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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1341763
審判番号 不服2017-4463  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-29 
確定日 2018-06-27 
事件の表示 特願2011-262186「保護ウインドウ及び保護ウインドウを含む表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 15811〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年(2011年)11月30日(パリ条約による優先権主張 2011年6月30日、韓国)を出願日とする出願であって、平成27年6月24日付けで拒絶理由が通知され、同年9月30日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成28年2月22日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年6月1日付けで意見書が提出されたが、同年11月24日付け(送達 同年同月29日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、平成29年3月29日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同時に手続補正がされ、その後、同年7月19日に上申書が提出されたものである。

第2 平成29年3月29日付けでなされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、本件補正前(平成27年9月30日付けでなされた手続補正)の特許請求の範囲を、以下のとおりに補正する内容を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1につき、
「【請求項1】
重合体を含む第1透明基材と、
前記第1透明基材の一面上に形成され、シルセスキオキサンを含む保護層と、
前記第1透明基材の他面上に形成され、複数の層を有する第2透明基材と、
を有し、
前記第2透明基材は、前記複数の層のうち最下面にポリカーボネートを含む層を有することを特徴とする、保護ウインドウ。」
とあったものを、
「【請求項1】
複数の層からなり、各層が重合体を含む第1透明基材と、
前記第1透明基材の一面上に形成され、シルセスキオキサンを含む保護層と、
前記第1透明基材の他面上に形成され、複数の層を有する第2透明基材と、
を有し、
前記第2透明基材は、前記複数の層のうち最下面にポリカーボネートを含む層を有することを特徴とする、保護ウインドウ。」
に補正。

2 補正の目的
(1)本件補正は、補正前の請求項1の「重合体を含む第1透明基材」に、「複数の層からなり、各層が」との限定を付加するものである。

(2)上記補正について検討する。
上記(1)の補正は限定を付加するものであるから、当該補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記「1」において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された引用文献である、特開2009-279806号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板に関する。より詳細には、耐傷付き性、光学特性、表面硬度性に優れ、耐衝撃性を有する積層板、その積層板の製造方法および、その積層板からなる表示装置用前面板に関する。」

(イ)「【0018】

これらは単独で、または2種類以上の組み合わせて使用することができる。上記紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、耐熱アクリル樹脂を主成分とする層中に0.01?25重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05?10重量%である。添加量が少なすぎると耐候性向上の寄与が低く、また多すぎると機械強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
本発明における耐熱アクリル樹脂を主成分とする層には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ他の各種添加剤や、その他の樹脂を含有させておくことができる。但しその場合でも、本発明における耐熱アクリル樹脂を含有する層において、耐熱アクリル樹脂の占める割合は、50-100重量%の範囲が好ましく、75-100重量%の範囲がさらに好ましく、90-100重量%の範囲がより好ましい。
その他の樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性ポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。ゴム質重合体は、表面に本発明のラクトン環重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、押出しフィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下である事が好ましく、70nm以下である事が更に好ましい。」

(ウ)「【0027】
ラクトン環含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、更に好ましくは、120℃以上、更に好ましくは125℃以上、最も好ましくは130℃以上である。ここで、ガラス転移温度とは、前述の通りである。

<ハードコート層>
本発明において、ハードコート層(C)とは、JIS5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。また、本発明にあって、ハードコート層(C)はハードコートフィルム、ハードコート板、ハードコート膜等のいずれの形態をも包含するものである。ハードコート層の層厚(硬化時)は2?10μmであり、好ましくは3?8μm、更に好ましくは4?7μmである。厚みが2μm未満では耐擦り傷性、鉛筆硬度が十分に発揮できない場合があり、10μmを超えるとハードコートの耐クラック性に劣ることがある。
活性エネルギー線を用いて硬化させるハードコート剤の一例としては、1官能あるいは多官能のアクリレートモノマーあるいはオリゴマー、3官能以上のウレタンアクリレート樹脂などの単独あるいは複数からなる樹脂組成物に硬化触媒として光重合開始剤が加えられた樹脂組成物が挙げられる。
熱硬化型樹脂としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すれば良い。
(・・・途中省略・・・)

<積層板>
本発明の積層板は、ポリカーボネート樹脂層(A)を含み、その片面もしくは両面に耐熱アクリル樹脂層(B)を有し、最表面の片側もしくは両面にハードコート層(C)を配する構成をとり、本来、その目的から、少なくともポリカーボネート樹脂(A)の片面には耐熱アクリル樹脂層(B)とハードコート層(C)をこの順序で配する必要がある。
具体的な積層板の構成としては、表面から、(C)/(B)/(A)、(C)/(B)/(A)/(C)、(C)/(B)/(A)/(B)、(C)/(B)/(A)/(B)/(C)である。(C)/(B)/(A)の構成は層数や厚みが最も少なく基本的な構成であるが、(C)/(B)/(A)/(B)、(C)/(B)/(A)/(B)/(C)の構成となった場合は、より対称的な構成となるため、成形時および、成形後に起こる積層体のソリが生じにくい。
上記耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みは20?200μmの範囲であり、好ましくは20?150μmの範囲であり、更に好ましくは40?120μmの範囲である。20μm未満であると、積層板の耐擦り傷性や鉛筆硬度が低下する場合があり、200μmを超えると積層板表面の耐衝撃性が劣ることがある。
上記ハードコート層(C)の厚みは2?10μmであり、好ましくは3?8μm、更に好ましくは4?7μmである。厚みが2μm未満では耐擦り傷性、鉛筆硬度が十分に発揮できない場合があり、10μmを超えるとハードコートの耐クラック性に劣ることがある。
本発明における積層板の総厚みは0.5?2mmであり、好ましくは0.7?1.7mm、更に好ましくは0.8?1.5mmである。総厚みが0.5mm未満であると保護板としての衝撃性や、剛性が保持できない恐れがあり、また、2mmを超えると光線透過率などの光学特性が劣る場合がある。
(・・・途中省略・・・)
本発明の積層板においては、ASTM-D-1003に準じた方法で測定された全光線透過率が88%以上、さらに好ましくは90%、最も好ましくは92%であることが好ましい。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが88%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できない場合がある。さらに、上記の透明性を有した積層板とする場合においては、ASTM-D-1003に準じた方法で測定された曇価が1.5%以下、好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。曇価は、透明性の目安であり、これが1.5%を越えると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
また、本発明の積層板の光学的な均一性を確保するためには、基材積層板(I)表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下であることが好ましく、更にこのましくは0.3μm以下、最も好ましくは0.2μm以下である。
本発明における積層板は表面硬度が、JIS-K5400で規定される鉛筆硬度が4H以上であり、好ましくは5H以上、更に好ましくは6H以上である。
(・・・途中省略・・・)
本発明の積層板中のポリカーボネート樹脂層(A)と、耐熱アクリル樹脂層(B)とを積層する方法としては、特に制限はなく、一般的な方法を採用することができる。例えば、各層を別々にシートあるいはフィルム化してから加熱して圧着する方法、少なくともいずれか一方の面にあらかじめ接着剤樹脂を塗布して接着する方法、押し出し機のダイ中において、上記ポリカーボネート樹脂と耐熱アクリル樹脂とを積層させてシートあるいはシート状のものを得る共押出成形法、耐熱アクリル樹脂をあらかじめ真空成形をおこなった後、基材となるポリカーボネート樹脂を射出成形するインモールド成形法などが挙げられる。コスト削減と生産性向上のためには、共押出成形する方法、インモールド成形法が好ましい。特にシート状、フィルム状の積層板を得る際に、コスト、生産性の点で、共押出成形法が好ましい。
上記ハードコート層の積層方法としては、上記ポリカーボネート樹脂層(A)と耐熱アクリル樹脂層(B)を積層後にハードコート層を形成する方法、または、耐熱アクリル樹脂層(B)にハードコート層を形成した後、ポリカーボネート樹脂層(A)と積層する方法などが可能である。ハードコート層の積層方法は特に制限がなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコート法などを用いることができる。」

(エ)引用発明
上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリカーボネート樹脂層(A)を含み、その片面もしくは両面に耐熱アクリル樹脂層(B)を有し、最表面の片側もしくは両面にハードコート層(C)を配する構成をとる保護板としての積層板であって、
具体的な積層板の構成としては、表面から、(C)/(B)/(A)、(C)/(B)/(A)/(C)、(C)/(B)/(A)/(B)、(C)/(B)/(A)/(B)/(C)であり、
前記耐熱アクリル樹脂層(B)である耐熱アクリル樹脂を主成分とする層には、その他の樹脂を含有させ、前記その他の樹脂成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性ポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体などであり、
前記ハードコート層(C)は、JIS5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で『H』以上の硬度を示し、樹脂組成物に硬化触媒が加えられた樹脂組成物であり、
前記積層板中のポリカーボネート樹脂層(A)と、耐熱アクリル樹脂層(B)とを積層する方法として、各層を別々にシートあるいはフィルム化してから加熱して圧着する方法、少なくともいずれか一方の面にあらかじめ接着剤樹脂を塗布して接着する方法、押し出し機のダイ中において、上記ポリカーボネート樹脂と耐熱アクリル樹脂とを積層させてシートあるいはシート状のものを得る共押出成形法、耐熱アクリル樹脂をあらかじめ真空成形をおこなった後、基材となるポリカーボネート樹脂を射出成形するインモールド成形法などが用いられ、
ASTM-D-1003に準じた方法で測定された全光線透過率が88%以上、さらに好ましくは90%、最も好ましくは92%である、
保護板としての積層板。」

イ 原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された引用文献である、特開2009-42351号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0008】
従って本発明の目的は、鉛筆硬度の高い光学フィルム、及びそれを用いた偏光板、表示装置を提供することにある。
(・・・途中省略・・・)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、フィルム基材上に機能性層として少なくともハードコート層を有する光学フィルムにおいて、該機能性層の少なくともいずれかの層にかご状シルセスキオキサンを含有してなる光学フィルムにより、驚くべきことに該機能性層の鉛筆硬度が向上することを見出し、本発明を成すに至った次第である。
【0020】
更に、かご状シルセスキオキサンをハードコート層や、低屈折率層に含有することで、光学フィルムの鉛筆硬度の低下や平面性の劣化を改善でき、該光学フィルムを偏光板や表示装置に用いることで、視認性低下、色むら、傷等の発生を解消できるという特徴も見出したものである。」

(イ)「【0052】
機能性層は、例えば、ハードコート層、導電性層、低屈折率層等を挙げることができるが、それらのいずれかの層にかご状シルセスキオキサンを添加する。いずれか1層のみに添加してもよく、また、複数の層に添加してもよい。」

(ウ)「【0149】
〔機能性層〕
次いで、本発明の光学フィルムに設けることのできる機能性層について説明する。機能性層は特に限定されるものではなく、ハードコート層、反射防止層、防汚層、バックコート層、アンチカール層、導電性層(帯電防止層ともいう)、下引き層、光散乱層、接着層等が挙げられる。
【0150】
本発明は該機能性層の少なくともいずれかの層に、かご状シルセスキオキサンとを含有することにより、高い鉛筆硬度を有する機能性層を形成することが特徴である。
【0151】
機能性層の中で、光学フィルムにおいては特に有用なハードコート層、反射防止層及び導電性層について詳細を述べる。
【0152】
〔ハードコート層〕
本発明の光学フィルムは、フィルム基材上にハードコート層を設けるか、またはフィルム基材と反射防止層の間にハードコート層として活性線硬化樹脂を含有する層を設けることが好ましい。
【0153】
特に好ましくは、ハードコート層が、活性線硬化樹脂と本発明に係るかご状シルセスキオキサンとを含有することである。」

(エ)引用文献2に記載された事項
上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されているものと認められる。
「樹脂からなるハードコート層に、かご状シルセスキオキサンとを含有することにより、高い鉛筆硬度を有する機能性層を形成する点。」

ウ 原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された引用文献である、特開2009-29881号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【背景技術】
【0002】
樹脂材料は、耐衝撃性、軽量性などの特徴を生かして、多方面の用途で幅広く利用されている。中でも、ポリカーボネート等に代表される透明樹脂材料は、比重が小さく、加工が容易で、無機ガラスに比べて衝撃に強いという特徴を生かし、耐衝撃性ガラスとして、窓ガラスのみならず水槽などの特殊な用途に、また、レンズや光ファイバーなどの光学分野に使用されている。反面、樹脂材料は、表面が傷付きやすく光沢や透明性が失われやすい、有機溶媒に侵されやすい、また、耐候性(たとえば、紫外線や赤外線に対する光安定性)、耐熱性に劣る、等々の欠点を有する。表面特性に関しては、樹脂材料の表面に透明性を有する保護膜を被覆することで改善される。
(・・・途中省略・・・)
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、樹脂基材の表面にカゴ型シルセスキオキサン構造を有する化合物からなる透明な保護膜を備える透明有機ガラス、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の透明有機ガラスは、透明性を有する樹脂基材と、該樹脂基材の表面の少なくとも一部に形成された透明性保護膜と、を備える透明有機ガラスであって、
前記樹脂基材は、70℃を超える耐熱性をもち、
前記透明性保護膜は、一般式(1)で表される有機珪素化合物と一般式(2)で表されるカゴ型シルセスキオキサンとを含む原料化合物と該原料化合物を溶解する溶媒とを混合した混合物に触媒を添加して該有機珪素化合物と該カゴ型シルセスキオキサンとを反応させた塗料組成物を前記樹脂基材に塗布して70℃以上該樹脂基材の耐熱温度未満の温度で焼成させて、2以上の該カゴ型シルセスキオキサンが該有機珪素化合物との付加反応により結合されてなる付加化合物からなることを特徴とする。」

(イ)「【0066】
[評価]
それぞれの基板の表面を目視で観察することで、透明性を確認した。また、成膜された基板の表面の鉛筆硬度(JIS K-5401)を測定した。また、透明性保護膜の膜厚をレーザ顕微鏡による断面観察により測定した。評価結果を、成膜条件とともに、表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
実施例1では、高い表面硬度をもつ透明な有機ガラスが得られた。すなわち、実施例1の条件では、溶媒によるPC基板の劣化や保護膜自体の白濁が生じなかった。同様に、実施例2では、実施例1よりも表面硬度の点で劣るが、PC基板の劣化や膜の白濁は生じず、透明な有機ガラスが得られた。一方、比較例1は、実施例2と同じ塗料組成物を用いたが、室温で放置したため、透明な保護膜は成膜されなかった。また、比較例2は、Q8シルセスキオキサンのみを原料化合物とした塗料組成物を用いたため、75℃で焼成しても硬化反応が良好に進行せず、透明な保護膜は得られなかった。
【0069】
また、参考例1?4では、ガラス基板に透明性保護膜を成膜した。用いた#03および#04の塗料組成物は、原料化合物としてQ8シルセスキオキサンとともに1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンまたはテトラキスジメチルシリルオルソシリケートを含む。この塗料組成物#03および#04を70℃で焼成することで、透明で高い表面硬度を有する透明性保護膜が成膜できることがわかった(参考例1および3)。さらに、焼成後に120℃で熱処理することで、更に硬度が向上した(参考例2および4)。なお、参考例1?4の表面硬度は、鉛筆硬度で4H以上の高い硬度であった。これは、ガラス基板の影響であり、基板がPC基板であれば、H程度の表面高度を示すと考えられる。」

(ウ)引用文献3に記載された事項
上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されているものと認められる。
「原料化合物にカゴ型シルセスキオキサンを含めて、高い鉛筆硬度の表面硬度をもつ透明な有機ガラスの透明性保護膜を得る点。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ポリカーボネート樹脂層(A)を含み、その片面もしくは両面に耐熱アクリル樹脂層(B)を有し、最表面の片側もしくは両面にハードコート層(C)を配する構成をとる保護板としての積層板」は、「具体的な積層板の構成としては、表面から、(C)/(B)/(A)」であってよいから、最表面から、耐熱アクリル樹脂層(B)の一面上に形成されるハードコート層(C)と、耐熱アクリル樹脂層(B)と、前記耐熱アクリル樹脂層(B)の他面上に形成されるポリカーボネート樹脂層(A)と、を有し、前記ポリカーボネート樹脂層(A)は、前記最表面から見て最下面のポリカーボネートを含む層である、保護板としての積層板であるといえる。

(イ)引用発明の「ポリカーボネート樹脂層(A)を含み、その片面もしくは両面に耐熱アクリル樹脂層(B)を有し、最表面の片側もしくは両面にハードコート層(C)を配する構成をとる保護板としての積層板」は、「ASTM-D-1003に準じた方法で測定された全光線透過率が88%以上、さらに好ましくは90%、最も好ましくは92%であ」るから、「ポリカーボネート樹脂層(A)」、「耐熱アクリル樹脂層(B)」、「ハードコート層(C)」及び「保護板としての積層板」は、いずれも透明な層であるといえる

(ウ)引用発明の「耐熱アクリル樹脂層(B)」は、「耐熱アクリル樹脂を主成分とする層」であって、「その他の樹脂を含有させ、前記その他の樹脂成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性ポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体などであ」るから、「重合体を含む」「耐熱アクリル樹脂層(B)」である。

(エ)引用発明の「ハードコート層(C)」は、「JIS5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で『H』」以上の硬度を示し、樹脂組成物に硬化触媒が加えられた樹脂組成物であ」るから、「硬化触媒が加えられた樹脂組成物であ」る「ハードコート層(C)」である。

(オ)上記(ア)ないし(エ)によれば、引用発明の「保護板としての積層板」は、最表面から、透明な耐熱アクリル樹脂層(B)の一面上に形成される硬化触媒が加えられた樹脂組成物であるハードコート層(C)と、重合体を含む透明な耐熱アクリル樹脂層(B)と、前記透明な耐熱アクリル樹脂層(B)の他面上に形成される透明なポリカーボネート樹脂層(A)と、を有し、前記透明なポリカーボネート樹脂層(A)は、前記最表面から見て最下面のポリカーボネートを含む層である、保護板としての積層板であるといえる。
そうすると、引用発明と本願補正発明は下記各点で相当関係にある。、
a 引用発明の上記重合体を含む透明な「耐熱アクリル樹脂層(B)」は、本願補正発明の「複数の層からなり、各層が重合体を含む第1透明基材」と「重合体を含む第1透明基材」の点で一致する。

b 引用発明の上記前記透明な耐熱アクリル樹脂層(B)の一面上に形成される「ハードコート層(C)」は、本願補正発明の「前記第1透明基材の一面上に形成され、シルセスキオキサンを含む保護層」と、「前記第1透明基材の一面上に形成され」る「保護層」の点で一致する。

c 引用発明の上記前記透明な耐熱アクリル樹脂層(B)の他面上に形成される透明な「ポリカーボネート樹脂層(A)」であって、最表面から見て最下面のポリカーボネートを含む層である「ポリカーボネート樹脂層(A)」は、本願補正発明の「前記第1透明基材の他面上に形成され、複数の層を有する第2透明基材」であって、「前記複数の層のうち最下面にポリカーボネートを含む層を有する」「第2透明基材」と、「前記第1透明基材の他面上に形成され」る「第2透明基材」であって、「最下面」の「ポリカーボネートを含む層」である「第2透明基材」の点で一致する。

d 引用発明の「保護板としての積層板」は、本願補正発明の「保護ウインドウ」に相当する。

イ 以上アによれば、によれば、両者は
「重合体を含む第1透明基材と、
前記第1透明基材の一面上に形成される保護層と、
前記第1透明基材の他面上に形成される第2透明基材と、
を有し、
前記第2透明基材は、最下面のポリカーボネートを含む層である、
保護ウインドウ。」
の点で一致し、下記各点で相違する。

a 「第1透明基材」が、本願補正発明は「複数の層からなり、各層が重合体を含む」のに対して、引用発明はこのように特定されない点(以下「相違点1」という。)。

b 「保護層」が、本願補正発明は「シルセスキオキサンを含む」のに対して、引用発明は硬化触媒が加えられた樹脂組成物であると特定されるにとどまる点(以下「相違点2」という。)。

c 「第2透明基材」が、本願補正発明は「複数の層を有」し、「前記複数の層のうち最下面にポリカーボネートを含む層を有する」のに対して、引用発明は最下面のポリカーボネートを含む層と特定されるにとどまる点(以下「相違点3」という。)。

(4)判断
ア 上記相違点1及び3について検討する。
(ア)引用発明の「ポリカーボネート樹脂層(A)」及び「耐熱アクリル樹脂層(B)」は、「積層板中のポリカーボネート樹脂層(A)と、耐熱アクリル樹脂層(B)とを積層する方法として、各層を別々にシートあるいはフィルム化してから加熱して圧着する方法、少なくともいずれか一方の面にあらかじめ接着剤樹脂を塗布して接着する方法、押し出し機のダイ中において、上記ポリカーボネート樹脂と耐熱アクリル樹脂とを積層させてシートあるいはシート状のものを得る共押出成形法、耐熱アクリル樹脂をあらかじめ真空成形をおこなった後、基材となるポリカーボネート樹脂を射出成形するインモールド成形法などが用いられ」るから、「ポリカーボネート樹脂層(A)」と「耐熱アクリル樹脂層(B)」の「各層を別々にシートあるいはフィルム化してから加熱して圧着する方法、少なくともいずれか一方の面にあらかじめ接着剤樹脂を塗布して接着する方法」であってよい。
そして、「別々にシートあるいはフィルム化された」「ポリカーボネート樹脂層」及び「耐熱アクリル樹脂層」としては、単層のものも複数層のものも従来周知であるから、発明を実施するに際して必要に応じて適宜の層の数のものを選択して適用する程度の設計的事項にすぎない。
また、引用発明の最下面のポリカーボネート樹脂層(A)は、発明を実施するに際して必要に応じて適宜の層の数のものを選択して適用した複数層のポリカーボネート樹脂層としたとしても、当該複数の層にポリカーボネートを含むこととなるから、複数の層のうちの最下面の層についてもポリカーボネートを含む層を有するポリカーボネート樹脂層(A)となることに違いはない。

(イ)これに対して、「複数の層からなり、各層が重合体を含む第1透明基材」及び「複数の層を有する第2透明基材」に関して、本願の発明の詳細な説明には、「第1透明基材20は、1又は複数の層で形成されてもよく、複数の層で形成される場合には、複数の層それぞれは、重合体を含む。複数の層それぞれに含まれる重合体は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートのうち少なくとも一つであってもよい。」(【0022】)、及び、「第2透明基材30は、1又は複数の層で形成されてもよく、複数の層で形成される場合、複数の層それぞれは、重合体を含む。複数の層それぞれに含まれた重合体は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートのうち少なくとも一つであってもよい。」(【0036】)と記載するにとどまり、「第1透明基材」及び「第2透明基材」を複数の層で形成することの技術的意義や効果についての記載はない。
また、本願の段落【0102】?【0131】の実施例にも、「第1透明基材」あるいは「第2透明基材」を複数の層で形成した実施例はない。
したがって、「複数の層からなり、各層が重合体を含む第1透明基材」及び「複数の層を有する第2透明基材」との発明特定事項に関して、必要に応じて適宜複数の層となした以上の技術的意義は見当たらない。
よって、上記(ア)で検討したとおり、引用発明において、「別々にシートあるいはフィルム化された」「ポリカーボネート樹脂層」及び「耐熱アクリル樹脂層」として、従来周知の複数層のものを適用して、上記相違点1及び3に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
引用発明の「ハードコート層(C)」は、「IS5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で『H』以上の硬度を示し、樹脂組成物に硬化触媒が加えられた樹脂組成物であ」るから、「IS5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示」すものとなすために、樹脂組成物に硬化触媒が加えられた樹脂組成物であるといえる。
ここで、引用文献2に「樹脂からなるハードコート層に、かご状シルセスキオキサンとを含有することにより、高い鉛筆硬度を有する機能性層を形成する点。」(引用文献2に記載された事項)、及び、引用文献3に「原料化合物にカゴ型シルセスキオキサンを含めて、高い鉛筆硬度の表面硬度をもつ透明な有機ガラスの透明性保護膜を得る点。」(引用文献3に記載された事項)と記載されるとおり、かご状(カゴ型)シルセスキオキサンは樹脂の表面を高い鉛筆硬度となすための硬化触媒として従来周知のものである
そして、本願の発明の詳細な説明によれば、「保護層10は、シルセスキオキサン(Silsequioxane)を含む。シルセスキオキサンはシロキサン(Siloxane)の一種である。シロキサンは下記表1に示すようにM、D、T、Qの単位構造を含む。このうち、シルセスキオキサンは、以下に示したT単位構造を含む重合体であり、一般式(RSiO_(3/2))_(n)と表示することができる。シルセスキオキサンは、トリアルコキシシロキサン(RSi(OR)_(3))又はトリクロロシラン(RSiCl_(3))の加水分解重合法によって生成が可能である。いくつかの実施形態では、シルセスキオキサンは、加水分解重合法ではない当業者に知らされている方法によって生成されてもよい。」(【0024】)と記載され、シルセスキオキサンは「当業者に知らされている方法によって生成され」たものであってよいから、本願補正発明の「シルセスキオキサン」の種類は限定されない。
したがって、引用発明の「ハードコート層(C)」を、「IS5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で『H』以上の硬度を示」すものとなすために樹脂に加える硬化触媒として、上記引用文献2及び3に記載された従来周知のかご状(カゴ型)シルセスキオキサンを適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 本願補正発明が奏する作用効果
本願補正発明が奏する「本発明によれば、高硬度及び高い剛性度を有する保護ウインドウを提供することができる。」(本願発明の詳細な説明の【0010】)という効果は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎない。

(5)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記3での検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし21に係る発明は、平成27年9月30日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 引用文献の記載及び引用発明
上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」「(2)」のとおりである。

3 対比・判断
本願発明について
上記「第2」[理由]「2 補正の目的」のとおり、本件補正は、補正前の請求項1において、「重合体を含む第1透明基材」に、「複数の層からなり、各層が」との限定を付加するものである。
したがって、本願発明は、上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、「重合体を含む第1透明基材」に関しての「複数の層からなり、各層が」との限定を省いたものである。
これに対して、上記「第2][理由]「3」「(3)」で検討したとおり、上記限定を含む本願補正発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、上記限定を省いたものである本願発明は、上記「第2」[理由]「3」での検討と同様の理由により、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得るものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により、本願は、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-23 
結審通知日 2018-01-30 
審決日 2018-02-13 
出願番号 特願2011-262186(P2011-262186)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 野村 伸雄
松川 直樹
発明の名称 保護ウインドウ及び保護ウインドウを含む表示装置  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  
代理人 山下 託嗣  
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