的大きい場合、第1実施形態のように第2冷却経路342を半円の円弧を超える長さの円弧状に形成すると、第2冷却経路342の距離が長くなる。すると、排出口152側付近では、冷却用気体の温度が上昇し易くなって加熱コイル20の冷却能力が低下する。これに対し、本実施形態の誘導加熱コイルユニット3は、略半円の円弧状に形成された2つの第2冷却経路342Bを備えている。したがって、第1実施形態のように第2冷却経路342を半円の円弧を超える長さの円弧状に形成した場合に比べて、1つの第2冷却経路342Bの距離すなわち供給口151から排出口152に至る経路の距離を短くすることができる。これにより、排出口152側付近おける冷却用気体の温度上昇を極力抑制し、その結果、加熱コイル20の冷却能力が低下を抑制して効率良く加熱コイル20を冷却することができる。これは、例えば加熱コイル20の直径が150mm以上である場合により効果的である。 【0091】 (第4実施形態) 次に、第4実施形態について、図15を参照して説明する。 第4実施形態の誘導加熱コイルユニット4は、第1実施形態の誘導加熱コイルユニット1を基礎として構成されているが、各構成について寸法の変更等が適宜行われている。以下の説明では、上述した誘導加熱コイルユニット1に対して実質的な変更が必要な構成については、その構成の符号の末尾に「C」を付している。 【0092】 第4実施形態の誘導加熱コイルユニット4は、図15に示すように、複数組この場合2組の供給口151及び排出口152と、複数この場合2つの仕切り部141と、を備えている。各組の供給口151と排出口152とは、加熱コイル20の中心部Oを頂点とする角度αが90°以上の鈍角となる位置に配置されている。この場合、一方の組の供給口151と他方の組の排出口152とは、頂点Oを挟んで対向する位置に設けられている。また、2つの仕切り部141、141は、隙間S2において隣接する2つの供給口151、151の間、及び隣接する2つの排出口152、152の間にそれぞれ設けられている。これにより、相互に分離された2つの第2冷却経路342C、342Cが形成されている。 【0093】 この第4実施形態においても、上述した第3実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、本実施形態における誘導加熱コイルユニット4は、相互に分離された2つの第2冷却経路342Cを備えている。そして、第2冷却経路342Cは、半円の円弧状よりも短い円弧状に形成されている。したがって、第1実施形態のように第2冷却経路342を半円の円弧を超える長さの円弧状に形成した場合に比べて、1つの第2冷却経路342Cの距離を短くすることができる。これにより、排出口152側付近おける冷却用気体の温度上昇を極力抑制し、その結果、加熱コイル20の冷却能力が低下を抑制して効率良く加熱コイル20を冷却することができる。これは、例えば加熱コイル20の直径が150mm以上である場合により効果的である。 【0094】 誘導加熱コイルユニット4は、3組以上の供給口151及び排出口152を備えていても良い。すなわち、誘導加熱コイルユニット4は、3つ以上の供給口151及び排出口152を備えていても良い。これによれば、供給口151から排出口152に至る冷却経路について、1つ当りの冷却経路の距離を更に短くできるため、加熱コイル20の冷却効率を更に向上させることができる。 【0095】 (第5実施形態) 次に、第5実施形態について、図16及び図17を参照して説明する。 第5実施形態の誘導加熱コイルユニット5は、第1実施形態の誘導加熱コイルユニット1を基礎として構成されているが、各構成について寸法の変更等が適宜行われている。以下の説明では、上述した誘導加熱コイルユニット1に対して実質的な変更が必要な構成については、その構成の符号の末尾に「D」を付している。 【0096】 第5実施形態の誘導加熱コイルユニット5において、供給口151及び排出口152は、図17に示すように、平面視において加熱コイル20の中心部である頂点Oを挟んで略直線上に設けられている。すなわち、供給口151及び排出口152は、頂点Oを挟んで略180°で対向する位置に設けられている。また、誘導加熱コイルユニット5は、第1冷却経路341及び第2冷却経路342に加えて、第1接続経路351、第2接続経路352、第3接続経路353、及び第4接続経路354を更に備えている。第1接続経路351及び第2接続経路352は、供給口151と隙間S1とを接続する経路つまり供給口151と第1冷却経路341とを接続する経路である。また、第3接続経路353及び第4接続経路354は、隙間S2と排出口152とを接続する経路つまり第2冷却経路342と排出口152とを接続する経路である。 【0097】 すなわち、ケース30Dは、第1ケース31Dと第2ケース32Dとから構成されている。第1ケース31Dは、円柱部313や段差部314を有さない円筒形の容器状に形成されており、加熱コイル20の表面側及び外周面側を覆っている。この場合、第1ケース31Dの表面内側と加熱コイル20の表面との間には隙間S1が形成されている。この隙間S1は、上述した各実施形態と同様に、第1冷却経路341として機能する。また、加熱コイル20の外周面側と、第1ケース31Dの周壁部312との間には隙間S2が形成されている。この隙間S2は、上述した各実施形態と同様に、第2冷却経路342として機能する。なお、本実施形態において、供給口151及び排出口152は、第2ケース32Dの周壁部に設けられた雌ネジ部324、325にねじ込まれて取り付けられている。 【0098】 また、第2ケース32Dは、円筒部322を有している。円筒部322は、円筒形状であって第2ケース32Dの底部323の中心部に立設するように設けられている。そして、第1接続経路351は、第2ケース32Dの底部323内を供給口151から第2ケース32Dの中心部つまり加熱コイル20の中心部O側へ向かって掘り進むように形成されている。また、第2接続経路352は、円筒部322の内側の空間によって構成されている。そして、第2接続経路352は、加熱コイル20の表面側において隙間S1に連通している。これにより、第1接続経路351及び第2接続経路352は、供給口151と隙間S1つまり供給口151と第1冷却経路341とを接続している。 【0099】 第3接続経路353は、第2ケース32Dにおける加熱コイル20側の面を、円筒部322の周囲を囲むような円環状に掘り下げるようにして形成されている。そして、第4接続経路354は、第2ケース32Dの底部323内を第3接続経路353から排出口152へ向かって掘り進むように形成されている。これにより、第3接続経路353及び第4接続経路354は、隙間S2と排出口152つまり第2冷却経路342と排出口152とを接続している。 【0100】 すなわち、本実施形態において、供給口151と排出口152とは、第1接続経路351、第2接続経路352、第1冷却経路341、第2冷却経路342、第3接続経路353、及び第4接続経路354の順に接続されて連通している。したがって、供給口151から供給された冷却用気体は、図16及び図17の矢印Y5に示すように、第1接続経路351及び第2接続経路352を経て、第1冷却経路341に流入し、第1冷却経路341及び第2冷却経路342を流れる。その後、冷却用気体は、第3接続経路353及び第4接続経路354を経て排出口152に至り、排出口152から排出される。その際、主に第1冷却経路341及び第2冷却経路342を流れる冷却用気体によって、加熱コイル20が冷却される。 【0101】 この構成においても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、供給口151と排出口152との配置を逆にしても良い。この場合、冷却用気体の流れは図16及び図17に示す矢印Y5の向きとは逆になる。すなわち、この場合、供給口としての排出口152から供給された冷却用気体は、第4接続経路354及び第3接続経路353を経て、第2冷却経路342に流入し、第2冷却経路342及び第1冷却経路341を流れて加熱コイル20を冷却する。その後、冷却用気体は、第2接続経路352及び第1接続経路351を経て、排出口としての供給口151に至り、供給口151から排出される。これによっても、上述した構成と同等の冷却効果が得られる。 【0102】 (第6実施形態) 次に、第6実施形態について、図18及び図19を参照して説明する。 第6実施形態の誘導加熱コイルユニット6は、第1実施形態の誘導加熱コイルユニット1を基礎として構成されているが、各構成について寸法の変更等が適宜行われている。以下の説明では、上述した誘導加熱コイルユニット1に対して実質的な変更が必要な構成については、その構成の符号の末尾に「E」を付している。 【0103】 第6実施形態の誘導加熱コイルユニット6において、加熱コイル20Eは、第1実施形態の加熱コイル20よりも厚みが大きい円筒形状に形成されている。誘導加熱コイルユニット6は、ネジ134等によって設置面100に固定される。加熱対象物90は、加熱コイル20Eの円筒形状の内側に配置される。つまり、加熱コイル20Eの内周側の面は、加熱対象物90と対向する面つまり加熱対象物90側の面となる。 【0104】 ケース30Eは、全体として円環状に形成されており、内部に加熱コイル20Eを収容するための収容空間を有している。この場合、ケース30Eは、第1ケース31Eと第2ケース32Eとを組み合わせて構成されている。加熱コイル20Eは、第1隙間S1、第2隙間S2、及び第3隙間S3を有した状態で、ケース30E内に収容されている。第1隙間S1は、加熱コイル20Eの内周側の面と第1ケース31Eの内周側の内面との間に形成された隙間である。第2隙間S2は、加熱コイル20Eの外周側の面と第1ケース31Eの外周側の内面この場合外側防磁リング192Eとの間に形成された隙間である。そして、第3隙間S3は、加熱コイル20Eの表面つまり第2ケース32Eとは反対側の面と第1ケース31Eの底部311E側の内面との間に形成された隙間である。 【0105】 供給口151と排出口152との間は、第1隙間S1、第2隙間S2、及び第3隙間S3を介して接続されている。この場合、第1隙間S1は、第1冷却経路341Eとして機能する。第2隙間S2は、第2冷却経路342Eとして機能する。第3隙間S3は、第3冷却経路343として機能する。この構成において、供給口151から供給された冷却用気体は、図18及び図19の矢印Y6に示すように、第2冷却経路342Eを巡るとともに、第3冷却経路343から第1冷却経路341Eに流入して第1冷却経路341Eを巡る。その後、冷却用気体は、排出口152に至り、そして、排出口152から排出される。その際、各冷却経路341E、342E、343を流れる冷却用気体によって、加熱コイル20Eが冷却される。 【0106】 この誘導加熱コイルユニット6は、図18に示すように、円筒形状の加熱対象物90に対して円環状のリング部材91を焼嵌め結合することに適している。すなわち、図18に示す加熱対象物90は、例えば円筒状に形成されている。また、リング部材91は、円環状に構成されている。この場合、室温状態において、加熱対象物90の内径は、リング部材91の外形よりもやや大きく設定されている。そして、加熱対象物90は、誘導加熱コイルユニット6の内側に配置されて、誘導加熱コイルユニット6によって誘導加熱される。これにより、加熱対象物90が熱膨張し、加熱対象物90の内径がリング部材91の外形よりも若干大きくなる。そして、熱膨張した状態の加熱対象物90の内側に、リング部材91が挿入された後、加熱対象物90が冷却される。これにより、加熱対象物90の内径が縮小し、加熱対象物90とリング部材91とが焼嵌め結合される。なお、加熱対象物90は、焼嵌め結合するものに限られず、例えば棒状であっても良い。 本実施形態によれば、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。 【0107】 (第7実施形態) 次に、第7実施形態について、図20を参照して説明する。 第7実施形態の誘導加熱コイルユニット7は、第1実施形態の誘導加熱コイルユニット1を基礎として構成されているが、各構成について寸法の変更等が適宜行われている。以下の説明では、上述した誘導加熱コイルユニット1に対して実質的な変更が必要な構成については、その構成の符号の末尾に「F」を付している。 【0108】 第7実施形態の誘導加熱コイルユニット7において、加熱コイル20Fは、第6実施形態の加熱コイル20Eと同様に、第1実施形態の加熱コイル20よりも厚みが大きい円筒形状に形成されている。加熱対象物90は、加熱コイル20Eの外周側に配置される。つまり、加熱コイル20Eの外周側の面は、加熱対象物90と対向する面つまり加熱対象物90側の面となる。 【0109】 ケース30Fは、全体として円環状に形成されており、内部に加熱コイル20Fを収容するための収容空間を有している。この場合、ケース30Fは、第1ケース31Fと第2ケース32Fとを組み合わせて構成されている。加熱コイル20Fは、第1隙間S1及び第2隙間S2を有した状態で、ケース30F内に収容されている。第1隙間S1は、加熱コイル20Fの外周側の面と第1ケース31Fの外周側の内面との間に形成された隙間である。第2隙間S2は、加熱コイル20Fの表面つまり第2ケース32Fとは反対側の面と第1ケース31Fの底部311F側の内面との間に形成された隙間である。 【0110】 供給口151F及び排出口152Fは、それぞれ第2ケース32Fにおける外周寄り部分、つまり第1隙間S1に対向する位置に設けられている。供給口151Fと排出口152Fとの間は、第1隙間S1又は第2隙間S2を介して接続されている。この場合、第1隙間S1は、第1冷却経路341Fとして機能する。また、第2隙間S2は、第2冷却経路342Fとして機能する。 【0111】 この構成において、供給口151Fから供給された冷却用気体は、図20の矢印Y7に示すように、第1冷却経路341F及び第2冷却経路342Fを巡って排出口152Fに至り、そして、排出口152から排出される。その際、各冷却経路341F、342Fを流れる冷却用気体によって、加熱コイル20Fが冷却される。 【0112】 この誘導加熱コイルユニット7は、図20に示すように、円筒状又は容器状の加熱対象物90を、その内側から加熱することに適している。すなわち、図20に示す加熱対象物90は、例えば円筒状の容器状に形成されている。加熱対象物90は、その内側に誘導加熱コイルユニット7を入れ込むようにして配置される。これにより、誘導加熱コイルユニット7は、加熱対象物90をその内側から誘導加熱することができる。 本実施形態によれば、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。 【0113】 なお、上記各実施形態において、加熱コイル20等の形状は上述した様な円環の平板状又は筒状に限られない。例えば加熱対象物90の加熱対象面が曲面である場合、加熱コイル20等は、その加熱対象面に合わせて曲面に形成しても良い。 また、上記各実施形態は、適宜組み合わせて実施することができる。 また、第1実施形態の誘導加熱システム40は、上述した各実施形態のうち第1実施形態以外の実施形態についても適用することができる。 【0114】 以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。 【符号の説明】 【0115】 図面中、1、2、3、4、5、6、7は誘導加熱コイルユニット、141は仕切り部、142は分流部(仕切り部、整流部)、143は合流部(仕切り部、整流部)、151、151Fは供給口、152、152Fは排出口、18は温度センサ(温度検出手段)、20、20E、20Fは加熱コイル、30、30A,30B、30D、30E、30Fはケース、341、341E、341Fは第1冷却経路(冷却経路)、342、342A、342B、342C、342E、342Fは第2冷却経路(冷却経路)、343は第3冷却経路(冷却経路)、37はケース穴部(穴部)を示す。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでいる、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項2】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、 前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項3】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、 前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項4】 加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、 前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、 前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、 前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、 前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している、 誘導加熱コイルユニット。 【請求項5】 前記供給口と前記排出口とをそれぞれ2つ以上ずつ備えている、 請求項1から4のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニット。 【請求項6】 請求項1から5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニットと、 前記加熱コイルの温度を検出可能な温度検出手段と、 前記冷却経路に冷却用気体を供給可能な冷却用気体供給手段と、 前記温度検出手段の検出結果が予め設定した閾値以上である場合に前記冷却用気体供給手段により前記冷却経路に冷却用気体を供給し、前記温度検出手段の検出結果が前記閾値未満である場合に前記冷却用気体供給手段による前記冷却用気体の供給を停止する冷却制御を行うことが可能な制御装置と、 を備える誘導加熱システム。 【図面】 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-04-18 |
出願番号 | 特願2016-90819(P2016-90819) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H05B)
P 1 651・ 113- YAA (H05B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 光治 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
槙原 進 井上 哲男 |
登録日 | 2017-03-24 |
登録番号 | 特許第6114435号(P6114435) |
権利者 | 鈴木工業株式会社 |
発明の名称 | 誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システム |
代理人 | 西村 竜平 |
代理人 | 特許業務法人 サトー国際特許事務所 |
代理人 | 上村 喜永 |
代理人 | 特許業務法人サトー国際特許事務所 |
代理人 | 齊藤 真大 |