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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B23K
管理番号 1341098
異議申立番号 異議2017-701238  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-26 
確定日 2018-05-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第6159815号発明「摺動部品、摺動部品の製造方法および摺動部品の製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6159815号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6159815号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)10月16日に国際出願され、平成29年6月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年12月26日に特許異議申立人日高賢治(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6159815号の請求項1ないし15の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人の提出した証拠は次のとおりである。
刊行物1:特開2012-179649号公報
刊行物2:森川勝吉、外3名、“ネーバル黄銅とS25C炭素鋼摩擦圧接継手の疲労強度特性”、圧力技術、一般社団法人日本高圧力技術協会、2005年、第43巻、第5号、p.19-25
刊行物3:特開2008-69747号公報
刊行物4:摩擦圧接協会編、“摩擦接合技術”、初版、日刊工業新聞社、2006年3月30日、p.8-11、26-29、80-87
刊行物5:特開平11-58034号公報
刊行物6:社団法人日本金属学会編、“改訂5版金属便覧”、第5刷、丸善株式会社、平成7年4月5日、p.622、623
刊行物7:児島明彦、“鋼の製造と性質”、溶接学会誌、社団法人溶接学会、2008年、第77巻、第3号、p.33-43
刊行物8:特開2006-52671号公報

そして、特許異議申立人は、請求項1ないし15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし15に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.刊行物の記載
(1)刊行物1には、次の発明が記載されている。
摺動面を有するシュー(10)であって、
鋼からなる本体部(13)と、
摺動面が形成され、銅合金からなり、本体部(13)に放電プラズマ焼結法による加熱加圧によって固相接合された摺動部(14)とを備える、
シュー(10)。

(2)刊行物2には、黄銅と炭素鋼を摩擦圧接した際に接合面に他の領域に比べて結晶粒が小さい領域が形成されるという技術的事項が記載されている。

(3)刊行物3には、段落【0065】-【0069】に実施例5として、鉄系材料からなるSUJ2からなるシューにおいて、斜板摺接面211aを有する基部211と、半球部212とを摩擦圧接によって接合するという技術的事項が記載されている。

(4)刊行物4には、摩擦圧接機の発明及び摩擦圧接に関する技術的事項が記載されている。

(5)刊行物5には、摺動部品の銅合金として高力黄銅を用いるという技術的事項が記載されている。

(6)刊行物6には、高力黄銅からなる接合領域は、加熱されることにより加熱されていない他の領域に比べてα相の割合が多くなるという技術的事項が記載されている。

(7)刊行物7には、1173K(900℃)が炭素鋼のA_(1)変態点以上固相線温度未満の温度であるという技術的事項が記載されている。

(8)刊行物8には、突き合わせ部8を加熱する工程、及び補強部材31とピストン本体1とを接合する工程では、ピストン本体1において補強部材31に接触する突き合わせ部8の外周側においてピストン本体1が拘束されているという技術的事項が記載されている。

5.判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、本件特許発明1では「前記ベース部に、前記摺動部に接合される面であるベース部接合面を含むように、前記ベース部の他の領域に比べて結晶粒が小さいベース部接合領域が形成され」ているのに対し、引用発明1においては、「ベース部接合面」における「結晶粒」がどのような大きさであるのか示されていない点で相違する。
そして、本件特許発明1は「放電プラズマ焼結法による加熱加圧によって固相接合され」ているところ、「放電プラズマ焼結法による加熱加圧によって固相接合」した場合に、「接合面」の「結晶粒が小さ」くなるとの技術的事項は、刊行物1-8のいずれにも示されていない。
特許異議申立人は、引用発明1における「放電プラズマ焼結法による加熱加圧」に代えて、「摩擦圧接」を採用すれば、上記相違する点が解消する旨の主張をしている。しかしながら、通常は製造方法が異なれば、製造された物にも何らかの相違が発生する蓋然性が高いと考えられるところ、摩擦圧接が周知であるからといって、「放電プラズマ焼結法による加熱加圧」を行っている引用発明1において、わざわざ、別の手法を用いてみるという発想を得て、摩擦圧接を選択するという動機付けがあったものとは認められない。
「放電プラズマ焼結法による加熱加圧」と「摩擦圧接」がどちらも知られていて、相互に置換可能な技術的事項であると認めるに足りる根拠も、刊行物2-8には、示されていない。
したがって、本件特許発明1は、引用発明1及び刊行物2ないし8に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

(2)請求項2-8に係る発明について
請求項2-8に係る発明は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用するものである。そうすると、上記(1)と同様の理由により、請求項2-8に係る発明は、引用発明1及び刊行物2ないし8に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

(3)請求項9に係る発明について
請求項9に係る発明(以下、「本件特許発明9」という。)と引用発明1とを対比すると、本件特許発明9では「前記ベース部材を、前記摺動部材に接触させつつ相対的に滑らせることにより摩擦熱を発生させ」と「摩擦圧接」である点が特定されているのに対し、引用発明1では、「放電プラズマ焼結法による加熱加圧」である点で相違する。
そして、上記(1)に示したのと同様の理由により、引用発明1の「放電プラズマ焼結法による加熱加圧」を「摩擦圧接」とする動機付けがない以上、本件特許発明9は、引用発明1及び刊行物2ないし8に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

(4)請求項10-13に係る発明について
請求項10-13に係る発明は、本件特許発明9を直接的又は間接的に引用するものである。そうすると、上記(3)と同様の理由により、請求項10-13に係る発明は、引用発明1及び刊行物2ないし8に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

(5)請求項14に係る発明について
請求項14に係る発明(以下、「本件特許発明14」という。)と刊行物4に記載された発明(以下、「引用発明4」という。)とを対比すると、本件特許発明14では「鋼または鋳鉄からなるベース部材と、銅合金からなる摺動部材とを接合することにより摺動部品を製造する摺動部品の製造装置」である点が特定されているのに対し、引用発明4では、摩擦圧接機によって製造される対象が特定されていない点で相違する。
そして、刊行物3には、鉄系材料からなるSUJ2からなるシューが示されており、刊行物3に示されたようなシューを引用発明4の摩擦圧接機で製造することは十分に想到し得る事項である。
しかしながら、刊行物3に示されたシューは、同じ材料を用いるものであるところ、刊行物1及び刊行物5によって、鋼と銅合金からなる摺動部品が周知であるからといって、刊行物3に示された鉄系材料からなるSUJ2からなるシューにおいて、一方の部材を銅合金に置き換える動機付けがあったものということはできない。そして、他の刊行物を検討しても、刊行物3に示されたシューの材質を銅合金に置き換える動機付けとなり得るものは見受けられない。
したがって、本件特許発明14は、引用発明4、刊行物1ないし3に記載された技術的事項及び刊行物5ないし8に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

(6)請求項15に係る発明について
請求項15に係る発明は、本件特許発明14を引用するものである。そうすると、上記(5)と同様の理由により、請求項15に係る発明は、引用発明4、刊行物1ないし3に記載された技術的事項及び刊行物5ないし8に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

特許異議申立人は、引用発明1又は4に対して、他の刊行物に記載された事項を適用する動機付けとして、技術分野が同一である旨の主張をしているが、単に技術分野が同一というだけでは、接合手段や接合対象の材料を変更するための動機付けとしては十分とはいえないから、かかる主張は理由がない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-22 
出願番号 特願2015-542442(P2015-542442)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B23K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 本庄 亮太郎  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 平岩 正一
中川 隆司
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6159815号(P6159815)
権利者 株式会社小松製作所
発明の名称 摺動部品、摺動部品の製造方法および摺動部品の製造装置  
代理人 北野 修平  

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