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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1341643
審判番号 不服2017-14703  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-03 
確定日 2018-06-21 
事件の表示 特願2013-132914「半導体装置の製造方法及び半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月27日出願公開,特開2014- 39016〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年6月25日(優先権主張平成24年7月6日,平成24年7月18日)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 2月 7日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月13日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 6月28日付け:拒絶査定
平成29年10月 3日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成30年 2月15日 :上申書の提出

第2 平成29年10月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「【請求項1】
ステージに載置した基板に光硬化性の接着層を介して幅1mm以下の半導体素子を配置し,圧着ヘッドによる加圧及び光照射装置による光照射によって前記半導体素子を前記基板に接続する接続工程を備えた半導体装置の製造方法であって,
前記接着層は,その端面が前記半導体素子の端面と一致するように幅1mm以下の前記半導体素子と略同じ広さの表面積を呈するように形成されており,
前記接続工程において,前記光照射装置からの光を前記半導体素子の幅方向の両側から照射することによって前記接着層を硬化させる半導体装置の製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成29年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ステージに載置した基板に光硬化性の接着層を介して幅1mm以下の半導体素子を配置し,圧着ヘッドによる加圧及び光照射装置による光照射によって前記半導体素子を前記基板に接続する接続工程を備えた半導体装置の製造方法であって,
前記接着層は,幅1mm以下の前記半導体素子と略同じ広さの表面積を呈するように形成されており,
前記接続工程において,前記光照射装置からの光を前記半導体素子の幅方向の両側から照射することによって前記接着層を硬化させる半導体装置の製造方法。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「接着層」の構造について,上記のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,国際公開第2007/058142号(2007年5月24日国際公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審で付与した。)
「技術分野
[0001]本発明は,回路基板の回路パターンと電子部品の電極との間に異方導電性を有する接着剤層を介在させた電子部品の実装方法に関する。
背景技術
[0002]従来,回路基板の回路パターンに電子部品を接合するための技術の1つとして,特開平8?138773号公報に記載されているように,電子部品と対向する回路基板とを導電性粒子が分散された接着剤層からなる異方性導電材料を介して加熱圧着し,回路配線と電子部品の電極間を導電接続する方法が行われていた。しかし,上記公報に記載の方法によると,耐熱性が十分でない配線基板や電子部品の接合や,熱的寸法安定性が十分でない部材や部品を接合する用途に用いることはできなかった。
[0003]そこで,粘着性を有する異方導電性粘着シート材料を用いることによって,加熱することなく電子部品を回路基板に接合する方法が開発された。その方法は,例えば特開平11?256117号公報に記載されているように,粘着性を有する異方導電性光後硬化型粘着シート材料を電子部品を取り付けるべき基板表面に張り付け,この粘着シート材料に光を照射し,該粘着シート材料の硬化反応を活性化した後,その粘着シート材料が粘着性を保持している間にその粘着シート材料上に電子部品を取り付け,粘着シート材料を更に硬化させて接合するという方法である。尚,粘着性は,タック性又は(感圧)接着性と称することもある。この方法によれば,光照射後,室温下において,硬化反応が完了するまで所定の長さの時間をかけて養生することが必要であるため,所望の実装基板が得られるまでにかなり長い時間を要していた。
[0004]また,そのような光後硬化型の異方導電性粘着シート材料を用いる場合に,該粘着シート材料を介して電子部品と回路基板との間に実際に電気的接続が形成されているか否かを検査を行う必要が生じる場合もあった。そのような検査は,所定の時間の経過を要する硬化反応完了後に行うことになるため,検査によって不良を発見した場合は,該異方導電性粘着シート材料は硬化しているので,基板および電子部品の表面を破壊することなく,電子部品を取り外して再接合することはできず,検査で不合格の回路基板はそのまま不良品として処理されていた。従って,検査段階では回路基板に取り付けた電子部品の再調整ができず,不良品の発生は生産性を低下させる原因の1つとなっていた。
[0005]更に,光照射した直後から硬化反応が完了するまでの間は,比較的長い時間にわたって,回路基板上に取り付けられた電子部品は,実質的には回路基板上に固定されておらず,載置されている状態であると表現することができる。従って,光照射後,電子部品が取り付けられた回路基板を養生させる(又は硬化反応を完了する)ために一時的に保管する場所及びその時間を確保する必要があった。この回路基板を養生のために一時的に保管する場所が,光照射及び/又は電子部品取り付けの場所から離れた所にある場合には,ベルトコンベヤなどの搬送装置によってその離れた場所へ移動させることも更に必要である。その搬送の際,取り付けた電子部品が比較的大きな質量を有する場合には,搬送中において電子部品に加わる加速度の向き及び大きさが不連続的に変化する場合等に,該電子部品に作用する慣性力によって回路基板上に取り付けた電子部品が回路基板上で位置ずれを生じる事態が発生することがあった。回路基板上での電子部品の位置ずれは,接続不良の大きな要因となっていた。
[0006]そこで,特開2000?86987号公報には,回路基板に接合された電子部品の再接合が可能な接合方法が記載されている。この方法は,粘着性を有する異方導電性光硬化型粘着シート材料を,基板または電子部品に張り付け,この粘着シート材料に光を照射し,硬化反応を活性化した後であって,粘着性を保持している間に,回路基板と電子部品を張り合わせて接合するという点では前記特開平11?256117号公報の発明と同じであるが,粘着層の材料として,アクリル系ポリマー,カチオン重合性化合物,光カチオン重合開始剤,導電性粒子からなる材料を用いることによって,基板および電子部品の表面を破壊することなく,剥離可能とし,再接合性を確保している。しかしながら,特開2000?86987号公報記載の方法によっては,接合時の不良,および,光照射後の移動による不良発生については,まだ十分に防止することができていない。
[0007]特許文献1:特開平8?138773号公報
特許文献2:特開平11?256117号公報
特許文献3:特開2000?86987号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0008]本発明は上記従来技術の問題点を解消し,接合信頼性の高い電子部品の実装方法を提供することを目的とする。すなわち,圧着状態で電子部品を固定することができ,異方導電接続を果たすことができ,同時に電気的な検査も行うことができるものであり,加熱処理を施すことなく硬化させることができるので,電気的接続の信頼性を高め得ると共に耐熱性が十分でない部材および部品の接続にも用いることができる極めて信頼性の高い電子部品の実装方法を提供することにある。」

「発明を実施するための最良の形態
[0030](第1の実施形態)
以下,本発明の電子部品の実装方法について,詳細に説明する。
光重合性接着剤として,エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製,商品名:エピコート828)100gと,光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製,商品名:オプトマーSP?170)3.0gと,導電性粒子として銀粉(平均粒径15μm)20gとを準備し,ボールミルで処理し,均一な分散状態にした液状の光重合性接着剤を得た。
[0031]得られた液状の光重合性接着剤を,50mm×20mmの大きさのプリント配線基板の表面に塗布する。
塗布方法としては,バーコーティング,スピンコーティング,カーテンコーティング,ロールコーティング等の液状物質の塗布に用いることができる一般的な方法を採用することができる。また,プリント基板の一部に塗布する場合には,スクリーン印刷などの印刷法を用いても良い。また,本発明の液状接着剤は,粘度が300Pa・s以下と低いので,ディスペンサーを用いて狭い領域及び/又は選択した必要な領域にのみ供給し塗布することもできる。従って,回路基板の表面全体に接着剤層を形成することもできるし,回路基板に設けられたパターンに対応させて所望する領域にのみ接着剤層を形成することもできる。接着剤層の厚みは,10μm?100μmが適当であり,要求性能に応じて,最適化することができる。
[0032]次に,塗布した接着剤に第1の紫外線照射を行い,接着剤をゲル化させる。光源として,一般的な高圧水銀灯などを用いることができる。照射量としては,10?500mJ/cm^(2)が適当である。照射量は,ゲル化の状態に応じて,最適化することができる。
[0033]次に,電子部品装着機で,抵抗,コンデンサーなどのチップ状の電子部品を装着する。即ち,プリント配線基板の部品実装部に電子部品を押し当てる。この電子部品を押し当てる操作によって,ゲル化した接着剤層の中に電子部品を押し込む。この接着剤層がゲルの状態である間に電子部品を押し込むと,電子部品を押し込んだ方向,従って接着剤層の厚み方向について接着剤層が圧縮され,その内部の導電性粒子どうしを接着剤層の厚み方向について相互に接触させることができる。また,接着剤層の上側表面では,押し込んだ電子部品と上側表面付近の導電性粒子との間に接触状態を形成することができ,一方,接着剤層の下側表面では,接着剤層が圧縮されることに伴って,回路基板の部品実装部側のランド等と導電性粒子との間に接触状態を形成することができる。従って,接着剤層の厚み方向について,電子部品と回路基板との間に選択的に電気的接続を形成すること,従って異方導電接続を形成することができる。
[0034]電子部品と回路基板の部品実装部との間に電気的接続を形成してから,2回目以降の紫外線照射を行う。この紫外線照射は,電子部品を取り付けた部品実装部を対象にして行う場合には,主として電子部品の回路基板への固定を迅速に行うことができる。
[0035]電子部品が紫外線に対して透明でない場合,接着剤層に紫外線が直接には当たらない影の部分が発生し得るので,電子部品の斜上方より紫外線照射することによって,影の発生を防止することができる。光源が,点状,線状,面状のいずれの形態であっても,光源を回路基板に対して相対的に移動させることによって,影の発生を防止して紫外線照射を行うことができる。また,点状光源,線状光源及び面状光源の群から選ばれる2種以上のものを組み合わせて,部品実装部に取り付けた各電子部品を包囲し,その光源から照射する紫外線が直接には当たらない影の部分が接着剤層に生じないように配置すれば,光源を回路基板に対して相対的に移動させることなく,影の発生を防止して,有効に紫外線照射を行うことができる。照射量としては,100?1000mJ/cm^(2)が適当であり,接合状態に応じて,最適化することができる。
[0036]また,本発明では,反応遅延性の光重合性を有しているので,紫外線が直接には当たらなかった影の部分においても,時間の経過と共に硬化が進行し,所定の時間が経過すれば,紫外線が直接当たった部分と同様の硬度に到達する。従って,紫外線照射時に,影の発生を完全に防止できない場合でも,硬化反応が完了すれば実装信頼性に関して特に支障はない。」

「[0041]以下,具体な実施例を上げて,本発明の電子部品の実装方法をより詳細に説明する。
(実施例1)
光重合性接着剤として,エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製,商品名:エピコート828)100gと,光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製,商品名:オプトマーSP?170)3.0gと,導電性粒子として銀粉(平均粒径15μm)20gとを準備し,ボールミルで処理し,均一な分散状態にした液状の光重合性接着剤を得た。得られた液状接着剤は,粘度が10Pa・sであった。
[0042]粘度は,E型粘度計を用い,25℃で行い,2回転目の数値を読みとった。
得られた液状の光重合性接着剤を,バーコーティング法により,50mm×20mmの大きさのプリント配線基板の表面全体に50μmの厚さで塗布した。
[0043]次に,高圧水銀灯で,照射量200mJ/cm^(2)の条件でプリント配線基板の表面全体に第1の紫外線照射を行ったところ表面にタック性(接着性)が発現していた。
プリント基板の回路配線にチップ抵抗の電極部を,20gの荷重で押し当てながら,チップ部品実装部分をチップ部品の両側の斜上方から,光ファイバーで照射量800mJ/cm^(2)の条件で第2の紫外線照射を行った。このとき,プリント基板の回路配線とチップ抵抗の電極部に,探針を押し当て,必要な程度(数mΩ?数十mΩ,例えば1mΩ,2mΩ又は3mΩ以上,10mΩ,30mΩ又は50mΩ以下)の導通が取れたところで,紫外線照射を行った。
[0044]固定したチップ抵抗の接着強度を測定したところ,100kg/cm^(2)であり,充分な接着力で固定されていた。100個のチップ部品をテストしたところ,いずれも,100kg/cm^(2)以上の接着強度を示した。
接着強度の測定は,JIS-K-6850に準じて測定した。
[0045]次に,プリント配線基板の表面全体に照射量800mJ/cm^(2)の条件で第3の紫外線照射を行った。この時点で,表面のタック性は消滅しており,実装部分以外の回路配線は,絶縁性の樹脂膜で覆われていた。」

(イ)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は,回路基板の回路パターンと電子部品の電極との間に異方導電性を有する接着剤層を介在させた電子部品の実装方法に関するものであり([0001]),圧着状態で電子部品を固定することができ,異方導電接続を果たすことができ,同時に電気的な検査も行うことができるものであり,加熱処理を施すことなく硬化させることができるので,電気的接続の信頼性を高め得ると共に耐熱性が十分でない部材および部品の接続にも用いることができる極めて信頼性の高い電子部品の実装方法を提供することを課題としたものである。([0008])。
b 塗布方法としては,バーコーティング,スピンコーティング,カーテンコーティング,ロールコーティング等の液状物質の塗布に用いることができる一般的な方法を採用することができ,また,プリント基板の一部に塗布する場合には,スクリーン印刷などの印刷法を用いても良く,さらに,引用文献1に記載された液状接着剤は,粘度が300Pa・s以下と低いので,ディスペンサーを用いて狭い領域及び/又は選択した必要な領域にのみ供給し塗布することもできるので,回路基板の表面全体に接着剤層を形成することもできるし,回路基板に設けられたパターンに対応させて所望する領域にのみ接着剤層を形成することもできる([0031])。
接着剤層の厚みは,10μm?100μmが適当であり,要求性能に応じて,最適化することができる([0031])。
電子部品装着機で装着する電子部品は,抵抗,コンデンサーなどのチップ状の電子部品である([0033])。
c 電子部品が紫外線に対して透明でない場合,接着剤層に紫外線が直接には当たらない影の部分が発生し得るので,電子部品の斜上方より紫外線照射することによって,影の発生を防止することができる。また,点状光源,線状光源及び面状光源の群から選ばれる2種以上のものを組み合わせて,部品実装部に取り付けた各電子部品を包囲し,その光源から照射する紫外線が直接には当たらない影の部分が接着剤層に生じないように配置すれば,光源を回路基板に対して相対的に移動させることなく,影の発生を防止して,有効に紫外線照射を行うことができる([0035])。

(ウ)上記(ア),(イ)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「光重合性接着剤として,エポキシ樹脂と,光カチオン重合開始剤と,導電性粒子とを準備し,ボールミルで処理し,均一な分散状態にした液状の光重合性接着剤を得る工程と,
得られた液状の光重合性接着剤を,バーコーティング法により,50mm×20mmの大きさのプリント配線基板の表面全体に50μmの厚さで塗布する工程と,
次に,高圧水銀灯で,照射量200mJ/cm^(2)の条件でプリント配線基板の表面全体に第1の紫外線照射を行い,表面にタック性(接着性)を発現させる工程と,
プリント基板の回路配線にチップ抵抗の電極部を,20gの荷重で押し当てながら,チップ部品実装部分をチップ部品の両側の斜上方から,光ファイバーで照射量800mJ/cm^(2)の条件で第2の紫外線照射を行うことで,前記光重合性接着剤を加熱処理を施すことなく硬化させて,チップ抵抗を固定する工程と,
プリント配線基板の表面全体に照射量800mJ/cm^(2)の条件で第3の紫外線照射を行う工程であって,表面のタック性が消滅し,実装部分以外の回路配線が,絶縁性の樹脂膜で覆われる工程とを含む,
電子部品の実装方法。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-81257号公報(以下「引用文献2」という。)には,次の記載がある。
「【請求項1】
偏光フィルム層が設けられた非接着領域,及び当該非接着領域に隣接する接着領域を有する基板に,回路パターンが形成された電極面を有するチップ部品を接続してなる回路部品の製造方法であって,
熱硬化性接着剤を介在させた状態で前記電極面が前記接着領域に対向するように前記チップ部品を前記基板に配置する配置工程と,
前記接着領域と前記チップ部品とをステージ及び加熱ヘッドで挟み込むことにより熱圧着する熱圧着工程と,を備え,
前記熱圧着工程において,前記基板の少なくとも前記非接着領域を非接触加熱手段によって加熱することを特徴とする回路部品の製造方法。」

「【0023】
チップ部品14としては,ICチップ,LSIチップ,抵抗体チップ,コンデンサチップ等のチップ部品が挙げられる。これらのチップ部品14は,多数の回路電極からなる回路パターン16を備える。回路パターン16は,金,銀,錫,ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種で構成されてもよく,2種以上で構成されていてもよい。チップ部品14は長方形状であることが好ましく,チップ部品14の短辺の長さβ’’は,下記式(I)又は下記式(II)を満たす。
β’’≦(α-α’) (I)
β’’≦(β-β’) (II)
[式中,αは基板の長辺の長さを示し,α’は偏光フィルム層の長辺の長さを示し,βは基板の短辺の長さを示し,β’は偏光フィルム層の短辺の長さを示し,β’’はチップ部品14の短辺の長さを示す。]
【0024】
チップ部品14の長辺及び短辺は,40mm?0.1mmの範囲が好ましく,30mm?0.3mmの範囲であることがより好ましく,25mm?0.8mmであることがさらに好ましい。」

「【0028】
図3(c)及び図3(d)は,偏光フィルム層12が設けられた非接着領域A,及び当該非接着領域Aに隣接する接着領域Bを有する基板11に,回路パターン16が形成された電極面S2を有するチップ部品を接続するための,配置工程と熱圧着工程を説明する図である。」

図3は,引用文献2に記載された発明の製造方法に係る工程を説明する断面模式図であって,上記摘記を参酌すれば,同図から,接着剤18の端面と,チップ部品14の端面とが,略一致する構造を見て取ることができる。

(イ)上記記載から,引用文献2には,次の技術が記載されていると認められる。
「熱硬化性接着剤を介在させた状態で,チップ部品の電極面が,基板の接着領域に対向するように前記チップ部品を前記基板に配置する配置工程と,
前記接着領域と前記チップ部品とをステージ及び加熱ヘッドで挟み込むことにより熱圧着する熱圧着工程を備えた,基板に,チップ部品を接続してなる回路部品の製造方法において,
前記チップ部品の長辺及び短辺は,40mm?0.1mmの範囲が好ましく,30mm?0.3mmの範囲であることがより好ましく,25mm?0.8mmであることがさらに好ましいとした技術。」,及び
「接着剤の端面と,チップ部品の端面とを,略一致させる技術。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は,耐熱性が十分でない部材および部品の接続にも用いることができる極めて信頼性の高い電子部品の実装方法を提供することを課題とした電子部品の実装方法に係る技術であり,本件補正発明と,技術分野が共通する。
(イ)引用発明の「光重合性接着剤」,「光ファイバー」,「チップ部品の両側の斜上方から,光ファイバーで照射量800mJ/cm^(2)の条件で第2の紫外線照射を行うことで,前記光重合性接着剤を加熱処理を施すことなく硬化させ」は,それぞれ,本件補正発明の「光硬化性の接着層」,「光照射装置」,「光照射装置からの光を前記半導体素子の幅方向の両側から照射することによって前記接着層を硬化させる」に相当する。
(ウ)本願明細書の【0019】に,「半導体素子11は,例えばICチップ,LSIチップ,抵抗,コンデンサといった各種の素子であり,・・・」と記載されているから,引用発明の「チップ抵抗」は,本件補正発明の「半導体素子」に相当する。
(エ)引用発明の「プリント基板の回路配線にチップ抵抗の電極部を,20gの荷重で押し当て」るためには,加圧のための圧着ヘッドを用いていることが自明であるから,引用発明は,本件補正発明の「圧着ヘッドによる加圧」に相当する構成を備えているといえる。
(オ)上記(ア)?(エ)より,本件補正発明と引用発明とは,「半導体装置の製造方法」である点で共通するといえる。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「基板に光硬化性の接着層を介して半導体素子を配置し,圧着ヘッドによる加圧及び光照射装置による光照射によって前記半導体素子を前記基板に接続する接続工程を備えた半導体装置の製造方法であって,
前記接続工程において,前記光照射装置からの光を前記半導体素子の幅方向の両側から照射することによって前記接着層を硬化させる半導体装置の製造方法。」

【相違点1】
接続工程時の「基板」について,本件補正発明は,「ステージ」に載置したものであるのに対し,引用発明は,当該構成について特定されていない点。
【相違点2】
「半導体素子」について,本件補正発明は,「幅1mm以下」であるのに対し,引用発明は,当該構成について特定されていない点。
【相違点3】
「接着層」について,本件補正発明は,「その端面が前記半導体素子の端面と一致するように幅1mm以下の前記半導体素子と略同じ広さの表面積を呈するように形成されて」いるのに対し,引用発明は,「プリント配線基板の表面全体に50μmの厚さで塗布」されている点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明は,「プリント基板の回路配線にチップ抵抗の電極部を,20gの荷重で押し当てながら,チップ部品実装部分をチップ部品の両側の斜上方から,光ファイバーで照射量800mJ/cm^(2)の条件で第2の紫外線照射を行うことで,前記光重合性接着剤を加熱処理を施すことなく硬化させて,チップ抵抗を固定する」ものである。
そうすると,引用発明が,前記基板に,前記「20gの荷重」に対抗する応力を付与する機構を備えていることは自明であるから,引用発明は,当該荷重に対抗し得る強度を備えた基板を載置するステージを備えているものと認められる。
したがって,相違点1は実質的なものではない。

また,仮に,引用発明が,「ステージ」を備えていないとしても,引用文献2の「前記接着領域と前記チップ部品とをステージ及び加熱ヘッドで挟み込むことにより熱圧着する熱圧着工程」(【請求項1】)との記載からも明らかなように,圧着機構において,「ステージ」を用いることは周知の技術であるから,引用発明において,上記相違点1について,本願発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
引用発明は,「プリント基板の回路配線にチップ抵抗の電極部を,20gの荷重で押し当てながら,チップ部品実装部分をチップ部品の両側の斜上方から,光ファイバーで照射量800mJ/cm^(2)の条件で第2の紫外線照射を行うことで,前記光重合性接着剤を加熱処理を施すことなく硬化させて,チップ抵抗を固定する」ものである。

そして,引用文献1の,「電子部品が紫外線に対して透明でない場合,接着剤層に紫外線が直接には当たらない影の部分が発生し得るので,電子部品の斜上方より紫外線照射することによって,影の発生を防止することができる。・・・その光源から照射する紫外線が直接には当たらない影の部分が接着剤層に生じないように配置すれば,・・・影の発生を防止して,有効に紫外線照射を行うことができる。」([0035])との記載を参酌すれば,引用発明における,前記「チップ部品実装部分をチップ部品の両側の斜上方から」行う紫外線照射は,「影の発生を防止すること」を目的としたものであり,「光源から照射する紫外線が直接には当たらない影の部分が接着剤層に生じないように」して,「有効に紫外線照射を行う」ものと理解される。

一方,所定の厚さの接着剤層を介して配置したチップ部品に紫外線を照射する場合において,前記チップ部品の幅が大きいほど,光源から照射する紫外線が直接には当たらない影の部分が接着剤層に生じやすくなり,他方,チップ部品の幅が狭いほど,前記影の発生が抑制されることは,自明の事項である。

そうすると,「影の発生を防止すること」を目的として,「チップ部品実装部分をチップ部品の両側の斜上方から」紫外線照射を行う引用発明において,光源から照射する紫外線が直接には当たらない影の部分が接着剤層に生じないように,前記「チップ部品」として,幅の狭いものを用いることが望ましいことは直ちに理解される。

他方,引用文献2には,上記(2)イのとおり,熱硬化性接着剤を介在させた状態で,チップ部品の電極面が,基板の接着領域に対向するように前記チップ部品を前記基板に配置する配置工程と,前記接着領域と前記チップ部品とをステージ及び加熱ヘッドで挟み込むことにより熱圧着する熱圧着工程を備えた,基板に,チップ部品を接続してなる回路部品の製造方法において,前記チップ部品の長辺及び短辺は,40mm?0.1mmの範囲が好ましく,30mm?0.3mmの範囲であることがより好ましく,25mm?0.8mmであることがさらに好ましいとした技術が記載されており,同引用文献に記載されたチップ部品には,チップ抵抗が含まれることは,引用文献2の「チップ部品14としては,ICチップ,LSIチップ,抵抗体チップ,コンデンサチップ等のチップ部品が挙げられる。」(【0023】)との記載から明らかである。

そして,引用発明と,引用文献2に記載された技術とは,いずれも,接着剤を用いて,基板に,チップ抵抗等のチップ部品を接続するものである点で共通する。

してみれば,引用文献2に,接着剤を用いて基板に接続するチップ抵抗等のチップ部品として,長辺及び短辺が,40mm?0.1mm(30mm?0.3mmの範囲であることがより好ましく,25mm?0.8mmであることがさらに好ましい)であるものが示されており,他方,引用発明から,「チップ部品」として,幅の狭いものを用いることが望ましいことが理解されるのであるから,引用発明と引用文献2に接した当業者であれば,引用発明の「チップ抵抗」の短辺の長さとして,前記「40mm?0.1mm(30mm?0.3mmの範囲であることがより好ましく,25mm?0.8mmであることがさらに好ましい)」の範囲のうちの,小さな値,例えば,「幅1mm以下」を採用することは,当業者が適宜なし得たことである。

ウ 相違点3について
引用文献1には,「塗布方法としては,バーコーティング,スピンコーティング,カーテンコーティング,ロールコーティング等の液状物質の塗布に用いることができる一般的な方法を採用することができる。また,プリント基板の一部に塗布する場合には,スクリーン印刷などの印刷法を用いても良い。また,本発明の液状接着剤は,粘度が300Pa・s以下と低いので,ディスペンサーを用いて狭い領域及び/又は選択した必要な領域にのみ供給し塗布することもできる。従って,回路基板の表面全体に接着剤層を形成することもできるし,回路基板に設けられたパターンに対応させて所望する領域にのみ接着剤層を形成することもできる。」([0031])と記載されている。
そうすると,引用発明では,光重合性接着剤を「プリント配線基板の表面全体」に塗布することは必須ではなく,前記記載に基づいて,引用発明の「得られた液状の光重合性接着剤を,バーコーティング法により,50mm×20mmの大きさのプリント配線基板の表面全体に50μmの厚さで塗布する工程」を,スクリーン印刷などの印刷法を用いてプリント基板の一部に塗布,あるいは,ディスペンサーを用いて狭い領域及び/又は選択した必要な領域にのみ供給し塗布することで,回路基板に設けられたパターンに対応させて所望する領域にのみ接着剤層を形成することは直ちになし得たとことといえる。

一方,小さな物品を接着層を用いて他の部材へ固着するに際して,当該接着層を,その端面が前記物品の端面と略一致するように,前記物品の前記部材と当接する面の表面積と略同じ広さを呈するように形成することは,接着剤のコスト等を考慮すると通常配慮する事項であり,また,日常生活において普通に行っていることでもある。しかも,上記(2)イのとおり,「熱硬化性接着剤を介在させた状態で,チップ部品の電極面が,基板の接着領域に対向するように前記チップ部品を前記基板に配置する配置工程と,前記接着領域と前記チップ部品とをステージ及び加熱ヘッドで挟み込むことにより熱圧着する熱圧着工程を備えた,基板に,チップ部品を接続してなる回路部品の製造方法」においても,「接着剤の端面と,チップ部品の端面とを,略一致させる技術」が知られている。

してみれば,引用発明において,「得られた液状の光重合性接着剤を,バーコーティング法により,50mm×20mmの大きさのプリント配線基板の表面全体に50μmの厚さで塗布する工程」に替えて,「スクリーン印刷などの印刷法を用いてプリント基板の一部に塗布,あるいは,ディスペンサーを用いて狭い領域及び/又は選択した必要な領域にのみ供給し塗布することで,回路基板に設けられたパターンに対応させて所望する領域にのみ接着剤層を形成する」に際して,前記接着剤を,端面がチップ抵抗の端面と一致するように,前記チップ抵抗と略同じ広さの表面積を呈するように形成すること,すなわち,相違点3について本願発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

エ そして,本願の発明の詳細な説明には,半導体素子の「幅」が,「1mm以下」である場合と,1mmを超える場合の効果の違い,及び,「接着層」について,「その端面が前記半導体素子の端面と一致するように幅1mm以下の前記半導体素子と略同じ広さの表面積を呈するように形成されて」いる場合と,それ以外の場合の効果の違いについて,いずれも具体的に示されていないから,本願発明1の半導体素子の「幅」の「1mm」という値,及び,「接着層」の「その端面が前記半導体素子の端面と一致するように幅1mm以下の前記半導体素子と略同じ広さの表面積を呈する」という特定に臨界的な意義を見いだすことはできない。
すなわち相違点1ないし3を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

オ したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年10月3日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし8に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:国際公開2007/058142号
引用文献2:特開2011-81257号公報
引用文献2:特開2003-64324号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「その端面が前記半導体素子の端面と一致する」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-10 
結審通知日 2018-04-17 
審決日 2018-05-07 
出願番号 特願2013-132914(P2013-132914)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 芳健堀江 義隆  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 大嶋 洋一
加藤 浩一
発明の名称 半導体装置の製造方法及び半導体装置  
代理人 清水 義憲  
代理人 ▲高▼木 邦夫  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  

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