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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1341451
審判番号 不服2017-7923  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-01 
確定日 2018-06-14 
事件の表示 特願2015-100004号「LEDランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月15日出願公開、特開2015-181119号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年12月28日に出願した特願2009-297729号の一部を平成26年3月3日に新たな特許出願とした特願2014-40687号の一部を平成27年5月15日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月15日付けで拒絶理由が通知がされ、同年5月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月28日付けで最後の拒絶理由が通知がされ、これに対して、意見書及び手続補正書は提出されず、平成29年3月21日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年6月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年6月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年6月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「複数のLEDと、
前記複数のLEDを表面に備える実装基板と、
前記実装基板を内部に格納する樹脂チューブと、
前記樹脂チューブに装着され、表面に前記実装基板を装着したヒートシンクと、
前記実装基板と前記ヒートシンクとを接合する接着材と、
を備え、
前記実装基板の裏面と前記ヒートシンクの表面との間に前記接着材が前記樹脂チューブ
の長手方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記実装基板における前記複数のLED
の実装領域の裏側に相当する各位置に前記接着材が存在しており、
前記樹脂チューブは、長手方向に延伸する開口を有し、
前記ヒートシンクは、長尺状であり、前記ヒートシンクの両側の側面の各々に、長手方
向に延伸する溝を有し、
前記樹脂チューブの開口の両側に位置する各縁部が、前記ヒートシンクの両側の側面の
各溝に嵌ることで、前記ヒートシンクが前記樹脂チューブに装着され、
前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下であり、
前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板の幅の比が0.94以下である
ことを特徴とするLEDランプ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年5月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「複数のLEDと、
前記複数のLEDを表面に備える実装基板と、
前記実装基板を内部に格納する樹脂チューブと、
前記樹脂チューブに装着され、表面に前記実装基板を装着したヒートシンクと、
前記実装基板と前記ヒートシンクとを接合する接着材と、
を備え、
前記実装基板の裏面と前記ヒートシンクの表面との間に前記接着材が前記樹脂チューブの長手方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記実装基板における前記複数のLEDの実装領域の裏側に相当する各位置に前記接着材が存在しており、
前記樹脂チューブは、長手方向に延伸する開口を有し、
前記ヒートシンクは、長尺状であり、前記ヒートシンクの両側の側面の各々に、長手方向に延伸する溝を有し、
前記樹脂チューブの開口の両側に位置する各縁部が、前記ヒートシンクの両側の側面の各溝に嵌ることで、前記ヒートシンクが前記樹脂チューブに装着され、
前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である
ことを特徴とするLEDランプ。」

上記補正は、補正前の「樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である」を、「前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下であり、
前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板の幅の比が0.94以下である」とするものであって、ヒートシンクの幅について「前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下であり」とする補正を含むものである。

(3)当初明細書等に記載された事項
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、「ヒートシンク」に関して以下の記載が存在する。(下線部は、当審で付与。)
・「【請求項1】
複数のLEDと、
前記複数のLEDを表面に備える実装基板と、
前記実装基板を内部に格納する樹脂チューブと、
前記樹脂チューブに装着され、表面に前記実装基板を装着したヒートシンクと、
前記実装基板と前記ヒートシンクとを接合する接着材と、
を備え、
前記実装基板の裏面と前記ヒートシンクの表面との間に前記接着材が前記樹脂チューブの長手方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記実装基板における前記複数のLEDの実装領域の裏側に相当する各位置に前記接着材が存在していることを特徴とするLEDランプ。」
・「【請求項2】
前記樹脂チューブは、長手方向に延伸する開口を有し、
前記ヒートシンクは、長尺状であり、前記ヒートシンクの両側の側面の各々に、長手方向に延伸する溝を有し、
前記樹脂チューブの開口の両側に位置する各縁部が、前記ヒートシンクの両側の側面の各溝に嵌ることで、前記ヒートシンクが前記樹脂チューブに装着される
請求項1に記載のLEDランプ。」
・「【背景技術】
【0002】
半導体発光素子の一種であるLED素子は、従来の光源である白熱電球や蛍光灯に比べて高効率であるため省エネルギー光源として注目され、近年、LED素子を利用したLEDランプが開発されている(特許文献1?3)。
このようなLEDランプとして、直管状の蛍光灯器具に装着できるLEDランプがある(特許文献4参照)。この特許文献4に記載のLEDランプは、複数のLED素子(4)を実装する実装基板(5)と、実装基板(5)を装着すると共に高い放熱特性を有するヒートシンク(3)と、LED素子(4)と実装基板(5)とを被覆し前記ヒートシンク(3)に取着された樹脂チューブ(2)とを備え、ヒートシンク(3)の一部が、樹脂チューブ(2)の溝(20)から外部へと張り出している。
【0003】
そして、点灯時にLED素子(4)に発生した熱が実装基板(5)からヒートシンク(3)に伝わり、ヒートシンク(3)における樹脂チューブ(2)の外部に存する部分から放出される。」
・「【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るLEDランプは、複数のLEDと、前記複数のLEDを表面に備える実装基板と、前記実装基板を内部に格納する樹脂チューブと、前記樹脂チューブに装着され、表面に前記実装基板を装着したヒートシンクと、前記実装基板と前記ヒートシンクとを接合する接着材と、を備え、前記実装基板の裏面と前記ヒートシンクの表面との間に前記接着材が前記樹脂チューブの長手方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記実装基板における前記複数のLEDの実装領域の裏側に相当する各位置に前記接着材が存在している。」
・「【0022】
図6は、従来品の横断面図である。
従来品であるLEDランプ900は、樹脂チューブ(発明品の「ガラス管」に相当する。)903と、発明品と同じ仕様のLED7と、発明品と同じ仕様(サイズ・材料等)の実装基板5と、表面に実装基板5を装着し且つ放熱機能を有するヒートシンク905とを備える。
【0023】
樹脂チューブ903は中心軸(長手)方向に延伸する溝907を有する。ヒートシンク905は、横断面形状が矩形状をし、一対の側面に溝909を備える。そして、樹脂チューブ903の溝907の両側に位置する縁部903aがヒートシンク905の溝909に嵌ることで、ヒートシンク905が樹脂チューブ903に装着される。
樹脂チューブ903の材料は、ポリカーボネートであり、その熱伝導率が0.19[W・m/K]であり、外径、肉厚は発明品のガラス管3と同じである。ヒートシンク905の材料は、アルミニウムであり、厚みが2[mm]で、その熱伝導率が200[W・m/K]である。
【0024】
改良品1は、図6の従来品において、ヒートシンク905を有しておらず、実装基板5が直接樹脂チューブ903の内面に接着材(発明品と同じ仕様である。)で接合されたものであり、改良品2は、従来品における樹脂チューブ903を本願発明と同じ仕様のガラス管3に置き換えたものである。
図7は、シミュレーション結果を示す図である。
【0025】
図7中の「LEDの温度差」は、各サンプルでのLED温度を、従来品のLEDの温度を基準にして現したものである。
放熱特性は、ヒートシンクをなくした改良品1では、従来品に対して、LED温度が29[℃]上昇しているが、樹脂チューブをガラス管に置き換えた改良品2では、従来品に対してLED温度が23[℃]上昇している。しかしながら、改良品2は、改良品1に対してLED温度が6[℃]下がっている。このことから、樹脂チューブをガラス管に変更することで、放熱特性が改善することが分かる。
【0026】
一方、発明品では、従来品のヒートヒンクを有していないにも拘わらず、従来品に対して、LED温度が2[℃]低下している。このことから、発明品は、ヒートシンクを備えなくても、従来品に対して放熱特性を向上させることができ、しかも、ランプ重量が従来品に対して85[%]となっており、軽量化も図れることが分かる。」
・図6の従来品の横断面図には、実装基板5の下方に、実装基板5と同じ幅のヒートシンク905が記載されている。

(4)上記記載によると「ヒートシンク」は、実装基板を装着し且つ放熱機能を有する(【0022】)ものということができるものの、ヒートシンクの幅については、図6の従来品の横断面図に、実装基板5と同じ幅のものが図示されているのみであり、本件補正により追加された「前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下」であることは、当初明細書等には記載されていない。

(5)請求人は、審判請求書「3.(a)」で、「明細書の段落0022、0023、図6には、ヒートシンクの幅と実装基板の幅が同一である例が開示されています。また、段落0028-0031、図10には、実装基板の幅、樹脂チューブの内径、配向角θとの関係が説明されています。これらの記載から、実装基板を装着したヒートシンクがランプの構成要素となる場合には、『前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下』でなければならないことが明確に読み取れます。段落0029には、LEDから放射された光は、実装基板のLEDが配置されていない側には回り込まないため、図10における角度θが配向角となる、ということが開示されています。すなわち、樹脂チューブの周囲のうち、実装基板の裏側の領域を除く部分が光の出射される範囲となります。この点を考慮すると、ヒートシンクの幅が実装基板の幅より大きいとした場合、『前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板の幅の比が0.94以下である』を満たしても、配向角が220°未満となる可能性があることは明らかです。実装基板の裏側ではないがヒートシンクの裏側となる場所が生じる可能性があり、このような場所には、実装基板の裏側と同様、LEDから放射された光が回り込まない可能性が高く、実装基板の裏側の全域に必ずしも光が出射されないことがあり得るからです。
つまり、配向角を220°以上とする場合に、『前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板の幅の比が0.94以下である』と、『前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下」との2条件を満たす必要があることは、発明の詳細な内容から明確に読み取れます。したがって、『前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下であり、前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板の幅の比が0.94以下である』の補正事項は、当初明細書等の記載から自明な事項であり、新規事項には該当しないものであると思料いたします(特許法第17条の2第3項)。」旨主張している。

(6)しかし、請求人の上記主張は下記のとおり採用することができない。
ア.当初明細書等の【0027】?【0031】に記載されている、配光角の説明は、図10のヒートシンクを備えないものにおいてのものであって、当該記載からヒートシンクの幅は、実装基板の幅以下であることは読み取れない。
イ.当初明細書等の【0022】?【0023】に記載されている、表面に実装基板を装着したヒートシンクの説明は、図6の従来品の横断面図においてのものであって、配向角についての説明はなされていないものであって、当該記載から図6の従来品のヒートシンクの幅が配向角220°以上となるように選択されたものであることは読み取れない。
ウ.本件補正後の「前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下」は、実装基板より小さい幅のヒートシンクを包含するが、図6の従来品の横断面図に、実装基板5と同じ幅のヒートシンク905は記載されてても、実装基板より小さい幅のヒートシンクは記載も示唆もない。
エ.さらに、仮に、図6のヒートシンクを備えた従来品が、配向角を220°以上とされるものであるとしても、
(ア)図10に図示されるように配光は外周方向に広がって行くものであり、実装基板よりも外周側に位置するヒートシンクの幅は、配光が広がる分だけ実装基板の幅よりも広くても、配光を遮ることはないと考えられることや、
(イ)図6の従来品における配向角220°以上が「前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下であり、前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板の幅の比が0.94以下」とすることで始めて実現される(換言すると、樹脂チューブの内径に対する実装基板の幅の比が0.94以下の任意の値であるときに、ヒートシンクの幅が「実装基板の幅」を境として、それ「以下」で配向角220°以上が実現され、それを「越え」ると実現されない)とは、当初明細書等の【0022】?【0023】、【0027】?【0031】、図6、10の記載から理解されるものではないので、
図6のヒートシンクを備えた従来品において、「前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下」とすることが、当初明細書等に記載されていたとはいえない。

(7)そうすると、上記補正により追加された「前記ヒートシンクの幅は、前記実装基板の幅以下であり」は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年6月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明(以下「本願発明1」等という。)は、平成28年5月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
複数のLEDと、
前記複数のLEDを表面に備える実装基板と、
前記実装基板を内部に格納する樹脂チューブと、
前記樹脂チューブに装着され、表面に前記実装基板を装着したヒートシンクと、
前記実装基板と前記ヒートシンクとを接合する接着材と、
を備え、
前記実装基板の裏面と前記ヒートシンクの表面との間に前記接着材が前記樹脂チューブの長手方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記実装基板における前記複数のLEDの実装領域の裏側に相当する各位置に前記接着材が存在しており、
前記樹脂チューブは、長手方向に延伸する開口を有し、
前記ヒートシンクは、長尺状であり、前記ヒートシンクの両側の側面の各々に、長手方向に延伸する溝を有し、
前記樹脂チューブの開口の両側に位置する各縁部が、前記ヒートシンクの両側の側面の各溝に嵌ることで、前記ヒートシンクが前記樹脂チューブに装着され、
前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である
ことを特徴とするLEDランプ。
【請求項2】
前記実装基板は1個又は複数個の貫通孔を有し、当該貫通孔に接着材が充填されていると共に当該貫通孔から接着材が表面へと張り出していることを特徴とする請求項1に記載のLEDランプ。
【請求項3】
前記実装基板は、裏面側から表面側に移るに従って孔径が大きくなる貫通孔を1個又は複数個有し、当該貫通孔内に接着材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載のLEDランプ。」

2.原査定の拒絶の理由
平成28年9月28日付け拒絶理由は、次のとおりである。
「(新規事項)平成28年 5月 6日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

上記補正により、請求項1に「前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である」との事項が追加された。
一方、当初明細書等を参酌すると、[0023]、[0030]、[0031]、[図9]、[図10]等に、樹脂チューブの内径に対する実装基板の幅の比が0.94以下とされることが記載されているものと認められる。しかしながら、当該内径に対するヒートシンクの幅の比が0.94以下とされることについては、当初明細書等に明示的に記載されておらず、また、それらの記載から自明な事項であるとも認められない。
よって、上記補正は、新規事項を追加するものである。」

3.当審の判断
(1)請求人は、平成28年5月6日付け手続補正(以下「本願補正」という。)で補正前の
「【請求項1】
複数のLEDと、
前記複数のLEDを表面に備える実装基板と、
前記実装基板を内部に格納する樹脂チューブと、
前記樹脂チューブに装着され、表面に前記実装基板を装着したヒートシンクと、
前記実装基板と前記ヒートシンクとを接合する接着材と、
を備え、
前記実装基板の裏面と前記ヒートシンクの表面との間に前記接着材が前記樹脂チューブの長手方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記実装基板における前記複数のLEDの実装領域の裏側に相当する各位置に前記接着材が存在していることを特徴とするLEDランプ。」を、
「【請求項1】
複数のLEDと、
前記複数のLEDを表面に備える実装基板と、
前記実装基板を内部に格納する樹脂チューブと、
前記樹脂チューブに装着され、表面に前記実装基板を装着したヒートシンクと、
前記実装基板と前記ヒートシンクとを接合する接着材と、
を備え、
前記実装基板の裏面と前記ヒートシンクの表面との間に前記接着材が前記樹脂チューブの長手方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記実装基板における前記複数のLEDの実装領域の裏側に相当する各位置に前記接着材が存在しており、
前記樹脂チューブは、長手方向に延伸する開口を有し、
前記ヒートシンクは、長尺状であり、前記ヒートシンクの両側の側面の各々に、長手方向に延伸する溝を有し、
前記樹脂チューブの開口の両側に位置する各縁部が、前記ヒートシンクの両側の側面の各溝に嵌ることで、前記ヒートシンクが前記樹脂チューブに装着され、
前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である
ことを特徴とするLEDランプ。」(下線部は、補正箇所である。)に補正している。

(2)上記補正は、「前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である」とする補正を含むものである。

(3)当初明細書等に記載された事項
当初明細書等には、「ヒートシンク」に関して、上記「第2 1.(3)」の記載が存在する。

(4)上記記載によると「ヒートシンク」は、実装基板を装着し且つ放熱機能を有する(【0022】)ものということができるものの、ヒートシンクの幅については、図6の従来品の横断面図に、実装基板5と同じ幅のものが図示されているのみであり、本願補正により追加された「前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である」(すなわち、ヒートシンクの幅が実装基板5と同じ幅のものに限らないものも包含する「樹脂チューブの内径に対する・(中略)・ヒートシンクの幅の比が・(中略)・0.94以下である」)ことは、当初明細書等には記載されていない。

(5)請求人は、平成28年5月6日付け意見書「2.」で、「この補正は、補正前の請求項2を組み込み、さらに明細書に基づく限定事項を追加したものであり、明細書の段落0023、0031、図9、図10に基づきます。」旨主張している。

(6)しかし、請求人の上記主張は下記のとおり採用することができない。
ア.当初明細書等の【0027】?【0031】に記載されている、配光角の説明は、図10のヒートシンクを備えないものにおいてのものであって、当該記載からヒートシンクの幅が、チューブの内径に対して0.94以下であることは読み取れない。
イ.当初明細書等の【0022】?【0023】に記載されている、表面に実装基板を装着したヒートシンクの説明は、図6の従来品の横断面図においてのものであって、配向角についての説明はなされていないものであって、当該記載から図6の従来品のヒートシンクの幅が配向角220°以上となるように選択されたものであることは読み取れない。
ウ.本願補正後の「前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である」は、ヒートシンクの幅が実装基板5と同じ幅のものに限らないものも包含するが、図6の従来品の横断面図に、実装基板5と同じ幅のヒートシンク905は記載されていても、実装基板と異なる幅のヒートシンクは記載も示唆もない。
エ.さらに、仮に、図6のヒートシンクを備えた従来品が、配向角を220°以上とされるものであるとしても、
(ア)図10に図示されるように配光は外周方向に広がって行くものであり、実装基板よりも外周側に位置するヒートシンクの幅は、配光が広がる分だけ実装基板の幅よりも広くても、配光を遮ることはないと考えられることから、図6の従来品における配向角220°以上が「前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下」とすることで始めて実現される(換言すると、実装基板の外周側に位置するヒートシンクの幅が「0.94」を境として、それ「以下」で配向角220°以上が実現され、それを「越え」ると実現されない)とは、当初明細書等の【0022】?【0023】、【0027】?【0031】、図6、10の記載から理解されるものではないので、
図6のヒートシンクを備えた従来品において、「樹脂チューブの内径に対する・(中略)・ヒートシンクの幅の比が・(中略)・0.94以下である」とすることが、当初明細書等に記載されていたとはいえない。

(7)そうすると、上記補正により追加された「前記樹脂チューブの内径に対する前記実装基板および前記ヒートシンクの幅の比がいずれも0.94以下である」は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本願補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおり、本願補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-11 
結審通知日 2018-04-17 
審決日 2018-05-01 
出願番号 特願2015-100004(P2015-100004)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (F21V)
P 1 8・ 561- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 和幸當間 庸裕丸山 裕樹石井 孝明  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 中川 真一
一ノ瀬 覚
発明の名称 LEDランプ  
代理人 特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所  

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