• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1341377
審判番号 不服2017-5511  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-18 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2012- 71886「光半導体パッケージ用タブレット成形金型及びその金型を用いたタブレットの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 7日出願公開、特開2013-206968、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年3月27日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 1月15日 拒絶理由通知
平成28年 3月18日 意見書提出・手続補正
平成28年 8月23日 拒絶理由通知
平成28年10月25日 意見書提出・手続補正
平成29年 1月16日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 4月18日 審判請求・手続補正
平成29年 7月18日 上申書提出

第2 原査定の概要
本願請求項1に係る発明は,本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1,2に記載された発明及び引用文献3,5-7に開示された周知技術に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項2に係る発明は,本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1,2,4に記載された発明及び引用文献3,5-7に開示された周知技術に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2008-112977号公報
2.特開2002-1733号公報
3.特開平11-40587号公報
4.特開昭64-67304号公報
5.特開2006-206919号公報
6.特開2003-261783号公報
7.特開2010-47773号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,以下のとおり,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって,請求項1に記載されたシリコーン化合物に「液状」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また前記事項は,出願当初明細書の段落0036に記載されているから,新規事項を追加するものではないといえる。また,発明の特別な技術的特徴を変更するものともいえない。
そして,後記「第4 本願発明」から「第6 対比及び判断」までに示すように,補正後の請求項1ないし2に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は,審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
熱硬化性成分と(D)白色顔料,(E)無機充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物をタブレット成形するための金型であり,前記熱硬化性樹脂組成物と接触する部分の硬度がロックウェルCスケールで65以上で且つ表面粗さがRz0.8以下であることを特徴とする光半導体パッケージ用タブレット成形金型を用いてプレス圧力が7MPa以上40MPa以下で成形することを特徴とするタブレット製造方法であって,
前記熱硬化性成分が,(A)SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する少なくとも1種類の化合物,(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する少なくとも1種類の化合物,(C)ヒドロシリル化触媒,(F)SiH基もしくはSiH基と反応性を有する炭素-炭素不飽和結合を1分子中に少なくとも2個含有する液状シリコーン化合物を必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物をタブレット状に成形するためのタブレット製造方法。
【請求項2】
前記金型の熱硬化性樹脂組成物と接する部分の材質が,超硬合金であることを特徴とする請求項1記載のタブレット製造方法。」

第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,タブレット成形金型に関し,特に,熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレット成形するのに好適なタブレット成形金型に関する。さらに本発明は,当該成形金型を用いてなるタブレット,当該タブレットを用いた光半導体素子搭載用基板の製造方法および当該製法により得られる光半導体素子搭載用基板を用いてなる光半導体装置に関する。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記熱硬化性光反射用樹脂組成物は,通常,熱硬化性樹脂に加えて,光反射率や成形性を確保するために白色顔料や無機充填材等の充填材を含有している。そのため,このような組成物を従来のタブレット成形機によってタブレット成形すると,充填材成分がタブレット成形機の金型表面を削り,その結果,得られるタブレット表面が黒く着色してしまう場合がある。着色したタブレットは光反射率の低下を招くため,これを光半導体装置用のパッケージとして用いることは望ましくない。上記のような問題は,タブレット成形機の成形金型の内面に形成されているハードクロムめっき等の保護膜の強度が弱いために発生していると考えられる。一方,樹脂との接触面にフッ素を含む非晶質の炭素被膜を設けることによって,離型性と耐磨耗性とを兼備した,半導体封止用樹脂のタブレット成形用金型が開示されている(特許文献3)。しかし,開示された金型は,基材を衝撃に弱いWC基超硬合金から構成されており,金型に欠けなどの破損が生じやすい傾向がある。
【0004】
上記を鑑みて,本発明は,熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形する際に,タブレット表面が着色することを防止するのに適切なタブレット成形金型を提供することを目的とする。また,本発明は,上記成形金型を用いてなるタブレット,当該タブレットを用いた光半導体素子搭載用基板の製造方法および当該製法により得られる光半導体素子搭載用基板を用いてなる光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち,本発明は,以下(1)?(13)に記載の事項をその特徴とする。
(1)少なくとも充填材と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形するためのタブレット成形金型であって,少なくとも上記樹脂組成物と接する成形金型の内表面がセラミック系材料またはフッ素系材料から構成され,特定の硬度を有することを特徴とするタブレット成形金型。
(2)上記内表面がセラミックス系材料から構成され,ロックウェル硬度Cスケールで70以上の硬度を有することを特徴とする上記(1)に記載のタブレット成形金型。
(3)上記内表面がフッ素系樹脂材料から構成され,ロックウェル硬度Rスケールで50以上の硬度を有することを特徴とする上記(1)に記載のタブレット成形金型。
(4)上記(1)?(3)のいずれかに記載のタブレット成形金型を用いて,少なくとも充填材と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物を成形して得られるタブレット。
(5)上記充填材が,無機充填材および白色顔料の少なくとも一方を含む上記(4)に記載のタブレット。
(6)上記熱硬化性光反射用樹脂組成物が,エポキシ樹脂,硬化剤,無機充填材,白色顔料及びカップリング剤を含む上記(4)に記載のタブレット。
(7)上記無機充填材が,シリカ,水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,硫酸バリウム,炭酸マグネシウム,炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(5)または(6)に記載のタブレット。
(8)上記白色顔料が,アルミナ,酸化マグネシウム,酸化アンチモン,酸化チタン,酸化ジルコニウム,中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種である上記(5)?(7)のいずれかに記載のタブレット。
(9)上記白色顔料の平均粒径が,1?50μmの範囲である上記(5)?(8)のいずれかに記載のタブレット。
(10)上記無機充填材と上記白色顔料との合計量が,上記樹脂組成物全体に対して,10体積%?95体積%の範囲である上記(5)?(9)のいずれかに記載のタブレット。
(11)波長800nm?350nmにおける光反射率が80%以上である上記(4)?(10)のいずれかに記載のタブレット。
(12)光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板の製造方法であって,少なくとも上記凹部側壁を,上記(4)?(11)のいずれかに記載のタブレットを用いたトランスファー成形により形成することを特徴とする光半導体素子搭載用基板の製造方法。
(13)上記(12)に記載の製造方法により製造された光半導体素子搭載用基板と,
上記光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載された光半導体素子と,
上記光半導体素子を覆うように上記凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層とを備える光半導体装置。」
イ 「【0011】
また,本発明のタブレット成形金型は,例えば,公知の金属,合金,超硬合金等からなる臼と杵の少なくとも熱硬化性光反射用樹脂組成物と接する内表面に上記セラミックス系材料やフッ素系樹脂材料等の被膜を形成した構造であってよい。また,別の実施形態として,成形金型の全てを上記セラミック系材料またはフッ素系樹脂材料から構成してもよい。使用するセラミック系材料またはフッ素系樹脂材料は特に限定されないが,タブレットを着色する恐れのない白色の材料として調製されることが好ましい。」
ウ 「【0015】
以下,上記熱硬化性光反射用樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
熱硬化性樹脂としては,例えば,エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂,アクリレート樹脂,ウレタン樹脂などがあるが,特にエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂としては,電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができ,特に限定されないが,例えば,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの,ビスフェノールA,ビスフェノールF,ビスフェノールS,アルキル置換ビフェノール等のジグリシジエーテル,ジアミノジフェニルメタン,イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂,オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂,及び脂環族エポキシ樹脂等があり,これらは単独でも,2種以上併用してもよい。また,使用するエポキシ樹脂は比較的着色のないものであることが好ましく,そのようなエポキシ樹脂としては,例えば,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,トリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。」
エ 「【0020】
充填材としては,特に限定されないが,例えば,無機充填材や光反射率を向上させるための白色顔料を用いることができる。
上記無機充填材としては,例えば,シリカ,水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,硫酸バリウム,炭酸マグネシウム,炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種を用いることができるが,熱伝導性,光反射特性,成形性,難燃性の点からは,水酸化アルミニウムを組合せて使用することが好ましい。また,無機充填材の平均粒径は,特に限定されるものではないが,白色顔料とのパッキング効率を考慮すると1?100μmの範囲であることが好ましい。」
オ 「【0025】
本発明のタブレットは,上記のような熱硬化性光反射用樹脂組成物等の成形材料を本発明のタブレット成形金型を用いて成形してなるものである。成形の際の各種条件は,成形材料の組成等に応じて適宜決定すればよく,特に制限されないが,室温において,0.5?2MPa,1?5秒程度の条件下で行うことが好ましい。また,タブレットの形状やサイズは,用途等に応じて適宜決定すればよく,特に制限されない。例えば,一般的なトランスファー成形機のポットにセットして使用するタブレットの場合,代表的には円柱状に成形され,そのサイズはφ13mm,厚みは成形体積によって変化するが10?50mmの範囲であることが望ましい。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「熱硬化性樹脂と白色顔料および無機充填材とを含む熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレット成形するためのタブレット成形金型であり,前記熱硬化性光反射用樹脂組成物と接する成形金型の内表面が,ロックウェル硬度Cスケールで70以上の硬度を有するタブレット成形金型を用いてプレス圧力が0.5?2MPaで成形するタブレット製造方法であって,前記熱硬化性樹脂が,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂である熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレット状に成形するためのタブレット製造方法。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,集積回路等に組込まれる半導体部品の封止用熱硬化性樹脂をプレス成形するために用いられる,タブレット成形用金型に関する。」
イ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような半導体封止用樹脂には,通常シリカ粉末等の硬質粒子が50?80質量%添加されているため,成形用金型の上下パンチ及びダイの樹脂と接触する部分が摩耗しやすく,その結果タブレット成形時の離型性が短期間で劣化するという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は,上記事情に鑑みなされたもので,金型の上下パンチの押圧面及びダイの内周面に離型性と耐摩耗性を兼備したフッ素を含む非晶質の炭素被膜を被覆することにより,半導体封止用樹脂のタブレットを製造する際に用いられる金型の寿命の大幅な延長を可能にしたものである。」
ウ 「【0009】
また,被膜表面の平均面粗さ(Ra)を0.4μm以下にすることにより,より優れた離型性を得ることができる。この0.4μm以下の被膜表面Raは,被覆前の基材表面のRaを0.2μm以下に仕上げ加工しておくことにより容易に得られる。」
(2)引用技術的事項2
前記(1)より,引用文献2には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。
「封止用熱硬化性樹脂をプレス成形するために用いられる,タブレット成形用金型の被膜表面の平均面粗さ(Ra)を0.4μm以下にすることにより,より優れた離型性を得ることができること。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体を樹脂封止する際にステージシフト,ワイヤー流れが起こらない信頼性の優れた半導体封止用樹脂タブレット,該半導体封止用樹脂タブレットを用いて半導体素子を封止してなる半導体装置,および該半導体封止用樹脂タブレットの製造方法に関するものである。」
イ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0007】したがって本発明の目的は,半導体を樹脂封止する際にステージシフト,ワイヤー流れが起こらない信頼性の優れた半導体封止用樹脂タブレット,該半導体封止用樹脂タブレットを用いて半導体素子を封止してなる半導体装置,および該半導体封止用樹脂タブレットの製造方法を提供することである。」
ウ 「【0030】本発明の半導体封止用樹脂タブレットの製造方法としては,次のような方法が挙げられる。まず,エポキシ樹脂(A),硬化剤(B),無機充填材(C)を必須成分として含有してなる上記半導体封止用樹脂組成物を加熱混合,好ましくは60?140℃の温度で,さらに好ましくは60℃?120℃の温度で溶融混練する。溶融混練の装置としてはバンバリーミキサー,ニーダー,ロール,単軸もしくは二軸の押出機などの公知の混練機を用いて製造される。押出機には溶融吐出物にボイドを残さないためにベント装置が付いていることが好ましい。また,スクリューアレンジは,樹脂や無機充填材などを均質に混練するために,ニーディングスクリューやダルメージスクリューなどを用いることが好ましい。
【0031】次に,溶融樹脂を成形してタブレット化するが,溶融樹脂を金型に流し込みタブレット化する方法や溶融樹脂をシート状や棒状に押し出しし,固化後,打ち抜きや切断によりタブレット化する方法,溶融樹脂を射出成形によりタブレット化する方法など公知の方法で得られる。
【0032】本発明の半導体封止用樹脂タブレットを用い半導体素子を封止して半導体装置を製造する方法としては,低圧トランスファ-成形法が一般的であるがインジェクション成形法や圧縮成形法も可能である。成形条件としては,例えば半導体封止用樹脂タブレットを成形温度150?200℃,圧力5?15MPa,成形時間30?300秒で成形し,封止用樹脂組成物の硬化物とすることによって半導体装置が製造される。また,必要に応じて上記成形物を100?200℃で2?15時間,追加加熱処理も行われる。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「産業上の利用分野
本発明は,半導体の封止に用いられる樹脂タブレットを安定した品質で生産性よく製造する方法及びその装置に関する。」(第1頁右欄第15行-第18行)
イ 「次に,本発明方法に用いられる両パンチ及び金型(モールド)の材質及び表面の仕上り状態は特に限定されないが,半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体封止用エポキシ樹脂タブレットを製造する場合には,通常半導体封止用エポキシ樹脂組成物に非常に硬い石英粉末が70%以上含まれているため,連続して使用すると両パンチ及び金型が摩耗してしまい,所定の形状のタブレットが製造できなくなる場合がある。このため,ビッカス硬度1000未満の通常の金型鋼に焼きをいれたものは,10万回以上成形すると摩耗がひどく,目的とする形状のタブレットが製造できなくなる場合があるので,半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いる場合は特に摩耗の少ない材質のパンチ及び金型を用いることが好ましく,これにはビッカス硬度1000以上の超硬合金又はセラミックスが好適である。しかし,ビッカス硬度1000以上の超硬合金又はセラミックスを使用して両パンチや金型全体を製造した場合,硬度は高いが機械的強度が弱いために,連続的な製造の際,両パンチ及び金型がかけてしまう場合がある。このためビッカス硬度1000以下の通常の金型鋼で両パンチ主体及び金型の主体を形成し,その樹脂粉末が接触する面にのみビッカス硬度1000以上の超硬合金又はセラミックスを使用することが好ましい。」(第3頁右下欄第10行-第4頁左上欄第15行)

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,硬化性組成物,その硬化物,その硬化物の製造方法,及びその硬化物により封止された発光ダイオードに関するものである。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って,第一の本発明の目的は,接着性に優れかつ高い透明性を有する硬化物を与える硬化性組成物,及び/又は,接着性に優れ,靭性が高くかつ高い透明性を有する硬化物を与える硬化性組成物;該硬化性組成物を硬化させてなる硬化物;該硬化物の製造方法;並びに,該硬化物を用いた発光ダイオードを提供することである。第二の本発明及び第三の本発明の目的は,靭性が高くかつ高い透明性を有する硬化物を与える硬化性組成物,該硬化性組成物を硬化させてなる硬化物,及び,該硬化物の製造方法を提供することである。第四の本発明の目的は,接着性に優れかつ高い透明性を有する硬化物を用いた発光ダイオード,及び/又は,接着性に優れ,靭性が高くかつ高い透明性を有する硬化物を用いた発光ダイオードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち第一の本発明は,
(A)SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物,
(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物,
(C)ヒドロシリル化触媒,
(D)シランカップリング剤及び/又はエポキシ基含有化合物,並びに,
(E)シラノール縮合触媒
を含有することを特徴とする硬化性組成物に関する(請求項1)。」
ウ 「【0139】
【化44】
(中略)
【0140】
(式中R4は,水素原子,又は,ヒドロシリル化反応可能な官能基を持たない有機基を表し,それぞれのR4は同一であっても異なっていてもよい。)と1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する化合物をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物が好ましい。
ヒドロシリル化合物反応可能な官能基とは,SiH基と反応性を有する炭素-炭素不飽和結合や,SiH基のことをいう。
R3及びR4は,水素原子,又は,上記官能基を持たない有機基であれば特に限定されないが,水素原子又は炭素数1?50の一価の有機基が好ましく,水素原子又は炭素数1?20の一価の有機基がより好ましく,水素原子又は炭素数1?10の一価の有機基がさらに好ましい。具体的には,炭化水素基,エポキシ構造を有する有機基等が挙げられる。
上記一般式(III)で表される化合物としては特に限定されないが,例えば,下記の化合物等が挙げられる。」
エ 「【0198】
本発明の硬化性組成物には,特性を改質する等の目的で,熱可塑性樹脂を配合してもよい。上記熱可塑性樹脂としては特に限定されないが,例えば,メチルメタクリレートの単独重合体,メチルメタクリレートと他のモノマーとのランダム,ブロック又はグラフト共重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等),ブチルアクリレートの単独重合体,ブチルアクリレートと他のモノマーとのランダム,ブロック又はグラフト共重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂;ビスフェノールA,3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等);ノルボルネン誘導体,ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂,ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂,その水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば,三井化学社製APEL,日本ゼオン社製ZEONOR,ZEONEX,JSR社製ARTON等);エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン-マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI-PAS等);ビスフェノールA,ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類又はジエチレングリコール等のジオール類と,テレフタル酸,イソフタル酸等のフタル酸類又は脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O-PET等);ポリエーテルスルホン樹脂,ポリアリレート樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリアミド樹脂,シリコーン樹脂,フッ素樹脂等;天然ゴム,EPDM等のゴム状樹脂等が挙げられる。
【0199】
上記熱可塑性樹脂は,分子中にSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合及び/又はSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては,分子中にSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合及び/又はSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。」
オ 「【0205】
本発明の硬化性組成物には充填材を配合してもよい。
上記充填材としては特に限定されないが,例えば,石英,ヒュームシリカ,沈降性シリカ,無水ケイ酸,溶融シリカ,結晶性シリカ,超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材,窒化ケイ素,銀粉,アルミナ,水酸化アルミニウム,酸化チタン,ガラス繊維,炭素繊維,マイカ,カーボンブラック,グラファイト,ケイソウ土,白土,クレー,タルク,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,硫酸バリウム,無機バルーン等の無機充填材;エポキシ系等の従来のモールド部材の充填材として一般に使用及び/又は提案されている充填材等を挙げることができる。」
カ 「【0235】
硬化させる方法としては,単に混合するだけで反応させることもできるし,加熱して反応させることもできる。反応が速く,一般に耐熱性の高い材料が得られやすいという観点から加熱して反応させる方法が好ましい。
【0236】
反応温度としては特に限定されず,種々設定できるが,好ましい温度の下限は30℃であり,より好ましくは100℃であり,さらに好ましくは150℃である。好ましい温度の上限は300℃であり,より好ましくは250℃であり,さらに好ましくは200℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり,反応温度が高いと成形加工が困難となりやすい。反応は一定の温度で行ってもよいが,必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間も種々設定できる。
反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき,常圧,高圧,あるいは減圧状態で反応させることもできる。
【0237】
硬化させて得られる光学用材料の形状も用途に応じて種々とりうるので特に限定されないが,例えば,フィルム状,シート状,チューブ状,ロッド状,塗膜状,バルク状などの形状とすることができる。
【0238】
成形する方法も従来の熱硬化性樹脂の成形方法をはじめとして種々の方法をとることができる。例えば,キャスト法,プレス法,注型法,トランスファー成形法,コーティング法,RIM法などの成形方法を適用することができる。成形型は研磨ガラス,硬質ステンレス研磨板,ポリカーボネート板,ポリエチレンテレフタレート板,ポリメチルメタクリレート板等を適用することができる。また,成形型との離型性を向上させるため,ポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリカーボネートフィルム,ポリ塩化ビニルフィルム,ポリエチレンフィルム,ポリテトラフルオロエチレンフィルム,ポリプロピレンフィルム,ポリイミドフィルム等を適用することができる。
【0239】
成形時に必要に応じ各種処理を施すこともできる。例えば,成形時に発生するボイドの抑制のために組成物あるいは一部反応させた組成物を遠心,減圧などにより脱泡する処理,プレス時に一旦圧力を開放する処理などを適用することもできる。
【0240】
本発明の硬化性組成物は種々の光学材料に適用可能である。本発明における光学材料とは,可視光,赤外線,紫外線,X線,レーザーなどの光をその材料中に通過させる用途に用いる材料一般を示す。特に限定されないが,例えば,カラーフィルター保護膜,TFT平坦化膜,基板材料等の液晶表示装置に用いられる材料;モールド部材,ダイボンド剤等の発光ダイオード(LED)に用いられる材料が挙げられる。なお本明細書におけるモールド部材は,モールド剤,又は,封止剤のことも含む概念である。
【0241】
液晶ディスプレイ分野における基板材料,導光板,プリズムシート,偏向板,位相差板,視野角補正フィルム,偏光子保護フィルム,カラーフィルター等;それらに用いられる各種コーティング剤,保護膜,モールド部材,接着剤等も挙げられる。
【0242】
LED表示装置に使用されるLED素子のモールド部材,LEDのモールド部材,前面ガラスの保護フィルム,前面ガラス代替材料;それらに用いられる各種コーティング剤,保護膜,モールド部材,接着剤等も挙げられる。」

6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【要約】
【課題】ヒドロシリル化反応を硬化反応として用いる熱硬化性樹脂において,熱衝撃試験でのクラックの発生が抑制された硬化性組成物,電子材料用組成物,それを用いた半導体装置,およびそれを用いる半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物,(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物,(C)ヒドロシリル化触媒,を必須成分として含有する硬化性組成物であって,(B)成分が,SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物(α)と,1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を,ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることを特徴とする硬化性組成物を用いて電子材料用組成物とすること。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は硬化性組成物に関するものであり,更に詳しくは耐熱衝撃性が高い硬化性組成物,それからなる電子材料用組成物,それを用いた半導体装置,およびそれを用いる半導体装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】硬化性組成物に用いられる,エポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂は一般に脆い性質を有しているため,電子材料用途,特に半導体周辺材料用途等のための試験として適用される熱衝撃試験でクラックが生じる場合があり,これを改善するために例えばエポキシ樹脂の場合,ポリアミド硬化剤の使用,変性によるシリコーン構造の導入等が適用されている(新保正樹著「エポキシ樹脂ハンドブック」他)。
【0003】一方,新しい熱硬化性樹脂としてヒドロシリル化反応を硬化反応として用いる熱硬化性樹脂が提案されている(特許2582524,特開平05-295270)。これらにおいても熱衝撃試験でのクラックの発生が問題になる場合があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って,本発明の目的は,ヒドロシリル化反応を硬化反応として用いる熱硬化性樹脂において,熱衝撃試験でのクラックの発生が抑制された硬化性組成物,電子材料用組成物,それを用いた半導体装置,およびそれを用いる半導体装置の製造方法を提供することである。」
ウ 「【0135】熱硬化性樹脂を分散させて用いる場合は,平均粒子径は種々設定できるが,好ましい平均粒子径の下限は10nmであり,好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく,単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが,硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
(熱可塑性樹脂)本発明の硬化性組成物の特性を改質する目的で,種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが,例えば,メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム,ブロック,あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等),ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム,ブロック,あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂,ビスフェノールA,3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等),ノルボルネン誘導体,ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂,ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂,あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば,三井化学社製APEL,日本ゼオン社製ZEONOR,ZEONEX,JSR社製ARTON等),エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン-マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI-PAS等),ビスフェノールA,ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸,イソフタル酸,等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O-PET等),ポリエーテルスルホン樹脂,ポリアリレート樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリアミド樹脂,シリコーン樹脂,フッ素樹脂等の他,天然ゴム,EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0136】熱可塑性樹脂としては,分子中にSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合あるいは/およびSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては,分子中にSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合あるいは/およびSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。」
エ 「【0156】耐熱性が良好であるという観点から,組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが0℃以上となるものが好ましく,50℃以上となるものがより好ましい。逆に低応力で半導体装置の信頼性が高くなりやすいという点においては,組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃以下となるものが好ましく,70℃以下となるものがさらに好ましく,50℃以下となるものが特に好ましい。
【0157】また,低応力で半導体装置の信頼性が高くなりやすいという点において,組成物を硬化させて得られる硬化物の弾性率としては,23℃において2GPa以下であることが好ましく,1.5GPa以下であることがより好ましく,1.0GPaであることがさらに好ましく,0.5GPa以下であることが特に好ましい。
(電子材料)本発明で言う電子材料とは,電気・電子用途一般に用いられる材料であり,例えば,半導体周辺材料,回路基板周辺材料,液晶等の表示装置周辺材料,各種電池周辺材料等の他,有機EL(エレクトロルミネッセンス)周辺材料,光通信,光回路周辺材料,光記録周辺材料等も含む。
【0158】半導体周辺材料としては,半導体前工程に使用される層間絶縁膜,レジスト,パッシベーション膜,ジャンクションコート膜,バッファコート膜等の各種保護膜,半導体後工程に使用されるダイボンド剤,ダイボンドフィルム,アンダーフィル,異方導電性接着剤(ACP),異方導電性フィルム(ACF),導電性接着剤,熱伝導性接着剤,封止剤の他,仮止め,固定用フィルム等が挙げられる。この場合半導体とは各種のものを含み,例えば,トランジスタ,ダイオード等の素子,半導体レーザー,発光ダイオード等の発光素子,光センサー等の受光素子,太陽電池,メモリー,論理回路等のIC,LSI等が挙げられる。具体的には,コンデンサ,トランジスタ,ダイオード,発光ダイオード,IC,LSI,センサー等のダイボンド剤やポッティング,ディッピング,トランスファーモールド,コーティング,スクリーン印刷等による封止剤,IC,LSI類のCOB,COF,TAB等といったポッティング封止剤,フリップチップ等のアンダーフィル,BGA,CSP等のICパッケージ類実装時の封止剤(補強用アンダーフィル),スタックドIC用のダイボンドフィルム,ウェハレベルCSP用の封止剤,ハンダ代替接続材料等を挙げることができる。
【0159】回路基板周辺材料としては,例えば,リジッドプリント基板,フレキシブルプリント基板材料,ビルドアップ基板や樹脂付き銅箔の層間絶縁材,基板と銅箔の接着剤,レジスト,ビアホールの穴埋め剤,基板の保護コーティング剤,基板と素子や基板と基板や基板とケーブル等の接点保護(コーティング)剤,ソルダーレジスト等が挙げられる。
【0160】液晶等の表示装置周辺材料としては,例えば,基板材料,導光板,プリズムシート,偏向板,位相差板,視野角補正フィルム,接着剤,偏光子保護フィルム,反射防止フィルム,カラーフィルター,ブラックマトリックス,カラーフィルタ保護膜(平坦化膜),TFTの保護膜(平坦化膜)等の液晶用フィルム,コーティング剤,接着剤等が挙げられる。また,次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤,反射防止フィルム,光学補正フィルム,ハウジング材,前面ガラスの保護フィルム,前面ガラス代替材料,接着剤が挙げられる。さらに,発光ダイオード表示装置に使用される発光素子のモールド材,前面ガラスの保護フィルム,前面ガラス代替材料,接着剤等が挙げれれる。その他,プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料,導光板,プリズムシート,偏向板,位相差板,視野角補正フィルム,接着剤,偏光子保護フィルム,フィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板,前面ガラスの保護フィルム,前面ガラス代替材料,接着剤等が挙げられる。」

7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【要約】
【課題】トランスファー成型性などの成型加工性が良好であり,高い耐光性および耐熱性を有する半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物,1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物,およびヒドロシリル化触媒を必須成分として含有する樹脂組成物を用いて半導体のパッケージとして用いることができる。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は半導体のパッケージ用樹脂組成物に関するものであり,更に詳しくは成型加工性が良好であり,高い耐光性および耐熱性を有する半導体のパッケージ用樹脂組成物,およびそれを用いて製造された半導体に関するものである。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って,本発明の課題は成型加工性が良好であり,高い耐光性および耐熱性を有する発光ダイオードのパッケージ用硬化性樹脂組成物を提供することである。」
エ 「【0209】
熱硬化性樹脂を分散させて用いる場合は,平均粒子径は種々設定できるが,好ましい平均粒子径の下限は10nmであり,好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく,単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが,硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
(熱可塑性樹脂)
本発明の組成物には特性を改質する等の目的で,種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが,例えば,メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム,ブロック,あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等),ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム,ブロック,あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂,ビスフェノールA,3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等),ノルボルネン誘導体,ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂,ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂,あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば,三井化学社製APEL,日本ゼオン社製ZEONOR,ZEONEX,JSR社製ARTON等),エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン-マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI-PAS等),ビスフェノールA,ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸,イソフタル酸,等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O-PET等),ポリエーテルスルホン樹脂,ポリアリレート樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリアミド樹脂,シリコーン樹脂,フッ素樹脂等の他,天然ゴム,EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0210】
熱可塑性樹脂としては,分子中にSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合あるいは/およびSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては,分子中にSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合あるいは/およびSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。」

8 引用文献8について
(1)引用文献8の記載
前置報告で引用された刊行物であり,本願出願前に日本国内又は外国において電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/125753号(以下,「引用文献8」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「[請求項1](A)SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物,(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物,(C)ヒドロシリル化触媒,(D)SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有するシリコーン化合物,(E)無機充填材,を必須成分として含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。」
イ 「[請求項23]請求項1?22のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物のうち,(F)白色顔料を必須成分として含有する硬化性樹脂組成物からなるタブレットであって,
(A)成分および(B)成分の少なくとも一方が23℃における粘度が50Pa秒以下の液体であり,
(E)成分と(F)成分の合計の含有量が70?95重量%であり,(E)成分と(F)成分の合計に占める12μm以下の粒子の割合が40体積%以上であることを特徴とする硬化性樹脂組成物タブレット。」

第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「熱硬化性樹脂」は,「熱硬化性成分」といえる。
イ 引用発明の「熱硬化性光反射用樹脂組成物」は,「熱硬化性樹脂組成物」の一種である。
ウ 引用発明の「タブレット成形金型」は,「金型」の一種である。
エ 引用発明の「熱硬化性光反射用樹脂組成物と接する成形金型の内表面」は,「熱硬化性樹脂組成物と接触する部分」といえる。
オ 引用発明の「ロックウェル硬度Cスケール」は,本願発明1の「ロックウェルCスケール」に相当し,引用発明の「ロックウェル硬度Cスケールで70以上の硬度を有する」は,本願発明1の「硬度がロックウェルCスケールで65以上」を満たす。
カ 引用発明の「タブレット成形金型」は,光半導体素子搭載用基板の製造に用いられることを前提とする(前記第5の1(1)ア【0004】)から,「光半導体パッケージ用タブレット成形金型」といえる。
キ すると,本願発明1と引用発明とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「熱硬化性成分と(D)白色顔料,(E)無機充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物をタブレット成形するための金型であり,前記熱硬化性樹脂組成物と接触する部分の硬度が,ロックウェルCスケールで65以上である光半導体パッケージ用タブレット成形金型を用いてプレス圧力が所定値で成形するタブレット製造方法であって,前記熱硬化性成分が,所定の成分である熱硬化性樹脂組成物をタブレット状に成形するためのタブレット製造方法。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1では,「前記熱硬化性樹脂組成物と接触する部分の」「表面粗さがRz0.8以下である」のに対し,引用発明では,内表面の表面粗さは不明である点。
(イ)相違点2
プレス圧力の所定値が,本願発明1では,「7MPa以上40MPa以下」であるのに対し,引用発明では,「0.5?2MPa」である点。
(ウ)相違点3
熱硬化性樹脂組成物の所定の成分が,本願発明1では,「(A)SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する少なくとも1種類の化合物,(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する少なくとも1種類の化合物,(C)ヒドロシリル化触媒,(F)SiH基もしくはSiH基と反応性を有する炭素-炭素不飽和結合を1分子中に少なくとも2個含有する液状シリコーン化合物を必須成分として含有する」のに対して,引用発明では,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂であるものの,それ以外は不明である点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について検討する。
(ア)相違点1に係る構成である「表面粗さがRz0.8以下である」ことについては,引用文献1ないし8のいずれにも記載も示唆もない。
(イ)また,引用発明においては,「上記熱硬化性光反射用樹脂組成物は,通常,熱硬化性樹脂に加えて,光反射率や成形性を確保するために白色顔料や無機充填材等の充填材を含有している。そのため,このような組成物を従来のタブレット成形機によってタブレット成形すると,充填材成分がタブレット成形機の金型表面を削り,その結果,得られるタブレット表面が黒く着色してしまう場合がある。」(第5の1(1)ア【0003】)ことは考慮されているが,金型の表面粗さとタブレット表面の着色については何ら着目していないから,当業者は「硬度だけでは充分ではなく,タブレット金型の熱硬化性樹脂と接する部分の表面粗さも重要である。」(本願明細書段落【0023】)ことを認識することはなく,したがって「表面粗さがRz0.8以下である」金型を採用する動機付けがない。
(ウ)なお,引用技術的事項2(第5の2(2))では,「封止用熱硬化性樹脂をプレス成形するために用いられる,タブレット成形用金型の被膜表面の平均面粗さ(Ra)を0.4μm以下にすること」が開示されているが,表面粗さの定義がRaであり,本願発明1のRzと対応しておらず,表面粗さの範囲が対応しないものであって,また,金型表面の表面粗さに関して,引用技術的事項2のより優れた離型性を得ることと,本願発明1のタブレットの着色を防止できることは,効果が異なっているから,引用技術的事項2の「タブレット成形用金型の被膜表面の平均面粗さ(Ra)を0.4μm以下にすること」を引用発明に採用することの動機付けもない。
(エ)そして,本願発明1は,相違点1に係る構成を備えることによって,「表面粗さRzが1μm以上であると,杵金型でプレスする際,熱硬化性組成物は臼金型内面にプレス荷重に相当する圧力で押し付けられて,接触面を擦りながら賦形されるため,金型接触面の凹凸の凸部が削りとる力が働き,その結果タブレットが着色汚染される」(本願明細書段落【0023】)ことを防止するという格別の効果を奏すると認められる。

イ 相違点2について検討する。
(ア)相違点2に係る構成であるプレス圧力の所定値が,「7MPa以上40MPa以下」であることについては,引用文献1ないし8のいずれにも記載も示唆もない。
(イ)引用発明には,「成形の際の各種条件は,成形材料の組成等に応じて適宜決定すればよく,特に制限されない」(第5の1(1)オ【0025】)ことが記載されているとはいえ,「タブレット成形機によってタブレット成形すると,充填材成分がタブレット成形機の金型表面を削り,その結果,得られるタブレット表面が黒く着色してしまう場合がある。」(第5の1(1)ア【0003】)ことを考慮すると,タブレット成型のプレス圧力を高めることにより,タブレット成形機の金型表面を削る作用も高まりタブレット表面の着色を促進することになることは,当業者にとって自明である。
よって,引用発明のタブレット成型のプレス圧力を高める方向に制御すること,すなわち,引用発明において「7MPa以上40MPa以下」にすることには,タブレット表面が着色してしまうことを防ぐという引用発明の目的に反することになるから阻害要因があるといえる。
(ウ)そして,本願発明1は,「7MPa以下であると,タブレットの強度が不足し,例えば落下衝撃に対して変形や,割れが発生しやすくなる」こと,「40MPaを超えるプレス荷重で成形を続けると,杵金型の押圧面に熱硬化性組成物が付着,堆積し,定期的に除去する必要があり,生産性が低下する」(本願明細書段落【0024】)ことを防止ために,相違点2に係る構成を採用したのであり,格別の効果を奏すると認められる。

(3)まとめ
したがって,本願発明1は,引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから,前記1と同様の理由により,引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 原査定について
1 理由(特許法第29条第2項)について
前記「第6 対比及び判断」のとおりであるから,本願発明1ないし2は,引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 まとめ
したがって,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。

第8 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-18 
出願番号 特願2012-71886(P2012-71886)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多賀 和宏麻川 倫広  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 梶尾 誠哉
河合 俊英
発明の名称 光半導体パッケージ用タブレット成形金型及びその金型を用いたタブレットの製造方法  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ