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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04R
管理番号 1341754
審判番号 不服2016-18606  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-09 
確定日 2018-06-27 
事件の表示 特願2015-9482「スピーカ及びスピーカユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月25日出願公開、特開2016-134836〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月21日の出願であって、平成28年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年4月26日付けで手続補正がなされたが、同年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月9日に拒絶査定不服の審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成29年8月31日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなされなかったものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年12月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
凹状の内周縁を備えた筐体に装着されるスピーカユニットにおいて、
上半部に開口が形成された支持フレームと、
前記支持フレームの開口に位置するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの周縁と前記支持フレームの開口の周縁との間に接続される第1のインナーエッジ及び前記第1のインナーエッジの下方に貼着された第2のインナーエッジを含むダブルインナーエッジ構造と、
前記支持フレームの下半部に設けられるマグネット部材と、
前記ダイヤフラムの底部に位置すると共に前記マグネット部材と作用するボイスコイルと、
一方の端縁が前記支持フレームの外周縁に接続され、他方の端縁が前記筐体の凹状の前記内周縁内に嵌めるように架設されるダブルエッジ構造と、
を含むことを特徴とするスピーカユニット。」

第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
当審において平成29年8月31日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。

本願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.米国特許出願公開第2013/0195311号明細書
2.特開2007-325093号公報
3.特開昭60-185493号公報
4.特開昭60-185494号公報

第4 引用発明等
1.引用文献1
当審の拒絶理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2013/0195311号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。また、()内は、当審において作成した仮訳である。)

(1)「[0084] In FIG. 7A there is shown a vertical cross-sectional slice of an exploded view of a flat frame speaker 60. Frame 61 has defined therein a central region for receiving speaker motor 82 and extending horizontally outward substantially perpendicularly from the central region is frame side portion 62 with vent holes 63 therethrough spaced evenly around the central region in the full frame. Also shown in the bottom of the central region of frame 61 is a vent hole. The outer surrounding edge of side portion 62 of frame 61 includes a raised outer lip 80 defining a vertical surface 81.
[0085] Motor 82 includes a cup shaped bottom ferro-magnetic plate 64 into which there is a magnet 66 having a diameter that is smaller than the inner diameter of bottom plate 64. In the bottom of plate 64 there is a vent hole opposite the vent hole in the central region of frame 61. On top of magnet 66 there is top ferro-magnetic plate 68 having a diameter that is at least as large as the diameter of magnet 66 and substantially smaller than the inner diameter of bottom plate 64. Extending into the space between top plate 68 and the side of bottom plate 64 is bobbin 70 having a voice coil 72 wound externally around bobbin 70.
[0086] Above frame 61 and motor 82 is a rigid connection element 74 which will be discussed when FIG. 7B is addressed, and above rigid connection element 74 there is a speaker cone 76 with an inner end of surround 78 attached to the outer edge of speaker cone 76.
[0087] In FIG. 7B there is shown a vertical cross-sectional slice of fully assembled view of the flat frame speaker 60 of FIG. 7A. In this view the outer end of surround 78 is attached to vertical surface 81 of frame 61. Additionally, rigid connection element 74 has the inner end attached to the upper edge of bobbin 70 and the outer end attached to the bottom of cone 76 at or near the interconnection of cone 76 and surround 78.」
([0084] 図7Aには、フラットフレームスピーカ60の分解図の垂直断面図が示されている。フレーム61は、スピーカーモータ82を収容するための中心領域をその中に規定し、その中心領域から水平に外に向かって実質的に直立して広がるのが、フレーム全体において中心領域の周囲に均等に間隔をあけられた通気孔63を有するフレーム側部62である。また、フレーム61の中心領域の底部にも、通気孔が示されている。フレーム61の側部62の外周縁は、垂直面部81を規定する一段高くした外側縁80を含んでいる。
[0085] モータ82は、カップ状の底部強磁性体プレート64を含んでおり、底部プレート64の内径よりも小さい直径の磁石66がその中にある。プレート64の底部には、フレーム61の中心領域の通気孔の向かい側に通気孔がある。磁石66の上には頂部強磁性体プレート68があり、それは磁石66の直径と少なくとも同じ大きさを有しており、底部プレート64の内径よりも実質的に小さい。頂部プレート68と底部プレート64の側面との間の空間に、外周にボイスコイル72が巻かれたボビン70が延びている。
[0086] フレーム61とモータ82の上方には、図7Bの説明で論じられる剛性連結要素74があり、剛性連結要素74の上方には、スピーカーコーン76があり、スピーカーコーン76の外縁にサラウンド78の内側端が取り付けられている。
[0087] 図7Bには、図7Aのフラットフレームスピーカ60の組立完成図の垂直断面図が示されている。この図では、サラウンド78の外側端はフレーム61の垂直面部81に取り付けられている。さらに、剛性結合要素74は、ボビン70の上縁に取り付けられる内側端と、コーン76とサラウンド78の相互連結部あるいはその近くで、コーン76の底部に取り付けられる外側端とを有している。)

(2)「[0090] FIG. 8A illustrates a first example of a coaxial acoustic radiator in an ear cup 84 of a headset. In this view a flat frame speaker 60 of FIGS. 7A and B is suspended in the opening of ear cup 84 with a flexible membrane 48 as in the coaxial speaker-passive radiator of FIG. 2A.
[0091] FIG. 8B illustrates a second example of a coaxial acoustic radiator in an ear cup 84 of a headset that is similar to that shown in FIG. 8A with a symmetrical flexible membrane 48 - 48’ (one outward curved and one inward curved).」
([0090] 図8Aは、ヘッドセットのイヤーカップ84における同軸音響ラジエーターの第1の例を示している。この図において、図7A及びBのフラットフレームスピーカ60は、図2Aの同軸スピーカ/パッシブラジエーターと同様に、イヤーカップ84の開口部に可撓性膜48を用いて架けられている。
[0091] 図8Bは、図8Aに示されるものに類似した、ヘッドセットのイヤーカップ84における同軸音響ラジエーターの第2の例を示しており、対称性を有する可撓性膜48-48' (1つは外に向かって曲がり、1つは内に向かって曲がっている)を用いている。)

上記(1)は、図7A及び図7Bに示されるフラットフレームスピーカ(flat frame speaker)60についての記載であり、その[0084]の記載によれば、前記フラットフレームスピーカ60はフレーム(frame)61を含み、前記フレーム61は、中心領域(central region)とフレーム側部(frame side portion)62とを含む。そして、前記フレーム側部62は、垂直面部(vertical surface)81と外側縁(outer lip)80とを含んでいる。また、図7Aの記載からみて、前記フレーム61は、その上半部に開口が形成されている。
また、上記(1)の[0084]の記載によれば、前記フレーム61の前記中心領域には、スピーカーモータ(speaker motor)82が収容されており、[0085]によれば、前記スピーカーモータ82には、カップ状の底部強磁性体プレート(cup shaped bottom ferro-magnetic plate)64、磁石(magnet)66、及び頂部強磁性体プレート(top ferro-magnetic plate)68が含まれている。そして、図7A及びBの記載を参酌すると、前記磁石66は、前記フレーム61の中心領域にある凹部に収納されているから、前記磁石66は、前記フレーム61の下半部に設けられているということができる。
そして、上記(1)の[0085]の記載によれば、前記頂部強磁性体プレート68と前記底部強磁性体プレートの側面との間の空間にボビン(bobbin)70が延びており、前記ボビン70の外周にはボイスコイル(voice coil)72が巻かれている。そして、前記ボイスコイル72が前記磁石66と作用するものであることはスピーカ分野における技術常識である。
また、上記(1)の[0086]の記載によれば、前記フレーム61の上方にはスピーカーコーン(speaker cone)76があり、図7Bの記載を参酌すると、前記スピーカーコーン76は前記フレーム61の開口に位置しているということができる。そして、上記(1)の[0086]及び[0087]によれば、サラウンド(surround)78が、前記スピーカーコーン76の外縁と前記フレーム61の前記垂直面部81とに取り付けられている。また、前記スピーカーコーン76の底部には剛性結合要素(rigid connection element)74によって前記ボビン70が取り付けられており、図7Bの記載も勘案すると、前記ボビン70に巻かれた前記ボイスコイル72は前記スピーカーコーン76の底部に位置しているということができる。
さらに、上記(2)の[0090]及び[0091]によれば、図7A及びBに示されるフラットフレームスピーカ60は、対称性を有する可撓性膜48-48’(flexible membrane)(一方は外に向かって湾曲し、他方は内に向かって湾曲している)によってヘッドセット(headset)のイヤーカップ(ear cup)84の開口部(opening)に架けられている。そして、図8Bの記載を参酌すると、前記対称性を有する可撓性膜48-48’の内側の端縁は、前記フレーム61の外周縁に取り付けられており、外側の端縁は、前記イヤーカップ84の内周縁に取り付けられている。

したがって、上記(1)及び(2)の記載事項並びに図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ヘッドセットのイヤーカップ84の開口部に掛けられるフラットフレームスピーカ60において、
上半部に開口を有するフレーム61と、
前記フレーム61の開口に位置するスピーカーコーン76と、
前記スピーカーコーン76の外縁と前記フレーム61の垂直面部81とに取り付けられるサラウンド78と、
前記フレーム61の下半部に設けられる磁石66と、
前記スピーカーコーン76の底部に位置するとともに、前記磁石66と作用するボイスコイル72と、
内側の端縁が前記フレーム61の外周縁に取り付けられ、外側の端縁が前記イヤーカップ84の内周縁に取り付けられる対称性を有する可撓性膜48-48’であって、その一方は外に向かって湾曲し、その他方は内に向かって湾曲している可撓性膜48-48’と、
を含むフラットフレームスピーカ60。」

2.引用文献2
当審の拒絶理由に引用された引用文献2(特開2007-325093号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(3)「【0002】
一般に、振動板の外周をスピーカ軸方向に変位可能にスピーカフレームに接続するスピーカエッジとして、下記特許文献1に記載の形態のものが、普及している。
このスピーカエッジは、所謂ロールエッジと呼ばれているもので、振動板の外周に接合される振動板側フランジ(内周縁)と、該振動板側フランジの外周に連接されて振動板の振動を制振する緩衝部と、該緩衝部の外周から張り出してスピーカフレームに接合されるフレーム側フランジ(外周縁)とを備え、緩衝部が振動板の振幅方向前方に向かって凸の湾曲形状(ロール形状)に成形されている。
【0003】
ところが、このようなロールエッジは、その構造上、振動板が前方に変位する場合と後方に変位する場合とでは緩衝部の変形の形態が異なり、振動板に加えられるボイスコイルからの駆動力と振動板の変位量との相関が、振動板の前方側と後方側とで一致する線形にはならず、非線形の変位特性を示す。そして、この変位特性が、音響的な歪みを残す原因となることがあった。」

(4)「【0004】
そこで、このような不都合を解消するべく、図1に示す構造のスピーカエッジが提案されている。
このスピーカエッジ1は、下記特許文献2に記載されたもので、振動板の振幅方向の前後から貼り合わせた一対のエッジ半体2,3から形成されている。
各エッジ半体2,3は、振動板の外周に接合される振動板側フランジ4を構成する内周フランジ部2a,3aと、振動板側フランジ4の外周に連接されて振動板の振動を制振する緩衝部5を構成する円弧部2b,3bと、緩衝部5の外周から張り出してスピーカフレームに接合されるフレーム側フランジ6を構成する外周フランジ部2c,3cと、を備えた構造であり、互いのフランジ部を貼着することにより一体化されている。
【0005】
各エッジ半体2,3は、略対称構造である。即ち、それぞれの円弧部2b,3bは、互いに逆向きに凸の半円状に成形されており、一体化することで、振動板の振幅方向(図1では、矢印A方向)に対称構造となる円管状の緩衝部5を形成している。」

(5)「【0007】
図1に示したスピーカエッジ1では、緩衝部5が振動板の振幅方向に対称構造になっているため、振動板に加えられる駆動力と振動板の変位量との相関が、振動板の前方側と後方側とで一致する線形の変位特性を得ることができ、それにより、音響的な歪みの低減を図ることができる。」

上記(3)の記載によれば、緩衝部が振動板の振幅方向前方に向かって凸の湾曲形状(ロール形状)に成形されているロールエッジは、その構造上、非線形の変位特性を示し、音響的な歪みを残す原因となる。
そして、上記(4)及び(5)の記載によれば、振動板の振幅方向の前後から貼り合わせた一対のエッジ半体2,3から形成されたスピーカエッジ1では、緩衝部5が振動板の振幅方向に対称構造になっているため、音響的な歪みの低減を図ることができる。

したがって、上記(3)ないし(5)の記載事項並びに図面の記載を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。

「スピーカエッジの音響的な歪みの低減を図るために、スピーカエッジを、振動板の振幅方向の前後から貼り合わせた一対のエッジ半体から形成された対称構造とすること。」

第5 対比・判断
1.対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「フラットフレームスピーカ60」は、本願発明1の「スピーカユニット」に相当するとともに、ヘッドセットの「筐体」である「イヤーカップ84」に架けられることからみて「筐体に装着される」ものであるといえる。
(2)引用発明の「スピーカーコーン76」は、本願発明1の「ダイヤフラム」に相当する。また、引用発明の「フレーム61」は、スピーカーコーン76を「支持している」ということができるから、本願発明1の「支持フレーム」に相当する。
(3)引用発明における「スピーカーコーン76の外縁」及び「フレーム61の垂直面部81」は、本願発明1における「ダイヤフラムの周縁」及び「支持フレームの開口の周縁」にそれぞれ相当するから、本願発明1の「第1のインナーエッジ」と引用発明の「サラウンド78」は、「ダイヤフラムの周縁と支持フレームの開口の周縁との間に接続される」点で共通する。ただし、引用発明の「サラウンド78」には、その下方に「第2のインナーエッジ」が貼着されておらず、「ダブルインナーエッジ構造」ではない点で本願発明1と相違する。
(4)引用発明の「磁石66」及び「ボイスコイル72」は、本願発明1の「マグネット部材」及び「ボイスコイル」にそれぞれ相当する。
(5)引用発明の「可撓性膜48-48’」は、一方(内側)の端縁が支持フレーム(フレーム61)の外周縁に接続され、他方(外側)の端縁が筐体(イヤーカップ84)の内周縁に接続されており、かつ、一方は外に向かって湾曲し、他方は内に向かって湾曲しているという対称性を有しているから、「ダブルエッジ構造」であるということができる。ただし、本願発明1においては、ダブルエッジ構造の「他方の端縁が前記筐体の凹状の前記内周縁内に嵌めるように架設される」のに対して、引用発明においては、ダブルエッジ構造の他方(外側)の端縁を筐体(イヤーカップ84)の内周縁にどのように接続するかは特定されていない。

そうすると、本願発明1と引用発明の一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
凹状の内周縁を備えた筐体に装着されるスピーカユニットにおいて、
上半部に開口が形成された支持フレームと、
前記支持フレームの開口に位置するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの周縁と前記支持フレームの開口の周縁との間に接続される第1のインナーエッジと、
前記支持フレームの下半部に設けられるマグネット部材と、
前記ダイヤフラムの底部に位置すると共に前記マグネット部材と作用するボイスコイルと、
一方の端縁が前記支持フレームの外周縁に接続され、他方の端縁が前記筐体の内周縁に接続されるダブルエッジ構造と、
を含むことを特徴とするスピーカユニット。

(相違点1)
ダイヤフラムの周縁と支持フレームの開口の周縁との間に、本願発明1は、「第1のインナーエッジ及び前記第1のインナーエッジの下方に貼着された第2のインナーエッジを含むダブルインナーエッジ構造」が接続されるのに対し、引用発明は、第1のインナーエッジのみが接続されている点。
(相違点2)
本願発明1では、筐体は「凹状の内周縁」を備えるとともに、ダブルエッジ構造の他方の端縁が「前記筐体の凹状の前記内周縁内に嵌めるように架設される」のに対して、引用発明においては、ダブルエッジ構造の他方の端縁を筐体にどのように接続するかは特定されていない点。

2.判断
(1)相違点1について
引用発明のサラウンド78は、引用文献1の図7A及びBに記載されているように、スピーカーコーン76の振幅方向である外側に向かって湾曲しているから、引用文献2に記載の「ロールエッジ」(上記「第4」の「2(3)」参照。)と同様に、音響的な歪みを残すという技術課題が内在することは明らかである。
したがって、そのような技術課題を解決するために、引用発明1において引用文献2に記載の対称構造を採用することによって、すなわち、外に向かって湾曲したサラウンド78(第1のインナーエッジ)の下方に、内に向かって湾曲した別のサラウンド(第2のインナーエッジ)を貼り合わせることで、本願発明1と同様のダブルインナーエッジ構造とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(2)相違点2について
スピーカの分野において、エッジを他の部材に架設する際に、エッジが架設される前記部材に「凹状の内周縁」を備えるようにするとともに、前記エッジの端縁を前記凹状の内周縁に嵌めるようにすることは周知技術にすぎない(例えば、前記引用文献2の【0023】及び図2(特に、スピーカエッジ21のフレーム側フランジ33とスピーカフレーム17のエッジ支持部17aとの接合部分)、当審の拒絶理由に引用された引用文献3(特開昭60-185493号公報)の第2頁左下欄第1ないし4行目並びに第2図、当審の拒絶理由に引用された引用文献4(特開昭60-185494号公報)の第2頁左下欄第2ないし4行目並びに第2図、をそれぞれ参照のこと。)から、引用発明において、筐体(イヤーカップ84)とダブルエッジ構造(対称性を有する可撓性膜48-48’)を接続する際に、前記周知技術を採用することは、当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことではない。

(3)本願発明1の効果について
本願発明1の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。

3.まとめ
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-29 
結審通知日 2018-01-30 
審決日 2018-02-14 
出願番号 特願2015-9482(P2015-9482)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千本 潤介  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 井上 信一
國分 直樹
発明の名称 スピーカ及びスピーカユニット  
代理人 山内 博明  

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