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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1341636
審判番号 不服2017-7907  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-01 
確定日 2018-06-21 
事件の表示 特願2014- 41191「ロープ探傷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月24日出願公開、特開2015-166697〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月4日の出願であって、平成28年8月15日付けで拒絶理由が通知され、同年9月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月24日付けで拒絶査定されたところ、同年6月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに、同年12月5日に上申書が提出され、その中で補正案を示すと共に面接の要請がなされたところ、平成30年3月2日に面接審理を行い、同年3月16日に請求人より補正案がファクシミリにより提示されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
ワイヤーロープを磁化し発生する磁束を検出することにより前記ワイヤーロープの損傷の有無を検査するロープ探傷装置において、
前記ワイヤーロープの移動方向に所定の間隔で設置され、正負一対の磁極を形成して前記ワイヤーロープを磁化するための複数の磁石と、
前記複数の磁石を両端で固定して磁気的に連結するヨークと、
前記複数の磁石の間に設置され前記磁束を検出する検出コイルと、
前記検出コイルを固定するとともに、前記複数の磁石および前記ヨークを有し、全体として磁気回路を構成して前記ワイヤーロープを磁化する磁化装置と、
前記検出コイルと前記磁化装置を覆うように配設され、前記ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部と、
前記ガイド部の両端部に、前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチと同じになる間隔で配置され、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持してロープ振動を抑制するロープ振動抑制治具と、
を備え、
前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープのガイドとなっており、当該ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ガイド部の両端に片側あたり1個の部品を固定可能に構成され、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持するとともに、複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成を有することを特徴とするロープ探傷装置。」
と補正された。

本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ロープ振動抑制治具」について、「前記ワイヤーロープのガイドとなっており、当該ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ガイド部の両端に片側あたり1個の部品を固定可能に構成され」ているとの構成を付加して、「ロープ振動抑制治具」を限定し、
さらに、「ロープ振動抑制治具」について、「前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持する」を「前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持するとともに、複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成を有する」と、複数のワイヤーロープが配設されている場合の点検可能な態様を限定したものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2005-195472号公報(以下、「引用文献」という。)には、「ロープテスタ」について図面とともに次の事項が記載されている。なお、以下の摘記において、(2)の引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。

(1-ア)
「【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤロープの損傷部を検出するロープテスタに関するものである。」

(1-イ)
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のロープテスタでは、クレーンやエレベータ等のように、複数本のワイヤロープが近接して配置された場所で使用される場合でも、プローブの両側面の両端部近くにガイド凸部が設けられているため、プローブ両側面に吸引される近接ワイヤロープを滑らかにガイドすることができる。このため、近接ワイヤロープの表面凹凸によって発生する振動を防止することができ、検出信号のノイズ発生を効果的に低減して、探傷性能及び信頼性を向上させることが可能である。しかし、実際に損傷部検出が行われるワイヤロープは、分割ガイド部に設けられた半円弧状溝によってバネ付勢等で嵌装され、その外周部がこの溝と接触しているため、プローブとワイヤロープとの間に円滑な滑りが生じない場合には、プローブとワイヤロープとを相対移動させて損傷部の検出を行う際に、振動が発生することがあった。この振動は、誤検出や出力波形の乱れが生じる原因となることから、良好な測定結果を得ることができないという問題が生じていた。特に、エレベータで使用されるワイヤロープにおいて、エレベータ巻上機の駆動力をワイヤロープに確実に伝達するために、ワイヤロープに摩擦係数の高いウレタン被覆等が施されている場合には、プローブとワイヤロープとの間に円滑な滑りを発生させることは困難となっていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、摩擦係数の高いワイヤロープを使用した場合でも、損傷部の検出時に振動を発生することがなく、良好な測定を行うことが可能なロープテスタを提供することである。」

(1-ウ)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1におけるロープテスタの正面図、図2はその側面図である。図において、直方体状の基台1の上面両端部には、上方角部が面取りされた略直方体状のグリップ支持台2aがそれぞれ立設されており、このグリップ支持台2aに渡って円柱状のグリップ2が設けられている。この基台1の下面には、その中央部に、永久磁石や電磁石等からなる磁石3a及び3bが、一方がN極を、また他方がS極を下方に向けて、所定の間隔を空けて設けられている。なお、磁石3a及び3bが電磁石の場合には、コ字状を呈する鉄心の中央部に励磁コイルを巻き掛け、鉄心のコ字状の開放部を下方にして基台1の下面に設ければ良い。この場合、鉄心の両端部が磁石3a及び3bを構成する。この磁石3a及び3bの下面には、磁石3a及び3b間に渡って略直方体状のプローブ4が設けられおり、このプローブ4は、磁石3a及び3bによってその両端部がS極とN極とに強力に磁化されている。プローブ4の下面には、測定時に、後述するワイヤロープ8を磁化するための検出部からなる略U字状の溝4aが、S極とN極とに強力に磁化されたプローブ4の両端部に渡って設けられており、プローブ4の中央部には、プローブ4の下面に形成されたこの溝4aの略U字状の内面と僅かな間隙を有して検出センサ5が設けられている。この検出センサ5は、検出コイル等から構成され、溝4aによって磁化されるワイヤロープ8に発生する磁束の変化を検出する。また、基台1下面の両端部には、磁石3a及び3bのさらに外側となる位置に、ガイドローラ支持台7a及び7bがそれぞれ設けられており、このガイドローラ支持台7a及び7bに、ワイヤロープ8を案内する略円柱状のガイドローラ6a及び6bがそれぞれ回動可能に固定されている。このガイドローラ6a及び6bは、凹状に湾曲した外周面を有しており、この外周面の中心部に、回動中心からの半径が最小となる円形を呈した半径最小部6cを、また、この半径最小部6cの両側に、半径最小部6cから反対方向に向かうに従って回動中心からの半径が大きくなる一対の傾斜部を有している。そして、プローブ4に設けられた略U字状の溝4aの溝方向及び深さ方向に対して直交するように回動軸が設けられ、外周面の半径最小部6cの最下端が、溝4aの最深部4bよりも僅かに下方(反基台1側)となるように配置されている。すなわち、プローブ4の溝4aの両側に設けられたガイドローラ6a及び6bのそれぞれの外周面の円状を呈する半径最小部6cの接線のうち、ワイヤロープ8が接触する側(反基台1側)の接線が、プローブ4との間に所定の間隔を有する、つまり、プローブ4を貫通せずに溝4aの最深部4bを形成する直線と僅かな間隔を有して略平行となるように、ガイドローラ6a及び6bと溝4aとが配置されている。なお、前述したガイドローラ支持台7a及び7bは、基台1に対して取付け及び取外し若しくは倒すことが可能な構造を有している。」

(1-エ)
「【0009】
次に、上記のような構成を有するロープテスタを使用して、例えば、エレベータで使用されるワイヤロープ8の損傷部の検出作業を、・・・このワイヤロープ8は、その溝4a内に配置された部分の両端部が、溝4aによってそれぞれS極とN極とに強力に磁化され、ワイヤロープ8の長手方向に磁束が発生する。このワイヤロープ8は、その溝4a内に配置された部分の両端部が、溝4aによってそれぞれS極とN極とに強力に磁化され、ワイヤロープ8の長手方向に磁束が発生する。このワイヤロープ8に断線や摩耗などによる損傷部が存在する場合には、その損傷部を避けて磁束が生じるため、ワイヤロープ8に漏洩磁束が発生する。このように漏洩磁束を伴うワイヤロープ8の損傷部がプローブ4に設けられた検出センサ5の近傍を通過すると、検出センサ5にはこの漏洩磁束によって生じる磁束変化により起電力が発生し、この起電力によってワイヤロープ8の損傷部が検出される。なお、損傷部の判断は、検出センサ5の出力波形の確認や、出力値が一定値以上になった場合にブザーを鳴動させること等によって行われる。
【0010】
この発明の実施の形態1によれば、プローブ4の溝4aの両側に設けられたガイドローラ6a及び6b外周面の円状を呈する半径最小部6cの接線のうち、反基台1側の接線が、プローブ4との間に所定の間隔を有する、つまり、プローブ4を貫通せずに溝4aの最深部4bを形成する直線と僅かな間隔を有して略平行となるように、ガイドローラ6a及び6bと溝4aとが配置されているため、ワイヤロープ8は、溝4aの内面に接触することがなく、ガイドローラ6a及び6bの外周面のみに接触することになる。このように、ワイヤロープ8は、ガイドローラ6a及び6bの回動によって案内されるため、例えば、ウレタン被覆されたような摩擦係数の大きいワイヤ
ロープ8の損傷部を検出する場合でも振動による誤検出や出力波形の乱れなどの恐れがなく、良好な測定結果を得ることが可能となる。また、ガイドローラ6a及び6bの外周面は、その中心部に半径が最小となる半径最小部6cを、また、この半径最小部6cの両側に反対方向に向かうに従って半径が大きくなる一対の傾斜部を有しているため、ワイヤロープ8とロープテスタとが相対移動する場合でも、ロープテスタを軽くワイヤロープ8側に押し付けることによって、ワイヤロープ8を溝4aの中央部に位置決めすることが可能となる。このため、ワイヤロープ8と溝4aの内面との接触を防止することができ、作業性を向上させることが可能となる。」

(1-オ)
「【0011】
なお、ガイドローラ6a及び6bを支持しているガイドローラ支持台7a及び7bは、脱着式若しくは可倒式の構造を有しているため、プローブ4との間に円滑な滑りを有するワイヤロープ8の損傷部の検出を行う場合には、従来通り、ワイヤロープ8とプローブ4を接触させることによってワイヤロープ8の損傷部の検出を行うことも可能である。また、実施の形態1では、ガイドローラ6a及び6bは、凹状に湾曲した外周面を有しているが、略V字状を呈する外周面として、ワイヤロープ8の位置決めを行っても良い。この場合、ワイヤロープ8の直径によってワイヤロープ8と検出センサ5との距離が変化してしまうため、ガイドローラ6a及び6bの高さを調節することができるように、ガイドローラ支持台7a及び7b等に高さ調節機能を付加することで、直径の異なるワイヤロープ8に対しても良好な損傷部の検出が可能となる。」

(1-カ)



(1-キ)




(2)引用発明について
上記(1-ア)?(1-キ)の記載を踏まえれば、上記引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。
「a)基台1の下面に、その中央部に、一方がN極を、また他方がS極を下方に向けて、所定の間隔を空けて設けられている磁石3a及び3bであって、
コ字状を呈する鉄心の中央部に励磁コイルを巻き掛け、鉄心のコ字状の開放部を下方にして基台1の下面に設け、鉄心の両端部が構成する磁石3a及び3bと、
b)この磁石3a及び3bの下面に、磁石3a及び3b間に渡って設けられている、略直方体状のプローブ4と、
c)プローブ4の下面に、測定時に、S極とN極とに強力に磁化されたプローブ4の両端部に渡って設けられている、ワイヤロープ8を磁化するための検出部からなる略U字状の溝4aと、
d)プローブ4の中央部に、プローブ4の下面に形成されたこの溝4aの略U字状の内面と僅かな間隙を有して設けられている、検出センサ5と、
e)この検出センサ5は、検出コイル等から構成され、溝4aによって磁化されるワイヤロープ8に発生する磁束の変化を検出するもので、
f)基台1下面の両端部に、磁石3a及び3bのさらに外側となる位置に、ガイドローラ支持台7a及び7bがそれぞれ設けられており、このガイドローラ支持台7a及び7bに、それぞれ回動可能に固定されている、ワイヤロープ8を案内する略円柱状のガイドローラ6a及び6bとを有し、
g)プローブ4の溝4aの両側に設けられたガイドローラ6a及び6bのそれぞれは略V字状を呈する外周面を有し、
h)ワイヤロープ8は、溝4aの内面に接触することがなく、ガイドローラ6a及び6bのみに接触することになり、
i)このワイヤロープ8は、その溝4a内に配置された部分の両端部が、溝4aによってそれぞれS極とN極とに強力に磁化され、ワイヤロープ8の長手方向に磁束が発生し、このワイヤロープ8に断線や摩耗などによる損傷部が存在する場合には、その損傷部を避けて磁束が生じるため、ワイヤロープ8に漏洩磁束が発生し、検出センサ5にはこの漏洩磁束によって生じる磁束変化により起電力が発生し、この起電力によってワイヤロープ8の損傷部が検出される、
j)エレベータで使用されるワイヤロープ8の損傷部の検出作業を行うロープテスタ。」(以下、「引用発明」という。)

(3)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である欧州特許出願公開第1186565号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3-ア)「〔0001〕This invention consists in a device which allows a non-destructive testing of multiple steel wire ropes and is therefore suitable for the periodic inspection of elevator wire ropes, of goods lifts and of all the installations containing multiple steel wire ropes.」「当審訳:本発明は、複数のスチールワイヤーロープの非破壊試験を可能にする装置であって、エレベータのワイヤーロープ、荷物用リフト及び複数のスチールワイヤーロープを含む全ての設備の定期点検に適している装置である。)

(3-イ)「〔0035〕Rollers 14 may be smooth (figures 1, 2, 3 and 5) or grooved (figure 14). Each groove 14.2 contains a wire rope 6. Rollers 14 may be substituted by sliding blocks, as shown in figures 12 and 13.」「当審訳:「ローラ14は平坦であってもよい(図1、2、3及び5)。または溝がついていてもよい(図14)。各溝14.2は、ワイヤロープ6を保持する。ローラ14は、図12および図13に示すように、スライドブロックで置き換えてもよい。」

(3-ウ)
図1


(3-エ)
図12-14



3 対比・判断
(1)対比
補正発明は,以下のとおり当審にて,分説しA)?K)の見出しを付けた。
「A) ワイヤーロープを磁化し発生する磁束を検出することにより前記ワイヤーロープの損傷の有無を検査するロープ探傷装置において、
B) 前記ワイヤーロープの移動方向に所定の間隔で設置され、正負一対の磁極を形成して前記ワイヤーロープを磁化するための複数の磁石と、
C) 前記複数の磁石を両端で固定して磁気的に連結するヨークと、
D) 前記複数の磁石の間に設置され前記磁束を検出する検出コイルと、
E) 前記検出コイルを固定するとともに、前記複数の磁石および前記ヨークを有し、全体として磁気回路を構成して前記ワイヤーロープを磁化する磁化装置と、
F) 前記検出コイルと前記磁化装置を覆うように配設され、前記ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部と、
G) 前記ガイド部の両端部に、前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチと同じになる間隔で配置され、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持してロープ振動を抑制するロープ振動抑制治具と、
を備え、
H) 前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープのガイドとなっており、当該ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ガイド部の両端に片側あたり1個の部品を固定可能に構成され、
I) 前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持するとともに、
J) 複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成を有する
K) ことを特徴とするロープ探傷装置。」

補正発明と引用発明とを対比する。
ア 補正発明A)、K)の特定事項について
引用発明の「j)エレベータで使用されるワイヤロープ8の損傷部の検出作業を行うロープテスタ。」は「i)このワイヤロープ8は、その溝4a内に配置された部分の両端部が、溝4aによってそれぞれS極とN極とに強力に磁化され、ワイヤロープ8の長手方向に磁束が発生し、このワイヤロープ8に断線や摩耗などによる損傷部が存在する場合には、その損傷部を避けて磁束が生じるため、ワイヤロープ8に漏洩磁束が発生し、検出センサ5にはこの漏洩磁束によって生じる磁束変化により起電力が発生し、この起電力によってワイヤロープ8の損傷部が検出される、」ものであるから、補正発明の「A) ワイヤーロープを磁化し発生する磁束を検出することにより前記ワイヤーロープの損傷の有無を検査するロープ探傷装置」及び「K ロープ探傷装置。」に相当する。

イ 補正発明B)?E)の特定事項について
引用発明の「磁石3a及び3b」、「コ字状を呈する鉄心」及び「検出コイル等から構成され、溝4aによって磁化されるワイヤロープ8に発生する磁束の変化を検出する」「検出センサ5」は、それぞれ、補正発明の「複数の磁石」、「前記複数の磁石を」「磁気的に連結するヨーク」及び「前記磁束を検出する検出コイル」に相当する。

すると、引用発明の「a)基台1の下面に、その中央部に、一方がN極を、また他方がS極を下方に向けて、所定の間隔を空けて設けられている磁石3a及び3bであって、
コ字状を呈する鉄心の中央部に励磁コイルを巻き掛け、鉄心のコ字状の開放部を下方にして基台1の下面に設け、鉄心の両端部が構成する磁石3a及び3bと、」
「d)プローブ4の中央部に、プローブ4の下面に形成されたこの溝4aの略U字状の内面と僅かな間隙を有して設けられている、検出センサ5と、
e)この検出センサ5は、検出コイル等から構成され、溝4aによって磁化されるワイヤロープ8に発生する磁束の変化を検出するもの」は、補正発明の「B) 前記ワイヤーロープの移動方向に所定の間隔で設置され、正負一対の磁極を形成して前記ワイヤーロープを磁化するための複数の磁石と、
C) 前記複数の磁石を両端で固定して磁気的に連結するヨークと、
D) 前記複数の磁石の間に設置され前記磁束を検出する検出コイルと、
E) 前記検出コイルを固定するとともに、前記複数の磁石および前記ヨークを有し、全体として磁気回路を構成して前記ワイヤーロープを磁化する磁化装置」に相当する。

ウ 補正発明F)とI)の前半の特定事項について
引用発明c)の「略U字状の溝4a」は、「プローブ4の下面に、」「両端部に渡って設けられている」のであり、「i)このワイヤロープ8は、その溝4a内に配置された部分の両端部が、溝4aによってそれぞれS極とN極とに強力に磁化され」るのであるから「ワイヤーロープ」が「略U字状の溝4a」内を移動することは明らかであり、「略U字状の溝4a」が「ワイヤーロープ」の移動をガイドするといえるので、補正発明の「ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部」に相当する。
また、引用発明d)の「検出センサ5」は「溝4aの略U字状の内面と僅かな間隙を有して設けられている」のであるから、「検出センサ5」は「略U字状の溝4a」内部に覆われるように位置しているといえる。
したがって、引用発明の「検出センサ5」が「プローブ4の中央部に、プローブ4の下面に形成されたこの溝4aの略U字状の内面と僅かな間隙を有して設けられて」おり、「c)プローブ4の下面に、測定時に、S極とN極とに強力に磁化されたプローブ4の両端部に渡って設けられている、ワイヤロープ8を磁化するための検出部からなる略U字状の溝4a」は、補正発明の「F) 前記検出コイルと前記磁化装置を覆うように配設され、前記ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部」であって、
「I) 前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部」に相当する。

エ 補正発明のG)?I)の特定事項について
エー1 引用発明の「ガイドローラ6a及び6b」も、補正発明の「ロープ振動抑制治具」と同様に、「ワイヤーロープ」が移動する移動位置を保持してロープ振動を抑制し得ることは明らかである。
すると、引用発明の「f)基台1下面の両端部に、磁石3a及び3bのさらに外側となる位置に、ガイドローラ支持台7a及び7bがそれぞれ設けられており、このガイドローラ支持台7a及び7bに、それぞれ回動可能に固定されている、ワイヤロープ8を案内する略円柱状のガイドローラ6a及び6b」であって、「g)プローブ4の溝4aの両側に設けられたガイドローラ6a及び6bのそれぞれは略V字状を呈する外周面を有」することと、
補正発明の「G) 前記ガイド部の両端部に、前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチと同じになる間隔で配置され、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持してロープ振動を抑制するロープ振動抑制治具と、
を備え、
H) 前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープのガイドとなっており、当該ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ガイド部の両端に片側あたり1個の部品を固定可能に構成され」ることとは、
「前記ガイド部の両端部に、配置され、前記ワイヤーロープが移動する移動位置を保持してロープ振動を抑制するロープ振動抑制治具と、を備え、前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープのガイドとなっており、当該ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であ」ることで共通する。

エー2 補正発明I)の「前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持するとともに、」の「摺動位置」とは、平成30年3月2日の面接審理において請求人が説明したとおり、「ロープ振動抑制治具とワイヤーロープが接触する線の位置」を意味するものであって、補正発明の「I)」の記載は、「ワイヤーロープ」が、「ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置」となる、すなわち、「ワイヤーロープ」と「U字の底」が接触しないように、「ロープ振動抑制治具とワイヤーロープが接触する線の位置」を保持することを意味すると認められる。
そうすると、引用発明の「溝4a」は「略U字状」であって、「g)プローブ4の溝4aの両側に設けられたガイドローラ6a及び6bのそれぞれは略V字状を呈する外周面を有し、
h)ワイヤロープ8は、溝4aの内面に接触することがなく、ガイドローラ6a及び6bのみに接触することになる」ことと、
補正発明の「I)前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持する」こととは、
「前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが移動する移動位置を保持する」ことで共通する。

オ そうすると、両者は、
(一致点)
「ワイヤーロープを磁化し発生する磁束を検出することにより前記ワイヤーロープの損傷の有無を検査するロープ探傷装置において、
前記ワイヤーロープの移動方向に所定の間隔で設置され、正負一対の磁極を形成して前記ワイヤーロープを磁化するための複数の磁石と、
前記複数の磁石を両端で固定して磁気的に連結するヨークと、
前記複数の磁石の間に設置され前記磁束を検出する検出コイルと、
前記検出コイルを固定するとともに、前記複数の磁石および前記ヨークを有し、全体として磁気回路を構成して前記ワイヤーロープを磁化する磁化装置と、
前記検出コイルと前記磁化装置を覆うように配設され、前記ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部と、
前記ガイド部の両端部に、配置され、前記ワイヤーロープが移動する移動位置を保持してロープ振動を抑制するロープ振動抑制治具と、
を備え、
前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープのガイドとなっており、当該ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが移動する移動位置を保持する
ロープ探傷装置。」

である点で一致し、以下の各点で相違する。

(相違点1)
ロープ振動抑制治具について、補正発明は、「前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持」「するロープ振動抑制治具」であって「前記ガイド部の両端に片側あたり1個の部品を固定可能に構成され」ているのに対して、引用発明は、「基台1下面の両端部に、磁石3a及び3bのさらに外側となる位置に、ガイドローラ支持台7a及び7bがそれぞれ設けられており、このガイドローラ支持台7a及び7bに、それぞれ回動可能に固定されている、ワイヤロープ8を案内する略円柱状のガイドローラ6a及び6b」である点。

(相違点2)
ガイド部の両端部に配置される、ロープ振動抑制治具の間隔について、補正発明は、「前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチと同じになる間隔で」あるのに対して、引用発明は、「ガイドローラ6a及び6b」の間隔が明らかでない点。

(相違点3)
前記ロープ振動抑制治具について、補正発明は、「複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成を有する」のに対して、引用発明は、そのような特定がされていない点。

(2)判断
ア 相違点1についての検討
補正発明の「前記ロープ振動抑制治具は、」「1個の部品を固定可能に構成され」とは、平成30年3月2日の面接審理において請求人が説明したとおり、ロープ治具が部品1個で構成されていることを意味すると認められる。
一般に、ワイヤーロープのガイド部材として、ローラもスライドブロックも普通に使われる部材であり、さらに、引用文献2には、エレベータのワイヤロープの点検装置においても、「ローラ14は、図12および図13に示すように、スライドブロックで置き換えてもよい。」と記載されているように、ローラをスライドブロックに置きかえることが示唆されているから、引用発明の「ガイドローラ6a及び6b」の代わりにスライドブロックを用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、スライドブロックを1個の部品で構成することも、当業者が適宜設計し得ることである。

イ 相違点2についての検討
補正発明の「ロープ振動抑制治具」について「前記ガイド部の両端部に、前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチと同じになる間隔で配置され」との記載事項は、前記ワイヤーロープが、補正発明の構成には含まれておらず、「前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチ」が特定されていないことから、「ロープ振動抑制治具」の設置間隔を何ら限定するものではない。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。

ウ 相違点3についての検討
補正発明の「複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成を有する」との記載事項は、複数のワイヤーロープが、補正発明の構成には含まれていないので「ワイヤーロープ間の間隔」も「ワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所」も特定できないことから、補正発明の「複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成を有する」との記載事項は補正発明の構成を何ら限定するものではない。
したがって、相違点3は、実質的な相違点ではない。

なお、本願の明細書(特に、段落【0028】)を参照すると、「複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成」は、「ワイヤーロープをロープ振動抑制治具1に沿わすだけであるため、ワイヤーロープの全周を覆う必要がな」い構成を意味すると解されるところ、引用発明もワイヤーロープをガイドローラ6a及び6bに沿わすだけであって、ワイヤーロープの全周を覆う必要がないと認められるので、この点からみても、実質的な相違点ではない。

エ そして、補正発明の作用効果は、引用文献1?2の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。
なお、ワイヤーロープのストランドの撚りピッチとの関係で奏する効果は、補正発明とワイヤーロープとの関係で奏する効果であるので、ワイヤーロープがその構成要件でない補正発明が奏し得る効果とは認められない。

オ したがって、補正発明は、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成28年9月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】
ワイヤーロープを磁化し発生する磁束を検出することにより前記ワイヤーロープの損傷の有無を検査するロープ探傷装置において、
前記ワイヤーロープの移動方向に所定の間隔で設置され、正負一対の磁極を形成して前記ワイヤーロープを磁化するための複数の磁石と、
前記複数の磁石を両端で固定して磁気的に連結するヨークと、
前記複数の磁石の間に設置され前記磁束を検出する検出コイルと、
前記検出コイルを固定するとともに、前記複数の磁石および前記ヨークを有し、全体として磁気回路を構成して前記ワイヤーロープを磁化する磁化装置と、
前記検出コイルと前記磁化装置を覆うように配設され、前記ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部と、
前記ガイド部の両端部に、前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチと同じになる間隔で配置され、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持してロープ振動を抑制するロープ振動抑制治具と、
を備え、
前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状である前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持することを特徴とするロープ探傷装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物及びその記載事項
本願の出願前に頒布された引用文献及びその記載事項は、上記「第2[理由] 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
補正発明は、本願発明の「ロープ振動抑制治具」について、「前記ワイヤーロープのガイドとなっており、当該ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ガイド部の両端に片側あたり1個の部品を固定可能に構成され」及び「複数のワイヤーロープが配設されている場合にワイヤーロープ間の間隔が最小ピッチの場所でのワイヤーロープの点検が可能な構成を有する」を付加して、「ロープ振動抑制治具」を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む補正発明が、上記「第2[理由] 3」において検討したとおり、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 平成30年3月22日にファクシミリにより提示された補正案について
上記補正案で提示された請求項1に係る発明について、合議体の見解を簡潔に付しておく。
1 補正案の請求項1に係る発明(以下、「面接後補正案発明」という。)(下線は請求人が付与したものである。)
「【請求項1】
ワイヤーロープを磁化し発生する磁束を検出することにより前記ワイヤーロープの損傷の有無を検査するロープ探傷装置において、
前記ワイヤーロープの移動方向に所定の間隔で設置され、正負一対の磁極を形成して前記ワイヤーロープを磁化するための複数の磁石と、
前記複数の磁石を両端で固定して磁気的に連結するヨークと、
前記複数の磁石の間に設置され前記磁束を検出する検出コイルと、
前記検出コイルを固定するとともに、前記複数の磁石および前記ヨークを有し、全体として磁気回路を構成して前記ワイヤーロープを磁化する磁化装置と、
前記検出コイルと前記磁化装置を覆うように配設され、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状であり、該U字状のガイド面に沿って前記ワイヤーロープを移動させることで、前記ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部と、
前記ガイド部の両端部に、前記ワイヤーロープのストランドの撚りピッチと同じになる間隔で配置され、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を保持してロープ振動を抑制するロープ振動抑制治具と、
を備え、
前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ワイヤーロープの摺動方向に直交するV字型の端面を有し、
前記ガイド部の両端の両開口部に、各々一つずつ取り付けられ、
該両開口部に取り付けられた前記ロープ振動抑制治具の各々の前記V字型の端面の内1つの端面が、前記両開口部の前記ワイヤーロープの摺動方向に直交するU字状の端面の各々と対向し、
前記ワイヤーロープのロープ直径が所定の公称径より細くなった場合でも、前記ワイヤーロープが前記ガイド部の前記ガイド面に強い力で接触しないように、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で保持することで、前記ワイヤーロープのガイドとして機能し、
さらに、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型のV字面に沿って前記ワイヤーロープを移動させることができることで隣合うワイヤーロープがある場所においても前記ワイヤーロープの点検が可能となることを特徴とするロープ探傷装置。」

2 対比・判断
面接後補正案発明のうち、補正発明と異なる発明特定事項について検討する。

a「面接後補正案発明」の「前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がU字状であり、該U字状のガイド面に沿って前記ワイヤーロープを移動させることで、前記ワイヤーロープの摺動をガイドするガイド部」の構成は、引用発明が「溝4aの略U字状の内面」を備え、「このワイヤロープ8は、その溝4a内に配置された部分」があることから、引用発明も備えていると認められる。

b「面接後補正案発明」の「前記ロープ振動抑制治具は、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型であって、前記ワイヤーロープの摺動方向に直交するV字型の端面を有し、
前記ガイド部の両端の両開口部に、各々一つずつ取り付けられ、
該両開口部に取り付けられた前記ロープ振動抑制治具の各々の前記V字型の端面の内1つの端面が、前記両開口部の前記ワイヤーロープの摺動方向に直交するU字状の端面の各々と対向」する構成は、上記「ア 相違点1についての検討」で引用発明の「ガイドローラ」の代わりにスライドブロックを用いて相違点1に係る補正発明の構成としたものが備えていると認められる。

c「面接後補正案発明」の「前記ワイヤーロープのロープ直径が所定の公称径より細くなった場合でも、前記ワイヤーロープが前記ガイド部の前記ガイド面に強い力で接触しないように、前記ワイヤーロープが摺動する摺動位置を前記ガイド部のガイド面のU字の底より高い位置で保持することで、前記ワイヤーロープのガイドとして機能」する構成は、引用発明では、「ガイドローラ6a及び6bのそれぞれが略V字状を呈する外周面を有し、ワイヤロープ8は、溝4aの内面に接触することがなく、ガイドローラ6a及び6bのみに接触することになる」のであり、そのワイヤーロープのロープ直径は特定されていないのであるから、ロープ直径が、所定の公称径の場合も、所定の公称径より細くなった場合も含めて、ワイヤロープ8は、溝4aの内面に接触することがなく、ガイドローラ6a及び6bのみに接触することになるのであるから、引用発明も備えていると認められる。

d「面接後補正案発明」の「さらに、前記ワイヤーロープの摺動方向に交差する断面の断面形状がV字型のV字面に沿って前記ワイヤーロープを移動させることができることで隣合うワイヤーロープがある場所においても前記ワイヤーロープの点検が可能となる」という構成は、本願明細書の「【0027】 なお、ワイヤーロープの振動を抑えるためにワイヤーロープの全周をロープ探傷装置で覆う方法は、ロープが1本しかないクレーン用として使用されていることもあるが、エレベータ等は、隣合うワイヤーロープとの間隔が狭い。そのため、ワイヤーロープの全周をロープ探傷装置で覆うことは難しい。
【0028】
図7は、ロープ探傷装置がエレベータに取り付いたときのロープ探傷装置と隣合うワイヤーロープの位置関係を示す。実施の形態1においては、ワイヤーロープをロープ振動抑制治具1に沿わすだけであるため、ワイヤーロープの全周を覆う必要がなく、図7に示すように、エレベータに取り付いているロープにおいて、ロープ間隔が最小ピッチの、狭い場所においてもワイヤーロープの点検が可能である。」との記載より、ワイヤーロープをロープ振動抑制治具1に沿わす構成のワイヤーロープの全周を覆う必要がないことといえるので、ワイヤーロープをロープテスタに沿わす構成でワイヤーロープの全周を覆う構成ではない引用発明も備えていると認められる。

したがって、「面接後補正案発明」は、補正発明同様に、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-23 
結審通知日 2018-04-24 
審決日 2018-05-09 
出願番号 特願2014-41191(P2014-41191)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵田 真彦  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
信田 昌男
発明の名称 ロープ探傷装置  
代理人 大岩 増雄  
代理人 吉澤 憲治  
代理人 村上 啓吾  
代理人 竹中 岑生  

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